(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018271
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】液体組成物、機能材料、及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/446 20210101AFI20230201BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20230201BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230201BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20230201BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20230201BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20230201BHJP
H01M 50/411 20210101ALI20230201BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20230201BHJP
【FI】
H01M50/446
H01M4/02 Z
H01M4/13
H01M50/46
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/411
H01G11/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122270
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】白石 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】東 隆司
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康司
(72)【発明者】
【氏名】大村 知也
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘規
【テーマコード(参考)】
5E078
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5E078CA07
5E078CA09
5E078CA10
5E078CA19
5H021BB17
5H021CC03
5H021EE01
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE34
5H021HH01
5H021HH03
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CA15
5H050CA27
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050FA02
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】液体組成物内の無機粒子が自重沈降しても、容易に再分散させることが可能な液体組成物を提供すること。
【解決手段】メジアン径が200nm以上1000nm未満の第1無機粒子と、平均直径が30nm未満の第2無機粒子と、分散剤と、溶媒と、を含有する、液体組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メジアン径が200nm以上1000nm未満の第1無機粒子と、
平均直径が30nm未満の第2無機粒子と、
分散剤と、
溶媒と、を含有する、
液体組成物。
【請求項2】
前記第2無機粒子の含有量が、前記第1無機粒子の総質量に対して1質量%以上5質量%以下である、
請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記第1無機粒子がαアルミナである、
請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
固形分の割合が、20質量%以上50質量%以下である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記溶媒が非水系溶媒である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記分散剤がノニオン性界面活性剤である、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記分散剤がオリゴエーテル基を有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体組成物を含む、
機能材料。
【請求項9】
セパレータ一体型電極の形成に用いられる、
請求項8に記載の機能材料。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の機能材料を用いて形成される、
蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物、機能材料、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタなどの蓄電デバイスにおいては、正極と負極の短絡を防止することを目的として、紙、不織布、多孔質フィルムがセパレータとして使用されている。
【0003】
近年、電極基体上に、電極合材層と、粒子層が順次形成されているセパレータ一体型電極が用いられている(例えば、特許文献1参照)。セパレータ一体型電極は、一般に、粒子を含有する液体組成物を電極合材層上に10μm以下の薄厚で塗布することにより、製造されている。この液体組成物は、液体吐出用のヘッドから吐出され、電極基体に均一な粒子層を形成する(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
液体組成物は、一般に無機粒子と分散剤とを固形成分として溶媒中に均一に分散されることにより調製される。このような均一な粒子層を作製するため、液体組成物中に界面活性剤などの分散剤を加え、ビーズミルなどの分散装置を用いて分散させることで、可能な限り無機粒子の一次粒子の集合を解き、独立した一次粒子を溶媒中に均一に分散させる試みがなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような液体組成物では、分散媒体である溶媒と比較して無機粒子の比重が大きいため、分散ができたとしても静置保存により液体組成物中で無機粒子が自重で沈降する(以下、自重沈降という)。例えば、アルミナのような比重の大きな粒子を、分散剤を使用して有機溶剤中に分散させた場合でも、一旦沈降した粒子を再分散させることは、従来の液体組成物では困難である。
【0006】
また、液体組成物中の無機粒子の再分散が不十分である場合、例えば、液体組成物中に凝集物が発生し粒度分布が変化する、液体組成物の粘度やチクソ性が変化するなど、液体組成物液物の物性が変化する。その結果、例えば、液体組成物を用いて基材上に機能膜を形成する場合に、インクジェットを用いて液体組成物を吐出した際に吐出不良が生じて、塗工ムラの発生につながる懸念がある。
【0007】
本発明の課題は、液体組成物内の無機粒子が自重沈降しても、容易に再分散させることが可能な液体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、メジアン径が200nm以上1000nm未満の第1無機粒子と、平均直径が30nm未満の第2無機粒子と、分散剤と、溶媒と、を含有する、液体組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、液体組成物内の無機粒子が自重沈降しても、容易に再分散させることが可能な液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】粒子間の相互作用ポテンシャルエネルギー曲線である。
【
図5】負極の製造方法の他の例を示す模式図である。
【
図6】
図4、5の液体吐出装置の変形例を示す模式図である。
【
図8】蓄電デバイスを構成する電極素子の一例を示す断面図である。
【
図10】インクジェット印刷装置の一例を示す概略構成斜視図である。
【
図11】セパレータ一体型電極の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【0012】
<液体組成物>
本実施形態に係る液体組成物は、第1無機粒子、第2無機粒子、分散剤、及び溶媒を含有する。ここで、無機粒子は、金属または金属酸化物などの無機化合物の粒子を示す。なお、本実施形態の液体組成物は、任意に、補助溶媒、バインダ、その他の添加物を含有してもよい。
【0013】
[第1無機粒子]
第1無機粒子(以下、無機粒子Aという場合がある)は、メジアン径が200nm以上1000nm未満の無機粒子である。
【0014】
本明細書において、メジアン径とは、個数基準における頻度の累積が50%となる粒子径(以下、D50という)を示す。なお、メジアン径が1000nm以上であるとμm単位の膜厚を得る場合に塗布した際の塗布ムラが生じやすくなり、メジアン径200nm未満であると均一な分散状態を保つことが難しくなる。
