(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182995
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】粉末油脂を使用したアーモンドプードル代替食感改良組成物およびこれを使用した焼き菓子
(51)【国際特許分類】
A23L 25/00 20160101AFI20231220BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20231220BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20231220BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20231220BHJP
A23G 3/00 20060101ALI20231220BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A23L25/00
A21D2/36
A21D13/80
A21D13/00
A23G3/00
A23G3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096330
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】勝岡 花帆
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
4B036
【Fターム(参考)】
4B014GB11
4B014GG02
4B014GG04
4B014GG06
4B014GG11
4B014GG12
4B014GG14
4B014GK05
4B014GK07
4B014GK12
4B014GL09
4B014GL10
4B032DB05
4B032DB08
4B032DB22
4B032DG02
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4B032DK49
4B032DL20
4B032DP02
4B036LC01
4B036LE01
4B036LH09
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH15
4B036LH22
4B036LH26
4B036LH39
4B036LK03
(57)【要約】
【課題】アーモンドプードルのような食感改良効果を有するアーモンドプードル代替食感改良組成物およびこれを使用した焼き菓子を提供すること。
【解決手段】デュラム小麦粉、コーンフラワー、澱粉、乾燥おから粉末からなる群から選択される2種以上の粉状物及び粉末油脂から成るアーモンドプードル代替食感改良組成物であって、配合されている前記各粉状物の配合率は、それぞれが粉状物全体中50質量%を超えることがなく、前記粉末油脂は前記粉状物全体100質量部に対して50質量部以上70質量部以下であるアーモンドプードル代替食感改良組成物。また、これを使用した焼き菓子である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュラム小麦粉、コーンフラワー、澱粉、乾燥おから粉末からなる群から選択される2種以上の粉状物及び粉末油脂から成るアーモンドプードル代替食感改良組成物であって、配合されている前記各粉状物の配合率は、それぞれが粉状物全体中50質量%を超えることがなく、前記粉末油脂は前記粉状物全体100質量部に対して50質量部以上70質量部以下であるアーモンドプードル代替食感改良組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のアーモンドプードル代替食感改良組成物を使用した焼き菓子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末油脂を使用したアーモンドプードル代替食感改良組成物およびこれを使用した焼き菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
アーモンドプードルは、フィナンシェ等の焼き菓子に風味付けや食感改良等を目的として使用されているが、一般に高価であり、また酸化し易いため冷蔵して保存する等取り扱いが容易ではない。
このため、アーモンドプードルの代替品が求められている。
例えば、アーモンドプードルの代替物として、パン粉、オカラ、油分を必須成分として含み、これらを混合し乾燥して粉状にした生地改良剤が知られている。
必要に応じ、呈味原料、フレーバー、色素、乳化安定剤を添加し生地改良剤の構成とするが、アーモンドフレーバーを使用することでアーモンドプードル代替物となる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、アーモンドプードルに代わる食感改良組成物が求められている。
本発明の目的は、アーモンドプードルのような食感改良効果を有するアーモンドプードル代替食感改良組成物およびこれを使用した焼き菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、デュラム小麦粉、コーンフラワー、澱粉、乾燥おから粉末からなる群から選択される2種以上の粉状物及び粉末油脂を特定の割合で混合することで、アーモンドプードルのような食感改良効果を有するアーモンドプードル代替食感改良組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、デュラム小麦粉、コーンフラワー、澱粉、乾燥おから粉末からなる群から選択される2種以上の粉状物及び粉末油脂から成るアーモンドプードル代替食感改良組成物であって、配合されている前記各粉状物の配合率は、それぞれが粉状物全体中50質量%を超えることがなく、前記粉末油脂は前記粉状物全体100質量部に対して50質量部以上70質量部以下であるアーモンドプードル代替食感改良組成物である。
また、これを使用した焼き菓子である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物を焼き菓子に使用することで、アーモンドプードルを使用したような食感改良効果を得ることができる。
