(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182424
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】エネルギー供給システム及びエネルギー供給方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20231219BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231219BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20231219BHJP
H02J 15/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 120
H02J3/38 170
H02J3/32
H02J15/00 D
H02J15/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096025
(22)【出願日】2022-06-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイト「https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0960148121009277」、令和03年06月15日公開 (2)2021年度 電力中央研究所 電力流通テクニカルカンファレンス、令和03年10月15日公開 (3)経産省受託 RITE 地球温暖化対策技術の分析・評価に関する国際連携事業 令和3年度 モデル検討WG、令和03年12月21日公開
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山本 博巳
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB08
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギーを用いたより安定的にエネルギーを供給することができるエネルギー供給システム及びエネルギー供給方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るエネルギー供給システムは、再生可能エネルギーを利用して発電をする発電設備と、前記前記発電設備によって発電される電力を水素エネルギーに変換できる水素エネルギー変換設備と、前記発電設備によって発電される電力を貯蔵できる電力貯蔵設備と、前記水素エネルギー変換設備によって変換される水素エネルギーを貯蔵できる水素エネルギー貯蔵設備と、を有する貯蔵設備と、前記発電設備及び/又は前記貯蔵設備から電力を供給できる電力供給設備と、前記貯蔵設備から水素エネルギーを供給する水素エネルギー供給設備と、前記発電設備によって発電される電力の内、前記貯蔵設備に貯蔵されるエネルギーの量を制御する制御設備と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用して発電をする発電設備と、
前記発電設備によって発電される電力を水素エネルギーに変換できる水素エネルギー変換設備と、
前記発電設備によって発電される電力を貯蔵できる電力貯蔵設備と、前記水素エネルギー変換設備によって変換される水素エネルギーを貯蔵できる水素エネルギー貯蔵設備と、を有する貯蔵設備と、
前記発電設備及び/又は前記貯蔵設備から電力を供給できる電力供給設備と、
前記貯蔵設備から水素エネルギーを供給する水素エネルギー供給設備と、
前記発電設備によって発電される電力の内、前記貯蔵設備に貯蔵されるエネルギーの量を制御する制御設備と、を備える
ことを特徴とするエネルギー供給システム。
【請求項2】
さらに、前記水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを利用して発電する水素エネルギー発電設備を備え、
前記電力供給設備は、前記水素エネルギー発電設備から電力を供給できる
ことを特徴とする請求項1に記載のエネルギー供給システム。
【請求項3】
前記水素エネルギー変換設備は、前記電力貯蔵設備に貯蔵される電力を水素エネルギーに変換できる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー供給システム。
【請求項4】
前記電力貯蔵設備は、バッテリーを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー供給システム。
【請求項5】
前記水素エネルギー変換設備は、水電気分解設備を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー供給システム。
【請求項6】
前記水素エネルギー貯蔵設備は、水素エネルギーを圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、及びメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の形態で貯蔵する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー供給システム。
【請求項7】
前記再生可能エネルギーは、太陽光及び風力を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエネルギー供給システム。
【請求項8】
前記再生可能エネルギーはさらに、水力、自然界に存在する熱、バイオマス及び海洋エネルギーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む
ことを特徴とする請求項7に記載のエネルギー供給システム。
【請求項9】
再生可能エネルギーを利用して発電設備で発電をする発電工程と、