【0015】
第1無機粒子を構成する材料(無機粒子A)としては、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの第1無機粒子は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0016】
これらの第1無機粒子の中でも、絶縁性及び耐熱性が高いことから、後述のセパレータ一体型電極の製造に使用する場合、酸化アルミニウム(アルミナ)などの無機酸化物が好ましい。
【0017】
第1無機粒子として用いられるアルミナの種類は、特に限定されず、例えば、αアルミナ、γアルミナ、βアルミナ、フュームドアルミナなどが挙げられる。これらの中でも、αアルミナが、絶縁性や耐擦過性の点から好ましい。
【0018】
これらのアルミナは、1種または2種以上を混合して用いてもよい。なお、2種以上のアルミナを用いる場合は、アルミナの主成分がαアルミナであることが絶縁性や耐擦過性の点から好ましい。
【0019】
ここで、主成分がαアルミナであるとは、全アルミナ中のαアルミナの含有率が50質量%以上であることを意味し、この含有率は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。このような範囲とすることで、絶縁性や耐擦過性に優れた粒子層を形成することができる。
【0020】
本実施形態の液体組成物に含まれるアルミナは、液体組成物中の固形分に相当し得る。該固形分の液体組成物に占める割合は、20質量%以上50質量%以下であり、好ましくは35質量%以上45質量%以下である。
【0021】
このようなアルミナの含有量は、一般的なインクなどの液体組成物と比較して、高い固形分濃度を示す。アルミナの含有量をこのような範囲にすることで、液体組成物を塗布して乾燥した後の塗膜厚さのムラを抑制することができる。
【0022】
[第2無機粒子]
第2無機粒子(以下、微小無機粒子または微小無機粒子Bという場合がある)は、平均直径が30nm未満の無機粒子である。
【0023】
本明細書において、平均直径とは、例えば、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による観察によって測定した粒子の長径の平均値を示す。平均直径が30nm以上であると、後述する粒子間の相互作用ポテンシャルエネルギーにおいてエネルギー障壁を十分に小さくすることができない可能性がある。
【0024】
ここで、平均直径が30nm未満の微小無機粒子Bは、例えば、遠心分離による上澄み液を抽出することで他の粒子と分離し回収することができる。
【0025】
例えば、下記のストークスの式により、粒子密度3.95g/cm3であるアルミナを液体の粘度10kg/m・s、液体の密度1.03g/cm3に調製した溶媒中で、回転数3000rpm、回転半径10cmの条件で20分間遠心分離させる。これにより、1.8cm沈降する粒子径は30nm以上と算出されるので、上澄み液を採取することで30nm未満の微小無機粒子を回収することが可能である。
【0026】
【数1】
なお、上記式において、d
pは粒子径、μは液体の粘度、ρ
pは粒子の密度、ρ
fは液体の密度、gは重力、hは沈降距離、tは沈降時間を示す。
【0027】
第2の無機粒子(微小無機粒子B)を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの第2無機粒子は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
これらの第2無機粒子の中でも、絶縁性及び耐熱性が高いことから、後述のセパレータ一体型電極の製造に使用する場合、酸化アルミニウム(アルミナ)などの無機酸化物が好ましい。
【0029】
第2無機粒子として用いられるアルミナの種類は、特に限定されず、例えば、αアルミナ、γアルミナ、βアルミナ、フュームドアルミナなどが挙げられる。これらの中でも、αアルミナが、絶縁性や耐擦過性の点から好ましい。
【0030】
なお、微小無機粒子Bを構成する材料は、上述の無機粒子Aを構成する材料と同一であっても、異なっていてもよい。
【0031】
また、第2無機粒子(微小無機粒子B)の含有量は、特に限定されないが、第1無機粒子(無機粒子A)の総質量に対して1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態において液体組成物が第1無機粒子及び第2無機粒子を含む態様は、特に限定されない。
図1は、本実施形態に係る液体組成物に含まれる無機粒子の模式図である。本実施形態では、第1無機粒子1と図示しない第2無機粒子とが、液体組成物中に混在している。
【0033】
[分散剤]
分散剤は、粒子の表面に吸着もしくは結合し、クーロン力による静電反発や分子鎖による立体障害によって粒子同士の凝集を抑える機能を持った化合物を示す。
【0034】
分散剤の数平均分子量は、特に限定されないが、通常、1000~100000であり、液体組成物の粘度の上昇を抑制する点から、1000~10000であることが好ましく、1000~5000であることがさらに好ましい。
【0035】
分散剤は、分散性基を有することが好ましい。分散性基は、例えば、液体組成物をリチウムイオン電池の機能材料として使用する場合には、イオン伝導性の観点から、ノニオン性基であることが好ましい。ここで、ノニオン性とはイオン性を有さないことを示し、ノニオン性基とはイオン性を有さない置換基を示す。なお、分散性基としてノニオン性基を有する分散剤は、ノニオン性界面活性剤に相当する。
【0036】
分散性基としては、後述する溶媒及び補助溶媒に対して溶解性を有する構造であればよいが、リチウムイオン二次電池として使用する場合、イオン伝導性の観点から、オリゴエーテル基が好ましい。ここで、オリゴエーテル基とは、エチレングリコール又はプロピレングリコールの重合体の末端からヒドロキシル基を除いた基を示す。
【0037】
エチレングリコール又はプロピレングリコールの重合体の分子量は、100~10000であることが好ましく、100~5000であることがより好ましい。エチレングリコール又はプロピレングリコールの重合体の分子量が100以上であると、液体組成物中の無機粒子(例えば、アルミナ粒子)の分散性が向上し、10000以下であると、液体組成物の粘度の上昇を抑制することができる。
【0038】
オリゴエーテル基の結合していない側の末端は、水酸基であってもよいし、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などであってもよい。なお、オリゴエーテル基を有する分散剤を使用すると、溶媒として、極性が高い溶媒を用いても、無機粒子の分散性を向上させることができる。
【0039】
分散剤は、第1無機粒子がアルミナ粒子の場合に、該アルミナ粒子との吸着強度の点で、吸着性基として、アルミナ粒子が帯電している極性とは逆の極性のイオン性基を有する高分子分散剤が好ましい。
【0040】
高分子分散剤としては、例えば、DISPERBYK(登録商標)-103、DISPERBYK-118、DISPERBYK-2155(以上、ビッグケミー社製)、NOPCOSPERSE(登録商標)-092、SN-SPERSE-2190、SN-DISPERSANT-9228(以上、サンノプコ社製)、エスリーム(登録商標)AD-3172M、エスリーム2093、マリアリム(登録商標)AKM-0513、マリアリムHKM-50A、マリアリムHKM-150A、マリアリムSC-0505K、マリアリムSC-1015F、マリアリムSC-0708A(以上、日油社製)などの市販品が挙げられる。
【0041】
これらの高分子分散剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。また、無機粒子に対する高分子分散剤の含有量は、特に限定されず、通常、0.01質量%~10質量%であり、さらに無機粒子の分散性を考慮すると、0.1質量%~10質量%であることが好ましい。
【0042】
[バインダ]
本実施形態の液体組成物では、バインダを任意に含有することができる。バインダが含有された液体組成物を後述の基材上に塗布することで、液体組成物を用いて作製された機能膜の強度を向上させることができる。
【0043】
バインダとしては、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂などが挙げられる。これらのバインダは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。また、バインダは、液体組成物中に溶解していてもよいし、分散していてもよい。
【0044】
なお、バインダの代わりに、バインダの前駆体を用いてもよい。バインダの前駆体としては、例えば、モノマーなどが挙げられる。このようなモノマーを含有し、必要に応じて、重合開始剤をさらに含有する液体組成物を吸収媒体(以下、基材という場合がある)上に塗布した後、加熱する、又は、光を照射することにより、モノマーが重合し、機能膜の強度を向上させることができる。
【0045】
[溶媒]
溶媒(以下、溶媒Aという)は、液体組成物中の無機粒子を分散し得る。溶媒Aの含有量は、任意である。溶媒Aの成分は、特に限定されず、水系溶媒又は非水系溶媒である。
【0046】
水系溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、水と極性溶媒との混合物などが挙げられる。
