(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182333
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20231219BHJP
C08K 5/5425 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20231219BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20231219BHJP
C09J 183/06 20060101ALI20231219BHJP
C09J 4/00 20060101ALI20231219BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/5425
C08K5/548
C08K5/544
C09J183/06
C09J4/00
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095870
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 美早紀
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆文
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002CP061
4J002EC079
4J002ER029
4J002EX016
4J002EX078
4J002EX079
4J002EX087
4J002EZ049
4J002EZ059
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD148
4J002FD159
4J002GJ01
4J002GJ02
4J040EK062
4J040EK072
4J040GA01
4J040GA24
4J040HB19
4J040HC03
4J040HD32
4J040JA02
4J040JB05
4J040JB08
(57)【要約】
【課題】速硬化性、深部硬化性が良好な、室温硬化及び紫外線硬化の両方の性質を有する二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物の提供。
【解決手段】
(A)分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン、
(B)ビニルトリ(アルケノキシ)シラン及び/又はその部分加水分解物、及び、
(C)光重合開始剤
を含有する第一剤と、
(D)1分子中に少なくとも2個のメルカプト基を有するメルカプト基含有オルガノシロキサン、
(E)第一級アミン化合物、及び、
(F)湿気硬化用硬化触媒
を含有する第二剤とからなる二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基で、R
1とR
2が結合してこれらが結合する炭素原子と共に上記式中のC=C二重結合を有する脂環を形成してもよい。)
で表されるビニルトリ(アルケノキシ)シラン及び/又はその部分加水分解物:0.5~30質量部、及び、
(C)光重合開始剤:0.01~20質量部
を含有する第一剤と、
(D)1分子中に少なくとも2個のメルカプト基を有するメルカプト基含有オルガノシロキサン:(B)成分中のビニル基1モルに対して(D)成分中のメルカプト基が0.01~100モルとなる量、
(E)第一級アミン化合物:0.1~20質量部、及び、
(F)湿気硬化用硬化触媒:0.01~10質量部
を含有する第二剤とからなる二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(D)成分が下記一般式(2)
【化2】
(式(2)中、R
4は水素原子、又は炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、複数のR
4は同一でも異なっていてもよい。mは1~20の整数である)
で示される基を1分子中に少なくとも2個有し、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状又は分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである請求項1に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
更に、(G)1級アミノシランを除くシランカップリング剤を(A)成分100質量部に対し0.1~10質量部の割合で第一剤及び/又は第二剤に含むものである請求項1に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
更に、(H)紫外線硬化反応を阻害しない充填剤を(A)成分100質量部に対し1~500質量部の割合で第一剤及び/又は第二剤に含むものである請求項1に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
紫外線照射直後に3mm以上硬化し、且つ7時間で27mmの深部硬化性を有するものである請求項1に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなるシール剤、コーティング剤又は接着剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬化性、深部硬化性が良好な、室温硬化及び紫外線硬化の両方の性質を有する二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物、並びに該二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られるエラストマーの成型物(シリコーンゴム硬化物)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化型シリコーン組成物について各種のものが知られている。紫外線硬化型シリコーン組成物のなかでも、特にラジカル重合を用いるものは、その高い反応活性により反応速度が速く、短い時間で硬化するという特徴がある。その反面、ラジカルの寿命が非常に短く、酸素などで容易に失活してしまう結果、空気と触れる組成物表面の硬化性が著しく低下することがある。特にLEDを光源とした紫外線ランプを使用した場合、紫外線硬化型シリコーン組成物の表面硬化性の低下は顕著である。さらに、紫外線硬化型シリコーン組成物は紫外線の当たらない、遮られた領域では硬化しない。
【0003】
上記のような既知の硬化性シリコーン組成物の問題を解決するために、室温硬化及び紫外線硬化の両方の性質を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物が開発されている。
【0004】