前記発電工程で得られる電力を、直接電力供給する比率、電力貯蔵設備に貯蔵する比率及び水素エネルギー変換設備で水素エネルギーに変換する比率を制御設備で制御する比率制御工程と、
前記水素エネルギー変換設備で変換される水素エネルギーを水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵する水素エネルギー貯蔵工程と、
電力供給設備で、前記発電設備及び/又は前記電力貯蔵設備及び/又は前記水素エネルギー貯蔵設備から電力を供給する電力供給工程と、
水素エネルギー供給設備で、前記水素エネルギー貯蔵設備から水素エネルギーを供給する水素エネルギー供給工程と、を備える
ことを特徴とするエネルギー供給方法。
【請求項10】
さらに、水素エネルギー発電設備で、前記水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを利用して発電する水素エネルギー発電工程、を備え、
前記電力供給設備はさらに、前記水素エネルギー発電設備から電力を供給する
ことを特徴とする請求項9に記載のエネルギー供給方法。
【請求項11】
さらに、前記水素エネルギー変換設備で、前記電力貯蔵設備に貯蔵される電力を水素エネルギーに変換する工程を備える
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のエネルギー供給方法。
【請求項12】
前記電力貯蔵設備は、電力をバッテリーに貯蔵する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のエネルギー供給方法。
【請求項13】
前記水素エネルギー変換設備は、水電気分解により電力を水素エネルギーに変換する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のエネルギー供給方法。
【請求項14】
前記水素エネルギー貯蔵設備は、水素エネルギーを圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、及びメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の形態で貯蔵する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のエネルギー供給方法。
【請求項15】
前記制御設備は、前記電力供給設備で供給される電力に対する前記水素エネルギー供給設備で供給される水素エネルギーの比率を4.0以下に制御する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のエネルギー供給方法。
【請求項16】
前記再生可能エネルギーは、太陽光及び風力を含む
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のエネルギー供給方法。
【請求項17】
前記再生可能エネルギーはさらに、水力、自然界に存在する熱、バイオマス及び海洋エネルギーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む
ことを特徴とする請求項16に記載のエネルギー供給方法。
【請求項18】
前記発電設備がバイオマスを含まないときは、再生可能エネルギーからの直接電力供給を優先するように制御し、
再生可能エネルギーからの余剰電力が発生した場合は、電力を電力貯蔵設備に貯蔵すること優先するように制御し、次に水素エネルギー貯蔵設備に水素エネルギーを貯蔵することを優先するように制御し、次に再生可能エネルギーからの余剰電力を出力抑制することを優先するように制御し、
再生可能エネルギーからの電力不足が発生した場合は、電力貯蔵設備からの放電を優先するように制御し、次に水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを用いて発電することを優先するように制御する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のエネルギー供給方法。
【請求項19】
前記発電設備がバイオマスを含むときは、バイオマスを除く再生可能エネルギーからの直接電力供給を優先するように制御し、
バイオマスを除く再生可能エネルギーからの余剰電力が発生した場合は、電力を電力貯蔵設備に貯蔵すること優先するように制御し、次に水素エネルギー貯蔵設備に水素エネルギーを貯蔵することを優先するように制御し、次にバイオマスを除く再生可能エネルギーからの余剰電力を出力抑制することを優先するように制御し、
バイオマスを除く再生可能エネルギーからの電力不足が発生した場合は、電力貯蔵設備からの放電を優先するように制御し、次に水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを用いて発電することを優先するように制御し、さらに次にバイオマスによる発電を優先するように制御する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のエネルギー供給方法。
【請求項20】
さらに、バイオマスを除く再生可能エネルギーの想定される発電時間パターンから、再生可能エネルギー設備費、水素関連設備費の合計を最小にするように、再生可能エネルギー設備量、水素関連設備量の組み合わせを計算する制御する
ことを特徴とする請求項18に記載のエネルギー供給方法。
【請求項21】
さらに、バイオマスを除く再生可能エネルギーの想定される発電時間パターンから、再生可能エネルギー設備費、水素関連設備費、バイオマス関連設備費、バイオマス燃料費の合計を最小にするように、再生可能エネルギー設備量、水素関連設備量、バイオマス関連設備量の組み合わせを計算する制御する
ことを特徴とする請求項19に記載のエネルギー供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー供給システム及びエネルギー供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止のために二酸化炭素の排出量の地球規模での削減が重要であると広く認識されている。二酸化炭素の排出量の削減を達成するための重要な方法の一つとして、再生可能エネルギーを大規模で利用することがある。
