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特開2023-182866クロスカップリング反応及びその反応を用いる製造方法
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  • 特開-クロスカップリング反応及びその反応を用いる製造方法 図1
  • 特開-クロスカップリング反応及びその反応を用いる製造方法 図2
  • 特開-クロスカップリング反応及びその反応を用いる製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182866
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】クロスカップリング反応及びその反応を用いる製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/32 20060101AFI20231220BHJP
   C07C 15/14 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 43/20 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 43/215 20060101ALI20231220BHJP
   C07F 5/02 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 45/68 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 211/45 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 209/68 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 25/22 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 17/26 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 233/07 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 231/12 20060101ALI20231220BHJP
   C07F 7/08 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 49/617 20060101ALI20231220BHJP
   C07C 221/00 20060101ALI20231220BHJP
   C07D 333/18 20060101ALI20231220BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20231220BHJP
   C07D 263/56 20060101ALI20231220BHJP
   C07D 285/14 20060101ALI20231220BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20231220BHJP
   C07D 209/14 20060101ALI20231220BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20231220BHJP
   C07D 498/22 20060101ALI20231220BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
C07C1/32
C07C15/14
C07C43/20 A
C07C41/30
C07C43/20 D
C07C43/215
C07F5/02 A
C07C49/84 F
C07C45/68
C07C211/45
C07C209/68
C07C25/22
C07C17/26
C07C233/07
C07C231/12
C07F7/08 C
C07C49/617
C07C221/00
C07D333/18
C07D209/86
C07D263/56
C07D285/14
C07D495/04
C07D209/14
C07D471/04 112Z
C07D498/22
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183044
(22)【出願日】2020-10-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)「レドックスメカノケミストリーによる固体有機合成化学」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩司
【テーマコード(参考)】
4C036
4C056
4C065
4C071
4C072
4C204
4H006
4H039
4H048
4H049
【Fターム(参考)】
4C036AD04
4C036AD12
4C036AD17
4C036AD27
4C036AD28
4C056AA01
4C056AB01
4C056AC02
4C056AD03
4C056AE02
4C056AF04
4C056CA02
4C056CC01
4C056CD03
4C065AA01
4C065AA19
4C065BB09
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ04
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP03
4C065QQ02
4C065QQ05
4C071AA01
4C071BB02
4C071CC23
4C071DD04
4C071EE13
4C071FF23
4C071GG05
4C071JJ01
4C071KK14
4C071LL10
4C072AA01
4C072AA07
4C072BB04
4C072BB08
4C072CC04
4C072CC12
4C072EE07
4C072FF11
4C072GG01
4C072GG10
4C072HH02
4C072HH06
4C072JJ03
4C072UU10
4C204AB20
4C204BB10
4C204CB03
4C204CB25
4C204EB02
4C204FB08
4C204FB19
4C204GB07
4C204GB14
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC22
4H006AD17
4H006BA25
4H006BA32
4H006BA36
4H006BA48
4H006BC10
4H006BC31
4H006BC34
4H006BC35
4H006BC37
4H006BD81
4H006BJ20
4H006BJ30
4H006BJ50
4H006BR70
4H006BV25
4H006EA23
4H006GP03
4H039CA41
4H039CD20
4H039CD90
4H048AA02
4H048AA04
4H048AC22
4H048BA25
4H048BA32
4H048BA36
4H048BA48
4H048BC10
4H048BC31
4H048BC34
4H048BC35
4H048BC37
4H048BD81
4H048VA20
4H048VA75
4H048VB10
4H049VN01
4H049VP02
4H049VP04
4H049VQ07
4H049VQ77
4H049VR24
4H049VS07
4H049VS77
4H049VT17
4H049VT26
4H049VT28
4H049VT38
4H049VW01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多種多様な化合物を出発原料として用いることができ、短時間に高収率で反応生成物を得ることができる、クロスカップリング反応方法、及び、前記方法で得られる新規な化合物を提供する。
【解決手段】式(I)で表される化合物(I)と、式(IIa)等で表される化合物(II)を、少なくとも、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物の存在下、有機溶媒の存在量が、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下、及び60~500℃の条件で反応させる、クロスカップリング反応方法。A-X(I)(式中、Aはm価の芳香族炭化水素基等を、Xは各々独立して脱離基を、mはXの数で1以上の整数を、それぞれ表す。)A-Y(IIa)(式中、Aはn価の芳香族炭化水素基等を、nはYの数で1以上の整数を、Yは、各々独立して、-B(OR)(OR)等を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
-X (I)
(式中、
は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。
Xは、各々独立して、脱離基を表す。
mは、Xの数で1以上の整数を表す。)
で表される化合物(I)と、
式(IIa)又は(IIb):
-Y (IIa)
(RO)(RO)B-B(OR)(OR) (IIb)
(式中、
は、置換基を有していてもよいn価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいn価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいn価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいn価の不飽和脂肪族炭化水素基を表す。
nは、Yの数で1以上の整数を表す。
Yは、各々独立して、
-B(OR)(OR
-NHR
-R-OH
-R-SH
を表す。
及びRは、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基を表す。RとRは相互に結合していてもよい。
は、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい1価の不飽和脂肪族炭化水素基を表す。
及びRは、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表す。
~Rは、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基を表す。RとRは相互に結合していてもよく、RとRは相互に結合していてもよい。)
で表される化合物(II)を、
少なくとも、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物の存在下、
有機溶媒の存在量が、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下、及び
60~500℃
の条件で反応させる、クロスカップリング反応方法。
【請求項2】
前記脱離基が、クロロ、ブロモ、ヨード、ジアゾニウム塩、トリフルオロメタンスルホネート及びカルボン酸誘導体から選ばれる1種以上の基であり、
前記式(IIa)で表される化合物が、芳香族ボロン酸又は芳香族ボロン酸エステルから選ばれる芳香族ボロン酸類であり、
前記式(IIb)で表される化合物が、ジボロン酸アルキルエステル、ジボロン酸アルキレングリコールエステル、ジボロン酸アリールエステル、ジボロン酸アリーレングリコールエステル、及びテトラヒドロキシジボランから選ばれるジボロン酸エステル類である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物(I)と前記化合物(II)の当量比(化合物(I)/化合物(II))が、10/1~1/10である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属触媒の存在量が、化合物(I)のモル数に価数mをかけて得た脱離基モル数を100モル%とした場合に、0.5モル%以上25モル%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基が、無機塩基、アルカリ金属アルコキシド及び有機塩基から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基の存在量が、化合物(I)1当量に対して、0.5当量以上10当量以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記不飽和炭化水素化合物が、芳香族化合物ではなく、
少なくとも1つの炭素-炭素不飽和二重結合及び/又は少なくとも1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する鎖状化合物、又は
少なくとも1つの炭素-炭素不飽和二重結合及び/又は少なくとも1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する環状化合物、
の1種以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物に加えて、さらに配位性化合物が存在している、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記不飽和炭化水素化合物の存在量が、
前記化合物(I)、前記化合物(II)、前記金属触媒、及び前記塩基の合計質量を基準として、又は、
前記化合物(I)、前記化合物(II)、前記金属触媒、前記塩基、及び配位性化合物の合計質量を基準として、
0.01~3.0μL/mgである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
反応容器、反応容器内の収容物を撹拌する手段、及び反応容器内の温度調整手段、を少なくとも備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法に用いる装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を用いる、式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物の製造方法。
【化1】
