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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182448
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】一酸化炭素の酸化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/42 20060101AFI20231219BHJP
   H01M 8/0668 20160101ALN20231219BHJP
   F01N 3/08 20060101ALN20231219BHJP
   B01D 53/86 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B01J23/42 M
H01M8/0668 ZAB
F01N3/08 C
B01D53/86 245
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096062
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100186912
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 淳浩
(72)【発明者】
【氏名】由井 悠基
(72)【発明者】
【氏名】高鍋 和広
(72)【発明者】
【氏名】戚 興宇
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
5H127
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091GA18
3G091GB05W
3G091GB06W
3G091GB07W
4D148AA13
4D148AB01
4D148AC06
4D148BA05X
4D148BA30X
4D148BA31X
4D148BA33X
4D148BB03
4D148CA07
4D148CC41
4D148DA03
4D148DA13
4D148DA20
4D148EA10
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC32
4G169CC40
4G169DA06
5H127BA36
(57)【要約】
【課題】本開示は、423K以下の温度、特に室温で、一酸化炭素を有利に酸化することができる、一酸化炭素の酸化方法を提供する。
【解決手段】本開示の一酸化炭素酸化方法は、白金を有する電極触媒に可逆水素電極基準で0.60V以上0.80V以下、好ましくは0.65V以上0.70V以下の電位を印加しつつ、前記電極触媒に一酸化炭素を接触させる。これにより、423K以下の温度、特に室温で、一酸化炭素を有利に酸化することが可能な一酸化炭素の酸化方法を提供することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金を含有する電極触媒に可逆水素電極基準で0.60V以上0.80V以下の電位を印加しつつ、前記電極触媒に一酸化炭素を接触させる、一酸化炭素の酸化方法。
【請求項2】
作用極及び参照極並びに対極を電解質溶液に浸漬し、
前記電解質溶液を、前記作用極及び前記参照極を浸漬している側と、前記対極を浸漬している側とをセパレータで分離し、
前記作用極が前記電極触媒を有し、かつ、
前記作用極に前記電位を印加しつつ、前記作用極及び前記参照極を浸漬している側の前記電解質溶液に、一酸化炭素及び酸素を導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照極がHg/HgClを含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対極がグラファイトを含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記電解質溶液がHClOを含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記セパレータがナフィオンを含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記参照極、前記対極、前記電解質溶液、及び前記セパレータが、それぞれ、Hg/HgCl、グラファイト、HClO、及びナフィオンを含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記電極触媒が、白金を担持しているカーボンを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
