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特開2023-18284衝撃緩衝用リブ構造、パルプモールド緩衝材、包装材、及び包装システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018284
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】衝撃緩衝用リブ構造、パルプモールド緩衝材、包装材、及び包装システム
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/02 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
B65D81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122303
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】末廣真也
【テーマコード(参考)】
3E066
【Fターム(参考)】
3E066AA14
3E066AA15
3E066BA01
3E066CA03
3E066CA05
3E066HA01
3E066JA00
3E066KA20
3E066NA42
(57)【要約】
【課題】パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造において、被包装体に掛かる衝撃加速度を従来仕様よりも低減できる衝撃緩衝用リブ構造を提供する。
【解決手段】本発明は、パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造であって、天板と側壁からなり、底面が開口した中空の衝撃緩衝用リブ構造に関する。
この衝撃緩衝用リブ構造は、底面から天板までの距離を衝撃緩衝用リブ構造の高さとして、側壁の高さの半分以下の範囲に、開口部が少なくとも1つ設けられている。
これにより、リブ構造上部の剛性と下部の剛性が同程度となり、整合性を有することになるので、リブ構造全体を均一に圧縮及び/又は圧壊させることができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造であって、
天板と側壁からなり、底面が開口した中空の衝撃緩衝用リブ構造において、
前記底面から前記天板までの距離を衝撃緩衝用リブ構造の高さとして、
前記側壁の前記高さの半分以下の範囲に、開口部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする衝撃緩衝用リブ構造。
【請求項2】
前記側壁は、高さ方向に勾配を有し、
前記衝撃緩衝用リブ構造の前記高さ方向の断面で、かつ、前記側壁の外側表面において、
前記側壁の前記高さの中央位置から前記開口部の底面側の端までの、前記高さ方向に垂直な距離をaとして、
前記開口部の幅が、略2aであることを特徴とする請求項1に記載の衝撃緩衝用リブ構造。
【請求項3】
パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造であって、
天板と側壁からなり、底面が開口した中空の衝撃緩衝用リブ構造において、
前記底面から前記天板までの距離を衝撃緩衝用リブ構造の高さとして、
前記側壁の前記高さの中央付近に、開口部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする衝撃緩衝用リブ構造。
【請求項4】
パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造であって、
天板と側壁からなり、底面が開口した中空の衝撃緩衝用リブ構造において、
前記底面から前記天板までの距離を衝撃緩衝用リブ構造の高さとして、
前記側壁の前記高さの半分以上の範囲に、開口部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする記載の衝撃緩衝用リブ構造。
【請求項5】
前記開口部は、前記側壁の幅方向にそれぞれ均等な間隔で複数配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の衝撃緩衝用リブ構造。
【請求項6】
前記開口部の形状が、多角形又は円形であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の衝撃緩衝用リブ構造。
【請求項7】
前記衝撃緩衝用リブ構造は、角柱又は円柱であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の衝撃緩衝用リブ構造。
【請求項8】
前記衝撃緩衝用リブ構造は、四角柱であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の衝撃緩衝用リブ構造。
【請求項9】
被包装体の収容空間を有し、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の前記衝撃緩衝用リブ構造が少なくとも1つ設けられたパルプモールド緩衝材。