【0003】
一方、再生可能エネルギーを大規模で利用するためには、安定的に電源を供給できるシステムを構築する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、再生可能エネルギーを用いたより安定的にエネルギーを供給することができるエネルギー供給システム及びエネルギー供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、再生可能エネルギーを利用して発電をする発電設備と、
前記発電設備によって発電される電力を水素エネルギーに変換できる水素エネルギー変換設備と、
前記発電設備によって発電される電力を貯蔵できる電力貯蔵設備と、前記水素エネルギー変換設備によって変換される水素エネルギーを貯蔵できる水素エネルギー貯蔵設備と、を有する貯蔵設備と、
前記発電設備及び/又は前記貯蔵設備から電力を供給できる電力供給設備と、
前記貯蔵設備から水素エネルギーを供給する水素エネルギー供給設備と、
前記発電設備によって発電される電力の内、前記貯蔵設備に貯蔵されるエネルギーの量を制御する制御設備と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、さらに、前記水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを利用して発電する水素エネルギー発電設備を備え、前記電力供給設備は、前記水素エネルギー発電設備から電力を供給できることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、前記水素エネルギー変換設備は、前記電力貯蔵設備に貯蔵される電力を水素エネルギーに変換できることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、前記電力貯蔵設備は、バッテリーを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、前記水素エネルギー変換設備は、水電気分解設備を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、前記水素エネルギー貯蔵設備は、水素エネルギーを圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、及びメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の形態で貯蔵することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、前記制御設備は、前記電力供給設備で供給される電力に対する前記水素エネルギー供給設備で供給される水素エネルギーの比率を4.0以下に制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、前記再生可能エネルギーは、太陽光及び風力を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給システムは、前記再生可能エネルギーはさらに、水力、自然界に存在する熱、バイオマス及び海洋エネルギーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、再生可能エネルギーを利用して発電設備で発電をする発電工程と、
前記発電工程で得られる電力を、直接電力供給する比率、電力貯蔵設備に貯蔵する比率及び水素エネルギー変換設備で水素エネルギーに変換する比率を制御設備で制御する比率制御工程と、
前記水素エネルギー変換設備で変換される水素エネルギーを水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵する水素エネルギー貯蔵工程と、
電力供給設備で、前記発電設備及び/又は前記電力貯蔵設備及び/又は前記水素エネルギー貯蔵設備から電力を供給する電力供給工程と、
水素エネルギー供給設備で、前記水素エネルギー貯蔵設備から水素エネルギーを供給する水素エネルギー供給工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の一態様は、さらに、水素エネルギー発電設備で、前記水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを利用して発電する水素エネルギー発電工程、を備え、前記電力供給設備はさらに、前記水素エネルギー発電設備から電力を供給することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、さらに、前記水素エネルギー変換設備で、前記電力貯蔵設備に貯蔵される電力を水素エネルギーに変換する工程を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、前記電力貯蔵設備は、電力をバッテリーに貯蔵することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、前記水素エネルギー変換設備は、水電気分解により電力を水素エネルギーに変換することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、前記水素エネルギー貯蔵設備は、水素エネルギーを圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、及びメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の形態で貯蔵することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、前記再生可能エネルギーは、太陽光及び風力を含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、前記再生可能エネルギーはさらに、水力、自然界に存在する熱、バイオマス及び海洋エネルギーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、前記発電設備がバイオマスを含まないときは、再生可能エネルギーからの直接電力供給を優先するように制御し、