(式中、pは5~30の整数、qは5~30の整数を表す。)
【請求項12】
式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物。
【化2】
(式中、pは5~30の整数、qは5~30の整数を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なクロスカップリング反応方法に関し、さらに、その方法を用いて得られるクロスカップリング反応生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬、液晶化合物、有機エレクトロルミネッセンス化合物、着色材料、エネルギー線吸収材料、情報記録材料、波長変換材料、インジケーター材料、センサー材料、有機発光ダイオード(OLED)、有機半導体材料等の合成方法の一手段として、クロスカップリング反応が知られている。非特許文献1及び2には、脱離基を有する芳香族化合物と芳香族ボロン酸誘導体等とを、パラジウム触媒等の金属触媒の存在下で反応させて連結して芳香族化合物を得るクロスカップリング反応が知られている。そして、その合成化学的重要性から、鈴木章博士、根岸英一博士及びリチャード・ヘック博士の「パラジウム触媒によるクロスカップリング反応の開発」に対し、2010年にノーベル化学賞が授与されている。
【0003】
クロスカップリング反応は、一般的に、有機溶媒に出発原料となる化合物を溶かして反応が行われることから、比較的大量の有機溶媒を必要とする。しかし、近年、大量の有機溶媒の使用は、作業者の作業環境及び安全性、地球環境保護、及び使用後の有機溶媒処理時の環境負荷等の観点で問題が生じるおそれがある。したがって、作業環境・安全性、地球環境保護、環境負荷等の点で問題が生じにくいクロスカップリング反応方法が求められている。
【0004】
反応原料同士を直接接触させ、有機溶媒を使用しない有機合成反応法は、低環境負荷であり、学術的にも工業的にも興味深い。
非特許文献3には、実質的に有機溶媒を使用しない、パラジウム触媒を用いるクロスカップリング反応方法は報告されている。しかし、反応例が少なく、出発原料や反応効率の点で改善すべき点が多くある。
【0005】
本発明者らは、特許文献1により、種々の化合物を出発原料として用いることができ、実質的に有機溶媒を使用することなく、温和な反応条件で、比較的短時間で、効率よく反応を進行できるクロスカップリング反応方法を提案した。このクロスカップリング反応方法は、C-N、C-B、C-C、C-O及びC-S結合から選択される化学結合を比較的効率よく形成することができ、高収率で反応生成物を得ることができる。しかし、このクロスカップリング方法においても、反応時間や収率の点で改善すべき点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/085396号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】鈴木章 有機合成協会誌,2005,Vol.63,No.4,312
【非特許文献2】Ruiz-Castillo,P.,Buchwald,S.L.Chem.Rev.,2016,Vol.116,12564
【非特許文献3】Howard,J.L.,Cao,Q.,Browne,D.L.Chem.Sci.2018,Vol.9,3080.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、多種多様な化合物を出発原料として用いることができ、実質的に有機溶媒を不使用とすることができ、簡便な手段により、短時間に高収率で反応生成物を得ることができる、クロスカップリング反応方法を提供することである。
また、本発明が解決しようとする課題は、これまで得ることができなかった新規な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、金属触媒及び塩基を用いるクロスカップリング反応方法において、不飽和炭化水素化合物を用いることで、金属触媒の分散性を向上させるとともに金属触媒の凝集を抑制することができること、さらに、有機溶媒の存在量が、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下、及び60~500℃の条件で反応させることで、多種多様な化合物を出発原料として用いることができ、簡便な手段により、短時間に高収率でクロスカップリング反応生成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明者らは、前記の新規なクロスカップリング反応方法を用いて、これまでに合成することができなかった新たな化合物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下のクロスカップリング反応方法、新規化合物の製造方法、及び新規化合物を提供するものである。
【0010】
[1] 式(I):
-X (I)
(式中、
は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。
Xは、各々独立して、脱離基を表す。
mは、Xの数で1以上の整数を表す。)
で表される化合物(I)と、
式(IIa)又は(IIb):
-Y (IIa)
(RO)(RO)B-B(OR)(OR) (IIb)
(式中、
は、置換基を有していてもよいn価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいn価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいn価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいn価の不飽和脂肪族炭化水素基を表す。
nは、Yの数で1以上の整数を表す。
Yは、各々独立して、
-B(OR)(OR
-NHR
-R-OH
-R-SH
を表す。
及びRは、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基を表す。RとRは相互に結合していてもよい。
は、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい1価の不飽和脂肪族炭化水素基を表す。
及びRは、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表す。
~Rは、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基を表す。RとRは相互に結合していてもよく、RとRは相互に結合していてもよい。)
で表される化合物(II)を、
少なくとも、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物の存在下、
有機溶媒の存在量が、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下、及び
60~500℃
の条件で反応させる、クロスカップリング反応方法。
[2]前記脱離基が、クロロ、ブロモ、ヨード、ジアゾニウム塩、トリフルオロメタンスルホネート及びカルボン酸誘導体から選ばれる1種以上の基であり、
前記式(IIa)で表される化合物が、芳香族ボロン酸又は芳香族ボロン酸エステルから選ばれる芳香族ボロン酸類であり、
前記式(IIb)で表される化合物が、ジボロン酸アルキルエステル、ジボロン酸アルキレングリコールエステル、ジボロン酸アリールエステル、ジボロン酸アリーレングリコールエステル、及びテトラヒドロキシジボランから選ばれるジボロン酸エステル類である、
[1]に記載の方法。
[3]前記化合物(I)と前記化合物(II)の当量比(化合物(I)/化合物(II))が、10/1~1/10である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記金属触媒の存在量が、化合物(I)のモル数に価数mをかけて得た脱離基モル数を100モル%とした場合に、0.5モル%以上25モル%以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5]前記塩基が、無機塩基、アルカリ金属アルコキシド及び有機塩基から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の方法。
[6]前記塩基の存在量が、化合物(I)1当量に対して、0.5当量以上10当量以下である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7]前記不飽和炭化水素化合物が、芳香族化合物ではなく、
少なくとも1つの炭素-炭素不飽和二重結合及び/又は少なくとも1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する鎖状化合物、又は
少なくとも1つの炭素-炭素不飽和二重結合及び/又は少なくとも1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する環状化合物、
の1種以上である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8]金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物に加えて、さらに配位性化合物が存在している、[1]~[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9]前記不飽和炭化水素化合物の存在量が、
前記化合物(I)、前記化合物(II)、前記金属触媒、及び前記塩基の合計質量を基準として、又は、
前記化合物(I)、前記化合物(II)、前記金属触媒、前記塩基、及び配位性化合物の合計質量を基準として、
0.01~3.0μL/mgである、[1]~[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10]反応容器、反応容器内の収容物を撹拌する手段、及び反応容器内の温度調整手段、を少なくとも備える、[1]~[9]のいずれか1項に記載の方法に用いる装置。
[11][1]~[9]のいずれか1項に記載の方法を用いる、式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物の製造方法。
【化1】
(式中、pは5~30の整数、qは5~30の整数を表す。)
[12] 式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物。
【化2】
(式中、pは5~30の整数、q5~30の整数を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明により、多種多様な化合物を出発原料として用いることができ、実質的に有機溶媒を不使用とすることができ、簡便な手段により、短時間に高収率で反応生成物を得ることができる、クロスカップリング反応方法が提供される。これにより、C-N、C-B、C-C、C-O及びC-S結合から選択される化学結合が形成されたクロスカップリング反応生成物を、実質的に有機溶媒を使用することなく、簡便な手段により、効率よく、短時間に高収率で製造することができる。
また、本発明により、これまで得ることができなかった新規な化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られた反応生成物III-1に係るIR analysisである。
図2】実施例1で得られた反応生成物III-1に係るPXRD analysisである。
図3】実施例1で得られた反応生成物III-1に係るEI-MS analysisである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の態様は、特定の化合物(I)と、特定の化合物(II)とを、少なくとも、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物の存在下、有機溶媒の存在量が、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下、及び60~500℃の条件で反応させるクロスカップリング反応方法に関するものである。
本発明の第2の態様は、所定の手段等を備える、前記クロスカップリング反応に用いる装置に関するものである
本発明の第3の態様は、前記クロスカップリング反応を用いる、式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物の製造方法に関するものである。
【化3】
(式中、pは5~30の整数、qは5~30の整数を表す。)
本発明の第4の態様は、式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物に関するものである。
【化4】
(式中、pは5~30の整数、qは5~30の整数を表す。)
以下、本発明の各態様について、詳細に説明する。
【0014】
[クロスカップリング反応方法]
<化合物(I)>
本発明のクロスカップリング反応方法で用いられる化合物(I);
-X (I)
(式中、
は、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基のいずれかを表す。
Xは、各々独立して、脱離基を表す。
mは、Xの数で1以上の整数を表す。)
は、化合物(II)とクロスカップリング反応をして、C-B結合、C-C結合、C-N結合、C-O結合及びC-S結合のいずれか1つ以上が形成されたクロスカップリング反応生成物を生成するものであれば特に限定されない。
化合物(I)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
化合物(I)は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0015】
(式(I)中のA基)
における置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基の炭素数は特に限定されず、例えば6~60、好ましくは6~40、より好ましくは6~30である。
m価の芳香族炭化水素基において、mは1以上の整数であり、例えば1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。
