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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183035
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ウエーハの取り扱い方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H01L21/78 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096404
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA15
5F063DD89
5F063DD93
5F063DF12
5F063FF46
(57)【要約】
【課題】ウエーハを個々のデバイスチップに分割して次の工程に搬送する際に、デバイスチップの表面に、粉塵等の汚染物質が付着して、品質の低下を招くという問題を解消できるウエーハの取り扱い方法を提供する。
【解決手段】ウエーハ10を収容する開口Faを中央部に有するフレームFの開口Faにウエーハ10を収容し、フレームFの一方の面FbにダイシングテープT1を貼着すると共にウエーハ10を貼着してフレームユニットU1を形成するフレームユニット形成工程と、ウエーハ10の分割予定ライン14を加工して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、フレームFの他方の面FcにシートT2を貼着してウエーハ10をダイシングテープT1とシートT2とで包囲してパッケージユニットU2を形成するパッケージユニット形成工程と、パッケージユニットU2を搬送する搬送工程と、を含み構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの取り扱い方法であって、
ウエーハを収容する開口を中央部に有するフレームの該開口にウエーハを収容し、フレームの一方の面にダイシングテープを貼着すると共にウエーハを貼着してフレームユニットを形成するフレームユニット形成工程と、
ウエーハの分割予定ラインを加工して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
フレームの他方の面にシートを貼着してウエーハをダイシングテープとシートとで包囲してパッケージユニットを形成するパッケージユニット形成工程と、
該パッケージユニットを搬送する搬送工程と、
を含み構成されるウエーハの取り扱い方法。
【請求項2】
該パッケージユニットの内部に不活性ガスを充填する不活性ガス充填工程を含む請求項1に記載のウエーハの取り扱い方法。
【請求項3】
該不活性ガス充填工程は、
該パッケージユニット形成工程を不活性ガスの雰囲気下で実施することによりパッケージユニットの内部に不活性ガスを充填する請求項2に記載のウエーハの取り扱い方法。
【請求項4】
該不活性ガス充填工程は、
該パッケージユニット形成工程において、液体窒素をパッケージユニットの内部に充填し膨張させる請求項2に記載のウエーハの取り扱い方法。
【請求項5】
該パッケージユニット形成工程の前に、ウエーハを洗浄する洗浄工程が含まれる請求項1に記載のウエーハの取り扱い方法。
【請求項6】
該シートは熱圧着シートであり、
該パッケージユニット形成工程において、該熱圧着シートがフレームの他方の面に熱圧着される請求項1に記載のウエーハの取り扱い方法。
【請求項7】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シートであり、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかで構成される請求項6に記載のウエーハの取り扱い方法。
【請求項8】
該熱圧着シートをフレームの他方の面に熱圧着する際の加熱温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンシートの場合は120~140℃であり、該ポリプロピレンシートの場合は160~180℃であり、該ポリスチレンシートの場合は220~240℃である請求項7に記載のウエーハの取り扱い方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの取り扱い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ウエーハは、個々のデバイスチップに分割された後、デバイスチップをピックアップして配線基板にボンディングするボンディング工程に搬送されるため、中央に開口を有するフレームの該開口に収容され、ダイシングテープによって一体に形成される(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、ウエーハの表面に形成された分割予定ラインにウエーハの仕上がり厚さに対応する深さの溝を形成し、その後、ウエーハの裏面を研削して個々のデバイスチップに分割する先ダイシングと称する技術(例えば特許文献2を参照)においても、個々のデバイスチップに分割されたウエーハは、中央に開口を有するフレームの該開口に収容されダイシングテープによって一体に形成される。