【0047】
極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。極性溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
【0048】
非水系分散媒としては、特に限定されず、例えば、ラクタム、アルコール、スルホキシド、エステル、又はケトンなどが挙げられる。
【0049】
ラクタムとしては、例えば、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドンなどが挙げられる。
【0050】
アルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール、ブタノール、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
【0051】
スルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0052】
また、エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールジアセタートなどが挙げられる。
【0053】
ケトンとしては、例えば、ジイソブチルケトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
【0054】
これらの非水系溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
なお、溶媒Aは、無機粒子(例えば、アルミナ粒子)との親和性を有する溶媒であることが好ましく、非水系溶媒であることがより好ましい。
【0056】
[補助溶媒]
補助溶媒(以下、溶媒Bという)は、溶媒Aと異なる溶剤である。溶媒Bは、溶媒Aで不足する機能を補う目的で、任意に配合することができる。
【0057】
溶媒Bとしては、例えば、無機粒子(例えば、アルミナ粒子)を分散させる機能を有する溶剤、液体吐出ヘッドのノズルの乾燥を防止することを目的とする沸点が高い溶剤、液体吐出ヘッドから吐出する際に適切な粘度や表面張力に調整することを目的とする溶剤、又は電極合材層へのアルミナ粒子の吸収を抑えることを目的とする溶剤などが挙げられる。
【0058】
溶媒Bの成分は、特に限定されず、水系溶媒又は非水系溶媒である。
【0059】
水系溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、水と極性溶媒との混合物などが挙げられる。極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、NMP、DMSO、DMF、アセトン、THFなどが挙げられる。極性溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
【0060】
非水系分散媒としては、特に限定されず、例えば、エーテル、グリコール、エステル、アルコール、又はラクタムが挙げられる。
【0061】
エーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが挙げられる。
【0062】
グリコールとしては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコールなどが挙げられる。
【0063】
エステルとしては、例えば、乳酸エチル、エチレンカーボネート、エチレングリコールジアセタートなどが挙げられる。
【0064】
アルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが挙げられる。ラクタムとしては、例えば、2-ピロリドンなどが挙げられる。
【0065】
これらの非水系溶媒は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
なお、溶媒Bは、アルミナなどの無機粒子との親和性を有する溶剤であることがより好ましく、非水系溶媒であることがより好ましい。
【0067】
[その他の添加物]
本実施形態の液体組成物は、粘度の調整、表面張力の調整、溶剤の蒸発制御、添加剤の溶解性向上、アルミナ粒子の分散性向上、殺菌などを目的に応じて、その他の成分をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などが挙げられる。
【0068】
[液体組成物の製造方法]
本実施形態の液体組成物の製造方法は、特に限定されないが、第1無機粒子(無機粒子A)、第2無機粒子(微小無機粒子B)と、分散剤と、溶媒Aを加え、必要に応じてバインダ、溶媒Bを加えて、分散させることにより製造することができる。
【0069】
液体組成物を分散させる方法は、特に限定されないが、例えば、公知の分散装置を用いることができる。分散装置の具体例としては、例えば、攪拌機、ボールミル、ビーズミル、リング式ミル、高圧式分散機、回転式高速せん断装置、超音波分散機などが挙げられる。
【0070】
本実施形態に係る液体組成物により得られる効果は、粒子間に働く分散・凝集状態を表すDLVO理論により説明することができる。DLVO理論は、粒子の分散・凝集現象を、粒子間の電気二重層に由来する浸透圧斥力とLondon-van der Waals力の総和である粒子間引力のバランスによって予測できると説明している。
【0071】
図2は、DLVO理論に基づく粒子間の相互作用ポテンシャルエネルギー曲線である。なお、
図2のグラフにおいて、横軸のHは粒子間距離、縦軸のVはポテンシャルエネルギー、AはLondon-van der Waals引力、Bは電気二重層斥力(反発力)、Cは引力と斥力(反発力)との全相互作用によるポテンシャルエネルギー、C1は一次凝集の極小点、C2はエネルギー障壁の極大点、C3は二次凝集の極小点を示す。
【0072】
このDLVO理論によれば、一次凝集した粒子を再度分散状態に戻すためには、引力(A)と斥力(B)との全相互作用(C)によるポテンシャルエネルギーのエネルギー障壁(C2)を超える必要がある。このことから、液体組成物の再分散性を高めるためには、このような粒子間に働くポテンシャルエネルギーのエネルギー障壁(C2)を小さくする必要がある。
【0073】
本発明者らは、メジアン径で規定される無機粒子に対して平均直径で規定される微小無機粒子を一定量加えると、London-van der Waals力(A)が増加し、ポテンシャルエネルギーのエネルギー障壁(C2)が小さくなることを見出した。本実施形態に係る液体組成物の効果は、このような機序によって得られると考えられ、無機粒子が含まれる液体組成物の再分散性を高められるというものである。
【0074】
すなわち、本実施形態に係る液体組成物は、上述のように、メジアン径が200nm以上1000nm未満の第1無機粒子と、平均直径が30nm未満の第2無機粒子と、分散剤と、溶媒と、を含有する。これにより、液体組成物中で無機粒子間に働くポテンシャルエネルギーのエネルギー障壁を小さくすることができる。そのため、溶媒に対して比重が大きい無機粒子を含有する場合でも、液体組成物の分散性を向上させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上述のように、液体組成物中で無機粒子間に働くポテンシャルエネルギーのエネルギー障壁が小さくなることで、溶媒に対して比重が大きい無機粒子が液体組成物内で自重沈降しても、液体組成物を容易に再分散させることができる。そのため、本実施形態によれば、貯蔵、運搬などの保存安定性に優れた液体組成物を提供することができる。
【0076】
さらに、本実施形態では、液体組成物中の無機粒子が自重沈降しても容易に再分散させることができるため、液体組成物が保管、貯蔵された後に液体組成物を使用する場合に大がかりな撹拌操作が不要となり、再分散効率が向上し、かつ製品コストを抑制することができる。また、液体組成物を用いて基材上に機能膜を形成する場合に、例えば、インクジェットを用いて液体組成物を吐出した際の塗布ムラを抑制することができる。
【0077】
本実施形態に係る液体組成物では、上述のように、第1無機粒子の総質量に対して第2無機粒子の含有量を1質量%以上5質量%以下にすることで、液体組成物中で無機粒子間に働くポテンシャルエネルギーのエネルギー障壁をさらに小さくすることができる。これにより、溶媒に対して比重が大きい無機粒子が液体組成物内で自重沈降した後の再分散性を向上させることができる。
【0078】
本実施形態に係る液体組成物では、上述のように、第1無機粒子としてαアルミナを用いることにより、液体組成物中で無機粒子間に働くポテンシャルエネルギーのエネルギー障壁をさらに小さくすることできる。これにより、溶媒に対して比重が大きい無機粒子が液体組成物内で自重沈降した後の再分散性をさらに向上させることができる。
【0079】
本実施形態に係る液体組成物では、上述のように、固形分の割合を20質量%以上50質量%以下にすることで、液体組成物を塗布して塗膜を形成する場合の塗工ムラを抑制することができる。
【0080】
本実施形態に係る液体組成物では、上述のように、溶媒として非水系溶媒を用いることで、アルミナなどの無機粒子と溶媒との親和性を高めることができる。これにより、無機粒子を含む、液体組成物における製造時の分散性および自重沈降後の再分散性のいずれも向上させることができる。また、非水系溶媒は、水系溶媒に比べて沸点が高いため、液体組成物を塗布して塗膜を形成する場合の乾燥が容易になる。
