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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182981
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】長尺積層基材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20231220BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231220BHJP
   B32B 37/24 20060101ALI20231220BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231220BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B05D1/28
B32B27/30 D
B32B37/24
B05D3/00 D
B05D7/24 302L
B05D7/24 301E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096310
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 蔵
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
4D075AC28
4D075AC29
4D075AC34
4D075AC35
4D075AC80
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075BB16X
4D075BB24Z
4D075BB28Z
4D075BB29Z
4D075BB33Z
4D075BB37Z
4D075BB38Z
4D075CA18
4D075CA23
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DC19
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB07
4D075EB18
4D075EB37
4D075EB39
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC30
4D075EC35
4F100AK18A
4F100AK18C
4F100AK18J
4F100AK49B
4F100AK50A
4F100AL01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA15
4F100DE01A
4F100DE01C
4F100EA02B
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EH46C
4F100GB41
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JJ03B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】耐熱性、電気特性等の物性に優れ、特にその表面外観に優れる、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を連続的に生産性良く形成できる、長尺積層基材の製造方法を提供する。
【解決手段】テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子及び液状分散媒を含む分散液を、特定のリバースコーター方式を適用して長尺基材の表面に塗工する、基材層と前記基材層の表面に溶融焼成によりポリマー層を形成するための塗工層を有する長尺積層基材の製造方法であって、前記分散液の粘度が100~5000mPa・sかつ前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が15~45質量%であり、かつロールの間隙の幅及び表面硬度を特定条件とする、製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子及び液状分散媒を含む分散液を、回転するコーティングロールと、前記コーティングロールの上方に配され、前記コーティングロールの後方側にドクターナイフを備えたメタリングロールとから構成され、前記コーティングロールの後方側に設けられた液貯留部に供給し、前記分散液を前記コーティングロールと前記メタリングロールの間隙を通過させ、前記コーティングロールの前方側に配され、回転するバックアップロール上を走行する長尺基材の表面に塗工する、基材層と前記基材層の表面に溶融焼成によりポリマー層を形成するための塗工層を有する長尺積層基材の製造方法であって、
前記分散液の粘度が100~5000mPa・sかつ前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が15~45質量%であり、
前記間隙の幅が、前記ポリマー層の厚さと前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量割合の逆数の積より大きく、
前記コーティングロール、前記メタリングロール及び前記バックアップロールの少なくとも1つの表面硬度が60~75度である、製造方法。
【請求項2】
前記コーティングロール、前記メタリングロール及び前記バックアップロールの表面硬度がいずれも60~75度である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子が、平均粒子径が0.3μm以上10μm未満である熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記液状分散媒が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記分散液が、さらに、アルコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記分散液が、さらに、アクリル酸系高分子、ビニルアルコール系高分子及びセルロース系高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の増粘剤を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記分散液が、さらに、炭素数1~6のアルコールを含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記分散液の表面張力が、20~30mN/mである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記長尺積層基材が、前記長尺基材の両方の表面に前記ポリマー層を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記長尺基材が耐熱性基材である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記耐熱性基材がポリイミドフィルムである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記間隙の幅が、前記ポリマー層の厚さと前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量割合の逆数の積の1倍超1.2倍以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ポリマー層の厚さが20μm以上である、請求項13に記載の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を有する、長尺積層基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の移動体通信機器における高速化、高周波化に対応するため、通信機器のプリント基板の絶縁層には低誘電率かつ低誘電正接である材料が求められ、テトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている。かかるポリマーを含む絶縁層を形成する材料として、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液が知られている。