【0005】
さらに、ウエーハの表面に形成された分割予定ラインに対応する内部にレーザー光線の集光点を位置付けて照射して改質層を形成し、その後ウエーハの裏面を研削して個々のデバイスチップに分割する技術(例えば特許文献3を参照)においても、個々のデバイスチップに分割されたウエーハは、中央に開口を有するフレームの該開口に収容されダイシングテープによって一体に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-242083号公報
【特許文献2】特開2010-183014号公報
【特許文献3】特開2020-021791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した種々の加工方法によりウエーハを個々のデバイスチップに分割した後、必ずしも直ぐに次の工程(例えばボンディング工程)が実施されるとは限らず、デバイスチップに分割されたウエーハに対する加工が長時間実施されないことがある。その場合、デバイスチップの表面に、粉塵等の汚染物質が付着して、品質の低下を招くという問題がある。
【0008】
上記したような問題は、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施する工場と、デバイスチップをピンクアップして配線基板にボンディングするボンディング工程を実施する工場との距離が離れている場合や、該分割工程を実施した後のウエーハを長時間保管することを前提とする場合等において特に問題となる。
【0009】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハを個々のデバイスチップに分割して次の工程に搬送する際に、デバイスチップの表面に、粉塵等の汚染物質が付着して、品質の低下を招くという問題を解消できるウエーハの取り扱い方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの取り扱い方法であって、ウエーハを収容する開口を中央部に有するフレームの該開口にウエーハを収容し、フレームの一方の面にダイシングテープを貼着すると共にウエーハを貼着してフレームユニットを形成するフレームユニット形成工程と、ウエーハの分割予定ラインを加工して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、フレームの他方の面にシートを貼着してウエーハをダイシングテープとシートとで包囲してパッケージユニットを形成するパッケージユニット形成工程と、該パッケージユニットを搬送する搬送工程と、を含み構成されるウエーハの取り扱い方法が提供される。
【0011】
該パッケージユニットの内部に不活性ガスを充填する不活性ガス充填工程を含むことが好ましい。該不活性ガス充填工程は、該パッケージユニット形成工程を不活性ガスの雰囲気下で実施することによりパッケージユニットの内部に不活性ガスを充填するようにしてもよい。また、該不活性ガス充填工程は、該パッケージユニット形成工程において、液体窒素をパッケージユニットの内部に充填し膨張させるようにしてもよい。さらに、該パッケージユニット形成工程の前に、ウエーハを洗浄する洗浄工程が含まれていてもよい。
【0012】
該シートは熱圧着シートであり、該パッケージユニット形成工程において、該熱圧着シートがフレームの他方の面に熱圧着されるものであってよい。また、該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シートであり、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかで構成されていてもよい。さらに、該熱圧着シートをフレームの他方の面に熱圧着する際の加熱温度は、該熱圧着シートが該ポリエチレンシートの場合は120~140℃であり、該ポリプロピレンシートの場合は160~180℃であり、該ポリスチレンシートの場合は220~240℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のウエーハの取り扱い方法は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハの取り扱い方法であって、ウエーハを収容する開口を中央部に有するフレームの該開口にウエーハを収容し、フレームの一方の面にダイシングテープを貼着すると共にウエーハを貼着してフレームユニットを形成するフレームユニット形成工程と、ウエーハの分割予定ラインを加工して個々のデバイスチップに分割する分割工程と、フレームの他方の面にシートを貼着してウエーハをダイシングテープとシートとで包囲してパッケージユニットを形成するパッケージユニット形成工程と、該パッケージユニットを搬送する搬送工程と、を含み構成されることから、ウエーハを個々のデバイスチップに分割した後、直ちに後の工程が実施されない場合であっても、ウエーハの表面がシートによって保護されており、デバイスチップの表面に粉塵等が付着して品質を低下させるという問題が解消する。