【請求項10】
前記衝撃緩衝用リブ構造の前記天板が、前記被包装体に当接することを特徴とする請求項9に記載のパルプモールド緩衝材。
【請求項11】
前記衝撃緩衝用リブ構造の開口した前記底面が、前記被包装体に当接することを特徴とする請求項9に記載のパルプモールド緩衝材。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の前記パルプモールド緩衝材が装着された被包装体を梱包する包装材。
【請求項13】
請求項12に記載の包装材を用いる包装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃緩衝用リブ構造、パルプモールド緩衝材、包装材、及び包装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
循環型社会の実現に向け、シングルユースプラスチックの使用量削減が、様々な企業の環境経営方針に挙げられてきている。また、昨今の環境問題において、海洋プラスチックごみ問題などに対応するため、プラスチック製包装材の使用量削減が求められている。そのため、回収性及びリサイクル性に優れるパルプモールド製包装材の使用価値が一層高まってきている。
【0003】
パルプモールド製の緩衝材は、物流過程で受ける振動・落下衝撃により被包装体に掛かる衝撃、すなわち衝撃加速度を、それ自身の変形・座屈作用により緩衝できる。例えば、最大数百Gの衝撃加速度が被包装体に掛かる場合であっても、緩衝材を用いることで百G以下の衝撃加速度に低減できる技術が知られており、既に実施されている。
【0004】
図1に示す、従来仕様に係るパルプモールド緩衝材100は、被包装体の収容空間105を有し、衝撃緩衝機能をなす円柱又は角柱構造の衝撃緩衝用リブ構造110を設けて構成されることを基本としている。
【0005】
また、例えば特許文献1には、パルプモールド緩衝材の被包装体受け部にスリットを設け、それを被包装体の形状になじむように押しつぶすことで、被包装体を収容する領域を形成する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パルプモールド緩衝材を用いる精密機器用の包装材は、耐衝撃強度があまり高くなく、被包装体が破損するおそれがあった。そのため、衝撃加速度をより小さく低減する機能が、パルプモールド緩衝材に求められている。しかし、パルプモールド緩衝材の上記のような衝撃緩衝用リブ構造では、衝撃加速度低減の限界にきているという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造において、衝撃加速度を従来仕様よりも低減できる衝撃緩衝用リブ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造であって、天板と側壁からなり、底面が開口した中空の衝撃緩衝用リブ構造において、前記底面から前記天板までの距離を衝撃緩衝用リブ構造の高さとして、前記側壁の前記高さの半分以下の範囲に、開口部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする衝撃緩衝用リブ構造によって解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の衝撃緩衝用リブ構造は、側壁の前記高さの半分以下の範囲に、開口部が少なくとも1つ設けられている。これにより、リブ構造上部の剛性と下部の剛性が同程度となり、整合性を有することになるので、リブ構造全体を均一に圧縮及び/又は圧壊させることができる。リブ構造全体高さを活用した衝撃緩衝メカニズムとすることで、リブ構造全体のばね定数を低下でき、被包装体に掛かる衝撃加速度を従来仕様よりも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】従来仕様に係るパルプモールド緩衝材の斜視図である。
図2】従来仕様に係る衝撃緩衝用リブ構造の斜視図である。
図3】従来仕様における、側壁の圧縮変形を示す模式断面図である。
図4】緩衝材の衝撃係数を示すグラフである。
図5】被包装体の底当たりを防止するクリアランスの一例を示す模式断面図である。
図6】衝撃緩衝用リブ構造の勾配を有する側壁を示す模式断面図である。
図7】周辺長さ(断面積)が変化する側壁を示す模式断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る衝撃緩衝用リブ構造の斜視図である。
図9】第1実施形態における衝撃緩衝用リブ構造の変形を示す模式断面図である。
図10】側壁に設けられた開口部の寸法を示す模式図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る衝撃緩衝用リブ構造の斜視図である。
図12】第2実施形態における衝撃緩衝用リブ構造の変形を示す模式断面図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る衝撃緩衝用リブ構造の斜視図である。
