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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182850
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20231219BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A61M5/24 540
A61M5/32 510P
A61M5/32 500
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184362
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2020529272の分割
【原出願日】2018-12-03
(31)【優先権主張番号】17306677.0
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ベアーテ・フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ブリュッゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ・カブリク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハウジング、薬剤のためのリザーバを有するカートリッジ、針を有するニードルユニット、およびハウジングに、軸の周りに回転可能に取り付けられたニードルスリーブ、を有する注射デバイスを提供する。
【解決手段】注射デバイスを使用する前に、針31はリザーバ28から封止され、ニードルユニット23およびカートリッジ22のうちの少なくとも一方は、ハウジング21に、軸方向に摺動可能に取り付けられる。ニードルスリーブ26は、ニードルユニット23および/またはカートリッジ22に係合するように配置された、係合部材38を含む。係合部材38は、ニードルスリーブ26の回転が、ニードルユニット23および/またはカートリッジ22を軸方向に動かし、針31をリザーバ28と流体連通させるように動かすように適用される。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスであって:
ハウジングと、
薬剤のためのリザーバを有するカートリッジと、
注射デバイスを使用する前にリザーバから封止されている針を含むニードルユニットと、
ハウジングに、軸周りに回転可能に取り付けられたニードルスリーブと
を含み、
ここで、ニードルユニットおよびカートリッジのうちの少なくとも1つは、ハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられ、
ニードルスリーブは、ニードルユニットおよび/またはカートリッジに係合するように配置された係合部材を含み、該係合部材は、ニードルスリーブの回転が、ニードルユニットおよび/またはカートリッジを軸方向に動かし、針をリザーバと流体連通させるように動かすように適用される、前記注射デバイス。
【請求項2】
ニードルスリーブはハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられ、ニードルスリーブが回転した後、係合部材はニードルユニットおよび/またはカートリッジから係合解除し、それによってニードルスリーブは、ニードルユニットおよびカートリッジとは独立して軸方向に動くことができる、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
ニードルスリーブがハウジングに対して回転し終わるまでニードルスリーブの軸方向運動を防止するように配置されたスロットをさらに含む、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
ハウジングおよびニードルスリーブのうちの一方は、スロットを含み、ハウジングおよびニードルスリーブのうちの他方は、スロットに係合するように適用された突起部を含み、スロットは、ニードルスリーブの回転のための周縁部と、該ニードルスリーブの軸方向運動のための軸方向部とを含む、請求項3に記載の注射デバイス。
【請求項5】
ニードルユニットは針本体を含み、該針本体は、ニードルユニットおよび/またはカートリッジの軸方向運動中に、カートリッジおよび/またはハウジングに係合するように配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
ニードルユニットおよび/またはカートリッジが軸方向に動く際に、該ニードルユニットおよび/または該カートリッジに係合するように案内するように配置された案内部をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項7】
案内部は、カートリッジに対するニードルユニットの回転を防止する、請求項6に記載の注射デバイス。
【請求項8】
ニードルユニットはハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられ、カートリッジはハウジングに固定して取り付けられ、針本体は、案内レールと協働するように配置された案内スロットを含み、案内レールはカートリッジまたはハウジングから延びる、請求項5~7のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項9】
ニードルユニットは、ロッキング部材をさらに含み、該ロッキング部材は、ニードルユニットおよび/またはカートリッジの軸方向運動により針がリザーバに流体連通するように動いた後に、カートリッジまたはハウジング上にニードルユニットをロックするように配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項10】
ニードルユニットはハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられ、ニードルユニットは突出部を含み、ニードルスリーブは螺旋部材を含み、該螺旋部材は突出部に係合して、ニードルスリーブを軸方向に回転させてニードルユニットを動かすように配置される、請求項1~9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項11】
カートリッジはハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられ、カートリッジは突出部を含み、ニードルスリーブは螺旋部材を含み、該螺旋部材は突出部に係合して、ニードルスリーブを回転させて軸方向にカートリッジを動かすように配置される、請求項1~9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
螺旋部材は、ニードルスリーブの回転が、螺旋部材を突出部との係合から外すように動かすように配置される、請求項10または11に記載の注射デバイス。
【請求項13】
ニードルユニットと、カートリッジまたはハウジングのうちの一方との間に配設されたねじ山をさらに含み、ここで、ニードルスリーブの回転は、該ニードルスリーブが回転された際に、ねじ山がニードルユニットまたはカートリッジを軸方向に動かすように、ニードルユニットまたはカートリッジを回転させるように適用される、請求項1~9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項14】
カートリッジはリザーバ内に薬剤を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項15】
ニードルスリーブはハウジングに対して、ニードルスリーブが針の端部を覆う伸長位置から、針の端部が露出される後退位置まで可動である、請求項1~14のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項16】
注射デバイスを使用する方法であって、該注射デバイスは:
薬剤のためのリザーバを有するカートリッジと、
注射デバイスを使用する前にリザーバから封止されている針を含むニードルユニットと、
ハウジングに、軸周りに回転可能に取り付けられたニードルスリーブと
を含み、
該方法は:
ニードルスリーブを軸周りに回転させ、針がリザーバと流体連通するように動かされるようにニードルユニットおよび/またはカートリッジを軸方向に動かすことを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤のための注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカートリッジ式自動注射器などのカートリッジ式注射デバイスは、一般的に封止されたカートリッジを有し、このカートリッジは、薬剤、および最初にカートリッジから離されている針を含包する。注射デバイスを使用する前に、カートリッジおよび針は、針がカートリッジを穿孔するように組み合わされる。次に、プランジャがカートリッジの中に動かされて、使用者に注射するために針を通して薬剤を投薬する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、最初に針から封止されている、薬剤のためのリザーバと、使用前にリザーバと流体連通するように針を動かすための機構とを有するカートリッジを有する、有益な注射デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、
ハウジングと、
薬剤のためのリザーバを有するカートリッジと、
注射デバイスを使用する前にリザーバから封止されている針を含むニードルユニットと、
ハウジングに、軸周りに回転可能に取り付けられた、ニードルスリーブと
を含む注射デバイスを提供し、
ニードルユニットおよびカートリッジのうちの少なくとも1つは、ハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられ、
ニードルスリーブは、ニードルユニットおよび/またはカートリッジに係合するように配置された係合部材を含み、この係合部材は、ニードルスリーブの回転が、ニードルユニットおよび/またはカートリッジを軸方向に動かし、リザーバと流体連通させるように針を動かすように適用される。
【0005】
例において、ニードルユニットは、ハウジングに摺動可能に取り付けられ、ニードルスリーブの係合部材は、ニードルユニットを軸方向に動かして、リザーバと流体連通させるように針を動かす。
【0006】
他の例において、カートリッジは、ハウジングに摺動可能に取り付けられ、ニードルスリーブの係合部材は、カートリッジを軸方向に動かして、リザーバと流体連通させるように針を動かす。
【0007】
いくつかの例において、ニードルスリーブは、ハウジングに軸方向に摺動可能に取り付けられ、ニードルスリーブが回転した後、係合部材はニードルユニットおよび/またはカートリッジから係合解除し、それによってニードルスリーブは、ニードルユニットおよびカートリッジと独立して軸方向に動くことができる。
【0008】
注射デバイスはスロットをさらに含み得る。このスロットは、ニードルスリーブがハウジングに対して回転し終わるまでニードルスリーブの軸方向運動を防止するように配置される。
【0009】
ハウジングおよびニードルスリーブのうちの一方は、スロットを含み、ハウジングおよびニードルスリーブのうちの他方は、このスロットに係合するように適用された突起部を含み得る。スロットは、ニードルスリーブの回転のための周縁部と、ニードルスリーブの軸方向運動のための軸方向部とを含む。
【0010】
例えば、ハウジングはスロットを含み、ニードルスリーブは、このスロットに係合するように適用された突出部を含み得る。この場合スロットは、ニードルスリーブの回転のための周縁部、およびニードルスリーブの軸方向運動のための軸方向部を含み得る。
【0011】
別の例において、ニードルスリーブはスロットを含み、ハウジングはこのスロットに係合するように適用された突出部を含み得る。この場合スロットは、ニードルスリーブの回転のための周縁部、およびニードルスリーブの軸方向運動のための軸方向部を含み得る。
【0012】
ニードルユニットは針本体を含み得る。針本体は、ニードルユニットおよび/またはカートリッジの軸方向運動中に、カートリッジおよび/またはハウジングに係合するように配置される。
【0013】
例えば、針本体はカートリッジの端部に係合し得る。代替として、針本体は、ハウジングのカートリッジ取付部に係合し得る。このカートリッジ取付部はカートリッジに近接する。いくつかの例において、ハウジングは、カートリッジの端部を囲む管状のカートリッジ取付部を含み、針本体は管状のカートリッジ取付部に係合するように配置される。
【0014】
注射デバイスは、ニードルユニットおよび/またはカートリッジが軸方向に動く際に、ニードルユニットおよび/またはカートリッジを係合するように案内するように配置された案内部をさらに含み得る。案内部は、カートリッジに対するニードルユニットの回転をさらに防止し得る。
【0015】
