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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182426
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】基準電圧源回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/30 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G05F3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096027
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小金 伴弘
【テーマコード(参考)】
5H420
【Fターム(参考)】
5H420NA12
5H420NA18
5H420NA24
5H420NB02
5H420NB12
5H420NC03
5H420NC12
(57)【要約】
【課題】PNPバイポーラトランジスタのベース電流増幅率に関わらず、安定的に基準電圧を出力可能な基準電圧源回路を提供する。
【解決手段】基準電圧源回路は、正規化エミッタ面積比がm:1(mは正の数)に設定され、ベース同士が接続され、コレクタがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタを備える。ベース電流取得部は、第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタのベースに流れるベース電流を取得する。バイアス電流供給部は、第1バイアス電流及び第2バイアス電流の和が、ベース電流になるように、第1バイアス電流及び第2バイアス電流を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正規化エミッタ面積比がm:1(mは正の数)に設定され、ベース同士が接続され、コレクタがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタと、
前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに一端が接続された第3抵抗と、
前記第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間に接続された第1抵抗と、
前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと前記基準電圧出力端子との間に接続された第2抵抗と、
非反転入力端子が前記第1抵抗及び前記第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、反転入力端子が前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続された差動増幅器と、
前記差動増幅器の出力端子と前記基準電圧出力端子との間に接続された第1容量と、
ゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、ソースが電源に接続され、ドレインが前記基準電圧出力端子に接続されたPMOSトランジスタと、
前記第1PNPバイポーラトランジスタ及び前記第2PNPバイポーラトランジスタのベースに流れるベース電流を取得するためのベース電流取得部と、
前記ベース電流取得部で取得された前記ベース電流に対応する第1バイアス電流及び第2バイアス電流を、前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタ、及び、前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタにそれぞれ供給するためのバイアス電流供給部と、
を備え、
前記バイアス電流供給部は、前記第1バイアス電流及び前記第2バイアス電流の和が、前記ベース電流になるように、前記第1バイアス電流及び前記第2バイアス電流を設定する、基準電圧源回路。
【請求項2】
前記ベース電流取得部は、バイアス電源が接続された正入力端子、前記第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタのベースに接続された負入力端子、前記バイアス電流供給部に接続された第1正出力端子、及び、前記負入力端子に接続された第2正出力端子を有する電圧電流変換器として構成される、請求項1に記載の基準電圧源回路。
【請求項3】
前記バイアス電流供給部は、前記ベース電流取得部で取得された前記ベース電流が入力される入力端子、前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに前記第1バイアス電流を出力するための第1バイアス電流出力端子、及び、前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに前記第2バイアス電流を供給するための第2バイアス電流出力端子を有する電流分配器として構成する、請求項1又は2に記載の基準電圧源回路。
【請求項4】
前記バイアス電流供給部は、前記入力端子に入力された前記ベース電流に対応する第1バイアス電流、及び、前記第2バイアス電流を生成するためのカレントミラー回路を含む、請求項3に記載の基準電圧源回路。
【請求項5】
