IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キユーピー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図1
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図2
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図3
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図4
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図5
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図6
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図7
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図8
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図9
  • 特開-熱収縮性フィルム及び容器 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182959
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】熱収縮性フィルム及び容器
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/04 20060101AFI20231220BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20231220BHJP
   B65D 65/04 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G09F3/04 C
B65D23/08 B
B65D23/08 A
B65D65/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096262
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 翔太
(72)【発明者】
【氏名】和手 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】山岡 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩太郎
【テーマコード(参考)】
3E062
3E086
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB01
3E062AC02
3E062AC06
3E062AC08
3E062BA20
3E062BB06
3E062DA07
3E062JA01
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB05
3E062JC07
3E086AA22
3E086AB01
3E086AD04
3E086AD16
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB55
3E086BB62
3E086BB67
3E086CA01
3E086DA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、製造コストを増加することなく、空回りを抑制することができる熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】熱収縮性フィルム30は、口部12と、筒状の胴部16と、口部12から胴部16へ拡径して連続する肩部14と、を備える容器の少なくとも肩部14の一部及び胴部16の一部の外周に装着される。熱収縮性フィルム30は、熱収縮性を有する基材32と、基材32の一方の面に設けられた印刷層34と、印刷層34を覆うように設けられた保護層36と、を備える。一方の面は、印刷層34及び保護層36が設けられていない滑り止め領域38を有する。滑り止め領域38は、熱収縮性フィルム30が容器に装着された場合に、胴部16より高い位置にあって、かつ、肩部14の少なくとも一部に対向する位置にある。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー付きキャップが装着される口部と、前記口部の下方にある筒状の胴部と、前記口部から前記胴部へ拡径して連続する肩部と、を備える容器の少なくとも前記肩部の一部及び前記胴部の一部の外周に装着される筒状の熱収縮性フィルムであって、
