(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182572
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】がんの診断及び治療方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20231219BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20231219BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20231219BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20231219BHJP
A61K 45/06 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/4523 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/517 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/519 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/5377 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/553 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/53 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/4375 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/4985 20060101ALN20231219BHJP
A61K 31/44 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12N15/113 130Z
A61P35/00
A61K45/00
A61K45/06
A61K31/4523
A61K31/517
A61K31/519
A61K31/5377
A61K31/553
A61K31/53
A61K31/4375
A61K31/4985
A61K31/44
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023142754
(22)【出願日】2023-09-04
(62)【分割の表示】P 2020512855の分割
【原出願日】2018-09-07
(31)【優先権主張番号】62/556,277
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クレイン, クリスティアーン ニコラース
(72)【発明者】
【氏名】マレク, シヴァ
(72)【発明者】
【氏名】イェン, イヴァナ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がんのための診断及び治療方法並びに組成物を提供する。
【解決手段】がんを有する個体が、汎RAF二量体阻害剤及びMEK又はPI3K阻害剤を含む治療に応答する可能性が高いかを決定する方法、がんを有する個体の汎RAF二量体阻害剤及びMEK又はPI3K阻害剤を含む治療に対する応答性を予測する方法、がんを有する個体のための治療法を選択する方法、及び本発明のバイオマーカー(例えば、KRAS活性化変異、例えば、KRAS-G13D変異、又はNRAS活性化変異)の存在に基づいてがんを有する個体を治療する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定する方法であって、個体からの試料をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のKRAS-G13D変異の存在が、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する、方法。
【請求項2】
がんを有する個体のための治療を選択するための方法であって、個体からの試料をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のKRAS-G13D変異の存在が、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する、方法。
【請求項3】
個体がKRAS-G13D変異を有し、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
がんを有する個体を治療する方法であって、
(a)KRAS-G13D変異を有すると決定されている個体からの試料をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすること;及び
(b)工程(a)で決定されたKRAS-G13D変異の存在に基づき、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与すること
を含む方法。
【請求項5】
がんを有する個体を治療する方法であって、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与することを含み、治療前に、個体からの試料がKRAS-G13D変異についてスクリーニングされており、該試料中のKRAS-G13D変異の存在が決定されている、方法。
【請求項6】
スクリーニングが、KRAS遺伝子の全部又は一部を増幅させること及び配列決定することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
KRAS遺伝子の一部が、KRAS遺伝子のエクソン2である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
KRAS遺伝子のエクソン2のコドン13のKRAS c.38G>A ヌクレオチド置換変異が、KRAS-G13D変異を示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
KRAS-G13D変異を特徴とするがんの治療的処置における使用のための汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物。
【請求項10】
KRAS-G13D変異を特徴とするがんの治療的処置のための医薬の調製のための汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物の使用。
【請求項11】
汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定する方法であって、個体からの試料をNRAS活性化変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のNRAS活性化変異の存在が、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する、方法。
【請求項12】
がんを有する個体のための治療を選択するための方法であって、個体からの試料をNRAS活性化変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のNRAS活性化変異の存在が、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する、方法。
【請求項13】
個体がNRAS活性化変異を有し、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与することをさらに含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
がんを有する個体を治療する方法であって、
(a)NRAS活性化変異を有すると決定されている個体からの試料をNRAS活性化変異についてスクリーニングすること;及び
(b)工程(a)で決定されたNRAS活性化変異の存在に基づき、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与すること
を含む方法。
【請求項15】
がんを有する個体を治療する方法であって、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与することを含み、治療前に、個体からの試料がNRAS活性化変異についてスクリーニングされており、該試料中のNRAS活性化変異の存在が決定されている、方法。
【請求項16】
スクリーニングが、NRAS遺伝子の全部又は一部を増幅させること及び配列決定することを含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
NRAS活性化変異を特徴とするがんの治療的処置における使用のための汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物。
【請求項18】
NRAS活性化変異を特徴とするがんの治療的処置のための医薬の調製のための汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物の使用。
【請求項19】
MEK阻害剤が小分子阻害剤である、請求項1から8及び11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
小分子阻害剤が、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、ビニメチニブ(MEK162)、BI-847325、トラメチニブ、GDC-0623、G-573、及びCH5126766(RO5126766)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
小分子阻害剤が、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、又はビニメチニブ(MEK162)、又はその薬学的に許容される塩である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
小分子阻害剤が、コビメチニブ(GDC-0973)又はその薬学的に許容される塩である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
KRAS活性化変異を含むがんを有する個体を治療する方法であって、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項24】
PI3K阻害剤が小分子阻害剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
小分子阻害剤が、ピクチリシブ(GDC-0941)、タセリシブ(GDC-0032)、及びアルペリシブ(BYL719)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
PI3K阻害剤が汎PI3K阻害剤である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
汎PI3K阻害剤が、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
個体がBRAF活性化変異を有しない、請求項23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
汎RAF二量体阻害剤が、HM95573、LY-3009120、AZ-628、LXH-254、MLN2480、BeiGene-283、RXDX-105、BAL3833、レゴラフェニブ、及びソラフェニブ、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項1から8、11から16、及び19から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
個体に追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項1から8、11から16、及び19から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
追加の治療剤が、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤からなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
試料が、組織試料、細胞試料、全血試料、血漿試料、血清試料、又はそれらの組み合わせである、請求項1から8、11から16、19から22、及び29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
試料が組織試料である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
組織試料が腫瘍組織試料である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
腫瘍組織試料が、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)試料、保管試料、フレッシュ試料、又は凍結試料である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
がんが、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、皮膚がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、胃癌、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、及び血液悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項1から8、11から16、及び19から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
がんが結腸直腸がんである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
がんが卵巣がんである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
がんが肺がんである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
がんが膵臓がんである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
がんが皮膚がんである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
個体がヒトである、請求項1から8、11から16、及び19から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
KRAS活性化変異を特徴とするがんの治療的処置における使用のための汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む組成物。
【請求項44】
KRAS活性化変異を特徴とするがんの治療的処置のための医薬の調製のための汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む組成物の使用。
【請求項45】
汎RAF二量体阻害剤及び汎PI3K阻害剤を含む組成物。
【請求項46】
汎PI3K阻害剤が、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩である、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
汎RAF二量体阻害剤が、HM95573、LY-3009120、AZ-628、LXH-254、MLN2480、BeiGene-283、RXDX-105、BAL3833、レゴラフェニブ、及びソラフェニブ、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項45又は46に記載の組成物。
【請求項48】
HM95573とピクチリシブ(GDC-0941)、LY-3009120とピクチリシブ(GDC-0941)、AZ-628とピクチリシブ(GDC-0941)、LXH-254とピクチリシブ(GDC-0941)、MLN2480とピクチリシブ(GDC-0941)、BeiGene-283とピクチリシブ(GDC-0941)、RXDX-105とピクチリシブ(GDC-0941)、BAL3833とピクチリシブ(GDC-0941)、レゴラフェニブとピクチリシブ(GDC-0941)、ソラフェニブとピクチリシブ(GDC-0941)、HM95573とタセリシブ(GDC-0032)、LY-3009120とタセリシブ(GDC-0032)、AZ-628とタセリシブ(GDC-0032)、LXH-254とタセリシブ(GDC-0032)、MLN2480とタセリシブ(GDC-0032)、BeiGene-283とタセリシブ(GDC-0032)、RXDX-105とタセリシブ(GDC-0032)、BAL3833とタセリシブ(GDC-0032)、レゴラフェニブとタセリシブ(GDC-0032)、及びソラフェニブとタセリシブ(GDC-0032)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される組み合わせを含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
請求項45から48のいずれか一項に記載の組成物を含む薬学的組成物。
【請求項50】
がんの治療的処置における使用のための請求項45から48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
がんが、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、皮膚がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、胃癌、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、及び血液悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
がんの治療的処置のための医薬の調製のための、請求項45から48のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項53】
汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットであって、
(a)個体からの試料におけるKRAS-G13D変異の存在を決定するための試薬;及び任意で、
(b)汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための指示書
を含むキット。
【請求項54】
試薬が、KRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットであって、
(a)個体からの試料におけるNRAS活性化変異の存在を決定するための試薬;及び任意で、
(b)汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための指示書
を含むキット。
【請求項56】
試薬が、NRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットであって、
(a)個体からの試料におけるKRAS活性化変異の存在を決定するための試薬;及び任意で、
(b)汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための指示書
を含むキット。
【請求項58】
試薬が、KRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む、請求項57に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全内容は本明細書において参照により援用される。前記ASCIIコピーは、2018年8月9日に作成され、50474-171WO2_Sequence Listing_8.09.18_ST25と命名され、大きさは1,738バイトである。
【0002】
本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK又はPI3K阻害剤を使用する細胞増殖性疾患(例えばがん)の治療のための診断及び治療方法を対象とする。また、関連するキット及び組成物も提供される。
【背景技術】
【0003】
がんは、依然として人間の健康にとって最も致命的な脅威の一つである。特定のがんは、制御不能な方法で転移して急速に成長する可能性があり、タイムリーな検出及び治療を非常に困難にする。米国では、がんは毎年およそ130万人の新規患者に影響を及ぼしており、心臓病に続く2番目の主要な死因であり、これは死者の約4分の1を占める。マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路は、30%超のヒトのがん、最も一般的には発がん突然変異を介した経路のMEK/ERK群で活性化される。
【0004】
したがって、依然として、MAPKシグナル伝達経路を標的とする治療に最適なMAPK調節不全腫瘍を有する患者集団を診断及び治療するための改善された代替方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、細胞増殖性疾患(例えばがん)の治療のための診断及び治療方法、キット並びに組成物を提供する。
【0006】
第1の態様では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定する方法を特徴とし、本方法は、個体からの試料をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のKRAS-G13D変異の存在は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する。
【0007】
第2の態様では、本発明は、がんを有する個体のための治療を選択するための方法を特徴とし、本方法は、個体からの試料をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のKRAS-G13D変異の存在は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する。
【0008】
第1の態様又は第2の態様のいくつかの実施態様では、個体はKRAS-G13D変異を有し、本方法は、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与することをさらに含む。
【0009】
第3の態様では、本発明は、がんを有する個体を治療する方法を特徴とし、本方法は、(a)KRAS-G13D変異を有すると決定されている個体からの試料をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすること、及び
(b)工程(a)で決定されたKRAS-G13D変異の存在に基づき、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与すること
を含む。
【0010】
第4の態様では、本発明は、がんを有する個体を治療する方法を特徴とし、本方法は、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与することを含み、治療前に、個体からの試料はKRAS-G13D変異についてスクリーニングされており、該試料中のKRAS-G13D変異の存在は決定されている。
【0011】
先述の態様のいずれか一つのいくつかの実施態様では、スクリーニングは、KRAS遺伝子の全部又は一部を増幅及び配列決定することを含む。いくつかの実施態様では、KRAS遺伝子の一部は、KRAS遺伝子のエクソン2である。いくつかの実施態様では、KRAS遺伝子のエクソン2のコドン13のKRAS c.38G>A ヌクレオチド置換変異は、KRAS-G13D変異を示す。
【0012】
第5の態様では、本発明は、KRAS-G13D変異を特徴とするがんの治療的処置における使用のための汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物を特徴とする。
【0013】
第6の態様では、本発明は、KRAS-G13D変異を特徴とするがんの治療的処置のための医薬の調製のための汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物の使用を特徴とする。
【0014】
第7の態様では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定する方法を特徴とし、本方法は、個体からの試料をNRAS活性化変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のNRAS活性化変異の存在は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する。
【0015】
第8の態様では、本発明は、がんを有する個体のための治療を選択するための方法を特徴とし、本方法は、個体からの試料をNRAS活性化変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のNRAS活性化変異の存在は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する。
【0016】
第7の態様又は第8の態様のいくつかの実施態様では、個体はNRAS活性化変異を有し、本方法は、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与することをさらに含む。
【0017】
第9の態様では、本発明は、がんを有する個体を治療する方法を特徴とし、本方法は、(a)NRAS活性化変異を有すると決定されている個体からの試料をNRAS活性化変異についてスクリーニングすること、及び
(b)工程(a)で決定されたNRAS活性化変異の存在に基づき、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与すること
を含む。
【0018】
第10の態様では、本発明は、がんを有する個体を治療する方法を特徴とし、本方法は、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を投与することを含み、治療前に、個体からの試料はNRAS活性化変異についてスクリーニングされており、該試料中のNRAS活性化変異の存在は決定されている。
【0019】
第7、第8、第9及び第10の態様のいずれか一つのいくつかの実施態様では、スクリーニングは、NRAS遺伝子の全部又は一部を増幅及び配列決定することを含む。
【0020】
第1、第2、第3、第4、第7、第8、第9及び第10の態様のいずれか一つの実施態様では、MEK阻害剤は小分子阻害剤である。いくつかの実施態様では、小分子阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、ビニメチニブ(MEK162)、BI-847325、トラメチニブ、GDC-0623、G-573、及びCH5126766(RO5126766)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、小分子阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、又はビニメチニブ(MEK162)、又はそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施態様では、小分子阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)又はその薬学的に許容される塩である。
【0021】
第11の実施態様では、本発明は、KRAS活性化変異を含むがんを有する個体を治療する方法を特徴とし、本方法は、個体に治療的有効量の汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施態様では、PI3K阻害剤は小分子阻害剤である。いくつかの実施態様では、小分子阻害剤は、ピクチリシブ(GDC-0941)、タセリシブ(GDC-0032)、及びアルペリシブ(BYL719)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、PI3K阻害剤は汎PI3K阻害剤である。いくつかの実施態様では、汎PI3K阻害剤は、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施態様では、個体はBRAF活性化変異を有しない。
【0022】
第1、第2、第3、第4、第7、第8、第9、第10及び第11の態様のいずれか一つの実施態様では、本方法は、個体に追加の治療剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、追加の治療剤は、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤からなる群より選択される。
【0023】
第12の態様では、本発明は、KRAS-活性化変異を特徴とするがんの治療的処置における使用のための汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む組成物を特徴とする。
【0024】
第13の態様では、本発明は、KRAS活性化変異を特徴とするがんの治療的処置のための医薬の調製のための汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む組成物の使用を特徴とする。
【0025】
第14の態様では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及び汎PI3K阻害剤を含む組成物を特徴とする。いくつかの実施態様では、汎PI3K阻害剤は、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施態様では、汎RAF二量体阻害剤は、HM95573、LY-3009120、AZ-628、LXH-254、MLN2480、BeiGene-283、RXDX-105、BAL3833、レゴラフェニブ、及びソラフェニブ、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、組成物は、HM95573とピクチリシブ(GDC-0941)、LY-3009120とピクチリシブ(GDC-0941)、AZ-628とピクチリシブ(GDC-0941)、LXH-254とピクチリシブ(GDC-0941)、MLN2480とピクチリシブ(GDC-0941)、BeiGene-283とピクチリシブ(GDC-0941)、RXDX-105とピクチリシブ(GDC-0941)、BAL3833とピクチリシブ(GDC-0941)、レゴラフェニブとピクチリシブ(GDC-0941)、ソラフェニブとピクチリシブ(GDC-0941)、HM95573とタセリシブ(GDC-0032)、LY-3009120とタセリシブ(GDC-0032)、AZ-628とタセリシブ(GDC-0032)、LXH-254とタセリシブ(GDC-0032)、MLN2480とタセリシブ(GDC-0032)、BeiGene-283とタセリシブ(GDC-0032)、RXDX-105とタセリシブ(GDC-0032)、BAL3833とタセリシブ(GDC-0032)、レゴラフェニブとタセリシブ(GDC-0032)、及びソラフェニブとタセリシブ(GDC-0032)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される組み合わせを含む。いくつかの実施態様では、組成物は、がんの治療的処置における使用を目的としている。いくつかの実施態様では、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、皮膚がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、胃癌、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、及び血液悪性腫瘍からなる群より選択される。
【0026】
第15の態様では、本発明は第16の態様による組成物を含む薬学的組成物を特徴とする。
【0027】
第16の態様では、本発明は、がんの治療的処置のための医薬の調製のための第16の態様による組成物の使用を特徴とする。いくつかの実施態様では、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、皮膚がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、胃癌、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、及び血液悪性腫瘍からなる群より選択される。
【0028】
第17の態様では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットを特徴とし、本キットは:(a)個体からの試料におけるKRAS-G13D変異の存在を決定するための試薬、及び任意で、(b)汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための指示書
を含む。いくつかの実施態様では、試薬は、KRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む。
【0029】
第18の態様では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットを特徴とし、本キットは:(a)個体からの試料におけるNRAS活性化変異の存在を決定するための試薬、及び任意で、(b)汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための指示書
を含む。いくつかの実施態様では、試薬は、NRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む。
【0030】
第17又は第18の態様のいくつかの実施態様では、MEK阻害剤は小分子阻害剤である。いくつかの実施態様では、小分子阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、ビニメチニブ(MEK162)、BI-847325、トラメチニブ、GDC-0623、G-573、及びCH5126766(RO5126766)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、小分子阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、又はビニメチニブ(MEK162)、又はそれらの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施態様では、小分子阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)又はその薬学的に許容される塩である。
【0031】