いくつかの例において、ニードルユニットはハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられ、カートリッジはハウジングに固定して取り付けられる。これらの例において、針本体は、案内レールと協働するように配置された案内スロットを含み、この案内レールは、カートリッジまたはハウジングから延び得る。
【0016】
いくつかの例において、ニードルユニットはロッキング部材をさらに含む。このロッキング部材は、ニードルユニットおよび/またはカートリッジの軸方向運動により針がリザーバと流体連通するように動いた後に、カートリッジまたはハウジング上にニードルユニットをロックするように配置される。
【0017】
いくつかの例において、ニードルユニットはハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられる。これらの例において、ニードルユニットは突出部を含み、ニードルスリーブは螺旋部材を含み得る。この螺旋部材は、突出部に係合してニードルスリーブを回転させ、ニードルユニットを軸方向に動かすように配置される。
【0018】
他の例において、カートリッジはハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられる。これらの例において、カートリッジは突出部を含み、ニードルスリーブは螺旋部材を含み得る。この螺旋部材は、突出部に係合してニードルスリーブを回転させ、カートリッジを軸方向に動かすように配置される。
【0019】
これらの例において、螺旋部材は、ニードルスリーブの回転が螺旋部材を動かして、突出部との係合を外すように配置される。このように、ニードルスリーブは、ニードルユニ
ットおよびカートリッジとは独立して軸方向に動くことができる。
【0020】
請求項1~9のいずれか1項に記載の注射デバイスは、ニードルユニットと、カートリッジまたはハウジングのうちの一方との間に配設されたねじ山をさらに含む。ニードルスリーブの回転は、ニードルユニットまたはカートリッジを回転させ、それによってニードルスリーブが回転された際に、ねじ山がニードルユニットまたはカートリッジを軸方向に動かすように適用される。
【0021】
カートリッジは、リザーバに薬剤を含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、ニードルスリーブはハウジングに対して、ニードルスリーブが針の端部を覆う伸長位置から、針の端部が露出される後退位置まで可動である。
【0023】
いくつかの実施形態において、ニードルスリーブが伸長位置にあるとき、針の遠位端はニードルスリーブ内に位置する。いくつかの実施形態において、ニードルスリーブが後退位置にあるとき、針の端部はニードルスリーブの遠位端を越えて軸方向に延びる。いくつかの実施形態において、ニードルスリーブが後退位置にあるとき、針の遠位端はニードルスリーブの外側に位置する。
【0024】
いくつかの実施形態において、注射デバイスは、ニードルスリーブを伸長位置に付勢する付勢部材を含む。付勢部材はばねであってよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、ニードルスリーブは概ね管状である。ニードルスリーブは概ね円筒形であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、注射デバイスはキャップを含む。このキャップは、ハウジングに着脱可能に取り付けられる。
【0027】
本発明の別の態様によれば、
薬剤のためのリザーバを有するカートリッジと、
注射デバイスを使用する前にリザーバから封止されている針を含むニードルユニットと、
ハウジングに、軸周りに回転可能に取り付けられたニードルスリーブと
を含む注射デバイスを使用する方法も提供し、
この方法は、
ニードルスリーブを軸周りに回転させ、針がリザーバと流体連通するように動かされるようにニードルユニットおよび/またはカートリッジを軸方向に動かすことを含む。
【0028】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下で説明する実施形態を参照することから明確、かつ明瞭となろう。
【0029】
本発明の実施形態が、添付の図面を参照して、例示としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】本発明を具現化した注射デバイス、および着脱可能なキャップの概略側面図である。
図1B】キャップをハウジングから取り外した、図1Aの注射デバイスの概略側面図である。
図2】注射デバイスの横断面図である。
図3】注射デバイスの針端部の横断面図である。
図4A】注射デバイスのニードルユニットを示す図である。
図4B】注射デバイスのニードルユニットを示す図である。
図4C】注射デバイスのニードルユニットを示す図である。
図5A】注射デバイスの動作を示す図である。
図5B】注射デバイスの動作を示す図である。
図5C】注射デバイスの動作を示す図である。
図6】代替の注射デバイスの針端部を示す図である。
図7A】代替の注射デバイスのニードルスリーブを示す図である。
図7B図7Aの注射デバイスのニードルユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で説明する薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成される。例えば送達は、皮下、筋肉内、または静脈内とすることができる。このようなデバイスは、患者、または看護士もしくは医師などの介護者によって操作され、様々なタイプの安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要のある、カートリッジベースのシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスで送達される薬剤の容量は、約0.5~約2mlの範囲とすることができる。さらに別のデバイスは、一定時間(例えば約5、15、30、60、または120分)患者の皮膚に接着して「大」容量(通常約2~約10ml)の薬剤を送達するように構成された、大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0032】