における置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基において、m=1である1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基(又はアントラセン基)、フェナントレニル基(又はフェナントレン基)、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基(又はピレン基)、ペリレニル基(又はペリレン基)、トリフェニレニル基(又はトリフェニレン基)、フルオレニル基等があげられる。
また、Aにおける置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基において、mが2以上の整数であるm価の芳香族炭化水素基としては、例えば、前記1価の芳香族炭化水素基中の芳香環から、m-1個の水素を除いたものがあげられる。
【0016】
における置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基の炭素数は特に限定されず、例えば4~60、好ましくは4~40、より好ましくは4~30である。
におけるm価の芳香族複素環基において、mは1以上の整数であり、例えば1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。
における置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基において、m=1である1価の芳香族複素環基としては、例えば、チオフェニル基(チオフェン基又はチエニル基)、チエニレニル基(又はチオフェンジイル基)、ベンゾチエニル基(ベンゾチオフェン基)、ジベンゾチエニル基(ジベンゾチオフェン基)、フェニルジベンゾチエニレニル基及びジベンゾチエニレニルフェニル基等の含硫黄ヘテロアリール基;フラニル基(又はフラン基)、ベンゾフラニル基(ベンゾフラン基)、ジベンゾフラニル基(ジベンゾフラン基)、フェニルジベンゾフラニル基及びジベンゾフラニルフェニル基等の含酸素ヘテロアリール基;ピリジル基(又はピリジン基)、ピリジレニル基(又はピリジンジイル基)、ピリミジニル基(又はピリミジン基)、ピラジル基(又はピラジン基)、キノリル基(又はキノリン基)、イソキノリル基(又はイソキノリン基)、カルバゾリル基(又はカルバゾール基)、9-フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基(又はアクリジン基)、キナゾリル基(又はキナゾリン基)、キノキサリル基(又はキノキサリン基)、1,6-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基及びポルフィリン基(又はポルフィリン環)等の含窒素ヘテロアリール基;ベンゾチアゾリル基(又はベンゾチアゾール基)、ベンゾチアジアゾール基等の二種以上のヘテロ原子(例えば、窒素と硫黄)を含むヘテロアリール基を含む。さらに、ピロール基、シロール基、ボロール基、ホスホール基、セレノフェン基、ゲルモール基、インドール基、インデン基、ベンゾシロール基、ベンゾボロール基、ベンゾホスホール基、ベンゾセレノフェン基、ベンゾゲルモール基、ジベンゾシロール基、ジベンゾボロール基、ジベンゾホスホール基、ジベンゾセレノフェン基、ジベンゾゲルモール基、ジベンゾチオフェン5-オキシド基、9H-フルオレン-9-オン基、ジベンゾチオフェン5,5-ジオキシド基、アザベンゾチオフェン基、アザベンゾフラン基、アザインドール基、アザインデン基、アザベンゾシロール基、アザベンゾボロール基、アザベンゾホスホール基、アザベンゾセレノフェン基、アザベンゾゲルモール基、アザジベンゾチオフェン基、アザジベンゾフラン基、アザカルバゾール基、アザフルオレン基、アザジベンゾシロール基、アザジベンゾボロール基、アザジベンゾホスホール基、アザジベンゾセレノフェン基、アザジベンゾゲルモール基、アザジベンゾチオフェン5-オキシド基、アザ-9H-フルオレン-9-オン基、アザジベンゾチオフェン5,5-ジオキシド基、ピリダジン基、トリアジン基、フェナントロリン基、ピラゾール基、イミダゾール基、トリアゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、オキサジアゾール基、チアジアゾール基、ベンゾピラゾル基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾオキサジアゾール基、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン基、5,6,7,8-テトラヒドロキノリン基等があげられる。
また、Aにおける置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基において、mが2以上の整数であるm価の芳香族複素環基としては、例えば、前記1価の芳香族複素環基中の芳香環から、m-1個の水素を除いたものがあげられる。また、ベンゾ[1,2-c:4,5-c′]ビス[1,2,5]チアジアゾール骨格(ベンゾビスチアジアゾール基)等があげられる。
【0017】
における置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基の炭素数は特に限定されず、例えば2~60、好ましくは3~40、より好ましくは5~30である。
におけるm価の脂肪族炭化水素基において、mは1以上の整数であり、例えば1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。
における置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基において、m=1である1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロオレフィン基等の飽和脂肪族炭化水素基があげられる。
また、Aにおける置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基において、mが2以上の整数であるm価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、前記1価の脂肪族炭化水素基から、m-1個の水素を除いたものがあげられる。
【0018】
における置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は特に限定されず、例えば2~60、好ましくは3~40、より好ましくは5~30である。
におけるm価の不飽和脂肪族炭化水素基において、mは1以上の整数であり、例えば1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~4である。
における置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基において、m=1である1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、アルケニル基、アルキニル基等があげられる。
また、Aにおける置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基において、mが2以上の整数であるm価の不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、前記1価の不飽和脂肪族炭化水素基から、m-1個の水素を除いたものがあげられる。
【0019】
化合物(I)における式(I)中のAとして、具体的には、例えば、下記の基を例示することができる。
ナフチル基、アリール(例えば、フェニル等)ナフチル基、アルキレン(例えば、エチレン等)架橋を有するナフチル基、アリーレン(例えば、フェニレン等)架橋を有するナフチル基等のナフチル基;
フェナントレニル基;
アントラセニル基、アリール(例えば、フェニル等)アントラセニル基、ジアリール(例えば、ジナフチル等)アントラセニル基、ジアリールボリル(例えば、ビス(トリアルキルフェニル)ボリル等)アントラセニル基等のアントラセニル基;
ピレニル基、アルキル(例えば、tert-ブチル等)ピレニル基等のピレニル基;
ビフェニル基、アルキレン(例えば、プロピレン、イソプロピレン等)架橋を有するビフェニル基等のビフェニル基;
ターフェニル基、テトラアリール(例えば、テトラフェニル等)ターフェニル基等のターフェニル基;
トリフェニレニル基;
2-アリール(例えば、フェニル等)エテニルフェニル基、1,2,2-トリアリール(例えば、トリフェニル等)エテニルフェニル基、2-アリール(例えば、フェニル等)エチニルフェニル基、フェニル基、アルキル(例えば、メチル)フェニル基、ジアルキル(例えば、ジメチル)フェニル基、アルコキシ(例えば、メトキシ)フェニル基、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)フェニル基、ジアリール(例えば、ジフェニル)アミノフェニル基、パーフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)フェニル基、アルキル(例えば、エチル)オキシカルボニルフェニル基、アルカノイル(例えば、アシル)フェニル基等のフェニル基;
アリール(例えば、フェニル等)置換カルバゾリル基;
アントラセン-9.10-ジオン基;
アリール(例えば、フェニル等)置換チエニル基、チオフェン基、ベンゾチアジアゾール基;
チオフェン基、ベンゾチアジアゾール基、
フェニレン基、アリール(例えば、ビス(3,5-メチルフェニル)等)ポルフィリン環、ピレン-テトラーイル基、ベンゾ[1,2-c:4,5-c′]ビス[1,2,5]チアジアゾール骨格(ベンゾビスチアジアゾール基);等の2価以上の価数を有する基等。
【0020】
における置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されない。
置換基としては、例えば、炭素数1~24、好ましくは1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等);炭素数1~24、好ましくは1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等);炭素数3~24、好ましくは3~18、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~8のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等);炭素数1~24、好ましくは1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8のアルケニル基(例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等);炭素数1~24、好ましくは1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等);炭素数5~24、好ましくは5~18、より好ましくは5~12、さらに好ましくは5~8のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等);炭素数7~24、好ましくは7~19、より好ましくは7~13、さらに好ましくは7~9のアリールアルキル基(例えば、モノフェニルメチル基、モノフェニルプロピル基、トリフェニルメチル基等);炭素数5~24、好ましくは5~18、より好ましくは5~12、さらに好ましくは5~8のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基等);炭素数4~24、好ましくは4~18、より好ましくは4~12、さらに好ましくは4~8のヘテロアリール基(例えば、チオフェニル基、フラニル基、カルバゾール基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラ二ル基、インドリル基、ピロリル基、ピリジル基等);炭素数1~24,好ましくは1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘプタノイル基並びにそのアシル基に含まれるカルボニル基が、エステル基又はアミド基で置換された基等);炭素数1~24,好ましくは1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8のアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基等);フッ素、炭素数1~30、好ましくは1~12のフッ素含有炭化水素基等のフッ素含有基;シアノ基、ニトロ基等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
置換基同士は、相互に架橋していてもよく、置換基全体で、環状構造(芳香族基)を形成してもよい。置換基は、さらに置換基を有してよい。
【0021】
(式(I)中の脱離基)
本発明のクロスカップリング反応方法で用いられる化合物(I)の脱離基は、クロスカップリング反応において、通常利用される脱離基であり、本発明のクロスカップリング反応を行うことができる脱離基であれば特に制限されない。
脱離基は、例えば、クロロ、ブロモ、ヨード、ジアゾニウム塩、トリフルオロメタンスルホネート及びカルボン酸誘導体等からなる群より選択される基があげられる。好ましくはクロロ、ブロモ、ヨード、ジアゾニウム塩及びトリフルオロメタンスルホネートからなる群より選択される基であり、より好ましくはクロロ、ブロモ、ヨードからなる群より選択される基である。
化合物(I)は、複数の脱離基を有することができる。この場合、複数の脱離基は、同一であっても異なっていてもよい。
本発明において、脱離基の数mは、整数であってクロスカップリング反応を行うことができる範囲であれば特に制限されない。例えば1~10、好ましくは1~8、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4とすることができる。
【0022】
(化合物(I)の具体例)
本発明のクロスカップリング反応方法において用いられる化合物(I)の具体例としては、例えば、実施例1~55で用いられる化合物(I-1)~(I-26)及び化合物(I-27)~(I-54)からなる群より選ばれる1種以上があげられる。なお、これらの構造式中、Meはメチル基を、Phはフェニル基を、それぞれ示す。