第19の態様では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットを特徴とし、本キットは:(a)個体からの試料におけるKRAS活性化変異の存在を決定するための試薬、及び任意で、
(b)汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための指示書
を含む。いくつかの実施態様では、試薬は、KRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施態様では、PI3K阻害剤は小分子阻害剤である。いくつかの実施態様では、小分子阻害剤は、ピクチリシブ(GDC-0941)、タセリシブ(GDC-0032)、及びアルペリシブ(BYL719)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、PI3K阻害剤は汎PI3K阻害剤である。いくつかの実施態様では、汎PI3K阻害剤は、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施態様では、個体はBRAF活性化変異を有しない。
【0032】
先述の態様のいずれか一つのいくつかの実施態様では、汎RAF二量体阻害剤は、HM95573、LY-3009120、AZ-628、LXH-254、MLN2480、BeiGene-283、RXDX-105、BAL3833、レゴラフェニブ、及びソラフェニブ、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0033】
先述の態様のいずれか一つのいくつかの実施態様では、試料は、組織試料、細胞試料、全血試料、血漿試料、血清試料、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施態様では、試料は組織試料である。いくつかの実施態様では、組織試料は腫瘍組織試料である。いくつかの実施態様では、腫瘍組織試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)試料、保管試料、フレッシュ試料、又は凍結試料である。
【0034】
先述の態様のいずれか一つのいくつかの実施態様では、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、皮膚がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、胃癌、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、又は血液悪性腫瘍からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、がんは結腸直腸がんである。いくつかの実施態様では、がんは卵巣がんである。いくつかの実施態様では、がんは肺がんである。いくつかの実施態様では、がんは膵臓がんである。いくつかの実施態様では、がんは皮膚がんである。
【0035】
先述の態様のいずれか一つの実施態様では、個体はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】3日間のCELLTITER-GLO(登録商標)生存率アッセイにおける、示されたRAF阻害剤に対するKRAS変異細胞株(赤)及びBRAF
V600E細胞株(黒)のプロファイリングを示す一連のグラフである。曲線は、4パラメーターS字形曲線適合で決定された。
【
図1B】異なる1.5型及び2型RAF阻害剤の様々な濃度についてプロットされたP-MEK及び全MEKの比を示す一連のグラフである。
【
図1C】3日間の細胞生存率研究における、三つのII型汎RAF阻害剤(AZ-628、LY-3009120、及びMLN-2480)及び1.5型「パラドックス-ブレーカー」RAF阻害剤、PLX-8394に対する感受性についての結腸、肺、及び皮膚がん細胞株のプロファイリングを示す一連のグラフである。IC
50値(μM)は、非線形回帰分析を使用する4パラメーター適合を使用して決定された。
【
図1D】1μM AZ-628+/-430のツール化合物の小分子ライブラリからのツール化合物での処理後のA549 KRAS-G12S変異株の平均生存率の差異を示すグラフである。A549 KRAS-G12S変異株における細胞生存率は、1μM AZ-628+/-ツール化合物での処理の3日後に測定された。平均生存率は各処理について計算され、平均生存率の差異は、DMSO処理細胞に対して正規化されてプロットされる。色付きの縦棒は、阻害剤クラスを示す。
【
図1E】1μM AZ-628で処理の、又は未処理の、A549細胞中の化合物スクリーンからの示されたMEK阻害剤の一連の代表的な用量反応曲線である。
【
図1F】A549細胞を1μMで24時間にわたって示された分子で治療した後のコントロール(アクチン)に対する全BRAF及びCRAF並びにホスホ-及び全MEKを示す、免疫ブロットである。
【
図1G】AZ-628及び示されたMEK阻害剤の12x12マトリックス滴定の計算されたBliss超過スコアを示す画像のセットである。A549細胞は、3日間にわたってAZ-628及び様々なMEK阻害剤の12x12マトリックス滴定で処理された。細胞生存率はCELLTITER-GLO(登録商標)で評価され、Bliss超過スコアが計算された。
【
図2A】コビメチニブ及び示されたRAF阻害剤の12x12マトリックス滴定の計算されたBliss超過スコアを示す画像のセットである。細胞生存率は、コビメチニブ及び示されたRAF阻害剤で3日間にわたって処理されたA549細胞中、CELLTITER-GLO(登録商標)で評価された。
【
図2B】A549細胞を50nMコビメチニブ及び/又はRAF阻害剤で24時間にわたって処理した後の、コントロール(アクチン)に対する、ホスホ-及び全CRAF、MEK、ERK、RSK及びAKTを示す、免疫ブロットである。
【
図2C】DMSOコントロール処理細胞に対する、0.1μM コビメチニブ、0.1μM AZ-628、又はその両方で6時間にわたって処理した四つのKRAS変異肺がん細胞株中のDUSP6及びSPRY4のRNA-seq倍率変化発現データを示すグラフのセットである。
【
図2D】コントロール(アクチン)に対する、48時間にわたって示された濃度で、コビメチニブと組み合わせたAZ-628で処理されたA549細胞中の切断PARPの増加と、コビメチニブと組み合わせたか又は組み合わせていないベムラフェニブで処理されたA549細胞中の切断PARPの増加とを対比して示す、免疫ブロットである。
【
図2E】示された濃度のAZ-628、コビメチニブ、又はその両方で処理されたA549細胞のフローサイトメトリー細胞サイクル/アポトーシス分析(ヨウ化プロピジウム及びアネキシンV)を示すグラフのセットである。
【
図2F】II型RAF阻害剤が、コビメチニブと相乗活性を呈し、それほど効果的ではない単剤濃度においてさえも細胞死を増強することを示す、コロニー増殖アッセイの画像のセットである。A549細胞は、示された濃度のRAF阻害剤又はコビメチニブで処理され、NCI-H2122細胞は、示された濃度のRAF阻害剤 LY-3009120又はコビメチニブで処理された。適切な化合物を含む培地を72時間ごとに補充した。細胞を8日間培養し、その後、クリスタルバイオレットで染色した。
【
図3A】NCI-H2122異種移植腫瘍モデルにおいて汎RAF阻害剤 AZ-628(25mg/kg、腹腔内投与(IP)、QD)と、又はNCI-H2122及びHCT 116異種移植腫瘍モデルにおいてLY-3009120(25mg/kg、IP、QD)と併せたMEK阻害剤コビメチニブ(5mg/kg、経口投与(PO)、毎日(QD))の経時的な腫瘍体積を示すグラフのセットである(n=10/グループ、平均腫瘍体積±SEM)。
【
図3B】NCI-H2122及びHCT-116異種移植マウスにおける、単剤MEK阻害剤コビメチニブ(GDC-0973)、汎RAF阻害剤AZ-628若しくはLY-3009120、又は示された組み合わせのマウス体重のデータを示すグラフのセットである(n=10/グループ、平均腫瘍体積±SEM)。
【
図3C】最終投与後の示された時点(2、8、16、及び24時間)での処理の4日後のNCI-H2122及びHCT 116腫瘍担持マウスにおける腫瘍薬力学研究を示す棒グラフである。棒グラフは、示されたタンパク質(切断PARP(ウェスタンブロット)、pMEK/全MEK(ECLA)、pRSK/全RSK(ウェスタンブロット)、又はビヒクルコントロールに対して正規化された下流RNA転写DUSP6(RT-PCR)について定量化された値を示す(n=4/グループ、平均±SD)。
【
図3D】x軸上に示された時間後の化合物血漿濃度を示す棒グラフのセットである。
【
図4A】MEK阻害が、KRAS変異細胞株において経路フィードバックの再活性化を大いに誘導し、RAS-GTPレベルの増加をもたらすことを示す、免疫ブロットである。示されたがん細胞株は、DMSO又は250nM コビメチニブのいずれかで24時間処理され、タンパク質溶解物は、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-又は全BRAF、CRAF、又はMEKについてウェスタンブロットで分析された。CRAF、RBD-RAF1、及びBRAFは、同一の溶解物から免疫沈降され(IP)、ウェスタンブロットで分析された。CRAF免疫沈降物は、基質として不活性MEKを用いてキナーゼ活性について分析された。
【
図4B】相乗的及び非相乗的なKRAS変異及び野生型結腸がん細胞株におけるコビメチニブによるMEK阻害を示す一連の免疫ブロットである。示されたがん細胞株は、DMSO又は250nM コビメチニブのいずれかで24時間処理され、タンパク質溶解物は、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-又は全MEKについてウェスタンブロットで分析された。
【
図4C】相乗的及び非相乗的なKRAS変異及び野生型肺がん細胞株におけるコビメチニブによるMEK阻害を示す一連の免疫ブロットである。示されたがん細胞株は、DMSO又は250nM コビメチニブのいずれかで24時間処理され、タンパク質溶解物は、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-又は全MEKについてウェスタンブロットで分析された。
【
図4D】DMSO処理コントロール細胞株に対して正規化された
図4B及び4Cの相乗的及び非相乗的なKRAS変異及び野生型肺がん細胞株のコビメチニブ誘導pMEKレベルにおける相対的な増加倍率を示すグラフである。P値は、ウィルコクソンの順位和検定により決定された。
【
図4E】CRAF及びBRAF IP実験並びにその後のキナーゼ活性アッセイの結果を示す、免疫ブロットである。A549細胞は、漸増濃度のMEK阻害剤 GDC-0973で処理され、CRAF及びBRAFは、同一の溶解物中で免疫沈降され、ウェスタンブロットで分析された。CRAF免疫沈降物は、基質として不活性MEKを用いてキナーゼ活性について分析された。
【
図4F】II型汎RAF阻害剤が、KRAS変異細胞中のMEKのMEK阻害剤誘導過剰リン酸化を逆転させることができるが、旧来の1.5型RAF阻害剤はできないことを示す、免疫ブロットである。MEKリン酸化は、250nM コビメチニブで24時間処理され、続いて、漸増濃度で24時間にわたって示されたRAF阻害剤が添加されたA549細胞中でウェスタンブロットで分析された。
【
図4G】KRASノックダウンがMEK阻害後のMAPK再活性化を抑制することを示す、免疫ブロットである。製造業者の指示に従って、リポフェクタミンRNAiMAX(登録商標)試薬(Life Technologies)の存在下で、示された細胞株に20nM si-KRAS(L-005069-00-0020)又はsi-NTC(D-001810-10-20)(Dharmacon On-TARGETplus(登録商標)プール)を逆トランスフェクトした。培地をトランスフェクションの翌日に変更し、ノックダウン効率を第4日にウェスタンブロットで評価した。250nM コビメチニブを24時間細胞に添加した。
【
図5A】汎RAF阻害剤とMEK阻害剤の組み合わせが、BRAF-V600細胞株に対して、RAS変異(G12/G13/Q61)細胞株、及びRAS/RAF野生型細胞株において、より大きな相乗効果をもたらしたことを示すグラフである。細胞生存率は、10μM AZ-628、1μM コビメチニブ、及びこれらの共希釈の9段階の3倍段階希釈で3日間処理された322の結腸、肺、及び膵臓がん細胞のパネルでCELLTITER-GLO(登録商標)を使用して評価された。相乗効果スコアは、測定された濃度組み合わせの正のBliss超過の合計である。棒グラフは、相乗効果の四つの状態:相乗効果なし(ライトグレー)、低度の相乗効果(ダークグレー)、中程度の相乗効果(青)、及び高度の相乗効果(オレンジ)を示す。相乗効果のレベルは、正のBliss超過の混合モデル化及び様々な組織でのこれらの状態の分布によって決定された。
【
図5B】示された相乗効果の状態を代表するKRAS変異及び野生型がん細胞株を示し、反応が、基礎レベルのMAPKシグナル伝達と、KRAS、RAF二量体、及びキナーゼ活性を介したフィードバック再活性化と相関することを実証する。製造業者の指示に従って、リポフェクタミンRNAiMAX(登録商標)試薬(Life Technologies)の存在下で、細胞に20nM si-KRAS(L-005069-00-0020)又はsi-NTC(D-001810-10-20)(Dharmacon On-TARGETplus(登録商標)プール)を逆トランスフェクトした。培地をトランスフェクションの翌日に変更し、ノックダウン効率を第4日に評価した。250nM コビメチニブを24時間細胞に添加した。タンパク質溶解物を、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-及び/又は全KRAS、BRAF、CRAF、MEK、ERK、及びRSKについてウェスタンブロットで分析した。CRAF及びRAF1-RBDは、同一の溶解物から免疫沈降され、ウェスタンブロットで分析された。CRAF免疫沈降物は、基質として不活性MEKを用いてキナーゼ活性について分析された。
【
図5C】相乗的に阻害されなかったKRAS野生型株を示す、免疫ブロットである。製造業者の指示に従って、リポフェクタミンRNAiMAX(登録商標)試薬(Life Technologies)の存在下で、細胞に20nM si-KRAS(L-005069-00-0020)又はsi-NTC(D-001810-10-20)(Dharmacon On-TARGETplus(登録商標)プール)を逆トランスフェクトした。培地をトランスフェクションの翌日に変更し、ノックダウン効率を第4日に評価した。250nM コビメチニブを24時間細胞に添加した。タンパク質溶解物を、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-及び/又は全KRAS、BRAF、CRAF、MEK、ERK、及びRSKについてウェスタンブロットで分析した。CRAF及びRAF1-RBDは、同一の溶解物から免疫沈降され、ウェスタンブロットで分析された。CRAF免疫沈降物は、基質として不活性MEKを用いてキナーゼ活性について分析された。
【
図5D】示された時点で1μM HM95573(GDC-5573)、250nM コビメチニブ、又は1μM HM95573(GDC-5573)と250nM コビメチニブの両方で処理した後の、MAPK経路マーカー(pMEK、pERK、及びpRSK)のレベルにより評価した、A549 KRAS変異細胞株中のHM95573(GDC-5573)、II型汎RAF阻害剤、及びコビメチニブ、MEK阻害剤について、組み合わせ活性が観察されたことを示す、免疫ブロットのセットである。
【
図5E】II型RAF阻害剤が、コビメチニブと相乗活性を呈し、それほど効果的ではない単剤濃度においてさえも細胞死を増強することを示す、コロニー増殖アッセイの画像のセットである。A549細胞(左)及びHCT-116細胞(右)は、示された濃度のRAF阻害剤 HM95573(GDC-5573)、コビメチニブ、又はHM95573(GDC-5573)とコビメチニブの両方で処理された。適切な化合物を含む培地を72時間ごとに補充した。細胞を8日間培養し、その後、クリスタルバイオレットで染色した。
【
図5F】HM95573(GDC-5573)及びコビメチニブの処理が、KRAS変異同系結腸直腸がん(CRC)異種移植モデル、CT26の腫瘍増殖阻害(TGI)の改善をもたらしたことを示すグラフのセットである。動物(n=10/グループ)は、21日間にわたって、ビヒクル;HM95573(GDC-5573)5mg/kg(経口投与、1日1回);コビメチニブ5mg/kg(経口投与、1日1回);又は両方の薬剤で処理された。個々の動物の腫瘍増殖は、各グループの太字の傾向線とともに、時間(日)に対する腫瘍体積(mm
3)として表される。
【
図5G】
図5Fに記載された各治療群の適合された腫瘍体積曲線を示すグラフである。
【
図5H】汎RAF阻害剤とMEK阻害剤の組み合わせが、BRAF-V600細胞株に対して、RAS変異細胞株及びRAS/RAF野生型細胞株において、より大きな相乗効果をもたらしたことを示すグラフである。細胞生存率は、3日間にわたってHM95573(GDC-5573)、コビメチニブ、又はHM95573(GDC-5573)とコビメチニブの両方の共希釈で処理された196の結腸、肺、皮膚、及び卵巣がん細胞株のパネルでCELLTITER-GLO(登録商標)を使用して評価された。相乗効果スコアは、測定された濃度組み合わせの正のBliss超過の合計である。有意性は、両側t検定により評価された。
【
図5I】汎RAFとMEK阻害の組み合わせ活性が、結腸直腸がん細胞株のパネルのMEK阻害剤誘導RAS-GTPレベルと相関することを示す免疫ブロットのセットである。活性RASは、DMSOビヒクル又はコビメチニブのいずれかで処理された、示された結腸直腸細胞株中のRAF1-RBDを用いて免疫沈降された。
【
図6A】KRAS-G13D変異細胞株がRAF及びMEK阻害の組み合わせに対してより感受性であることを示すグラフである。異なるRAS変異コドンを含有する細胞株のAZ-628/コビメチニブ組み合わせの正のBliss超過を示す(P値は両側ウィルコクソン順位和検定である)。
【
図6B】KRAS-G13D KRAS
G13D変異細胞株がRAF及びMEK阻害の組み合わせに対してより感受性であることを示すグラフである。異なるRAS変異コドンを含有する細胞株のAZ-628/コビメチニブ組み合わせの正のBliss超過を示す(P値は両側ウィルコクソン順位和検定である)。
【
図6C】肺細胞株のBliss超過スコアを示す棒グラフ及びボックスプロットである(P値は両側ウィルコクソン順位和検定である)。
【
図6D】3日間にわたって共希釈によりHM95573(GDC-5573)及びコビメチニブで処理した後の、非KRAS-G13D変異を有する他の細胞株と比較した、KRAS-G13D結腸直腸(左)及び肺(右)がん細胞株のBliss超過スコアを示すボックスプロットのセットである。相乗効果スコアは、測定された濃度組み合わせの正のBliss超過の合計である。有意性は、両側t検定により評価された。
【
図6E】KRAS-G13D変異結腸直腸細胞株が、他のKRAS変異体に対して、MEK阻害後にpMEKの誘導がより増強されることを示す、免疫ブロットのセットである。示された結腸直腸細胞株は、DMSO又はコビメチニブ(250nM)のいずれかで24時間処理され、続いて、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-及び全MEK、ERK、RSK、及びAKTのレベルがウェスタンブロットで評価された。
【
図6F】KRAS-G12D又はKRAS-G12C変異SW48細胞と比較して、KRAS-G13D変異SW48細胞において、II型RAF阻害剤及びコビメチニブとの相乗活性が大きいことを示す、コロニー増殖アッセイの画像のセットである。KRAS-G13D(左)、KRAS-G12D(中央)、又はKRAS-G12C(右)ノックインされた同系SW48細胞は、AZ-628、コビメチニブ、又はAZ-628とコビメチニブの両方で処理された。適切な化合物を含む培地を72時間ごとに補充した。細胞を8日間培養し、その後、クリスタルバイオレットで染色した。
【
図6G】コントロール(アクチン)に対して、示された濃度のAZ-628、コビメチニブ、又は両方の薬剤で処理した後の、KRAS-G13D(左)、KRAS-G12D(中央)、又はKRAS-G12C(右)ノックインされた同系SW48細胞のERK及びpERKレベルを示す免疫ブロットのセットである。
【
図6H】3日間のCELLTITER-GLO(登録商標)アッセイにより決定された、322の結腸、肺、膵臓、卵巣、血液、及び皮膚細胞株にわたるAZ-628の相対的なIC50値(μM)を示すグラフである。IC50曲線は、非線形回帰、4パラメーター適合分析を使用して適合された。
【
図6I】三つの同系結腸直腸細胞株:野生型KRASの親であるSW48、ヘテロ接合KRAS G12D変異が導入されたSW48、及びヘテロ接合KRAS G13D変異が導入されたSW48の溶解物中のRAF1-RBDを用いて免疫沈降された活性RASを示す、免疫ブロットである。
【
図6J】時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)によるヌクレオチド交換反応を使用して評価された、SW48 KRAS-G12D及びSW48 KRAS野生型細胞と比較して、SW48 KRAS-G13Dにおいてより大きなKRAS-GTPレベルを示すグラフである。6x HisタグKRAS野生型、KRAS-G12D、及びGDP負荷KRAS-G13Dは、抗FLAG-Tb抗体及び抗6xHis-d2抗体の存在下でFLAGタグRAF1-RBDでインキュベートされた。GTPが添加されてヌクレオチド交換反応が開始し、TR-FRETが測定された。
【
図6K】示された細胞株をDMSO又は250nM コビメチニブのいずれかで24時間処理した後の、Y1068遺伝子座の全EGFR及びP-EGFRを含む、MAPK経路タンパク質レベルを示す、免疫ブロットである。
【
図6L】HCT 116及びDLD-1細胞が、製造業者の指示に従って、リポフェクタミンRNAiMAX試薬(Life Technologies)の存在下でsi-SOS1又はsi-NTCで逆トランスフェクトされ、DMSO又は250nM コビメチニブで24時間処理された後の、細胞溶解物からのKRAS、SOS1、MEK、pMEK、及びアクチンのレベルを示す、免疫ブロットである。RAS-GTPは、溶解物からのRAF1-RBDによる溶解物から免疫沈降され、他のタンパク質と並行して分析された。
【
図7A】汎RAF阻害剤(AZ-628)が汎PI3K阻害剤、ピクチリシブ(GDC-0941)と相乗効果があることを示すグラフである。細胞生存率は、AZ-628/ピクチリシブ、コビメチニブ/ピクチリシブ、又は単剤投与の共希釈投与で治療された213の腫瘍細胞株のパネルでCELLTITER-GLO(登録商標)により3日後に評価された。測定された濃度組み合わせの正のBliss超過の合計を表す相乗効果スコアがプロットされる。
【
図7B】多数のPI3K阻害剤でのKRAS-G12S A549細胞の阻害がMAPK経路の活性の誘導をもたらすことを示す、免疫ブロットである。A549は、示された濃度のPI3K阻害剤又はコビメチニブで24時間処理され、その後、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-及び全MEKレベルについてウェスタンブロット分析が行われた。溶解物は、CRAFの免疫沈降(IP)によっても評価され、CRAF及びBRAFについて免疫ブロットされ、以前と同様にRAFキナーゼ活性について処理された。
【
図7C】示された濃度のPI3K阻害剤又はGDC-0973で24時間処理されたHCT116細胞に由来する溶解物からの示されたタンパク質についての免疫ブロットである。
【
図7D】PI3K阻害がpMEKの用量依存的誘導をもたらすことを示す、免疫ブロットである。A549は、示された濃度のピクチリシブで24時間処理され、その後、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-及び全MEK、ERK、及びRSKレベルについてウェスタンブロット分析が行われた。
【
図7E】PI3K阻害がRAS-GTPレベルの用量依存的誘導をもたらすことを示す、免疫ブロットである。A549細胞は、示された濃度のピクチリシブ及びコビメチニブで24時間処理され、活性RASは、RAF1-RBDを用いて免疫沈降された。
【
図7F】PI3K/AKT阻害剤と組み合わせた、コビメチニブ又はAZ-628汎RAF阻害剤の12x12マトリックス滴定の計算されたBliss超過スコアを示し、II型汎RAF阻害剤、AZ-628がKRAS変異細胞株で多数のPI3K/AKT阻害剤と相互作用することを示す、画像のセットである。細胞生存率は、PI3K/AKT阻害剤と組み合わされた、コビメチニブ又はAZ-628 汎RAF阻害剤の12x12マトリックス滴定で3日間処理されたA549及びHCT116細胞中CELLTITER-GLO(登録商標)で評価された。
【
図7G】II型汎RAF阻害剤と汎PI3K阻害剤の組み合わせがPI3K阻害により媒介されるMAPK経路再活性化をブロックすることを示す、免疫ブロットである。A549は、示された濃度のピクチリシブ及び/又はAZ-628で24時間処理され、その後、コントロール(アクチン)に対して、ホスホ-及び全MEK、ERK、RSK、及びAKTレベルについてウェスタンブロット分析が行われた。
【
図8A-B】生存率研究におけるBRAF-V600E及びNRAS/BRAF野生型細胞株と比較した、三つのII型汎RAF阻害剤(AZ-628、LY-3009120、及びMLN-2480)及び1.5型「パラドックス-ブレーカー」RAF阻害剤、PLX-8394に対する感受性についてNRAS変異メラノーマ細胞株をプロファイリングした一連のグラフであり、それぞれの平均生存率(
図8A)及び非線形回帰分析を使用する4パラメーター適合を使用して決定された計算されたIC
50値(μM)(
図8B)を示す。
【
図8C-D】生存率研究におけるBRAF-V600E及びNRAS/BRAF野生型細胞株と比較した、II型汎RAF阻害剤AZ-628及びMEK阻害剤コビメチニブに対する感受性についてNRAS変異メラノーマ細胞株をプロファイリングした一連のグラフであり、それぞれの平均生存率(
図8C)及び非線形回帰分析を使用する4パラメーター適合を使用して決定された計算されたIC
50値(μM)(
図8D)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
I.導入
本発明は、細胞増殖性疾患(例えばがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ)))の治療のための診断方法、治療方法、及び組成物を提供する。本発明は、少なくとも一部は、MEK及びPI3K阻害剤が、RAS-GTP依存性機序を通じて、NRAS活性化変異又はKRAS活性化変異、特にKRAS-G13D変異を担持するがんにおいて汎RAF二量体阻害剤との共同活性を示すという発見に基づく。したがって、KRAS-G13D及びNRAS活性化変異は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK又はPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定する方法;汎RAF二量体阻害剤及びMEK又はPI3K阻害剤を含むがんを有する個体のための治療を選択し、汎RAF二量体阻害剤及びMEK又はPI3K阻害剤を含む療法でがんを有する個体を治療する方法において、バイオマーカー(例えば予測バイオマーカー)として使用することができる。
【0038】
II.定義
本明細書に記載される本発明の態様及び実施態様は、態様及び実施態様「を含む」、「からなる」及び/又は「から本質的になる」を含むことが理解されよう。本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、別途指示がない限り、複数形の参照を含む。
【0039】
本明細書で用いられる「約」という用語は、この技術分野における当業者に容易に知られているそれぞれの値についての通常の誤差範囲を意味する。本明細書中の「約」の値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体に対する実施態様を含む(記載する)。例えば、「約X」との記載には「X」の記載が含まれる。
【0040】
用語「MAPKシグナル伝達経路」とは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼシグナル伝達経路(例えば、RAS/RAF/MEK/ERKシグナル伝達経路)を指し、保存セリン/スレオニンプロテインキナーゼ(例えば、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK))のファミリーを包含する。MAPK経路の異常制御は、非制御の増殖、浸潤、転移、血管新生及び減少したアポトーシスに寄与する。GTPアーゼのRASファミリーは、KRAS、HRAS、及びNRASを含む。セリン/スレオニンプロテインキナーゼのRAFファミリーは、ARAF、BRAF、CRAF(RAF1)を含む。例示的なMAPKは、細胞外シグナル制御キナーゼ1及び2(例えば、ERK1及びERK2)、c-JunN末端キナーゼ1-3(すなわち、JNK1、JNK2及びJNK3)、p38アイソフォーム(すなわち、p38α、p38β、p38γ及びp38δ)、並びにErk5を含む。追加のMAPKは、ネモ様キナーゼ(NLK)、Erk3/4(すなわち、ERK3及びERK4)、及びErk7/8(すなわち、ERK7及びERK8)を含む。
【0041】
用語「MAPKシグナル伝達阻害剤」又は「MAPK経路シグナル伝達阻害剤」とは、MAPK経路(例えば、RAS/RAF/MEK/ERK経路)を通じて、シグナル伝達を減少させる、ブロックする、阻害する、廃止する、又はそれに干渉する分子を指す。いくつかの実施態様では、MAPKシグナル伝達阻害剤は、MAPKシグナル伝達の活性化に関与する一又は複数のタンパク質の活性を阻害し得る。いくつかの実施態様では、MAPKシグナル伝達阻害剤は、MAPKシグナル伝達の阻害に関与する一又は複数のタンパク質の活性を増加させ得る。MAPKシグナル伝達阻害剤は、限定されないが、MEK阻害剤(例えば、MEK1阻害剤、MEK2阻害剤、及びMEK1とMEK2両方の阻害剤)、RAF阻害剤(例えば、ARAF阻害剤、BRAF阻害剤、CRAF阻害剤、及び汎RAF阻害剤(すなわち、RAFファミリーの1を超えるメンバー(すなわち、ARAF、BRAF及びCRAFの二つ又は三つ全て)を阻害するRAF阻害剤、例えば、汎RAF二量体阻害剤(すなわち、RAF二量体を結合及び阻害することができる汎RAF阻害剤(例えば、RAFヘテロ二量体)))、並びにERK阻害剤(例えば、ERK1阻害剤及びERK2阻害剤)を含む。
【0042】
用語「BRAF阻害剤」又は「BRAFアンタゴニスト」とは、BRAF活性化又は機能を減少させる、ブロックする、阻害する、廃止する、又はそれに干渉する分子を指す。特定の実施態様では、BRAF阻害剤は、約1,000nM以下のBRAFに対する結合親和性(解離定数)を有する。別の実施態様では、BRAF阻害剤は、約100nM以下のBRAFに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、BRAF阻害剤は、約50nM以下のBRAFに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、BRAF阻害剤は、約10nM以下のBRAFに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、BRAF阻害剤は、約1nM以下のBRAFに対する結合親和性を有する。特定の実施態様では、BRAF阻害剤は、1,000nM以下のIC50を有するBRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、BRAF阻害剤は、500nM以下のIC50を有するBRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、BRAF阻害剤は、50nM以下のIC50を有するBRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、BRAF阻害剤は、10nM以下のIC50を有するBRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、BRAF阻害剤は、1nM以下のIC50を有するBRAFシグナル伝達を阻害する。本発明に従って使用され得るBRAF阻害剤の例には、限定されないが、ベムラフェニブ(ZELBORAF(登録商標))、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ(LGX818)、GDC-0879、XL281、ARQ736、PLX3603、RAF265、及びソラフェニブ、又はそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。BRAF阻害剤はBRAFのみを阻害してもよく、又はBRAF及び一又は複数の追加の標的を阻害してもよい。好ましいBRAF阻害剤は、PCT出願の国際公開第2005/062795号、同第2007/002325号、同第2007/002433号、同第2008/079903号、及び同第2008/079906号に記載されており、これらのそれぞれは、その全内容が本明細書に参照により援用される。
【0043】
用語「ERK阻害剤」又は「ERKアンタゴニスト」とは、ERK(例えば、ERK1及び/又はERK2)活性化又は機能を減少させる、ブロックする、阻害する、廃止する、又はそれに干渉する分子を指す。特定の実施態様では、ERK阻害剤は、約1,000nM以下のERKに対する結合親和性(解離定数)を有する。別の実施態様では、ERK阻害剤は、約100nM以下のERKに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、ERK阻害剤は、約50nM以下のERKに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、ERK阻害剤は、約10nM以下のERKに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、ERK阻害剤は、約1nM以下のERKに対する結合親和性を有する。特定の実施態様では、ERK阻害剤は、1,000nM以下のIC50を有するERKシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、ERK阻害剤は、500nM以下のIC50を有するERKシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、ERK阻害剤は、50nM以下のIC50を有するERKシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、ERK阻害剤は、10nM以下のIC50を有するERKシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、ERK阻害剤は、1nM以下のIC50を有するERKシグナル伝達を阻害する。本発明に従って使用され得るERK阻害剤の例には、限定されないが、ラボキセルチニブ(GDC-0994)及びウリキセルチニブ(BVD-523)、又はそれらの薬学的に許容される塩(例えば、ベシル酸塩(例えば、ラボキセルチニブのベシル酸塩))が含まれる。ERK阻害剤はERKのみを阻害してもよく、又はERK及び一又は複数の追加の標的を阻害してもよい。好ましいERK阻害剤は、PCT出願の国際公開第2013/130976号、同第2012/118850号、同第2013/020062号、同第2015/154674号、同第2015/085007号、同第2015/032840号、同第2014/036015号、同第2014/060395号、同第2015/103137号、及び同第2015/103133号に記載されており、これらのそれぞれは、その全内容が本明細書に参照により援用される。