再生可能エネルギーからの余剰電力が発生した場合は、電力を電力貯蔵設備に貯蔵すること優先するように制御し、次に水素エネルギー貯蔵設備に水素エネルギーを貯蔵することを優先するように制御し、
再生可能エネルギーからの電力不足が発生した場合は、電力貯蔵設備からの放電を優先するように制御し、次に水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを用いて発電することを優先するように制御することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、前記発電設備がバイオマスを含むときは、再生可能エネルギーからの直接電力供給を優先するように制御し、
バイオマスを除く再生可能エネルギーからの余剰電力が発生した場合は、電力を電力貯蔵設備に貯蔵すること優先するように制御し、次に水素エネルギー貯蔵設備に水素エネルギーを貯蔵することを優先するように制御し、次にバイオマスを除く再生可能エネルギーからの余剰電力を出力抑制することを優先するように制御し、
バイオマスを除く再生可能エネルギーからの電力不足が発生した場合は、電力貯蔵設備からの放電を優先するように制御し、次に水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを用いて発電することを優先するように制御し、さらに次にバイオマスによる発電を優先するように制御することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、さらに、バイオマスを除く再生可能エネルギーの想定される発電時間パターンから、再生可能エネルギー設備費、水素関連設備費の合計を最小にするように、再生可能エネルギー設備量、水素関連設備量の組み合わせを計算する制御することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の一態様に係るエネルギー供給方法は、さらに、バイオマスを除く再生可能エネルギーの想定される発電時間パターンから、再生可能エネルギー設備費、水素関連設備費、バイオマス関連設備費、バイオマス燃料費の合計を最小にするように、再生可能エネルギー設備量、水素関連設備量、バイオマス関連設備量の組み合わせを計算する制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、再生可能エネルギーを用いたより安定的にエネルギーを供給することができるエネルギー供給システム及びエネルギー供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るエネルギー供給システムの模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るエネルギー供給方法のフローチャートを示す図である。
【
図3】
図3は、東日本の太陽光及び風力の規格化電力の経時変化を示す図である。
【
図4】
図4は、モデルのデータセットを示した図である。
【
図5】
図5は、制御設備の有無を変化させたシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】
図6は、再生可能エネルギーの種類を変化させたシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】
図7は、シミュレーション結果の数値を示した図である。
【
図8】
図8は、再生可能エネルギーの種類を変化させたシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】
図9は、シミュレーション結果の数値を示した図である。
【
図11】
図11は、エネルギー供給が水素エネルギーである場合に、再生可能エネルギーの種類を変化させたシミュレーション結果を示す図である。
【
図12】
図12は、シミュレーション結果の数値を示した図である。
【
図13】
図13は、電力及び水素エネルギーの供給比率とコストのシミュレーション結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。まず、本発明の一実施形態に係るエネルギー供給システム100を説明する。
【0029】
≪エネルギー供給システム100≫
図1は、本発明の実施形態に係るエネルギー供給システム100の模式図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係るエネルギー供給システム100の推定方法は、
再生可能エネルギーを利用して発電をする発電設備11と、
前記発電設備11によって発電される電力を水素エネルギーに変換できる水素エネルギー変換設備12と、
前記発電設備11によって発電される電力を貯蔵できる電力貯蔵設備131と、前記水素エネルギー変換設備12によって変換される水素エネルギーを貯蔵できる水素エネルギー貯蔵設備132と、を有する貯蔵設備13と、
前記発電設備11及び/又は前記貯蔵設備13から電力を供給できる電力供給設備14と、
前記貯蔵設備13から水素エネルギーを供給する水素エネルギー供給設備15と、
前記発電設備11によって発電される電力の内、前記貯蔵設備13に貯蔵されるエネルギーの量を制御する制御設備16と、を備えることを特徴とする。
【0030】
<発電設備11>
発電設備11は、再生可能エネルギーを利用して発電をする。再生可能エネルギーとして、太陽光、風力、水力、自然界に存在する熱、バイオマス及び海洋エネルギーなどが挙げられる。自然界に存在する熱として、地熱、大気中の熱、地中熱、温度差エネルギー、雪氷熱、未利用熱などが挙げられる。海洋エネルギーとして、波力、潮流、海洋温度差などが挙げられる。発電設備11は既知のものを使用することができる。