図14】第3実施形態における衝撃緩衝用リブ構造の変形を示す模式断面図である。
図15】側壁に設けられた円形形状の開口部を示す模式図である。
図16】本発明の衝撃緩衝用リブ構造が設けられたパルプモールド緩衝材を示す斜視図である。
図17】検証試験その1における試験形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0012】
図2に示すように、従来仕様の衝撃緩衝用リブ構造110は、天板12と側壁14からなり、底面16が開口した中空構造、すなわち、(a)角柱又は(b)円柱の構造を有する。この衝撃緩衝用リブ構造110による衝撃緩衝のメカニズムは、以下のようになる。
【0013】
図3は、従来仕様における、側壁の圧縮変形を示す模式断面図である。図3(a)に示すように、衝撃緩衝用リブ構造110を矢印A方向で見たのが、図3(b)である。
【0014】
包装貨物として落下した際に作用する、被包装体20から受ける動荷重DLに対し、衝撃緩衝用リブ構造110は、主に側壁14でその動荷重DLを支え、かつ、側壁14の圧縮変形による圧縮又は圧潰(あっかい)の応力によりその衝撃を緩衝する。すなわち、衝撃緩衝用リブ構造110の側壁14が圧縮変形することで、被包装体20に掛かる衝撃加速度を小さくし、被包装体20を保護する。
【0015】
このような衝撃緩衝用リブ構造の設計は、次の式(1)に表される基本式が用いられる。
G(衝撃加速度)=C(衝撃係数)×h(落下高さ)/t(緩衝材の厚み)・・・(1)
【0016】
具体的に、緩衝材の応力特性で決まる衝撃係数(C)が最小となる歪み(ε)を狙うとともに(図4参照)、包装貨物内で被包装体の外形が底当たりしないことを考慮する。例えば、図5に示すように、被包装体の底当たりに対するクリアランスtを緩衝材によって形成する。その上で、緩衝材の被包装体荷重を支持する支持面積を調整して、衝撃緩衝用リブ構造の瞬間歪み量が、通常0.4~0.6の範囲に収まるように設計する。
【0017】
しかし、図2に示す従来仕様の衝撃緩衝用リブ構造110と、上記の設計手法では、衝撃加速度(G)がその低減限界に達しており、衝撃緩衝性を更に向上するには、衝撃係数(C)がより低くなる新たな衝撃緩衝用リブ構造が求められる。
【0018】
これに対し、本発明者らは、従来の衝撃緩衝用リブ構造110の変形状態を詳細に観察し、圧縮・圧潰が天板12側に偏って生じていることに着目した(図3参照)。すなわち、リブ構造の高さ全体が活用されておらず、リブ構造全体のばね定数のポテンシャルが損なわれていることを見出した。
【0019】
図6は、勾配を有する側壁を示す模式断面図である。図6(a)に示すように、衝撃緩衝用リブ構造110を矢印A方向で見たのが、図6(b)である。衝撃緩衝用リブ構造110の側壁14は、その成型上、勾配(Δθ)を有する。これは、金型から成型品を取り出しやすくするために、製品形状にあらかじめ設けたものである。
【0020】
図7は、周辺長さ(断面積)が変化する側壁を示す断面図である。衝撃緩衝用リブ構造110を矢印B、C方向で見たのが、それぞれ断面B、Cである。衝撃緩衝用リブ構造110は勾配(Δθ)を有するため、側壁14の周辺長さ(断面積)がその底面16(開口底面16)に向けて、次第に大きくなる。
【0021】
そのため、リブ構造110の下部(底面16)に向かって、圧縮又は圧潰による応力が次第に小さくなる。したがって、相対的に構造の弱い天板12側に圧縮又は圧潰が偏って生じると考えられる。
【0022】
以下の実施形態では、パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造において、衝撃加速度を従来仕様よりも低減できる衝撃緩衝用リブ構造について説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図8は、本発明の第1実施形態に係る衝撃緩衝用リブ構造の斜視図である。図8に示すように、本実施形態の衝撃緩衝用リブ構造10、10’は、天板12と側壁14からなり、底面16が開口した中空構造、すなわち、(a)角柱又は(b)円柱の構造を有する。そして、底面16から天板12までの距離を衝撃緩衝用リブ構造の高さhとして、側壁14の高さhの半分以下の範囲に、複数の開口部18が設けられている。
【0024】
衝撃緩衝用リブ構造10、10’は、その側壁14の下部(高さhの半分以下の範囲)に開口部18を設けることで、リブ構造下部の剛性を小さくする。すなわち、リブ構造上部の剛性と下部の剛性を同程度とし、整合性を持たせることで、リブ構造全体を均一に圧縮及び/又は圧壊させることができる。
【0025】
図9は、本実施形態における衝撃緩衝用リブ構造の変形を示す模式断面図である。図9(a)に示すように、衝撃緩衝用リブ構造10を矢印A方向で見たのが、図9(b)である。
【0026】
被包装体20から受ける動荷重DLに対し、衝撃緩衝用リブ構造10は、主に側壁14でその動荷重DLを支えるが、側壁14の圧縮・圧潰がその高さ方向の全範囲に亘る点で従来仕様(図3参照)と異なる。
【0027】