【0044】
用語「MEK阻害剤」又は「MEKアンタゴニスト」とは、MEK(例えば、MEK1及び/又はMEK2)活性化又は機能を減少させる、ブロックする、阻害する、廃止する、又はそれに干渉する分子を指す。特定の実施態様では、MEK阻害剤は、約1,000nM以下のMEKに対する結合親和性(解離定数)を有する。別の実施態様では、MEK阻害剤は、約100nM以下のMEKに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、MEK阻害剤は、約50nM以下のMEKに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、MEK阻害剤は、約10nM以下のMEKに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、NEK阻害剤は、約1nM以下のMEKに対する結合親和性を有する。特定の実施態様では、MEK阻害剤は、1,000nM以下のIC50を有するMEKシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、MEK阻害剤は、500nM以下のIC50を有するMEKシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、MEK阻害剤は、50nM以下のIC50を有するMEKシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、MEK阻害剤は、10nM以下のIC50を有するMEKシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、MEK阻害剤は、1nM以下のIC50を有するMEKシグナル伝達を阻害する。本発明に従って使用され得るMEK阻害剤の例には、限定されないが、コビメチニブ(例えば、コビメチニブヘミフマレート;COTELLIC(登録商標))、トラメチニブ、ビニメチニブ、セルメチニブ、ピマセルチブ、レファメチニブ、GDC-0623、PD-0325901、及びBI-847325、又はそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。MEK阻害剤はMEKのみを阻害してもよく、又はMEK及び一又は複数の追加の標的を阻害してもよい。好ましいMEK阻害剤は、PCT出願の国際公開第2007/044515号、同第2008/024725号、同第2008/024724号、同第2008/067481号、同第2008/157179号、同第2009/085983号、同第2009/085980号、同第2009/082687号、同第2010/003025号、及び同第2010/003022に記載されており、これらのそれぞれは、その全内容が本明細書に参照により援用される。
【0045】
用語「CRAF阻害剤」又は「CRAFアンタゴニスト」とは、CRAF活性化又は機能を減少させる、ブロックする、阻害する、廃止する、又はそれに干渉する分子を指す。特定の実施態様では、CRAF阻害剤は、約1,000nM以下のCRAFに対する結合親和性(解離定数)を有する。別の実施態様では、CRAF阻害剤は、約100nM以下のCRAFに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、CRAF阻害剤は、約50nM以下のCRAFに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、CRAF阻害剤は、約10nM以下のCRAFに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、CRAF阻害剤は、約1nM以下のCRAFに対する結合親和性を有する。特定の実施態様では、CRAF阻害剤は、1,000nM以下のIC50を有するCRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、CRAF阻害剤は、500nM以下のIC50を有するCRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、CRAF阻害剤は、50nM以下のIC50を有するCRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、CRAF阻害剤は、10nM以下のIC50を有するCRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、CRAF阻害剤は、1nM以下のIC50を有するCRAFシグナル伝達を阻害する。本発明に従って使用され得るCRAF阻害剤の例には、限定されないが、ソラフェニブ又はその薬学的に許容される塩が含まれる。CRAF阻害剤はCRAFのみを阻害してもよく、又はCRAF及び一又は複数の追加の標的を阻害してもよい。
【0046】
用語「汎RAF阻害剤」又は「汎RAFアンタゴニスト」とは、二つ以上のRAFファミリーメンバー(例えば、ARAF、BRAF及びCRAFの二つ以上)の活性化又は機能を減少させる、ブロックする、阻害する、廃止する、又はそれに干渉する分子を指す。一実施態様では、汎RAF阻害剤は、三つ全てのRAFファミリーメンバー(すなわち、ARAF、BRAF、及びCRAF)をある程度阻害する。特定の実施態様では、汎RAF阻害剤は、約1,000nM以下の、ARAF、BRAF、及び/又はCRAFの一つ、二つ、又は三つに対する結合親和性(解離定数)を有する。別の実施態様では、汎RAF阻害剤は、約100nM以下の、ARAF、BRAF、及び/又はCRAFの一つ、二つ、又は三つに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、汎RAF阻害剤は、約50nM以下の、ARAF、BRAF、及び/又はCRAFの一つ、二つ、又は三つに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、汎RAF阻害剤は、約10nM以下の、ARAF、BRAF、及び/又はCRAFの一つ、二つ、又は三つに対する結合親和性を有する。別の実施態様では、汎RAF阻害剤は、約1nM以下の、ARAF、BRAF、及び/又はCRAFの一つ、二つ、又は三つに対する結合親和性を有する。特定の実施態様では、汎RAF阻害剤は、1,000nM以下のIC50を有するARAF、BRAF及び/又はCRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、汎RAF阻害剤は、500nM以下のIC50を有するARAF、BRAF及び/又はCRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、汎RAF阻害剤は、50nM以下のIC50を有するARAF、BRAF及び/又はCRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、汎RAF阻害剤は、10nM以下のIC50を有するARAF、BRAF及び/又はCRAFシグナル伝達を阻害する。別の実施態様では、汎RAF阻害剤は、1nM以下のIC50を有するARAF、BRAF及び/又はCRAFシグナル伝達を阻害する。本発明に従って使用され得る汎RAF阻害剤の例には、限定されないが、LY-3009120、HM95573(GDC-5573)、LXH-254、MLN2480、BeiGene-283、RXDX-105、BAL3833、レゴラフェニブ、及びソラフェニブ、又はそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。汎RAF阻害剤は、ARAF、BRAF、及び/又はCRAF並びに一又は複数の追加の標的を阻害し得る。好ましい汎RAF阻害剤は、PCT出願の国際公開第2013/100632号、同第2014/151616号、及び同第2015/075483号に記載されており、これらのそれぞれは、その全内容が本明細書に参照により援用される。
【0047】
いくつかの実施態様では、「汎RAF阻害剤」は、RAF二量体(例えば、RAFヘテロ二量体、例えばBRAF-CRAFヘテロ二量体)を結合及び阻害することができる「汎RAF二量体阻害剤」である。汎RAF二量体阻害剤は、RAF二量体(例えば、RAFヘテロ二量体、例えばBRAF-CRAFヘテロ二量体)に加えて、RAFモノマーも結合及び阻害することができる。汎RAF二量体阻害剤は、例えば、二つ以上のRAFファミリーメンバーの活性化又は機能を減少させる、ブロックする、阻害する、廃止する、又はそれに干渉することができるII型RAF阻害剤を含む。
【0048】
用語「PI3K阻害剤」とは、クラスI、II、III、及びIVのPI3Kを含む、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)の一又は複数のクラスの活性化又は機能を減少させる、ブロックする、阻害する、廃止する、又はそれに干渉する分子を指す。PI3Kの四つのクラスは、構造及び基質特異性に基づいて分類される。クラスI PI3Kは、がんのようなヒトの疾患に最も密接に関連している。クラスI PI3Kは、四つの異なるアイソフォーム、つまりPI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ、及びPI3Kδにさらに分けることができる。
【0049】
いくつかの実施態様では、PI3K阻害剤は「汎PI3K阻害剤」であり、これは、その他のキナーゼ酵素よりもクラスI PI3Kを優先的に阻害することができる任意の化合物を意味する。例えば、汎クラスI PI3K阻害剤は、クラスI PI3Kに対して、関連するホスファチジルイノシトール3キナーゼ関連キナーゼ(PIKK)、哺乳動物のラパマイシン標的(mTOR)を含む他のキナーゼよりも少なくとも2倍強力、好ましくは少なくとも5倍強力、より好ましくは少なくとも10倍強力である。特に、PI3K阻害剤は、小分子であってもよく、又は生体高分子であってもよい。典型的には、PI3K阻害剤は、小分子、好ましくは、米国特許公開第2010/0249126号に記載のもののような合成化合物である。
【0050】
他の実施態様では、PI3K阻害剤は、特定のPI3Kアイソフォームに対して特異的であり得る。例えば、「PI3Kα-特異的阻害剤」とは、少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、又は三つ)の他のPI3K クラスIアイソフォーム(PI3Kβ、PI3Kδ、及び/、又はPI3Kγ)よりも優先的にPI3Kαを阻害することができる任意の化合物を意味する。例えば、PI3Kα特異的阻害剤は、PI3KβよりもPI3Kαに対して、少なくとも2倍強力、好ましくは少なくとも5倍強力、より好ましくは少なくとも10倍強力であるが、PI3Kδ及び/又はPI3Kγ又は他の非クラスI PI3K、例えばクラスII PI3Ks(例えばPI3K-C2α)、クラスIII PI3K(例えばVps34)、又はクラスIV PI3K(例えばmTOR又はDNA-PK)に対して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍強力であっても、又は強力でなくてもよい。同様に、「PI3Kδ-特異的阻害剤」とは、少なくとも一つ(例えば、一つ、二つ、又は三つ)の他のPI3K クラスIアイソフォーム(PI3Kα、PI3Kβ、及び/、又はPI3Kγ)よりも優先的にPI3Kδを阻害することができる任意の化合物を意味する。
【0051】
「KRAS活性化変異」は、Krasタンパク質の活性GTP結合状態を指示することにより増加し且つ/又は構成的な活性に関連する異常なKrasタンパク質機能をもたらすKRAS遺伝子の任意の変異(すなわち、核酸変異)又はKrasタンパク質の任意の変異(すなわち、アミノ酸変異)である。この変異は、GTP結合を支持する部位で保存され、構成的に活性なKrasタンパク質であり得る。ある場合には、変異は、KRAS遺伝子のコドン12、13、及び16の一又は複数にある(例えば、グリシン(G)の代わりにアミノ酸位置13でアスパラギン酸(D)を有するKRASタンパク質、すなわちKRAS-G13D変異タンパク質をもたらすKRAS c.38G>A 塩基転移変異)。他の例示的なKRAS活性化変異には、例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、及びKRAS-Q61R、並びにKrasタンパク質の示されたアミノ酸変化をコードするKRAS遺伝子における対応する核酸変異が含まれる。
【0052】
「NRAS活性化変異」は、Nrasタンパク質の活性GTP結合状態を指示することにより増加し且つ/又は構成的な活性に関連する異常なNrasタンパク質機能をもたらすNRAS遺伝子の任意の変異(すなわち、核酸変異)又はNrasタンパク質の任意の変異(すなわち、アミノ酸変異)である。この変異は、GTP結合を支持する部位で保存され、構成的に活性なNrasタンパク質であり得る。ある場合では、変異は、NRAS遺伝子のコドン12、13、及び16の一又は複数にある。例示的なNRAS活性化変異には、例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、and NRAS-Q61P、並びにNrasタンパク質の示されたアミノ酸改変をコードするNRAS遺伝子における対応する核酸変異が含まれる。
【0053】
「BRAF活性化変異」は、B-Rafタンパク質の活性GTP結合状態を指示することにより増加し且つ/又は構成的な活性に関連する異常なB-Rafタンパク質機能をもたらすBRAF遺伝子の任意の変異(すなわち、核酸変異)又はB-Rafタンパク質の任意の変異(すなわち、アミノ酸変異)である。この変異は、RAS-GTP結合を支持する部位で保存され、構成的に活性なB-Rafタンパク質であり得る。ある場合では、変異はBRAF遺伝子のコドン600にある。例示的なBRAF活性化変異には、例えば、BRAF-V600E、BRAF-V600K、BRAF-V600R、及びBRAF-V600D、並びにB-Rafタンパク質の示されたアミノ酸改変をコードするBRAF遺伝子における対応する核酸変異が含まれる。
【0054】
本明細書における「個体」、「患者」又は「対象」とは、がん等の細胞増殖性疾患又は障害の一又は複数の兆候、症状、又は他の指標を経験しているか、経験したことがあるか、それを発症するリスクを有するか、又はその家族歴を有する、治療に適格な動物(例えば、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、非ヒト霊長類、及びヒトを含む)を指す。患者として含まれることが意図されるのは、疾患のいかなる臨床的兆候も示さない臨床研究治験に関与するか、疫学的研究に関与するか、又は一度対照として使用された任意の患者である。患者は、MAPKシグナル伝達阻害剤、別の薬物(例えばPI3K阻害剤)でこれまでに治療されていても、これまでに治療されてなくてもよい。患者は、治療が開始されるときに使用された追加の薬物に対してナイーブであってもよい、すなわち、患者は、「ベースライン」で(すなわち、治療が開始される前に対象をスクリーニングする日等、本明細書中の治療法における一又は複数のMAPK経路及び/又はPI3K阻害剤(例えば汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれか)の最初の用量の投与前の時点における設定点において)、例えば、MAPKシグナル伝達阻害剤(例えば、MEK阻害剤、BRAF阻害剤、ERK阻害剤、CRAF阻害剤、又はRAF阻害剤)又はPI3K阻害剤を含むもの以外の治療法で以前に治療されていなくてもよい。このような「ナイーブ」患者又は対象は、一般に、そのような追加の薬物を用いた治療の候補者であると考えられる。
【0055】
用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定しないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0056】
「変異」は、一若しくは複数のヌクレオチド又は一若しくは複数のアミノ酸の、野生型配列等のそれぞれ参照ヌクレオチド配列又は参照アミノ酸配列に対する欠失、挿入、又は置換である。
【0057】
本明細書で互換可能に使用される「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチド又は塩基、及び/又はそれらの類似体、或いはDNA若しくはRNAポリメラーゼにより、又は合成反応によりポリマー中に取り込み可能な任意の基質であり得る。よって、例えば、本明細書で規定されるポリヌクレオチドは、限定しないが、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域を含むDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖領域を含むRNA、一本鎖、若しくはより典型的には、二本鎖であり得るか、又は一本鎖及び二本鎖領域を含み得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子を含む。加えて、本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド」とは、RNA若しくはDNA、又はRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。このような領域における鎖は、同じ分子からであっても、異なる分子からであってもよい。領域は、分子の一又は複数の全てを含んでいてもよいが、より典型的には、分子のいくつかの1領域のみを含む。三重らせん領域の分子のうちの1つは、多くの場合オリゴヌクレオチドである。用語「ポリヌクレオチド」は、具体的には、cDNAを含む。
【0058】
ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在するならば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーの組み立ての前又は後になされ得る。ヌクレオチドの配列は非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは合成後に標識とのコンジュゲーションによるなどして更に修飾されてもよい。この他の修飾の種類は、例えば「キャップ」、類似体での一又は複数の天然ヌクレオチドの置換、例えば非荷電結合を有するもの(例:メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート等)及び荷電結合を有するもの(例:ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)のようなヌクレオチド間修飾、ペンダント部分、例えばタンパク質(例:クレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン等)を含有するもの、インターカレーター(例:アクリジン、ソラレン等)を有するもの、キレート剤(例:金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾結合(例:アルファアノマー核酸等)を有するもの、並びにポリヌクレオチド(類)の未修飾形態を含む。さらに、糖類に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基によって置換されていてもよく、標準の保護基によって保護されていてもよく、又は活性化されてさらなるヌクレオチドに対するさらなる結合を調製してもよく、又は固体若しくは半固体の支持体にコンジュゲートされていてもよい。5’及び3’末端のOHはリン酸化され得、又はアミン若しくは1から20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換され得る。また他のヒドロキシル類は標準的な保護基に誘導体化されてもよい。またポリヌクレオチドは当該分野で一般的に知られているリボース又はデオキシリボース糖類の類似形態のもの、例えば2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-又は2’-アジド-リボース、炭素環式糖の類似体、α-アノマー糖類、エピマー糖類(例えばアラビノース)、キシロース類又はリキソース類、ピラノース糖類、フラノース糖類、セドヘプツロース類、非環式類似体、及び脱塩基性ヌクレオシド類似体(例えばメチルリボシド)も含有し得る。一又は複数のホスホジエステル結合は代替の結合基で置き換えられる場合がある。こうした代替の結合基は、限定されないが、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、「(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)で置き換えられる実施態様を含み、ここで各R又はR’は独立にHであるか、又は、場合によってエーテル(-O-)結合を含んでいてもよい置換若しくは非置換のアルキル(1-20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル又はアラルキルである。ポリヌクレオチド中のすべての結合が同一である必要はない。ポリヌクレオチドは、本明細書に記載される一又は複数の異なる種類の修飾及び/又は同じ種類の複数の修飾を含有し得る。先の記述は、RNA及びDNAを含めた、本明細書で言及されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0059】
「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、必ずではないが、通常、長さが約250ヌクレオチド未満である、短い一本鎖ポリヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドは合成でもよい。用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は相互に排他的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の説明は、等しく十分にオリゴヌクレオチドにも適用可能である。
【0060】
用語「プライマー」は、一般的に、遊離3’-OH基を提供することによって、核酸にハイブリダイズし、相補的核酸の重合を可能にする一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
【0061】
用語「小分子」とは、約2,000ダルトン未満、好ましくは約500ダルトン未満の分子量を有する任意の分子を指す。
【0062】
用語「検出」は、直接的及び間接的な検出を含む検出する任意の手段を含む。
【0063】
本明細書で使用される用語「バイオマーカー」とは、試料中の検出され得る指標分子又は分子のセット(例えば、予測、診断、及び/又は予後指標)を指し、例えば、タンパク質のKRAS-G13D変異又はNRAS活性化変異及び/又はヌクレオチドレベルで対応する活性化変異(例えば、KRAS又はNRAS遺伝子のヌクレオチド変異、例えばKRAS c.38G>A ヌクレオチド置換変異)を含む。バイオマーカーは、予測バイオマーカーであり得、例えば、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤又はPI3K阻害剤での治療に対して、特定の疾患又は障害(例えば、増殖性細胞障害(例えば、がん))を有する患者の感受性又は利点の可能性の指標として機能し得る。バイオマーカーは、ポリヌクレオチド(例えばDNA及び/又はRNA(例えばmRNA))、ポリヌクレオチドコピー数改変(例えばDNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド及びポリヌクレオチド修飾(例えば翻訳後修飾)、炭水化物、及び/又は糖脂質系分子マーカーを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、上記のように、バイオマーカーは遺伝子である(例えば、KRAS又はNRAS遺伝子)。
【0064】
本明細書に使用される場合のバイオマーカーの「存在」は、生物学的試料中の検出可能な量である。これらは、当業者に既知で、本明細書にも開示されている方法により測定され得る。
【0065】
本明細書で使用される場合の「増幅させる」又は「増幅」とは、概して、所望の配列の複数のコピーを生成するプロセスを指す。「複数のコピー」とは、少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は、鋳型配列に対する完全な配列相補性又は同一性を必ずしも意味しない。例えば、コピーは、デオキシイノシン等のヌクレオチド類似体、意図的な配列改変(例えば、鋳型とハイブリダイズ可能だが相補的ではない配列を含むプライマーを介して導入される配列改変)、及び/又は増幅中に発生する配列誤差を含み得る。
【0066】
用語「多重PCR」は、単一の反応内で二以上のDNA配列を増幅させる目的で二以上のプライマーセットを使用して、単一の供給源(例えば、個体)から得られた核酸上で実施される単一のPCR反応を指す。
【0067】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」の技術とは、概して、核酸、RNA及び/又はDNAの微量の特定の一片が、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されるように増幅される、手順を指す。概して、オリゴヌクレオチドプライマーが設計され得るように、目的とする又はそれ以上の領域の端部からの配列情報が利用可能である必要があり;これらのプライマーは、増幅される鋳型の逆鎖と、配列において同一又は同様である。2つのプライマーの5’末端ヌクレオチドは、増幅される材料の端部と一致し得る。PCRは、ゲノムDNA全体からの特定のRNA配列、特定のDNA配列、及び細胞RNA配列、バクテリオファージ配列、又はプラスミド配列等の全体から転写されたcDNAを増幅させるために使用することができる。概して、Mullis et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263 (1987) and Erlich, ed., PCR Technology, (Stockton Press, NY, 1989)を参照のこと。本明細書で使用される場合、PCRは、プライマーとして既知の核酸(DNA又はRNA)を使用することを含む、核酸試験試料を増幅させるための核酸ポリメラーゼ反応法の一例と見なされるが、唯一の例とは見なされず、核酸の特定の一片を増幅若しくは生成するため、又は特定の核酸に対して相補的である核酸の特定の一片を増幅若しくは生成するために、核酸ポリメラーゼを用いるものである。
【0068】
「定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応」又は「qRT-PCR」とは、PCR生成物の量がPCR反応の各工程において測定される、PCRの形態を指す。この技術は、例えば、Cronin et al., Am. J. Pathol. 164(1):35-42 (2004)及びMa et al., Cancer Cell 5:607-616 (2004)を含む、様々な刊行物に記載されている。
【0069】
用語「マイクロアレイ」とは、基質上の、ハイブリダイズ可能なアレイ要素、好ましくはポリヌクレオチドプローブの秩序配置を指す。
【0070】
本明細書で使用される場合の用語「試料」とは、例えば、物理的、生化学的、化学的及び/又は生理学的特性に基づいて特徴付けられる及び/又は同定される細胞実体及び/又は他の分子実体を含有する、対象(目的の個体)から得られるか又は由来する組成物を指す。例えば、「疾患試料」という語句及びその変形は、特徴付けられることになる細胞実体及び/又は分子実体を含有することが予想され得るか、又は含有することが知られている、目的の対象から得られた任意の試料を指す。試料は、限定されないが、組織試料(例えば、腫瘍組織試料)、初代若しくは培養細胞又は細胞株、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、卵胞液、精液、羊膜液、乳、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物、及び組織培養培地、組織抽出物、例えば均質化組織、腫瘍組織、細胞抽出物、並びにこれらの組み合わせを含む。
【0071】
「組織試料」は、対象又は個体の組織から得られた類似の細胞の集合を意味する。組織試料の供給源は、新鮮な、凍結した、及び/又は保存された器官、組織試料、生検、及び/又は吸引物からの固体組織;血液又は血漿のような何らかの血液成分;脳脊髄液、羊水、腹水、又は間質液のような体液;並びに対象の妊娠又は発育の任意の時期からの細胞であってもよい。組織試料は、初代若しくは培養細胞又は細胞株でもよい。任意選択的に、組織試料は疾患組織/器官から得られる。例えば、「腫瘍組織試料」は、腫瘍又は他のがん性組織から得られる組織試料である。組織試料は、細胞型(例えば、腫瘍細胞及び非腫瘍細胞、がん性細胞及び非がん性細胞)の混合集団を含有し得る。組織試料は、本質的に組織と自然に混在しない化合物、例えば、防腐剤、抗凝血剤、緩衝剤、定着剤、栄養剤、抗生物質などを含有し得る。
【0072】
本明細書で使用される「基準試料」、「基準細胞」、「基準組織」、「コントロール試料」、「コントロール細胞」、又は「コントロール組織」は、比較を目的として使用される試料、細胞、組織、標準、又はレベルを指す。一実施態様では、基準レベル、基準試料、基準細胞、基準組織、コントロール試料、コントロール細胞、又はコントロール組織は、同じ対象又は個体の身体(例えば、組織又は細胞)の健常な及び/又は非疾患性の部分から得られる。例えば、基準レベル、基準試料、基準細胞、基準組織、コントロール試料、コントロール細胞、又はコントロール組織は、疾患細胞又は組織に隣接する健常及び/又は非疾患の細胞又は組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞又は組織)であり得る。別の実施態様では、基準試料は同じ対象又は個体の身体の未処理組織及び/又は細胞から得られる。また別の実施態様では、基準レベル、基準試料、基準細胞、基準組織、コントロール試料、コントロール細胞、又はコントロール組織は、対象又は個体ではない個体の身体(例えば、組織又は細胞)の、健常な及び/又は非疾患性の部分から得られる。さらに別の実施態様では、基準レベル、基準試料、基準細胞、基準組織、コントロール試料、コントロール細胞、又はコントロール組織は、対象又は個体ではない個体の身体の未処理組織及び/又は細胞から得られる。
【0073】
本明細書の目的のために、組織試料の「切片」とは、組織試料の単一の部分又は片、例えば、組織試料から切り出した組織又は細胞の薄片を意味する。組織試料の複数の切片が採取及び分析され得ることが理解され、但し、組織試料の同じ切片が、形態学的レベル及び分子レベルの両方で分析され得るか、又はポリペプチド(例えば、免疫組織化学によって)及び/若しくはポリヌクレオチド(例えば、in situハイブリダイゼーションによって)に関して分析され得ることが理解されるものとする。
【0074】
「相関」又は「相関する」とは、第1の分析又はプロトコールの成績及び/又は結果と、第2の分析又はプロトコールの成績及び/又は結果とを任意の方法で比較することを意味する。例えば、第1の分析又はプロトコールの結果を、第2のプロトコールの実施に使用してもよいし、及び/又は第2の分析又はプロトコールを実施すべきかどうかを決定するために第1の分析又はプロトコールの結果を使用してもよい。ポリペプチド分析又はプロトコールの実施態様に関して、特定の治療レジメンを実施すべきかどうかを決定するためにポリペプチド発現分析又はプロトコールの結果を使用してもよい。ポリヌクレオチド分析又はプロトコールの実施態様に関して、特定の治療レジメンを実施すべきかどうかを決定するためにポリヌクレオチド発現分析又はプロトコールの結果を使用してもよい。
【0075】
「個体応答」又は「応答」は、(1)減速若しくは完全抑止を含む、疾患進行(例えば、がん進行)のある程度の阻害、(2)腫瘍サイズの低減、(3)隣接する末梢器官及び/又は組織へのがん細胞浸潤の阻害(すなわち、低減、減速、若しくは完全停止)、(4)転移の阻害(すなわち、低減、減速、若しくは完全停止)、(5)疾患又は障害(例えば、がん)に関連する一又は複数の症状のある程度の緩和、(6)全生存期間及び無増悪生存率を含む生存期間の長さの増加若しくは延長、並びに/又は(7)治療後の所与の時間点における死亡率の低下を含むが、これらに限定されない、個体に対する利益を示す任意のエンドポイントを使用して、評価することができる。
【0076】
治療に対する個体の「有効な応答」又は個体の「応答性」とは、がんなどの疾患又は障害のリスクを有するか又はそのような疾患又は障害を有する患者にもたらされる臨床的又は治療的恩恵を指す。一実施形態では、このような恩恵は、生存期間(全生存期間及び/又は無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的応答(完全奏功若しくは部分奏功を含む)をもたらすこと、又はがんの徴候若しくは症状を改善することのうちの任意の一又は複数を含む。一実施態様では、少なくとも一つのバイオマーカー(例えば、KRAS-G13D変異又はNRAS活性化変異)は、バイオマーカーを有しないか又は発現しない患者と比較して、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)を単独で又はMEK阻害剤、PI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤)及び/若しくは追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)と組み合わせて含む治療に対して応答性である可能性が高いことが予測される患者を同定するために使用される。一実施態様では、少なくとも一つのバイオマーカー(例えば、KRAS-G13D変異又はNRAS活性化変異)は、バイオマーカーを有しないか又は発現しない患者と比較して、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)を単独で又はMEK阻害剤、PI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤)及び/若しくは追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)と組み合わせて含む治療に対して応答性である可能性が高いことが予測される患者を同定するために使用される。
【0077】
「応答性」とは、完全奏功(CR)又は部分奏功(PR)を含む測定可能な応答を指す。いくつかの実施態様では、「客観的奏効率(ORR)」とは、完全奏功(CR)率と部分奏功(PR)率の合計を指す。
【0078】