前記バイアス電流供給部では、前記ベース電流取得部で取得された前記ベース電流がカレントフォロア回路を介して入力される、請求項1又は2に記載の基準電圧源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基準電圧源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばリニアレギュレータやDCDCコンバータ等の電源ICに搭載される集積回路で用いられるアナログ回路の一種として、基準電圧を負荷に供給するための基準電圧源回路が知られている(例えば非特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】浅田邦博・永田穣 監訳、P.R.グレイ/P.J.フルスト/S.H.レビス/R.G.メイヤー 共著、「システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術(基礎編)(応用編)」培風館、2004年
【非特許文献2】KAREL E. KUIJK, “A precision reference voltage source,” IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 8, no. 3, pp.222-226, June. 1973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで図5は参考技術に係る基準電圧源回路1´の一例である。基準電圧源回路1´はバンドギャップリファレンス回路を含み、具体的には、正規化エミッタ面積比がm:1(mは正の数)に設定され、コレクタ及びベースがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタQp1p、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pを備える。基準電圧VREFpを出力するための出力端子TOUTpには、第1抵抗R1pの一端が接続される。出力端子TOUTpと第2PNPバイポーラトランジスタQp2pのエミッタとの間には第2抵抗R2pが接続される。第1抵抗R1pの他端と第1PNPバイポーラトランジスタQp1pのエミッタとの間には第3抵抗R3pが接続される。
【0005】
差動増幅回路A1pは、非反転入力端子が第1抵抗R1p及び第3抵抗R3pの間にあるノードに接続され、反転入力端子が第2PNPバイポーラトランジスタQp2pのエミッタに接続される。差動増幅器A1pの出力端子と出力端子TOUTpとの間には第1容量C1pが接続される。また差動増幅器A1pの出力端子にはPMOSトランジスタMp1pのゲートが接続される。PMOSトランジスタMp1pのソースは電源VDDpに接続され、ドレインは出力端子TOUTpに接続される。
【0006】
このような回路構成を有する基準電圧源回路1´において、R1p=R2pである場合、出力端子Toutpから出力される基準電圧VREFp、並びに、第1抵抗R1p及び第2抵抗R2pに流れるバイアス電流IR1p及びIR2pは、次式で表される。
尚、VEBQp1pは第1PNPバイポーラトランジスタQp1pのエミッタ-ベース間電圧であり、qは電荷素量であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、Vは熱電圧である。
【0007】
上記非特許文献1及び2によれば、上記(1)式の第1項VEBQp1pは、温度Tに対して負の傾きの特性を有する。上記(1)式では、熱電圧Vを含む第2項が正の傾きを有する温度特性を有することから、第1項の負の傾きを有する温度特性を打ち消すことで、温度に依存しない基準電圧VREFpを安定的に出力可能な基準電圧源回路1´が得られる。
【0008】
ところで図5の基準電圧源回路1´では、第1抵抗R1p及び第2抵抗R2pに流れるバイアス電流IR1p及びIR2pは、第1PNPバイポーラトランジスタQp1p、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pのエミッタに流れる。そのため、第1PNPバイポーラトランジスタQp1p、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pのコレクタ電流ICQpは、第1PNPバイポーラトランジスタQp1p、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pのベース電流増幅率βQpと飽和電流ISSPを用いて、以下のように表される。
【0009】
ここで第1PNPバイポーラトランジスタQp1p、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2pに使用されるバイポーラトランジスタは、従来、ベース電流増幅率βQpが100以上である素子が主流であった。このようにベース電流増幅率βQpが十分に大きい場合、上記(4)式の右辺のβQp/(1+βQp)は略「1」にみなすことができる。しかしながら、近年、製造方法の変化等に伴って、流通するバイポーラトランジスタのベース電流増幅率βQpが例えば4~5程度と小さくなっている。このようにベース電流増幅率βQpが小さくなると、上記(4)式の右辺のβQp/(1+βQp)を略「1」にみなすことができなくなる(例えばβQp=4の場合には「0.8」となり、約20%の誤差が生じてしまう)。その結果、上記(5)及び(6)式に示すベース-エミッタ間電圧VEBQp1p、VEBQp2pが変化することで、ベース電流増幅率βQpによって、基準電圧源回路1´が出力する基準電圧Vrefpが影響を受けてしまう。
【0010】
またバイポーラトランジスタのベース電流増幅率βQpは製造ロットや個体差によって少なからずバラツキを有する。このようなベース電流増幅率βQpのバラツキの影響もまた、ベース電流増幅率βQpが小さくなると、基準電圧源回路1´から出力される基準電圧VREFpに現れやすくなる。
【0011】
図6図5の基準電圧源回路1´から出力される基準電圧VREFpの温度特性を示す検証結果である。図6では、バラツキの影響によってベース電流増幅率がβQp=2.0、4.0、8.0である場合について、基準電圧VREFpの温度特性を示している。図6に示すように、ベース電流増幅率βQpが変化することで、基準電圧VREFpの温度特性が変化してしまっている。