かかる分散液を基材に塗工する方法として、特許文献1には、2つのコーターロールが各々のコーターヘッドのバックアップロールとなるように配設したリバースロールコーター方式の、テトラフルオロエチレン系ポリマーの水分散液の両面同時塗布装置が提案されている。特許文献2には、樹脂フィルムである基材に、ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートを混合した溶液系接着剤をリバースコート法で塗工し、この接着剤塗工基材の接着剤面をフッ素樹脂シートに貼合せて樹脂基材を剥離する、フッ素樹脂シートへの接着性被膜の形成方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-258761号公報
【特許文献2】特開平11-256110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と液状分散媒とを含む分散液から、上記絶縁層となるポリマー層を生産性良く形成するに際し、その特性を十分に発揮させる観点から、ポリマー層の表面に欠点やスジ等の発生がなく、絶縁層の厚みの均一性を保ち緻密性を高めることが要求される。
一方、走行する長尺基材への連続塗工に際しては、ロールコーター式塗工装置が広く用いられる。かかる装置には、コーティングロールの回転方向が長尺基材の進行方向と同じナチュラルコーター方式と、コーティングロールの回転方向が長尺基材の進行方向と反対のリバースコーター方式がある。リバースコーター方式は、塗工面のロール目をなくし平滑な塗膜を得るのに適するが、塗工液の粘度が比較的高く気泡等を含んでいると、高速での塗工時に泡がはじけ塗装ムラが生じることがある。
テトラフルオロエチレン系ポリマーは表面張力が低いため、その粒子は分散性が低く、分散液が泡立ちやすくなり、塗工等の使用における流動性等の取扱い性は、充分とは言い難い。このような分散液の特性により、ポリマー層を連続的に生産性良く形成する観点から、特許文献1や特許文献2で提案される塗工方法にはなお改良の余地がある。
本発明者らは、特定のリバースコーター方式を適用し、かつロールの表面硬度及び運転における条件を特定し、さらに粘度及びテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子含有量を特定範囲とした分散液を用いることで、粗大粒子の形成が抑制され、表面外観に優れるポリマー層を有する積層体を連続的に生産性良く形成できることを知見した。また、得られるポリマー層は、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、耐熱性、電気特性等の物性に優れ、特にその表面外観に優れる、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を連続的に生産性良く形成できる、長尺積層基材の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子及び液状分散媒を含む分散液を、回転するコーティングロールと、前記コーティングロールの上方に配され、前記コーティングロールの後方側にドクターナイフを備えたメタリングロールとから構成され、前記コーティングロールの後方側に設けられた液貯留部に供給し、前記分散液を前記コーティングロールと前記メタリングロールの間隙を通過させ、前記コーティングロールの前方側に配され、回転するバックアップロール上を走行する長尺基材の表面に塗工する、基材層と前記基材層の表面に溶融焼成によりポリマー層を形成するための塗工層を有する長尺積層基材の製造方法であって、前記分散液の粘度が100~5000mPa・sかつ前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が15~45質量%であり、前記間隙の幅が、前記ポリマー層の厚さと前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量割合の逆数の積より大きく、前記コーティングロール、前記メタリングロール及び前記バックアップロールの少なくとも1つの表面硬度が60~75度である、製造方法。
[2] 前記コーティングロール、前記メタリングロール及び前記バックアップロールの表面硬度がいずれも60~75度である、[1]の製造方法。
[3] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子が、平均粒子径が0.3μm以上10μm未満である熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子である、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記液状分散媒が、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 前記分散液が、さらに、アルコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含有する、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7] 前記分散液が、さらに、アクリル酸系高分子、ビニルアルコール系高分子及びセルロース系高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の増粘剤を含有する、[1]~[6]のいずれかの製造方法。
[8] 前記分散液が、さらに、炭素数1~6のアルコールを含有する、[1]~[7]のいずれかの製造方法。
[9] 前記分散液の表面張力が、20~30mN/mである、[1]~[8]のいずれかの製造方法。
[10] 前記長尺積層基材が、前記長尺基材の両方の表面に前記ポリマー層を有する、[1]~[9]のいずれかの製造方法。
[11] 前記長尺基材が耐熱性基材である、[1]~[10]のいずれかの製造方法。
[12] 前記耐熱性基材がポリイミドフィルムである、[11]の製造方法。
[13] 前記間隙の幅が、前記ポリマー層の厚さと前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量割合の逆数の積の1倍超1.2倍以下である、[1]~[12]のいずれかの製造方法。
[14] 前記ポリマー層の厚さが20μm以上である、[13]の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐熱性、電気特性等の物性に優れ、特にその表面外観に優れる、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を連続的に生産性良く形成できる、長尺積層基材の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子のD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「平均粒子径(D90)」は、D50と同様にして求められる、粒子の体積基準累積90%径である。