「完全奏功」又は「CR」とは、治療に応じて、がん等の細胞増殖性障害の全ての兆候の消失(例えば、全ての標的病変の消失)を意図するものである。これは、疾患(例えば、がん)が治療されていることを必ずしも意味しない。
【0079】
「持続性の応答」は、治療の休止後の腫瘍増殖の低減に対する持続性の効果を指す。例えば、腫瘍のサイズは、医薬投与フェーズの開始時のサイズと比較して同じサイズであるか又は小さい場合がある。いくつかの実施様態では、持続性の応答は、治療期間と少なくとも同じ期間、治療期間の少なくとも1.5x、2.0x、2.5x、又は3.0x、又はそれ以上の長さを有する。
【0080】
本明細書で使用される場合、「がん再発を低減又は阻害する」とは、腫瘍若しくはがんの再発又は腫瘍若しくはがんの進行を低減又は阻害することを意味する。本明細書で開示される場合、がんの再発及び/又はがんの進行は、がんの転移を含むがこれに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「部分奏功」又は「PR」とは、治療に応じて、一又は複数の腫瘍又は病変のサイズ、又は身体中のがんの範囲の減少を指す。例えば、いくつかの実施態様では、PRとは、標的病変の最長直径(SLD)の合計の少なくとも30%の減少を指し、ベースラインSLDを基準と見なす。
【0082】
用語「生存期間」とは、患者が生存していることを指し、全生存期間と無増悪生存期間を含む。
【0083】
本明細書において使用される「無増悪生存」又は「PFS」は、治療されている疾患(例えばがん)が悪化しない治療中及び治療後の時間の長さを指す。無増悪生存は、患者が完全奏功又は部分奏功を経験した時間の量、並びに患者が安定な疾患を経験した時間の量を含み得る。
【0084】
本明細書において使用される「全生存」又は「OS」は、特定の期間後に生存するであろう群に含まれる個体のパーセンテージを指す。
【0085】
「生存期間を延長すること」とは、未治療の患者と比較して(すなわち、医薬で治療されていない患者と比較して)、又は指定されたレベルでバイオマーカーを発現しない患者と比較して、及び/又は抗腫瘍剤で治療された患者と比較して、治療される患者において全生存期間又は無増悪生存期間が増加することを意味する。
【0086】
「治療的有効量」とは、哺乳動物の疾患又は障害を治療又は予防するための治療剤の量を指す。がんの場合、治療的有効量の治療剤は、がん細胞数を減少させ;原発腫瘍のサイズを縮小させ;末梢器官へのがん細胞浸潤を阻害し(即ち、ある程度減速させ、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害し(即ち、ある程度減速させ、好ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度阻害し;及び/又は障害に関連する一つ又は複数の症状をある程度緩和し得る。薬剤は、既存のがん細胞の増殖を予防し、且つ/又は既存のがん細胞を死滅させうる範囲で、細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性であり得る。がん療法の場合、in vivoでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行の期間(TTP)、応答速度(例えば、CR及びPR)、応答期間、並びに/又は生活の質を評価することによって測定され得る。
【0087】
「障害」は、哺乳動物を問題の障害に罹患させる病態を含む、慢性及び急性の障害又は疾患を含むがこれらに限定されない、治療から恩恵を受けるであろういずれかの状態である。
【0088】
用語「がん」及び「がん性」とは、無秩序な細胞増殖によって典型的に特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指す。この定義には、良性及び悪性のがんが含まれる。がんの例には、癌腫;リンパ腫;芽細胞腫(髄芽腫及び網膜芽細胞腫を含む);肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む);神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び島細胞がんを含む);中皮腫;神経鞘腫(聴神経腫を含む);髄膜腫;腺癌;メラノーマ;並びに白血病又はリンパ性悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。このようながんのより具体的な例には、膀胱がん(例えば、尿路上皮膀胱がん(例えば、移行細胞又は尿路上皮がん、非筋肉浸潤膀胱がん、筋肉浸潤膀胱がん、及び転移性膀胱がん)及び非尿路上皮膀胱がん);扁平上皮細胞がん(例えば、上皮扁平上皮細胞がん);小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮がんを含む肺がん;腹膜のがん;肝細胞がん;胃腸がんを含む胃がん(gastric cancer)又は胃がん(stomach cancer);膵臓がん;膠芽腫;子宮頸がん;卵巣がん;肝臓がん;肝がん;乳がん(転移性乳がんを含む);結腸がん;直腸がん;結腸直腸がん;子宮内膜癌又は子宮癌;唾液腺癌;腎臓がん(kidney cancer)又は腎臓がん(renal cancer);前立腺がん;外陰部がん;甲状腺がん;肝癌;肛門癌;陰茎癌;メルケル細胞がん;菌状息肉腫;精巣がん;食道がん;胆道の腫瘍;頭頸部がん;ならびに血液学的悪性腫瘍が含まれる。いくつかの実施態様では、がんは、局所的な再発又は転移性疾患(局所再発疾患が治癒目的で切除を受けられない場合)を有する、任意の組織学的に確認されたトリプルネガティブ(ER-、PR-、HER2-)な乳房の腺癌を含むトリプルネガティブ転移性乳癌である。いくつかの実施態様では、がんは、メラノーマ、例えば、局所的な再発又は転移性疾患(局所再発疾患が治癒目的で切除を受けられない場合)を有するメラノーマを含む皮膚がんである。任意のがんは、早期段階又は後期段階にあり得る。「早期がん」又は「早期腫瘍」は、浸潤性でも転移性でもないがんを意味するか、又はステージ0、1若しくは2のがんに分類される。
【0089】
本明細書において使用される用語「腫瘍」とは、悪性又は良性を問わず、すべての腫瘍性細胞成長及び増殖並びにすべての前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。用語「がん」、「がん性」及び「腫瘍」とは、本明細書において言及される場合、互いを排除しない。
【0090】
用語「薬学的製剤」は、その中に含有される活性成分の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であって、製剤が投与される対象にとって許容できない毒性を有する他の成分を含まない調製物を指す。
【0091】
「薬学的に許容される添加物」は、対象に非毒性である、有効成分以外の薬学的製剤の成分を指す。薬学的に許容される添加物には、限定されないが、バッファー、担体、安定剤又は保存剤が含まれる。
【0092】
用語「薬学的に許容される塩」とは、生物学的に又はその他の点で望ましくないものではない塩をいう。薬学的に許容される塩は、酸及び塩基付加塩の双方を含む。「薬学的に許容される」という表現は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分及び/又はそれで治療されている哺乳動物と化学的及び/又は毒物学的に適合性でなければならないことを表す。
【0093】
用語「薬学的に許容される酸付加塩」は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸、並びに有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸のクラスから選択される有機酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸(embonic acid)、フェニル酢酸、メタンスルホン酸「メシレート」、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びサリチル酸と形成される、薬学的に許容される塩を指す。
【0094】
用語「薬学的に許容される塩基付加塩」とは、有機又は無機塩基と形成される、薬学的に許容される塩をいう。許容される無機塩基の例には、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩及びアルミニウム塩が含まれる。薬学的に許容される有機非毒性塩基から誘導される塩には、第1級、第2級及び第3級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン及びポリアミン樹脂の塩が含まれる。
【0095】
本明細書で用いられる場合、「治療」(及び「治療する(treat)」又は「治療している(treating)」などの文法的変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために又は臨床病理の過程において実行できる。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様において、汎RAF二量体阻害剤は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を減速させるために使用される。いくつかの実施態様では、汎RAF二量体阻害剤は、疾患の発症を遅延させるか又は疾患の進行を原則させるために、MEK阻害剤又はPI3K阻害剤(例えば汎PI3K阻害剤)と組み合わせて使用される。
【0096】
用語「抗がん療法」とは、がんを治療する際に有用な療法を指す。抗がん治療薬の例は、細胞傷害性剤、化学療法剤、成長阻害剤、放射線療法に使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及びがんを治療するための他の薬剤、例えば、抗CD20抗体、血小板由来増殖因子阻害剤(例えばGLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA受容体、TRAIL/Apo2の一又は複数に結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、及び他の生理活性且つ有機化学的薬剤などを含むが、これらに限定されない。それらの組み合わせも本発明に含まれる。
【0097】
本明細書で使用される場合の用語「細胞傷害性剤」は、細胞の機能を阻害又は防止し、及び/又は細胞破壊をもたらす物質を指す。該用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素、抗生物質、及び毒素、例えば、細菌、真菌、植物、若しくは動物起源の小分子毒素又は酵素活性毒素(その断片及び/又は変異体を含む)、並びに以下に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗がん剤を含むことが意図される。その他細胞傷害性剤は、以下に記載される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0098】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)(シクロホスファミド);アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロールメラミンを含むメチルアミルアミン及びエチレンイミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体トポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニマスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;抗生物質、例えばエンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I 及びカリケアマイシンω1I(例えば、Nicolaou et al., Angew. Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)参照)、ダイネミシン(dynemicin)Aを含むダイネミシン;エスペラミシン、並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、及びゾルビシン;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補液、例えばフォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デモコルシン;ジアジコン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド、例えばメイタンシン及びアンサマイトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えば、タキサン(TAXOL(登録商標)(パクリタキセル)(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANETM(Cremophorフリー、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, IL)、及びTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル)(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France)を含む);クロラムブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金又は白金系化学療法剤及び白金アナログ、例えばシスプラチンTM、カルボプラチン、オキサリプラチン(ELOXATIN)、サトラプラチン、ピコプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、及びリポプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のいずれかの薬学的に許容される塩又は酸;並びに上記のうちの二つ以上の組み合わせ、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略)、及びFOLFOX(5-FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン(ELOXATINTM)を用いた治療レジメンの略)が含まれる。さらなる化学療法剤は、メイタンシノイド(例えばDM1)及びアウリスタチン(例えばMMAE及びMMAF)のような抗体薬物コンジュゲートとして有用な細胞傷害性剤を含む。
【0099】
「化学療法剤」はまた、がんの成長を促進し得るホルモンの作用を調節、低減、ブロック又は阻害するように作用し、且つしばしば全身性、若しくは全身治療の形態の「抗ホルモン剤」又は「内分泌治療法」も含む。これらはそれ自体がホルモンである。これらの例には、抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)(例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む);抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方制御因子(ERD);卵巣を抑制又は閉鎖するように機能する薬剤、例えば、LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)ロイプロリドアセテート、酢酸ゴセレリン、ブセレリン酢酸塩及びトリプテレリン(tripterelin)といった黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;他の抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド;並びに例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールといった、酵素アロマターゼを阻害する、副腎におけるエストロゲン生成を調節するアロマターゼ阻害剤が含まれる。加えて、化学療法剤のこのような定義には、ビスホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロネート、NE-58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート、又はACTONEL(登録商標)リゼドロネート;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関与しているシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び上皮増殖因子受容体(EGFR);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ 1 阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ラパチニブジトシレート(GW572016としても知られるErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩又は酸が含まれる。
【0100】
化学療法剤には、抗体、例えばアレムツズマブ(Campath(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar(登録商標)、Corixia)、及び抗体薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も含まれる。本発明の化合物と組み合わせられる薬剤として治療可能性を有する追加的なヒト化モノクローナル抗体には:アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガミシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツマブ、パクツズマブ、パクセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルピリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビシリズマブ、及びインターロイキン-12 p40タンパク質を認識するように遺伝的に修飾された組み換え独占的ヒト配列の完全長IgG1 λ抗体である抗インターロイキン-12(ABT-874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が含まれる。
【0101】
化学療法剤には「EGFR阻害剤」も含まれ、これは、EGFRに結合するか又は結合しなくともEGFRと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を妨げるか又は低減し、代替的に「EGFRアンタゴニスト」と呼ばれる。このような薬剤の例には、EGFRに結合する抗体及び小分子が含まれる。EGFRに結合する抗体の例には、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4943 533号、Mendelsohn et al.参照)及びその変異体、例えば、キメラ化225(C225又はセツキシマブ;ERBUTIX(登録商標)及び再構成されたヒト225(H225)(国際公開第96/40210号、Imclone Systems Inc.参照);IMC-11F8、完全ヒト、EGFR標的化抗体(Imclone);タイプII変異EGFRに結合する抗体(米国特許第5212290号);米国特許第5891996号に記載のEGFR に結合するヒト化及びキメラ抗体;並びにEGFRに結合するヒト抗体、例えばABX-EGF又はパニツムマブ(国際公開第98/50433号、Abgenix/Amgen参照);EMD55900(Stragliotto et al. Eur. J. Cancer 32A:636-640 (1996));EGFR結合についてEGF及びTGF-アルファの両方と競合するEGFRに対して方向付けられたヒト化EGFR抗体であるEMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck);ヒトEGFR抗体、HuMax-EGFR(GenMab);E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3及びE7.6.3として知られ、米国特許第6235883号に記載される完全ヒト抗体;MDX-447(Medarex Inc);並びにmAb 806又はヒト化mAb 806(Johns et al., J. Biol. Chem. 279(29):30375-30384 (2004))が含まれる。抗EGFR抗体は、細胞傷害性剤とコンジュゲートし、よってイムノコンジュゲートを生成することができる(例えば、EP659439A2、Merck Patent GmbH参照)。EGFRアンタゴニストには、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498、並びに以下のPCT出願;国際公開第98/14451号、同第98/50038号、同第99/09016号、同第99/24037号に記載される化合物等の小分子が含まれる。特定の小分子EGFRアンタゴニストには、OSI-774(CP-358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標) Genentech/OSI Pharmaceuticals);PD 183805(CI 1033、2-プロペンアミド、N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]-6-キナゾリニル]-、ジヒドロクロリド、Pfizer Inc.);ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4-(3’-クロロ-4’-フルオロアニリノ)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca);ZM 105180((6-アミノ-4-(3-メチルフェニル-アミノ)-キナゾリン、Zeneca);BIBX-1382(N8-(3-クロロ-4-フルオロ-フェニル)-N2-(1-メチル-ピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、Boehringer Ingelheim);PKI-166((R)-4-[4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-6-イル]-フェノール);(R)-6-(4-ヒドロキシフェニル)-4-[(1-フェニルエチル)アミノ]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン);CL-387785(N-[4-[(3-ブロモフェニル)アミノ]-6-キナゾリニル]-2-ブチンアミド);EKB-569(N-[4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-3-シアノ-7-エトキシ-6-キノリニル]-4-(ジメチルアミノ)-2-ブテンアミド)(Wyeth);AG1478(Pfizer);AG1571(SU 5271;Pfizer);及び二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016又はN-[3-クロロ-4-[(3 フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]-6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]-2-フラニル]-4-キナゾリンアミン)が含まれる。
【0102】
化学療法剤には「チロシンキナーゼ阻害剤」も含まれ、これは、前段落に記載のEGFR標的化薬物;小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えばTakedaから入手可能なTAK165;ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤であるCP-724,714、(Pfizer及びOSI);優先的にEGFRに結合するがHER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB-569(Wyethから入手可能)といった二重HER阻害剤;ラパチニブ(GSK572016;Glaxo-SmithKlineから入手可能)、経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤;PKI-166(Novartisから入手可能);汎HER阻害剤、例えばカネルチニブ(CI-1033;Pharmacia);Raf-1阻害剤、例えばRaf-1シグナル伝達を阻害する、ISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス剤ISIS-5132;非HER標的化TK阻害剤、例えばメシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能);多標的化チロシンキナーゼ阻害剤、例えばスニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能);VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えばバタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能);MAPK細胞外調節キナーゼI阻害剤 CI-1040(Pharmaciaから入手可能);キナゾリン、例えばPD153035及び4-(3-クロロアニリノ)キナゾリン;ピリドピリミジン;ピリミドピリミジン;ピロロピリミジン、例えばCGP 59326、CGP 60261及びCGP 62706;ピラゾロピリミジン、4-(フェニルアミノ)-7H-ピロロ[2,3-d] ピリミジン;クルクミン(diferuloyl methane、4,5-ビス(4-フルオロアニリノ)フタルイミド);ニトロチオフェン部分を含有するチロホスチン;PD-0183805(Warner-Lamber);アンチセンス分子(例えばHERコード化核酸に結合するもの);キノキサリン誘導体(米国特許第5804396号);チルホスチン(tryphostin)(米国特許第5804396号);ZD6474(Astra Zeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);汎HER阻害剤、例えばCI-1033(Pfizer);AffinitacTM(ISIS 3521;Isis/Lilly);メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標));PKI 166(Novartis);GW2016(Glaxo SmithKline);CI-1033(Pfizer);EKB-569(Wyeth);セマキシニブ(Pfizer);ZD6474(AstraZeneca);PTK-787(Novartis/Schering AG);INC-1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標));又は以下の特許公開公報:米国特許第5804396号;国際公開第1999/09016号(American Cyanamid);国際公開第1998/43960号(American Cyanamid);国際公開第1997/38983号(Warner Lambert);国際公開第1999/06378号(Warner Lambert);国際公開第1999/06396号(Warner Lambert);国際公開第1996/30347号(Pfizer, Inc);国際公開第1996/33978号(Zeneca);国際公開第1996/3397号(Zeneca)及び国際公開第1996/33980(Zeneca)のいずれかに記載のものを含む。
【0103】
化学療法剤には、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCGライブ、ベバシズマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エルロチニブ(elotinib)、フィルグラスチム、ヒストレリンアセテート、イブリツモバブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、レナリドマイド、レバミソール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM-26、6-TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、並びにこれらの薬学的に許容される塩も含まれる。
【0104】
化学療法剤には、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセテート、コーチゾンアセテート、チクソコルトールピバル酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン アルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメサゾン、ベタメサゾン リン酸ナトリウム、デキサメタゾン、デキサメタゾン リン酸ナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン-17-ブチラート、ヒドロコルチゾン-17-吉草酸、アルクロメタゾンジプロピオネート(aclometasone dipropionate)、吉草酸ベタメサゾン、ベタメサゾンジプロピオネート、プレドニカルベート、クロベタゾン-17-ブチラート、クロベタゾール-17-プロピオナート、フルオコルトロンカプロン酸、ピバリン酸フルオコルトロン及びフルプレドニデンアセテート;免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAIDs)、例えばフェニルアラニン-グルタミン-グリシン(FEG)及びそのD-異性体型(feG)(IMULAN BioTherapeutics, LLC);抗リウマチ薬物、例えばアザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D-ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミドミノサイクリン、スルファサラジン、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断薬、例えばエタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、セルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標))、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、インターロイキン1(IL-1)遮断薬、例えばアナキンラ(KINERET(登録商標)),T細胞同時刺激遮断薬、例えばアバタセプト(ORENCIA(登録商標))、インターロイキン6(IL-6)遮断薬、例えばトシリズマブ(ACTEMERA(登録商標));インターロイキン13(IL-13)遮断薬、例えばレブリキズマブ;インターフェロンアルファ(IFN)遮断薬、例えばロンタリズマブ;ベータ7インテグリン遮断薬、例えばrhuMAbベータ7;IgE経路遮断薬、例えば抗M1プライム;分泌ホモトリマーLTa3及び膜結合ヘテロトリマーLTa1/β2遮断薬、例えば抗リンフォトキシンアルファ(LTa);種々の治療剤、例えばチオプラチン、PS-341、フェニルブチラート、ET-18-OCH3、及びファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L-739749、L-744832);ポリフェノール、例えばケルセチン、レスベラトロール、ピセタノール、没食子酸エピガロカテキン(epigallocatechine gallate)、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸;オートファジー阻害剤、例えばクロロキン;デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシン);ポドフィロトキシン;テガフール(UFTORAL(登録商標));ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標));ビホスホネート、例えばクロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE-58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、又はリセドロネート(ACTONEL(登録商標));上皮増殖因子受容体(EGF-R);ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン;ペリフォシン、COX-2阻害剤(例えばセレコキシブ又はエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えばPS341);CCI-779;ティピファニブ(R11577);ソラフェニブ、ABT510;Bcl-2阻害剤、例えばオブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標));ピクサントロン;ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、ロナファルニブ(SCH 6636、SARASARTM);及び上記のいずれかの薬学的に許容される塩又は酸;並びに上記の二つ以上の組み合わせも含まれる。
【0105】
本明細書において使用される用語「プロドラッグ」は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞傷害性が低く、且つ酵素的に活性化可能若しくは更に活性な親形態に変換可能な薬学的に活性な物質の前駆体形態を指す。例えば、Wilman, 「Prodrugs in Cancer Chemotherapy」 Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting Belfast (1986)及びStella et al., 「Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery」 Directed Drug Delivery, Borchardt et al., (ed.), pp. 247-267, Humana Press (1985)を参照のこと。本発明のプロドラッグには、限定されないが、ホスフェート含有プロドラッグ、チオホスフェート含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾されたプロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、置換されていてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ若しくは置換されていてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、更に活性な細胞傷害性のない薬物に変換可能な5-フルオロサイトシン及びその他5-フルオロウリジンプロドラッグが含まれる。本発明における使用のためにプロドラッグ形態に誘導化することのできる細胞傷害性薬物の例には、限定されないが、上記のような化学療法剤が含まれる。