また、パッケージユニットの内部に不活性ガスを充填する場合は、ウエーハに形成されたデバイスの金属部分の酸化が防止され、分割された後のデバイスチップの品質の維持が良好に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フレームユニット形成工程の実施態様を示す斜視図である。
図2】分割工程の実施態様を示す斜視図である。
図3】洗浄工程の実施態様を示す斜視図である。
図4】パッケージユニット形成工程及び不活性ガス充填工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】分割工程の別の実施態様における切削溝を形成する態様を示す斜視図である。
図6図5に示す切削溝に沿ってウエーハを分割する態様を示す斜視図である。
図7】分割工程の更なる別の実施態様においてウエーハに改質層を形成する態様を示す斜視図である。
図8図7に記載の実施態様により改質層を形成したウエーハを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの取り扱い方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0016】
図1には、本実施形態におけるウエーハの取り扱い方法において扱われる未加工のウエーハ10が示されている。ウエーハ10は、例えばシリコン(Si)の基板で構成され、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されたウエーハである。
【0017】
図1に示すウエーハ10を用意したならば、ウエーハ10を収容可能な開口Faを中央部に有する環状のフレームFの該開口Faにウエーハ10を位置付けて収容し、フレームFの一方の面Fb(図では下面側)にダイシングテープT1の外周を貼着し、さらにウエーハ10の裏面10bをダイシングテープT1の中央部に貼着して、ウエーハ10とフレームFとダイシングテープT1とを一体としたフレームユニットU1(図1の最下段を参照)を形成する(フレームユニット形成工程)。なお、本実施形態のダイシングテープT1は、表面に糊層を含む粘着テープであるが、表面に糊層を有しない熱圧着シートを使用して加熱・押圧により貼着してもよい。
【0018】
次いで、ウエーハ10の分割予定ライン14を加工して個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施する。該分割工程は、例えば、図2に示す切削装置20(一部のみを示している)を使用して実施される。
【0019】
切削装置20は、フレームユニットU1を吸引保持するチャックテーブル(図示は省略する)と、該チャックテーブルに吸引保持されたフレームユニットU1のウエーハ10を切削する切削手段21とを備える。該チャックテーブルは、回転自在に構成され、図中矢印Xで示すX軸方向にチャックテーブルを加工送りするX軸送り手段(図示は省略する)を備えている。切削手段21は、図中矢印Yで示すY軸方向に配設されたスピンドルハウジング22と、該スピンドルハウジング22に回転自在に保持されるスピンドル23と、スピンドル23の先端に保持された環状の切削ブレード24とを備えると共に、切削ブレード24をY軸方向で割り出し送りするY軸送り手段(図示は省略する)を備えている。スピンドル23は、図示を省略するスピンドルモータにより回転駆動される。スピンドルハウジング22の先端部には、スピンドル23を覆うブレードカバー25が配設され、ブレードカバー25には、切削水を導入する切削水導入口26と、切削水導入口26から導入された切削水を切削ブレード24により切削加工される箇所に噴射する切削水噴射ノズル27が配設されている。
【0020】