【0081】
本実施形態に係る液体組成物では、上述のように、分散剤としてノニオン性界面活性剤を用いることで、リチウムイオン電池の機能材料として使用する場合に、イオン伝導性を高めることができる。そのため、本実施形態によれば、液体組成物をリチウムイオン二次電池に用いる場合に、リチウムイオン電池の電池特性を向上させることができる。
【0082】
本実施形態に係る液体組成物では、上述のように、オリゴエーテル基を有する分散剤を用いることで、液体組成物をリチウムイオン電池の機能材料として使用する場合に、さらにイオン伝導性を高めることができる。そのため、本実施形態によれば、液体組成物をリチウムイオン二次電池に用いる場合に、リチウムイオン電池の電池特性をさらに向上させることができる。
【0083】
<機能材料>
本実施形態に係る機能材料は、上述の液体組成物に含まれる材料を含む。すなわち、上述の液体組成物に含まれる材料は、本実施形態に係る機能材料に用いることができる。具体的には、機能材料として上述の液体組成物を後述の基体に塗布することで、基体上に機能膜を形成することができる。
【0084】
[液体組成物の塗布方法]
液体組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、吐出位置の制御が可能であるという理由から、インクジェット吐出方法などの液体吐出方法を用いて、上述の液体組成物を基体上に塗布することが好ましい。
【0085】
液体吐出方法における液体組成物を吐出する方式としては、例えば、液体組成物に力学的エネルギーを付与する方式、液体組成物に熱エネルギーを付与する方式などが挙げられる。これらの中でも、液体組成物に力学的エネルギーを付与する方式が分散安定性の点で好ましい。
【0086】
なお、液体吐出方法を用いる場合は、公知の液体吐出装置の液体吐出原理を用いた技術を応用すればよい。この場合は、液体吐出装置に設置される流路及び液体吐出ヘッドのノズルの耐性がある溶媒を、液体組成物に含まれる上述の溶媒A、溶媒Bとして用いることが好ましい。
【0087】
[電極の製造方法]
上述の液体組成物は、機能膜を有する電極の製造に用いることができる。このような電極の製造方法は、上述の液体組成物を、電極基材上に吐出する工程を含む。
【0088】
電極基材(例えば、集電体、集電体及び活物質層を有する電極など)を構成する材料としては、導電性を有し、印加される電位に対して安定であれば、特に制限されない。
【0089】
上述の液体組成物を用いる電極の製造方法は、上述の液体組成物が吐出された電極基材を加圧する工程をさらに含むことが好ましい。これにより、電極構成成分が剥がれにくくなり、機能材料を用いて形成されるデバイスの信頼性が向上する。
【0090】
上述の液体組成物が用いられる電極は、負極と正極を有する。
【0091】
[負極]
図3に、負極の一例を示す。負極10は、負極基体11の片面に、負極活物質及び重合体を含む負極合材層12が形成されている。なお、負極合材層12は、負極基体11の両面に形成されていてもよい。
【0092】
負極10の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状などが挙げられる。負極基体11を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅などが挙げられる。
【0093】
[負極の製造方法]
図4に、負極の製造方法の一例を示す。負極10の製造方法は、液体吐出装置300を用いて、負極基体11上に、液体組成物12Aを吐出する工程を含む。
【0094】
ここで、液体組成物12Aは、負極活物質、分散媒(溶媒)及び重合体を含む。液体組成物12Aは、タンク307に貯蔵されており、タンク307からチューブ308を経由して液体吐出ヘッド306に供給される。
【0095】
また、液体吐出装置300は、液体組成物12Aが液体吐出ヘッド306から吐出されていない際に、乾燥を防ぐため、液体吐出ヘッド306のノズル(図示せず)をキャップする機構が設けられていてもよい。
【0096】
負極10を製造する際には、加熱することが可能なステージ400上に、負極基体11を設置した後、負極基体11に液体組成物12Aの液滴を吐出した後に、加熱する。このとき、ステージ400が移動してもよく、液体吐出ヘッド306が移動してもよい。
【0097】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際には、ステージ400により加熱してもよいし、ステージ400以外の加熱機構により加熱してもよい。
【0098】
加熱機構としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータなどが挙げられる。なお、加熱機構は、複数個設置されていてもよい。
【0099】
加熱温度は、分散媒を揮発させることが可能な温度であれば、特に制限はなく、消費電力の点から、70~150℃の範囲であることが好ましい。
【0100】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際に、紫外光を照射してもよい。
【0101】
図6に、負極の製造方法の他の例を示す。なお、
図6では、
図4と共通する部分については、
図4と同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0102】
負極10の製造方法は、液体吐出装置300を用いて、負極基体11上に、液体組成物12Aを吐出する工程を含む。
【0103】
まず、細長状の負極基体11を準備する。そして、負極基体11を筒状の芯に巻き付け、負極合材層12を形成する側が、
図6中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、それぞれ反時計回り(
図6の矢印の方向)に回転し、負極基体11は、
図6中、右から左の方向に搬送される。
【0104】
そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の負極基体11の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、搬送される負極基体11上に、液体組成物12Aの液滴を吐出する。液体組成物12Aの液滴は、負極基体11の少なくとも一部を覆うように吐出される。
【0105】
なお、液体吐出ヘッド306は、負極基体11の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されてもよい。
【0106】
次に、液体組成物12Aが吐出された負極基体11は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱機構309に搬送される。その結果、負極基体11上の液体組成物12Aに含まれる分散媒(溶媒)が揮発して負極合材層12が形成され、負極10が得られる。その後、負極10は、打ち抜き加工などにより、所望の大きさに切断される。
【0107】
加熱機構309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒータ、赤外線ヒータ、ファンヒータなどが挙げられる。なお、加熱機構309は、負極基体11の上下のいずれか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0108】
加熱温度は、分散媒を揮発させることが可能な温度であれば、特に制限はなく、消費電力の点から、70~150℃の範囲であることが好ましい。
【0109】
また、負極基体11に吐出された液体組成物12Aを加熱する際に、紫外光を照射してもよい。
【0110】
図6に、
図4、
図5の液体吐出装置300の変形例を示す。なお、
図6では、
図5と共通する部分については、
図5と同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0111】
図6に示す液体吐出装置300´は、ポンプ310と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物12Aが液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
【0112】
また、液体吐出装置300´は、外部タンク314が設けられている。液体吐出装置300´では、タンク307内の液体組成物12Aが減少した際に、ポンプ310と、バルブ311、312、313を制御することにより、外部タンク314からタンク307に液体組成物12Aを供給することも可能である。
【0113】
液体吐出装置300、300´を用いると、負極基体11の狙ったところに液体組成物12Aを吐出することができる。また、液体吐出装置300、300´を用いると、負極基体11と負極合材層12の上下に接する面同士を結着することができる。さらに、液体吐出装置300、300´を用いると、負極合材層12の厚さを均一にすることができる。
【0114】
[正極]
図7に、正極の一例を示す。正極20は、正極基体21の片面に、正極活物質及び重合体を含む正極合材層22が形成されている。なお、正極合材層22は、正極基体21の両面に形成されていてもよい。
【0115】
正極20の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状などが挙げられる。正極基体21を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、チタン、タンタルなどが挙げられる。
