(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182880
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】フッ素及びアルミニウム含有水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20231220BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C02F1/44 E
B01D61/02 500
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022090349
(22)【出願日】2022-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】亀田 英邦
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006HA41
4D006JA03Z
4D006JA32A
4D006KA02
4D006KA03
4D006KA52
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA57
4D006KB15
4D006KD15
4D006KD27
4D006KE12Q
4D006KE15R
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB08
4D006PB27
4D006PB28
4D006PC01
(57)【要約】
【課題】アルミニウムによるROのフラックス低下を抑制することができるフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法を提供する。
【解決手段】フッ素及びアルミニウム含有水に、該フッ素及びアルミニウム含有水中のアルミニウム濃度の100倍量以上のキレート剤を添加した後、逆浸透膜装置に通水するフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法。フッ素及びアルミニウム含有水のpHは4~6が好適である。キレート剤としてはEDTAが好適である。処理対象水中のFイオン濃度は50~700mg/Lが好適であり、Alイオン濃度は、0.01~1mg/Lが好適である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素及びアルミニウム含有水に、該フッ素及びアルミニウム含有水中のアルミニウム濃度の100倍量以上のキレート剤を添加した後、逆浸透膜装置に通水するフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法。
【請求項2】
前記フッ素及びアルミニウム含有水のpHが4~6である請求項1のフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法。
【請求項3】
前記キレート剤がEDTAである請求項1又は2のフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素及びアルミニウム含有水の処理方法に関し、特にフッ素及びアルミニウム含有水を逆浸透(RO)膜処理するフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ディスプレイ、半導体などの電子工業分野の製造工場においては多種類の薬品が使用されており、主としてエッチング、洗浄などの生産工程ではフッ化水素/フッ化水素酸(HF)、フッ化ホウ素酸(HBF4)、フッ化アンモニウム(NH4F)等のフッ化物が多量に用いられる。このため、これらの工程からは、このようなフッ化物を含有する排水が大量に発生する。特にシリコンウエハのエッチング工程からは、フッ化物と共にシリカをも含む排水が排出される。また、フッ化アンモニウムが使用されている工程からは更にアンモニウム成分を含む排水が排出される。
【0003】
従来、フッ素及びアルミニウム含有水の処理方法としては、フッ化物含有水をRO膜処理して脱塩水を回収する方法が広く知られている。例えば、特許文献1には、フッ素濃度4~43mg/Lの重金属含有排水をpH調整した後、凝集処理し、その後RO処理することが記載されている。特許文献1には、重金属含有排水がアルミニウムを含有することは記載されていない。
【0004】
特許文献2には、Caイオン含有工業用水とFイオン含有電子部品製造排水との混合水をpH3~6に調整した後、キレート剤としてEDTAを添加した後、RO処理することが記載されている。特許文献2には上記混合水がアルミニウムを含有することについての記載はない。
【0005】
特許文献3には、電子部品製造工程排水にカルシウム塩を添加した後、凝集処理し、次いで固液分離処理した後、キレート剤を添加し、その後、RO処理することが記載されている。特許文献3の実施例には、原水としてCa、Mg、Al、P、NH4、F及びSiを含み、F濃度565mg/L、Al濃度0.2mg/Lである原水を凝集処理した後、固液分離し、次いでEDTAを0.0025mmol/L添加した後、RO処理することが記載されているが、RO給水中のAl濃度については記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-340450号公報
【特許文献2】特開2001-104955号公報
【特許文献3】特開2014-213264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フッ素及びアルミニウム含有水をRO処理する場合、フッ素及びアルミニウムの濃度及びpH条件によっては氷晶石等がRO膜面に析出し、フラックス(透過流束)を低下させることが見出された。
【0008】
本発明は、アルミニウムによるROのフラックス低下を抑制することができるフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法は、フッ素及びアルミニウム含有水に、該フッ素及びアルミニウム含有水中のアルミニウム濃度の100倍量以上のキレート剤を添加した後、逆浸透膜装置に通水する。