273K以上423K以下の温度で一酸化炭素を酸化する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記電位が、0.65V以上0.70V以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一酸化炭素の酸化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化炭素を酸化する触媒は、例えば、排ガス浄化装置及び/又は燃料電池等で用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、白金原子を含有する白金粒子、並びにコバルト、マンガン、 ニッケル、銅及び鉄からなる群から選択される遷移金属原子を含有する遷移金属粒子が第1の無機担体に担持されてなる白金含有触媒粉末と、コバルト、マンガン、ニッケル、及び銅からなる群から選択される助触媒原子を含有する助触媒粒子が第2の無機担体に担持されてなり、白金原子を実質的に含有しない助触媒粉末と、を含む、一酸化炭素選択酸化触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-181483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の段落[0190]に開示されているように、特許文献1の触媒では、反応温度を433K(160℃)程度に維持する必要がある。そのため、423K(150℃)以下の温度、特に室温での一酸化炭素の酸化を有利に達成可能な方法が望まれていた。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本開示は、423K以下の温度、特に室温で、一酸化炭素を有利に酸化することができる、一酸化炭素の酸化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ね、本開示の希土類磁石の一酸化炭素の酸化方法を完成させた。本開示の一酸化炭素の酸化方法は、次の態様を含む。
〈1〉白金を含有する電極触媒に可逆水素電極基準で0.60V以上0.80V以下の電位を印加しつつ、前記電極触媒に一酸化炭素を接触させる、一酸化炭素の酸化方法。
〈2〉作用極及び参照極並びに対極を電解質溶液に浸漬し、
前記電解質溶液を、前記作用極及び前記参照極を浸漬している側と、前記対極を浸漬している側とをセパレータで分離し、
前記作用極が前記電極触媒を有し、かつ、
前記作用極に前記電位を印加しつつ、前記作用極及び前記参照極を浸漬している側の前記電解質溶液に、一酸化炭素及び酸素を導入する、〈1〉項に記載の方法。
〈3〉前記参照極がHg/HgClを含有する、〈2〉項に記載の方法。
〈4〉前記対極がグラファイトを含有する、〈2〉又は〈3〉項に記載の方法。
〈5〉前記電解質溶液がHClOを含有する、〈2〉~〈4〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈6〉前記セパレータがナフィオンを含有する、〈2〉~〈5〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈7〉前記参照極、前記対極、前記電解質溶液、及び前記セパレータが、それぞれ、Hg/HgCl、グラファイト、HClO、及びナフィオンを含有する、〈2〉項に記載の方法。
〈8〉前記電極触媒が、白金を担持しているカーボンを含む、〈1〉~〈7〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈9〉273K以上423K以下の温度で一酸化炭素を酸化する、〈1〉~〈8〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈10〉前記電位が、0.65V以上0.70V以下である、〈1〉~〈9〉項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、白金を有する電極触媒に所定の電位を印加することによって、423K以下の温度、特に室温で、一酸化炭素を有利に酸化することができる、一酸化炭素の酸化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、白金を含有する電極触媒に所定範囲の電位を印加するためのセルの一例を模式的に示す説明図である。
図2図2は、実施例1-1~1-5及び比較例1-1~1-5について、可逆水素電極に対する電位と二酸化炭素(CO)の生成速度の関係を示すグラフである。
図3図3は、比較例2-1~2-7について、可逆水素電極に対する電位と二酸化炭素(CO)の生成速度の関係を示すグラフである。