【0106】
本明細書で使用されるとき、「成長阻害剤」とは、in vitro又はin vivoのいずれかで細胞(例えば、成長がMAPK経路シグナル伝達に依拠する細胞)の成長及び/又は増殖を阻害する化合物又は組成物を指す。したがって、成長阻害剤は、S期で細胞の割合を有意に減少させるものでありうる。成長阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)ブロックする薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。旧知のM期ブロッカーには、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えば、アントラサイクリン抗生物質ドキソルビシン((8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンが含まれる。またG1停止させるこのような薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、「The Molecular Basis of Cancer」 Mendelsohn and Israel, eds., Chapter 1, entitled 「Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs」 by Murakami et al. (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特にp.13に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗がん剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果を招く脱重合を防ぐことによって微小管を安定化する。
【0107】
「放射線療法」とは、正常に機能する能力を制限するため又は完全に細胞を破壊するために、細胞に十分な損傷を誘導する有向性のガンマ線又はベータ線の使用を意味する。治療の線量及び継続期間を決定するために当技術分野で既知の多くの方法があることは明らかであろう。典型的な治療は、1回の投与として、1日当たり10から200単位(グレイ)の典型的な線量として施される。
【0108】
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、対象(例えば、患者)に化合物(例えば、阻害剤又はアンタゴニスト)又は薬学的組成物(例えば、阻害剤又はアンタゴニストを含む薬学的組成物)の投薬量を与える方法を意味する。投与することは、非経口、肺内、及び鼻腔内を含む任意の適切な手段であってもよく、また、局所治療が望まれるのであれば、病巣内投与であってもよい。非経口注入は、例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。投薬は、その投与が短期か又は長期かに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができる。限定されないが、様々な時間点にわたる、単回又は複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含む様々な投薬スケジュールが本明細書において考慮される。
【0109】
用語「共投与された」とは、投与の少なくとも一部が時間的に重なる二つ以上の治療剤の投与を指すために本明細書において使用される。したがって、同時投与は、一又は複数の他の薬剤の投与を中止した後に、一又は複数の薬剤の投与が継続するときの投与レジメンを含む。
【0110】
「低減する又は阻害する」とは、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はそれ以上の全体的減少を引き起こす能力を意味する。低減する又は阻害するとは、例えば、MAPKシグナル伝達経路/PI3K経路においてタンパク質の活性及び/又は機能のレベル(例えば、RAF、MEK及び/又はPI3K)を指し得る。さらに、低減する又は阻害するは、例えば、治療される障害(例えば、がん)の症状、転移の存在若しくはサイズ、又は原発腫瘍のサイズを指し得る。
【0111】
「添付文書」という用語は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに用いられ、そのような治療製品の適応症、用法、用量、投与、併用療法、使用に関する禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
【0112】
「製造品」は、少なくとも一つの試薬、例えば疾患若しくは障害(例えば、がん)の治療のための医薬、又は本明細書に記載のバイオマーカー(例えば、KRAS-G13D変異若しくはNRAS活性化変異)を特異的に検出するためのプローブを含む任意の製品(例えば、包装又は容器)又はキットである。特定の実施態様では、製品又はキットは、本発明に記載の方法を実施するためのユニットとして、奨励され、流通され、又は販売される。
【0113】
本明細書において使用されるときの語句「に基づいて」とは、一又は複数のバイオマーカーについての情報が、診断的決定、治療決定、添付文書上に提供される情報、又はマーケティング/販売促進ガイダンス等に情報を提供するために使用されることを意味する。
【0114】
III.方法
A.診断法
本発明は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤又はPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体を同定するための方法を提供する。該方法は、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をKRAS活性化変異(例えば、KRAS-G13D変異)についてスクリーニングすることを含み、ここで、試料中のKRAS活性化変異(例えば、KRAS-G13D変異)の存在は、個体を汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るものとして同定する。がんを有する個体のための治療を選択するための方法も提供される。これらの方法は、個体からの試料をKRAS活性化変異(例えば、KRAS-G13D変異)についてスクリーニングする工程を同様に含み、ここで、試料中のKRAS活性化変異(例えば、KRAS-G13D変異)の存在は、個体を汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るものとして同定する。がんを有する個体の治療のための治療有効性を最適化するための方法も提供され、ここで、治療は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤又はPI3K阻害剤を含む。汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤又はPI3K阻害剤を含む治療に対するがんを有する個体の応答性を予測するための方法がさらに提供される。これらの方法のいずれかは、個体に治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤を、例えばKRAS活性化変異(例えば、KRAS-G13D変異)の存在に基づき、投与することをさらに含み得る。さらに、これらの方法のいずれかは、個体に治療的有効量の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)を投与することをさらに含み得る。
【0115】
ある場合では、本発明は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体を、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすることに基づいて同定するための方法を提供し、ここで、試料中のKRAS-G13D変異の存在は、個体が汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受ける可能性が高いことを示す。スクリーニングは、例えば、個体の特定の遺伝子型を決定するために、KRAS遺伝子の全部又は一部を増幅及び配列決定することを含み得る。したがって、スクリーニングは、KRAS遺伝子のエクソン2の全部又は一部を特異的に増幅及び配列決定することを含んでもよく、ここで、KRAS遺伝子のエクソン2のコドン13のKRAS c.38G>A ヌクレオチド置換変異は、KRAS-G13D変異を示す。他の場合では、スクリーニングは、例えば、個体がKRAS-G13Dアミノ酸変異を有するかどうかを決定するために、KRASタンパク質の全部又は一部を配列決定することをさらに含み得る。個体がKRAS-G13D変異を有する場合は、該方法は、個体に治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を、任意選択的に一又は複数の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)と組み合わせて投与する工程をさらに含み得る。
【0116】
ある場合では、本発明は、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体のための治療を選択するための方法であって、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすることを含む方法も提供し、ここで、試料中のKRAS-G13D変異の存在は、個体を汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として同定する。スクリーニングは、例えば、個体の特定の遺伝子型を決定するために、KRAS遺伝子の全部又は一部を増幅及び配列決定することを含み得る。したがって、スクリーニングは、KRAS遺伝子のエクソン2の全部又は一部を特異的に増幅及び配列決定することを含んでもよく、ここで、KRAS遺伝子のエクソン2のコドン13のKRAS c.38G>A ヌクレオチド置換変異は、KRAS-G13D変異を示す。他の場合では、スクリーニングは、例えば、個体がKRAS-G13Dアミノ酸変異を有するかどうかを決定するために、KRASタンパク質の全部又は一部を配列決定することを含み得る。個体がKRAS-G13D変異を有する場合は、該方法は、個体に治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を、任意選択的に一又は複数の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)と組み合わせて投与する工程をさらに含み得る。
【0117】
ある場合では、本発明は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤)を含む治療から利益を受け得るがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体を、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をKRAS活性化変異(例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G13D、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、又はKRAS-Q61R)についてスクリーニングすることに基づいて同定するための方法を提供し、ここで、試料中のKRAS活性化変異の存在は、個体が汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤)を含む治療から利益を受ける可能性が高いことを示す。スクリーニングは、例えば、個体の特定の遺伝子型を決定するために、KRAS遺伝子の全部又は一部を増幅及び配列決定することを含み得る。したがって、スクリーニングは、KRAS遺伝子のコドン12、13、及び/又は61を特異的に増幅及び配列決定することを含み得る。他の場合では、スクリーニングは、例えば、個体がKRAS活性化アミノ酸変異を有するかどうかを決定するために、KRASタンパク質の全部又は一部を配列決定することを含み得る。個体がKRAS活性化変異を有する場合は、該方法は、個体に治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤)を、任意選択的に一又は複数の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)と組み合わせて投与する工程をさらに含み得る。ある場合では、個体はBRAF活性化変異を有しない。
【0118】
ある場合では、本発明は、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体のための治療を選択するための方法であって、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をKRAS活性化変異(例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G13D、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、又はKRAS-Q61R)についてスクリーニングすることを含む方法も提供し、ここで、試料中のKRAS活性化変異の存在は、個体を汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤)を含む治療から利益を受け得る者として同定する。スクリーニングは、例えば、個体の特定の遺伝子型を決定するために、KRAS遺伝子の全部又は一部を増幅及び配列決定することを含み得る。したがって、スクリーニングは、KRAS遺伝子のコドン12、13、及び/又は61を特異的に増幅及び配列決定することを含み得る。他の場合では、スクリーニングは、例えば、個体がKRAS活性化アミノ酸変異を有するかどうかを決定するために、KRASタンパク質の全部又は一部を配列決定することを含み得る。個体がKRAS活性化変異を有する場合は、該方法は、個体に治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤)を、任意選択的に一又は複数の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)と組み合わせて投与する工程をさらに含み得る。ある場合では、個体はBRAF活性化変異を有しない。
【0119】
本発明は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体を同定するための方法であって、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をNRAS活性化変異(例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、又はNRAS-Q61P)についてスクリーニングすることを含む方法も提供し、ここで、試料中のNRAS活性化変異の存在は、個体を汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として同定する。がんを有する個体のための治療を選択するための方法も提供される。これらの方法は、個体からの試料をNRAS活性化変異についてスクリーニングする工程を同様に含み、ここで、試料中のNRAS活性化変異の存在は、個体を汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として同定する。がんを有する個体の治療のための治療有効性を最適化するための方法も提供され、ここで、治療は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む。汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療に対するがんを有する個体の応答性を予測するための方法がさらに提供される。これらの方法のいずれかは、個体に治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を、例えばNRAS活性化変異の存在に基づき、投与することをさらに含み得る。さらに、これらの方法のいずれかは、個体に治療的有効量の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)を投与することをさらに含み得る。
【0120】
ある場合では、本発明は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体を、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をNRAS活性化変異(例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、又はNRAS-Q61P)についてスクリーニングすることに基づいて同定するための方法を提供し、ここで、試料中のNRAS活性化変異の存在は、個体が汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受ける可能性が高いことを示す。スクリーニングは、例えば、個体の特定の遺伝子型を決定するために、NRAS遺伝子の全部又は一部を増幅及び配列決定することを含み得る。したがって、スクリーニングは、NRAS遺伝子のコドン12、13、及び/又は61を特異的に増幅及び配列決定することを含み得る。他の場合では、スクリーニングは、例えば、個体がNRAS活性化アミノ酸変異を有するかどうかを決定するために、NRASタンパク質の全部又は一部を配列決定することを含み得る。個体がNRAS活性化変異を有する場合では、該方法は、個体に治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を、任意選択的に一又は複数の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)と組み合わせて投与する工程をさらに含んでもよい。
【0121】
ある場合では、本発明は、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体のための治療を選択するための方法であって、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をNRAS活性化変異(例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、又はNRAS-Q61P)についてスクリーニングすることを含む方法も提供し、ここで、試料中のNRAS活性化変異の存在は、個体を汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として同定する。スクリーニングは、例えば、個体の特定の遺伝子型を決定するために、NRAS遺伝子の全部又は一部を増幅及び配列決定することを含み得る。したがって、スクリーニングは、NRAS遺伝子のコドン12、13、及び/又は61を特異的に増幅及び配列決定することを含み得る。他の場合では、スクリーニングは、例えば、個体がNRAS活性化変異を有するかどうかを決定するために、NRASタンパク質の全部又は一部を配列決定することを含み得る。個体がNRAS活性化変異を有する場合は、該方法は、個体に治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を、任意選択的に一又は複数の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)と組み合わせて投与する工程をさらに含み得る。
【0122】
MEK阻害剤が治療の成分である先述の方法のいずれかでは、MEK阻害剤は、プロドラッグ又は生物学的に活性な形態であり得る小分子であり得る。例えば、MEK阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、ビニメチニブ(MEK162)、BI-847325、トラメチニブ、GDC-0623、G-573、及びCH5126766(RO5126766)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される小分子であり得る。特定の場合では、小分子阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、又はビニメチニブ(MEK162)、又はその薬学的に許容される塩である。
【0123】
PI3K阻害剤が治療の成分である先述の方法のいずれかでは、PI3K阻害剤は、プロドラッグ又は生物学的に活性な形態であり得る小分子であり得る。例えば、小分子阻害剤は、ピクチリシブ(GDC-0941)、タセリシブ(GDC-0032)、及びアルペリシブ(BYL719)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。PI3K阻害剤は、汎PI3K阻害剤(例えば、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩)、又はPI3Kα特異的阻害剤及び/又はPI3Kδ特異的阻害剤であり得る。
【0124】
先述の方法のいずれかでは、汎RAF阻害剤は汎RAF二量体阻害剤であり得る。特定の場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)は、プロドラッグ又は生物学的に活性な形態であり得る小分子であり得る。特定の場合では、汎RAF二量体阻害剤は、HM95573、LY-3009120、AZ-628、LXH-254、MLN2480、BeiGene-283、RXDX-105、BAL3833、レゴラフェニブ、又はソラフェニブ、又はその薬学的に許容される塩であり得る。
【0125】
開示される方法及びアッセイは、患者を治療するための適切な又は有効な治療法の評価に有用なデータ及び情報を得るために、簡便で、効率的で、潜在的に費用効率の高い手段を提供する。例えば、患者は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤での治療の前及び/又は後に組織試料(例えば、腫瘍生検又は血液試料)を提供し、試料は、患者の細胞が汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤に対して感受性があるかどうかを決定するために、様々なin vitroアッセイによって試験され得る。
【0126】
先述の方法のいずれかでは、個体から得られる試料中のKRAS及び/若しくはNRAS遺伝子、mRNA、又はタンパク質産物の特定の変異状態の特定は、当業者によく知られる数多くの方法のいずれかにより実施され得る。例えば、変異の特定は、KRAS及び/又はNRAS遺伝子、又はその一部をクローニングすること、及び当該技術分野で知られる技術を使用してそれを配列決定することにより達成することができる。あるいは、遺伝子配列は、例えばPCRを使用してゲノムDNAから、及び配列決定された生成物から増幅することができる。所与の遺伝子座の変異について患者のDNAを分析するためのいくつかの非制限的な方法を以下に記載する。
【0127】
DNAマイクロアレイ技術、例えばDNAチップ装置及びハイスループットスクリーニングのための高密度マイクロアレイ及び低密度マイクロアレイも使用され得る。マイクロアレイファブリケーションのための方法は、当該技術分野で知られており、様々なインクジェット及びマイクロジェット堆積又はスポッティング技術及びプロセス、in situ又はオンチップフォトリソグラフィーオリゴヌクレオチド合成プロセス、並びに電子DNAプローブアドレスプロセスを含む。DNAマイクロアレイハイブリダイゼーションアプリケーションは、点突然変異、一塩基多型(SNP)、及び短縦列反復(STR)の遺伝子発現分析及び遺伝子型分析の分野で首尾よく適用されている。追加の方法には、干渉RNAマイクロアレイ並びにマイクロアレイと他の方法、例えばレーザー捕獲顕微解剖(LCM)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)及びクロマチン免疫沈降(ChiP)の組み合わせが含まれる。例えば、He et al. (2007) Adv. Exp. Med. Biol. 593:117-133及びHeller (2002) Annu. Rev. Biomed. Eng. 4:129-153を参照のこと。他の方法には、PCR、xMAP、インベーダーアッセイ、質量分析、及びピロシーケンスが含まれる(Wang et al. (2007) 593:105-106)。
【0128】
別の検出法は、多型部位に重なり、多型領域の周囲に約5、又は10、又は20、又は25、又は30のヌクレオチドを有するプローブを使用する対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションである。例えば、特定の突然変異体(例えば、KRAS c.38G>Aヌクレオチド置換変異に相当するKRAS-G13D)を特異的にハイブリダイズすることが可能ないくつかのプローブは、固相担体、例えば「チップ」に結合している。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィを含む様々な方法により固体担体に結合し得る。「DNAプローブアレイ」とも称される、オリゴヌクレオチドを含むこれらのチップを使用する変異検出分析は、例えばCronin et al. (1996) Human Mutation 7:244に記載されている。
【0129】
他の検出法では、突然変異体を同定する前に遺伝子の少なくとも一部を初めに増幅することが必要である。増幅は、例えば、PCR及び/又はLCR又は当該技術分野でよく知られる他の方法によって実施することができる。
【0130】
ある場合では、対象からのDNAにおける特異的変異の存在は、制限酵素分析によって示すことができる。例えば、特定の突然変異は、別の突然変異体のヌクレオチド配列又は遺伝子の野生型バージョンに存在しない制限部位を含むヌクレオチド配列をもたらし得る。
【0131】
さらなる実施態様では、切断剤(例えば、ヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミン、又は四酸化オスミウム、及びピペリジンを有するもの)からの保護は、RNA/RNA、DNA/DNA、又はRNA/DNAヘテロ二本鎖における不適正塩基を検出するのに使用することができる(例えば、Myers et al. (1985) Science 230:1242を参照のこと)。一般に、「不適正切断」の技術は、組織試料から得られる試料核酸、例えばRNA又はDNAで標識されていてもよい、遺伝子の対立遺伝子変異体のヌクレオチド配列を含むコントロール核酸、例えばRNA又はDNAをハイブリダイズすることにより形成されるヘテロ二本鎖を提供することによって開始する。二本鎖は、コントロール鎖と試料鎖との間の塩基対不適正に基づいて形成される二本鎖のような二本鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理される。例えば、RNA/DNA鎖を二本鎖は、RNaseで処理することができ、DNA/DNAハイブリッドはS1ヌクレアーゼで処理して、不適正領域を酵素的に消化することができる。あるいは、DNA/DNA又はRNA/DNA二本鎖のいずれかは、不適正領域を消化するために、ヒドロキシルアミン又は四酸化オスミウム、及びピペリジンで処理することができる。不適正領域の消化後、得られた材料は、その後、変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズにより分離され、コントロール核酸及び試料核酸が同一のヌクレオチド配列を有するか又はどのヌクレオチドが異なっているかが決定される。例えば、米国特許第6,455,249号、Cotton et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397; Saleeba et al. (1992) Meth. Enzymol. 217 (286-295)を参照のこと。
【0132】
電気泳動移動度の改変は、特定の対立遺伝子変異体を同定するのにも使用され得る。例えば、一本鎖構造多型(SSCP)は、変異核酸と野生型核酸との間の電気泳動移動度の差異を検出するために使用され得る(Orita et al. (1989) Proc Natl. Acad. Sci USA 86:2766; Cotton (1993) Mutat. Res. 285:125-144及びHayashi (1992) Genet. Anal. Tech. Appl. 9:73-79)。試料核酸及びコントロール核酸の一本鎖DNA断片は、変性されており、復元が可能にされている。一本鎖核酸の二次構造は、配列により変化し、得られた電気泳動移動度の改変は、単一塩基の変化の検出さえも可能にする。DNA断片は、標識プローブで標識又は検出され得る。アッセイの感受性は、二次構造が配列の変化に対してより感受性であるRNA(DNAではなく)を使用することにより増強され得る。別の実施態様では、対象の方法は、ヘテロ二本鎖分析を用いて、電気泳動移動度の変化に基づく二本鎖ヘテロ二本鎖分子を分離する(Keen et al. (1991) Trends Genet. 7:5)。
【0133】
突然変異体の同一性は、変性剤の勾配を含有するポリアクリルアミドゲルの多型領域を含む核酸の動きを分析することによっても得られ、これは、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)を使用して分析される(Myers et al. (1985) Nature 313:495)。分析方法としてDGGEが使用されるとき、DNAは、修飾され、例えば、PCRでおよそ40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプを追加することにより、DNAが完全に変性しないことが確実にされる。さらなる実施態様では、コントロール及び試料DNAの移動度における差異を同定するために、変性剤勾配の代わりに温度勾配が使用される(Rosenbaum and Reissner (1987) Biophys. Chem. 265:1275)。
【0134】
二つの核酸分子(例えば、DNA又はRNA分子)間の少なくとも一つのヌクレオチドの差異を検出するための技術の例には、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、又は選択的プライマー伸長が含まれるが、これらに限定されない。たとえば、既知の多型ヌクレオチドが中央に配置されたオリゴヌクレオチドプローブが調製され(対立遺伝子特異的プローブ)、完全に一致する場合にのみハイブリダイゼーションを許可する条件下で標的DNAにハイブリダイズされ得る(Saiki et al. (1986) Nature 324:163); Saiki et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230)。そのような対立遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術は、遺伝子の多型領域におけるヌクレオチド変化を検出するために使用され得る。例えば、特異的対立遺伝子変異体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドは、ハイブリッド形成膜に結合しており、その後、この膜は、標識された試料核酸でハイブリダイズされる。ハイブリダイゼーションシグナルの分析は、その後、試料核酸のヌクレオチドの同一性を明らかにする。
【0135】
あるいは、選択的PCR増幅に依拠する対立遺伝子に特異的な増幅技術は、本発明と抱合して有用であり得る。特異的増幅のプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、(増幅が差動ハイブリダイゼーションに依拠するように)分子の中央に、又は適切な条件下で、不一致がポリメラーゼ伸長を防止又は低減することができる一プライマーの3’末端で目的の対立遺伝子変異体を担持し得る(Prossner (1993) Tibtech 11:238 and Newton et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17:2503)。この技術は、プローブオリゴ塩基伸長を意味する「PROBE」とも称される。加えて、切断に基づく検出を作成するために変異の領域における新規の制限部位を導入することが望ましい(Gasparini et al. (1992) Mol. Cell. Probes 6:1)。
【0136】
別の実施態様では、突然変異体の特定は、例えば、米国特許第4,998,617号及びLaridegren, U. et al. Science 241:1077-1080 (1988)に記載されるように、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を使用して行われる。OLAプロトコールは、標的の一本鎖の隣接する配列にハイブリダイズすることができるよう設計されている二つのオリゴヌクレオチドを使用する。オリゴヌクレオチドの一方は、分離マーカーに結合されており、例えばビオチニル化されており、他方は検出可能に標識されている。正確な相補性配列が標的分子に見られる場合、オリゴヌクレオチドは、それらの末端が隣接ように、ハイブリダイズし、ライゲーション基質を作成する。ライゲーションはその後、アビジン、又は別のビオチンリガンドを使用して、標識されたオリゴヌクレオチドが回収されることを可能にする。Nickerson et al.は、PCRとOLAの特質を組み合わせる核酸検出アッセイを記載している(Nickerson, D. A. et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA87:8923-8927)。この方法では、PCRは、標的DNAの指数関数的な増幅を達成するのに使用され、これはその後OLAを使用して検出される。
【0137】
所与の遺伝子、例えば、RAS遺伝子、例えばKRAS遺伝又はNRAS遺伝子における単一ヌクレオチド変異を検出するための方法が記載される。単一ヌクレオチドの変化は不変配列の領域に隣接しているため、それらの分析は単一変異体ヌクレオチドの同一性の決定以上のものを必要とせず、各患者の完全な遺伝子配列を決定する必要はない。いくつかの方法は、そのような変異の分析を容易にするために展開されている。
【0138】
単一塩基変異は、米国特許第4,656,127号に開示されるように、特殊化されたエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを使用して検出することができる。この方法によれば、変異部位のすぐ3’の変異配列に相補的なプライマーは、特定の動物又はヒトから得られた標的分子にハイブリダイズすることが可能にされる。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に相補的であるヌクレオチドを含有する場合、その誘導体は、ハイブリダイズされたプライマーの末端に組み込まれることになる。そのような組み込みは、プライマーをエキソヌクレアーゼ耐性にし、それによってその検出を可能にする。試料のエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の同一性は知られているため、プライマーがエキソヌクレアーゼに対して耐性があるようになってきたという発見は、標的分子の変異部位に存在するヌクレオチドが、反応に使用されるヌクレオチド誘導体のそれに相補的であったことを明らかにする。この方法は、多量の無関係な配列データの決定を必要としないという利点を有する。