このように、リブ構造全体高さを活用した衝撃緩衝メカニズムとすることで、従来仕様よりもばね定数を低下させ、被包装体に掛かる衝撃加速度を低減できる。
【0028】
(開口部の幅寸法)
図10は、側壁に設けられた開口部の寸法を示す模式図である。図10(a)に示すように、側壁14は、高さ方向に勾配を有している。側壁14の外側表面において、側壁14の高さの中央位置(h/2)から開口部18の底面16の端までの、高さ方向に垂直な距離をaとする。
【0029】
そして図10(b)に示すように、開口部18の幅Wを略2aとすると(W≒2a)、リブ構造上部の剛性と下部の剛性を同等にする上で最も望ましい。なお、これついての検証結果は後述する。
【0030】
(第2実施形態)
図11は、本発明の第2実施形態に係る衝撃緩衝用リブ構造の斜視図である。なお、図11において、図8と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0031】
図11に示すように、パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造10aは、側壁14の高さの中央付近に、開口部18aが複数設けられている点で、第1実施形態に係る衝撃緩衝用リブ構造10と異なる。
【0032】
これは、側壁14の高さ中央付近に弱化部を設けることで、中央起点での屈曲を生じさせることを意図している。
【0033】
図12は、本実施形態における衝撃緩衝用リブ構造の変形を示す模式断面図である。図12(a)に示すように、衝撃緩衝用リブ構造10aを矢印A方向で見たのが、図12(b)である。
【0034】
被包装体20から受ける動荷重DLに対し、衝撃緩衝用リブ構造10は、主に側壁14でその動荷重DLを支えるが、側壁14に曲げ・座屈が生じている点で先の実施形態と異なる。圧縮応力よりも小さい曲げ応力を側壁14の領域全体に亘って生じさせることで、被包装体20に掛かる衝撃加速度を低減できる。
【0035】
(第3実施形態)
図13は、本発明の第3実施形態に係る衝撃緩衝用リブ構造の斜視図である。なお、図13において、図8と同一物には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0036】
図13に示すように、パルプモールド緩衝材の衝撃緩衝用リブ構造10bは、側壁14の高さの半分以上の範囲に、開口部18bが複数設けられている点で、第1、第2実施形態に係る衝撃緩衝用リブ構造と異なる。
【0037】
これは、側壁14の上部に弱化部を設ける事で、リブ構造上部は曲げ応力による低い応力により早期に座屈させ、次いでリブ構造の中央部以下では圧縮及び/又は圧潰を生じさせること意図している。
【0038】
図14は、本実施形態における衝撃緩衝用リブ構造の変形を示す模式断面図である。図14(a)に示すように、衝撃緩衝用リブ構造10bを矢印A方向で見たのが、図14(b)である。
【0039】
被包装体20から受ける動荷重DLに対し、衝撃緩衝用リブ構造10は、主に側壁14でその動荷重DLを支えるが、側壁14の上部に曲げ・座屈が生じ、中央部以下に、圧縮・圧潰が生じている。
【0040】
本実施形態の衝撃緩衝用リブ構造10bは、衝撃発生初期にリブ構造の上部から作用する応力が低減されるため、被包装体に急激な衝撃が加わることを防止でき、被包装体の内部部品に生じる加速度を低減できる。
【0041】
続いて、本発明の有利な構成について説明する。
【0042】
(開口部の配置)
開口部18、18a、18b(以下、18のみを記載する)は、衝撃緩衝用リブ構造の側壁14に一箇所のみ設けるとしてもよい。また、開口部18を複数設ける場合、側壁の幅方向にそれぞれ均等な間隔で配置することが望ましい。衝撃緩衝用リブ構造の全周に亘って統一した剛性を持たせることができ、一層の効果を得られる。
【0043】
(開口部の形状)
前記開口部の形状は、多角形(図8)又は円形(図15)であることが望ましい。衝撃緩衝用リブ構造には、衝撃がその鉛直方向に作用するとは限らず、意図しない方向からもあり得る。開口部18の形状を、多角形又は円形とすることで、様々な方向からの衝撃に対応できる。
【0044】
(衝撃緩衝用リブ構造の形状)
衝撃緩衝用リブ構造は、先の図8に示したように、角柱又は円柱であることが望ましい。(開口部の形状)での説明と同様に、様々な方向からの衝撃に対応できる。また、特に衝撃緩衝用リブ構造を四角柱とすると、成型性に優れるため生産性を向上できる。
【0045】
図16は、本発明の衝撃緩衝用リブ構造が設けられたパルプモールド緩衝材を示す斜視図である。このパルプモールド緩衝材30は、第1~3実施形態の衝撃緩衝用リブ構造10が少なくとも1つ設けられている。このパルプモールド緩衝材30は、被包装体を収容するとともに、被包装体に掛かる衝撃加速度を従来仕様のパルプモールド緩衝材よりも低減できる。
【0046】
衝撃緩衝用リブ構造10の天板は、被包装体に当接することが望ましい。被包装体の意図した位置を支持することで、安定した収容・保持ができる。
【0047】
また、衝撃緩衝用リブ構造10の開口した底面16(例えば、図8など参照)が、被包装体に当接することも望ましい。パルプモールド緩衝材30の製品収容面40が、被包装体の平らな面に当接することで安定した収容・保持ができる。