ここで説明するデバイスは、特定の薬剤と共に、必要とされる仕様内で動作するようにカスタマイズすることもできる。例えば、デバイスは特定の時間(例えば、自動注射器では約3~20秒、LVDでは約10~約60分)内に薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様として、低レベルもしくは最小レベルの苦痛、または人的要因、貯蔵寿命、有効期間、生体適用性、環境問題などに関する特定の条件を含むことができる。このような違いは、例えば約3~約50cPである薬物の粘度範囲など、様々な要因によって生じ得る。その結果、薬物送達デバイスは、約25~約31ゲージの範囲にあるサイズの中空針を含むことが多い。一般的なサイズは、17および29ゲージである。
【0033】
本明細書で説明する送達デバイスは、1つまたはそれ以上の自動機能も含むことができる。例えば、針とカートリッジとの結合、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退、のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーを、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、例えば機械エネルギー、空圧エネルギー、化学エネルギー、または電気エネルギーを含むことができる。例えば、機械エネルギー源は、ばね、てこ、エラストマー、またはエネルギーを蓄積または解放するための他の機械的機構、を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を、単一のデバイスに組み合わせることができる。デバイスは、ギア、バルブ、またはエネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための他の機構、をさらに含むことができる。
【0034】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能は、起動機構を介して各々を起動させる。このような起動機構として、例えばボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上である、アクチュエータを含むことができる。自動機能の起動は、単一の工程プロセスまたは複数の工程プロセスであってよい。すなわち、自動機能をもたらすために、使用者は1つまたはそれ以上の起動構成要素の起動を必要とし得る。例えば単一の工程プロセスにおいて、薬剤を注射するために、使用者はニードルスリーブをその本体に対して押し下げてよい。他のデバイスでは、自動機能の複数の工程の起動を必要とし得る。例えば使用者は、注射するために、ボタンを押し下げて、ニード
ルシールドを後退させることが必要とされる。
【0035】
さらに、1つの自動機能の起動が、1つまたはそれ以上の後続の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成し得る。例えば第1の自動機能の起動は、針とカートリッジとの結合、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退、のうちの少なくとも2つを起動し得る。いくつかのデバイスは、1つまたはそれ以上の自動機能を生じさせるための工程の、特定のシーケンスも必要とし得る。他のデバイスは、独立した工程のシーケンスを伴って動作し得る。
【0036】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器の、1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。例えば送達デバイスは、(通常、自動注射器に見られるような)自動的に薬剤を注射するように構成された機械エネルギー源と、(通常、ペン型注射器に見られるような)用量設定機構とを含むことができる。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が図1Aおよび図1Bに示される。上述のようにデバイス10は、患者の体内に薬剤を注射するように構成されている。デバイス10は、注射される薬剤を含むリザーバを画成するカートリッジを一般的に含包するハウジング11、および送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要な構成要素、を含む。
【0038】
デバイス10は、ハウジング11に取り外し可能に取り付けられたキャップ12も含むことができる。通常、デバイス10を操作する前に、使用者はキャップ12をハウジング11から取り外さなければならない。
【0039】
示されるように、ハウジング11は実質的に円筒形であり、長手方向軸A-Aに沿って実質的に一定の径を有する。ハウジング11は、遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。
【0040】
用語「遠位」は、注射する部位に相対的に近い位置を指し、用語「近位」は、注射する部位から相対的に離れた位置を指す。
【0041】
デバイス10は、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ19も含むことができ、ハウジング11に対するスリーブ19の動きを可能にする。例えばスリーブ19は、長手方向軸A-Aに平行な長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ19の近位方向の動きは、針17がハウジング11の遠位領域Dから延びるのを可能にする。
【0042】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行われる。例えば、針17はハウジング11に対して固定して位置し、最初に、伸長したニードルスリーブ19内に位置する。スリーブ19の遠位端を患者の体に押し当てて設置し、遠位方向にハウジング11を動かすことによる、スリーブ19の近位への動きは、針17の遠位端を露出させることになる。このような相対的な動きによって、針17の遠位端が患者の体内に延びるのを可能にする。針17は、患者がスリーブ19に対してハウジング11を手動で動かすことを介して手動で挿入されるので、このような挿入は「手動」挿入と呼ばれる。
【0043】
挿入の別の形態は、「自動」であり、自動によって針17はハウジング11に対して動く。このような挿入は、スリーブ19の動きによって、または例えばボタン13など、別の起動形態によってトリガすることができる。図1Aおよび図1Bに示されるように、ボタン13はハウジング11の近位端に位置する。しかし他の実施形態において、ボタン13をハウジング11の側部に位置させることができる。
【0044】
他の手動または自動機能は、薬物注射もしくは針の後退、またはその両方を含むことが