粒子の比表面積は、ガス吸着(定容法)BET多点法で粒子を測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で分散液を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、分散液の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを、回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
溶媒又は溶液の「表面張力」は、表面張力計を用い、25℃にてウィルヘルミー法で測定した値である。
ノニオン系界面活性剤の「HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値」は、グリフィン法により、次の算出式で定義される値である。
HLB値=20×[親水部の化学式量の総和]/分子量
セルロースエーテルの「置換度」は、エーテル化度とも言い、セルロースのグルコース環上にある3つの水酸基のうちアルコキシル基に置換された水酸基の個数(平均値)を表す。置換度は理論的に0~3の間の値を有することができ、一般的に置換基が高いほど親水性となる。置換度は、第18改正日本薬局方記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースの置換度分析方法により測定される値を換算して求められる。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
【0008】
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)及び液状分散媒を含む分散液(以下、「本分散液」とも記す。)を、回転するコーティングロールと、前記コーティングロールの上方に配され、前記コーティングロールの後方側にドクターナイフを備えたメタリングロールとから構成され、前記コーティングロールの後方側に設けられた液貯留部に供給し、前記分散液を前記コーティングロールと前記メタリングロールの間隙を通過させ、前記コーティングロールの前方側に配され、回転するバックアップロール上を走行する長尺基材の表面に塗工する、基材層と前記基材層の表面に溶融焼成によりポリマー層を形成するための塗工層を有する長尺積層基材の製造方法であって、前記分散液の粘度が100~5000mPa・sかつ前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量が15~45質量%であり、前記間隙の幅が、前記ポリマー層の厚さと前記分散液中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の含有量割合の逆数の積より大きく、前記コーティングロール、前記メタリングロール及び前記バックアップロールの少なくとも1つの表面硬度が60~75度である。
【0009】
本法により得られる長尺積層基材は、その塗工層から形成されるポリマー層がFポリマーに基づく耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性に優れ、特にその表面外観に優れる。なお、本明細書において「表面外観に優れる」とは、「表面の荒れが少ない」等の表面平滑性に優れること、又は「表面にスジ、クラックや欠点等がない」等の、視認又は分析機器で観察される外観に優れることのいずれをも包含する。
本法により、そのポリマー層が表面外観に優れる長尺積層基材が得られる理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
【0010】
本法では、特定のリバースコーター法を適用し、かつコーティングロール及びメタリングロールの間隙幅を本分散液のF粒子含有割合との関係で規定し、さらに本分散液の粘度を特定範囲とし、そしてコーティングロール、メタリングロール及びバックアップロールの少なくとも1つの表面硬度を上記した範囲としている。
つまり、本法では、特定粘度範囲かつ特定のF粒子含有量である本分散液を、前記間隙を通過させることにより、本分散液のロールへの粘着や空気の巻き込みを抑制し、それに起因する発泡を抑制している。そして、いずれかのロールから本分散液にかかる外圧をロール表面の硬度により調整して緩衝させ、発泡を相乗的に抑制している。特に、コーティングロールからバックアップロール上の長尺基材へ本分散液が転写される際の、本分散液にかかる圧力を、特定の表面硬度であるバックアップロールに緩衝させる場合、この効果は顕著になる。それにより、特に長尺基材のライン速度や各ロールの周速を上げて生産速度を高めた場合に、間隙通過後の本分散液の広がりによる塗工層のズレや筋目等の層欠陥の発生が効果的に抑制できる。
かかる作用は、本分散液が、後述する特定のノニオン系界面活性剤や特定の増粘剤や炭素数1~6のアルコールを含有する場合、またFポリマーが酸素含有極性基を有する場合、さらには本分散液の表面張力が特定範囲である場合に一層顕著となる。
【0011】
本法において、本分散液を構成するFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。
Fポリマーは、熱溶融性であっても非熱溶融性であってもよいが、熱溶融性であるのが好ましい。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。
熱溶融性であるFポリマーの溶融温度は、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。前記Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。この場合、本分散液から形成される塗膜(ポリマー層)が耐熱性に優れやすい。
【0012】
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
Fポリマーの表面張力は、16~26mN/mが好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、JIS K 6768に規定されているぬれ張力試験用混合液(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
【0013】
Fポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー(ETFE)、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)が好ましく、PFA及びFEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PTFEとしては、低分子量PTFE、変性PTFEが挙げられる。
PAVEは、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF及びCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
【0014】
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましく、カルボニル基含有基を有するのがさらに好ましい。