前記熱収縮性フィルムは、熱収縮性を有する基材と、前記基材の一方の面に設けられた印刷層と、前記印刷層を覆うように設けられた保護層と、を備え、
前記一方の面は、前記印刷層及び前記保護層が設けられていない滑り止め領域を有し、
前記滑り止め領域は、前記熱収縮性フィルムが前記容器に装着された場合に、前記胴部より高い位置にあって、かつ、前記肩部の少なくとも一部に対向する位置にある、熱収縮性フィルム。
【請求項2】
請求項1において、
前記保護層は、メジウムを含み、
前記滑り止め領域は、前記熱収縮性フィルムの全周に渡って連続して形成される、熱収縮性フィルム。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記一方の面の面積に対する前記滑り止め領域の面積の比が0.08以上である、熱収縮性フィルム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の熱収縮性フィルムが装着された容器であって、
スクリュー付きキャップが装着される前記口部と、前記口部の下方にある筒状の前記胴部と、前記口部から前記胴部へ拡径して連続する前記肩部と、を備え、
前記熱収縮性フィルムは、熱収縮によって前記胴部の少なくとも一部に密着すると共に、前記滑り止め領域が前記肩部の少なくとも一部に密着する、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルム及びこれを装着した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料用や食品用の容器は、商品の名称等を表示するラベルとして筒状の熱収縮性フィルムが装着されることが多い。熱収縮性フィルムは容器よりわずかに大きな内径を有する筒状に形成され、熱収縮性フィルムの内側に容器を挿通させた後、加熱することで収縮させて容器に熱収縮性フィルムを密着させる。
【0003】
スクリュー付きのキャップが装着された容器において、熱収縮性フィルムが装着された容器を把持してキャップを開栓しようとすると、容器に対して熱収縮性フィルムが空回りすることがある。特に、握力の弱い消費者による開栓時に空回りしやすい。
【0004】
特許文献1は、このような空回りを防止するために、熱収縮性フィルムの縦方向に延びる折返し領域にブロッキング処理を施すことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-203286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、熱収縮性フィルムに折返し領域を設ける工程が必要になると共に、ブロッキング処理を施す必要があるため、熱収縮性フィルムを製造する際にコスト増となる。すなわち、特許文献1の技術においては、空回りの抑制のためにはブロッキング処理が必要になるためコスト低減とは相反する効果となり、空回り抑制とコスト低減とは両立が難しい。
【0007】
そこで、本発明は、製造コストを増加することなく、空回りを抑制することができる熱収縮性フィルム及びこれを装着した容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[1]本発明に係る熱収縮性フィルムの一態様は、
スクリュー付きキャップが装着される口部と、前記口部の下方にある筒状の胴部と、前記口部から前記胴部へ拡径して連続する肩部と、を備える容器の少なくとも前記肩部の一部及び前記胴部の一部の外周に装着される筒状の熱収縮性フィルムであって、
前記熱収縮性フィルムは、熱収縮性を有する基材と、前記基材の一方の面に設けられた印刷層と、前記印刷層を覆うように設けられた保護層と、を備え、
前記一方の面は、前記印刷層及び前記保護層が設けられていない滑り止め領域を有し、
前記滑り止め領域は、前記熱収縮性フィルムが前記容器に装着された場合に、前記胴部より高い位置にあって、かつ、前記肩部の少なくとも一部に対向する位置にあることを特徴とする。
【0010】
[2]前記熱収縮性フィルムの一態様において、
前記保護層は、メジウムを含み、
前記滑り止め領域は、前記熱収縮性フィルムの全周に渡って連続して形成されることができる。
【0011】
[3]前記熱収縮性フィルムの一態様において、
前記一方の面の面積に対する前記滑り止め領域の面積の比が0.08以上であることができる。
【0012】
[4]本発明に係る容器の一態様は、
前記熱収縮性フィルムのいずれかの一態様が装着された容器であって、