【0012】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、PNPバイポーラトランジスタのベース電流増幅率に関わらず、安定的に基準電圧を出力可能な基準電圧源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本開示の少なくとも一態様に係る基準電圧源回路は、上記課題を解決するために、
正規化エミッタ面積比がm:1(mは正の数)に設定され、ベース同士が接続され、コレクタがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタ(Qp1)及び第2PNPバイポーラトランジスタ(Qp2)と、
前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに一端が接続された第3抵抗(R)と、
前記第3抵抗の他端と基準電圧出力端子との間に接続された第1抵抗(R)と、
前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタと前記基準電圧出力端子との間に接続された第2抵抗(R)と、
非反転入力端子が前記第1抵抗及び前記第3抵抗の間に設けられたノードに接続され、反転入力端子が前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに接続された差動増幅器(A)と、
前記差動増幅器の出力端子と前記基準電圧出力端子との間に接続された第1容量(C)と、
ゲートが前記差動増幅器の出力端子に接続され、ソースが電源に接続され、ドレインが前記基準電圧出力端子に接続されたPMOSトランジスタ(Mp1)と、
前記第1PNPバイポーラトランジスタ及び前記第2PNPバイポーラトランジスタのベースに流れるベース電流を取得するためのベース電流取得部(2)と、
前記ベース電流取得部で取得された前記ベース電流に対応する第1バイアス電流及び第2バイアス電流を、前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタ、及び、前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタにそれぞれ供給するためのバイアス電流供給部(4)と、
を備え、
前記バイアス電流供給部は、前記第1バイアス電流及び前記第2バイアス電流の和が、前記ベース電流になるように、前記第1バイアス電流及び前記第2バイアス電流を設定する。
【0014】
上記(1)の態様によれば、ベース電流取得部によって、第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタのベース電流が取得される。当該ベース電流は、バイアス電流供給部によって、第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに対して、第1バイアス電流及び第2バイアス電流として供給される。これにより、基準電圧源回路から出力される基準電圧が、第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタのベース電流増幅率の影響を受けることがなくなる。その結果、ベース電流増幅率が比較的小さなPNPバイポーラトランジスタを用いた基準電圧源回路において、安定した基準電圧を出力可能となる。
【0015】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記ベース電流取得部は、バイアス電源が接続された正入力端子(TAip)、前記第1PNPバイポーラトランジスタ及び第2PNPバイポーラトランジスタのベースに接続された負入力端子(TAim)、前記バイアス電流供給部に接続された第1正出力端子(TAout1)、及び、前記負入力端子に接続された第2正出力端子(TAout2)を有する電圧電流変換器として構成される。
【0016】
上記(2)の態様によれば、ベース電流取得部を電圧電流変換器として構成することで、上記基準電圧源回路を好適に実現できる。
【0017】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記バイアス電流供給部は、前記ベース電流取得部で取得された前記ベース電流が入力される入力端子(i1)、前記第1PNPバイポーラトランジスタのエミッタに前記第1バイアス電流を出力するための第1バイアス電流出力端子(o1)、及び、前記第2PNPバイポーラトランジスタのエミッタに前記第2バイアス電流を供給するための第2バイアス電流出力端子(o2)を有する電流分配器として構成する。
【0018】
上記(3)の態様によれば、バイアス電流供給部を電流分配器として構成することで、上記基準電圧源回路を好適に実現できる。
【0019】
(4)他の態様では、上記(3)の態様において、
前記バイアス電流供給部は、前記入力端子に入力された前記ベース電流に対応する第1バイアス電流、及び、前記第2バイアス電流を生成するためのカレントミラー回路(4B)を含む。
【0020】
上記(4)の態様によれば、バイアス電流供給部に入力されたベース電流取得部からのベース電流が、カレントミラー回路によって第1バイアス電流及び第2バイアス電流に分配される。
【0021】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記バイアス電流供給部では、前記ベース電流取得部で取得された前記ベース電流がカレントフォロア回路(4A)を介して入力される。
【0022】
上記(5)の態様によれば、バイアス電流供給部では、ベース電流取得部で取得されたベース電流がカレントフォロア回路を介して入力されることで、バイアス電流供給部において精度よくベース電流を検知できる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、PNPバイポーラトランジスタのベース電流増幅率に関わらず、安定的に基準電圧を出力可能な基準電圧源回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係る基準電圧源回路を示す回路図である。