特開昭60-231761号公報(特許文献1)では末端ヒドロキシオルガノポリシロキサンと、ビニル基と加水分解性基を持つシランと、メルカプト基含有オルガノシロキサンとを使用することが提案されている。特許第2639286号公報(特許文献2)では末端ヒドロキシオルガノポリシロキサンと、(メタ)アクリル官能性アルコキシシランを使用することが提案されている。しかし、これらの組成物おいて、縮合硬化によって紫外線の当たらない領域を硬化させることができるが、深部硬化には一定の時間が必要であり、速硬化性はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-231761号公報
【特許文献2】特許第2639286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、速硬化性、深部硬化性が良好な、室温硬化及び紫外線硬化の両方の性質を有する二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、末端ヒドロキシオルガノポリシロキサンと、ビニル基と加水分解性基を持つシランと、メルカプト基含有オルガノシロキサンとを使用することに加え、さらに系内に第一級アミン化合物を存在させておくことで縮合反応の際に水が生成し、速硬化性、深部硬化性が良好な、室温硬化及び紫外線硬化の両方の性質を有する硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び該組成物を含有するシール剤、コーティング剤又は接着剤、並びに該組成物の硬化物からなる成形物(シリコーンゴム硬化物)等を提供するものである。
【0009】
[1]
(A)分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基で封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基で、R
1とR
2が結合してこれらが結合する炭素原子と共に上記式中のC=C二重結合を有する脂環を形成してもよい。)
で表されるビニルトリ(アルケノキシ)シラン及び/又はその部分加水分解物:0.5~30質量部、及び、
(C)光重合開始剤:0.01~20質量部
を含有する第一剤と、
(D)1分子中に少なくとも2個のメルカプト基を有するメルカプト基含有オルガノシロキサン:(B)成分中のビニル基1モルに対して(D)成分中のメルカプト基が0.01~100モルとなる量、
(E)第一級アミン化合物:0.1~20質量部、及び、
(F)湿気硬化用硬化触媒:0.01~10質量部
を含有する第二剤とからなる二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[2]
(D)成分が下記一般式(2)
【化2】
(式(2)中、R
4は水素原子、又は炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、複数のR
4は同一でも異なっていてもよい。mは1~20の整数である)
で示される基を1分子中に少なくとも2個有し、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状又は分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである[1]に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[3]
更に、(G)1級アミノシランを除くシランカップリング剤を(A)成分100質量部に対し0.1~10質量部の割合で第一剤及び/又は第二剤に含むものである[1]に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[4]
更に、(H)紫外線硬化反応を阻害しない充填剤を(A)成分100質量部に対し1~500質量部の割合で第一剤及び/又は第二剤に含むものである[1]に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[5]
紫外線照射直後に3mm以上硬化し、且つ7時間で27mmの深部硬化性を有するものである[1]に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなるシール剤、コーティング剤又は接着剤。
[7]
[1]~[5]のいずれか1項に記載の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物からなる成形物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、速硬化性、深部硬化性が良好であり、シーリング剤、接着剤、コーティング剤又はポッティング剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0012】
[(A)成分]
本発明の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(A)成分は、分子鎖両末端が、ケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであり、本発明の組成物において主剤(ベースポリマー)となるものである。該オルガノポリシロキサンは室温(23℃±15℃)において液状であることが好ましく、下記一般式(3)で示されるものが特に好ましい。
【化3】
(式(3)中、R
5は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、複数のR
5は同一でも異なっていてもよい。nは10以上の整数である。)
【0013】
式(3)中、R5は炭素数1~10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、特にメチル基、フェニル基が好ましい。式(3)中の複数のR5は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0014】
また式(3)中のnは10以上の整数であり、特にジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が好ましくは25~500,000mPa・sの範囲、より好ましくは500~100,000mPa・sの範囲となる整数である。なお、本発明において、粘度は、例えば、回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により25℃で測定した値である(以下、同じ)。
なお、上記式(3)中において、2官能性のジオルガノシロキサン単位((R5)2SiO2/2)の繰り返し数(又は重合度)を示すnの値は、10以上の整数であるが好ましくは10~2,000の整数、より好ましくは50~1,200の整数、更に好ましくは100~1,000程度の整数である。なお、本発明において重合度は、例えば、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めた値である。