スクリュー付きキャップが装着される前記口部と、前記口部の下方にある筒状の前記胴部と、前記口部から前記胴部へ拡径して連続する前記肩部と、を備え、
前記熱収縮性フィルムは、熱収縮によって前記胴部の少なくとも一部に密着すると共に、前記滑り止め領域が前記肩部の少なくとも一部に密着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る熱収縮性フィルムの一態様によれば、製造コストを増加することなく、容器に対する空回りを抑制することができる。また、本発明に係る容器の一態様によれば、価格競争力に優れると共に、開栓時に熱収縮性フィルムが空回りしにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る熱収縮性フィルムが装着された容器の側面図である。
図2】(a)一実施形態に係る熱収縮性フィルムを示す図と、(b)一実施形態に係る容器及び一部を切り欠いた熱収縮性フィルムを示す図である。
図3】一実施形態に係る容器と熱収縮性フィルムを示す図である。
図4図2における破線で囲んだ部分を拡大して示す図である。
図5図1における破線で囲んだ部分を拡大して示す図である。
図6】サンプル1の熱収縮性フィルムの正面図である。
図7】サンプル2の熱収縮性フィルムの正面図である。
図8】サンプル3の熱収縮性フィルムの正面図である。
図9】サンプル4の熱収縮性フィルムの正面図である。
図10】サンプル5の熱収縮性フィルムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0016】
1.熱収縮性フィルムが装着された容器
図1を用いて、熱収縮性フィルム30が装着された容器10について以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る熱収縮性フィルム30が装着された容器10の側面図である。図1の右側は熱収縮性フィルム30が容器10を覆うように密着した状態を示し、図1の左側は熱収縮性フィルム30を一部切り欠いて熱収縮性フィルム30の内側にある容器10を示す。また、図1の左側において、キャップ20の位置にある口部12を破線で示す。
【0017】
図1に示すように、容器10は、その外周に筒状の熱収縮性フィルム30が装着される。容器10は、スクリュー付きキャップ20が装着される口部12と、口部12の下方にある筒状の胴部16と、口部12から胴部16へ拡径して連続する肩部14と、を備える
。また、容器10に装着された熱収縮性フィルム30は、熱収縮によって胴部16の少なくとも一部に密着すると共に、滑り止め領域38が肩部14の少なくとも一部に密着する。
【0018】
容器10は、合成樹脂製またはガラス製である。合成樹脂としては、ブロー成形が可能な熱可塑性樹脂を採用でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等が採用でき、さらにこれらを二種以上混合してもよいし、他の樹脂を混合してもよい。また、容器10は、単層構造に限らず、多層構造であってもよい。
【0019】
口部12は、上端に開口が形成され、外周にキャップ20を固定する図示しない係止手段を有する。係止手段は、キャップ20の回転止め機能と抜け止め機能を備え、例えば、回転止め突起または回転止め溝、口部12に環状に設けられるフランジ部または環状溝、ねじ山またはねじ溝であってもよい。口部12に設けられる開口は、内容物が液体であれば注ぎ口となり、固体であれば取出口となる。注ぎ口は、口部12の開口からキャップ20の一部を介して形成されてもよい。口部12の口径は、例えば直径15mm~30mmである。口部12は、内径がほぼ一定の略円筒状であり、ねじ部の下方に円環状のフランジを1つ以上含んでもよい。
【0020】
口部12に装着されるキャップ20は、内側にねじ溝またはねじ山が形成されたいわゆるスクリュー式のキャップである。また、キャップ20は、特開2019-210014号公報に開示されるような外蓋と内蓋とからなる二重構造のキャップであってもよい。その場合、外蓋を回転させてキャップ20を開閉し、内蓋は口部12に回転不能かつ抜け不能に固定される。キャップ20の外径は、胴部16の外径よりも小さい。キャップ20は、金属製または合成樹脂製であり、合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの混合物等の熱可塑性樹脂を採用できる。キャップ20は、開栓時にねじ山に沿って回すことで開けることができる。
【0021】