【0010】
本発明の一態様では、前記フッ素及びアルミニウム含有水のpHが4~6である請。
【0011】
本発明の一態様では、前記キレート剤がEDTAである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法によると、フッ素及びアルミニウムをRO処理する場合のROフラックス低下を抑制し、効率よく処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例及び比較例で用いた試験装置の構成図である。
【
図2】実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
【
図3】実施例及び比較例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0015】
[処理対象水]
本発明方法の処理対象水としてはFを使用する工程排水が例示されるが、中でも電子部品製造工程排水が好適である。
【0016】
この処理対象水中のFイオン濃度は50~700mg/L、特に50~150mg/Lが好適であり、Alイオン濃度は、0.01~1mg/L、特に0.01~0.1mg/Lが好適である。
【0017】
その他の主なイオン濃度としては、次のものが挙げられる。
【0018】
Na:20~200mg/L、特に100~150mg/L
Ca:0~50mg/L、特に0.01~1mg/L
Fe:0~50mg/L、特に0.01~1mg/L
Mg:0~50mg/L、特に0.01~1mg/L
Mn:0~50mg/L、特に0.01~1mg/L
Si:0~100mg/L、特に0~50mg/L
NH4
+(NH4-Nとして):20~200mg/L、特に20~100mg/L
【0019】
処理対象水中のTOC濃度は0~10mg/L、特に0~3mg/L程度が好適である。
【0020】
処理対象水のpHは、特に限定されないが、RO給水のpHが4~6特に5.0~5.5程度となるように、必要に応じNaOH、塩酸、硫酸等によりpH調整することが好ましい。
【0021】
処理対象水は、必要に応じ除濁処理されることが好ましい。除濁処理としては、砂濾過、UF膜濾過などが例示される。
【0022】
[キレート剤]
本発明では、RO給水に対しキレート剤をRO給水中のAl濃度に対し100倍以上、好ましくは100~1500倍、より好ましくは200~1500倍、特に好ましくは300~1500倍となるように添加する。
【0023】
キレート剤としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)が好適であるが、クエン酸等であってもよい。キレート剤は水溶液として添加されることが好ましい。
【実施例0024】
[実施例1]
図1に示す平膜試験装置を用い、下記に示す水質の排水にEDTAを100mg/L添加して回収率75%にてRO処理した。EDTA/Al=100/0.07=1429である。
【0025】
この排水は、電子部品製造工程排水をUF膜にて濃縮したものである。
【0026】
[排水の水質]
Al:0.07mg/L
Na:113mg/L
F:138mg/L
Si:7.5mg/L
pH:5.0
シリカ系スケール防止剤:20mg/L
【0027】
図1(a),(b)に示す平膜試験装置で使用したRO膜は日東電工社製「ES20」で、回収率は80%とした。
【0028】
この平膜試験装置において、RO膜供給水は、配管11より高圧ポンプ4で、密閉容器1のRO膜をセットした平膜セル2の下側の原水室1Aに供給される。
図1(b)に示すように、密閉容器1は、原水室1A側の下ケース1aと、透過水室1B側の上ケース1bとで構成され、下ケース1aと上ケース1bとの間に、平膜セル2がOリング8を介して固定されている。平膜セル2はRO膜2Aの透過水側が多孔質支持板2Bで支持された構成とされている。平膜セル2の下側の原水室1A内はスターラー3で攪拌子5を回転させることにより攪拌される。RO膜透過水は平膜セル2の上側の透過水室1Bを経て配管12より取り出される。濃縮水は配管13より取り出される。密閉容器1内の圧力は、給水配管11に設けた圧力計6と、濃縮水取出配管13に設けた圧力調整バルブ7により調整される。
【0029】
この平膜試験装置に上記排水を通水したときのフラックス比の経時変化を
図2に示す。なお、フラックス比は、初期純水フラックスに対する比を表わす。
【0030】
[実施例2,3、比較例1]
EDTAの添加量を下記の通りとした他は、実施例1と同一条件にて試験を行った。フラックス比の経時変化を
図2に示す。
【0031】
実施例2:80mg/L(EDTA/Al=1143)
実施例3:60mg/L(EDTA/Al=857)
比較例1:0mg/L(EDTA/Al=0)
【0032】
<考察>
図2の通り、EDTAをAlの約800~1500倍添加した実施例1~3は、EDTAを添加しなかった比較例1に比べてフラックスの低下が抑制される。
【0033】
[実施例4、比較例2]
実施例2及び比較例1において、上記排水に試薬塩化アルミニウムを添加してAl濃度を0.2mg/Lとした排水を処理した。
【0034】
EDTA添加量は、実施例2及び比較例1と同じく、
実施例4:80mg/L(EDTA/Al=80/0.2=400)
比較例2:0mg/L(EDTA/Al=0)
である。フラックス比の経時変化を
図3に示す。
【0035】
図3の通り、EDTAをAlの400倍添加することによりフラックスの低下が抑制されることが認められた。
フッ素及びアルミニウム含有水に、該フッ素及びアルミニウム含有水中のアルミニウム濃度の100倍量以上のキレート剤を添加した後、逆浸透膜装置に通水するフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法であって、前記フッ素及びアルミニウム含有水に対する前記キレート剤の添加量が60mg/L以上であるフッ素及びアルミニウム含有水の処理方法。