(A)成分は、1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0015】
[(B)成分]
(B)成分である硬化剤(架橋剤)は、下記一般式(1)で示される、1分子内にケイ素原子に結合したビニル基を1個及びケイ素原子に結合したアルケノキシ基を3個有するビニルトリ(アルケノキシ)シラン及び/又はその部分加水分解縮合物(即ち、ビニルトリ(アルケノキシ)シラン化合物を部分的に加水分解・縮合して得られる、1分子中に残存加水分解性基を平均3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマー)である。
【化4】
(式中、R
1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、R
2及びR
3はそれぞれ水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基で、R
1とR
2が結合してこれらが結合する炭素原子と共に上記式中のC=C二重結合を有する脂環を形成してもよい。)
【0016】
上記式中、R1は置換又は非置換の一価炭化水素基であり、炭素数1~10のものが好ましい。一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などが例示される。特に好ましいのは、メチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基である。式(1)中の複数のR1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0017】
R2及びR3はそれぞれ水素原子又は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては、炭素数1~10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等のアルキル基が挙げられる。式(1)中の複数のR2は同一の基であっても異種の基であってもよい。式(1)中の複数のR3は同一の基であっても異種の基であってもよい。
また、R1とR2が結合してこれらが結合する炭素原子と共に上記式中のC=C二重結合を有する脂環を形成してもよい。式(1)中の複数の脂環は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0018】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.5~30質量部、好ましくは1~8質量部である。0.5質量部未満では、十分な架橋性(硬化性)が得られず、目的とするゴム弾性を有する硬化物(シリコーンゴム)を与える組成物が得難い場合がある。また30質量部を超えると、組成物の深部硬化性が低下し、作業性が低下する場合がある。
【0019】
[(C)成分]
(C)成分である光重合開始剤は、従来紫外線硬化性オルガノポリシロキサン組成物に使用されてきたものを使用することができる。具体的には、例えは、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4-クロロ-4’-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサントン、3,9-ジクロロキサントン、3-クロロ-8-ノニルキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントン、ジエチルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、シクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0020】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.01~20質量部、好ましくは0.1~10質量部である。(C)成分の配合量が0.01質量部未満ではその効果は少なく、20質量部を超えると、得られる硬化物に対し(C)成分の分解残渣の影響が大きくなり、物理特性が悪くなる場合がある。
(C)成分は1種でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
第一剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有量は、20~100質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましい。
【0022】
[(D)成分]
(D)成分である硬化剤(架橋剤)は、1分子中に少なくとも2個のメルカプト基を有するメルカプト基含有オルガノシロキサンである。該メルカプト基含有オルガノシロキサンは、1分子中に、好ましくは2~20個、より好ましくは4~10個のメルカプト基を有する。
【0023】
(D)成分としては下記一般式(2)
【化5】
(式(2)中、R
4は水素原子、又は炭素数1~20の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、複数のR
4は同一でも異なっていてもよい。mは1~20の整数である)
で示される基を1分子中に少なくとも2個有し、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状又は分岐鎖状のオルガノポリシロキサンが特に好ましい。
【0024】
(D)成分は、組成物の架橋剤となる成分であり、上記一般式(2)で示される基を1分子中に少なくとも2個有し、好ましくは2~20個、より好ましくは4~10個有するものである。
【0025】
前記一般式(2)において、R4の炭素数1~20の非置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナヂシル基、エイコシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-,β-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、入手の容易さ、生産性、コストの観点からメチル基が特に好ましい。mは、1~20の整数であり、好ましくは1~6の整数である。
式(2)中の複数のR4は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0026】
また、(D)成分は、例えは、直鎖状、分岐状、一部分岐を有する直鎖状、デンドリマー状のオルガノポリシロキサンであり、好ましくは直鎖状、一部分岐を有する直鎖状のオルガノポリシロキサンであり、より好ましくは、上記一般式(2)の部分構造式で示される2価のシロキサン単位(即ち、(トリオルガノシロキシ)(メルカプトアルキル)シロキサン単位))の繰り返し構造を主鎖とし、分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサン(側鎖メルカプトアルキル基変性直鎖状オルガノポリシロキサン)などであるが、これらに限定されない。また、(D)成分は、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、又はこれらの重合体の混合物であってもよい。