図2図1のベース電流取得部の回路構成例である。
図3図1のバイアス電流供給部の回路構成例である。
図4図1の基準電圧源回路の出力端子から出力される基準電圧の温度特性を示す検証結果である。
図5】参考技術に係る基準電圧源回路の一例である。
図6図5の基準電圧源回路から出力される基準電圧の温度特性を示す検証結果である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0026】
図1は一実施形態に係る基準電圧源回路1を示す回路図である。基準電圧源回路1はバンドギャップリファレンス電圧源を含み、具体的には、正規化エミッタ面積比がm:1(mは正の数)に設定され、ベース同士が接続され、コレクタがそれぞれ接地された第1PNPバイポーラトランジスタQp1、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2を備える。基準電圧VREFを出力するための出力端子TOUTには、第1抵抗Rの一端が接続される。出力端子TOUTと第2PNPバイポーラトランジスタQp2のエミッタとの間には第2抵抗Rが接続される。第1抵抗Rの他端と第1PNPバイポーラトランジスタQp1のエミッタとの間には第3抵抗Rが接続される。
【0027】
差動増幅回路Aは、非反転入力端子が第1抵抗R及び第3抵抗Rの間にあるノードに接続され、反転入力端子が第2PNPバイポーラトランジスタQp2のエミッタに接続される。差動増幅器Aの出力端子と出力端子TOUTとの間には第1容量Cが接続される。また差動増幅器Aの出力端子にはPMOSトランジスタMp1のゲートが接続される。PMOSトランジスタMp1のソースは電源VDDに接続され、ドレインは出力端子TOUTに接続される。
【0028】
基準電圧源回路1は、ベース電流取得部2と、バイアス電流供給部4をさらに備える。
【0029】
ベース電流取得部2は、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2のベース電流を取得するための構成である。本実施形態では、ベース電流取得部2は、正入力端子TAip、負入力端子TAim、第1正出力端子TAout1、及び、第2正出力端子TAout2を備えた電圧電流変換器として構成される。この電圧電流変換器は、第1正出力端子TAout1及び第2正出力端子TAout2の出力電流が等しくなるように構成される。
【0030】
具体的には、正入力端子TAipには、バイアス電圧VBIAS1を出力可能なバイアス電源が接続される。負入力端子TAimは、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2のベースに接続される。第1正出力端子TAout1は、バイアス電流供給部4の入力端子i1に接続される。第2正出力端子TAout2は、負入力端子TAimに接続されることで負帰還を構成する。このような構成を有するベース電流取得部2では、第2正出力端子TAout2は、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2のベースに接続されることから、第1正出力端子TAout1の出力電流は、2つのPNPバイポーラトランジスタのベース電流を加算した2Iとなる。
【0031】
ここで、第1PNPバイポーラトランジスタQp1の入力抵抗をrπ1、第2PNPバイポーラトランジスタQp2の入力抵抗をrπ2、電圧電流変換器として構成されたベース電流取得部2の電圧電流増幅率をGm1とすると、第1PNPバイポーラトランジスタQp1のベース電位VBASEは、以下のように、バイアス電圧VBIAS1と略等しくなる。
このとき第1正出力端子TAout1の出力電流は、第2正出力端子TAout2の出力電流2Iに等しくなる。
【0032】
ここで図2図1のベース電流取得部2の回路構成例である。この回路構成例では、ベース電流取得部2は、差動増幅回路6を含む。差動増幅回路6は、第1電流源ITA1、第1PMOSトランジスタMpTA1、第2PMOSトランジスタMpTA2、第1NMOSトランジスタMnTA1を備えて構成される。第1PMOSトランジスタMpTA1及び第2PMOSトランジスタMpTA2のゲートには、それぞれ正入力端子TAip及び負入力端子TAimが接続される。第1PMOSトランジスタMpTA1及び第2PMOSトランジスタMpTA2のソースには第1電流源ITA1が接続される。第1PMOSトランジスタMpTA1のドレインには、第1NMOSトランジスタMnTA1のドレイン及びゲートが接続される。
【0033】
第1NMOSトランジスタMnTA1のゲートは、第2NMOSトランジスタMnTA2、及び、第3NMOSトランジスタMnTA3のゲートに接続される。第2NMOSトランジスタMnTA2、及び、第3NMOSトランジスタMnTA3のドレインは、それぞれ第2電流源ITA2及び第3電流源ITA3に接続され、第1NMOSトランジスタMnTA1、第2NMOSトランジスタMnTA2、及び、第3NMOSトランジスタMnTA3のソースは、それぞれ接地される。
【0034】
差動増幅回路6では、第1PMOSトランジスタMpTA1、第2PMOSトランジスタMpTA2のゲートにそれぞれ入力される電圧の差分に対応する電流が、第1NMOSトランジスタMnTA1に流れる。本実施形態では、図1に示すように、第1PMOSトランジスタMpTA1のゲートには正入力端子TAipからバイアス電圧VBIAS1が入力されるとともに、第2PMOSトランジスタMpTA2のゲートには負入力端子TAimから第1PNPバイポーラトランジスタQp1のベース電位VBASEが入力されるため、これらの電圧の差分VBIAS1に対応する電流が、第1NMOSトランジスタMnTA1に流れる。
【0035】