【0031】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るエネルギー供給システム100において、再生可能エネルギーは、太陽光と風力を含むことが好ましい。太陽光及び風力は、他の再生可能エネルギーと比較して、発電できる場所の制約が相対的に少ない。そのため、エネルギー供給システム100がより安定的にエネルギーを供給することができる。また、複数の再生可能エネルギーを利用して発電することで、一の再生可能エネルギーでの発電量が減少した場合でも、他の再生可能エネルギーで発電量をカバーすることができる。これにより、エネルギー供給システム100がより安定的にエネルギーを供給することができる。
【0032】
再生可能エネルギーはさらに、水力、自然界に存在する熱、バイオマス及び海洋エネルギーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことがより好ましい。発電に利用する再生可能エネルギーの種類を増やすことで、エネルギー供給システム100が安定的にエネルギーを供給することができる。例えば、太陽光及び風力の発電量は天候に依存するが、水力、自然界に存在する熱及びバイオマスの発電量は天候に左右されにくい傾向がある。また、太陽光及び風力は発電できる場所の制約が相対的に少ないので、ある地域での発電量が減少しても、他の地域で発電をすることができる、一方、水力、地熱、海洋エネルギーは発電できる地域が限定されるので、増やせる発電量に限度がある。また、水力、地熱、海洋エネルギーは、発電場所とエネルギー消費場所が離れている場合が多いので、長距離の送電設備を構築する必要がある。多種類の再生可能エネルギーを組み合わせて発電をすることで、安定的に発電をすることができ、広い地域に対して安定的にエネルギーを供給することができる。
【0033】
発電設備11で発電される電力は、直接電力供給に供してもよく、貯蔵設備13にエネルギーとして貯蔵してもよい。電力を貯蔵設備13に貯蔵する場合は、水素エネルギー変換設備12で水素エネルギーに変換してから貯蔵してもよい。
【0034】
<水素エネルギー変換設備12>
水素エネルギー変換設備12は、発電設備11によって発電される電力を水素エネルギーに変換できる。水素エネルギー変換設備12は、水電気分解設備であってもよい。水電気分解設備として、アルカリ水電解法を利用するものと及び固体高分子形(PEM形)水電解法を利用するものが挙げられる。
【0035】
水素エネルギー変換設備12は、電力貯蔵設備131で貯蔵される電力を水素エネルギーに変換してもよい。
【0036】
水素エネルギーは、電力と比較すると貯蔵するのが容易である。また、水素エネルギーは、電力比較して長距離輸送してもエネルギーのロスが少ない。そのため、電力を水素エネルギーに変換できる水素エネルギー変換設備12を有することで、発電設備11によって発電される電力に余剰がある場合又は電力貯蔵設備131の貯蔵量に不足がある場合に、電力を水素エネルギーに変換することができる。これにより、エネルギー供給システム100でのエネルギーロスを減らすことができる。その結果、安定的にエネルギーを供給することができる。また、水素エネルギー自体を最終消費することができるので、最終消費エネルギーとしての水素エネルギーの需要が増加した場合に、水素エネルギーを供給することができる。これにより、更に安定的にエネルギーを供給することができる。
【0037】
<貯蔵設備13>
貯蔵設備13は、発電設備11で発電される電力に余剰がある場合には、発電された電力に一部を貯蔵することができる。また、貯蔵設備13は、発電設備11で発電される電力に不足がある場合には、貯蔵するエネルギーを放出することで、不足するエネルギーを補充することができる。これにより、安定的にエネルギーを供給することができる。
【0038】
貯蔵設備13は、電力貯蔵設備131と、水素エネルギー貯蔵設備132とを有する。貯蔵設備13が、電力貯蔵設備131と、水素エネルギー貯蔵設備132とを有することで、最終エネルギーの消費状況により、貯蔵するエネルギーの形態を柔軟に変えることができる。これにより、安定的にエネルギーを供給することができる。
【0039】
(電力貯蔵設備131)
電力貯蔵設備131は、発電設備11によって発電される電力を貯蔵できる。電力貯蔵設備131は、貯蔵するエネルギーを電力として供給することができる。電力貯蔵設備131は、貯蔵するエネルギーを水素エネルギー変換設備12に供給することができる。電力貯蔵設備131は、バッテリーを有してもよい。
【0040】
(水素エネルギー貯蔵設備132)
水素エネルギー貯蔵設備132は、水素エネルギー変換設備12により変換される水素エネルギーを貯蔵することができる。水素エネルギー貯蔵設備132は、水素エネルギーを圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、及びメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の形態で貯蔵してもよい。
【0041】
再生可能エネルギーは、場所及び時間により利用可能なエネルギー量の変動が大きい。そのため、貯蔵設備13を有することで、利用可能なエネルギー量の変動が生じても、エネルギーの供給量を調整することができる。また、複数種類のエネルギー貯蔵手段を有することで、エネルギー貯蔵場所とエネルギー消費場所との距離が多様である場合でも、供給によるエネルギーロスを減らすことができる。その結果、安定的にエネルギーを供給することができる。
【0042】
<電力供給設備14>