【0027】
また、(D)成分の配合量は、前記(B)成分中のビニル基1モルに対して(D)成分中のメルカプト基が0.01~100モル、好ましくは0.5~20モルとなる量である。(B)成分中のビニル基1モルに対する(D)成分中のメルカプト基が0.1モルより少ないと十分な硬化性が得られず、100モルより多い場合は目的とする物性を有する硬化物が得られない場合がある。
(D)成分は1種でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
[(E)成分]
(E)成分の第一級アミン化合物は、例えば、アルキルアミン類、シクロアルキルアミン類、ジアミン類、アルケニルアミン類、アリールアミン類、アミノ変性シラン、アミノ変性シロキサンおよびその部分加水分解物等である。
【0029】
アルキルアミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン等が挙げられる。
シクロアルキルアミン類としては、例えば、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
アルケニルアミン類としては、例えば、ビニルアミン、アリルアミン等が挙げられる。
アリールアミン類としては、例えば、アニリン等が挙げられる。
アミノ変性シランとしては、例えば、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
アミノ変性シロキサンとしては、例えば、γ-アミノプロピルペンタメチルジシロキサン、γ-アミノプロピルヘプタメチルテトラシクロシロキサン、1,2-ジ(γ-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1-γ-アミノプロピル-2,3-イソプロピルヘキサメチルテトラシクロシロキサン、α,ω-トリメチルシロキシポリ(γ-アミノプロピルメチル)シロキサン、α,ω-トリメチルシロキシポリ〔N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチル〕シロキサン等が挙げられる。
【0030】
これら第一級アミン化合物の中でより好ましいものは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン及びα,ω-トリメチルシロキシポリ(γ-アミノプロピルメチル)シロキサン、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ変性シラン又はアミノ変性シロキサンである。
【0031】
(E)成分の配合量はジオルガノポリシロキサン(A)100質量部に対し0.1~20質量部、好ましくは2~10質量部である。この第一級アミン化合物(E)が少なすぎると、組成物の十分な深部硬化性が得られない。また、多すぎると硬化物から該(E)成分が溶出して環境汚染等が起こり、また、得られる硬化物の引張り強さが低下する等の不利が生じる場合がある。
(E)成分は1種でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
[(F)成分]
(F)成分の湿気硬化用硬化触媒は、縮合反応触媒として作用するものである。これらは同一であっても異種のものであってもよく、また、1種を単独で使用しても2種以上の混合物として使用してもよい。
【0033】
(F)成分の具体例としては、スズジオクトエート、ジメチルスズジバーサテート、ジブチルジメトキシスズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジベンジルマレート、ジオクチルスズジラウレート、スズキレート等のスズ触媒;グアニジン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン)等の強塩基化合物及びこれらの強塩基化合物の残基を有するアルコキシシラン;テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物等が例示される。強塩基化合物の残基を有するアルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
(F)成分の配合量は、(A)成分のジオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01~10質量部、好ましくは0.02~5質量部である。0.01質量部未満では十分な硬化特性が得られず、10質量部を超える量では組成物の耐久性が低下する場合がある。
【0035】
第二剤は、(D)成分、(E)成分及び(F)成分の含有量は、20~100質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましい。
【0036】
[(G)成分]
本発明の組成物には、接着性が必要な場合に、接着性付与成分として(G)1級アミノシランを除く(即ち、上記(E)成分を除く)シランカップリング剤を配合することができる。シランカップリング剤としては、公知のものが好適に使用される。特には加水分解性基として、アルコキシシリル基、分子内に2個以下のアルケノキシシリル基を有するものが好ましく、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等が例示される。これらの中で特にメタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0037】
(G)成分のシランカップリング剤を配合する場合、その配合量は、(A)成分のジオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~10質量部、特には0.2~5質量部が好ましい。0.1質量部未満では十分な接着性が得られない場合があり、10質量部を超えると価格的に不利となる場合がある。
(G)成分は1種でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0038】
[(H)成分]
本発明の組成物には、更に(H)紫外線硬化反応を阻害しない充填剤を配合することができ、これは、本発明の組成物において補強剤、増量剤となるものである。(H)成分の充填剤としては、例えば、煙霧質シリカ、湿式シリカ、沈降性シリカ、炭酸カルシウム等の補強性充填剤などが挙げられる。好ましくは、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、炭酸カルシウムである。これらの充填剤は表面処理されていなくても、公知の処理剤で表面処理されていてもよい。