アーモンドフレーバーと併用すれば、アーモンドプードルの代替品として使用できる。
本発明は、クッキー類やケーキ類に、使用した場合、それぞれに特有の効果を得ることができる。
さっくりとした食感のクッキー類(クッキー、タルトなど)では、口溶けの良い食感の他にも、さっくりとした食感が得られる。
また、しっとりした食感のケーキ類(パウンドケーキ、マドレーヌ、フィナンシェ、パンドジェーヌなど)では、口溶けの良い食感の他にも、しっとりとした食感が得られる。
またアーモンドプードルは冷蔵保管であるが、本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物は常温保管が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、デュラム小麦粉、コーンフラワー、澱粉、乾燥おから粉末からなる群から選択される2種以上を粉状物として使用する。
本発明で使用する、デュラム小麦粉、コーンフラワーは原料となる穀粒を粉砕・篩分けして粉状にすることで調製できるが市販品も使用することができる。
本発明で使用する澱粉としては、特に限定はなく、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、米澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらの加工澱粉を挙げることができ、これらを単独又は組み合わせて用いることができ、市販品も使用することができる。
本発明で使用する乾燥おから粉末は、大豆又は脱脂大豆を原料として、豆乳、大豆ホエー等の水溶性たん白質等を抽出した残渣の「おから」を乾燥し、粉砕や造粒により得られる粉粒状物であり、市販品も使用することができる。
【0008】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物では、デュラム小麦粉、コーンフラワー、澱粉、乾燥おから粉末からなる群から選択される2種以上を、それぞれが粉状物全体中50質量%を超えることがないように使用する。
そのため、例えば、粉状物として、デュラム小麦粉、コーンフラワーの2種類のみを使用した場合は、デュラム小麦粉50質量部、コーンフラワー50質量部の配合割合となる。
3種類以上を使用した場合、それぞれが粉状物全体中50質量%を超えることがないように使用するので、例えば、デュラム小麦粉、コーンフラワー、澱粉、乾燥おから粉末を使用した場合は、実施例で示すように、デュラム小麦粉、コーンフラワー、澱粉のそれぞれが、50質量%を超えることがない。
それぞれの粉状物が50質量%を超えて配合された場合は、口溶け等の食感改良効果を十分に得ることができない。
【0009】
本発明で使用する粉末油脂は、水中油型乳化液若しくは油中水型乳化液を乾燥粉末化さして得ることができる他、油脂を乾燥粉末化して得ることもできる。
乳化液又は油脂の乾燥粉末化は、噴霧乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法等の公知の方法によって行うことができる。
本発明では市販の粉末油脂も使用できる。
本発明で使用する粉末油脂の使用量は粉状物全体100質量部に対して50質量部以上70質量部以下である。
粉末油脂の使用量が、粉状物全体100質量部に対して50質量部未満では、さっくりさ、しっとりさ、口溶けが劣る傾向となり好ましくない。
また、粉末油脂の使用量が、粉状物全体100質量部に対して70質量部を超えると保存性が劣るため好ましくない。
【0010】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物は、粉状物と粉末油脂を均一に混合して調製する。
混合方法は、均一に混合できれば特に限定はないが、少量の場合は、へら、しゃもじ、ホイッパー等を使用して手で混ぜることができる。
多量に混合する場合は、リボンミキサー、スクリューミキサー等の混合機が使用できる。
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物は、アーモンドプードルに比較して酸化され難く常温で1カ月程度保存できる。
【0011】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物は、アーモンドプードルを使用する焼き菓子、例えば、フィナンシェ、マドレーヌ等において、アーモンドプードルの一部又は全部の代替として使用でき、アーモンドプードルを使用したときのような食感を得ることができる。
この場合、必要に応じて別途アーモンドフレーバーを使用することで、アーモンドプードルを使用したときのような風味を得ることができる。
これ以外は、従来からアーモンドプードルを使用する焼き菓子に使用されている原材料を限定なく使用できる。
【実施例0012】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[製造例1 フィナンシェ]
アーモンドプードル90質量部、小麦粉100質量部、砂糖160質量部、卵白240質量部、ベーキングパウダー1質量部、食塩1質量部を縦型ミキサーで低速(回転:100回転/分)1分間、中速(回転数:175回転/分)1分間混ぜ、これに焦がしバター240質量部を加え、低速(回転:100回転/分)1分間混ぜフィナンシェ生地を調製した。
この生地30gをフィナンシェ型に入れ、185℃で18分間、オーブンで焼成した後、型からとり出し、フィナンシェを得た。
【0013】
[実施例1~6、比較例1~2]フィナンシェ様焼き菓子 粉状物の影響
表1に示す配合で、アーモンドプードル代替食感改良組成物を調製した。
表中、配合割合の単位は質量部である。
なお、以下の実施例、比較例において、使用した澱粉は、タピオカリン酸架橋澱粉(タピオカ)85質量%、馬鈴薯ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉15質量%を混合した
澱粉である。
また、粉末油脂は、植物油脂65質量%、マルトデキストリン23質量%、加工澱粉10質量%、水分2質量%の組成の粉末油脂を60質量%、植物油脂46.107%、乳化剤21.6%、カゼインナトリウム5.29%、酸化防止剤0.01%、香料0.003%、水分1.2%の組成の粉末油脂を40質量%配合したものを使用した。