この場合、本分散液は、分散安定性及び取扱い性に優れやすい。また、本分散液から形成されるポリマー層が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性や、その表面外観に優れやすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH及び-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有する場合、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
【0015】
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマーに基づく単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
【0016】
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましく、NAHがより好ましい。
【0017】
F粒子のD50は0.3μm以上10μm未満であるのが好ましい。F粒子は、中実状の粒子であってもよく、非中空状の粒子であってもよい。F粒子は、nmオーダーの微粒子から形成された二次粒子であってもよい。F粒子のD50は、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。F粒子のD50は、6μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0018】
F粒子の比表面積は、1~25m/gであるのが好ましく、6~15m/gがより好ましい。
この場合、本分散液が分散安定性と取扱い性に優れやすい。また、本分散液から形成される塗工層を溶融焼成して得られるポリマー層が、耐熱性、電気特性(低線膨張係数、低誘電率及び低誘電正接)等の物性や、その表面外観に優れやすい。
F粒子の比表面積が上記範囲内であると、F粒子表面が液状分散媒、又は後述する炭素数1~6のモノオールで濡れやすく、F粒子の凝集体が解砕されやすくなり、上述した作用機構がより発現しやすいと考えられる。
【0019】
F粒子は、Fポリマーを含む粒子であり、Fポリマーからなるのが好ましい。
F粒子は、溶融温度が200~325℃である、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子であるのがより好ましい。この場合、上述した作用機構がより発現されてF粒子の凝集も抑制されやすい。
【0020】
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
また、F粒子は、非熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と混合して用いてもよい。F粒子として、溶融温度が200~325℃である熱溶融性Fポリマーの粒子が好ましく、溶融温度が200~325℃であり、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子がより好ましく、非熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子として、非熱溶融性PTFEの粒子が好ましい。この場合、熱溶融性Fポリマーの粒子による凝集抑制作用と、非熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーのフィブリル化による保持作用とがバランスして、本分散液の分散性が向上しやすい。また、それから形成されるポリマー層において、非熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの電気特性が高度に発現されやすい。
【0021】
本法において、本分散液を構成する液状分散媒は、水、アミド、ケトンおよびエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
アミドとしては、例えばN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
これらは1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、液状分散媒は後述する、特定範囲の表面張力である水溶性溶媒及び水と混和するのが好ましく、液状分散媒が水であるのがより好ましい。
【0022】
本分散液は、さらにノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。ノニオン性界面活性剤としては、グリコール系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が挙げられる。中でも、アルコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含有するのが好ましい。
【0023】
ノニオン系界面活性剤としてのアルコール系界面活性剤は、HLB値が10未満であるのが好ましく、4未満であるのがより好ましい。
かかるアルコール系界面活性剤は、アセチレンジオール系界面活性剤であるのが好ましい。アセチレンジオール系界面活性剤は、分子中に炭素-炭素三重結合を有する界面活性剤である。
アセチレンジオール系界面活性剤としては、例えば、アセチレンジオール(同一分子内にアセチレン結合と2つの水酸基を有する)界面活性剤、アセチレンジオールにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドが付加した界面活性剤が挙げられる。かかるアセチレンジオール系界面活性剤の具体例として、「サーフィノール(登録商標)」シリーズ、「オルフィン(登録商標)」シリーズ(いずれも日信化学工業社製);「アセチレノール(登録商標)」シリーズ(川研ファインケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0024】
ノニオン系界面活性剤としてのシリコーン系界面活性剤は、HLB値が10以上であるのが好ましく、親水部位としてポリオキシアルキレン構造を、疎水部位としてポリジメチルシロキサン構造を有する、ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンがより好ましい。
ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンは、主鎖にポリジメチルシロキサン単位(-(CHSiO2/2-)を有してもいてもよく、側鎖にポリジメチルシロキサン単位を有してもいてもよく、主鎖及び側鎖の双方にポリジメチルシロキサン単位を有してもよい。ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンは、主鎖にジメチルシロキサンの単位を含み、側鎖にオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン、又は、主鎖にジメチルシロキサンの単位を含み、主鎖末端にオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。
また、ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンに含まれるオキシアルキレン基は、1種のオキシアルキレン基のみからなっていてもよく、2種以上のオキシアルキレン基からなっていてもよい。後者の場合、異種のオキシアルキレン基は、ランダム状に連結していてもよく、ブロック状に連結してもよい。