【0139】
変異部位のヌクレオチドの同一性を決定するために、溶液ベースの方法を使用してもよい(国際公開第91/02087号)。上記のように、変異部位のすぐ3’にある変異配列に相補的なプライマーが用いられる。この方法は、標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用してその部位のヌクレオチドの同一性を決定し、これは、変異部位のヌクレオチドに相補的な場合、プライマーの末端に組み込まれる。
【0140】
代替的な方法が、国際公開第92/15712号に記載されている。この方法は、標識されたターミネーターと、変異又は多型部位への配列3’に対して相補的であるプライマーとの混合物を使用する。よって、組み込まれている標識されたターミネーターは、評価される標的分子の変異部位に存在するヌクレオチドにより決定され、それに相補的である。通常、該方法は、プライマー又は標的分子が固体相に固定化されている不均一相アッセイである。
【0141】
DNAにおける変異部位を分析するための多くの他のプライマー誘導ヌクレオチド組み込み手順が記載されている(Komher, J. S. et al. (1989) Nucl. Acids. Res. 17:7779-7784; Sokolov, B. P. (1990) Nucl. Acids Res. 18:3671; Syvanen, A.-C., et al. (1990) Genomics 8:684-692; Kuppuswamy, M. N. et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1143-1147; Prezant, T. R. et al. (1992) Hum. Mutat. 1: 159-164; Ugozzoli, L. et al. (1992) GATA 9:107-112; Nyren, P. et al. (1993) Anal. Biochem. 208:171-175)。これらの方法はすべて、変異部位の塩基を区別するために標識されたデオキシヌクレオチドの組み込みに依拠する。
【0142】
一般に、本明細書に記載されるバイオマーカー遺伝子の存在及び/又は量は、上に記載されるもの、並びに当該技術分野で知られており、当業者に理解されている多くの他のもの、例えば、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノムシーケンス解析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(定量リアルタイムPCR(qRT-PCR)及び他の増幅式検出方法、例えば、分岐DNA、SISBA、TMA等を含む)、RNA-Seq、マイクロアレイ解析、ナノストリング、遺伝子発現プロファイリング、及び/又は遺伝子発現の逐次分析法(「SAGE」)、並びにタンパク質、遺伝子、及び/又は組織アレイ分析により実施することができる多種多様なアッセイを含む、数多くの方法によって分析することができる。遺伝子及び遺伝子産物の状態を評価するための典型的なプロトコールは、例えば、Ausubel et al., eds.の、1995, Current Protocols In Molecular Biology, Units 2 (ノーザンブロット法)、4(サザンブロット法)、15(免疫ブロット法)、及び18(PCR分析)に見られる。Rules Based Medicine又はMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手できるような多重免疫アッセイも使用され得る。
【0143】
さらに、本明細書に記載されるバイオマーカータンパク質(すなわち、遺伝子産物)の存在及び/又は量は、免疫組織化学(「IHC」)、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、分光学、分子結合アッセイ、HPLC、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、酵素結合免疫濾過法(ELIFA)、蛍光活性化セルソーティング(「FACS」)、MassARRAY、プロテオミクス、定量的な血液ベースのアッセイ(例えば、血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、及びタンパク質配列分析を含む、数多くの方法によって分析することができる。特定の場合では、該方法は、個体からの生物学的試料をバイオマーカーの結合が可能な条件下で本明細書に記載のタンパク質バイオマーカーに特異的に結合する抗体と接触させること、及び錯体が抗体とバイオマーカーとの間に形成されるかどうかを検出することを含む。このような方法は、in vitro法又はin vivo法であり得る。ある場合では、バイオマーカーのタンパク質発現レベル(例えば、本明細書の上に記載されるような、KRAS-G13Dタンパク質又は活性化変異を有するNRASタンパク質)は、腫瘍細胞(例えば生検からのもの)で決定される。
【0144】
さらに、遺伝子又は遺伝子産物における変異を検出するための上の方法のいずれかは、治療又は療法(例えば、汎RAF阻害剤(例えば汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤を含む治療)の経過をモニターするのに使用することができる。
【0145】
例えば、本明細書に記載される方法は、例えば、患者が汎RAF阻害剤(例えば汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤を含む治療からの利益を受ける可能性があるかどうかを決定するのに簡便に使用され得る、少なくとも一つのプローブ又はプライマー核酸を含む、以下に記載されるもののような、予備包装された診察キットを用いることにより、実施され得る。
【0146】
上記の診察法における使用のための試料核酸は、腫瘍組織又は血液を含む、個体の任意の細胞型又は組織から得ることができる。
【0147】
上記の又は本明細書中で参照されるスクリーニングの全ての方法において、一又は複数のRAS遺伝子(例えば、KRAS又はNRAS)、又はそのタンパク質産物における変異は、一般的に、個体から得られた試料中の核酸配列(例えば、DNA又はRNA配列)又はタンパク質配列(すなわち、アミノ酸配列)を決定すること及びその配列を参照配列(例えば、野生型配列)と比較することにより、同定することができる。特定の場合では、基準レベル、基準試料、基準細胞、基準組織、コントロール試料、コントロール細胞、又はコントロール組織は、試験試料が得られる時点とは異なる一又は複数の時点で得られる同一の対象又は個体からの単一試料又は多数の試料の組み合わせである。例えば、基準レベル、基準試料、基準細胞、基準組織、コントロール試料、コントロール細胞、又はコントロール組織は、試験試料が得られる時点よりも早い時点で同一の対象又は個体から得られる。そのような基準レベル、基準試料、基準細胞、基準組織、コントロール試料、コントロール細胞、又はコントロール組織は、基準試料ががんの当初診断中に得られ、がんが転移性になったときに試験試料が後に得られる場合、有用であり得る。
【0148】
B.治療方法
本発明は、KRAS活性化変異(例えば、KRAS-G13D変異)の存在に基づき、治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤又はPI3K阻害剤を、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体に投与することにより、個体を治療するための方法を提供する。ある場合では、該方法は、KRAS活性化変異を有すると決定されている個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料)をKRAS活性化変異についてスクリーニングする工程を含む。他の場合では、治療前に、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料)は、KRAS活性化変異についてスクリーニングされており、該試料中のKRAS活性化変異の存在は決定されている。
【0149】
ある場合では、本発明は、(a)KRAS-G13D変異を有すると決定されている個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料)をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすること、及び(b)スクリーニングの工程により決定されたKRAS-G13D変異の存在に基づき、治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を個体に投与することを含む、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えば、メラノーマ))を有する個体を治療するための方法を提供する。
【0150】
ある場合では、本発明は、治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を個体に投与することを含む、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えば、メラノーマ))を有する個体を治療するための方法を提供し、ここで、治療前に、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))は、KRAS-G13D変異についてスクリーニングされており、該試料中のKRAS-G13D変異の存在は決定されている。
【0151】
ある場合では、本発明は、(a)KRAS活性化変異(例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G13D、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、又はKRAS-Q61R)を有すると決定されている個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をKRAS活性化変異についてスクリーニングすること、及び(b)スクリーニングの工程により決定されたKRAS活性化変異の存在に基づき、治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤を個体に投与することを含む、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えば、メラノーマ))を有する個体を治療するための方法を提供する。ある場合では、個体はBRAF活性化変異を有しない。
【0152】
ある場合では、本発明は、治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤を個体に投与することを含む、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えば、メラノーマ))を有する個体を治療するための方法を提供し、ここで、治療前に、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))は、KRAS活性化変異(例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G13D、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、又はKRAS-Q61R)についてスクリーニングされており、該試料中のKRAS活性化変異の存在は決定されている。ある場合では、個体はBRAF活性化変異を有しない。
【0153】
本発明は、NRAS活性化変異の存在に基づき、治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を、がん(例えば、皮膚がん(例えばメラノーマ)、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、及び膵臓がん)を有する個体に投与することにより、個体を治療するための方法も提供する。ある場合では、該方法は、NRAS活性化変異を有すると決定されている個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料)をNRAS活性化変異についてスクリーニングする工程を含む。他の場合では、治療前に、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料)は、NRAS活性化変異についてスクリーニングされており、該試料中のNRAS活性化変異の存在は決定されている。
【0154】
ある場合では、本発明は、(a)NRAS活性化変異(例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、又はNRAS-Q61P)を有すると決定されている個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))をNRAS活性化変異についてスクリーニングすること、及び(b)スクリーニングの工程により決定されたNRAS活性化変異の存在に基づき、治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を個体に投与することを含む、がん(例えば、皮膚がん(例えばメラノーマ)、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、及び膵臓がん)を有する個体を治療するための方法を提供する。
【0155】
ある場合では、本発明は、治療的有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を個体に投与することを含む、がん(例えば、皮膚がん(例えばメラノーマ)、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、及び膵臓がん)を有する個体を治療するための方法を提供し、ここで、治療前に、個体からの試料(例えば、組織試料(例えば腫瘍組織試料))は、NRAS活性化変異(例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、又はNRAS-Q61P)についてスクリーニングされており、該試料中のNRAS活性化変異の存在は決定されている。
【0156】
上の治療方法のいずれかについて、個体からの試料は、Aの部分のセクションIIIの上記の方法の一又は複数を使用して、スクリーニングされ得るか、又はスクリーニングされている。
【0157】
上にも記載されるとおり、投与されるMEK阻害剤は、プロドラッグ又は生物学的に活性な形態であり得る小分子であり得る。例えば、MEK阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、ビニメチニブ(MEK162)、BI-847325、トラメチニブ、GDC-0623、G-573、及びCH5126766(RO5126766)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される小分子であり得る。特定の場合では、小分子阻害剤は、コビメチニブ(GDC-0973)、セルメチニブ(AZD6244)、ピマセルチブ(AS-703026)、PD0325901、レファメチニブ(BAY86-9766)、又はビニメチニブ(MEK162)、又はその薬学的に許容される塩である。投与されるPI3K阻害剤は、プロドラッグ又は生物学的に活性な形態であり得る小分子であり得る。例えば、小分子阻害剤は、ピクチリシブ(GDC-0941)、タセリシブ(GDC-0032)、及びアルペリシブ(BYL719)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される。PI3K阻害剤は、汎PI3K阻害剤(例えば、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩)、又はPI3Kα特異的阻害剤及び/又はPI3Kδ特異的阻害剤であり得る。また、投与される汎RAF阻害剤は汎RAF二量体阻害剤であり得る。特定の場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)は、プロドラッグ又は生物学的に活性な形態であり得る小分子であり得る。特定の場合では、汎RAF二量体阻害剤は、HM95573、LY-3009120、AZ-628、LXH-254、MLN2480、BeiGene-283、RXDX-105、BAL3833、レゴラフェニブ、又はソラフェニブ、又はその薬学的に許容される塩であり得る。
【0158】
特定の実施態様では、治療方法は、個体に一又は複数の追加の治療剤(例えば、免疫療法剤、細胞傷害性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、及び抗血管新生剤)を投与することも含む。
【0159】
上記の方法のいずれかでは、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤の投与は、細胞又は生物学的応答、完全奏功、部分奏功、安定疾患(増殖又は再発なし)、又はMEK阻害剤若しくはPI3K阻害剤のいずれかと組み合わせた汎RAF阻害剤での治療の結果として患者の後の再発を伴う応答の治療効果(すなわち、利益)を有することができる。例えば、効果的な応答とは、KRAS活性化変異(例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G13D、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、又はKRAS-Q61R)又はNRAS活性化変異(例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、又はNRAS-Q61P)を有する個体における、KRAS活性化変異又はNRAS活性化変異を有しない個体と比較した、腫瘍サイズ(体積)の低減、無増悪生存(PFS)の増加、及び/又は全生存(OS)の増加であり得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤の投与は、1%以上(例えば、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上)の腫瘍サイズ(体積)の低減の治療効果を有する。一又は複数のKRAS活性化変異(例えば、KRAS-G13D)又はNRAS活性化変異の存在は、そのような治療有効性を予測する。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤の投与は、1日以上(例えば、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、又は1年以上)の無増悪生存(PFS)の増加の治療効果を有する。
【0160】
投与量及び投与
MEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかと組み合わせた汎RAF阻害剤での治療に応答性又は感受性である患者は同定されると、併用療法での治療、単独での治療量、又は他の治療剤と併せた治療が行われ得る。上記のように、そのような治療は、例えば、腫瘍サイズの低減又は無増悪生存(PFS)及び/若しくは全生存(OS)の増加をもたらし得る。さらに、MEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかと組み合わせた汎RAF阻害剤での治療は、好ましくは、相乗的な(又は相加作用を超える)治療的利益を患者にもたらす。好ましくは、この組み合わせ法において、MEK阻害又はPI3K阻害剤のいずれかと組み合わせた汎RAF阻害剤の少なくとも一つの投与間のタイミングは、約1か月以下、より好ましくは約2週間以下である。
【0161】
MEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかと組み合わせた、治療的有効量の汎RAF阻害剤を患者に投与し、続いて、併用療法に対する予想される応答性を診断する正確なやり方は主治医の最良であることが、当業者により認識される。投与量、他の薬剤との組み合わせ、タイミング、及び投与頻度等を含む投与様式は、そのような併用療法に対する患者の予想される応答性の診断並びに患者の症状及び病歴の影響を受ける可能性がある。よって、MEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかと組み合わせた汎RAF阻害剤に対して比較的感受性でないと予測されたがんを有する患者さえも、特に、一方又は両方の阻害剤に対して患者の応答性を変更し得る薬剤を含む他の薬剤と組み合わせたそれらでの治療から依然として利益を受け得る。
【0162】
汎RAF阻害剤及びMEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかを含む組成物は、医学行動規範と一致した方式で製剤化され、投薬され、投与される。この文脈における考慮の要因には、治療されている特定のがんの種類(例えば、肺がん、乳がん、皮膚がん、結腸直腸がん、胃がん、リンパ系がん、すい臓がん、卵巣がん、及び子宮頸がん)、治療されている特定の哺乳動物(例えば、ヒト)、個別の患者の臨床症状、がんの原因、薬剤送達部位、予想される副作用、阻害剤の種類、投与方法、投与日程、及び医療従事者が知る他の要因が含まれる。投与される有効量の汎RAF阻害剤及びMEK又はPI3K阻害剤は、そのような考慮の影響を受けることになる。
【0163】
当該技術分野の医師は、特定のアンタゴニストの種類などのそのような要因に応じて、必要とされる有効量の薬学的組成物を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するため及び所望の効果が達成されるまで投薬量を次第に増加させるために必要とされるレベルよりも低いレベルで薬学的組成物に用いられる、MEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかと組み合わせた汎RAF阻害剤の用量で開始することができる。アンタゴニストの所与の用量又は治療レジメンの効率は、例えば、有効性の標準的な測定を使用して患者における兆候又は症状を評価することにより、決定することができる。
【0164】
特定の例では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)は、例えば、対象がNRAS活性化変異を有する場合は、対象に投与される唯一の薬剤(すなわち、単剤療法として)であり得る。他の場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤が対象に(すなわち、併用療法として)投与され得る。
【0165】
特定の例では、患者は、少なくとも二度、同一の両方で治療される。よって、初回及び二度目の曝露は、好ましくは、同一の阻害剤又は阻害剤の同一の組み合わせでのものであり、より好ましくは、全ての曝露は、同一の阻害剤又は阻害剤の同一の組み合わせでのものであり、すなわち、初めの二度の曝露、好ましくは、全ての曝露についての治療は、同一の阻害剤(例えば、同一の汎RAF二量体阻害剤)又は阻害剤の同一の組み合わせ(例えば、同一の汎RAF二量体阻害剤と同一のMEK又はPI3K阻害剤の組み合わせ)でのものである。
【0166】
MAPKシグナル伝達阻害剤又はPI3K阻害剤、又はその薬学的に許容される塩での治療は、標準的な方法に従って行うことができる。例えば、MEK阻害剤、コビメチニブ(例えば、コビメチニブフマレート(COTELLIC(登録商標))の投与のための例示的な方法は、米国Genentech、Inc.によるコビメチニブフマレート(COTELLIC(登録商標))のためのPrescribing Information(2015年11月10日)に記載されており、その全内容が本明細書に参照により援用される。ベムラフェニブ(ZELBORAF(登録商標))の投与のための例示的な方法は、米国Hoffmann La Roche、Inc.によるベムラフェニブ(ZELBORAF(登録商標))のためのPrescribing Information(2015年8月11日)に記載されており、その全内容が本明細書に参照により援用される。
【0167】
汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤の多数の曝露が行われる場合は、各曝露は同一又は異なる投与手段を使用して行われ得る。一実施態様では、各曝露は、経口投与によりなされる。一実施態様では、各曝露は静脈内投与による。別の実施態様では、各曝露は、皮下投与によりなされる。さらに別の実施態様では、曝露は、静脈内投与及び皮下投与の両方によりなされる。
【0168】
治療の持続期間は、医学的に示される限り又は所望の治療効果(例えば、本明細書に記載されるもの)が達成されるまで、継続され得る。特定の実施態様では、治療は、1か月間、2か月間、4か月間、6か月間、8か月間、10か月間、1年間、2年間、3年間、4年間、5年間、又は対象の寿命までの期間にわたって、継続される。
【0169】
しかしながら、上記のように、これらの提案された量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、多くの治療上の裁量の対象である。適切な用量を選択すること及びスケジューリングの主要な要因は、上記のように、得られる結果である。いくつかの実施態様では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、細胞増殖性疾患(例えば、がん)の初めの兆候、診断、出現、又は発生に可能な限り近接して投与される。
【0170】
投与経路
MEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれか及び、任意選択的に、任意の追加の治療剤と組み合わせた汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)は、医学行動規範と一致した方式で製剤化され、投薬され、投与される。この観点において考慮すべき要因は、治療される特定の障害(例えば、がん)、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与日程及び医療従事者が知る他の要因を含む。例えば、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)は、MEK阻害剤又はPI3K阻害剤のいずれかと同時に、任意選択的には現在障害(例えば、がん)を予防又は治療するのに使用される一又は複数の薬剤とのさらなる組み合わせで、製剤化及び/又は投与されてもよいが、その必要はない。
【0171】
がんの予防又は治療に関して、本明細書に記載される汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤の適切な投与量(単独で又は一若しくは複数のさらなる治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患(例えば、がん)の種類、疾患の重症度及び経過、阻害剤が予防的目的で投与されるか又は治療的目的で投与されるか、治療歴、患者の病歴及び阻害剤に対する応答、並びに主治医の裁量に依拠する。汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、単回で、又は一連の治療にわたって、患者に対して適切に投与される。数日以上にわたる反復投与に関しては、状態に応じて、治療は一般に病徴の望まれる抑制が起こるまで持続される。このような用量は断続的に、例えば毎週又は3週毎(例えば患者が、例えば約2~約20投与量、又は例えば約6投与量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤を受けるように)投与され得る。初回高負荷用量の後、一又は複数の低用量が投与され得る。しかしながら、他の用量レジメンも有用でありうる。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0172】
汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、経口、非経口、局所、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、及び/又は病巣内投与を含む任意の適切な手段により投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与を含む。髄腔内投与も検討されている。加えて、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、例えば減量された一方又は両方の阻害剤でのパルス注入により、適切に投与され得る。場合によっては、投薬は、経口投与によってなされる。
【0173】
MEK又はPI3K阻害剤と組み合わされた汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)の多数の曝露が行われる場合は、各曝露は同一又は異なる投与手段を使用して行われ得る。別の実施態様では、各曝露は、静脈内(i.v.)投与によりなされる。別の実施態様では、各曝露は、皮下(s.c.)投与によりなされる。さらに別の実施態様では、曝露は、i.v.及びs.c.の両方によりなされる。
【0174】
併用療法
本明細書に記載される治療法は、概して、複数の治療剤(例えば、MEK又はPI3K阻害剤と組み合わせた汎RAF阻害剤(例えば汎RAF二量体阻害剤))を含む。
【0175】
併用療法は、「相乗作用」をもたらし、「相乗的」であること、すなわち活性成分を一緒に使用した際に達成される効果が化合物を別々に使用することにより得られる効果の和を上回ることを証明することができる。相乗効果は、活性成分(すなわち、汎RAF阻害剤(例えば汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤)が:(1)共製剤化され、組み合わされた単位用量製剤で同時に投与又は送達される場合;(2)別々の製剤として交互に又は並行して送達される場合;又は(3)他の何らかのレジメンで送達される場合に、得られる可能性がある。交互療法で送達される場合、化合物が逐次的に投与又は送達されるときに、相乗効果が得られる可能性がある。一般に、交互療法の際、各活性成分の有効薬量が逐次的に、(すなわち連続して)投与されるが、併用療法では、2つ以上の活性成分の有効薬量が一緒に投与される。
【0176】
ある場合では、該方法は、化学療法剤、成長阻害剤、生物療法剤、免疫療法剤、又は放射線療法剤等の抗がん剤をさらに投与することを含む。加えて、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤と組み合わせて細胞傷害性剤、抗血管新生剤、及び抗増殖剤を使用することができる。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、手術などの抗がん療法と組み合わせて使用される。
【0177】
他の場合では、治療法は、二つ以上(例えば、三つ以上)のMAPKシグナル伝達阻害剤(例えば、二つ以上のRAF、MEK、又はERK阻害剤)及び/又はPI3K阻害剤の組み合わせを投与することを含み得る。
【0178】
該方法は、ドセタキセル、ドキソルビシン、及びシクロホスファミドなどの化学療法剤と組み合わせて、有効量の汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤を患者に投与することにも関与し得る。
【0179】
他の場合では、該方法は、治療抗体などの免疫療法剤と組み合わせて、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤を投与することを含む。一実施態様では、治療抗体は、がん細胞表面マーカー又は腫瘍関連膠原(TAA)と結合する抗体である。一実施態様では、治療抗体は、抗HER2抗体、トラスツズマブ(例えば、HERCEPTIN(登録商標))である。一実施態様では、治療抗体は、抗HER2抗体、ペルツズマブ(OMNITARGTM)である。別の実施態様では、治療抗体は、ネイキッド抗体又は抗体-薬物コンジュゲート(ADC)にいずれかである。
【0180】
理論に拘束されることを望まないが、共刺激分子の活性化を促すことにより、又は陰性の共刺激分子を阻害することにより、T細胞の刺激を増強することは、腫瘍細胞死と、それによるがんの治療又は進行遅延を促し得ると考えられる。したがって、ある場合、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、活性化共刺激分子に対するアゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、活性化共刺激分子は、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、又はCD127を含み得る。ある場合では、活性化共刺激分子に対するアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、又はCD127に結合するアゴニスト抗体である。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、阻害性共刺激分子は、CTLA-4(CD152としても知られる)、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、又はアルギナーゼを含み得る。ある場合では、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストは、CTLA-4、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、又はアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0181】
ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CTLA-4(CD152としても知られる)に対するアンタゴニスト、例えば遮断抗体と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、又はYERVOY(登録商標)としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、トレメリムマブ(チシリムマブ又はCP-675,206としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、B7-H3(CD276としても知られる)に対するアンタゴニスト、例えば遮断抗体と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、MGA271と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、TGF-βに対するアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(CAT-192としても知られる)、フレソリムマブ(GC1008としても知られる)、又はLY2157299と併せて投与され得る。