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
<化合物(II)>
(式(IIa)で表される化合物)
本発明のクロスカップリング反応方法で用いられる化合物(II)のうち、式(IIa);
-Y (IIa)
(式中、
は、置換基を有していてもよいn価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいn価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいn価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいn価の不飽和脂肪族炭化水素基を表す。
nは、Yの数で1以上の整数を表す。
Yは、各々独立して、
-B(OR)(OR
-NHR
-R-OH
-R-SH
を表す。
及びRは、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基を表す。RとRは相互に結合していてもよい。
は、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい1価の不飽和脂肪族炭化水素基を表す。
及びRは、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
で表される化合物は、前記化合物(I)とクロスカップリング反応をして、C-B結合、C-C結合、C-N結合、C-O結合及びC-S結合のいずれか1つ以上が形成されたクロスカップリング反応生成物を生成するものであれば特に限定されない。
【0025】
{式(IIa)中のA基}
式(IIa)中のA基における、置換基を有していてもよいn価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいn価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいn価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいn価の不飽和脂肪族炭化水素基としては、それぞれ、化合物(I)に係る式(I)中のA基における、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基と同様の基とすることができる。
また、式(IIa)中のA基における置換基は、化合物(I)に係る式(I)中のA基における置換基と同様のものとすることができる。
なお、式(IIa)中のA基と化合物(I)に係る式(I)中のA基は、それぞれ独立に任意の構造の基であって、同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
{Yとして -B(OR)(OR) を有する式(IIa)で表される化合物}
本発明において、Yとして -B(OR)(OR) を有する式(IIa)で表される化合物としては、芳香族ボロン酸又は芳香族ボロン酸エステルがあげられる。芳香族ボロン酸又は芳香族ボロン酸エステルは、化合物(I)とクロスカップリング反応をして、C-C結合が形成されたクロスカップリング生成物を与える限り、特に制限されない。
芳香族ボロン酸エステルは、芳香族ボロン酸アルキルエステル、芳香族ボロン酸アルキレングリコールエステル、芳香族ボロン酸アリールエステル、芳香族ボロン酸アリーレングリコールエステルを含む。
【0027】
式(IIa)中の-B(OR)(OR)基におけるR及びRは、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基を表す。RとRは相互に結合していてもよい。
ここで、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基は、化合物(I)に係る式(I)中のA基における、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基と同様の基とすることができる。
なお、式(IIa)中の-B(OR)(OR)基におけるR及びRと化合物(I)に係る式(I)中のAは、それぞれ独立した基であって、同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
本発明において、RとRが相互に結合した基としては、RとRが一緒に環状構造を形成したものである。芳香族基である場合には、例えば、1,2-フェニレン基等があげられる。また、炭化水素基である場合には、例えば、例えば、エチレン基、1,1,2,2-テトラメチルエチレン基(ピナコラト基)、ネオペンチルグリコラト基、プロピレン基等があげられる。
式(IIa)で表される化合物としての芳香族ボロン酸又は芳香族ボロン酸エステルは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式(IIa)で表される化合物としての芳香族ボロン酸又は芳香族ボロン酸エステルは、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0029】
{Yとして -NHR を有する式(IIa)で表される化合物}
本発明において、Yとして -NHR を有する式(IIa)で表される化合物としては、芳香族アミノ化合物があげられる。芳香族アミノ化合物は、化合物(I)とクロスカップリング反応をして、C-N結合が形成されたクロスカップリング生成物を与える限り、特に制限されない。
式(IIa)中の-NHR基におけるR基としては、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい1価の不飽和脂肪族炭化水素基を表す。
ここで、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい1価の不飽和脂肪族炭化水素基は、化合物(I)に係る式(I)中のA基における、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよいm価の芳香族複素環基、置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよいm価の不飽和脂肪族炭化水素基と同様の基とすることができる。
なお、式(IIa)中の-NHR基におけるR基と化合物(I)に係る式(I)中のA基は、それぞれ独立した基であって、同じであっても異なっていてもよい。
式(IIa)で表される化合物としての芳香族アミノ化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式(IIa)で表される化合物としての芳香族アミノ化合物は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0030】
{Yとして -R-OH を有する式(IIa)で表される化合物}
本発明において、Yとして -R-OH を有する式(IIa)で表される化合物としては、水酸基を有する芳香族化合物があげられる。水酸基を有する芳香族化合物は、化合物(I)とクロスカップリング反応をして、C-O結合が形成されたクロスカップリング生成物を与える限り、特に制限されない。
式(IIa)中の-R-OH基におけるR基としては、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表す。
ここで、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基は、化合物(I)に係る式(I)中のA基における、置換基を有していてもよいm価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよいm価の脂肪族炭化水素基における2価の基と同様の基とすることができる。
なお、式(IIa)中の-R-OH基におけるR基と化合物(I)に係る式(I)中のA基は、それぞれ独立した基であって、同じであっても異なっていてもよい。
式(IIa)で表される化合物としての水酸基を有する芳香族化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式(IIa)で表される化合物としての水酸基を有する芳香族化合物は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0031】
{Yとして -R-SH を有する式(IIa)で表される化合物}
本発明において、Yとして -R-SH を有する式(IIa)で表される化合物としては、化合物(I)とクロスカップリング反応をして、C-S結合が形成されたクロスカップリング反応生成物を与える限り、特に制限されない。
本発明において、Yとして -R-SH を有する式(IIa)で表される化合物としては、チオール基を有する芳香族化合物があげられる。チオール基を有する芳香族化合物は、化合物(I)とクロスカップリング反応をして、C-S結合が形成されたクロスカップリング生成物を与える限り、特に制限されない。
式(IIa)中の-R-SH基におけるR基としては、各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表す。
ここで、R基は、式(IIa)で表される化合物としての水酸基を有する芳香族化合物におけるR基と同様の基とすることができる。
なお、式(IIa)中の-R-SH基におけるR基と式(IIa)中の-R-OH基におけるR基は、それぞれ独立した基であって、同じであっても異なっていてもよい。
式(IIa)で表される化合物としてのチオール基を有する芳香族化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式(IIa)で表される化合物としてのチオール基を有する芳香族化合物は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0032】
(式(IIb)で表される化合物)
本発明のクロスカップリング反応方法で用いられる化合物(II)のうち、式(IIb);
(RO)(RO)B-B(OR)(OR) (IIb)
(式中、R~Rは、各々独立して、水素、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基を表す。RとRは相互に結合していてもよく、RとRは相互に結合していてもよい。)
で表される化合物は、前記化合物(I)とクロスカップリング反応をして、C-B結合が形成されたクロスカップリング反応生成物を生成するものであれば特に限定されない。
【0033】
式(IIb)で表される化合物としては、ジボロン酸エステル(ジボロン酸テトラエステル、ジボロン酸トリエステル、ジボロン酸ジエステル又はジボロン酸モノエステル)及びジボロン酸からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
ジボロン酸エステルとしては、例えばジボロン酸アルキルエステル、ジボロン酸アルキレングリコールエステル、ジボロン酸アリールエステル、ジボロン酸アリーレングリコールエステル等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。ジボロン酸としては、例えば、テトラヒドロキシジボラン(Tetrahydroxydiborane)等があげられる。
【0034】
式(IIb)中のR~Rとしての、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基としては、例えば各々独立して、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等からなる群より選択される1種以上の基があげられる。
式(IIb)中のR~Rとしての、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば各々独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
また、式(IIb)中のR~Rが、置換基を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基である場合、RとR及びRとRは、相互に結合していてもよい。例えば、R-R及びR-Rは、各々独立して、例えば、エチレン基、1,1,2,2-テトラメチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、ヘキシレン基(又は1,1,3-トリメチルプロピレン基)等からなる群より選ばれる基の1種以上であってもよいがを含む。
【0035】
前記R~Rにおける、芳香族炭化水素基及び脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基及びその数は、クロスカップリング反応を阻害するものでなければ特に限定されない。置換基としては、例えば、各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等からなる群より選ばれる1種以上の基があげられ、これらの置換基は1つ以上有することができる。また、置換基同士は、相互に架橋していてもよく、更に置換基を有してよい。
【0036】
式(IIb)で表される化合物において、ジボロン酸エステル類としては、より具体的には、例えば、
ビス(ピナコラト)ジボロン(Bis(pinacolato)diboron)、
ビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン(Bis(neopentylGlycolate)diboron)、
ビス(ヘキシレングリコラト)ジボロン(Bis(hexyleneGlycolato)diboron)、ビス(カテコラト)ジボロン(Bis(catecholato)diboron)等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
式(IIb)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式(IIb)で表される化合物は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0037】