【0025】
かかるシリコーン系界面活性剤としては、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン社製)、「KF-6011」、「KF-6043」(信越化学工業社製)が挙げられる。
【0026】
本分散液がノニオン系界面活性剤をさらに含有する場合、その含有量は、本分散液中のF粒子に対して、1~15質量%の範囲であるのが好ましく、3~10質量%の範囲がより好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。特に、本分散液が、ノニオン性界面活性剤としてアルコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の両者を含有すると、上述した作用機構がより発現しやすく好ましい。
本分散液がノニオン性界面活性剤としてアルコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の両者を含有する場合、アルコール系界面活性剤とシリコーン系界面活性剤との含有質量比は特に制限されず、例えば5:95~95:5の範囲で適宜設定できる。
【0027】
本法において、本分散液は、さらに増粘剤を含有していてもよい。増粘剤を含有する場合、本分散液の分散状態及び分散安定性が向上しやすい。また、レオロジー物性が向上して、本分散液の造膜性等の取扱性が向上しやすく、本法により、厚いポリマー層をより形成しやすい。
増粘剤は、アクリル酸系高分子、ビニルアルコール系高分子及びセルロース系高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の増粘剤であるのが好ましい。
【0028】
ビニルアルコール系高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分的にアセチル化又は部分的にアセタール化されたポリビニルアルコール、ビニルアルコールとビニルブチラールと酢酸ビニルの共重合体が挙げられる。
ビニルアルコール系高分子の具体例としては、「エスレック(登録商標)B」シリーズ、「エスレック(登録商標)K(KS)」シリーズ、「エスレック(登録商標)SV」シリーズ(以上、積水化学工業社製)」、「モビタール(登録商標)」シリーズ(クラレ社製)が挙げられる。
アクリル酸系高分子しては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸/マレイン酸共重合ナトリウム、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体ナトリウム等のポリアクリル酸の塩、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリアクリレート、ポリ-α-ハロアクリレート、ポリ-α-シアノアクリレート、ポリアクリルアミドが挙げられる。
【0029】
セルロース系高分子としては、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース等のセルロースエーテルが挙げられる。
アルキルセルロースとしては、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。
カルボキシアルキルセルロースとしては、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルメチルセルロース等が挙げられる。
中でも、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好ましく、ヒドロキシアルキルセルロースがより好ましく、ヒドロキシエチルセルロースがさらに好ましい。
【0030】
増粘剤を含有する場合、その含有量は、本分散液の全体質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。増粘剤の含有量は、本分散液の全体質量に対して30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
また、本分散液におけるF粒子の含有量に対する増粘剤の含有量の比は、0.001以上が好ましく、0.003以上がより好ましい。かかる含有量の比は、0.05以下が好ましく、0.03以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましい。
【0031】
本分散液は、さらに炭素数1~6のモノオールを含有していてもよい。かかる炭素数1~6のモノオールは、大気圧下、25℃にて液体である化合物であり、沸点が160℃以下であるのが好ましく、沸点120℃以下の化合物がより好ましい。また、表面張力が20~30mN/mである水溶性の化合物が好ましく、水と共沸することが好ましい。なお、本明細書において「水溶性」とは、水に対する溶解度が100g/L以上であることを意味する。
前記炭素数1~6のモノオールとしては、メタノール(23mN/m)、エタノール(23mN/m)、1-プロパノール(24mN/m)、2-プロパノール(22mN/m)、1-ブタノール(25mN/m)、2-ブタノール(24mN/m)、イソブタノール(23mN/m)、1-メトキシ-2-プロパノール(26mN/m)、2-プロポキシ-エタノール(27mN/m)、1-プロポキシ-2-プロパノール(25mN/m)、2-エトキシエタノール(26mN/m)がより好ましく、エタノールがさらに好ましい。なお、括弧内の数値は各モノオールの表面張力である。
これらは1種類を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上の前記モノオールを用いる場合、それらは互いに相溶するのが好ましい。
【0032】
本分散液は、無機粒子をさらに含有していてもよい。この場合、本分散液から形成されるポリマー層が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。
無機粒子の形状は、球状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよく、具体的には、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状であってもよい。
無機粒子としては、例えば石英粉、シリカ、ウォラストナイト、タルク、窒化ケイ素、炭化ケイ素、雲母等のケイ素化合物;窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒素化合物;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属酸化物;炭素繊維;グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等の炭素同素体;銀、銅等の金属;が挙げられる。無機粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機粒子のD50は、0.1~50μmが好ましい。
無機粒子の表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0033】