電力供給設備14は、発電設備11及び/又は前記貯蔵設備13から電力を供給できる。電力供給設備14は、例えば送電線を有してもよく、エネルギーを貯蔵したものを運搬する手段を有してもよい。運搬する手段として例えば車、飛行機、電車などの輸送手段が挙げられる。送電線で電力を供給する場合、電力貯蔵設備131から、貯蔵したエネルギーを送電線で電力として供給してもよい。エネルギーを貯蔵したものを運搬することでより供給する場合は、輸送手段によりエネルギーを貯蔵したものをエネルギー消費地まで運搬してもよい。電力供給設備14が、水素エネルギー貯蔵設備132に貯蔵する水素エネルギーを供給する場合、水素エネルギーを水素エネルギー発電設備17で電力に変換してから供給してもよい。電力供給設備14は、常に稼働している必要はなく、例えば、電力の需要が無く、水素エネルギーの需要がある場合は、水素エネルギー供給設備15のみを稼働させて、電力供給設備14の供給の稼働を停止してもよい。
【0043】
<水素エネルギー供給設備15>
水素エネルギー供給設備15は、水素エネルギー貯蔵設備132に貯蔵される水素エネルギーを供給する。水素エネルギーの供給形態として、圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、及びメタノールが挙げられる。水素エネルギー供給設備15は例えば、パイプライン、貯蔵タンクであってもよい。水素エネルギー供給設備15は、車、飛行機、船舶、電車などの輸送手段を有してもよい。水素エネルギー供給設備15は、常に稼働している必要はなく、例えば、水素エネルギーの需要が無く、電力の需要がある場合は、電力供給設備14のみを稼働させて、水素エネルギー供給設備15の供給の稼働を停止してもよい。
【0044】
<制御設備16>
制御設備16は、発電設備11によって発電される電力の内、貯蔵設備13に貯蔵されるエネルギーの量を制御する。制御設備16は、電力の消費量に基づいて貯蔵設備13に貯蔵されるエネルギーの量を制御してもよい。
【0045】
制御設備16は、電力供給設備14で供給される電力に対する水素エネルギー供給設備15で供給される水素エネルギーの比率を制御してもよい。電力供給設備14で供給される電力とは、発電設備11で発電される電力の内、最終的に電力として供給されるエネルギーを言う。水素エネルギー供給設備15で供給される水素エネルギーとは、発電設備11で発電される電力の内、最終的に水素エネルギーとして供給されるエネルギーを言う。
【0046】
制御設備16は、電力供給設備14で供給される電力に対する水素エネルギー供給設備15で供給される水素エネルギーの比率を0.5~2.0に制御すること好ましい。これにより、エネルギー供給システム100で供給する電力のコストを更に低減することができる。
【0047】
発電設備11で発電される電力を用いて制御設備16を稼働させてもよい。制御設備16は、エネルギー供給システム100に含まれるすべての設備の作動を制御してもよい。
【0048】
<水素エネルギー発電設備17>
水素エネルギー発電設備17は、水素エネルギー貯蔵設備132に貯蔵される水素エネルギーを利用して発電する。水素エネルギー発電設備17で発電される電力は、電力供給設備14により電力として供給される。水素エネルギー発電設備17は、燃料電池を有してもよい。
【0049】
電力の供給量に不足がある場合、水素エネルギー発電設備17は、貯蔵している水素エネルギーを電力に変換することで、電力の供給量の不足を補う。これにより、安定的にエネルギーを供給することができる。水素エネルギー発電設備17は、電力の供給に不足が無い場合は、稼働しなくともよい。
【0050】
続いて、本発明の別の実施形態に係るエネルギー供給方法を説明する。
【0051】
≪エネルギー供給方法≫
図2は、本発明の実施形態に係るエネルギー供給方法のフローチャートを示す図である。
図2に示すように、本発明の実施形態に係るエネルギー供給方法は、
再生可能エネルギーを利用して発電設備で発電をする発電工程と、
発電工程で得られる電力を、直接電力供給する比率、電力貯蔵設備に貯蔵する比率及び水素エネルギー変換設備で水素エネルギーに変換する比率を制御設備で制御する比率制御工程と、
水素エネルギー変換設備で変換される水素エネルギーを水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵する水素エネルギー貯蔵工程と、
電力供給設備で、発電設備及び/又は電力貯蔵設備及び/又は水素エネルギー貯蔵設備から電力を供給する電力供給工程と、
水素エネルギー供給設備で、水素エネルギー貯蔵設備から水素エネルギーを供給する水素エネルギー供給工程と、を備えることを特徴とする。
【0052】
<発電工程>
発電工程では、再生可能エネルギーを利用して発電設備で発電をする。再生可能エネルギーとして、太陽光、風力、水力、自然界に存在する熱、バイオマス及び海洋エネルギーなどが挙げられる。自然界に存在する熱として、地熱、大気中の熱、地中熱、温度差エネルギー、雪氷熱、未利用熱などが挙げられる。海洋エネルギーとして、波力、潮流、海洋温度差などが挙げられる。発電設備は既知のものを使用することができる。
【0053】
再生可能エネルギーは、太陽光と風力を含むことが好ましい。再生可能エネルギーは、太陽光及び風力を含むことを特徴とするエネルギー供給方法を提供する。再生可能エネルギーはさらに、水力、自然界に存在する熱、バイオマス及び海洋エネルギーからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことがより好ましい。
【0054】
<比率制御工程>
比率制御工程では、発電工程で得られる電力を、直接電力供給する比率、電力貯蔵設備に貯蔵する比率及び水素エネルギー変換設備で水素エネルギーに変換する比率を制御設備で制御する。比率制御工程では、電力の需要量、水素エネルギーの需要量、貯蔵設備の貯蔵量などの値を使用して比率制御を行ってもよい。
【0055】