図4図4は、比較例3-1~3-8について、可逆水素電極に対する電位と二酸化炭素(CO)の生成速度の関係を示すグラフである。
図5図5は、比較例4-1~4-8について、可逆水素電極に対する電位と二酸化炭素(CO)の生成速度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一酸化炭素の酸化方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本開示の一酸化炭素の酸化方法を限定するものではない。
【0011】
理論に拘束されないが、本開示の一酸化炭素の酸化方法によって、423K以下の温度、特に室温で、一酸化炭素を有利に酸化することができる理由に関し、本発明者らが得た知見について説明する。
【0012】
金属触媒に電位を印加すると、触媒活性が上昇する。しかし、金属触媒に電位を印加しても、熱触媒としての活性が上昇しないことがある。これは、423K以下の温度、特に室温(295K)での一酸化炭素の酸化反応においては、金属触媒の表面に強く化学吸着した一酸化炭素(CO*)が存在し、それが金属触媒の表面の広い範囲にわたる場合があり、この化学吸着した一酸化炭素(CO*)の存在が、酸素(O)の金属触媒の表面サイトへのアクセスを阻害するためである。
【0013】
そこで、本開示の一酸化炭素の酸化方法では、電気化学的な手法を用いて、金属触媒に印加する電位を、所定範囲に精密に制御して、上述の化学吸着した一酸化炭素(CO*)の存在を抑制する。これによって、酸素(O)の金属触媒の表面サイトへのアクセス可能な面積が増加して、熱触媒としての活性が上昇する。
【0014】
また、上述の化学吸着した一酸化炭素(CO*)の存在を抑制する作用及び効果は、金属触媒が白金(Pt)触媒であるときに顕著に認められる。一酸化炭素の酸化に関し、周知な金属触媒には、白金(Pt)のほかに、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、及びロジウム(Rh)等が挙げられる。しかし、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、及びロジウム(Rh)等には、化学吸着した一酸化炭素(CO*)以外に、一酸化炭素の酸化を阻害する要因があるものと考えられる。その要因については、後述する。
【0015】
これらのことから、金属触媒として白金触媒を選択し、白金を有する電極触媒に所定の電位を印加することによって、423K以下の温度、特に室温でも、一酸化炭素を酸化して二酸化炭素を生成する速度を飛躍的に向上することができる。
【0016】
これまでに説明した知見等によって完成された、本開示の一酸化炭素の酸化方法の構成要件を、次に説明する。
【0017】
《一酸化炭素の酸化方法》
本開示の一酸化炭素の酸化方法は、白金を有する電極触媒に可逆水素電極基準で0.60V以上0.80V以下の電位を印加しつつ、電極触媒に一酸化炭素を接触させる。以下、電極触媒及び印加電位について説明する。
【0018】
〈電極触媒〉
本開示の一酸化炭素の酸化方法は、白金を有する電極触媒を用いる。電極触媒が白金含有しており、電極触媒に所定範囲の電位を印加することができれば、電極触媒の態様に特に制限はない。
【0019】
電極触媒としては、例えば、白金を担持している無機担体等を、電極導体の表面に適用したもの等が挙げられる。
【0020】
無機担体としては、電位を印加できるように導電性が確保されていれば特に制限はなく、典型的にはカーボンである。白金を担持しているカーボンの場合、白金の割合は、触媒能力と導電性を考慮して、適宜決定することができる。例えば、白金の割合は、白金を担持しているカーボンに対して、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってよい。
【0021】
白金を担持している無機担体等を適用する電極導体としては、導電性が確保されていれば特に制限はなく、例えば、カーボンペーパー等が挙げられる。
【0022】
電極触媒の生成方法に特に制限はなく、ここでは、電極触媒が白金を担持しているカーボンを、カーボンペーパーに適用した場合について例示するが、これに限られない。白金を担持しているカーボンを、エタノールと純水の混合溶液に分散させて、触媒インクを得る。この触媒インクをカーボンペーパーの表面に塗布し、それを乾燥させて電極触媒を得る。
【0023】
電極触媒表面の白金担持量は、触媒能力と導電性を考慮して、適宜決定することができる。電極触媒表面の白金担持量は、例えば、0.10mg/cm以上、0.20mg/cm以上、0.30mg/cm以上、0.40mg/cm以上、0.50mg/cm以上、0.60mg/cm以上、又は0.70mg/cm以上であってよく、3.00mg/cm以下、2.50mg/cm以下、2.00mg/cm以下、1.50mg/cm以下、1.00mg/cm以下、0.90mg/cm以下、又は0.80mg/cm以下であってよい。