無機粒子の好適な具体例としては、シリカ粒子(「アドマファイン(登録商標)」シリーズ(アドマテックス社製)、「SFP(登録商標)」シリーズ(デンカ社製)、「E-SPHERES」シリーズ(太平洋セメント社製)等)、酸化亜鉛粒子(「FINEX(登録商標)」シリーズ(堺化学工業株式会社製)等)、酸化チタン粒子(「タイペーク(登録商標)」シリーズ(石原産業社製)、「JMT(登録商標)」シリーズ(テイカ社製)等)、タルク粒子(「SG」シリーズ(日本タルク社製)等)、ステアタイト粒子(「BST」シリーズ(日本タルク社製)等)、窒化ホウ素粒子(「HP40MF」シリーズ、「HP40J」シリーズ(いずれも水島合金鉄社製)、「UHP」シリーズ(昭和電工社製)、「デンカボロンナイトライド」シリーズの「GP」、「HGP」グレード(デンカ社製)等)が挙げられる。
本分散液が無機粒子を含む場合、本分散液における無機粒子の含有量は、1~25質量%が好ましい。
【0034】
本分散液は、Fポリマーとは異なる他の樹脂をさらに含んでいてもよい。かかる他の樹脂は、本分散液に非中空状の粒子として含まれていてもよく、本分散液を構成する液状分散媒、また必要に応じて含有する炭素数1~6のモノオールに溶解又は分散して含まれていてもよい。
他の樹脂としては、液晶性の芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。
他の樹脂としては、芳香族ポリマーが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族ポリアミドイミド及び芳香族ポリアミドイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族イミドポリマーがより好ましい。芳香族ポリマーは本分散液中で、液状分散媒に溶解したワニスとして含まれるのが好ましい。
【0035】
芳香族イミドポリマーの具体例としては、「ユピア-AT」シリーズ(宇部興産社製)、「ネオプリム(登録商標)」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア(登録商標)」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON(登録商標)」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド(登録商標)」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「HPC-1000」、「HPC-2100D」(いずれも昭和電工マテリアルズ社製)が挙げられる。
本分散液が他の樹脂をさらに含む場合、F粒子に対する他の樹脂の含有量は、1~25質量%が好ましい。
【0036】
本分散液は、さらに、チキソ性付与剤、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
【0037】
本分散液は、F粒子と液状分散媒と、必要に応じて前記したノニオン性界面活性剤、増粘剤、炭素数1~6のモノオール、無機粒子、他の樹脂、添加剤等を混合することで得られる。
ノニオン性界面活性剤、増粘剤、炭素数1~6のモノオール、無機粒子、他の樹脂、添加剤等を必要に応じてさらに混合する場合、F粒子と液状分散媒との混合に際して一括して混合してもよく、F粒子と液状分散媒との混合物に順次添加して混合してもよい。混合の順は特に制限はなく、また混合の方法も一括混合でも複数回に分割して混合してもよい。
ノニオン性界面活性剤を本分散液に添加する場合は、そのまま又は水溶液として添加してもよい。また、ノニオン性界面活性剤として前記したアルコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤の両者を用いる場合、その添加順序に特に制限はなく、両者を溶解させた水溶液として添加してもよい。
増粘剤としてセルロースエーテルを本分散液に添加する場合、その添加方法は、セルロースエーテルを粉末又はその水溶液として添加してもよく、液体の消泡剤等に分散または溶解させた状態で添加してもよい。
【0038】
本分散液を得るための混合の装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー及びプラネタリーミキサー等のブレードを備えた撹拌装置、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル及びアジテーターミル等のメディアを備えた粉砕装置、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー、薄膜旋回型高速ミキサー、自転公転撹拌機及びV型ミキサー等の他の機構を備えた分散装置が挙げられる。
【0039】
F粒子と液状分散媒との混合は、プラネタリーミキサー又は自転公転撹拌機にて行うのが好ましい。プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を有する撹拌装置である。得られる混合物は、分散液状であってもよく、ペースト状(粘度が1000~100000mPa・sであるペースト等。)であってもよく、ウェットパウダー状(キャピログラフにより測定される粘度が10000~100000Pa・sであるウェットパウダー等。)であってもよい。
なお、キャピログラフにより測定される粘度とは、キャピラリー長が10mm、キャピラリー半径が1mmのキャピラリーを用いて、炉体径を9.55mm、ロードセル容量を2tとし、温度を25℃、剪断速度を1s-1として測定される値である。
【0040】
本分散液におけるF粒子の含有量は、15~45質量%であり、25~40質量%であるのがより好ましい。本分散液における液状分散媒の含有量は、50質量%以上であるのが好ましく、55質量%以上であるのがより好ましい。液状分散媒の含有量は、85質量%未満であるのが好ましく、60質量%以下であるのがより好ましい。また、本分散液における液状分散媒の含有量は、F粒子の含有量に対して、100~200質量%であるのが好ましい。
なお、本分散液が炭素数1~6のモノオールを含有する場合、F粒子の分散安定性の観点からノニオン性界面活性剤を多く含有する場合も、かかる炭素数1~6のモノオールが、抑泡作用や破泡作用のような消泡剤の役割を担っているとも考えられる。
【0041】
本法において、本分散液の粘度は100~5000mPa・sであり、500~3000mPaがより好ましい。この場合、本分散液は塗工性に優れ、本法において表面外観に優れたポリマー層を形成しやすい。また、かかる範囲の粘度範囲にある本分散液は、それから形成されるポリマー層において、Fポリマーの物性が高度に発現しやすい。
本分散液のチキソ比は、1.0~3.0が好ましい。この場合、本分散液は、塗工性及び均質性に優れ、より緻密なポリマー層を生成しやすい。
これらの液物性は、本分散液が、上記したノニオン性界面活性剤及び増粘剤を含む場合に向上しやすい。
【0042】
本法において、本分散液の表面張力は、20~30mN/mであるのが好ましい。この場合、本分散液は、塗工性及び均質性に優れる。また、本法において、コーティングロール及びメタリングロールと、本分散液の接液部の摩擦等を抑制しやすく、本分散液の微小な泡立ちを防止でき、表面外観により優れる、緻密なポリマー層を生成しやすい。
【0043】
本分散液を構成する液状分散媒が水の場合、本分散液のpHは、長期保管性を向上する観点から、8~10がより好ましい。かかる本分散液のpHは、pH調整剤(アミン、アンモニア、クエン酸等。)又はpH緩衝剤(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等。)によって調整できる。
【0044】