該分割工程を実施するに際し、まず、ウエーハ10の表面10aを上方に向けて切削装置20の該チャックテーブルに載置して吸引保持し、図示を省略するアライメント手段を使用して、ウエーハ10の所定の分割予定ライン14をX軸方向に整合させると共に、切削ブレード24との位置合わせを実施する。次いで、矢印R1で示す方向に高速回転させた切削ブレード24をX軸方向に整合させた所定の分割予定ライン14に位置付けて、表面10a側から矢印Zで示すZ軸方向に切り込ませると共に、該チャックテーブルをX軸方向に加工送りしてウエーハ10を分割する分割溝100を形成する。さらに、前記の分割溝100を形成した分割予定ライン14にY軸方向で隣接する未加工の分割予定ライン14上に該Y軸送り手段を作動して、切削手段21の切削ブレード24を割り出し送りして、上記と同様にして分割溝100を形成する切削加工を実施する。これらを繰り返すことにより、X軸方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って分割溝100を形成する。次いで、チャックテーブルを90度回転し、先に分割溝100を形成した方向と直交する方向をX軸方向に整合させ、上記した切削加工を新たにX軸方向に整合させたすべての分割予定ライン14に対して実施し、ウエーハ10に形成されたすべての分割予定ライン14に沿って分割溝100を形成する。このように分割工程を実施することで、ウエーハ10をデバイス12ごとのデバイスチップに分割する。
【0021】
本実施形態では、上記した分割工程を実施した後、図3に示す洗浄工程を実施する。該洗浄工程を実施するに際しては、上記のフレームユニットU1を、例えば、切削装置20に配設された図示を省略する洗浄装置に搬送する。該洗浄装置において高速に回転可能に配設されたスピンナーテーブル(図示は省略している)にフレームユニットU1を吸引保持し、図3に示す洗浄水供給ノズル28をウエーハ10の上部に位置付けると共に矢印R2で示す水平方向に揺動させて、フレームユニットU1を矢印R3で示す方向に高速で回転させながら、洗浄水供給ノズル28のノズル先端部28aから洗浄水Wを噴射する。これにより、上記した分割工程においてウエーハ10の表面10aに付着した切削屑を含む粉塵を洗い流し、フレームユニットU1の表面を洗浄する。なお、図示は省略するが、該洗浄工程を実施した後は、適宜の乾燥工程を実施してフレームユニットU1を乾燥させる。
【0022】
上記したように分割工程を実施したならば、図4に基づき説明するパッケージユニット形成工程を実施する。
【0023】
パッケージユニット形成工程では、まず、フレームユニットU1を、図示を省略する回転可能な保持テーブルに載置して、図4(a)に示すように、フレームユニットU1全体を覆うことが可能な寸法のシートT2を用意する。次いで、シートT2をフレームFの他方の面Fc(図中上方側の面)に載置して貼着する。この時、該シートT2と、フレームユニットU1の上面とにより形成される内部の空間が不活性ガス(例えば、窒素(N))によって満たされるように不活性ガス充填工程を実施する。
【0024】
不活性ガス充填工程は、例えば、該パッケージユニット形成工程を実施する作業空間Sを密閉された空間にすることができるケース(図示を省略する)で形成し、該作業空間Sに不活性ガスを注入して不活性ガス雰囲気としたり、シートT2をフレームFの他方の面Fcに貼着する直前に、フレームユニットU1の上面に、図4(a)に示すような液体窒素供給手段30を位置付けて、液体窒素供給ノズル32から所定量の液体窒素34をフレームユニットU1上に滴下したりすることにより実現することができる。液体窒素34をフレームユニットU1上に滴下する場合は、液体窒素34を滴下した後、液体窒素供給手段30を速やかにシートT2の貼着を妨げない位置に移動して、該シートT2をフレームユニットU1上に載置する。なお、上記した不活性ガスは、窒素(N)に限定されず、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等、工業用で採用される周知の不活性ガスを適宜選択することが可能である。
【0025】
該シートT2は、例えば、加熱・押圧により貼着される熱圧着シートにより構成され、熱圧着シートとしては、例えば、ポリオレフィン系シートが採用される。ポリオレフィン系シートを採用する場合は、例えば、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかが選択される。上記したように、フレームユニットU1のフレームFの他方の面FcにシートT2を載置したならば、図4(b)に示すように、熱圧着手段40を用意する。熱圧着手段40は加熱ローラ42を備えている。加熱ローラ42の内部には、図示を省略する加熱ヒータ及び温度センサが配設されている。シートT2を貼着する際には、加熱ローラ42の表面42aを、シートT2が粘着力を発揮する所定の温度まで昇温すると共にフレームFの他方の面Fcに沿ってシートT2を押圧する。加熱ローラ42をフレームFに押圧したならば、加熱ローラ42を矢印R4で示す方向に回転させると共に、フレームユニットU1を保持する保持テーブルを矢印R5で示す方向に回転する。以上によりシートT2がフレームFの他方の面Fcの全周に貼着される。
【0026】
上記したシートT2として採用する熱圧着シートをフレームFの他方の面Fcに熱圧着する際の加熱温度は、該熱圧着シートがポリエチレンシートの場合は120~140℃であり、ポリプロピレンシートの場合は160~180℃であり、ポリスチレンシートの場合は220~240℃である。このような温度に加熱することで、熱圧着シートが軟化して粘着力が発揮され、熱圧着シートの貼着面に糊層が形成されていなくてもフレームFの他方の面FcにシートT2が貼着される。なお、該熱圧着シートが粘着力を発揮しても加熱ローラ42が該熱圧着シートを巻き込まないように、加熱ローラ42の表面42aにはフッ素樹脂がコーティングされている。