【0024】
〈印加電位〉
本開示の一酸化炭素の酸化方法では、上述の電極触媒に可逆水素電極基準で0.60V以上0.80V以下の電位を印加しつつ、上述の電極触媒に一酸化炭素を接触する。可逆水素電極(RHE:Reversible Hydrogen Electrode、RHE)とは、測定対象の電極、すなわち、上述の電極触媒が浸漬されている溶液のpHと同じpHの電解質溶液を用いた水素電極を意味する。
【0025】
上述の電極触媒に印加する電位が、可逆水素電極基準で、0.60V以上0.80V以下であれば、上述したように、電極触媒表面において、化学吸着した一酸化炭素(CO*)の存在を抑制することができる。この観点から、上述の電位は、0.61V以上、0.62V以上、0.63V以上、0.64V以上、又は0.65V以上、かつ、0.79V以下、0.78V以下、0.77V以下、0.76V以下、0.75V以下、0.74V以下、0.73V以下、0.72V以下、0.71V以下、又は0.70V以下がより好ましく、最も好ましくは0.65Vである。
【0026】
本開示の一酸化炭素の酸化方法は、273K以上423K以下の温度で一酸化炭素を酸化することが好ましい。これにより、上述した電極触媒表面の化学吸着した一酸化炭素(CO*)の存在を有利に抑制することができる。この観点からは、一酸化炭素の酸化温度は、278K以上、283K以上、又は288K以上、かつ、423K以下、413K以下、403K以下、393K以下、383K以下、373K以下、363K以下、353K以下、343K以下、333K以下、323K以下、313K以下、303K以下、又は298K以下がより好ましく、278K以上、283K以上、又は288K以上、かつ、323K以下、313K以下、303K以下、又は298K以下が特に好ましい。
【0027】
白金を含有する電極触媒に、可逆水素電極基準で、上述した範囲の電位を印加することができれば、電位の印加方法に特に制限はない。電位の印加方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。作用極、参照極、及び対極を電解質溶液に浸漬する。このとき、作用極は上述の電極触媒を有する。そして、作用極に電位を印加しつつ、電解質溶液に一酸化炭素(CO)と酸素(O)を導入すると、一酸化炭素が酸化される。電解質溶液を、作用極及び参照極を浸漬している側と、対極を浸漬している側をセパレータで分離して、作用極及び参照極を浸漬している側に一酸化炭素(CO)と酸素(O)を導入することが好ましい。
【0028】
図1は、白金を含有する電極触媒に所定範囲の電位を印加するためのセルの一例を模式的に示す説明図である。図1はセルの一例であり、これに限られない。
【0029】
図1に示したセル100は、第一容器10と第二容器20を備えている。第一容器10と第二容器20は連結部30で連結されている。第一容器10、第二容器20、及び連結部30の内部は、電解質溶液40で満たされている。連結部30の内部にはセパレータ35が設置されている。
【0030】
第一容器10には、作用極50及び参照極60それぞれが、それらの一部が電解質溶液40に浸漬するように配置されている。また、第一容器10には、ガス導入管12及びガス排出管14が設置されている。ガス導入管12については、その一部が電解質溶液40に浸漬するように、第一容器10に設置されている。ガス排出管14については、それが電解質溶液40に浸漬しないよう、第一容器10の上部に設置されている。ガス排出管14には、任意で、ガス分析装置80が接続されていてもよい。ガス分析装置80としては、二酸化炭素量が測定できるものであればよく、ガス分析装置80としては、例えば、INFICON社製マイクロCGフュージョン(登録商標)が挙げられる。
【0031】
第二容器20には、対極70が、その一部が電解質溶液40に浸漬するように設置されている。
【0032】
このようなセル100を用いて、作用極50に電位を印加しつつ、第一容器10のガス導入管12を通じて、第一容器10内の電解質溶液40に一酸化炭素(CO)と酸素(O)の混合ガス90を導入すると、混合ガス90中の一酸化炭素が酸化され、二酸化炭素92が発生する。二酸化炭素92は、電解質溶液40から排出され、第一容器10の上部に配置されたガス排出管14を通じて回収される。
【0033】
参照極60は、作用極の可逆水素電極に対する電位を測定できればよく、参照極60が含有する材料としては、例えば、Hg/HgCl、Ag/AgCl、及び/又は可逆水素等が挙げられ、Hg/HgClが特にこのましい。