【0116】
[正極の製造方法]
正極20の製造方法は、正極基体21上に、液体組成物を吐出する以外は、負極10の製造方法と同様である。ここで、液体組成物は、正極活物質、分散媒(溶媒)及び重合体を含む。
【0117】
<蓄電デバイス>
本実施形態に係る蓄電デバイスは、上述の機能材料を用いて形成することができる。すなわち、上述の液体組成物を含む機能材料は、本実施形態の蓄電デバイスの形成に用いられる。具体的には、上述の液体組成物を含む機能材料は、二次電池等の電気化学素子の形成に用いることができる。
【0118】
[電気化学素子の製造方法]
電気化学素子(蓄電デバイス)の製造方法は、上述した電極の製造方法を用いて電極を製造する工程を含む。
【0119】
[電極素子]
図8に、本実施形態の蓄電デバイス(電気化学素子)を構成する電極素子の一例を示す。電極素子40は、負極15と正極25が、セパレータ30を介して、積層されている。ここで、正極25は、負極15の両側に積層されている。また、負極基体11には、引き出し線41が接続されており、正極基体21には、引き出し線42が接続されている。
【0120】
負極15は、負極基体11の両面に、負極合材層12が形成されていること以外は、上述の負極10と同様である。
【0121】
正極25は、正極基体21の両面に、正極合材層22が形成されていること以外は、上述の正極20と同様である。
【0122】
なお、電極素子40の負極15と正極25の積層数は、特に制限されない。また、電極素子40の負極15の個数と正極25の個数は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0123】
[セパレータ]
セパレータ30は、負極15と正極25の短絡を防ぐために、負極15と正極25の間に設けられている。
【0124】
セパレータ30は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。セパレータ30としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙などの紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布などのポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、マイクロポア膜などが挙げられる。
【0125】
セパレータ30の大きさは、電気化学素子に使用することが可能であれば、特に制限されない。
【0126】
セパレータ30は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0127】
なお、固体電解質を使用する場合は、セパレータ30を省略することができる。
【0128】
図9に、本実施形態の蓄電デバイス(電気化学素子)の一例として、二次電池を示す。なお、
図9では、
図8と共通する部分については、
図8と同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0129】
二次電池100は、
図8に示す電極素子40に、電解質水溶液又は非水電解質を注入することにより、電解質層81が形成されており、外装82により封止されている。二次電池100において、引き出し線41及び42は、外装82の外部に引き出されている。
【0130】
二次電池100は、必要に応じて、その他の部材を有してもよい。二次電池100としては、特に制限はなく、例えば、リチウムイオン二次電池などが挙げられる。
【0131】
二次電池100の形状は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。二次電池100の形状としては、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプなどが挙げられる。
【0132】
[電解質水溶液]
電解質水溶液を構成する電解質塩としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酒石酸亜鉛、過塩化亜鉛などが挙げられる。
【0133】
[非水電解質]
非水電解質としては、固体電解質又は非水電解液を使用することができる。ここで、非水電解液とは、電解質塩が非水溶媒に溶解している電解液である。
【0134】
[非水溶媒]
非水溶媒としては、特に制限はなく、例えば、非プロトン性有機溶媒を用いることが好ましい。
【0135】
非プロトン性有機溶媒としては、鎖状カーボネート、環状カーボネートなどのカーボネート系有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、電解質塩の溶解力が高い点から、鎖状カーボネートが好ましい。また、非プロトン性有機溶媒は、粘度が低いことが好ましい。
【0136】
鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)などが挙げられる。
【0137】
非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量は、特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましい。
【0138】
非水溶媒中の鎖状カーボネートの含有量が50質量%以上であると、鎖状カーボネート以外の非水溶媒が誘電率の高い環状物質(例えば、環状カーボネート、環状エステル)であっても、環状物質の含有量が少なくなる。このため、2M以上の高濃度の非水電解液を作製しても、非水電解液の粘度が低くなり、非水電解液の電極へのしみ込みやイオン拡散が良好となる。
【0139】
環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
【0140】
なお、カーボネート系有機溶媒以外の非水溶媒としては、例えば、環状エステル、鎖状エステルなどのエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテルなどのエーテル系有機溶媒などを用いることができる。
【0141】
環状エステルとしては、例えば、γ-ブチロラクトン(γBL)、2-メチル-γ-ブチロラクトン、アセチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどが挙げられる。
【0142】
鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル(例えば、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル)、ギ酸アルキルエステル(例えば、ギ酸メチル(MF)、ギ酸エチル)などが挙げられる。
【0143】
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、アルキル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキソランなどが挙げられる。
【0144】
鎖状エーテルとしては、例えば、1,2-ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0145】
[電解質塩]
電解質塩としては、イオン伝導度が高く、非水溶媒に溶解することが可能であれば、特に制限されない。
【0146】
電解質塩は、ハロゲン原子を含むことが好ましい。
【0147】
電解質塩は、カチオンまたはアニオンで構成することができる。
【0148】
電解質塩を構成するカチオンとしては、例えば、リチウムイオン(リチウム塩)などが挙げられる。
【0149】
電解質塩を構成するアニオンとしては、例えば、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-などが挙げられる。
【0150】
リチウム塩は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0151】
リチウム塩としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiN(C2F5SO2)2)などが挙げられる。
【0152】
これらの中でも、イオン伝導度の点から、LiPF6が好ましく、安定性の点から、LiBF4が好ましい。
【0153】
なお、電解質塩は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0154】
非水電解液中の電解質塩の濃度は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。非水電解液中の電解質塩の濃度は、例えば、非水系蓄電素子がスイング型である場合、1mol/L~2mol/Lであることが好ましく、非水系蓄電素子がリザーブ型である場合、2mol/L~4mol/Lであることが好ましい。
【0155】
[液体吐出装置]
図10は、上述の液体吐出装置としてインクジェット印刷装置の一例を示す。インクジェット印刷装置50は、本体筐体51、キャリッジ52、ガイドシャフト53、54、タイミングベルト55、プラテン56、主走査モータ57、副走査モータ58、ギア機構59を備える。
【0156】