前記フィナンシェの製造例1において、アーモンドプードルを、得られたアーモンドプードル代替食感改良組成物に変更した以外は、製造例1と同様にしてフィナンシェを得た。
得られた、フィナンシェを10名のパネラーにより以下の評価基準で食感を評価した。
・食感(さっくり感)
5点 アーモンドプードルを使用した時とほぼ同じさっくり感で非常に良い
4点 アーモンドプードルを使用した時よりややさっくり感が劣るが良い
3点 アーモンドプードルを使用した時よりさっくり感劣るが許容範囲
2点 アーモンドプードルを使用した時よりさっくり感が劣り許容範囲外で、悪い
1点 アーモンドプードルを使用した時よりさっくり感が非常に劣り許容範囲外で、非常に悪い
・食感(しっとり感)
5点 アーモンドプードルを使用した時とほぼ同じしっとり感で非常に良い
4点 アーモンドプードルを使用した時よりややしっとり感劣るが良い
3点 アーモンドプードルを使用した時よりしっとり感劣るが許容範囲
2点 アーモンドプードルを使用した時よりしっとり感が劣り許容範囲外で、悪い
1点 アーモンドプードルを使用した時よりしっとり感が非常に劣り許容範囲外で、非常に悪い
・食感(口溶け)
5点 アーモンドプードルを使用した時とほぼ同じ口溶けで非常に良い
4点 アーモンドプードルを使用した時よりやや口溶けが劣るが良い
3点 アーモンドプードルを使用した時より口溶けが劣るが許容範囲
2点 アーモンドプードルを使用した時より口溶けが劣り許容範囲外で、悪い
1点 アーモンドプードルを使用した時より口溶けが非常に劣り許容範囲外で、非常に悪い
また、アーモンドプードル代替食感改良組成物を常温で保存し、30日後の保存性について以下の基準で評価した。
○ 油の酸化臭が許容範囲内
× 油の酸化臭が許容範囲外
得られた結果を表1に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0014】
【0015】
粉状物全体中50質量%を超える粉状物を使用した場合は、満足できる効果が得られなかった。
【0016】
[実施例7~8、比較例3~4]フィナンシェ様焼き菓子 粉末油脂の影響
表2に示す配合で、アーモンドプードル代替食感改良組成物を調製した。
表中、配合割合の単位は質量部である。
前記フィナンシェの製造例1において、アーモンドプードルを、得られたアーモンドプードル代替食感改良組成物に変更した以外は、製造例1と同様にしてフィナンシェを得た。
得られたフィナンシェを実施例1と同様にして評価した。
得られた結果を表2に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0017】
【0018】
粉末油脂の使用量が粉状物全体100質量部に対して50質量部未満の場合(比較例3)は食感改良効果が劣り不適であった。
粉末油脂の使用量が粉状物全体100質量部に対して70質量部を超えた場合(比較例4)は保存性が劣り不適であった。
【0019】
[製造例2 クッキー]
アーモンドプードル45質量部、砂糖45質量部、バター100質量部を縦型ミキサーで低速(回転:100回転/分)1分間、中速(回転数:175回転/分)1分間混ぜ、そこに全卵15質量部を加え、中速(回転数:175回転/分)2分間混ぜ、さらに、そこに小麦粉100質量部を加え、低速(回転:100回転/分)1分間混ぜ、クッキー生地を調製した。
この生地を7mm厚に伸ばし、直径6cmのセルクル型でくり抜き、天板に載せ、150℃で15分間、オーブンで焼成しクッキーを得た。
【0020】
[実施例9~14、比較例5~6]クッキー 粉状物の影響
表3に示す配合で、アーモンドプードル代替食感改良組成物を調製した。
表中、配合割合の単位は質量部である。
前記クッキーの製造例2において、アーモンドプードルを、得られたアーモンドプードル代替食感改良組成物に変更した以外は、製造例2と同様にしてクッキーを得た。
得られた、クッキーを10名のパネラーにより以下の評価基準で食感を評価した。
・食感(さっくり感)
5点 アーモンドプードルを使用した時とほぼ同じさっくり感で非常に良い
4点 アーモンドプードルを使用した時よりややさっくり感劣るが良い
3点 アーモンドプードルを使用した時よりさっくり感劣るが許容範囲
2点 アーモンドプードルを使用した時よりさっくり感が劣り許容範囲外で、悪い
1点 アーモンドプードルを使用した時よりさっくり感が非常に劣り許容範囲外で、非常に悪い
・食感(口溶け)
5点 アーモンドプードルを使用した時とほぼ同じ口溶けで非常に良い
4点 アーモンドプードルを使用した時よりやや口溶けが劣るが良い
3点 アーモンドプードルを使用した時より口溶けが劣るが許容範囲
2点 アーモンドプードルを使用した時より口溶けが劣り許容範囲外で、悪い
1点 アーモンドプードルを使用した時より口溶けが非常に劣り許容範囲外で、非常に悪い
また、保存性について実施例1と同様に評価を行った。
得られた結果を表3に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0021】
【0022】
粉状物全体中50質量%を超える粉状物を使用した場合は、満足できる効果が得られなかった。
【0023】
[実施例15~16、比較例7~8]クッキー 粉末油脂の影響
表4に示す配合で、アーモンドプードル代替食感改良組成物を調製した。
表中、配合割合の単位は質量部である。
前記クッキーの製造例2において、アーモンドプードルを得られたアーモンドプードル代替食感改良組成物に変更した以外は、製造例2と同様にしてクッキーを得た。
得られたクッキーを実施例9と同様にして評価した。
得られた結果を表4に示す。
表中、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
【0024】
【0025】
粉末油脂の使用量が粉状物全体100質量部に対して50質量部未満の場合(比較例7)は食感改良効果が劣り不適であった。
粉末油脂の使用量が粉状物全体100質量部に対して70質量部を超えた場合(比較例8)は保存性が劣り不適であった。
【0026】
本発明のアーモンドプードル代替食感改良組成物はアーモンドプードルの代替として十分使用可能であった。