【0034】
対極70は、導電性があればよいは、抵抗は小さい方が好ましく、対極70が含有する材料としては、例えば、グラファイト等が挙げられる。特に、対極70としては、グラファイトロッドが挙げられる。
【0035】
電解質溶液40は、電解質溶液40中に一酸化炭素(CO)を導入し易く、かつ二酸化炭素(CO)を排出し易いことが好ましく、電解質溶液が40含有する材料としては、例えば、HClO、HSO、HCl、及び/又はHNO等が挙げられ、HClOが特に好ましい。
【0036】
セパレータ35としては、周知の材料を用いることができ、セパレータ35が含有する材料としては、例えば、ナフィオン、ガラスフィルター、セレミオン、及び/又はジルフォン等が挙げられ、ナフィオンが特に好ましい。セパレータ35としては、典型的には、ナフィオンメンブレンが挙げられる。
【0037】
これまで説明してきたようにすることで、423K以下の温度、特に室温で、一酸化炭素を有利に酸化することができる、一酸化炭素の酸化方法を提供することができるが、これに限られず、特許請求の範囲に記載された範囲内で種々の変形を加えることができる。
【実施例0038】
以下、本開示の一酸化炭素の酸化方法を実施例及び比較例により、さらに具体的に説明する。なお、本開示の一酸化炭素の酸化方法は、以下の実施例で用いた条件に限定されない。
【0039】
〈実施例1-1~1-5及び比較例1-1~1-5〉
37.5質量%の白金担持カーボン(田中貴金属工業株式会社製、TEC10E40E)を、エタノールと純水の混合溶液に分散させて、触媒インクを得た。混合溶液の混合比は、体積比で、エタノール:純水=80:20であった。触媒インクは、白金担持カーボンが10mg/mlの濃度になるように調整した。この触媒インクを、カーボンペーパー(東レ株式会社製、CeTechW1S1009)上に塗布し、それを60℃で15時間にわたり乾燥させて、電極触媒を得た。触媒の担持量は0.75mg/cmであった。
【0040】
図1のセル100を用いて、電極触媒を評価した。作用極50として、上述のとおり準備した電極触媒を用いた。また、参照極60としてHg/HgClを用い、対極70としてグラファイトロッドを用い、セパレータ35としてナフィオンを用い、電解質溶液40として0.1MのHClOを用い、そして、ガス分析装置80としてINFICON社製マイクロCGフュージョン(登録商標)を用いた。
【0041】
ポテンシオスタット(BioLogic社製VMP3)を用いて、作用極50に電位を印加しつつ、295Kの温度で、25kPaの一酸化炭素(CO)と10kPaの酸素(O)の混合ガス90を、20ml/分の速度で、ガス導入管12を介して導入した。そして、酸化された二酸化炭素(CO)の生成速度を、ガス排出管14を介してガス分析装置80で測定した。そして、電流に対する二酸化炭素の生成効率を、次の(1)式を用いて算出されるファラデー効果FEで評価した。rCO2は閉回路での変換速度、Iは電流値、rは開回路での変換速度、そして、Fはファラデー定数である。
FE(%)={[rCO2-r]/(I/2F)}×100% ・・・(1)
【0042】
印加した電位は標準電極電位に変換しており、可逆水素電極基準で、比較例1-2が0.5V、比較例1-3が0.55V、実施例1-1が0.60V、実施例1-2が0.65V、実施例1-3が0.70V、実施例1-4が0.75V、実施例1-5が0.80V、比較例1-4が0.85V、しして、比較例1-5が0.90Vであった。比較例1-1は電位を印加しなかった(OCP:Open-Circuit Potential)。
【0043】
〈比較例2-1~2-7〉
40質量%のイリジウム担持カーボン(Fuel Cell Store社製)を用いて、実施例1-1と同様に電極触媒を準備した。
【0044】
図1のセル100を用いて、25kPaの一酸化炭素(CO)と70kPaの酸素(O)の混合ガス90を、20ml/分の速度で、ガス導入管12を介して導入したこと、及び印加した電位を次のようにしたこと以外、実施例1-1と同様に、電極触媒を評価した。印加した電位は、可逆水素電極基準で、比較例2-2が0.65V、比較例2-3が0.70V、比較例2-4が0.75V、比較例2-5が0.80V、比較例2-6が0.85V、そして、比較例2-7が0.90Vであった。比較例2-1は電位を印加しなかった(OCP:Open-Circuit Potential)。
【0045】
〈比較例3-1~3-8〉
20質量%のロジウム担持カーボン(Fuel Cell Store社製)を用いて、実施例1-1と同様に電極触媒を準備した。
【0046】