肩部14は、口部12の下端から胴部16の上端へ向けて拡径する。肩部14の上端は口部12の下端に接続し、肩部14の下端は胴部16の上端に接続するため、口部12、肩部14及び胴部16が連続する。肩部14は、胴部16が略円筒形であるので口部12の下端から外方及び下方へ広がる略円錐台形状であるが、胴部16の上端の形状に合わせて例えば多角錐台形状であってもよいし、より複雑な形状を有していてもよい。図1のように肩部14がわずかに下方に湾曲していてもよい。肩部14は、水平に対して例えば30度~70度の傾きの範囲である。肩部14は、胴部16の上端との接続部を含んでもよい。
【0022】
胴部16は、略鉛直方向に延びる筒状であり、肩部14の下端から接地部を有する底部18まで延びる。胴部16は、略円筒状であるが、これに限らず多角筒状であってもよいし、複数の減圧吸収パネルを有していてもよい。胴部16は、その下端付近に最大径を有し、肩部14との接続部はその最大径よりも小さい外径を有し、当該接続部と最大径の部分との間はわずかに内側に湾曲してもよい。そのため、後述する熱収縮性フィルム30はキャップ20側から挿通して胴部16の最大径の部分または胴部16の下端まで落下させやすい。胴部16の形状はこれに限られないが、縦断面が鉛直方向に対し±20度の傾きの範囲である。胴部16は、内部に内容物が収容される。内容物としては、液体または固体であることができ、例えば液状のドレッシングや調味料等であることができる。なお、本明細書において、「上」「下」は、容器10が底部18を接地させて正立した状態における上下であり、口部12のある方が上方であり、底部18がある方が下方である。
【0023】
底部18は、胴部16の下端に接続し、容器10の正立時における接地部を有する。底
部18は、円環状の設置面とその内側にわずかに突出する上底を有するが、複数の脚部を有する構造でもよい。
【0024】
熱収縮性フィルム30は、容器10の少なくとも肩部14の一部及び胴部16の一部の外周に装着される。本実施形態では、熱収縮性フィルム30は、キャップ20の外周を覆うように装着されているが、キャップ20を覆わず、肩部14から下方に装着されればよい。熱収縮性フィルム30の下端は、胴部16の最大径を有する付近にあるが、例えば接地部付近まで延在して肩部14及び胴部16の全部を覆うようにしてもよいし、肩部14の中段から胴部16の上側途中までを覆うようにしてもよい。
【0025】
熱収縮性フィルム30の内面31は、ほとんど全ての領域で容器10に密着する。内面31の内、肩部14に密着する部分には滑り止め領域38が形成される。滑り止め領域38は、内面31の他の部分例えば胴部16に密着する部分よりも摩擦係数が大きい。そのため、容器10によれば、キャップ20の開栓時に、一方の手で熱収縮性フィルム30を介して胴部16を握り、他方の手でキャップ20を捻ると、摩擦係数が大きい滑り止め領域38が肩部14に密着して熱収縮性フィルム30が空回りすることなくキャップ20を開けることができる。熱収縮性フィルム30の滑り止め領域38は、肩部14の少なくとも一部に密着すればよい。
【0026】
熱収縮性フィルム30は、キャップ20を開栓する方向に回転させる際の熱収縮性フィルム30と肩部14及び胴部16との間に生じるトルク(供回りトルク)が200N・cm以上であることが好ましく、300N・cm以上であることがさらに好ましい。すなわち、熱収縮性フィルム30を容器10に熱収縮させて装着した状態で、熱収縮性フィルム30が無い胴部16の下端を治具で固定し、熱収縮性フィルム30が装着された胴部16全体を手で握るように把持しながら熱収縮性フィルム30を時計回りに回転させたときに、熱収縮性フィルム30が胴部16に対して滑りだす(回転する)トルクが200N・cm以上であるということである。キャップ20の開栓トルクが200N・cm未満の場合において、容器10に対し熱収縮性フィルム30が空回りをすることがないことが好ましい。
【0027】
また、滑り止め領域38は、後述するように、印刷層34及び保護層36(図4及び図5)が設けられていないことにより形成されるので、熱収縮性フィルム30の製造コストが増加することはなく、したがって、このような熱収縮性フィルム30を装着した容器10によれば、価格競争力に優れる。
【0028】
2.熱収縮性フィルム
図2図5を用いて、熱収縮性フィルム30について以下詳細に説明する。図2の(a)は、一実施形態に係る熱収縮性フィルム30を示す図であり、図2の(b)は、一実施形態に係る容器10及び一部を切り欠いた熱収縮性フィルム30を示す図である。図3は、一実施形態に係る容器10と開いた状態の熱収縮性フィルム30を示す図であり、図4は、図2における破線で囲んだ部分を拡大して示す図であり、図5は、図1における破線で囲んだ部分を拡大して示す図である。
【0029】