できる。注射は、薬剤をカートリッジ18から針17を通して押しやるために、栓またはピストン14が、カートリッジ18のリザーバ内の近位位置から、より遠位位置に動かされるプロセスである。いくつかの実施形態において、デバイス10が起動される前に、駆動ばね(図示せず)が圧縮される。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域P内に固定され、駆動ばねの遠位端は、ピストン14の近位面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動の後、駆動ばねに蓄積されたエネルギーの少なくとも一部は、ピストン14の近位面に加えられる。この圧縮力はピストン14に作用して、ピストン14を遠位方向へ動かすことができる。このような遠位への動きは、カートリッジ18内の液状薬剤を圧縮して針17の外に押し出すように働く。
【0045】
注射の後、針17を、スリーブ19内またはハウジング11内に後退させることができる。後退は、使用者がデバイス10を患者の体から取り外す際に、スリーブ19が遠位に動くときに生じ得る。これは、針17がハウジング11に対して固定された位置に残るために生じ得る。スリーブ19の遠位端が針17の遠位端を越えて動き、針17が覆われた後、スリーブ19はロックされる。このようなロックは、ハウジング11に対して、スリーブ19の任意の近位への動きをロックすることを含むことができる。
【0046】
針の後退の別の形態は、針17がハウジング11に対して動かされる場合に生じ得る。このような動きは、ハウジング11内のカートリッジ18が、ハウジング11に対して近位方向に動かされる場合に生じ得る。この近位の動きは、遠位領域Dに位置する後退ばね(図示せず)を使用して実現することができる。起動されたとき、圧縮された後退ばねは、カートリッジ18を近位方向に動かすのに十分な力を、カートリッジ18に加えることができる。十分後退した後、針17とハウジング11との間の任意の相対的な動きは、ロッキング機構によってロックされる。さらに、ボタン13またはデバイス10の他の構成要素が、必要に応じてロックされる。
【0047】
図2は、ハウジング21、カートリッジ22、ニードルユニット23、およびニードルスリーブ26を有する、注射デバイス20の例を示す。注射デバイス20は、ピストン24およびピストン駆動機構25をさらに含む。
【0048】
カートリッジ22は、薬剤を含んでハウジング21内に取り付けられた、リザーバ28を画成する。カートリッジ22の遠位端Dは、端部キャップ29によって封止される。ハウジング21のカートリッジ取付部30は、カートリッジ22を支持する。示されるように、カートリッジ取付部30の一部は管状で、カートリッジ22の遠位端を囲む。カートリッジ取付部30の、この管状部は、ハウジング21内に配設された外面を有する。
【0049】
図2に示されるように、初期条件において、ニードルユニット23の針31は、カートリッジ22の遠位端において、端部キャップ29から離されている。注射デバイスの使用前または使用中に、ニードルユニット23は、針31がカートリッジ22の端部キャップ29を穿孔するように、カートリッジ22の遠位端と係合するように動かされる。このように、以下でさらに説明するように、薬剤を、針31を介してリザーバ28から排出させることができる。
【0050】
初期条件において、図2に示されるように、ピストン24は、カートリッジ22内のリザーバ28の近位端に配設され、ピストン駆動機構25は、ハウジング21の近位端に配設される。ピストン駆動機構25は、ばね32、プランジャ33、およびキャッチ34を含む。ばね32は、プランジャ33をピストン24に押し当ててカートリッジ22の中に付勢するように配置され、使用中に薬剤をリザーバ28から排出する。示されるように、使用前の初期条件において、ばね32はキャッチ34によって圧縮された状態で保持されている。具体的には、キャッチ34はプランジャ33を保持し、プランジャ33は、ピス
トン24に力が加えられないように、ばね32を圧縮させた状態に保持する。この状態において、ピストン駆動機構25は予荷重されている。
【0051】
以下でさらに説明するように、注射デバイス20はアクチュエータ、この例においてはニードルスリーブ26によって作動される。ニードルスリーブ26は、ハウジング21内で回転可能かつ摺動可能に可動であり、ハウジング21の遠位端から突出する。このように、使用中にニードルスリーブ26は、使用者の皮膚に押し当てて設置され、注射デバイス20は、ハウジング21を保持しながら使用者の皮膚に向けて押圧され、これによってニードルスリーブ26を、ハウジング21の中へ近位方向に動かす。
【0052】
ニードルスリーブ26がハウジング21の中へ近位方向に動いた後、ニードルスリーブ26は、キャッチ34を解放するように働く。キャッチ34が解放された後、ばね32は、プランジャ33をピストン24に押し当ててリザーバ28に入れるように付勢する。
【0053】
図2に示されるように、キャッチ34は、プランジャ33およびばね32を囲む管状要素35を含み得る。管状要素35は、プランジャ33内の凹部37に係合する突出部36を含み、そのため、図2に示される位置においては、プランジャ33は、突出部36および凹部37によって、遠位方向に動くのを防止される。
【0054】
ニードルスリーブ26がハウジング21の中へ近位に動かされる際に、ニードルスリーブ26の端部は管状要素35に係合し、管状要素35を、注射デバイス20の軸Aの周りに回転させる。この回転により、突出部36を凹部37から係合解除させ、それによってプランジャ33を開放して、次にプランジャ33はばね32の力によってリザーバ28の中に動く。
【0055】
1つの例において、管状要素35に係合するニードルスリーブ26の端部は、管状要素35を回転させるために、管状要素35上の突出部に係合する面取り(すなわち角度を付けた縁部)を含み得る。他の例において、管状要素35は、ニードルスリーブ26を回転させるために、ニードルスリーブ26上の突出部によって係合された面取り(すなわち角度を付けた縁部)を含み得る。
【0056】
他の例において、キャッチ34は、プランジャ33に係合する突出部を含んだアームを含み得る。この場合、ニードルスリーブ26は、アームを上昇させることによってアームの向きを逸らし、突出部を凹部から係合解除し、それによってプランジャ33を解放する。
【0057】
例えばばね42などの付勢部材は、ハウジング21とニードルスリーブ26との間で作用して、ニードルスリーブ26を遠位方向に付勢するように配置され、それによってニードルスリーブ26はハウジング21の遠位端から突出する。