図1のセル100を用いて、25kPaの一酸化炭素(CO)と15kPaの酸素(O)の混合ガス90を、20ml/分の速度で、ガス導入管12を介して導入したこと、及び印加した電位を次のようにしたこと以外、実施例1-1と同様に、電極触媒を評価した。印加した電位は、可逆水素電極基準で、比較例3-2が0.55V、比較例3-3が0.60V、比較例3-4が0.65V、比較例3-5が0.70V、比較例3-6が0.75V、比較例3-7が0.80V、そして、比較例3-8が0.85Vであった。比較例3-1は電位を印加しなかった(OCP:Open-Circuit Potential)。
【0047】
〈比較例4-1~4-8〉
40質量%のパラジウム担持カーボン(Fuel Cell Store社製)を用いて、実施例1-1と同様に電極触媒を準備した。
【0048】
図1のセル100を用いて、10kPaの一酸化炭素(CO)と90kPaの酸素(O)の混合ガス90を、20ml/分の速度で、ガス導入管12を介して導入したこと、及び印加した電位を次のようにしたこと以外、実施例1-1と同様に、電極触媒を評価した。印加した電位は、可逆水素電極基準で、比較例4-2が0.70V、比較例4-3が0.75V、比較例4-4が0.80V、比較例4-5が0.85V、比較例4-6が0.90V、比較例4-7が0.95V、そして、比較例4-8が1.0Vであった。比較例4-1は電位を印加しなかった(OCP:Open-Circuit Potential)。
【0049】
〈評価結果〉
結果を図2~5に示す。図2は、実施例1-1~1-5及び比較例1-1~1-5について、可逆水素電極に対する電位と二酸化炭素(CO)の生成速度の関係を示すグラフである。図3は、比較例2-1~2-7について、可逆水素電極に対する電位と二酸化炭素(CO)の生成速度の関係を示すグラフである。図4は、比較例3-1~3-8について、可逆水素電極に対する電位と二酸化炭素(CO)の生成速度の関係を示すグラフである。図5は、比較例4-1~4-8について、可逆水素電極に対する電位と二酸化炭素(CO)の生成速度の関係を示すグラフである。
【0050】
白金担持カーボンを用いて、0.6~0.8Vの電位を印加した、実施例1-1~1-5では、熱触媒の活性が、電位を印加していない比較例1-1に比べて、5倍程度の高活性であった。これは、室温(295K)での一酸化炭素(CO)の酸化反応であっても、所定範囲の電位の印加によって、電極触媒の表面に化学吸着した一酸化炭素(CO*)が存在することを抑制できたためである。このように、実施例1-1~1-5では、電気化学的な手法を用いることで、電位を精密に制御し、二酸化炭素(CO)の生成速度が飛躍的に向上することを確認できた。
【0051】
一方、その他の電位を印加した比較例1-2~1-5では、電流が流れることによる触媒活性は上昇しているものの、熱触媒としての活性は、それほど上昇しなかった。これは、比較例1-2~1-5においても電位を印加しているものの、化学吸着した一酸化炭素(CO*)が存在し、酸素(O)が反応できる表面が少ないために熱触媒としての活性が低いと考えられる。このことから、電位を精密に制御することが必要なことを理解できる。
【0052】
イリジウム担持カーボンを用いた電極触媒(比較例2-1~2-7)及びロジウム担持カーボンを用いた電極触媒(比較例3-1~3-8)においても、電位印加の効果はみられるものの、白金担持カーボンを用いた電極触媒ほど高活性化しなかった。これは、化学吸着した一酸化炭素(CO*)による律速以外の阻害要因があると考えられる。具体的には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、及びロジウム(Rh)の、O*結合エネルギー、OH*結合エネルギー、及び酸化還元活性(ORR:Oxygen Reduction Reaction活性)において、白金(Pt)>パラジウム(Pd)>イリジウム(Ir)>ロジウム(Rh)の順序を示すことが理論研究で報告されており、これは、白金(Pt)が最も酸素活性化能力が高く、実施例及び比較例で示す内容と一致している。
【0053】
パラジウム担持カーボンPd/C(比較例4-1~4-8)は、化学吸着した一酸化炭素(CO*)が強いことが知られており、電位の印加では化学吸着した一酸化炭素(CO*)の被覆を剥がすことができなかったため、活性が低いと考えられる。
【0054】
以上の結果から、本開示の一酸化炭素の酸化方法の効果を確認できた。
【符号の説明】
【0055】
10 第一容器
12 ガス導入管
14 ガス排出管
20 第二容器
30 連結部
35 セパレータ
40 電解質溶液
50 作用極
60 参照極
70 対極
80 ガス分析装置
90 一酸化炭素(CO)と酸素(O)の混合ガス
92 二酸化炭素
100 セル
図1
図2
図3
図4
図5