【0027】
上記したように、シートT2をフレームFの他方の面Fcの全周に貼着したならば、図4(c)に示す切断手段50を用意し、回転可能な切削ブレード52をフレームFの他方の面Fc上に位置付ける。次いで、切削ブレード52を矢印R6で示す方向に回転させると共に、フレームFを矢印R7で示す方向に回転させる。これにより、シートT2が貼着された環状のフレームFに沿って切削溝110を形成する。
【0028】
上記したように、シートT2に切削溝110が形成されたことから、図4(d)の上段に示すように、シートT2のうち、該切削溝110の内側領域のシートT2bを残し、外側領域のシートT2aをフレームFから剥離して除去する。これにより、図4(d)の下段に示すように、フレームFの他方の面Fcに貼着された内側領域のシートT2bが残されて、ウエーハ10を上記のダイシングテープT1とシートT2bとで包囲したパッケージユニットU2が形成される。以上によりパッケージユニット形成工程が完了する。上記したように、パッケージユニット形成工程を実施するに際し、パッケージユニットU2の内部に不活性ガスが充填されることで、ウエーハ10のデバイス12を構成するボンディングパッド等の金属部の酸化が防止される。また、液体窒素34をパッケージユニットU2の内部に滴下して充填した場合は、シートT2を熱圧着する過程で液体窒素34が気化して膨張するため、パッケージユニットU2内の空気が排出されると共に、シートT2がウエーハ10の表面10aに付着することが抑制される。
【0029】
パッケージユニット形成工程が完了したならば、該パッケージユニットU2を次工程に搬送する搬送工程を実施する。該搬送工程は、例えば、遠距離にあるピックアップ工程、ボンディング工程を実施する工場に搬送する場合、又は該ピックアップ工程、ボンディング工程が実施される前に、工場の所定箇所に保管する場合も含む。
【0030】
上記した本実施形態のウエーハの取り扱い方法によれば、ウエーハ10を個々のデバイスチップに分割した後、直ちに後の工程が実施されない場合であっても、ウエーハ10の表面10aがシートT2bによって保護されていることから、デバイスチップの表面に粉塵等が付着して品質を低下させるという問題が解消する。また、上記した実施形態では、パッケージユニットU2の内部に不活性ガスが充填されていることで、ウエーハ10に形成されたデバイス12の金属部の酸化が防止され、分割された後のデバイスチップの品質の維持が実現される。
【0031】
上記した実施形態の分割工程では、図2に記載した切削装置20のみを使用して実施するように説明したが、本発明においてウエーハ10の分割予定ライン14を加工して個々のデバイスチップに分割する(分割工程)方法はこれに限定されず、以下に説明する別の形態により分割する場合も含む。
【0032】
図5(a)には、図2に基づき説明した切削装置20が示されている(詳細な説明については省略する)。図1に基づき説明した未加工のウエーハ10を用意したならば、切削装置20の図示を省略するチャックテーブルに、表面10aを上方に向けたウエーハ10を載置して吸引保持し、図示を省略するアライメント手段を使用してウエーハ10の所定の分割予定ライン14をX軸方向に整合させると共に、切削ブレード24との位置合わせを実施する。次いで、矢印R1で示す方向に高速回転させた切削ブレード24をX軸方向に整合させた所定の分割予定ライン14に位置付けて、表面10a側から矢印Zで示すZ軸方向に切り込ませると共に、該チャックテーブルをX軸方向に加工送りして、図5(b)に示すように、ウエーハ10の仕上がり厚さに対応する深さの切削溝102を形成する。さらに、前記の切削溝102を形成した分割予定ライン14にY軸方向で隣接する未加工の分割予定ライン14上に該Y軸送り手段を作動して、切削手段21の切削ブレード24を割り出し送りして、上記と同様の切削溝102を形成する切削加工を実施する。これらを繰り返すことにより、X軸方向に沿うすべての分割予定ライン14に沿って切削溝102を形成する。次いで、該チャックテーブルを90度回転し、先に切削溝102を形成した方向と直交する方向をX軸方向に整合させ、上記した切削加工を新たにX軸方向に整合させたすべての分割予定ライン14に対して実施する。以上により、図5(c)に示すように、ウエーハ10に形成されたすべての分割予定ライン14に沿って切削溝102が形成される。ウエーハ10の表面10aに形成されたすべての分割予定ライン14に沿って上記の切削溝102を形成したならば、図5(c)に示すように、ウエーハ10の切削溝102が形成された表面10aに保護テープT3を貼着する。
【0033】