【0048】
本実施形態のパルプモールド緩衝材30は、被包装体としての画像形成装置(例えば、複写機、印刷機など)に装着し、包装材(例えば、段ボール箱)に梱包される。この包装材は、荷造機械設備などを包括して備える包装システムに用いられる。
【0049】
(検証試験その1)
従来仕様及び本発明仕様の衝撃緩衝用リブ構造による、被包装体の応答加速度の比較検証試験について説明する。
検証方法:従来仕様の衝撃緩衝用リブ構造と、本発明仕様の衝撃緩衝用リブ構造において、以下条件の落下試験を行い、被包装体に掛かる衝撃加速度を測定した。
【0050】
供試品(図17参照):
主部材m1(質量1.02kgのアルミ材)
内部部品m2(質量0.2kgのアルミ材)
中間部材k1(質量0.01kgのゲル性シート)
緩衝材k2(段ボール古紙パルプモールド緩衝材 厚みt=3mm)
ここで、主部材m1は複写機全体(精密機械の一例)のモデルであり、内部部品m2はその複写機に内蔵される部品をモデルにしている。また、中間部材k1は内部部品m2を主部材m1上に支持する部品をモデルにしており、バネ要素として作用する。
内部部品m2と中間部材k1の間の支持関係において、200Hzの固有振動数を有するように設定した。
【0051】
緩衝材の種類:
試料1 従来仕様の衝撃緩衝用リブ構造(図2(a))を有するパルプモールド緩衝材
試料2 第1実施形態の衝撃緩衝用リブ構造(下部に4つの開口部を有する四角柱、図8(a))を有するパルプモールド緩衝材
試料3 第2実施形態の衝撃緩衝用リブ構造(中央部に4つの開口部を有する四角柱、図11)を有するパルプモールド緩衝材
試料4 第3実施形態の衝撃緩衝用リブ構造(上部に4つの開口部を有する四角柱、図13)を有するパルプモールド緩衝材
【0052】
条件及び評価基準:
80cmの高さから、平坦な床面にむけて自由落下させる。
試料1、4は、主部材m1と内部部品m2にそれぞれ掛かる衝撃加速度を測定する。
試料2、3は、主部材m1に掛かる衝撃加速度を測定する。
【0053】
結果:表1に結果を示す。
試料1(従来仕様)に対し、試料2、3(第1、第2実施形態)は、主部材m1に掛かる衝撃加速度が低減するという結果を得た。また、試料1(従来仕様)に対し、試料4(第3実施形態)は、内部部品m2に掛かる衝撃加速度が低減するという結果を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
(検証試験その2)
開口部の幅寸法による、衝撃緩衝性の比較検証試験
検証方法:第1実施形態の衝撃緩衝用リブ構造(下部に4つの開口部を有する四角柱、図8(a))を有するパルプモールド緩衝材において、開口部の幅を2種類に変更し、被包装体に掛かる衝撃加速度を測定した。
【0056】
供試品:
主部材m1(質量1.02kgのアルミ材)
緩衝材k2(段ボール古紙パルプモールド緩衝材 厚みt=3mm)
【0057】
緩衝材の種類:
試料5 第1実施形態の衝撃緩衝用リブ構造(下部に4つの開口部を有する四角柱、図8(a))を有するパルプモールド緩衝材
ここで、図10に示す開口部18の幅Wをa(W≒a)とした。
試料6 第1実施形態の衝撃緩衝用リブ構造(下部に4つの開口部を有する四角柱、図8(a))を有するパルプモールド緩衝材
ここで、図10に示す開口部18の幅Wを2a(W≒2a)とした。
【0058】
条件及び評価基準:
80cmの高さから、平坦な床面にむけて自由落下させる。
試料5、6共に、主部材m1に掛かる衝撃加速度を測定する。
【0059】
結果:表2に結果を示す。
試料5(開口部18の幅W≒a)に対し、試料6(開口部18の幅W≒2a)の方が、衝撃加速度が低減するという結果を得た。
【0060】
【表2】
【0061】
これら検証試験から、本発明の各実施形態の構成によれば、被包装体(及び内部部品)に掛かる衝撃加速度を、従来仕様の構成に比べて低減できることが分かる。
【0062】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明した。この実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して使用できる。例えば、複数の実施形態及び有利な構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
5、105 収容空間
10、10’、10a、10b、110 衝撃緩衝用リブ構造
12 天板
14 側壁
16 (開口)底面
18、18a、18b :開口部
20 被包装体
30、100 :パルプモールド緩衝材
40 製品収容面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2006-89074号公報
図1
図2
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図4
図5
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