図2の(a)に示すように、熱収縮性フィルム30は、筒状の形態で容器10に装着される。熱収縮性フィルム30は、その内側に容器10を配置した状態で、加熱されることにより容器10の例えばキャップ20、肩部14及び胴部16に密着するように収縮する。
【0030】
図2の(b)では、手前側の熱収縮性フィルム30を切り欠いて熱収縮する前の熱収縮性フィルム30と容器10との関係を示し、また、キャップ20の左側を切り欠いて示す
ことでキャップ20内部にある口部12のねじ部を示す。通常、筒状に加工された熱収縮性フィルム30は、容器10の上方から落とされて所定位置、例えば(b)の例では胴部16の下端付近であって最大径を有する付近に載置される。熱収縮性フィルム30が胴部16の全てを覆う場合には、熱収縮性フィルム30を接地面まで落として配置する。熱収縮性フィルム30を落下させる際に、内面31が容器10の外面に接触することがあるため、熱収縮性フィルム30の落下を妨げないように内面31は摩擦係数が小さい材質で全面コーティングされるのが一般的である。しかし、熱収縮性フィルム30では、一部に摩擦係数が小さい保護層36を設けない滑り止め領域38が設けられる。
【0031】
熱収縮性フィルム30は、スクリュー付きキャップ20が装着される口部12と、口部12の下方にある筒状の胴部16と、口部12から胴部16へ拡径して連続する肩部14と、を備える容器10の少なくとも肩部14の一部及び胴部16の一部の外周に装着される。図2の(b)に示す状態で外部から加熱することにより、熱収縮性フィルム30が収縮して図1に示すように容器10の外周に密着する。
【0032】
図3では、筒状の熱収縮性フィルム30を開いて、内面31と容器10との関係が分かるように示す。熱収縮性フィルム30の内面31は、摩擦係数が小さい保護層36が形成された領域と、摩擦係数が大きい滑り止め領域38と、を有する。保護層36は、滑り止め領域38を挟んで上下に2箇所形成される。
【0033】
滑り止め領域38は、熱収縮性フィルム30の全周に渡って連続して形成されることが好ましい。滑り止め領域38が全周に渡って形成されることにより、熱収縮性フィルム30の空回りを確実に防止できる。なお、熱収縮性フィルム30の空回りを防ぐことができれば、滑り止め領域38が全周に連続せず複数個所に分割して設けられてもよい。
【0034】
滑り止め領域38の面積は、2000mm以上であることが好ましく、例えば熱収縮性フィルム30の熱収縮前の表面積が20000mm~30000mmにおいて2000mm~2700mmであることができる。滑り止め領域38の面積が2000mm以上であることにより、熱収縮性フィルム30の空回りを抑制することができる。滑り止め領域38が2700mm以下であることにより、熱収縮性フィルム30の空回りを抑制しつつ、熱収縮性フィルム30の落下を阻害しにくい。滑り止め領域38の高さは、熱収縮性フィルム30の全高の半分より高い位置にあることが好ましい。滑り止め領域38が全高の半分より高い位置にあることにより、てこの原理が働き、滑り止め防止領域(作用点)とフィルムを握る領域(力点、支点)の距離が大きくなるため好ましい。
【0035】
一方の面321の面積に対する滑り止め領域38の面積の比が0.08以上であることが好ましく、当該比が0.08~0.20であることがさらに好ましい。一方の面321の面積及び滑り止め領域38の面積は、熱収縮性フィルム30が熱収縮する前の表面積であり、当該比は(滑り止め領域38)÷(一方の面321の全体の面積)として求めることができる。当該比が0.08以上であることにより、熱収縮性フィルム30の空回りを抑制することができる。また、当該比が0.20以下であることにより、熱収縮性フィルム30の空回りを抑制しつつ、熱収縮性フィルム30の落下を阻害しにくい。
【0036】
図4及び図5に示すように、熱収縮性フィルム30は、熱収縮性を有する基材32と、基材32の一方の面321に設けられた印刷層34と、印刷層34を覆うように設けられた保護層36と、を備える。一方の面321は、印刷層34及び保護層36が設けられていない滑り止め領域38を有する。
【0037】
基材32は、印刷層34の商品名や絵柄等を視認可能な無色透明又は有色透明の熱可塑性樹脂製のフィルムである。基材32の材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等
のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物などを採用でき、比較的収縮力の強いポリエステル系樹脂が好ましい。基材32は、異なる2種以上の材質のフィルムを積層した積層フィルムで構成されてもよい。熱収縮性を有する基材32は、公知の製法で製膜し延伸処理することにより得ることができる。基材32は、一軸延伸フィルム又は主延伸方向と直交する方向に若干延伸された二軸延伸フィルムである。基材32の周方向(図3の左右方向)の延伸は、容器10の形状に応じて適宜設定できるが、例えば2.0~8.0倍である。基材32の厚さは、例えば20μm~80μmであり、さらに30μm~60μmであることができる。
【0038】
印刷層34は、基材32の一方の面321の一部を除いて、略全面に設けられる。一方の面321は、熱収縮性フィルム30の内面31側の面である。印刷層34は、例えば商品名、絵柄、説明などの所定の印刷や白色等のベタ印刷が、グラビア印刷などの公知の印刷法によって単色又は多色刷りにて設けられる。
【0039】
保護層36は、印刷層34の印刷を保護する。保護層36は、印刷層34を覆うように印刷層34に積層して設けられる。保護層36は、少なくとも印刷層34の全面を覆うように設けられ、さらに印刷層34が設けられていない基材32の部分にも設けてもよい。印刷層34がない部分における保護層36は、基材32の傷防止の機能を備える。保護層36の印刷層34とは反対側の面が熱収縮性フィルム30の内面31となる。保護層36は、熱収縮性フィルム30が容器10を滑らかに挿通できるように摩擦係数が小さい材質が好ましい。保護層36は、例えば、メジウムを含む。メジウムを含むインキは、実質的に顔料(着色材料)を含まない透明なインキであって、ポリマーと、滑り成分とを含む。ポリマー成分は、例えば、水(及び/又はアルコール)に、アクリル系樹脂、アクリル共重合体、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、水性ポリアミド樹脂等を分散させたエマルジョン型;トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール等の有機溶剤に、ロジン、ケトン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル-ウレタン共重合体、ポリエステル系樹脂等を溶解させた溶剤型;等のポリマー溶液が例示される。滑り成分としては、例えば、ワックス類、シリコーン、シリカなどの無機微粒子、有機微粒子等の滑剤を採用できる。当該インキには、必要に応じて、増粘剤、消泡剤、防かび剤等のその他の添加剤が混合されていてもよい。保護層36は、当該インキをベタ状に塗工することにより設けることができる。
【0040】
滑り止め領域38は、熱収縮性フィルム30が容器10に装着された場合に、胴部16より高い位置にあって、かつ、肩部14の少なくとも一部に対向する位置にある。滑り止め領域38は、基材32の一方の面321の内、印刷層34及び保護層36が設けられていない領域である。そのため、熱収縮性フィルム30の製造コストを増加することなく、滑り止め領域38を設けることができる。「熱収縮性フィルム30が容器10に装着された場合」とは、熱収縮性フィルム30が熱収縮して図1及び図5に示す状態である。基材32は、保護層36に比べて摩擦係数が大きいため、熱収縮して滑り止め領域38が肩部14と接触することで熱収縮性フィルム30の回転を抑えることができる。しかも、肩部14は下方に向かって広がる形状であるので、熱収縮性フィルム30が収縮した状態で肩部14への密着力が大きく、肩部14に対向する位置にある滑り止め領域38は空回りを抑制する効果が高い。そのため、肩部14に対向する位置になるべく広い滑り止め領域38を設けることが空回り抑止には望ましく、例えば、肩部14の全周に渡って滑り止め領域38が設けられることが好ましい。肩部14に対向する位置にある滑り止め領域38の面積は、2000mm以上であることが好ましく、一方の面321の面積に対する滑り止め領域38の面積の比は0.08以上であることが好ましい。
【0041】
また、滑り止め領域38が胴部16より高い位置にあることが好ましい。滑り止め領域38が胴部16より高い位置にあることにより、図2に示すような筒状の熱収縮性フィルム30が容器10を挿通しながら落下する際に、この滑り止め領域38が胴部16に接触して熱収縮性フィルム30の落下を妨げることがない。また、滑り止め領域38が肩部14の少なくとも一部に対向する位置にあれば、肩部14より上には胴部16より細いキャップ20しかないので、滑り止め領域38が筒状の熱収縮性フィルム30の落下を妨げるおそれがない。一方で、肩部14よりも低い位置にある滑り止め領域38は、熱収縮性フィルム30を装着する際に胴部16と接触して熱収縮性フィルム30の落下を妨げるおそれがあるので、できるだけ小さい面積であることが好ましく、例えば400mm以下であることが好ましく、320mm以下であることがより好ましく、0mmであることがさらに好ましい。