制御設備は、電力供給設備で供給される電力に対する水素エネルギー供給設備で供給される水素エネルギーの比率を4.0以下に制御することが好ましい。制御設備は、電力供給設備で供給される電力に対する水素エネルギー供給設備で供給される水素エネルギーの比率を0.5~2.0以下に制御することがさらに好ましい。これにより、エネルギー供給システムで供給する電力のコストを更に低減することができる。電力供給設備で供給される電力とは、発電設備で発電される電力の内、最終的に電力として供給されるエネルギーを言う。水素エネルギー供給設備で供給される水素エネルギーとは、発電設備で発電される電力の内、最終的に水素エネルギーとして供給されるエネルギーを言う。
【0056】
<水素エネルギー貯蔵工程>
水素エネルギー貯蔵工程では、水素エネルギー変換設備で変換される水素エネルギーを水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵する。
【0057】
水素エネルギー貯蔵設備は、水素エネルギーを圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、及びメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の形態で貯蔵する。
【0058】
水素エネルギー変換設備は、発電設備によって発電される電力を水素エネルギーに変換してもよい。水素エネルギー変換設備は、水電気分解設備であってもよい。水電気分解設備として、アルカリ水電解法を利用するものと及び固体高分子形(PEM形)水電解法を利用するものが挙げられる。
【0059】
水素エネルギーは、電力と比較すると貯蔵するのが容易である。また、水素エネルギーは、電力比較して長距離輸送してもエネルギーのロスが少ない。そのため、水素エネルギー変換設備により、電力を水素エネルギーに変換することで、エネルギー供給時のエネルギーロスを減らすことができる。その結果、安定的にエネルギーを供給することができる。また、水素エネルギー自体を最終消費することができるので、最終消費エネルギーとしての水素エネルギーの需要が増加した場合に、水素エネルギーを供給することができる。これにより、更に安定的にエネルギーを供給することができる。
【0060】
<電力供給工程>
電力供給工程では、電力供給設備で、発電設備及び/又は電力貯蔵設備及び/又は水素エネルギー貯蔵設備から電力を供給する。発電設備から電力を供給する場合は、発電設備で発電される電力を電力供給設備で電力消費地へ供給してもよい。電力貯蔵設備から電力を供給する場合は、電力貯蔵設備で貯蔵される電力を電力供給設備で電力消費地へ供給してもよい。水素エネルギー貯蔵設備から電力を供給する場合は、水素エネルギー貯蔵設備で貯蔵される水素エネルギーを水素エネルギー変換設備で電力に変換して、電力供給設備で電力消費地へ供給してもよい。
【0061】
電力供給工程では、発電設備、電力貯蔵設備、水素エネルギー貯蔵設備の少なくとも一か所以上から電力を供給することができるので、電力の需要に応じて供給量を柔軟に変動させることができる。これにより、安定的にエネルギーを供給することができる。
【0062】
<水素エネルギー供給工程>
水素エネルギー供給工程では、水素エネルギー供給設備で、水素エネルギー貯蔵設備から水素エネルギーを供給する。水素エネルギーの需要があるので、水素エネルギーを供給することで、その需要を満たすことができる。
【0063】
水素エネルギーの供給形態として、圧縮水素、液化水素、有機ハイドライド、アンモニア、及びメタノールが挙げられる。水素エネルギー供給設備は例えば、パイプライン、貯蔵タンクであってもよい。水素エネルギー供給設備は、車、飛行機、船舶、電車などの輸送手段を有してもよい。
【0064】
<水素エネルギー発電工程>
水素エネルギー発電工程では、水素エネルギー発電設備で、水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを利用して発電する。また、水素エネルギー発電設備で発電される電力は、電力供給設備で供給されてもよい。水素エネルギー発電設備は、燃料電池を有してもよい。
【0065】
水素エネルギー貯蔵設備に貯蔵される水素エネルギーを利用して発電することにより、不足している電力の供給を補うことができる。これにより、更に安定的にエネルギーを供給することができる。
【0066】
<水素エネルギー変換工程>
水素エネルギー変換工程は、水素エネルギー変換設備で、電力貯蔵設備に貯蔵される電力を水素エネルギーに変換する。これにより、最終的な電力の供給量と水素エネルギーの供給量の比率をより柔軟に調整することができる。これにより、更に安定的にエネルギーを供給することができる。
【0067】
本実施形態において、発電設備がバイオマスを含まないときは、再生可能エネルギーからの直接電力供給を優先するように制御してもよい。また、再生可能エネルギーからの余剰電力が発生した場合は、バッテリーの蓄電を優先するように制御し、次に、水電気分解による水素エネルギー貯蔵を優先するように制御してもよい。つまり、優先順位が、バッテリーの放電、貯蔵水素エネルギーからの水素発電となるように制御する。
【0068】
本実施形態において、再生可能エネルギーからの電力不足が発生した場合はバッテリーの放電を優先し、次に、貯蔵水素エネルギーからの水素発電を優先するように制御してもよい。
【0069】
本実施形態において、発電設備がバイオマスを含むときは、バイオマスを除く再生可能エネルギーからの直接電力供給を優先するように制御してもよい。また、バイオマスを除く再生可能エネルギーからの余剰電力が発生した場合は、バッテリーの蓄電を優先するように制御し、次に、水電気分解による水素エネルギー貯蔵を優先するように制御してもよい。次に、バイオマスを除く再生可能エネルギーからの余剰電力を出力抑制することを優先するように制御してもよい。
【0070】
本実施形態において、発電設備がバイオマスを含むときは、バイオマスを除く再生可能エネルギーからの電力不足が発生した場合は、バッテリーの放電を優先するように制御し、次に、貯蔵水素エネルギーからの水素発電を優先するように制御し、次にバイオマスによる発電を優先するように制御してもよい。つまり、優先順位が、バッテリーの放電、貯蔵水素エネルギーからの水素発電、バイオマスによる発電となるように制御する。