(化合物(II)の使用量等)
化合物(II)の使用量は、化合物(I)との当量比を考慮し、適宜調整される。化合物(I)と化合物(II)の当量比(化合物(I)/化合物(II))は、クロスカップリング反応が進行する当量比であれば特に制限されることはない。例えば10/1~1/10であり、好ましくは5/1~1/5であり、より好ましくは3/1~1/3であり、さらに好ましくは2/1~1/2である。
【0038】
本発明において、化合物(II)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、式(IIa)で表される化合物の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、式(IIa)で表される化合物の1種以上と式(IIb)で表される化合物の1種以上とを組み合わせて用いることができる。
化合物(II)は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0039】
(化合物(II)の具体例)
本発明のクロスカップリング反応方法において用いられる化合物(II)の具体例としては、例えば、実施例1~55で用いられる化合物(II-1)~(II-25)及び化合物(II-26)~(II-45)からなる群より選ばれる1種以上があげられる。なお、これらの構造式中、Meはメチル基を、Phはフェニル基を、それぞれ示す。
【化7】
【0040】
<クロスカップリング反応の反応生成物>
本発明のクロスカップリング反応方法において用いられる反応生成物(III)の具体例としては、例えば、実施例1~56で得られた反応生成物(III-1)~(III-49)と、下記の化合物(III-50)~(III-118)があげられる。
なお、これらの構造式中、Meはメチル基を、t-Bu又はBu-tはターシャリーブチル基を、Phはフェニル基を、それぞれ示す。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0041】
本発明のクロスカップリング方法により得られる反応生成物は、上記(III-1)~(III-119)で具体的にあげた化合物以外に、多様な構造の化合物であってもよい。
例えば、下記式(IIIc)~(IIIf)で表される化合物があげられる。なお、式(IIIc)~(IIIf)に係る規定において、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基及び置換基は、それぞれ化合物(I)においてあげられているそれぞれの基と同様の基とできる。
これら式(IIIc)~(IIIf)で表される化合物は、着色材料、エネルギー線吸収材料、情報記録材料、波長変換材料、インジケーター材料、センサー材料等の成分として用いることができる。
【0042】
【化13】
(式(IIIc)中、
Ar1及びAr2は、それぞれ独立に式(Ar-1)~(Ar-3)を表す。
【化14】
(Ar-1)中のR14、(Ar-2)中のR15、及び(Ar-3)中のR16は、いずれも置換基を表す。
(Ar-1)中rは0又は1~5の整数、(Ar-2)中sは0又は1~7の整数、(Ar-3)中tは0又は1~8の整数である。R14、R15及びのR16が複数ある場合、互いに同一又は異なっていてもよい。
連結基Q1及びQ2は、それぞれ独立に式(Q-1)~(Q-4)で表される連結基群から選択される。Q1とQ2は、互いに同一又は異なっていてもよい。式中の*は結合位置を表す。
【化15】
(式(Q-2)中、R10及びR11は、それぞれ独立に、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(Q-3)中、R12は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(Q-4)中、R13は、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルコキシル基又は置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
【0043】
【化16】
(式(IIId)及び(IIIe)中、
20、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、カルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
20、X21、X22及びX23は、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はNR24を表す。
20、Y21、Y22及びY23は、それぞれ独立に、酸素原子、置換基を有しても良いアミノ基又はCR2526を表す。
24、R25及びR26は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
式(IIId)及び(IIIe)に複数含まれるR24、25及びR26はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0044】
【化17】
(式(IIIf)中、
環A40及び環A41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
40及びR41は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアシル基、カルボニル基、カルボキシル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいシリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。)
【0045】
<金属触媒>
本発明のクロスカップリング反応方法で用いられる金属触媒は、クロスカップリング反応に使用されてきた金属触媒であって、前記化合物(I)と前記化合物(II)のクロスカップリング反応を触媒(促進)し得るものであれば、特に制限されない。
【0046】
金属触媒を構成する金属(元素)は、前記化合物(I)と前記化合物(II)のクロスカップリング反応を触媒(促進)し得るものであれば、遷移金属(元素)であっても典型金属(元素)であってもよく、特に制限されない。
遷移金属(元素)としては、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネシウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
典型金属(元素)としては、例えば、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマスからなる群より選ばれる1種以上があげられる。
【0047】
本発明においては、触媒活性等の観点から、第4周期から第6周期に属する遷移金属(元素)があげられる。例えば、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、パラジウム、ニッケル、鉄、ルテニウム、白金、ロジウム、イリジウム、コバルトからなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、パラジウム、ニッケル、鉄、銅からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。
【0048】
金属触媒は、種々の形態のものを用いることができ、例えば以下(1)~(4)等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
(1)粉状又は多孔質形状の金属単体
(2)アルミナ、炭素、シリカ、ゼオライト等の担体に金属単体又は金属化合物を担持したもの
(3)金属の塩(塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、酸化物等)
(4)金属と錯体(オレフィン錯体、ホスフィン錯体、アミン錯体、アンミン錯体又はアセチルアセトナート錯体等)との錯化合物
【0049】
本発明においては、金属触媒として、パラジウム触媒が特に好ましく用いられる。
パラジウム触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1,5-ジエン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物;トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物;等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
金属触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
金属触媒は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0050】
(配位性化合物)
本発明においては、高選択的にクロスカップリング反応を進行させる観点から、金属触媒とともに、更にホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させて用いることができる。
配位性化合物は、前記化合物(I)と前記化合物(II)のクロスカップリング反応に使用し得るものであれば、特に制限されない。
配位性化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(メシチル)ホスフィン等のアリールホスフィン;トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン等のアルキルホスフィン;2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル(DavePhos)、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリイソプロピル-3,6-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル(tBuBrettPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-メチルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル等のBuchwaldホスフィン配位子;1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のニ座ホスフィン;1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリウムクロライド、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロライド、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリウムクロライド等のN-ヘテロカルベン配位子;t-BuP・HBF(トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート)等のトリアルキルホスホニウムテトラフルオロボラート等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
【0051】
パラジウム触媒にホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させる場合、上記パラジウム化合物とホスフィン化合物又はN-ヘテロカルベン化合物を事前に混合、調製したものを用いて反応させてもよい。例えば、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル) [2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸(SPhos Pd G3)を用いることができる。
【0052】
本発明においては、配位性化合物としてホスフィン化合物が好ましく用いられる。
ホスフィン化合物は、アルキルホスフィンを含むことが好ましい。
配位性化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
配位性化合物は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0053】
金属触媒の使用量又は金属触媒と配位性化合物との共存物における金属触媒の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物、反応生成物の各々の種類や各々の量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
金属触媒の使用量は、例えば、化合物(I)のモル量に価数を掛けて得たモル数を基準(100%)として、0.5モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、さらに好ましくは1.0モル%以上とすることができ、上限値は特に限定されないが、25モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下とすることができる。
【0054】
配位性化合物を金属触媒と共存させる場合、配位性化合物の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物、反応生成物の各々の種類や各々の量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
配位性化合物の使用量は、例えば、配位性化合物とパラジウム触媒のモル比(配位性化合物/パラジウム触媒)として10/1~1/10、好ましくは5/1~1/5、より好ましくは3/1~1/3、さらに好ましくは2/1~1/2とすることができる。
【0055】
<塩基>
本発明で用いられる塩基は、クロスカップリング反応に使用されてきた公知の塩基であって、前記化合物(I)と前記化合物(II)のクロスカップリング反応を促進し得るものであれば、特に制限されない。