【0182】
ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現させるT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞又は細胞傷害性リンパ球(CTL))の養子移入を含む治療と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、ドミナントネガティブなTGF-β受容体、例えば、ドミナントネガティブなTGF-βII型受容体を含むT細胞の養子移入を含む治療と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、HERCREEMプロトコール(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier NCT00889954を参照のこと)を含む治療と併せて投与され得る。
【0183】
ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CD137(TNFRSF9、4-1BB、又はILAとしても知られる)に対するアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、ウレルマブ(BMS-663513としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CD40に対するアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CP-870893と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、OX40(CD134としても知られる)に対するアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CD27に対するアゴニスト、例えば活性化抗体と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CDX-1127と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)に対するアンタゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、IDOアンタゴニストと共にあるのは1-メチル-D-トリプトファン(1-D-MTとしても知られる)である。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、PD-1軸結合アンタゴニストと併せて投与され得る。いくつかの場合では、PD-1軸結合アンタゴニストはPD-L1抗体である。
【0184】
ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、抗体-薬物コンジュゲートと併せて投与され得る。いくつかの場合では、抗体-薬物コンジュゲートは、メルタンシン又はモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を含む。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、抗NaPi2b抗体-MMAEコンジュゲート(DNIB0600A又はRG7599としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、トラスツズマブエムスタシン(T-DM1、アド-トラスツズマブエムスタシン、又はKADCYLA(登録商標)(Genentech)としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、DMUC5754Aと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体-薬物コンジュゲート、例えば、MMAEとコンジュゲートされたEDNBRに対する抗体と併せて投与され得る。
【0185】
ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、抗血管新生剤と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、VEGF、例えばVEGF-Aに対する抗体と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)(Genentech)としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、アンジオポエチン2(Ang2としても知られる)に対する抗体と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、MEDI3617と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、抗悪性腫瘍剤と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CSF-1R(M-CSFR又はCD115としても知られる)を標的とする薬剤と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、抗CSF-1R(IMC-CS4としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、インターフェロン、例えばインターフェロンアルファ又はインターフェロンガンマと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、Roferon-A(組換えインターフェロンアルファ-2aとしても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、GM-CSF(組換えヒト顆粒球マクロファージ コロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、又はLEUKINE(登録商標)としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、IL-2(アルデスロイキン又はPROLEUKIN(登録商標)としても知られる)と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、IL-12と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CD20を標的とする抗体と併せて投与され得る。ある場合では、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(GA101又はGAZYVA(登録商標)としても知られる)又はリツキシマブである。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、GITRを標的とする抗体と併せて投与され得る。ある場合では、GITRを標的とする抗体はTRX518である。
【0186】
ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、がんワクチンと併せて投与され得る。ある場合では、がんワクチンはペプチドがんワクチンであり、これは、ある場合では個別化されたペプチドワクチンである。ある場合では、ペプチドがんワクチンは、多価の長いペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、又はペプチドパルス樹状細胞ワクチン(例えば、Yamada et al., Cancer Sci. 104:14-21, 2013参照)である。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、アジュバントと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、TLRアゴニスト、例えば、Poly-ICLC(HILTONOL(登録商標)としても知られる)、LPS、MPL、又はCpG ODNを含む治療と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、IL-1、例えばIL-1βと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、HMGB1と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、IL-10アンタゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、IL-4アンタゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、IL-13アンタゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、HVEMアンタゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、例えば、ICOS-L、又はICOSに対するアゴニスト抗体の投与により、ICOSアゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CX3CL1を標的とする治療と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CXCL9を標的とする治療と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CXCL10を標的とする治療と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、CCL5を標的とする治療と併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、LFA-1又はICAM1アゴニストと併せて投与され得る。ある場合では、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、セレクチンアゴニストと併せて投与され得る。
【0187】
概して、疾患の予防又は治療に関して、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、単回で、又は一連の治療にわたって、患者に対して適切に投与される。汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK又はPI3K阻害剤は、典型的には上記のとおり投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一又は複数回の別個の投与によるか、連続的注入によるかに関わらず、約20mg/m2から600mg/m2の追加の治療剤が、患者への投与のための初期候補用量である。治療レジメンにおける任意の治療剤の一日当たりの典型的な投与量の一つは、上記の要因に応じて、約20mg/m2、85mg/m2、90mg/m2、125mg/m2、200mg/m2、400mg/m2、500mg/m2以上の範囲であり得る。数日間以上にわたる反復投与の場合には、状態に応じて、治療は疾患症状の望まれる抑制が起こるまで維持される。よって、約20mg/m2、85mg/m2、90mg/m2、125mg/m2、200mg/m2、400mg/m2、500mg/m2、600mg/m2の一又は複数の用量(又はそれらの組み合わせ)が患者に投与され得る。このような用量は断続的に、例えば毎週又は二、三、四、五、又は六週毎(例えば患者が抗体の約2から約20、例えば約6用量を受けるように)投与してよい。初回高負荷用量の後、一又は複数の低用量が投与され得る。しかしながら、他の用量レジメンも有用でありうる。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0188】
一実施態様では、対象は、がんを治療するための薬物を以前に投与されたことがない。別の実施態様では、対象又は患者は、がんを治療するための一又は複数の医薬を以前に投与されたことがある。さらなる実施態様では、対象又は患者は、以前に投与された医薬の一又は複数に対して応答しなかった。対象が応答しない可能性があるそのような薬剤には、例えば、抗腫瘍剤、化学療法剤、細胞傷害性剤、及び/又は成長阻害剤が含まれる。
【0189】
IV.組成物及びその使用
本発明は、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤又はPI3K阻害剤を含む組み合わせが、KRAS活性化変異(例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G13D、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、又はKRAS-Q61R変異)又はNRAS活性化変異(例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、又はNRAS-Q61P)を有する、がんに罹患している個体を治療するのに有用であるという発見にある程度基づいている。
【0190】
したがって、ある場合では、本発明は、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体を治療する方法における使用のための汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む組成物を提供し、ここで、個体からの試料は、KRAS-G13Dについてスクリーニングされており、該試料中のKRAS-G13D変異の存在が決定されている。ある場合では、本発明は、KRAS-G13D変異を特徴とするがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))の治療的処置における使用のための、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む組成物を提供する。ある場合では、KRAS-G13D変異を特徴とするがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))の治療的処置のための医薬の調製のための、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物を提供する。
【0191】
ある場合では、本発明は、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))を有する個体を治療する方法における使用のための汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びMEK阻害剤を含む組成物を提供し、ここで、個体からの試料は、NRAS活性化変異についてスクリーニングされており、該試料中のNRAS活性化変異の存在が決定されている。ある場合では、本発明は、NRAS活性化変異を特徴とするがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えば、メラノーマ))の治療的処置における使用のための、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物を提供する。ある場合では、NRAS活性化変異を特徴とするがん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えばメラノーマ))の治療的処置のための医薬の調製のための、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む組成物を提供する。
【0192】
他の場合では、本発明は、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えば、メラノーマ))を有する個体を治療する方法における使用のための、汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤(例えば、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩)、又はPI3Kα特異的阻害剤及び/若しくはPI3Kδ特異的阻害剤)を含む組成物を提供し、ここで、個体からの試料は、KRAS活性化変異(例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G13D、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、又はKRAS-Q61R変異)についてスクリーニングされており、該試料中のKRAS活性化変異が決定されている。ある場合では、本発明は、KRAS活性化変異を特徴とするがんの治療的処置における使用のための、汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む組成物を提供する。ある場合では、本発明は、KRAS活性化変異を特徴とするがんの治療的処置のための医薬の調製のための、汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む組成物の使用を提供する。
【0193】
RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)及びPI3K阻害剤(例えば、汎PI3K阻害剤(例えば、ピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩)、又はPI3Kα特異的阻害剤及び/若しくはPI3Kδ特異的阻害剤)を含む組成物も提供される。ある場合では、本発明は、汎PI3K阻害剤がピクチリシブ(GDC-0941)又はタセリシブ(GDC-0032)、又はその薬学的に許容される塩である、組成物を提供する。ある場合では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤がHM95573、LY-3009120、AZ-628、LXH-254、MLN2480、BeiGene-283、RXDX-105、BAL3833、レゴラフェニブ、及びソラフェニブ、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される、組成物を提供する。ある場合では、組成物は、HM95573とピクチリシブ(GDC-0941)、LY-3009120とピクチリシブ(GDC-0941)、AZ-628とピクチリシブ(GDC-0941)、LXH-254とピクチリシブ(GDC-0941)、MLN2480とピクチリシブ(GDC-0941)、BeiGene-283とピクチリシブ(GDC-0941)、RXDX-105とピクチリシブ(GDC-0941)、BAL3833とピクチリシブ(GDC-0941)、レゴラフェニブとピクチリシブ(GDC-0941)、ソラフェニブとピクチリシブ(GDC-0941)、HM95573とタセリシブ(GDC-0032)、LY-3009120とタセリシブ(GDC-0032)、AZ-628とタセリシブ(GDC-0032)、LXH-254とタセリシブ(GDC-0032)、MLN2480とタセリシブ(GDC-0032)、BeiGene-283とタセリシブ(GDC-0032)、RXDX-105とタセリシブ(GDC-0032)、BAL3833とタセリシブ(GDC-0032)、レゴラフェニブとタセリシブ(GDC-0032)、及びソラフェニブとタセリシブ(GDC-0032)、又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選択される組み合わせを含む。
【0194】
ある場合では、本発明は、上記の組成物を含む薬学的組成物を提供する。
【0195】
ある場合では、本発明は、がんの治療的処置における使用のための、上記の組成物などの組成物を提供する。
【0196】
ある場合では、本発明は、がんの治療的処置のための医薬の調製のための、上記の組成物の使用を提供する。
【0197】
上記の場合では、がんは、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、皮膚がん、腎臓がん、膀胱がん、乳がん、胃癌、食道がん、中皮腫、メラノーマ、頭頸部がん、甲状腺がん、肉腫、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮頸がん、胸腺癌、白血病、リンパ腫、骨髄腫、菌状息肉腫、メルケル細胞がん、及び血液悪性腫瘍からなる群より選択され得る。
【0198】
V.診断キット
本明細書で提供されるものは、疾患又は障害(例えば、細胞増殖性疾患(例えば、がん(例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、及び皮膚がん(例えば、メラノーマ)))を有する個体又は患者からの試料におけるバイオマーカー(例えば、KRAS活性化変異(例えば、KRAS-G12D、KRAS-G12C、KRAS-G12V、KRAS-G13D、KRAS-G12A、KRAS-G12R、KRAS-G12S、KRAS-G13C、KRAS-G13A、KRAS-G13R、KRAS-G13S、KRAS-G13V、KRAS-Q61H、KRAS-Q61K、KRAS-Q61E、KRAS-Q61L、KRAS-Q61P、又はKRAS-Q61R変異)又はNRAS活性化変異(例えば、NRAS-Q61R、NRAS-Q61K、NRAS-G12D、NRAS-G13D、NRAS-G12S、NRAS-G12C、NRAS-G12V、NRAS-G12A、NRAS-G12R、NRAS-G13C、NRAS-G13A、NRAS-G13R、NRAS-G13S、NRAS-G13V、NRAS-Q61H、NRAS-Q61E、NRAS-Q61L、又はNRAS-Q61P))の存在を決定するための、一又は複数の試薬(例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチド)を含むキットである。
【0199】
ある場合では、試料におけるバイオマーカーの存在は、個体がMEK阻害剤又はPI3K阻害剤と組み合わされた汎RAF阻害剤(例えば、汎RAF二量体阻害剤)で治療されるときに有効である可能性が高いことを示す。任意選択的に、キットは、汎RAF二量体阻害剤及びMEK又はPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための説明書を含み得る。
【0200】
ある場合では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットを特徴とし、該キットは、個体からの試料におけるKRAS-G13D変異の存在を決定するための試薬、及び、任意選択的に、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための説明書を含む。ある場合では、試薬は、KRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む。
【0201】
ある場合では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットを特徴とし、該キットは、個体からの試料におけるNRAS活性化変異の存在を決定するための試薬、及び、任意選択的に、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための説明書を含む。ある場合では、試薬は、NRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む。
【0202】
ある場合では、本発明は、汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するためのキットを特徴とし、該キットは、個体からの試料におけるKRAS活性化変異の存在を決定するための試薬、及び、任意選択的に、汎RAF二量体阻害剤及びPI3K阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定するための試薬を使用するための説明書を含む。ある場合では、試薬は、KRAS遺伝子の全部又は一部の増幅における使用のための第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドを含む。
【実施例0203】
以下の実施例は、説明のために提供されているのであって、本発明の特許請求の範囲を限定するために提供されているのではない。
【0204】
実施例1:材料及び方法
In Vitro法
細胞株及び試薬
抗BRAF(sc-5284)及び抗CRAF(sc-133)抗体をSanta Cruz Biotechnologyから購入した。抗MEK1(610122)及び抗CRAF(610152)抗体をBD Biosciencesから購入した。抗pMEK(S217/S221)(9121)、抗ERK(9107)、抗pERK(T202/Y204)(9101)、抗pCRAF(S338)(9427)、抗pEGFR(Y1068)(3777)、AKT(9272)、pAKT(T308)(13038)、切断PARP(9521)、及び抗β-アクチン(4970)をCell Signaling Technologyから購入した。IRコンジュゲート二次抗体ヤギ抗マウス680LT(926-68020)、ヤギ抗ヒト680LT(926- 68032)、及びヤギ抗ウサギ800CW(926-32211)をLi-Corから購入した。二本鎖IRコンジュゲート二次抗体を使用して、Li-Cor CLXで全てのウェスタンブロットをスキャンした。全ての細胞株をAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手し、推奨される培地で維持し、10%加熱不活性化FBS(HyClone、SH3007003HI)、1X GlutaMAX(Gibco、35050-061)、及び1X Pen Strep(Gibco、15140-122)を補充した。A549 shCRAF及びHCT116 shCRAF細胞株をGenentechで生成した。
【0205】
安定した細胞株の生成
HCT116結腸がん細胞株をATCC(American Type Culture Collection, Manassas, VA)から購入した。10%ウシ胎児血清を含有するRPMI 1640中でHCT116細胞を培養した。ヘアピンオリゴヌクレオチド(ルシフェラーゼshRNA:センス:5’-GAT CCC CCT TAC GCT GAG TAC TTC GAT TCA AGA GAT CGA AGT ACT CAG CGT AAG TTT TTT GGA AA-3’(配列番号:1)、アンチセンス:5’-AGC TTT TCC AAA AAA CTT ACG CTG AGT ACT TCG ATC TCT TGA ATC GAA GTA CTC AGC GTA AGG GG-3’(配列番号2)及びCRAF shRNA:センス:5’-GAT CCC CGA CAT GAA ATC CAA CAA TAT TCA AGA GAT ATT GTT GGA TTT CAT GTC TTT TTT GGA AA-3’(配列番号3)、アンチセンス:5’-AGC TTT TCC AAA AAA GAC ATG AAA TCC AAC AAT ATC TCT TGA ATA TTG TTG GAT TTC ATG TCG GG-3’(配列番号4)で、ルシフェラーゼ及びCRAF shRNAを安定して発現させるHCT116細胞を作製した。先述の方法(Gray et al. BMC Biotechnol.7:61, 2007; Jaiswal et al. PLoS One.4: e5717, 2009)に基づき、リポフェクタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用してHEK293T細胞中水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)エンベロープ糖たんぱく質及びHIV-1パッケージングタンパク質(GAG-POL)を発現させるプラスミドと、ルシフェラーゼ又はCRAF shRNAのいずれかを含有するpHUSH-レンチ-ピューロコンストラクトを、コトランスフェクトすることにより、誘導shRNA含有レンチウイルスコンストラクトを作製した。標的細胞にこれらのウイルスを導入し、ピューロマイシンで選択した。先述のとおり、500ng/mlのドキシサイクリン(Clontech, CA)を含有する培地を使用して、ウェスタンブロット法とその後のshRNAの導入により、細胞をノックダウンについて評価した(Jaiswal et al. PLoS One.4: e5717, 2009)。
【0206】
A549肺がん細胞株をATCCから入手した。RPMI 1640+10%ウシ胎児血清中で細胞を培養した。ヘアピンオリゴヌクレオチド:NTC shRNA標的配列:5’TCC TGC GTC TAG AGG TTC CCA 3’(配列番号5)及びCRAF shRNA標的配列:5’TAG GAG TAG ACA TCC GAC TGG 3’(配列番号6)を使用して、非標的コントロール(NTC)又はCRAF shRNAを安定して発現させるA549細胞株を作製した。使用されるベクターはpINDUCER 10であり、これは、最適化されたmiR-30ベースのヘアピンを発現させるように修飾された(Meerbrey et al. PNAS.108(9): 3665-3670, 2011; Fellmann et al. Cell Rep. 5: 1704-1713, 2013)。リポフェクタミン2000(Invitrogen)を含む293T細胞中、NTC又はCRAF shRNAのいずれかを含有するpINDUCER10-miREコンストラクトを水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)エンベロープ糖タンパク質及びHIV-1パッケージングタンパク質(GAG-POL)を発現させるプラスミドとコトランスフェクトすることにより、誘導shRNA含有レンチウイルスコンストラクトを作製した。Lenti-X濃縮器(Clontech)を使用して、ウイルス上清を濃縮した。標的細胞にこれらのウイルス上清を導入し、ピューロマイシン(2μg/ml)で選択した。2μg/mlドキシサイクリン(Sigma)を含有する媒体を使用して、shRNAの導入後にウェスタンブロット法によってノックダウンについて細胞を評価した。
【0207】
細胞生存率アッセイ
RAS変異体、BRAF変異体細胞スクリーニング
4日後に70~80%の集密を得るように各細胞株について播種密度を最適化した。細胞を384ウェルプレート(Griener、781091)に入れ、翌日、0.1%の最終DMSO濃度で化合物で処理した。CellTiter-Glo(Promega、G7573)を使用して、発光により生細胞の相対数を測定した。GraphPad Prism 6で4パラメーターフィットを使用して生存率曲線を生成した。
【0208】
ツール化合物組み合わせスクリーニング
9点用量反応で配列決定された480の化合物を含む化合物ライブラリを、A549細胞中のAZ-628又はDMSOのいずれかの固定用量の不存在下又は存在下でスクリーニングした。A549細胞を384ウェルプレートに播種し、24時間後に化合物を添加した。化合物添加の12時間後に細胞生存率を決定した(CellTiter Glo)。曲線を適合させ、IC50生存率と平均生存率の療法の指標を計算した。IC50は、未処理のウェルと比較して阻害が50%である用量である。平均生存率は、各試験用量での適合された生存率の平均である。平均生存率は、試験用量の総数で割った
対数用量/生存率曲線下面積に等しい。全てのデータは、Genedata Screener(GDS)ソフトウェアを使用して適合した。組み合わせ指標は、各化合物についてのAZ-628治療群とDMSO治療群との間の平均生存率における差異である。
【0209】
高スループット細胞生存率アッセイ
3倍希釈を使用して9点用量反応で化合物をスクリーニングした。化合物添加の24時間前に、細胞を384ウェルプレートに播種した。その後、生存率のアッセイ前に、細胞を化合物で72時間又は120時間インキュベートした(CellTiter-Glo、Promega)。アッセイは生物学的に三重で実施した。アッセイを通して、RPMI-1640、2.5% FBS(72時間アッセイ)又は5% FBS(120時間アッセイ)、及び2mM グルタミン中で細胞をインキュベートした(37℃、5% CO2)。報告されたIC50及び平均生存率の指標は、以下の通りである:IC50は、未処理のウェル(すなわち、絶対IC50)と比較して推定された阻害が50%である用量である。平均生存率は、試験用量の総数で割った
対数用量/生存率曲線下面積に等しい。
【0210】
ホスホ(Ser 217/221)/全MEK1/2アッセイ
96ウェル当たり20,000細胞の密度で細胞をプレートに入れ、翌日、0.2% DMSOの最終濃度で2時間化合物で処理した。2時間後、製造業者のプロトコール(Meso Scale Discovery、K15129D)に従って細胞を溶解させ、溶解物をBSAブロックプレートに添加し、4℃で一晩おいた。翌日、アッセイプレートをTBSTで三度洗浄し、検出抗体をRTで1時間添加した。その後、プレートをTBSTで三度洗浄した。1Xリードバッファーをプレートに添加し、Meso Scale Discovery SECTOR Imager 6000ですぐに読み取った。GraphPad Prism 6を使用して、曲線を生成した。
【0211】
薬物組み合わせアッセイ
組み合わせの相乗効果の研究のため、細胞を384ウェルプレート(Corning)に入れ、単独で又は組み合わせて様々な濃度の化合物で72時間にわたって処理した。CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega、G7573)を使用して、細胞生存率を決定した。Bliss独立分析法を使用して相乗効果を決定した(Greco et al. Pharmacol. Rev.47: 331-385, 1995; Chou and Talalay. Adv. Enzyme Regul. 22:27-55, 1984; Chou. Cancer Res. 70: 440-446, 2010; Bliss. Ann. Appl. Biol. 25: 31, 1939)。
【0212】
RNA配列決定実験
細胞を一晩播種し、AZ-628及びコビメチニブで、単独で(0.1μM)又は組み合わせて(それぞれ0.1μM)、6時間にわたって処理した。コントロール細胞をDMSO(0.2%最終濃度)で処理した。オンカラムDNAse消化を備えたRNEasyミニキットを使用して、製造業者のプロトコールにより、全RNAを抽出した(Qiagen #74106及び#79254)。試料の品質管理を、RNA-seqによる処理の前にRNAの量及び質を決定するために行った。NanoDrop 8000(Thermo Scientific)を使用してRNA試料の濃度を決定し、Fragment Analyzer(Advanced Analytical Technologies)でRNAの完全性を決定した。TruSeq RNA Sample Preparation Kit v2(Illumina)を使用して、ライブラリ調製のためのインプット材料として0.5μgの全RNAを使用した。2200 TapeStation及びHigh Sensitivity D1000スクリーニングテープ(Agilent Technologies)を使用してライブラリのサイズを確認し、Library quantification kit(KAPA)を使用して、qPCRに基づく方法でそれらの濃度を決定した。ライブラリを多重化し、その後、Illumina HiSeq2500(Illumina)で配列決定して、30Mのシングルエンド50塩基対読み取りを生成した。