【0058】
使用前または使用中、ニードルユニット23は、キャッチ34が解放される前にカートリッジ22と結合される。以下で説明するように、ニードルスリーブ26の軸A周りの回転が、ニードルユニット23またはカートリッジ22のうちの一方を、ハウジング21内で軸方向に動かし、それによって針31はリザーバ28と流体連通させる。ニードルスリーブ26の近位方向の後続の動きは、キャッチ34を解放し、プランジャ33が針31を介して薬剤を送達し始める。
【0059】
図3は、ニードルユニット23のない、注射デバイス20の遠位端を示す。示されるように、ニードルスリーブ26は、ハウジング21の遠位端から突出する。ニードルスリーブ26は摺動可能にハウジング21に取り付けられ、それによってニードルスリーブ26
は、ハウジング21の中に近位方向に動くことができる。ばね42は、ニードルスリーブ26を遠位方向すなわち伸長位置に付勢するように配置される。カートリッジ22はハウジング21内に取り付けられる。具体的には、ハウジング21の管状のカートリッジ取付部30は、カートリッジ22の遠位端を囲む。
【0060】
示されるように、ニードルスリーブ26は、ニードルスリーブ26の内面に配置された螺旋案内部38を含み、螺旋案内部38は、ニードルスリーブ26の内側周縁部の周りに部分的に延びる。例において、ニードルスリーブ26は、1つまたはそれ以上、例えば2つの螺旋案内部38または3つの螺旋案内部38を含み得る。
【0061】
図3に示されるように、ハウジング21のカートリッジ取付部30は、カートリッジ取付部30に沿って軸方向に延びた、レール39の形態である直線案内部を含む。示されるように、レール39は、カートリッジ取付部30の遠位端を越えて延び得る。レール39は、ハウジング21内の、カートリッジ取付部30の外面に位置する。
【0062】
図4A図4Cは、図3のハウジング21と、ニードルスリーブ26と、カートリッジ22と共に使用される、ニードルユニット23を示す。図4Aに示されるように、ニードルユニット23は、針31が取り付けられた針本体40を含む。針本体40は凹部41を含む。凹部41は、注射デバイス20の使用中に、ニードルユニット23がカートリッジ22(図3参照)と結合されたとき、ハウジング21(図3参照)のカートリッジ取付部30の上に位置するように適用される。
【0063】
図4Aに示されるように、かつ図3を参照すると、針本体40は、ハウジング21のカートリッジ取付部30のレール39と協働するように配置された溝43を含む。溝43は、凹部41内の、針本体40の内面に位置する。レール39と溝43との協働によって、ハウジング21およびカートリッジ22に対する、ニードルユニット23の回転を防止し、以下で説明するように、ニードルスリーブ26の螺旋案内部38が、ニードルユニット23をカートリッジ22の上に押圧するときに、ニードルユニット23を軸方向に案内する。
【0064】
図4Bおよび図4Cに示すように、針本体40の外面は、突出部44を含む。この例において、針本体40の外面は2つの突出部44を含むが、各螺旋案内部38に1つの突出部44が提供されることを理解されたい。突出部は概ね円形であるが、他の形状であってもよい。突出部44は、針本体40の周縁部の周りに等間隔で離される。
【0065】
図3および図4A図4Cを参照すると、針本体40の突出部44は、ニードルスリーブ26の螺旋案内部38と係合するように配置され、ニードルスリーブ26の回転が、カートリッジ22に向かうニードルユニット23の軸方向運動を生じさせる。このように、注射デバイス20を使用中に、使用者はニードルスリーブ26を回転させて、ニードルユニット23をカートリッジ22と係合させ、注射プロセスが開始される前に、針31をリザーバ28と流体連通させる。
【0066】
図5A図5Cは、ニードルユニット23とカートリッジ22とを結合させるプロセスを示す。
【0067】
図5Aに示されるように、かつ図3および図4A図4Cも参照すると、この初期位置において、ニードルユニット23はカートリッジ22から離されている。ニードルスリーブ26は伸長位置にあり、針31を覆っている。この位置において、ニードルユニット23は、突出部44と螺旋案内部38との間の係合、針本体40の近位端とハウジング21のカートリッジ取付部30との間の係合、およびレール39と溝43との間の係合、の組
合せによって所定の位置に保持される。
【0068】
ニードルスリーブ26が回転されると、ニードルスリーブ26の螺旋案内部38と、ニードルユニット23の突出部44との間の係合によって、ニードルユニット23をカートリッジ22に向けて軸方向に駆動する。レール39および溝43は、ニードルユニット23の回転を防止して、ニードルユニット23をカートリッジ取付部30の上に案内する。
【0069】
図5Aに示すように、針本体40の近位端は、最初に針本体40がハウジング21のカートリッジ取付部30の上を動くように逸らせる必要があるキャッチ45を含む。初期位置において、図5Aに示されるように、キャッチ45とカートリッジ取付部30との間の係合は、ニードルユニット23を注射デバイス20内の所定の位置に保持する助けとなる。
【0070】
図5Bは、ニードルスリーブ26が回転してニードルユニット23をカートリッジ22に係合させるように動かした後の、注射デバイス20を示す。示されるように、針本体40の近位端のキャッチ45は、カートリッジ取付部30の凹部46と係合して、それによってニードルユニット23は、カートリッジ取付部30の所定の位置に固定される。さらに、針31の近位端はカートリッジ22の端部キャップ29を穿孔し、それによって針31はリザーバ28と流体連通する。ニードルスリーブ26は、ばね42の作用によって、伸長位置に留まる。
【0071】
ニードルスリーブ26の回転により、螺旋部材38は突出部(図4A図4Cの44参照)から係合解除し、それによってニードルスリーブ26は、ニードルユニット23と独立して軸方向に動くことができる。
【0072】
図5Cは、注射プロセスを開始するように、使用者の皮膚に押し当てて押圧させた後の、注射デバイス20を示す。示されるように、ニードルスリーブ26は、ハウジング21の中に近位に動いて針31を露出させ、それによって針31は使用者の皮膚を穿孔することができる。さらに、前述のように、ニードルスリーブ26のハウジング21の中への近位の運動により、プランジャ(図2の33参照)およびばね(図2の32参照)を解放するために、ピストン駆動機構(図2の25参照)のキャッチ(図2の34参照)を解放し、次にピストン(図2の24参照)をカートリッジ22の中に駆動して、針31を介してリザーバ28から薬剤を投薬する。