インクジェット印刷装置50には、さらにカートリッジ60が搭載されている。カートリッジ60には、上述の液体組成物が収容されている。カートリッジ60は、本体筐体51内のキャリッジ52に収納されている。このような状態で、液体組成物が、カートリッジ60から、キャリッジ52に搭載されている記録ヘッド52Aに供給される。記録ヘッド52Aは、液体組成物を吐出することができる。
【0157】
キャリッジ52に搭載されている記録ヘッド52Aは、主走査モータ57で駆動されるタイミングベルト55によって、ガイドシャフト53、54に案内されて移動する。一方、吸収媒体(基材)は、プラテン56によって記録ヘッド52Aと対面する位置に配置される。
【0158】
[液体組成物の使用方法]
液体組成物の使用方法は、例えば、液体組成物を基材上に塗布する。液体組成物を基材上に塗布する場合は、上述のインクジェット印刷装置50を用いることができる。
【0159】
なお、基材としては、液体組成物を吸収することが可能な媒体であることが好ましい。液体組成物を吸収することが可能な基材の具体例としては、例えば、多孔質膜が挙げられる。
【0160】
多孔質膜は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。多孔質膜としては、例えば、上述の液体組成物を用いて形成された粒子状の電極活物質(負極活物質、正極活物質)を含有する電極合材層(負極合材層、正極合材層)が形成されている電極基体を用いると、後述のセパレータ一体型電極を製造することができる。
【0161】
負極活物質は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金、カーボン、グラファイトなどのリチウムイオンを放出(脱離)又は挿入(吸蔵)することが可能な炭素材料、リチウムイオンをドーピングした導電性高分子などが挙げられる。
【0162】
正極活物質は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。正極活物質としては、例えば、一般式(CFx)nで表されるフッ化黒鉛、CoLiO2、MnO2、V2O5、CuO、Ag2CrO4、TiO2などの金属酸化物、CuSなどの金属硫化物などが挙げられる。
【0163】
電極基体は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。電極基体としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
【0164】
上記以外の基材は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。上記以外の基材としては、例えば、反射型表示素子に用いられる下地、プリンテッドエレクトロニクスに用いられる電極層などが挙げられる。
【0165】
[セパレータ一体型電極]
本実施形態に係る液体組成物は、セパレータ一体型電極の形成に用いられる。すなわち、上述の液体組成物を含む機能材料を用いて、セパレータ一体型電極を形成することができる。
【0166】
図11は、セパレータ一体型電極の一例を示す概略構成図であり、
図12は、
図11のA-A線断面図である。セパレータ一体型電極は、電極基体上に、電極合材層と、機能層としての粒子層が順次形成されている電極を示す。セパレータ一体型電極は、本実施形態の液体組成物を塗布することにより形成することができる。
【0167】
セパレータ一体型電極70は、電極基体71上に、電極合材層72及び粒子層73が順次形成されており、粒子層73を形成する際に、本実施形態の液体組成物が使用される。
【0168】
セパレータ一体型電極70を用いると、電気化学素子を製造する際に、電極とセパレータを別々に繰り出して巻回したり、積層したりする工程が不要になり、電気化学素子の製造効率が格段に向上されるとともに、巻回、積層工程における電極とセパレータのずれなどの発生を抑制でき、電気化学素子の信頼性を向上できることが予想される。
【0169】
セパレータ一体型電極を用いた蓄電デバイス(電気化学素子)は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。このような蓄電デバイス(電気化学素子)としては、例えば、リチウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、ナトリウム二次電池などが挙げられる。
【0170】
このような蓄電デバイスは、例えば、車載電池搭載車両、スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モータ、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラなどに適用することができる。
【0171】
[粒子層の形成]
液体組成物を基材上に塗布することで作製される機能膜の一例として、電気化学素子に対して正極と負極の短絡を防止するために、電極一体型セパレータに絶縁機能を付与するための粒子層が挙げられる。この場合、粒子層の膜厚は1μm以上10μm以下であることが好ましい。膜厚が1μmより小さいと必要とされる絶縁機能が得られにくく、膜厚が10μmより大きいと電気化学素子として特性が悪化する懸念がある。
【0172】
本実施形態に係る機能材料は、上述の液体組成物を含むことにより、上述の液体組成物の効果が得られる。具体的には、機能材料の形成に用いられ液体組成物が保管、貯蔵された後に液体組成物中の無機粒子が自重沈降しても、容易に再分散させることができるため、液体組成物を基材に塗布した際の塗布ムラを抑制することができる。そのため、本実施形態の機能材料を用いて得られたデバイスの性能を高めることができる。
【0173】
本実施形態に係る機能材料は、上述のように、セパレータ一体型電極の形成に用いられることで、上述の機能材料の効果が得られる。具体的には、上述の液体組成物が含まれる機能材料を用いてセパレータ一体型電極が形成され、保管、貯蔵された後も容易に再分散させる液体組成物が基材に塗布されるため、塗布ムラの発生を抑制できる。そのため、本実施形態の機能材料を用いて得られたセパレータ一体型電極の性能を高めることができる。
【0174】
本実施形態に係る蓄電デバイスは、上述の機能材料を用いて形成されることで、上述の機能材料の効果が得られる。具体的には、上述の液体組成物が含まれる機能材料を用いて蓄電デバイスを形成されるため、保管、貯蔵された後も容易に再分散させる液体組成物が基材に塗布され、塗布ムラの発生が抑制される。そのため、本実施形態によれば、上述の機能材料を用いて得られた蓄電デバイスの性能を高めることができる。
【実施例0175】
以下、本実施形態について、さらに実施例を用いて説明する。また、各種の試験及び評価は、下記の方法に従う。なお、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0176】
(実施例1)
[混合インクの調製]
乳酸エチル46.7部にヘキシレングリコール11.28部を加えて混合溶媒を作製し、界面活性剤(日油社製、マリアリム(登録商標)AKM-0513)2部及びαアルミナ(分散後のD50:202nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:2.5%となるように準備したαアルミナ)40部を加えて攪拌した。なお、第1無機粒子及び第2無機粒子は、いずれもαアルミナである。
【0177】
その後、0.2mm径のジルコニアビーズ12部を加えて、攪拌装置(シンキー社製、自転・公転ナノ粉砕機NP-100)を用いて、回転数1500rpm、-20℃、1分で攪拌した。その後、25μmろ過フィルター(くればぁ社、ナイロンメッシュ#419)に通し、ジルコニアビーズを除去して、混合インク(1)を調製した。
【0178】
[遠心分離による上澄み残渣の抽出]
調製した混合インク(1)12mLを容量15mLの遠沈管に入れ、遠心分離装置(コクサン社製、H-103N)により、回転数3000rpm、20分で、それぞれ遠心分離を行い、上澄み液5gを採取した。同作業を2回行うことで、遠心分離を行った残渣液(1)を10g作製した。
【0179】
[固形分量の測定]
残渣液(1)の固形分量の測定には加熱乾燥式水分計(A&D社製、ML50)を用いた。残渣液(1)を軽く攪拌した後、スポイトを用いて約1.5g採取し測定した。また、固形分中には無機粒子以外に界面活性剤を2%含むので、測定値から2を減算することで無機粒子の固形分量(固形分濃度)を求めた。固形分濃度は、42%であった。
【0180】
[再分散性の評価]
作製した混合インク(1)400mLをアイボーイに入れてふたを閉め、室温で30日間静置した。その後、撹拌装置(有限会社ミスギ社製、SKH-40SA)にて所定時間で攪拌動作を行い、混合インク(1)の上澄み液を10mL採取して再分散液(1)とした。再分散液(1)の固形分と粒子径を下記基準により評価して、再分散性とした。
【0181】
[再分散液の固形分]
再分散液(1)の固形分量の測定には、加熱乾燥式水分計(A&D社製、ML50)を用いた。上澄み液(1)を軽く攪拌した後、スポイトを用いて約1.0g採取し測定した。攪拌後の液体組成物の上澄みの固形分が、静置保管前の液体組成物の固形分に対して±3%以内に戻るまでの攪拌時間を評価基準として以下のように設定し、固形分を評価した。なお、評価基準のA、B、Cは実用可能なレベルである。
【0182】
[評価基準]
A:攪拌時間が60分未満