【0213】
アライナGSNAPを備えたRefSeq遺伝子モデルを使用して、hg19ゲノムに読み取りをマッピングした。遺伝子ごとのカウントを使用して、limmaユーザーマニュアルに従ってRプログラミング言語で実装されたlimma及びedgeRソフトウェアを使用して差次的遺伝子発現を評価した。線形モデルは、細胞株の同一性、AZ-628及びコビメチニブ治療の項、並びに治療の相互作用項を用いて遺伝子発現に適合させた。線形モデルの項の有意性を、limmaソフトウェアで実装されたモデレートt検定によって決定した。
【0214】
クローン原性アッセイ
細胞を10,000細胞/ウェルで6ウェルプレートに複製して播種し、一晩付着させ、示した化合物で8日間処理した。適切な化合物を含む培地を72時間ごとに補充した。第8日に細胞をPBSで一度流し、固定し、クリスタルバイオレット溶液(Sigma Aldrich、HT90132)で20分間染色し、水で洗浄した。
【0215】
免疫ブロット法
溶解バッファー(0.5% NP40、20mM Tris、pH7.5、137mM NaCl、10% グリセロール、1mM EDTA)で溶解した細胞+プロテアーゼ阻害剤混合物-complete mini(Roche Applied Science、11836170001)及びホスファターゼ阻害剤混合物(Thermo、78426)。溶解物を10分間15,000rpmで遠心分離し、BCA(Thermo、23227)を使用してタンパク質濃度を決定した。等量のタンパク質をSDS-PAGE NuPAGE 4-12% Bis-Tris Gel(Novex、WG-1403)に供し、ニトロセルロース膜(BioRad、170 - 4159)に移した。ブロッキングバッファー(Li-Cor、927-40000)中でブロック後、示された一次抗体で膜をインキュベートし、二次抗体IRDye 680LT Goat 抗マウス IgG(H + L)(Li-Cor、926-68050)又はIRDye 800CW ヤギ抗ウサギ IgG(H + L)(Li-Cor、926-32211)のいずれかを添加することにより分析した。LiCor Odyssey CLx Scannerで膜を可視化した。
【0216】
In Vitroキナーゼアッセイ
免疫ブロット法に記載の通りに細胞を播種及び溶解した。細胞溶解物を抗CRAF抗体(Millipore 07-396)又は抗BRAF抗体(Millipore 07-453)及び50μlのプロテインAアガロースビーズ(Millipore 16-125)で2時間にわたって4℃でインキュベートした。溶解バッファー+プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤混合物で洗浄後、40μlのキナーゼバッファー(20mM MOPS、pH7.2、25mM β-グリセロールホスフェート、5mM EGTA、1mM オルトバナジウム酸ナトリウム、1mM DTT、120μM ATP、18mM MgCl2)中、0.4μgの不活性MEK1(Millipore 14-420)で、30℃で30分間プロテインAビーズをインキュベートした。その後試料をウェスタンブロットにより分析した。
【0217】
Ras活性アッセイ
GST-Raf-RBDプルダウンアッセイにより、活性GTP負荷Rasのレベルを決定した(Thermo Scientific、16117)。簡潔には、GST-Raf-RBD融合タンパク質をグルタチオンビーズでインキュベートし、製造業者により推奨されるように溶解バッファー中で細胞を収集した。細胞溶解物をGST-Raf-RBD固定化ビーズで4℃で1.5時間インキュベートした。結合したタンパク質をSDSサンプルバッファーで溶出し、ウェスタンブロットにより分析した。
【0218】
siRNAトランスフェクション
製造業者の指示に従って、リポフェクタミンRNAiMAX試薬(Life Technologies)の存在下で、細胞に20nM siKRAS(L-005069-00-0020)又はsiNTC(D-001810-10-20)(Dharmacon On-TARGETplus(登録商標)プール)を逆トランスフェクトした。培地をトランスフェクションの翌日に変更し、ノックダウン効率を第4日に評価した。
【0219】
In Vivo法
腫瘍タンパク質及びRNA単離
GEMモデル腫瘍試料を収集し、RNALater(Qiagen, Valencia, CA)に貯蔵した。全部のRNAを、製造者の指示に従ってRNeasy Plus Mini kit(Qiagen)を用いて抽出した。Nanodrop(Thermo Scientific, Waltham, MA)を用いてRNAの量を決定した。
【0220】
RT-PCR分析
製造元の推奨に従ってFluidigm機器又は標準RT-PCRアッセイを使用して、転写読み取り値を評価した。製造業者のプロトコールに従って、Applied Biosystems High Capacity cDNA RT Kit及びTaqMan PreAmp Master Mixを使用して、RNA(100ng)をcDNA合成/前増幅反応させた(Life Technologies, Carlsbad, CA)。増幅後、試料をTEで1から4に希釈し、製造業者のプロトコールに従って、BIOMARKTM HDシステムを使用してFluidigm 96.96 Dynamic ArraysでqPCRを実施した。サイクルしきい値(Ct)を、各標的遺伝子の平均から3つの参照遺伝子の平均を減算し、続いて平均試料dCtから平均ビヒクルdCtを減算することにより、相対発現値(2^-ddCt))の倍数変化に変換した。
【0221】
免疫ブロット法
タンパク質溶解物を調製するために、細胞を氷冷PBSで一度洗浄し、プロテアーゼ阻害剤錠剤(Roche)及びホスファターゼ阻害剤(Sigma)を補充した1X Cell Extraction Buffer(Invitrogen)に溶解した。BCA Protein Assay(Pierce)を使用して、タンパク質濃度を決定した。1X MOPSランニングバッファー(Invitrogen)中10%Bis-Trisゲルで等量のタンパク質を分離し、ニトロセルロース膜(Invitrogen)に移した。以下のタンパク質に対する抗体を使用した:CRAF、p-ERK、ERK1/2、p-MEK-1/2、MEK-1/2、切断PARP(Cell Signaling)、p-p90RSK、GAPDH(EMD Millipore)、p90RSK(Invitrogen)。増強した化学発光検出試薬(Pierce)を使用して、HRP-コンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体及びヤギ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch)で、又はOdyssey Infrared Imaging System(LI-COR Biosciences)を使用して、IRDye 800コンジュゲート、アフィニティ精製抗ウサギ IgG(LI-COR Biosciences)及びAlexa Fluor 680ヤギ抗マウス IgG(Life Technologies)二次抗体で、抗原抗体相互作用を検出した。
【0222】
In Vivoモデル
先述の通りに全腫瘍異種移植片モデルの形成及びモニタリングを実施し、これは、Hoeflich et al. Cancer Res.72(1): 210-219, 2012に記載されている。
【0223】
試験材料
コビメチニブ(GDC-0973)を、メチルセルロースツイーン(MCT)中で様々な濃度の懸濁液として、Genentechで調製した。AZ-628及びLY3009120をGenentechで合成し、MCTナノ懸濁液として調製した。コビメチニブ、AZ-628、LY3009120、及びビヒクルコントロール投与溶液を、一週間に一度、三週にわたって調製した。製剤は、投薬前に、ボルテックスによりよく混合した。試験物は、温度を4℃~7℃に維持するように設定された冷蔵庫に貯蔵した。
【0224】
皮下腫瘍モデル
Hoeflich et al.(Cancer Res. 72(1): 210-219, 2012)に記載されている通りに異種移植の研究を行った。簡潔には、5×106 HCT116細胞又は107 NCI-H2122細胞のいずれかを、平均24-26gの重量のTaconic(Cambridge City, IN)から得たメスのNCRヌードマウス(6-8週齢)の右脇腹に皮下移植した。Genentechで標準的なげっ歯類マイクロ-アイソレータケージにマウスを収容し、腫瘍細胞の移植の前に少なくとも3日間研究条件に順応させた。健康に見え、明白な異常がない動物のみを各試験に使用した。式(L×W×W)/2を用いてデジタルノギス(Fred V. Fowler Company, Inc.)を使用して腫瘍体積を決定した。腫瘍増殖阻害(%TGI)を、%TGI=100×[1-(AUC治療/日)/(AUCビヒクル/日)]であるように、ビヒクルに対する1日当たりのそれぞれの用量群について、近似曲線下面積(AUC)のパーセンテージとして算出した。R v2.12.0のRパッケージnlme、バージョン3.1-97(Pinheiro et al. R Package Version 3. 1-89, 2008)を使用する線形混合効果モデルを使用して、Log2変換された個々の腫瘍体積データに曲線適合を適用した。標準スケールを使用して一週間に二度マウスを計量した。
【0225】
実施例2:RAFキナーゼ阻害剤には、KRAS変異細胞株における強力な単一薬剤の有効性は存在しない
RAFキナーゼ阻害剤がKRAS変異細胞株において治療的に使用することができるかを決定するために、1.5型RAF阻害剤、ダブラフェニブ、ベムラフェニブ、及び「パラドックスブレーカー」PLX-8394、並びにII型RAF阻害剤、AZ-628及びLY3009120を有するBRAF-V600E細胞株に対して、KRAS変異におけるRAF阻害剤のパネルで細胞生存率を評価した。臨床的に承認された1.5型BRAF阻害剤、ベムラフェニブ及びダブラフェニブ、並びにPLX-8394は、BRAF-V600E変異細胞株で活性を示した(黒で示す)が、KRAS変異細胞株では活性を示さなかった(赤で示す)(
図1A)。予測通り、1.5型阻害剤ベムラフェニブ及びダブラフェニブ(PLX-8394は除く)は、KRAS変異腫瘍における下流のpMEKの逆説的な活性化をもたらした(
図1B)。1.5型阻害剤とは対照的に、II型汎RAF阻害剤はKRAS変異細胞株のより良好な阻害を示したが、KRAS変異細胞株におけるそれらの力価はBRAF-V600E変異体バックグラウンドで観察される活性よりも弱かった(
図1A)。この活性と一致して、II型RAF阻害剤、並びに最近報告されたパラドックスブレーカーPLX-8394は、逆説的な活性化を誘導しない(
図1B)。これらの結果を拡大するために、次に三つのII型RAF阻害剤(LY-3009120、MNL-2480及びAZ-628)及びPLX-8394を、161の肺、皮膚、及び結腸細胞株のパネルでスクリーニングした(
図1C)。BRAF/RAS野生型細胞株と比較して、RAS変異株におけるこれらの阻害剤の活性の増加は軽度であったが、BRAF-V600細胞株は最も感受性であった(
図1C)。これらのデータは、逆説的な活性化の欠如はRAS変異体バックグラウンドにおける感受性の前兆となるのには不十分であること、及びRAFキナーゼ活性は変異体KRAS媒介成長には不可欠ではない場合があることを示唆している。
【0226】
第2の薬剤がKRAS変異細胞株をRAFキナーゼ阻害に対して感受性化できるかどうかを決定するために、DMSO又は1μMのII型RAF阻害剤AZ-628のいずれかと組み合わせた480の小分子ツール化合物からなるライブラリをA549 KRAS-変異肺がん細胞株中でスクリーニングした。このスクリーニングで最もヒットしたものは、MEK阻害剤コビメチニブ(GDC-0973)であった。AZ-628は、上位20ヒットで他のMAPK経路阻害剤(四つの異なるMEK阻害剤を含む)及び二つのERK阻害剤とうまく組み合わされた(
図1D及び追加表1)。他にヒットした顕著なものには、複数の微小管阻害剤、並びにPI3K阻害剤ピクチリシブ(GDC-0941)及びタセリシブ(GDC-0032)が含まれる。一次スクリーニングのヒットを立証するために、HCT-116(KRAS-G13D/PIK3CA変異体)細胞株で最もヒットしたものを再度スクリーニングし、これにより、MEK阻害剤は、II型RAF阻害剤 AZ-628と組み合わせる最も強力な薬剤として確認された。
【0227】
実施例3:立体配座特異的RAF及びMEK阻害剤はRAS変異細胞株において相乗効果を呈する
スクリーニングで最もヒットしたものはMEK阻害剤であったが、全てのMEK阻害剤が同等に相乗的というわけではなかった。コビメチニブ、ピマセルチブ、レファメチニブ、及びPD901は試験された化合物の中で最も高いスコアを示したが、トラメチニブ及びGDC-0623は、どちらも強力なMEK阻害剤ではあるが、平均生存率において差異を示さなかった(
図1E)。MEK阻害剤は、不活性RAF-MEK複合体を捕捉する能力に応じて異なる作用機序を有することが以前報告されていた(Hatzivassiliou et al., Nature501:232-236 (2013))。この薬剤安定化複合体は、RAFがMEKをリン酸化するのを妨げる。MEK阻害剤の作用機序がAZ-628との相乗効果に影響を及ぼすかを決定するために、異なる分子機構を有する複数のMEK阻害剤を試験し、不活性RAF-MEK複合体を捕捉し、pMEK を誘導しないMEK阻害剤(例えば、トラメチニブ、GDC-0623、G-573、及びCH-6766)(
図1F)は、総量Blissマトリックス分析においてAZ-628との相乗効果も低いことを発見した(
図1G)。
【0228】
上記の観察に基づき、MEK阻害剤がすべて同等にRAF阻害剤と相乗的ではないように、MEK阻害剤と組み合わせた異なるRAF阻害剤との間の相乗効果には矛盾があるだろうという仮説が立てられた。II型RAF阻害剤はコビメチニブと容易に組み合わされることが発見されたが、1.5型RAF阻害剤(パラドックスブレーカーPLX-8394を含む)は、KRAS変異細胞株においてMEK阻害剤と相乗作用しなかった(
図2A)。これは、逆説的活性化が、1.5型BRAF阻害剤がこの変異の設定においてMEK阻害剤と相乗作用しないことの主な原因ではないことを示唆する。
【0229】
感受性のこれらの変化が経路シグナル伝達の予測された変化と関連しているかを試験するために、A549及びHCT 116細胞を漸増濃度のRAF阻害剤ベムラフェニブ及びAZ-628(0.1-10μM)、並びに固定用量のコビメチニブで処理した。ベムラフェニブ(vemurafinib)は、A549 KRAS変異株においてコビメチニブの存在下でも不存在下でも経路シグナル伝達を減少させることはできなかったが、コビメチニブと組み合わせたAZ-628のみが、pMEK、pERK及びpRSKのレベルでMAPK経路出力を効果的に阻害した(
図2B)。pAKTレベルへの影響はほとんど観察されなかったため、経路阻害はMAPK経路に限定されていた。四つのKRAS変異肺がん細胞株中0.1μM AZ-628、0.1μM コビメチニブ、又はその組み合わせで処理した6時間後に、RNA-Seqを使用して、MAPKシグナル伝達の正準下流転写標的、DUSP及びSPRY4を試験した(
図2C)。二つの単剤を組み合わせた効果が単に相加的である場合に、これらの遺伝子のダウンレギュレーションが予想よりも深刻であった処理間で有意な相互作用が観察された(P<0.01、緩和T検定)。これらのデータは、化合物がMAPK経路の相乗的な転写抑制も引き起こすことを示す。ウェスタンブロットによる切断PARPの染色の増加(
図2D)並びにアネキシンV及びヨウ化プロピジウムのフローサイトメトリーにより評価されるサブG1及びG1集団の顕著な増加(
図2E)により証明されるように、その組み合わせは、処理の48時間後に細胞アポトーシスの有意な誘導ももたらした。これらの組み合わせ効果が、細胞増殖の永続的な抑制をもたらすかを試験するために、コロニー形成アッセイにおいてMEK/RAF阻害剤の組み合わせの長期的な成長の効果も試験された。II型阻害剤AZ-628又はLY3009120と組み合わせたコビメチニブ間では著しい相乗効果が観察されたが、1.5型阻害剤ベムラフェニブ及びPLX-8394との組み合わせでは観察されなかった(
図2F)。
【0230】
実施例4:RAF阻害剤とMEK阻害剤の併用治療はin vivoで有効性を示す
in vitroで観察された組み合わせ効果がin vivo有効性に翻訳されたかを決定するために、II型汎RAF阻害剤LY3009120及びAZ-628をNCI-H2122肺(AZ-628+GDC-0973)及びHCT116結腸(LY3009120+GDC-0973)異種移植腫瘍モデル中でコビメチニブと組み合わせて試験した。in vitroデータと一致して、in vivoデータは、それぞれの分子単独の有効性と比較したときに、II型RAF阻害剤+MEK阻害剤の強固な組み合わせ効果を示す(
図3A)。単剤としてのLY3009120又はコビメチニブは腫瘍増殖をやや阻害したが、組み合わせると腫瘍を効果的に退縮させることができた。重要なことに、その組み合わせはマウスで良好な態様性を示し、治療後の体重にほとんど変化をもたらさなかったか、又は最小限の変化をもたらした(
図3B)。組み合わせがMAPKシグナル伝達にどのように良好に影響したかを評価するために、腫瘍試料を様々な時点で治療の4日後に収集した。MAPK経路シグナル伝達の定量化は、pERK及びpRSKのより良好な抑制をもたらし、試験された全ての時点で、LY3009120とGDC-0973の組み合わせは、いずれかの阻害剤単独の場合と比較して、下流MAPK標的遺伝子、DUSP6及びSPRY4のより深い抑制をもたらすことを実証した(
図3C)。血漿及び腫瘍薬物濃度は、阻害活性の改善は薬物曝露の増加には起因しないが、薬物-薬物相互作用に起因することを裏付けた(
図3D)。まとめると、RAF及びMEK阻害の組み合わせは、in vivoで有意な組み合わせの有効性を示した。
【0231】
実施例5:MEK阻害剤処理はRAS依存的にRAFキナーゼ活性を誘導する
コビメチニブとII型RAF阻害剤 AZ-628との間で観察される相乗効果の機序を研究するために、KRAS変異及び野生型細胞株のパネルをコビメチニブで24時間処理し、MAPK経路シグナル伝達に対する効果を調査した。コビメチニブで処理した後、KRAS変異細胞においてpMEKレベルの増加を観察したが、KRAS野生型細胞においては観察しなかった、これは、MAPK経路を通じたフラックスの増加を示す(
図4A)。KRAS変異及び野生型結腸及び肺がん細胞株のパネルをコビメチニブで24時間処理した後にpMEKの誘導について調査した別個の実験のセットにおいて、KRAS変異及び野生型相乗的細胞ではpMEKレベルの増加を観察したが、KRAS変異及び野生型非相乗的細胞では観察しなかった(
図4B-4D)。コビメチニブ処理が経路をどのように変更するかをさらに理解するために、CRAFの免疫沈降を通じてRAF二量体化を評価した。コビメチニブで処理したKRAS変異細胞株(A549、H2122、及びHCT116)では、BRAFはCRAFと強力に共免疫沈降した(
図4A)。これは、試験されたKRAS野生型(293T)又はBRAFV600E(A375)細胞株では観察しなかった。続いて、MEK及びATPの外因的な添加を通じてin vitroのキナーゼ活性についてRAF二量体をアッセイした。これらの結果は、KRAS変異細胞株に存在するRAF二量体は、コビメチニブの添加時に非常に活性であり(
図4A)、DMSOコントロールで処理したものよりも有意に高いレベルでMEKをリン酸化することができることを示す。この機序をさらに調査するために、KRAS変異及び野生型細胞株中GDC-0973での処理時のRAS-GTPレベルを評価した。KRAS変異株は、ベースラインで及びコビメチニブでの処理時にRAS-GTPレベルの上昇を示し、RAF二量体及びRAFキナーゼ活性の誘導を説明している可能性が高い(
図4A)。BRAF-CRAFヘテロ二量体の形成と、ヘテロ二量体のキナーゼ活性の増加はどちらも、50-100nMで起こるコビメチニブの添加に用量依存的であった(
図4E)。この結果は、50-100nMの濃度のコビメチニブ及び100nMの濃度のAZ-628が単独では細胞増殖にほとんど影響を与えなかった8日間のクローン原性アッセイにおいて観察された相乗効果を説明する(
図2F)。
【0232】
コビメチニブ誘導RAF二量体を阻害するRAF阻害剤の能力を次に調査した。コビメチニブ誘導RAF二量体をA549細胞から免疫沈降させ、その後、AZ-628、LY3009120、又はベムラフェニブで処理した。RAF二量体に結合することができるII型RAF阻害剤のみが、IPキナーゼアッセイにおけるpMEKレベルの減少により実証されるキナーゼ活性を阻害することができ(
図4F)、この株で観察された相乗効果と一致していた(
図2A)。
【0233】
RAS-GTPレベル、RAF二量体、及びpMEKの増加によって証明されるように、コビメチニブ処理はフィードバックの無効化及び強固な経路の「再活性化」をもたらし、これは、KRAS変異細胞株においてより顕著な効果である。変異体KRASがこの活性に必要であるかを試験するために、siRNA標的KRASを用い、コビメチニブの存在下又は不存在下でのMAPKシグナル伝達に対するその効果を観察した。試験した各KRAS変異細胞株において、KRASノックダウンは、pMEKのコビメチニブ誘導レベル、並びにRAF二量体の形成及びin vitroキナーゼ活性を抑制した(
図4G)。まとめると、これらのデータは、変異体KRASが、単一薬剤MEK阻害後のRAS-GTPレベルの増加により、MAPK経路の再活性化の媒介に重要な役割を果たすことを示している。
【0234】
実施例6:II型RAF阻害剤はKRAS変異及び野生型細胞株のサブセットにおいてMEK阻害剤と相乗作用する
特定の遺伝子型がII型汎RAF阻害剤とMEK阻害剤の組み合わせに対してより感受性であるかを決定するために、RAS変異が有意であり、頻繁にみられる細胞株(膵臓、肺、結腸直腸、皮膚、卵巣及び血液)を含む、322の細胞株を、AZ-628(20μMで開始)及びコビメチニブ(1μMで開始)の両方の単剤、並びに両化合物の共希釈でスクリーニングした。これらのデータから、相乗効果の尺度として共希釈系列の正のBliss超過を計算した。BRAF-V600変異又は野生型(非RAS/BRAF-V600変異)細胞株と比較して、KRAS及びNRAS変異細胞株において、有意に高い相乗効果スコアを観察した(
図5A)(p<0.001、両側t検定)。その後、混合モデル化アプローチを使用して、各組織型からの細胞株を以下のカテゴリーにグループ化した:相乗効果なし、低度の相乗効果、中程度の相乗効果、又は高度の相乗効果。すべての兆候にわたってこれらのカテゴリーの分布を調査したところ、野生型又はBRAF-V600細胞株と比較して、RAS変異体グループにおいて中程度及び高度の相乗効果レスポンダー間の強い関連を観察した(
図5A)。
【0235】
RAS変異細胞株において強力な相乗効果を観察したが、相乗的に阻害されていないRAS変異細胞株を発見した。反対に、複数のRAS/BRAFV600野生型細胞株は強力な相乗効果を示した。RAS変異状態及び相乗効果の存在又は不存在を表す結腸直腸がん株を選択し、コビメチニブ処理あり又はなしのKRASノックダウン時のMAPKシグナル伝達を評価した(
図5B)。興味深いことに、総タンパク質レベルの低下及びMAPK経路の多数のリンパ節でのリン酸化によって証明されるように、組み合わせが非相乗的であったKRAS変異株において、全体的に低レベルのMAPKシグナル伝達を観察した。反対に、組み合わせが相乗効果を示したKRAS変異株又は野生型株のいずれかにおいて、有意に高いMAPKシグナル伝達を観察した。組み合わせにより相乗的に阻害された株のMAPKシグナル伝達は、低レベルのpMEK、pERK、及びpRSKにより示されるようにコビメチニブと組み合わせたKRASノックダウンによって廃止された(
図5B)。CRAF免疫沈降並びにそれに続くRAS変異状態に依存しないCRAF及びBRAFの染色により証明されるように、組み合わせにより相乗的に阻害された細胞株は、BRAF/CRAFヘテロ二量体の形成の増加を示した(
図5B)。in vitroのRAFキナーゼアッセイを使用して、コビメチニブ処理後のpMEKレベルの強力な増加を、主に相乗効果を示す株において観察したが(
図5B)、相乗的に阻害されなかった野生型株においては観察しなかった(
図5C)。
【0236】
別個の試験のセットでは、HM95573、コビメチニブ、又は両方の薬剤で処理した後のpMEK、pERK、及びpRSKレベルによって評価して、KRAS変異非小細胞肺がん(NSCLC)細胞(A549)とKRAS変異結腸直腸がん(CRC)細胞(HCT-116)との両方において、コビメチニブとの異なるII型汎RAF阻害剤であるHM95573(GDC-5573)の組み合わせ活性も観察した(
図5D-5E)。HM95573(GDC-5573)とコビメチニブの組み合わせは、いずれかの薬剤単独での処理と比較して、KRAS変異同系CRC異種移植モデルCT26におけるin vivoでの腫瘍増殖阻害(TGI)も改善した(
図5F-5G)。
【0237】
HM95573(GDC-5573)とコビメチニブの組み合わせが細胞株にわたって同様の相乗効果を示すかを決定するために、196の肺、結腸、皮膚及び卵巣がん細胞株を、HM95573(GDC-5573)、コビメチニブのいずれか、又は両化合物の共希釈でスクリーニングした。これらのデータから、相乗効果の尺度として共希釈系列の正のBliss超過を計算し、両側t検定により有意性を評価した。AZ-628とコビメチニブの組み合わせと同様に、BRAF-V600変異細胞株又は野生型(非RAS/BRAF-V600変異)細胞株のいずれかと比較して、RAS変異細胞株において有意に高い相乗効果スコアを観察した(
図5H)。
【0238】
コビメチニブ処理時にRAF二量体の形成の増加を示したRAS変異及び野生型細胞株にわたってより大きな相乗効果が観察されたことを考慮して、これらの細胞株がコビメチニブでの処理時にRAS-GTPレベルの上昇を示したかを調べた。RAF及びMEK阻害剤の組み合わせにより相乗的に阻害される細胞株にわたって観察されるKRAS依存性効果と一致して、相乗効果を示す細胞株のみが、RAS変異状態にかかわらずコビメチニブ処理に応答して活性RAS-GTPの増加を示した(
図5I)。
【0239】
12又は13位での変化に応じて異なるRAS変異アイソフォーム間の固有のヌクレオチド交換における既知の生化学的差異が存在するため(Hunter et al. Molecular Cancer Research. 13:1325-1335 (2015))、少なくとも5つの代表的な細胞株でG12又はG13に変異を有する細胞株における相乗効果の違いを調査した。興味深いことに、RAF+MEK阻害剤の組み合わせに対する感受性とG13D変異の存在との間に有意な関連を観察した(
図6A)。この傾向は、KRAS-G13D変異が最もよくみられる結腸直腸がん株において最も明白で、試験したAZ-628とコビメチニブの組み合わせ(
図6B-6C)及びHM95573(GDC-5573)とコビメチニブの組み合わせ(
図6D)の両方では変異があまりみられなかった肺腺癌と同様の傾向があった。KRAS-G13D変異結腸直腸細胞株と非KRAS-G13Dを対比した経路シグナル伝達の分析は、G13D細胞株におけるpMEKの強力な誘導を明らかにした(
図6E)。SW48同系細胞株を使用した別個の実験のセットにおいて、AZ-628(0.1μMで開始)及びコビメチニブ(250nM)で処理したKRAS-G13Dノックイン細胞は、クリスタルバイオレット染色(
図6F)及びpERK誘導のウェスタンブロット分析(
図6G)で評価して、AZ-628とコビメチニブの同じ組み合わせで処理したKRAS-G12D及びKRAS-G12Cノックイン細胞よりも大きな相乗効果を示した。AZ-628に対して322の細胞株をプロファイリングする追加の実験は、KRAS-G12C、KRAS-G12D、及びKRAS-G12V細胞と比較して、KRAS-G13D細胞で単剤活性の上昇を示した(
図6H)。
【0240】
KRAS-WT、KRAS-G12V、又はKRAS-G13Dを担持するSW48同系細胞株がKRAS-G13Dクローンではるかに高いRAS-GTPレベルを実証したため、これらの効果はRAS-G13Dアイソフォームに直接起因し得た(
図6I)。KRAS-G13Dについて報告されたヌクレオチド交換速度の上昇(Hunter et al. Molecular Cancer Research. 13:1325-1335 (2015))は、MEKとII型RAF阻害剤の併用治療により効率的に廃止されるRAFヘテロ二量体シグナル伝達へのより大きな依存を誘導し得た。時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)によるヌクレオチド交換反応を使用して評価し、SW48 KRAS-G13D細胞においてKRAS-G13Dのより大きな固有のヌクレオチド交換を確認した(
図6J)。
【0241】
RAS-GTPレベルの増加についての別の説明は、EGFRを介したRASの上流又はSOS1活性化を介した下流のいずれかでのMEK阻害剤での処理時の適応的再プログラミングの結果としての誘導である。これを直接試験するために、コビメチニブ処理時のpEGFRレベルを評価したが、RAS-GTPレベルの上昇を観察した条件下ではEGFR活性化の証拠はほとんど見られなかった(
図6K)。同様に、SOS1の標的化ノックダウンはRAS-GTPレベルに影響せず(
図6L)、これらの機序のどちらもRAS-GTPレベルの上昇の原因ではないことを示唆している。
【0242】
実施例7:汎RAF阻害剤は汎PI3K阻害とも相乗作用する
上記のデータは、MEKキナーゼ阻害誘導フィードバックを強く示唆しており、これはKRAS-G13D変異腫瘍で特に強力である。これらの結果を考慮して、AZ-628と430の異なる小分子阻害剤のライブラリの組み合わせを有するA549細胞がスクリーニングされた当初の化合物スクリーニングを再調査した。スクリーニングで最もヒットした中でも汎PI3K阻害剤、ピクチリシブの存在が顕著であった。A549細胞はPIK3CA野生型であるため、この文脈での野生型PI3K阻害は、負のフィードバックループの阻害及びその後のRAFの活性化を通じて、RAS活性化を促進させることができるという仮説を立てた。これをより広く調査するために、213の細胞株のパネルをAZ-628とピクチリシブの組み合わせでスクリーニングした(
図7A)。興味深いことに、RAS/RAF変異状態とは無関係のコビメチニブ/ピクチリシブの組み合わせと比較して、AZ-628/ピクチリシブの組み合わせにおいて、相乗効果の大きな全面的な増加を観察した。次に、A549細胞及びHCT116細胞をPI3K阻害剤のパネルで処理し、pMEKレベルを治療後に調査した。試験したPI3K阻害剤の全ては、A549(KRAS-G12S)細胞とHCT116(KRAS-G13D/PIK3CA-H1047R)細胞の両方でpMEKを増加させることがわかったが(
図7B及び7C)、ピクチリシブ及びタセリシブはより低い濃度で増加させる。これは、PI3Kの阻害後のMAPK経路を通じたフラックスの増加がPI3K変異状態とは無関係であることを示唆する。この増大したフラックスは、pERK及びpRSKレベルの増加により証明されるように、大きな下流シグナル伝達につがなり、PI3K阻害剤ピクチリシブの濃度に対して用量依存的である(
図7D)。PI3Kを阻害する効果がRAS依存性の増加及びRAS-GTPレベルの増加につながるかを調査するために、ピクチリシブ又はコビメチニブのいずれかで処理した細胞における活性RAS-GTPについてRAF1-RBDプルダウンを実施した。ピクチリシブは、コビメチニブにより誘導されたものと同様に、RAS-GTPのレベルを(高濃度であっても)増加させることがわかった(
図7E)。
【0243】
汎RAF阻害剤とのPI3K相乗効果を、総量マトリックスBliss分析を使用して確認した。PI3K阻害剤のパネルは汎RAF阻害剤、AZ-628と相乗作用し、2~3分の1の相乗効果を示す、非常に特異的なPIK3CA阻害剤であるアルペリシブ(BYL-719)及びイパタセルチブ(GDC-0068)(AKT阻害剤)とのAZ-628/コビメチニブの組み合わせ(
図7F)と同様のBliss超過スコアを生成することを示した。これは、広範な野生型PI3K阻害は、RAS活性化を促進させることができ、RAF阻害に対する後に続く感作を引き起こす可能性があることを示す。AZ-628又はピクチリシブのいずれか単独、又は組み合わせのMAPKシグナル伝達の効果を調べたところ、PI3K阻害はそれ自体でpAKTを強固に阻害することを観察したのに対し、二つの薬剤の組み合わせは、pMEKの蓄積を妨げ、ERKへの下流のシグナル伝達を廃止することを観察した(
図7G)。
【0244】
実施例8:II型RAF阻害剤はNRAS変異細胞株において有効である
RAF阻害剤、特にII型汎RAF二量体阻害剤も他のRAS遺伝子変異に関して有効であるかを調査するために、BRAF-V600E変異及びNRAS/BRAF野生型細胞株と対比して、NRAS変異メラノーマ細胞株におけるRAF阻害剤のパネル中でII型RAF阻害剤、AZ-628、LY-3009120、及びMNL-2480、並びに「パラドックスブレーカー」PLX-8394を用いて細胞生存率を評価した。II型RAF阻害剤、AZ-628及びLY-3009120は、試験したBRAF-V600E変異細胞株と比較して、試験したNRAS変異メラノーマにおいて、平均生存率(
図8A)及びIC50により測定した阻害有効性(
図8B)に対してほぼ同等の効果を示した。これらの結果は、NRAS活性化変異を有する、メラノーマのような、がんの治療について、II型汎RAF二量体阻害剤、例えばAZ-628及びLY-3009120は、単独で、又はコビメチニブのようなMEK阻害剤とくみあわせて非常に有効であり得たことを示す。AZ-628又はコビメチニブ(GDC-0973)で処理したNRAS変異、BRAF-V600E、及びNRAS/BRAF野生型細胞株の細胞生存率及びIC50を評価する別個の研究により、NRAS変異がんを治療するためのII型汎RAF二量体阻害剤、例えばAZ-628及びLY-3009120の力価をさらに確認した。この結果は、NRAS変異細胞株に対してBRAF-V600E細胞株においてより大きな有効性を示したコビメチニブと比較して、AZ-628が、NRAS変異及びBRAF-V600E変異細胞株において同等の効果を有することを示した(
図8C及び8D)。
【0245】
その他の実施態様
前述の発明は明確な理解のために例示及び実施例によってある程度詳細に説明されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用されるすべての特許及び科学文献の開示内容は、その全体が出典明示により本明細書に援用される。
汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得るがんを有する個体を同定する方法であって、個体からの試料をKRAS-G13D変異についてスクリーニングすることを含み、試料中のKRAS-G13D変異の存在が、汎RAF二量体阻害剤及びMEK阻害剤を含む治療から利益を受け得る者として個体を同定する、方法。