【0073】
使用後、ばね42は、針31を再び覆うために、ニードルスリーブ26を伸長位置に戻すように付勢する。
【0074】
図6に示されるように、ニードルスリーブ26が回転してニードルユニット23およびカートリッジ22と係合する前に、ニードルスリーブ26がハウジング21の中に近位に動かされるのを防止するため、ハウジングは、ニードルスリーブ26のスロット48と係合する突出部47を含んでよく、スロット48および突出部47は、ニードルスリーブ26が回転した後に、ニードルスリーブ26の軸方向運動のみを可能にするように配置される。
【0075】
この例において、スロット48は「L」型で、周縁方向に延びた部分(図示せず)および軸方向に延びた部分49を有する。初期位置において、ハウジング21の突出部47は、スロット48の周縁方向に延びた部分に位置し、それによってニードルスリーブ26の回転のみが可能になる。ニードルスリーブ26が回転した後、突出部47はスロット48の軸方向に延びた部分49に配設され、それによってニードルスリーブ26はハウジング21に向けて軸方向に動くことができ、針31を露出させ、ピストン駆動機構(図2の2
5参照)をトリガする。
【0076】
他の例において、ニードルスリーブ26は突出部47を含み、ハウジング21はスロット48を含み得ることを理解されたい。
【0077】
図7Aおよび図7Bは、注射デバイス20の代替の例を示す。具体的には、図7Aはニードルスリーブ26の遠位端を示し、図7Bはニードルユニット23を示す。図7Aのニードルスリーブ26および図7Bのニードルユニット23は、図3の注射デバイス20と共に使用することができるが、この例において、ニードルユニット23は、ハウジング21内に回転可能に取り付けられ、前記の例を参照して説明したようなレールおよび溝(39、43)は存在しない。
【0078】
図7A図7B、および図3を参照すると、ニードルユニット23は、凹部51を有する針本体50、および凹部51における雌ねじ山とを有する。雌ねじ山は、ハウジング21のカートリッジ取付部30における雄ねじ山と係合するように、またはカートリッジ22における雄ねじ山と係合するように、配置される。初期位置において、ねじ山は、ニードルユニット23の回転(以下で説明)でねじ山がニードルユニット23を軸方向に動かしてカートリッジ22に係合させるように、位置を合されるか、または部分的に開始される。このように、ニードルスリーブ26が回転されると、ねじ山は、ニードルユニット23を案内してカートリッジ22と係合させるように働く。
【0079】
ニードルスリーブ26の内面は、1つの溝52、好ましくは2つの溝52を含む。針本体50の外面は、1つの突出部53、好ましくは2つの突出部53を含み、それらはニードルスリーブ26の溝52と係合する。このように、ハウジング21内におけるニードルスリーブ26の回転は、ハウジング21内のニードルユニット23の回転をもたらし、ねじ山は、ニードルユニット23を軸方向に動かしてカートリッジ22と係合させ、それによって針31は、リザーバ28と流体連通させる。
【0080】
図7Bに示されるように、ニードルユニット23は端部止め具54も含み得る。端部止め具54は、ニードルユニット23がねじ山によってカートリッジ取付部30の上に回転された後に、カートリッジ取付部30の一部と係合する。追加または代替として、凹部55を設けてカートリッジ取付部30のキャッチと係合させ、ニードルユニット23をカートリッジ取付部30に固定してもよい。
【0081】
ニードルユニット23とカートリッジ取付部30との間のねじ接続は、ねじ山間隔が大きくて(have a high pitch)よく、それによって比較的少ない回転しか、所望の軸方向運動を実現するために必要とされない。例えば、回転は30°と120°との間、または約90°であってよい。しかし、回転は120°よりも大きく、例えば180°であってよい。
【0082】
様々な例において、ねじ接続は、カートリッジ取付部30の雄ねじ山、およびニードルユニット23の雌ねじ山を含み得る。または代替として、雌ねじ山および雄ねじ山のうちの一方を、他方のねじ山に係合するように配置された突出部によって取り替えてもよく、それによってニードルスリーブ23が回転する際、突出部はねじ山の経路に追従し、ニードルユニット23をカートリッジ22と係合させるように動かす。
【0083】
この例において、図6を参照して説明したものと同様、「L」型スロットおよび突出部は、ハウジング21とニードルスリーブ26との間に配置され、ニードルスリーブ26が回転してニードルユニット23およびカートリッジ22に係合する前の、ニードルスリーブ26の軸方向運動を防止する。
【0084】
上述と同様の、他の例において、ニードルユニット23はハウジング21に固定して取り付けられ、カートリッジ22はハウジング21に、軸方向に摺動可能に取り付けられる。これらの例において、ニードルスリーブ26の回転は、カートリッジ22を軸方向に動かしてニードルユニット23と係合させる。
【0085】
例えば、図3図5Cの例と同様に、ニードルユニット23はハウジング21に固定して取り付けられ、カートリッジ22は軸方向に可動であってよく、ニードルスリーブ36の螺旋案内部38は、カートリッジ22の突出部に係合するように配置され、それによってニードルスリーブ26の回転は、カートリッジ22を軸方向遠位に動かしてニードルユニット23に係合させる。図7Aおよび図7Bの例と同様に、ニードルスリーブ26の回転は、カートリッジ22の回転をもたらし、それによってカートリッジ22とニードルユニット23との間のねじ接続は、カートリッジ22を軸方向遠位に動かしてニードルユニット23と係合させる。
【0086】
さらに、本明細書で説明した例において、ハウジング21のカートリッジ取付部30は、カートリッジ22の遠位端を囲み、使用中にニードルユニット23によって係合される。しかし、カートリッジ取付部30の構成および機能は、カートリッジ22自体にあることを理解されたい。例えば、ハウジング21はカートリッジ22の遠位端を囲まず、カートリッジ22の遠位端は、前述のカートリッジ取付部30の構成、例えば凹部46、ねじ山、またはレール39などを含み得る。