【0039】
(H)成分の充填剤を本発明組成物に配合する場合、その配合量は、(A)成分のジオルガノポリシロキサン100質量部に対して1~500質量部が好ましく、特に2~250質量部が好ましい。1質量部未満では添加効果が不十分となる場合があり、500質量部を超えると本発明の組成物の吐出性、作業性が低下する場合がある。
(H)成分は1種でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
本発明の組成物には、必要に応じてその他の成分を本発明の効果を妨げない範囲で任意に添加することができる。その他の成分としては、チキソトロピー向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としての非反応性ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン、架橋密度向上剤としてのトリメチルシロキシ単位とSiO2単位とからなる網状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0041】
製造方法
本発明の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(A)、(B)、(C)成分、必要に応じて(G)、(H)成分及びその他の成分を含む第一剤と、(D)、(E)、(F)成分、必要に応じて(G)、(H)成分及びその他の成分を含む第二剤を別々に調製し、使用前にスタティック、もしくはダイナミックミキサー等により第一剤と第二剤を混合して使用する。
【0042】
硬化方法
本発明の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させる場合は、該組成物に紫外線を照射して硬化させるが、該紫外線としては250~450nm、特に250~380nmの波長のものが有効であり、また該紫外線の照射量は1,000~10,000mJ/cm2、特に2,000~5,000mJ/cm2であることが好ましい。なお、硬化温度は室温でよく、通常25℃±10℃である。
【0043】
さらに、本発明の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、(B)成分が加水分解反応の架橋剤として反応する際にカルボニル化合物を生成し、生成したカルボニル化合物が、(E)成分と反応して水が生成する。この水が(B)成分の加水分解を促し、架橋反応を促進する結果、硬化性が向上するのみならず、紫外線の当たらない組成物の影部や深部においても架橋が速やかに進行するものである。
【0044】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、シーリング剤、接着剤、コーティング剤、ポッティング剤として好適に用いることができる。特に、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、紫外線の当たらない、影部や深部を持つ用途に対して好適に使用し得る。
【実施例0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の具体例において、「部」は「質量部」を意味し、また粘度は25℃での回転粘度計による測定値を示したものである。
【0046】
[実施例1]
第一剤として、両末端が水酸基で封鎖された粘度700mPa・sのジメチルポリシロキサン(式(3)においてR
5=CH
3、n=230に相当)100部、ビニルトリ(イソプロペノキシ)シラン3.7部、煙霧質シリカ6.5部、ジエトキシアセトフェノン1.0部を均一になるまで混合して組成物1-1を調製した。
第二剤として、
3-アミノプロピルトリエトキシシラン3.3部、
N,N,N’,N’-グアニジルプロピルトリメトキシシラン1.1部、
下記式(4)で示されるγ-メルカプトプロピル基含有オルガノポリシロキサン(信越化学工業社製)11部
【化6】
を均一になるまで混合して組成物1-2を調製した。
上記組成物1-1全量と上記組成物1-2全量を混合し、実施例1の組成物を得た。
【0047】
[実施例2]
実施例1の組成物1-2に記載の3-アミノプロピルトリエトキシシラン3.3部に代えて、N-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン3.3部を用いること以外は、実施例1と同様にして組成物2-2を調製した。
上記組成物1-1全量と上記組成物2-2全量を混合し、実施例2の組成物を得た。
【0048】
[比較例1]
実施例1の組成物1-2に記載の3-アミノプロピルトリエトキシシラン3.3部を使用しないこと以外は実施例1と同様にして組成物3-2を調製した。
上記組成物1-1全量と上記組成物3-2全量を混合し、比較例1の組成物を得た。
【0049】
[比較例2]
実施例1の組成物1-2に記載の、上記式(4)で示される3-メルカプトプロピル基含有オルガノポリシロキサン(信越化学工業社製)11部を使用しないこと以外は実施例1と同様にして組成物4-2を調製した。
上記組成物1-1全量と上記組成物4-2全量を混合し、比較例2の組成物を得た。
【0050】
[比較例3]
実施例1の組成物1-1に記載の、ビニルトリイソプロペノキシシラン3.7部に代えて、メチルトリメトキシシラン2.2部を用いること以外は、実施例1と同様にして組成物5-1を調製した。
上記組成物5-1全量と上記組成物1-2全量を混合し、比較例3の組成物を得た。
【0051】
[実施例1~2、比較例1~3]
調製した組成物を深さ27mmのプラスチックカップに入れ、カップ壁面をアルミホイルで覆い、上部からのみ紫外線が当たるようにした。
光源はUV-LEDランプである紫外線照射装置(ワールドエンジニアリング株式会社製)を用い、波長365nmの紫外光での照射量が4,000mJ/cm2となるように各組成物に紫外線を照射し、硬化させた。
紫外線照射直後、及び23℃、50%RHで7時間養生後にその硬化膜厚さをそれぞれ確認した。また、紫外線を照射せず、23℃、50%RHで7時間養生後にその硬化膜厚さを確認した。また、紫外線照射3分後の表面の表面硬化性を確認した。表面硬化性の評価については、表面のタック感が無いものを○、タック感のあるものを△、未硬化・もしくは未硬化オイルがブリードしているものを×として評価した。その結果を表1及び表2に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
実施例1、2と比較例1~3との比較により、本発明の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物は速硬化性・深部硬化性に優れていることがわかった。また、本発明の二成分型硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、汎用性の高い材料成分からなる配合で、工業的に有利に製造できるものである。