B:攪拌時間が60分以上90分未満
C:攪拌時間が90分以上120分未満
D:攪拌時間が120分以上
【0183】
[再分散液の粒子径]
固形分が10質量%以下になるように、再分散液(1)を希釈した後、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子社製、FPAR-1000)を用いて、液体組成物のメジアン径D50を測定した。保管前の液体組成物の粒子径からの変化率(粒子径)を評価した。なお、評価基準のA、B、Cは、実用可能なレベルである。
【0184】
[評価基準]
A:粒子径の変化が±5%未満
B:粒子径の変化が±5以上±10%未満
C:粒子径の変化が±10%以上±15%未満
D:粒子径の変化が±15%以上
【0185】
[再分散液の吐出性]
再分散液(1)についてインクジェットヘッド(リコー社製、MH2420)を用いて吐出性を評価した。
【0186】
[評価基準]
良:全384個のノズルから10分間連続して吐出
不可:一部のノズルで吐出不良が発生
【0187】
(実施例2)
実施例1において、αアルミナ(分散後のD50:397nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:2.2%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で混合インク(2)を調製し、同様に評価した。
【0188】
(実施例3)
実施例1において、αアルミナ(分散後のD50:500nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:1.9%となるように準備したαアルミナ)、界面活性剤(ビックケミー社製、DISPERBYK(登録商標)-2155)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で混合インク(3)を調製し、同様に評価した。
【0189】
(実施例4)
実施例3において、αアルミナ(分散後のD50:613nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:1.8%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、実施例3と同様の方法で混合インク(4)を調製し、同様に評価した。
【0190】
(実施例5)
実施例1において、αアルミナ(分散後のD50:997nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:1.8%となるように準備したαアルミナ)、界面活性剤(日油社製、マリアリム(登録商標)SC0708A)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で混合インク(5)を作製し、同様に評価した。
【0191】
(実施例6)
実施例1において、溶媒を乳酸エチル58部のみとし、αアルミナ(分散後のD50:202nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:2.5%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で混合インク(6)を作製し、同様に評価した。
【0192】
(実施例7)
実施例6において、αアルミナ(分散後のD50:397nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:2.2%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、実施例6と同様の方法で混合インク(7)を作製し、同様に評価した。
【0193】
(実施例8)
実施例1において、乳酸エチルをジメチルスルホキシド(DMSO)46.72部に変え、αアルミナ(分散後のD50:202nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:3.0%となるように準備したαアルミナ)、界面活性剤(日油社製、マリアリム(登録商標)HKM-150A)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で混合インク(8)を作製し、同様に評価した。
【0194】
(実施例9)
実施例8において、ジメチルスルホキシド(DMSO)をメチルエチルケトン(MEK)に変え、αアルミナ(分散後のD50:202nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:3.2%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、実施例8と同様の方法で混合インク(9)を作製し、同様に評価した。
【0195】
(実施例10)
実施例9において、メチルエチルケトン(MEK)をイソプロピルアルコール(IPA)に変えた以外は、実施例9と同様の方法で混合インク(10)を作製し、同様に評価した。
【0196】
(実施例11)
実施例8において、ジメチルスルホキシド(DMSO)をエタノールに変えた以外は、実施例8と同様の方法で混合インク(11)を作製し、同様に評価した。
【0197】
(実施例12)
実施例8において、ジメチルスルホキシド(DMSO)をジイソブチルケトン(DIBK)に変え、αアルミナ(分散後のD50:202nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:2.8%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、実施例8と同様の方法で混合インク(12)を作製し、同様に評価した。
【0198】
(実施例13)
実施例3において、へキシレングリコールをエチレングリコールに変え、αアルミナ(分散後のD50:613nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:4.0%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、実施例3と同様の方法で混合インク(13)を作製し、同様に評価した。
【0199】
(実施例14)
実施例13において、エチレングリコールをプロピレングリコールに変えた以外は、実施例13と同様の方法で混合インク(14)を作製し、同様に評価した。
【0200】
(実施例15)
実施例1において、溶媒を純水58部のみとし、αアルミナ(分散後のD50:500nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:3.2%となるように準備したαアルミナ)、界面活性剤(サンノプコ社製、ディスパーサント5023)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で混合インク(15)を作製し、同様に評価した。
【0201】
(実施例16)
実施例15において、純水をアセトンに変え、αアルミナ(分散後のD50:500nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:3.6%となるように準備したαアルミナ)、界面活性剤(サンノプコ社製、ノプコスパース(登録商標)092)に変えた以外は、実施例15と同様の方法で混合インク(16)を作製し、同様に評価した。
【0202】
(実施例17)
実施例16において、界面活性剤(日油社製、SNスパース)に変えた以外は、実施例16と同様の方法で混合インク(17)を作製し、同様に評価した。
【0203】
(実施例18)
実施例5において、αアルミナをγアルミナ(分散後のD50:803nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:3.2%となるように準備したγアルミナ)に変えた以外は、実施例5と同様の方法で混合インク(18)を作製し、同様に評価した。
【0204】
(実施例19)
実施例5において、αアルミナをシリカ(分散後のD50:486nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:2.8%となるように準備したシリカ)に変えた以外は、実施例5と同様の方法で混合インク(19)を作製し、同様に評価した。
【0205】
(実施例20)
実施例5において、αアルミナを水酸化アルミニウム(分散後のD50:912nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:2.0%となるように準備した水酸化アルミニウム)に変えた以外は、実施例5と同様の方法で混合インク(20)を作製し、同様に評価した。
【0206】
(実施例21)
実施例5において、αアルミナを酸化チタン(分散後のD50:294nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:2.8%となるように準備した酸化チタン)に変えた以外は、実施例5と同様の方法で混合インク(21)を作製し、同様に評価した。
【0207】
(実施例22)
[無機微小粒子の作製]
実施例1と同様の方法で混合インク(21)から遠心分離を行った残渣液(21)を100g作製し、ロータリーエバポレーター(アズワン社製、ARE-V1200)を用いて、固形分量50%となるまで濃縮し、微小粒子液(22)を作製した。
【0208】