本法では、上述した本分散液を、回転するコーティングロールと、前記コーティングロールの上方に配され、前記コーティングロールの後方側にドクターナイフを備えたメタリングロールとから構成され、前記コーティングロールの後方側に設けられた液貯留部に供給し、本分散液を前記コーティングロールと前記メタリングロールの間隙を通過させ、前記コーティングロールの前方側に配され、回転するバックアップロール上を走行する長尺基材の表面に塗工し、基材層と前記基材層の表面に溶融焼成によりポリマー層を形成するための塗工層を有する長尺積層基材を得る。
かかる構成による塗工法は、本分散液を乗せたコーティングロールを長尺基材の進行方向と逆回転させて塗工するリバースコーター法の範疇であり、長尺基材を挟んでコーティングロールと正対するバックアップロールにより、本分散液を転写するための圧力を加える。本構成では、コーティングロールへの本分散液の供給は、コーティングロールの後方側に設けられた液貯留部より行われる。ドクターナイフは、メタリングロールに付着した過剰の本分散液をかき落とす役割を有する。
本法を適用できる装置として、より具体的には、例えば特公平6-2250号に開示される、トップフィードリバースコーター型塗工装置が挙げられる。
【0045】
本法では、上記したコーティングロールとメタリングロールの間隙の幅が、前記ポリマー層の厚さと本分散液中のF粒子の含有量割合の逆数の積より大きい。具体的には、間隙の幅が、前記ポリマー層の厚さ(μm)と本分散液中のF粒子の含有量割合の逆数(例えば本分散液中のF粒子の含有量が40質量%である場合、その逆数は1/0.4=2.5)の積の1倍超1.2倍以下であるのが好ましい。
【0046】
本法では、コーティングロール、メタリングロール及びバックアップロールの少なくとも1つの表面硬度が60~75度である。表面硬度が前記した範囲であると、ロール周速を上げて本法を行う際に、空気の巻き込みによる本分散液への泡の混入や、コーティングロールの微小な揺れによる塗工層のムラ発生を防止でき、均一な膜厚で表面外観に優れる塗工層を有する長尺積層基材を、生産性良く得ることができる。
少なくともバックアップロールの表面硬度が60~75度であるのが好ましく、コーティングロール、メタリングロール及びバックアップロールのいずれもが、その表面硬度が60~75度であるのが好ましい。各ロールの表面硬度は、各ロールのライニングゴムの材質を選択することにより調整でき、かかるゴムとしては、耐摩耗性に優れたウレタンゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。
なお、本明細書において、ロールの表面硬度とは、JIS K 6301(加硫ゴム物理試験方法)の5.2の規定により測定した常態におけるスプリング硬さ(Hs)を意味する。
【0047】
長尺基材としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、テトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂のフィルムである耐熱性基材;プリプレグ基板(繊維強化樹脂基板の前駆体)が挙げられる。
長尺基材は耐熱性基材であるのが好ましく、ポリイミドフィルムがより好ましい。
フィルムである長尺基材の厚さは、10~200μmが好ましい。
長尺基材の表面の十点平均粗さは、0.01~0.05μmが好ましい。
長尺基材の表面は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよく、プラズマ処理されていてもよい。かかるシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
【0048】
前記長尺積層基材の表面の塗工層を加熱して液状分散媒を除去し、さらに加熱してFポリマーを溶融焼成して、Fポリマーを含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を形成するのが好ましい。
液状分散媒の除去に際する加熱は、100~200℃にて、0.1~30分間で行うのが好ましい。この際の加熱において液状分散媒は、完全に除去する必要はなく、F粒子のパッキングにより形成される層が自立膜を維持できる程度まで除去すればよい。また、加熱に際しては、空気を吹き付け、風乾によって液状分散媒の除去を促してもよい。
【0049】
Fポリマーの焼成に際する加熱は、Fポリマーの溶融温度以上の温度にて行うのが好ましく、360~400℃にて、0.1~30分間行うのがより好ましい。
それぞれの加熱における加熱装置としては、オーブン、通風乾燥炉が挙げられる。装置における熱源は、接触式の熱源(熱風、熱板等)であってもよく、非接触式の熱源(赤外線等)であってもよい。
また、それぞれの加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
また、それぞれの加熱における雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気のいずれであってもよい。
【0050】
F層は、本法による本分散液の塗工、加熱の工程を経て形成される。これら工程は1回ずつ行ってもよく、2回以上繰り返してもよい。例えば、長尺基材の表面に本法で本分散液を塗工し加熱してF層を形成し、さらに前記F層の表面に、本法で本分散液を塗工し加熱して、2層目のF層を形成してもよい。また、長尺基材の表面に本法で本分散液を塗工し加熱して液状分散媒を除去した段階で、さらにその表面に本法で本分散液を塗工し加熱してF層を形成してもよい。
【0051】
本法では、本分散液を、長尺基材の一方の表面にのみ塗工してもよく、長尺基材の両面に塗工してもよい。前者の場合、長尺基材層と、かかる長尺基材層の片方の表面にF層を有する長尺積層基材が得られ、後者の場合、長尺基材層と、かかる長尺基材層の両方の表面にF層を有する長尺積層基材が得られる。
本法では、長尺基材と、長尺基材の両面に、塗工層から形成されるF層を有する長尺積層体を、好適には次のいずれかのようにして得ることができる。
すなわち、長尺基材の片面に本法で塗工層を形成し、乾燥及び焼成して長尺基材の片面にF層を形成後、得られたF層を有する長尺基材を巻取り、次いで、前記F層を有する面と反対側の基材表面に本法で塗工層を形成してさらに乾燥及び焼成することで、基材の両面にF層を有する長尺積層体が得られる。
または、本法により、本分散液から形成される塗工層を有する長尺基材を得、さらに乾燥及び焼成して、基材表面にF層を有する長尺基材を得、本法を適用できる他の装置に、前記F層を有する長尺基材を走行させつつ、本分散液を、該他の装置により、前記F層を有する面と反対側の長尺基材表面に塗工し、さらに乾燥及び焼成することで、基材の両面にF層を有する長尺積層体が得られる。
あるいは、本法を適用できる複数の装置を用いて、本分散液を長尺基材の両面に塗工して、本分散液から形成される塗工層を長尺基材の両方の表面に有する長尺積層基材を得、さらに乾燥及び焼成して、基材の両面にF層を有する長尺積層体を得てもよい。
長尺基材層と、長尺基材の両方の表面にF層を有する長尺積層体は、より反りが発生しにくいため、その加工に際する取扱い性に優れる。
F層の厚さは、長尺積層体の用途によっても異なるが、20μm以上であるのが好ましく、20~150μmの範囲が好ましい。
なお、かかる長尺積層体から基材を分離すれば、Fポリマーを含むシートを得られる。
【0052】
F層の誘電率は2.4以下であるのが好ましく、2.0以下であるのがより好ましい。また、F層の誘電率は1.0超であるのが好ましい。
F層の誘電正接は、0.0022以下であるのが好ましく、0.0020以下であるのがより好ましい。また、F層の誘電正接は、0.0010超であるのが好ましい。
F層の熱伝導率は、1W/m・K以上であるのが好ましく、3W/m・K以上がより好ましい。なお、F層の熱伝導率とは、F層の面内方向における熱伝導率を意味する。