塩基として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の無機塩基;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属;ナトリウム-メトキシド、ナトリウム-エトキシド、カリウム-メトキシド、カリウム-メトキシド、カリウム-エトキシド、リチウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、ジアザビシクロノネン(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N-エチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン等の第3級アミン塩基等の有機塩基;等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
塩基は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
塩基は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0056】
塩基の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物、反応生成物の各々の種類や各々の量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
塩基の使用量は、例えば、化合物(1)の当量を基準として、0.5当量以上、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1.0当量以上、さらに好ましくは1.2当量以上、最も好ましくは1.4当量以上とすることができる。塩基の使用量の上限は特に限定されないが、例えば10.0当量以下、好ましくは5.0当量以下、より好ましくは4.0当量以下、さらに好ましくは3.0当量以下とすることができる。
【0057】
<不飽和炭化水素化合物>
本発明で用いられる不飽和炭化水素化合物は、分子中に少なくとも1つの炭素-炭素不飽和二重結合又は少なくとも1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する、鎖状及び/又は環状の化合物である。
不飽和炭化水素化合物は、前記化合物(I)と前記化合物(II)のクロスカップリング反応を促進し得るものであれば、特に制限されることはない。
本発明で用いられる不飽和炭化水素化合物には、例えばベンゼンやナフタレン等の芳香族化合物が含まれない。また、前記化合物(I)、前記化合物(II)、前記金属触媒、前記配位性化合物に相当する化合物が含まれない。
【0058】
不飽和炭化水素化合物の炭素数は、例えば5~24、好ましくは5~18、より好ましくは5~12、さらに好ましくは6~10、最も好ましくは6~8である。
1つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する不飽和炭化水素化合物としては、例えば、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
1つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する不飽和炭化水素化合物としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
2つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する不飽和炭化水素化合物としては、例えば、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
2つの炭素-炭素不飽和二重結合を有する不飽和炭化水素化合物としては、例えば、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、シクロデカジエン等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する不飽和炭化水素化合物としては、例えば、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、デシン等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
1つの炭素-炭素不飽和三重結合を有する環状化合物(4)として、例えば、シクロオクチン、シクロデシン等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
不飽和炭化水素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和炭化水素化合物は、市販品をそのまま又は精製して用いることができる。
【0059】
不飽和炭化水素化合物の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物、反応生成物の各々の種類や各々の量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
不飽和炭化水素化合物の使用量は、例えば、クロスカップリング反応を行うために加えた全ての原料(例えば、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒(及び配位性化合物)、塩基、反応促進剤等)の質量の総和を基準として、0.01~3.0μL/mg、好ましくは0.05~1.0μL/mg、より好ましくは0.10~0.50μL/mgとすることができる。
【0060】
本発明のクロスカップリング反応方法において、不飽和炭化水素化合物を用いると、使用しない場合と比べて、顕著な反応性の向上が認められた。通常、実質的に無溶媒条件で機械的手段による処理を行い固相反応させると、出発原料である化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び反応生成物の拡散が効率的に行うことが困難である。特に、金属触媒の拡散を効率的に行うことが困難であり、クロスカップリング反応が進行しにくくなるおそれがある。
【0061】
本発明者らは、透過型電子顕微鏡を用いて反応後の金属触媒を観察したところ、不飽和炭化水素化合物を使用することで、金属触媒の凝集を抑制することができることを見出した。
不飽和炭化水素化合物は、金属触媒の凝集抑制に寄与するとともに反応性の向上に寄与していると考えられ、本発明のクロスカップリング反応方法が、優れた効果を奏すると本発明者らは推定できる。しかし、本発明は、このような推定により何ら限定されない。
【0062】
<溶媒>
本発明のクロスカップリング反応方法は、有機溶媒の存在量が、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下となる条件で行われる。このような条件は、実質的に有機溶媒を使用しない条件であるといえる。なお、本発明において、実質的に有機溶媒を使用しない条件とは、有機溶媒を全く使用しない態様、積極的に溶媒を用いない態様、及び有機溶媒を使用するものの溶媒効果が発揮されないほどに微量しか使用しない態様を表す。
【0063】
本発明において、有機溶媒の存在量は、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下である。通常0.5mL以下、好ましくは0.2mL以下、より好ましくは0.1mL以下、さらに好ましくは0.05mL以下、最も好ましくは0.02mL以下、最大限好ましくは0mL(有機溶媒不使用)である。
一般にクロスカップリング反応では、反応原料の合計1mmol当たり、1~2mLの有機溶媒が使用される。本発明は、有機溶媒の使用量が少ないことから、反応原料は、通常、反応開始時に少なくとも一部が有機溶媒等に溶解していない。場合によっては全てが有機溶媒等に溶解することなく、固体状態で存在し得る。
【0064】
本発明において、有機溶媒としては、クロスカップリング反応で使用される有機溶媒があげられる。
例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンデュレン、デカリン等の芳香族系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノ-ル、イソプロパノール、1-ブタノール、1,1-ジメチルエタノール、tert-ブタノール、2-メトキシエタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトニトリル、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、等の極性溶媒等;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ピリジン、酢酸等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
【0065】
<その他の成分>
本発明のクロスカップリング反応方法は、前記化合物(I)、前記化合物(II)、前記金属触媒、前記配位性化合物、前記不飽和炭化水素化合物、及び前記溶媒以外に、従来既知のクロスカップリング反応の促進剤等のその他の成分を用いることができる。
促進剤としては、例えば水(純水、イオン交換水等)等があげられる。
促進剤の使用量は、クロスカップリング反応が進行する使用量であれば特に制限されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物、反応生成物の各々の種類や各々の量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。促進剤の使用量は、例えば、化合物(1)の当量を基準として、20.0当量以下、好ましくは10.0当量以下、より好ましくは9.0当量以下とすることができる。使用量の下限は特にないが、例えば0.5当量以上、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1.0当量以上、さらに好ましくは1.2当量以上、最も好ましくは1.4当量以上とすることができる。
【0066】
<反応条件>
本発明のクロスカップリング反応方法は、化合物(I)と、化合物(II)を、少なくとも、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物の存在下、有機溶媒の存在量が、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下、60~500℃の条件で反応させる。本発明においては、クロスカップリング反応を行う際に、各成分を混合することが好ましい。
【0067】
混合する方法は、振とう、擦り合わせ、押圧、分散、混練、解砕等の混合可能ないずれの方法を用いてもよい。混合に際しては、機械的に混合処理を行う装置を用いることが好ましい。
そのような装置として、例えば、
ボールミル、ロッドミル、ジェットミル、SAGミル等の粉砕機;
回転式石臼、擂潰機(らいかいき)等の磨砕機;
水平円筒型、V型、二重円錐型、正方立方体型、S型及び連続V型等の(水平軸回転)容器回転型混合装置;
水平円筒型、V型、二重円錐型及びボール・ミル型等の(邪魔板羽根付き)容器回転型混合装置;
ロッキング型及びクロスロータリー型等の(回転振動)容器回転型混合装置;
リボン型、パドル型、単軸ロータ型及びバグ・ミル型等の(水平軸回転)固定容器型混合装置;
リボン型、スクリュー型、遊星型、タービン型、高速流動型、回転円盤型及びマーラー型等の(垂直軸回転)固定容器型混合装置;
振動ミル型及びふるい等の(振動)固定容器型混合装置;
不均一流動層、旋回流動層、上昇管付き型及びジョットポンプ型等の(流動化)流体運動型混合装置;
重力型及びスタティックミキサー等の(重力)流体運動型混合装置等からなる群より選ばれる1種以上があげられる。
本発明においては、クロスカップリング反応が進行する限り、その方法及び使用される装置は、特に制限されることはない。
例えば、混合装置について、坂下「粉体混合プロセス技術」色材、77(2)、75-85(2004)の表5及び図9等記載の粉体混合装置を参照することができる。
【0068】
本発明のクロスカップリング反応方法において、混合を行う際の混合速度は、特に限定されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物、反応生成物の各々の種類や各々の量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
例えば、本発明のクロスカップリング反応方法において、各成分の混合をボールミルにより行う際には、振とうを5Hz以上、好ましくは10Hz以上、より好ましくは20Hz以上で行うことができる。
【0069】
(反応温度)
本発明のクロスカップリング反応方法において、反応温度(混合時の反応容器内温度)は、60~500℃である。
反応温度を60~500℃に制御する方法は特に限定されないが、化学反応を行う際に用いられる温度制御方法を用いることができる。例えば、温風を用いて反応容器内の温度を制御する方法、反応容器を所定の温度の熱媒体で覆い反応容器内の温度を制御する方法、発熱体を設けて反応容器内温度を制御する方法等があげられる。
本発明においては、ヒートガンにより発生させた温風を反応容器に当て反応容器内の温度を制御する方法が、安全性や温度制御操作の容易性の観点等から好ましい。
【0070】
(反応雰囲気)
本発明のクロスカップリング反応方法において、反応雰囲気(混合時の反応容器内の雰囲気)は、特に限定されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物、反応生成物の各々の種類や各々の量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
例えば、特に雰囲気調整を行わず、大気雰囲気で行うことができる。また、使用する化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物や反応生成物に応じて、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行うことができる。
【0071】
(反応時間)
本発明のクロスカップリング反応方法において、反応時間(混合時間;機械的手段による処理を行う時間)は、特に限定されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物の各々の種類や各々の量、反応温度等を考慮し、適宜定めることができる。