[混合インクの調製]
乳酸エチル46.72部にプロピレングリコール11.28部を加えて混合溶媒を作製し、界面活性剤(ビックケミー社製、DISPERBYK-2155)2部及びαアルミナ(分散後のD50:500nmとなるように準備したαアルミナ)40部及び微小粒子液(22)0.6部を加えて攪拌した。なお、第1無機粒子はαアルミナに相当し、第2無機粒子は微小粒子液(22)中のαアルミナ(第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:0.8)に相当する。
【0209】
その後、0.2mm径のジルコニアビーズを12部加えて、攪拌装置(シンキー社製、自転・公転ナノ粉砕機NP-100)を用いて、回転数1500rpm、-20℃、1分で攪拌した。その後、25μmろ過フィルター(くればぁ社、ナイロンメッシュ#419)に通し、ジルコニアビーズを除去して、混合インク(22)を調製した。得られた混合インク(22)について、実施例1と同様に評価した。
【0210】
(実施例23)
実施例22において、第2無機粒子(第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:1.0%)に変えた以外は、実施例22と同様の方法で混合インク(23)を作製し、同様に評価した。
【0211】
(実施例24)
実施例22において、第2無機粒子(第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:3.0%)に変えた以外は、実施例22と同様の方法で混合インク(24)を作製し、同様に評価した。
【0212】
(実施例25)
実施例22において、第2無機粒子(第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:5.0%)に変えた以外は、実施例22と同様の方法で混合インク(25)を作製し、同様に評価した。
【0213】
(実施例26)
実施例22において、第2無機粒子(第1無機粒子総量に占める割合:5.5%)に変えた以外は、実施例22と同様の方法で混合インク(26)を作製し、同様に評価した。
【0214】
(実施例27)
実施例14において、αアルミナ(分散後のD50:397nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:3.0%となるように準備したαアルミナ)13部、界面活性剤(日油社製、エスリーム(登録商標)AD-3172M)に変えた以外は、実施例14と同様の方法で混合インク(27)を作製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、15%であった。
【0215】
(実施例28)
実施例27において、αアルミナの配合量を18部に変えた以外は、実施例27と同様の方法で混合インク(28)を作製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、20%であった。
【0216】
(実施例29)
実施例27において、αアルミナの配合量を28部に変えた以外は、実施例27と同様の方法で混合インク(29)を作製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、30%であった。
【0217】
(実施例30)
実施例27において、αアルミナの配合量を48部に変えた以外は、実施例27と同様の方法で混合インク(30)を作製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、50%であった。
【0218】
(実施例31)
実施例27において、αアルミナの配合量を53部に変えた以外は、実施例27と同様の方法で混合インク(31)を作製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、55%であった。
【0219】
(比較例1)
実施例1において、αアルミナ(分散後のD50:397nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:0.0%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、実施例1と同様の方法で混合インク(32)を作製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、42%であった。
【0220】
(比較例2)
比較例1において、αアルミナの配合量を13部に変えた以外は、比較例1と同様の方法で混合インク(33)を調製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、15%であった。
【0221】
(比較例3)
比較例1において、αアルミナの配合量を18部に変えた以外は、比較例1と同様の方法で混合インク(34)を調製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、20%であった。
【0222】
(比較例4)
比較例1において、αアルミナの配合量を28部に変えた以外は、比較例1と同様の方法で混合インク(35)を調製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、30%であった。
【0223】
(比較例5)
比較例1において、αアルミナの配合量を48部に変えた以外は、比較例1と同様の方法で混合インク(36)を調製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、50%であった。
【0224】
(比較例6)
比較例1において、αアルミナの配合量を53部に変えた以外は、比較例1と同様の方法で混合インク(37)を調製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、55%であった。
【0225】
(比較例7)
比較例1において、αアルミナ(分散後のD50:202nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:0.0%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、比較例1と同様の方法で混合インク(38)を調製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、42%であった。
【0226】
(比較例8)
比較例1において、αアルミナ(分散後のD50:1000nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:0.0%となるように準備したαアルミナ)に変えた以外は、比較例1と同様の方法で混合インク(39)を調製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、42%であった。
【0227】
(比較例9)
比較例1において、αアルミナを酸化チタン(分散後のD50:408nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:0.0%となるように準備した酸化チタン)に変えた以外は、比較例1と同様の方法で混合インク(40)を調製し、同様に評価した。なお、固形分濃度は、42%であった。
【0228】
(比較例10)
[混合インクの調製]
乳酸エチル46.72部にヘキシレングリコール11.28部を加えて混合溶媒を作製し、界面活性剤(日油社製、エスリーム(登録商標)AD-3172M)2部及びαアルミナ(分散後のD50:397nm、第1無機粒子総量に占める第2無機粒子の割合:0.0%となるように準備したαアルミナ)40部を加えて攪拌した。なお、固形分濃度は、42%であった。
【0229】
その後、0.2mm径のジルコニアビーズを12部加えて、攪拌装置(シンキー社製、自転・公転ナノ粉砕機NP-100)を用いて、回転数1500rpm、-20℃、1分で攪拌した。その後、25μmろ過フィルター(くればぁ社、ナイロンメッシュ#419)に通し、ジルコニアビーズを除去して、混合インク(41)を調製した。
【0230】
[遠心分離による上澄み残渣の抽出]
調製した混合インク(41)12mLを容量15mLの遠沈管に入れ、遠心分離装置(コクサン社製、H-103N)により、回転数3000rpm、7.5分で、それぞれ遠心分離を行い、上澄み液5gを採取した。同作業を3回行うことで、遠心分離を行った残渣液(41)を15g作製した。
【0231】
また、残渣液(41)12mLを容量15mLの遠沈管に調製し遠心分離装置(コクサン社製、H-103N)により、回転数3000rpm、7.5分、30分でそれぞれ遠心分離を行い、上澄み液5gを取り除くことで残渣液(41)を10g作製した。残渣液(41)が得られた混合インク(41)について、実施例1と同様に評価した。
【0232】
実施例1~31及び比較例1~10について、結果を表1に示す。
【0233】
【0234】
表1より、実施例1~31は、再分散後の固形分、粒子径、吐出性は、いずれも良好であった。
【0235】
これに対して比較例1~10は、再分散後の固形分、吐出性は、いずれも不良となり、このうち比較例1、2、6~9は、さらに再分散後の粒子径が不良であった。
【0236】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。