F層の線膨張係数は、100ppm/℃以下が好ましく、80ppm/℃以下がより好ましい。F層の線膨張係数の下限は、30ppm/℃である。なお、線膨張係数は、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定した値を意味する。
F層と長尺基材との剥離強度は、10~100N/cmが好ましい。
【0053】
本法で得られる長尺積層基材の好適な具体例としては、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。
かかる長尺積層基材は、電気特性に優れるF層を有するため、プリント基板材料として好適であり、具体的にはフレキシブル金属張積層板やリジッド金属張積層板としてプリント基板の製造に使用でき、特に、フレキシブル金属張積層板としてフレキシブルプリント基板の製造に好適に使用できる。かかるプリント基板の製造においては、伝送回路上に層間絶縁膜を形成してもよく、伝送回路上にソルダーレジストを積層してもよく、伝送回路上にカバーレイフィルムを積層してもよい。
【0054】
かかる長尺積層基材は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品等として有用である。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス用実装放熱基板、無線通信デバイスの放熱部材、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレード、パソコンやディスプレイの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、低酸素下で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材、スパッタや各種ドライエッチング装置等の処理ユニット内の放熱部品、電磁波シールドとして有用である。
本法により形成される長尺積層基材は、特にフレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや自動車向けの放熱基板として有用である。
【0055】
以上、本法について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されない。
例えば、本法は、上記実施形態の構成において、他の任意の工程を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてよい。
【実施例0056】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[Fポリマー]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)の粒子(D50:2.0μm、比表面積:7m/g)
[ノニオン性界面活性剤]
界面活性剤1:アセチレンジオール系骨格を有する、HLB値=3のアルコール系界面活性剤
界面活性剤2:主鎖にポリシロキサン鎖を有し、側鎖にポリエチレンオキシド基を有する、HLB値=13のシリコーン系界面活性剤
[セルロースエーテル]
セルロースエーテル1:置換度2.4のヒドロキシエチルセルロース
[芳香族系ポリマー]
ワニス1:芳香族ポリアミドイミド(PAI1)の前駆体を含む水ワニス(商品名「HP-1000」、昭和電工マテリアルズ社製)
[基材]
基材1:厚さ25μmの芳香族性ポリイミドフィルム(PI Advanced Materials社製「FG-100」)
【0057】
2.分散液の製造例
[製造例1]
F粒子1、界面活性剤1、界面活性剤2、セルロースエーテル1、ワニス1及び水を、自転公転撹拌機で撹拌し、F粒子1(33質量部)、界面活性剤1(3質量部)、界面活性剤2(3質量部)、セルロースエーテル1(0.1質量部)、PAI1(0.1質量部)及び水(60.8質量部)を含む分散液1(粘度:1000mPa・s、F粒子1の含有量33質量%(含有量割合:0.33))を得た。
[製造例2]
セルロースエーテル1の量を変化させたこと以外は製造例1と同様にして、分散液2(粘度:5000mPa・s、F粒子1の含有量33質量%(含有量割合:0.33))を得た。
【0058】
[製造例3]
セルロースエーテル1の量を変化させたこと以外は製造例1と同様にして、分散液3(粘度:10000mPa・s、F粒子1の含有量33質量%(含有量割合:0.33))を得た。
[製造例4]
F粒子1の量を変化させたこと以外は製造例1と同様にして、分散液4(粘度:3000mPa・s、F粒子1の含有量50質量%(含有量割合:0.5))を得た。
【0059】
3.長尺積層基材の製造
<例1>
回転するコーティングロールと、前記コーティングロールの上方に配され、前記コーティングロールの後方側にドクターナイフを備えたメタリングロールとから構成され、前記コーティングロールの後方側に設けられた液貯留部に塗布液を供給し、塗布液を前記コーティングロールと前記メタリングロールの間隙を通過させ、前記コーティングロールの前方側に配され、回転するバックアップロール上を走行する長尺基材の表面に塗工する塗工装置に、ロール・ツー・ロールプロセスにより基材1を走行させつつ、塗布液として分散液1を、基材1の表面に塗工して、基材1の表面に分散液1の塗工層を有する長尺積層基材1を製造した。
このとき、コーティングロールとメタリングロールの間隙の幅を100μmに設定し、バックアップロールの表面硬度は70度とした。
引き続いて、上記で得た長尺積層基材1を、通風乾燥炉(炉温150℃)に3分間で通過させて、水を除去して乾燥被膜を形成し、さらに遠赤外線炉(炉内入口、出口付近の炉温度300℃、中心付近の炉温度360℃)に5分間で通過させて、F粒子1を溶融焼成させた。
これにより、基材1の片面の表面にF粒子1の溶融焼成物とPAI1とを含むポリマー層を形成し、ポリマー層及び基材1層がこの順に形成された長尺積層体1をロール・ツー・ロールプロセスにより得た。
長尺積層体1におけるポリマー層の厚さは30μmであり、ポリマー層の厚さと分散液1中のF粒子1の含有量割合の逆数の積(以下、「積」とも記す。)が90.9と計算される。すなわち、間隙の幅は、かかる積の1.1倍である。
【0060】
<例2~6>
分散液1を、分散液2~4のそれぞれに変更するか、又はコーティングロールとメタリングロールの間隙の幅とバックアップロールの表面硬度を表1に示す値に変更した以外は、例1と同様にして、長尺積層基材2~6をそれぞれ製造した。Fポリマーを焼成させて得た、長尺積層体2~6におけるポリマー層の厚さは、それぞれ30μmであった。各例における前記積、及び間隙の幅との関係を表1に示す。
【0061】
4.長尺積層基材の評価
長尺積層体1~6のそれぞれのポリマー層について、流れ方向における筋目状パターンの発生有無を目視で観察し、以下の基準に従って表面性を評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
〇:塗工長1~100mにおいて筋目が発生せず、表面平滑性が高い。
△:塗工長1~100mにおいて端部に筋目が発生しているが、全体としての表面平滑性は高い。
×:塗工長1~100mにおいて全体に筋目が発生している。
【0062】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本法により得られる長尺積層基材は、Fポリマーの物性を高度に発現し、特にその表面外観に優れるポリマー層を有し、フレキシブルプリント配線基板等の各種用途に適用できる。