例えば、1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上とすることができる。反応時間の上限は特に限定されないが、例えば、10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下とすることができる。
本発明のクロスカップリング反応方法は、少なくとも、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物の存在下、有機溶媒の存在量が、化合物(I)及び化合物(II)の合計1mmol当り0.7mL以下、及び60~500℃という条件を特に採用することで、短時間で、高収率で反応生成物を得ることができる。
【0072】
(反応後の処理等)
本発明のクロスカップリング反応方法においては、得られた反応生成物を、必要に応じて精製することができる。反応生成物の精製方法は、特に制限されず、例えば、再結晶、カラムクロマトグラフィー、溶媒による洗浄等の方法を用いることができる。
【0073】
[反応装置]
本発明の反応装置に備えられている反応容器は、化合物の反応装置に備えることができる各種の反応容器であれば特に限定されず、化合物(I)、化合物(II)、金属触媒、塩基、及び不飽和炭化水素化合物、反応生成物の各々の種類や各々の量、反応温度、雰囲気、反応圧力等を考慮して、適宜定めることができる。例えば、本発明において、機械的に混合処理を行う装置(例えば、ボールミル等)を用いる場合には、ボールミルジャー等を反応容器として用いることができる。
本発明の反応装置に備えられている反応容器内の収容物を撹拌する手段は、化合物の反応装置に備えることができる各種の撹拌手段であれば特に限定されない。本発明においては、前記[クロスカップリング反応方法]の<反応条件>に記載した、機械的に混合処理を行う装置による手段を用いることができる。機械的に混合処理を行う装置としては、例えば、ボールミルが好ましく用いられる。
【0074】
本発明の反応装置に備えられている反応容器内の温度調整手段は、60~500℃の温度下でクロスカップリング反応が行われるように温度調整する手段であれば特に限定されない。本発明においては、前記[クロスカップリング反応方法]の<反応条件>の(反応温度)に記載した温度調整手段を用いることができる。例えば、ヒートガンを用いて反応容器を加熱する方法が好ましく用いられる。
本発明の反応装置は、さらに、計量手段、減圧又は加圧手段、雰囲気調整手段(気体導入又は排出手段)、各種成分の投入手段、各種成分・反応生成物の取出手段、精製手段、分析手段等の、化合物の反応装置に備えることができる各種の手段を備えていてもよい。
【0075】
[式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物及びその製造方法]
本発明のクロスカップリング反応方法を用いることで、式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される新規化合物を製造することができる。
【化18】
(式中、pは5~30の整数、qは5~30の整数を表す。)
【0076】
式(IIIa)において、pは5~30の整数であり、好ましくは5~20、より好ましくは5~15、さらに好ましくは5~10である。
式(IIIb)において、qは5~30の整数であり、好ましくは5~20、より好ましくは5~15、さらに好ましくは5~10である。
式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物の製造方法としては、具体的には、例えば、実施例1~4に記載した方法があげられる。
式(IIIa)又は(IIIb)のいずれかで表される化合物は、導電性プラスチックとして知られているポリチオフェン又はポリフェニレンの低重合物に相当するものであるが、このような低分子量(低核体)の化合物を精密に合成する方法はこれまで知られていなかった。
これらの化合物は、有機発光ダイオード(OLED)や有機半導体材料、導電性有機材料の合成用原料化合物、導電性有機材料用の電導度制御材等の用途において有用である。
【実施例0077】
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明する。これらの実施例は、本発明の一態様にすぎない。本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
本実施例で使用した化合物は、特に記載しない限り、市販品をそのまま精製することなく使用した。
本実施例で使用した化合物(I)、化合物(II)、配位性化合物及び反応生成物は、それぞれ下記のとおりである。なお、これらの構造式中、Meはメチル基、Etはエチル基、iPrはイソプロピル基、tBuはターシャリーブチル基、B(Pin)はボロン酸ピナコールエステル基を、それぞれ示す。
【0078】
[化合物(I)]
【化19】
【0079】
[化合物(II)]
【化20】
【0080】
[配位性化合物]
【化21】
【0081】
[反応生成物]
【化22】
【化23】
【0082】
実施例及び比較例において、ボールミルを用いてクロスカップリング反応を行う際には、ステンレス製ボールミルジャーに各試薬を投入し、ヴァーダー・サイエンティフィック社(Verder Scientific Co.,Ltd.(旧レッチェ社(Retsch))製のボールミルMM400型を使用した。
ボールミルを用いてクロスカップリング反応を行う際の加熱は、ヒートガン(Takagi社製,HG-1450B)でボールミルジャーの外側を所定の温度で加熱した。
ヒートガンの設定温度と、ボールミルジャー内部の温度(反応系の温度)の関係をThermographic imageを用いて確認したところ、次のとおりであった。
【0083】
【表1】
【0084】
[実施例1]
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、化合物(I)として(I-1)を0.15mmol(1.0 eqiv)、化合物(II)として(II-1)を0.36mmol(化合物(I)に対して2.4 eqiv)、金属触媒として酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))を0.015mmol(化合物(I)に対して10mol%)、配位性化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物(I)に対して15mol%)、塩基としてフッ化セシウム(CsF)を0.9mmol(化合物(I)に対して3.0 eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物(I)に対して7.2 eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分間振とうして撹拌(30Hz)しクロスカップリング反応を行った。
【化24】
【0085】
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して触媒及び無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで対応するクロスカップリング反応生成物(III-1)を単離した。単離収率(Isolated yield)は96%であった。
反応生成物(III-1)について、IR analysis、PXRD analysis及びEI-MS analysisを行った。それぞれの結果を図1図3に示す。
【0086】
[比較例1]
化合物(I)として(I-1)を、化合物(II)として(II-1)を、金属触媒としてPd(OAc)を、配位性化合物としてSPhosを、及び塩基としてCsFを、それぞれ実施例1と同量となるように反応容器に入れ、さらに化合物(I)の濃度が0.1M(0.1mol/L)となるようにトルエンを反応容器に加えて混合した。得られた混合液を120℃で24時間加熱し、クロスカップリング反応を行った。反応後、実施例1と同様にして反応生成物(III-1)の単離を試みたが、反応生成物(III-1)の生成を確認できず、NMR収率(NMR yield)収率は0%(n.r;No Reaction)と判断された。
【0087】
[実施例2~4]
化合物(I)及び化合物(II)として表2に示すものを用いたほかは実施例1と同様にして、クロスカップリング反応を行い表2に示す対応する反応生成物(III)を得た。対応する反応生成物(III)の種類及びその単離収率を表2に併せて示す。
【0088】
[比較例2~4]
化合物(I)及び化合物(II)として表2に示すものを用いたほかは比較例1と同様にして、クロスカップリング反応を行うとともに表2に示す対応する反応生成物(III)のNMR収率を求めた。対応する反応生成物(III)の種類及びそのNMR収率を表2に併せて示す。
【0089】
【表2】
【0090】
[実施例5]
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、化合物(I)として(I-3)を0.15mmol(1.0 eqiv)、化合物(II)として(II-5)を0.36mmol(化合物(I)に対して2.4 eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)を0.015mmol(化合物(I)に対して10mol%)、配位性化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物(I)に対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物(I)に対して6.0 eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物(I)に対して7.2 eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分間振とうして撹拌(30Hz)してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して触媒及び無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで対応する反応生成物(III-5)を単離した。単離収率は99%であった。結果を表3に示す。
【0091】
[比較例5]
ヒートガンでジャーを加熱しなかったほかは、実施例5と同様にして、クロスカップリング反応を行うとともに反応生成物(III-5)のNMR収率を求めたが、反応生成物(III-5)の生成を確認できず、NMR収率は0%(n.r;No Reaction)と判断された。結果を表3に示す。
【0092】
[実施例6~29]
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、表3又は表4に示す化合物(I)を0.3mmol(1.0 eqiv)、表3又は表4に示す化合物(II)を0.36mmol(化合物(I)に対して1.2 eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)を0.009mmol(化合物(I)に対して3mol%)、配位性化合物としてSPhosを0.0135mmol(化合物(I)に対して4.5mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物(I)に対して3.0 eqiv)、反応促進剤として水を1.11mmol(化合物(I)に対して3.7 eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、表3又は表4に示す温度に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら表3又は表4に示す時間振とうして撹拌(30Hz)してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して触媒及び無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで表3又は表4に示す対応する反応生成物(III)を単離した。対応する反応生成物(III)の種類及びその単離収率を表3又は表4に示す。
【0093】
[実施例29~31]
配位性化合物として、SPhosに代えてDavaPhos(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2′-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル)を化合物(I)に対して4.5mol%用いたほかは、実施例21と同様にクロスカップリング反応を行うとともに反応生成物(III-19)の単離収率を求めた。結果を表4に示す。
【0094】
[比較例6~28]
化合物(I)及び化合物(II)として表3又は表4に示すものを用い、ヒートガンでジャーを加熱しなかったほかは、実施例6~29と同様にし、クロスカップリング反応を行うとともに表3又は表4に示す対応する反応生成物(III)のNMR収率を求めた。対応する反応生成物(III)の種類及びそのNMR収率を表3又は表4に示す。なお、反応生成物(III)の生成を確認できない場合は、NMR収率を0%(n.r;No Reaction)とした。
【0095】
[実施例32]
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、化合物(I)として(I-6)を0.3mmol(1.0 eqiv)、化合物(II)として(II-11)を0.36mmol(化合物(I)に対して1.2 eqiv)、金属触媒及び配位性化合物としてSPhos Pd G3を0.009mmol(化合物(I)に対して3mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物(I)に対して3.0 eqiv)、反応促進剤として水を1.11mmol(化合物(I)に対して3.7 eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら60分振とうして撹拌(30Hz)してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して触媒及び無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで対応する反応生成物(III-21)を単離した。単離収率は79%であった。結果を表4に示す。