【実施例0042】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
(サンプルの作製)
サンプル1:幅167mm、高さ143mm、表面積23881mmの熱収縮性フィルム30に、図6にハッチングで示す上端(高さ2mm)と下端(高さ2mm)の全幅に渡って保護層36(メジウムインキ)を印刷し、上端と下端の保護層36に挟まれるように滑り止め領域38が形成された。なお、図6図10の正面は、熱収縮性フィルム30を容器へ装着した時に容器と対向する面(内周面)である。
【0044】
サンプル2:幅167mm、高さ143mm、表面積23881mmの熱収縮性フィルム30に、図7に示す幅22.6mmで上端から下端まで延びる帯状の滑り止め領域38を2本形成するように、保護層36(メジウムインキ)を印刷した。
【0045】
サンプル3:幅167mm、高さ143mm、表面積23881mmの熱収縮性フィルム30に、図8に示すように容器の肩部に対応する高さ(下端からの高さが89mmから102mmまでの幅)で全幅に渡って滑り止め領域38を形成すると共に、当該滑り止め領域38を除いてサンプル1の保護層36とサンプル2の保護層36の両方を印刷した。
【0046】
サンプル4:幅167mm、高さ143mm、表面積23881mmの熱収縮性フィルム30に、図9に示すように容器の肩部に対応する高さ(下端からの高さが89mmから102mmまでの幅)で全幅に渡って滑り止め領域38を形成すると共に、幅5.5mmで高さ2mm~81mmに渡って滑り止め領域38が形成されるように、保護層36(メジウムインキ)を印刷した。
【0047】
サンプル5:幅167mm、高さ143mm、表面積23881mmの熱収縮性フィルム30に、図10に示すように容器の肩部に対応する高さ(下端からの高さが89mmから102mmまでの幅)で全幅に渡って滑り止め領域38を形成するように、保護層36(メジウムインキ)を印刷した。
【0048】
各サンプルにおける熱収縮性フィルム30の一方の面321の面積に対する滑り止め領域38の面積の比を計算し、「面積比」として表1に記載した。
【0049】
(供回りトルク測定)
容器として、キユーピードレッシング(登録商標)用の180mlポリエチレンテレフタレート製の容器10(PETボトル)を、円筒状に接合したサンプル1~5の熱収縮性
フィルム30に挿通した後、熱収縮させて図1に示す熱収縮性フィルム30が装着された容器10をそれぞれ製造した。いずれのサンプルも滑り止め領域38の少なくとも一部が容器10の肩部14に接触した。サンプル5は、滑り止め領域38の全部が容器10の肩部14に接触した。サンプル1~5の熱収縮性フィルム30が装着された容器10をトルクメーター(IMADA製 型番DTX2-500Nc-B)の固定台上に載せ、熱収縮性フィルム30が無い胴部16下端の外側に接する4つの固定ピンで容器10を挟持し、熱収縮性フィルム30を時計回りに回して供回りトルクを測定した。熱収縮性フィルム30が胴部16に対して滑り始めたときのトルクの最大値を供回りトルクとした。測定結果は、表1の通りであった。この容器10におけるキャップ20の開栓トルクの許容値は150N・cmであるため、サンプル1~5は供回りすることなく、キャップ20を開栓できる(表1で「○」)ことがわかった。
【0050】
(ライン適性検査)
容器10の真上から筒状に形成したサンプル1~5の熱収縮性フィルム30を落下させて、容器10における所定の位置まで熱収縮性フィルム30が落下するか確認した。検査結果は、表1の通りであった。なお、表1で「〇」は熱収縮フィルムが所定の位置まで落下し問題なく製造できることであり、「△」は熱収縮フィルムが所定の位置まで落下しないこともあるが何とか製造できることであり、「×」は熱収縮フィルムが所定の位置まで落下せず製造ができないことの評価である。
【0051】
【表1】
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であり、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。ここで、「同一の構成」とは、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0053】
10…容器、12…口部、14…肩部、16…胴部、18…底部、20…キャップ、30…熱収縮性フィルム、31…内面、32…基材、321…一方の面、34…印刷層、36…保護層、38…滑り止め領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10