【0087】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0088】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組合せを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(例えばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0089】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、例えば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(例えば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。例えば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(例えば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(例えば約20℃)または冷蔵温度(例えば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(例えばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された
二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。例えば、2つのチャンバは、これらが(例えば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0090】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、例えば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、例えば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0091】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、天然のペプチドの構造、例えばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(例えば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、例えばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0092】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0093】
インスリン誘導体の例としては、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒト
インスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0094】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0095】
オリゴヌクレオチドの例としては、例えば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0096】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0097】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0098】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、例えば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0099】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持する
F(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(例えばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。例えば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、例えば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0100】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(例えば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0101】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0102】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(例えばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(例えばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(例えばデュピルマブ)がある。
【0103】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、例えば酸付加塩および塩基性塩である。
【0104】
本明細書で説明したAPI、定式化、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の変更(追加および/または除外)が、このような変更およびあらゆる全てのその均等物を含包する本発明の全範囲および趣旨から逸脱することなく成されることを、当業者は理解するであろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
【手続補正書】
【提出日】2023-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスであって:
ハウジングと、
薬剤のためのリザーバを有するカートリッジと、
注射デバイスを使用する前にリザーバから封止されている針を含むニードルユニットと、
ハウジングに、軸周りに回転可能に取り付けられたニードルスリーブと
を含み、
ここで、ニードルユニットおよびカートリッジのうちの少なくとも1つは、ハウジングに、軸方向に摺動可能に取り付けられ、
ニードルスリーブは、ニードルユニットおよび/またはカートリッジに係合するように配置された係合部材を含み、該係合部材は、ニードルスリーブの回転が、ニードルユニットおよび/またはカートリッジを軸方向に動かし、針をリザーバと流体連通させるように動かすように適用される、前記注射デバイス。
【外国語明細書】