【0096】
[比較例29]
ヒートガンでジャーを加熱しなかったほかは実施例32と同様にして、クロスカップリング反応を行うとともに反応生成物(III-21)のNMR収率を求めた。反応生成物(III-21)の生成を確認できず、NMR収率は0%(n.r;No Reaction)と判断された。結果を表4に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
[実施例33~37]
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、表5に示す化合物(I)を0.15mmol(1.0 eqiv)、表5に示す化合物(II)を0.36mmol(化合物(I)に対して2.4 eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)を0.015mmol(化合物(I)に対して10mol%)、配位性化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物(I)に対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物(I)に対して6.0 eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物(I)に対して7.2 eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら5分振とうして撹拌(30Hz)してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して触媒及び無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで表5に示す対応する反応生成物(III)を単離した。対応する反応生成物(III)の種類及びその単離収率を表5に併せて示す。
【0100】
[比較例30~33]
化合物(I)及び化合物(II)として表5に示すものを用い、ヒートガンでジャーを加熱せず、90分振とうして撹拌(30Hz)したほかは、実施例33~37と同様にして、クロスカップリング反応を行うとともに表5に示す対応する反応生成物(III)のNMR収率を求めた。結果を表5に示す。なお、対応する反応生成物(III)の生成を確認できない場合は、NMR収率を0%(n.r;No Reaction)とした。
【0101】
【表5】
【0102】
[実施例38~43]
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、表6に示す化合物(I)を0.15mmol(1.0eqiv)、表6に示す化合物(II)を0.36mmol(化合物(I)に対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)を0.015mmol(化合物(I)に対して10mol%)、配位性化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物(I)に対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物(I)に対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物(I)に対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら5分振とうして撹拌(30Hz)してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して触媒及び無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで表6に示す対応する反応生成物(III)を単離した。対応する反応生成物(III)の種類及びその単離収率を表6に示す。
【0103】
[比較例34、36~39、41]
化合物(I)及び化合物(II)として表6に示すものを用い、ヒートガンでジャーを加熱しなかったほかは、実施例38~43と同様にして、クロスカップリング反応を行うとともに表6に示す対応する反応生成物(III)のNMR収率を求めた。対応する反応生成物(III)の種類及びそのNMR収率を表6に示す。なお、対応する反応生成物(III)の生成を確認できない場合は、NMR収率を0%(n.r;No Reaction)とした。
【0104】
[比較例35、40、42]
化合物(I)及び化合物(II)として表6に示す化合物を、金属触媒としてPd(OAc)を、配位性化合物としてSPhosを、及び塩基としてCsFを、それぞれ実施例38~43と同量となるように反応容器に入れ、さらに化合物(I)の濃度が0.1M(0.1mol/L)となるようにトルエンを反応容器に加えて混合した。得られた混合液を120℃で24時間加熱し、クロスカップリング反応を行うとともに表6に示す対応する反応生成物(III)のNMR収率を求めた。対応する反応生成物(III)の種類及びその単離収率を表6に示す。なお、対応する反応生成物(III)の生成を確認できない場合は、NMR収率を0%(n.r;No Reaction)とした。
【0105】
【表6】
【0106】
[実施例44~50]
直径5mmのステンレス製ボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、表7に示す化合物(I)を0.15mmol(1.0eqiv)、表7に示す化合物(II)を0.36mmol(化合物(I)に対して2.4eqiv)、金属触媒としてPd(OAc)を0.015mmol(化合物(I)に対して10mol%)、配位性化合物としてSPhosを0.0225mmol(化合物(I)に対して15mol%)、塩基としてCsFを0.9mmol(化合物(I)に対して6.0eqiv)、反応促進剤として水を1.08mmol(化合物(I)に対して7.2eqiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら5分振とうして撹拌(30Hz)してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、ショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通して触媒及び無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで表7に示す対応する反応生成物(III)を単離した。対応する反応生成物(III)の種類及びその単離収率を表7に示す。
【0107】
[比較例43~49]
化合物(I)及び化合物(II)として表7に示す化合物を、金属触媒としてPd(OAc)を、配位性化合物としてSPhosを、及び塩基としてCsFを、それぞれ実施例44~55と同量となるように反応容器に入れ、さらに化合物(I)の濃度が0.1M(0.1mol/L)となるようにトルエンを反応容器に加えて混合した。得られた混合液を120℃で24時間加熱し、クロスカップリング反応を行うとともに表7に示す対応する反応生成物(III)のNMR収率を求めた。対応する反応生成物(III)の種類及びそのNMR収率を表7に併せて示す。なお、対応する反応生成物(III)の生成を確認できない場合は、NMR収率を0%(n.r;No Reaction)とした。
【0108】
【表7】
【0109】
[実施例48~50]
直径5 mmのステンレス製のボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、化合物(I)として(I-23)(pigment violet 23)を0.1mmol(1.0equiv)、表8に示す化合物(II)を0.24mmol(2.4equiv)、金属触媒としてPd(OAc)を0.01mmol(化合物(I)に対して10mol%)、配位性化合物としてSPhosを0.015mmol(化合物(I)に対して15mol%)、塩基としてCsFを0.6mmol(化合物(I)に対して6.0equiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、250℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら90分振とうして撹拌(30Hz)してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、濾過することで無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで表8に示す対応するカップリング生成物を単離した。なお、実施例48では、反応生成物(III-42)が26.9mg(0.03mmol)得られ、単離収率は30%であった。実施例49及び50の各反応生成物の単離収率は、表8に示すとおりである。
【0110】
[比較例47、49、51]
化合物(I)及び化合物(II)として表8に示す化合物を用い、ヒートガンでジャーを加熱しなかったほかは、実施例48~50と同様にし、クロスカップリング反応を行った。表8に示す対応する反応生成物(III)の生成を1H-NMRで確認できなかった。なお、表8では、NMR収率を0%(n.r;No Reaction)とした。
【0111】
[比較例48、50、52]
化合物(I)及び化合物(II)として表8に示す化合物を、金属触媒としてPd(OAc)を、配位性化合物としてSPhosを、及び塩基としてCsFを、それぞれ実施例48~50と同量となるように反応容器に入れ、さらに化合物(I)の濃度が0.1M(0.1mol/L)となるようにトルエンを反応容器に加えて混合した。得られた混合液を120℃で24時間加熱し、クロスカップリング反応を行った。表8に示す対応する反応生成物(III)の生成を1H-NMRで確認できなかった。なお、表8では、NMR収率を0%(n.r;No Reaction)とした。
【0112】
【表8】
【0113】
[実施例51~55]
直径5mmのステンレス製のボールの入った1.5mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、表9に示す化合物(I)を0.3mmol(1.0equiv)、表9に示す化合物(II)を0.3mmol(1.0equiv)、金属触媒としてPd(OAc)を0.015mmol(化合物(I)に対して5mol%)、配位性化合物としてt-BuP・HBF(トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート)を0.015mmol(化合物(I)に対して5mol%)、塩基としてNa(O-tert-Bu)(ナトリウム-tert-ブトキシド)を0.45mmol(化合物(I)に対して1.5equiv)、不飽和炭化水素化合物として1,5-シクロオクタジエンを0.2μL/mg加えた。ボールミルジャーの蓋をしめ、ボールミルに装着し、200℃に設定したヒートガンでジャーを加熱しながら30分間振とうして撹拌(30Hz)してクロスカップリング反応を行った。
反応終了後、反応混合物をジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、濾過することで無機塩を除いた。エバポレーターでジクロロメタンを除いたのち、クルード混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで対応する反応生成物(III)を単離した。なお、実施例51では、反応生成物(III-45)が126.0mg(0.292mmol)得られ、単離収率は97%であった。実施例52~55の各反応生成物の種類及びその単離収率は、表9に示すとおりである。
【0114】
[比較例53~57]
化合物(I)及び化合物(II)として表9に示すものを用い、ヒートガンでジャーを加熱せず、90分振とうして撹拌(30Hz)したほかは、実施例51~55と同様にし、クロスカップリング反応を行った。表9に示す対応する反応生成物(III)の生成を1H-NMRで確認できなかった。なお、表9では、NMR収率を0%(n.r;No Reaction)とした。
【0115】
【表9】
【0116】
実施例1における反応生成物(III-1)について、IR analysis、PXRD analysis及びEI-MS analysisを行った。それぞれの結果を図1図3に示す。
【0117】
実施例1~4、38、42~50及び比較例1~4、35、40、42~49から、本発明に係るクロスカップリング反応方法は、従来の有機溶媒中で行うクロスカップリング反応方法と比較して、収率が大幅に高くなっていることがわかる。さらに、実施例1、3、42、47~50と比較例1、3、40、46~46にあるように、本発明に係るクロスカップリング反応方法は、有機溶媒中でクロスカップリング反応を行うことができない反応原料を用いた場合でも、反応生成物を得られることがわかる。
【0118】
実施例5~37、比較例5~33から、本発明に係るクロスカップリング反応方法は、60~500℃の条件で行うことで、加熱をしないで行うクロスカップリング反応方法と比較して、収率が大幅に高くなっていることがわかる。さらに、実施例5、17、22、23、32、34と比較例5、17、22、23、29、30にあるように、本発明に係るクロスカップリング反応方法は、加熱をしない条件ではクロスカップリング反応を行うことができない反応原料を用いた場合でも、反応生成物を得られることがわかる。用いることが可能となった。
【0119】
実施例1~56から、本発明に係るクロスカップリング反応方法は、多種多様な化合物を出発原料として、有機溶媒を使用することなく、簡便な手段により、短時間に高収率で反応生成物を得ることができることがわかる。特に、有機溶媒に対する溶解性が低い化合物に対しても、クロスカップリング反応を行うことが可能となることがわかる。
これより、本発明は、産業上非常に有用な発明であることがわかる。
図1
図2
図3