【0071】
また、以上の制御にもとづき、バイオマスを除く再生可能エネルギーの想定される発電時間パターンから、再生可能エネルギー設備費、水素関連設備費の合計を最小にするように、再生可能エネルギー設備量、水素関連設備量の組み合わせを計算する制御をしてもよい。
【0072】
さらに、以上の制御にもとづき、バイオマスを除く再生可能エネルギーの想定される発電時間パターンから、再生可能エネルギー設備費、水素関連設備費、バイオマス関連設備費、バイオマス燃料費の合計を最小にするように、再生可能エネルギー設備量、水素関連設備量、バイオマス関連設備量の組み合わせを計算する制御してもよい。
【実施例0073】
以下、実施例により本発明の効果をさらに具体的に説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性および効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0074】
安定的に電源を供給するシステムをシミュレーションにより探った。
図3は、東日本の太陽光及び風力の規格化電力の経時変化を示す図である。すなわち、太陽光及び風力がそれぞれ最大で発電できる量を1としたときの値である。
図3に示すデータは参考文献(Journal of Electric Power&Energy Section),134(9)(2014)799-810;Japan Meteorological Agency,AMeDAS)に開示のものを使用した。
図3に示すデータを再生可能エネルギーの発電量のデータとして供した。
【0075】
図4は、モデルのデータセットを示した図である。なお、風力は海洋風力を想定した。コストは2010年時点のものを使用した。
【0076】
図5は、制御設備の有無を変化させたシミュレーション結果を示す図である。
図5に係るシミュレーションでは、再生可能エネルギーとして太陽光のみを利用し、貯蓄設備としてバッテリーのみを使用し、エネルギー供給は電力のみで行う場合を想定した。
図5の左側は制御設備により制御をしない場合のコストであり、右側は制御設備により制御をする場合のコストである。
【0077】
図6は、再生可能エネルギーの種類を変化させたシミュレーション結果を示す図である。
図6の左側は太陽光を使用した場合のコストであり、中側は風力を使用した場合のコストであり、右側は太陽光及び風力を使用した場合のコストである。
【0078】
図5の結果から、制御設備がある場合の方が、コストが安くなることが分かった。また、
図6の結果から、太陽光のみ及び風力のみを使用した場合よりも、太陽光と風力を組み合わせた場合の方がコストを安くできることが分かった。つまり、太陽光と風力を組み合わせた場合の方がより安定的に電力を供給するのに適していることが分かった。
【0079】
図7は、シミュレーション結果の数値を示した図である。
【0080】
図8は、再生可能エネルギーの種類を変化させたシミュレーション結果を示す図である。再生可能エネルギーは、太陽光、風力、及び太陽光と風力の組み合わせを想定した。貯蓄設備はバッテリーと水素貯蔵を想定した。エネルギー供給は電力及び水素エネルギーを想定した。ただし、最終的に水素エネルギーの供給量は0である場合を仮定した。
図8に示すように、
図6に示す結果と比較すると、貯蓄設備はバッテリーと水素貯蔵を使用した場合の方がコストを安くできることが分かった。つまり、貯蓄設備としてバッテリーのみを使用するよりも、バッテリーと水素貯蔵の両方を使用する方がコストを安くできることが分かった。
【0081】
図9は、シミュレーション結果の数値を示した図である。
【0082】
図10は、エネルギーのフローを示した図である。
図10は、再生可能エネルギーとして太陽光と風力の組み合わせを使用し、貯蓄設備としてバッテリーと水素貯蔵を使用し、エネルギー供給として電力及び水素エネルギーを想定した場合を示した。
【0083】
図11は、エネルギー供給が水素エネルギーである場合に、再生可能エネルギーの種類を変化させたシミュレーション結果を示す図である。
図11に示すように、
図8に示す結果と比較すると、再生可能エネルギーが風力である場合は、コストがほとんど変わらないが、再生可能エネルギーが太陽光、及び太陽光と風力との組み合わせである場合は、水素エネルギーを供給する方がコストを安くできることが分かった。
【0084】
図12は、シミュレーション結果の数値を示した図である。
【0085】
図13は、電力及び水素エネルギーの供給比率とコストのシミュレーション結果を示した図である。
図13に示すように、電力及び水素エネルギーの供給比率が1になるときに最もコストを安くできることが分かった。つまり、電力及び水素エネルギーの供給比率を1に近づくように制御することでコストを安くできることが分かった。従って、電力及び水素エネルギーの供給比率を1に近づくように制御するシステムを構築することで、より安定的にエネルギーを供給できることが分かった。
【0086】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「有する」や「備える」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0087】
また、明細書に記載の「…部」の用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアとして具現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現されてもよい。
【0088】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
以上のことから、本発明によれば、再生可能エネルギーを用いたより安定的にエネルギーを供給することができるエネルギー供給システム及びエネルギー供給方法を提供することができるので、産業上の利用価値が高い。