次いで、切削溝102を形成したウエーハ10を図6(a)に示す研削装置60(一部のみ示している)に搬送する。図6(a)に示すように、研削装置60は、チャックテーブル61と、研削手段62とを備えている。研削手段62は、図示しない回転駆動機構により回転させられる回転スピンドル63と、回転スピンドル63の下端に装着されたホイールマウント64と、ホイールマウント64の下面に取り付けられる研削ホイール65とを備え、研削ホイール65の下面には複数の研削砥石66が環状に配設されている。
【0034】
研削装置60にウエーハ10を搬送し、保護テープT3が貼着された面を下方に向け、裏面10bを上方に向けてチャックテーブル61に載置して吸引保持したならば、研削手段62の回転スピンドル63を図6(a)において矢印R9で示す方向に、例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル61を矢印R10で示す方向に、例えば300rpmで回転させる。そして、図示しない研削水供給手段により、研削水をウエーハ10の裏面10b上に供給しつつ、研削砥石66をウエーハ10の裏面10bに接触させ、研削ホイール65を、例えば1μm/秒の研削送り速度で下方に向けて研削送りする。この際、図示しない接触式の測定ゲージによりウエーハ10の厚みを測定しながら研削を進めることができ、ウエーハ10の裏面10bを所定量研削し、ウエーハ10を所定の仕上がり厚さになるまで研削する。該仕上がり厚さになるまで研削することにより、図6(b)に示すように、ウエーハ10の裏面10bに先に形成した切削溝102が表出して、ウエーハ10のデバイス12が個々のデバイスチップに分割される。このようにして分割工程が完了したならば、必要に応じて図示を省略する洗浄工程、乾燥工程等を実施する。
【0035】
上記したように、図5に示す切削装置20を使用してウエーハ10の分割予定ライン14に切削溝102を形成する加工を施し、図6に示す研削装置60を使用してウエーハ10を個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施した場合は、ウエーハ10の表面10aに保護テープT3を貼着した状態で、図1に基づき説明したフレームユニット形成工程を実施すると共に、ウエーハ10の表面10a側に貼着した保護テープT3を剥離する。これにより、図3に基づき説明した洗浄工程が完了した状態と同様の状態となる。この場合、先に説明した実施形態とは、フレームユニット形成工程と分割工程の順番が前後することになるが、本発明には、上記した図5、6に基づき説明した形態で実施する場合も含まれる。
【0036】
上記したように、図5図6に基づき説明した分割工程を実施し、その後フレームユニット形成工程を実施したならば、その後は、図4に基づき説明したパッケージユニット形成工程、搬送工程を実施することができ、先に説明した実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0037】
さらに、本発明は、上記した実施形態に限定されず、図7、8に基づき説明する以下の実施形態も含まれる。
【0038】
図1に基づき説明した未加工のウエーハ10を用意したならば、図7に示すレーザー加工装置70(一部のみを示している)に搬送する。レーザー加工装置70は、ウエーハ10を保持するチャックテーブル71と、チャックテーブル71に保持されたウエーハ10にレーザー光線LBを照射するレーザー光線照射手段72とを備えている。レーザー光線照射手段72は、図示を省略するレーザー発振器と、集光器73とを含み、該集光器73からウエーハ10に対し透過性を有する波長のレーザー光線LBを照射する手段である。チャックテーブル71は、チャックテーブル71と集光器73とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、チャックテーブル71と集光器73とを相対的にX軸方向と直交するY軸方向に加工送りするY軸送り手段と、該保持手段を回転させる回転駆動手段とを備えている(いずれも図示は省略する)。
【0039】
レーザー加工装置70に搬送されたウエーハ10は、裏面10bを上方に向けられてチャックテーブル71に載置され吸引保持される。チャックテーブル71に保持されたウエーハ10は、レーザー加工装置70に配設された裏面10b側から分割予定ライン14を検出可能な赤外線カメラ(図示は省略する)を用いて撮像されて該分割予定ライン14の位置を検出すると共に、該回転駆動手段によってウエーハ10を回転して所定方向の分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。検出された分割予定ライン14の位置の情報は、図示しない制御手段に記憶される。
【0040】