第1NMOSトランジスタMnTA1では、当該電流に等しくなるようにゲート電圧が変化する。第1NMOSトランジスタMnTA1のゲートは、第2NMOSトランジスタMnTA2、及び、第3NMOSトランジスタMnTA3のゲートにそれぞれ接続されている。そのため、第2電流源ITA2及び第3電流源ITA3の電流値が等しく(ITA2=ITA3)、且つ、第2NMOSトランジスタMnTA2及び第3NMOSトランジスタMnTA3の形状比(W/L)を等しくすると、第3NMOSトランジスタMnTA3に接続された第2正出力端子TAout2にベース電流2Iが流れると、第2NMOSトランジスタMnTA2に接続された第1正出力端子TAout1の出力もまた電流2Iとなる。
【0036】
続いて図1に戻って、バイアス電流供給部4は、ベース電流取得部2で取得されたベース電流2Iに対応する第1バイアス電流及び第2バイアス電流を、第1PNPバイポーラトランジスタQp1のエミッタ、及び、第2PNPバイポーラトランジスタQp2のエミッタにそれぞれ供給するための構成である。本実施形態では、バイアス電流供給部4は、入力端子i1、第1バイアス電流出力端子о1、及び、第2バイアス電流出力端子о2を備える電流分配機として構成される。この電流分配器は、入力端子i1に入力された電流を、第1バイアス電流出力端子о1から出力される第1バイアス電流、及び、第2バイアス電流出力端子о2から出力される第2バイアス電流に分配するように構成される。本実施形態では、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2が同仕様の素子であることから、入力端子i1に入力された電流2Iは均等に分配されることで、第1バイアス電流及び第2バイアス電流として、それぞれ電流Iが流れる。
【0037】
ここで図3図1のバイアス電流供給部4の回路構成例である。この回路構成例では、バイアス電流供給部4は、カレントフォロア回路4Aと、カレントミラー回路4Bとを含む。カレントフォロア回路4Aは、入力端子i1に接続されたNMOSトランジスタMnCD1と差動増幅器Aとを備える。差動増幅器Aの反転入力端子には入力端子i1が接続され、非反転入力端子にはバイアス電圧VBIAS2を出力可能なバイアス電源が接続され、出力端子にはNMOSトランジスタMnCD1のゲートが接続される。このようにバイアス電流供給部4は、カレントミラー回路4Bの前段にカレントフォロア回路4Aを有する。これにより、入力端子i1において、ベース電流取得部2で取得されたベース電流2Iを精度よく検知することができる。また、非反転入力端子に供給するバイアス電圧VBIAS2をベース電流取得部2の正入力端子TAipに供給するバイアス電圧VBIAS1と等しい電圧に設定することで、ベース電流取得部2で取得されたベース電流2Iをさらに精度よく検知することができる。
【0038】
カレントミラー回路4Bには、ベース電流取得部2からの電流2Iが、カレントフォロア回路4Aを介して入力される。カレントミラー回路4Bは、PMOSトランジスタMpCD1~MpCD6を含み、カレントミラー回路4Bに入力されたベース電流2I、第1バイアス電流出力端子о1から出力される第1バイアス電流I、第2バイアス電流出力端子о2から出力される第2バイアス電流Iの比が、2:1:1になるように構成される。
【0039】
バイアス電流供給部4から第1バイアス電流及び第2バイアス電流が供給される第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2では、それぞれ、エミッタ電流I、ベース電流I、コレクタ電流Iの間には以下の関係が成立する。
そして上記(8)式及び(9)式から、以下の関係が成立する。
【0040】
このように得られた上記(10)式を上記(4)式と比較すると、ベース電流増幅率βQpが含まれる要素(βQp/(1+βQp))がなくなっている。これは、本実施形態の基準電圧源回路1が上記構成を有することにより、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2のベース電流増幅率βの影響が無くなったことを意味する。
【0041】
図4図1の基準電圧源回路1の出力端子TOUTから出力される基準電圧VREFの温度特性を示す検証結果である。図4では、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2のベース電流増幅率がβ=2.0、4.0、8.0である場合について、基準電圧Vrefの温度特性を示している。図4に示すように、本実施形態では、ベース電流増幅率βが変化しても基準電圧Vrefの温度特性が変化せず、安定していることが示されている。
【0042】
以上説明したように上記実施形態によれば、ベース電流取得部2によって、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2のベース電流が取得される。当該ベース電流は、バイアス電流供給部4によって、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2のエミッタに対して、第1バイアス電流及び第2バイアス電流として供給される。これにより、基準電圧源回路1から出力される基準電圧VREFが、第1PNPバイポーラトランジスタQp1及び第2PNPバイポーラトランジスタQp2のベース電流増幅率βの影響を受けることがなくなる。その結果、ベース電流増幅率βが比較的小さなPNPバイポーラトランジスタを用いた基準電圧源回路1において、安定した基準電圧を出力可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 基準電圧源回路
2 ベース電流取得部
4 バイアス電流供給部
4A カレントフォロア回路
4B カレントミラー回路
6 差動増幅回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6