上記した赤外線カメラによって検出された位置情報に基づき、所定方向の分割予定ライン14の加工開始位置にレーザー光線照射手段72の集光器73を位置付け、ウエーハ10の分割予定ライン14に対応する内部にレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射すると共に、チャックテーブル71と共にウエーハ10をX軸方向に加工送りしてウエーハ10の所定の分割予定ライン14の内部に沿ってレーザー光線LBを照射して改質層120を形成する。所定の分割予定ライン14に沿って改質層120を形成したならば、ウエーハ10をY軸方向に分割予定ライン14の間隔だけ割り出し送りして、Y軸方向で隣接する未加工の分割予定ライン14を集光器73の直下に位置付ける。そして、上記したのと同様にしてレーザー光線LBの集光点をウエーハ10の分割予定ライン14の内部に位置付けて照射し、ウエーハ10をX軸方向に加工送りして改質層120を形成する。同様にして、ウエーハ10をX軸方向、及びY軸方向に加工送りして、X軸方向に沿うすべての分割予定ライン14に対応する内部に改質層120を形成する。次いで、ウエーハ10を90度回転させて、既に改質層120を形成した分割予定ライン14に直交する方向の未加工の分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。そして、残りの各分割予定ライン14の内部に、上記したのと同様にしてレーザー光線LBの集光点を位置付けて照射して、図8に示すように、ウエーハ10のすべての分割予定ライン14の内部に沿って改質層120を形成する。なお、本実施形態では、分割予定ライン14に沿って集光点の深さ位置が異なるように3回のレーザー光線LBの照射を実施することで、図8の下段に示すように、3層のレーザー加工痕からなる改質層120が形成される。
【0041】
上記したように、レーザー加工により、分割予定ライン14に沿って改質層120を形成したならば、図示を省略する外力付加手段を使用して、ウエーハ10全体に外力を付加し、改質層120が形成された分割予定ライン14に沿ってウエーハ10を個々のデバイスチップに分割する(分割工程)。なお、外力付加手段は、例えば、図6に基づき説明した研削装置60を使用して、ウエーハ10の裏面10bを研削することにより外力を付加したり、弾力を有する回転ローラ(図示は省略する)を使用してウエーハ10の裏面10bから外力を付加したり、さらには、ウエーハ10をテープ(図示は省略する)に貼着して該テープを放射状に拡張することでウエーハ10に外力を付加したりすることができる。なお、図7に基づき説明したレーザー加工では、ウエーハ10の裏面10b側からレーザー光線LBを照射したが、本発明はこれに限定されず、分割予定ライン14上にレーザー光線LBの妨げとなる障害物(電極等)がない場合は、ウエーハ10の表面10a側から照射することもできる。
【0042】
上記したレーザー加工装置70を使用して、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿って改質層120を形成し、外力付加手段を使用してウエーハ10を分割予定ライン14に沿って個々のデバイスチップに分割したならば、その後は、図4に基づき説明したパッケージユニット形成工程、搬送工程を実施することができ、先に説明した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0043】
なお、本発明は、本発明により加工されたウエーハ10を、遠距離にある工場に搬送する場合、次の工程が実施される前に、工場の所定箇所に長時間保管する場合に限定して適用されるものではない。次の工程が遠隔地の工場でない場合や、次の工程まで長時間保管されない場合であっても、ウエーハ10に形成されたデバイス12が、僅かな汚染も許容されないデバイスであったり、搬送経路が粉塵等の飛散が懸念される経路であったりする場合には、本発明のウエーハの取り扱い方法を適用することで、デバイスチップを粉塵等から保護する効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:切削装置
21:切削手段
22:スピンドルハウジング
23:スピンドル
24:切削ブレード
25:ブレードカバー
26:切削水導入口
27:切削水噴射ノズル
28:洗浄水供給ノズル
30:液体窒素供給手段
32:液体窒素供給ノズル
34:液体窒素
40:熱圧着手段
42:加熱ローラ
42a:表面
50:切断手段
52:切削ブレード
60:研削装置
61:チャックテーブル
62:研削手段
63:回転スピンドル
64:ホイールマウント
65:研削ホイール
66:研削砥石
70:レーザー加工装置
71:チャックテーブル
72:レーザー光線照射手段
73:集光器
100:分割溝
110:切削溝
120:改質層
T1:ダイシングテープ
T2:シート
T3:保護テープ
U1:フレームユニット
U2:パッケージユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8