(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018304
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】マニホールド、ヘッドモジュール、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
B41J2/14 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122332
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 昌宏
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG71
2C057AG75
(57)【要約】
【課題】装置のコストダウンを図ることができるマニホールド、ヘッドモジュール、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置を提供する。
【解決手段】マニホールドは、液体を貯留する壁の一部がダンパー部材22などの弾性体からなっている。弾性体からなる壁に直交する直交壁に液体吐出ヘッドに接続するための2つのヘッド接続部を有し、直交壁に対向する対向壁にタンクに接続するためのタンク接続部を有している。2つのヘッド接続部は、直交壁の長手方向に離間して配置されており、弾性体は、対向壁から直交壁へ向かって広がる形状となっている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する壁の一部が弾性体からなり、複数の液体吐出ヘッドに接続されたマニホールドにおいて、
前記弾性体からなる壁に直交する直交壁に前記液体吐出ヘッドに接続するための2つのヘッド接続部を有し、前記直交壁に対向する対向壁にタンクに接続するためのタンク接続部を有し、
前記2つのヘッド接続部は、前記直交壁の長手方向に離間して配置されており、
前記弾性体は、前記対向壁から前記直交壁へ向かって広がる形状であることを特徴とするマニホールド。
【請求項2】
請求項1に記載のマニホールドにおいて、
前記対向壁が上壁であり、
前記長手方向の断面において、液体を貯留する液体貯留部の形状が、上部から下部に向かって広がる形状であることを特徴とするマニホールド。
【請求項3】
請求項2に記載のマニホールドにおいて、
前記タンク接続部は、前記対向壁の前記長手方向の中央に設けられていることを特徴とするマニホールド。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載のマニホールドにおいて、
前記直交壁の前記長手方向の両端に前記ヘッド接続部が設けられていることを特徴とするマニホールド。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載のマニホールドにおいて、前記直交壁の短手方向の断面において、前記弾性体の縁部は、前記弾性体の中央部よりも、外側に位置していることを特徴とするマニホールド。
【請求項6】
請求項5に記載のマニホールドにおいて、
前記弾性体は、中央部が当該マニホールドの内部側へ向けて突出する形状であることを特徴とするマニホールド。
【請求項7】
請求項5または6に記載のマニホールドにおいて、
前記短手方向の断面において、前記ヘッド接続部および前記タンク接続部は、前記短手方向の中央に設けられたおり、
前記弾性体の中央部は、前記ヘッド接続部の弾性体側端部と前記タンク接続部の弾性体側端部とを結んだ線と、前記短手方向の中央との間に位置することを特徴とするマニホールド。
【請求項8】
複数の液体吐出ヘッドと、請求項1乃至7いずれか一項に記載のマニホールドとを備えることを特徴とするヘッドモジュール。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッドモジュールにおいて、
前記マニホールドは、複数の液体吐出ヘッドへ液体を移送する供給マニホールド、および/または、複数の液体吐出ヘッドから液体が移送される排出マニホールドであることを特徴とするヘッドモジュール。
【請求項10】
請求項1乃至7いずれか一項に記載のマニホールド、又は、請求項8または9に記載のヘッドモジュールを備えることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニホールド、ヘッドモジュール、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を貯留する壁の一部が弾性体からなり、複数の液体吐出ヘッドに接続されたマニホールドが知られている。
【0003】
特許文献1には、上記マニホールドとして分配タンクが、直方形状であり、分配タンクの壁部の一部を構成する弾性体たる可撓性部材が長方形状であるものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装置のコストダウンを図る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、液体を貯留する壁の一部が弾性体からなり、複数の液体吐出ヘッドに接続されたマニホールドにおいて、前記弾性体からなる壁に直交する直交壁に前記液体吐出ヘッドに接続するための2つのヘッド接続部を有し、前記直交壁に対向する対向壁にタンクに接続するためのタンク接続部を有し、前記2つのヘッド接続部は、前記直交壁の長手方向に離間して配置されており、前記弾性体は、前記対向壁から前記直交壁へ向かって広がる形状であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、装置のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態におけるインクジェット記録装置の概略構成を示す模式図。
【
図5】液体循環機構の構成を説明するための説明図。
【
図6】供給側マニホールドと排出側マニホールドの主走査方向の概略断面図。
【
図7】供給側マニホールドに伝播した液体吐出ヘッドの振動の吸収について説明する図。
【
図8】供給側マニホールドの副走査方向の概略断面図。
【
図9】液体を吐出する装置の他の一例についての要部平面説明図。
【
図11】液体吐出ユニットの他の一例についての要部平面説明図。
【
図12】液体吐出ユニットの更に他の一例についての正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0009】
[実施形態1]
[全体説明]
図1は、本実施形態1におけるインクジェット記録装置の概略構成を示す模式図である。
本実施形態1のインクジェット記録装置1は、主に、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されている。インクジェット記録装置1においては、給紙部100から給紙されるシート材としての記録材である用紙Pに対し、画像形成部200で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、用紙上に付着したインクを乾燥部300において乾燥させた後、用紙を排紙部400から排紙する。
【0010】
[給紙部]
給紙部100は、主に、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ110と、給紙トレイ110から用紙を1枚ずつ分離して送り出す給送装置120と、用紙を画像形成部200へ送り込むレジストローラ対130とから構成されている。給送装置120には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置120により給紙トレイ110から送り出された用紙は、その先端がレジストローラ対130に到達した後、レジストローラ対130が所定のタイミングで駆動することにより、画像形成部200へ給紙される。なお、本実施形態において、給紙部100は、画像形成部200へ用紙Pを送り出すものであれば、その構成に制限はない。
【0011】
[画像形成部]
画像形成部200は、主に、給紙された用紙Pを受け取って用紙搬送ドラム210へ渡す受け渡し胴201と、受け渡し胴201によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する用紙搬送ドラム210とを備えている。また、用紙搬送ドラム210に担持された用紙Pに向けてインクを吐出する液体吐出ユニット230と、用紙搬送ドラム210によって搬送された用紙Pを乾燥部300へ受け渡す渡し胴202とを備えている。
【0012】
給紙部100から画像形成部200へ搬送されてきた用紙Pは、受け渡し胴201の表面に設けられた用紙グリッパによって先端が把持され、受け渡し胴201の表面移動に伴って搬送される。受け渡し胴201により搬送された用紙は、用紙搬送ドラム210との対向位置で用紙搬送ドラム210へ受け渡される。
【0013】
用紙搬送ドラム210の表面にも用紙グリッパが設けられており、用紙の先端が用紙グリッパによって把持される。また、用紙搬送ドラム210の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置211によって用紙搬送ドラム210の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。受け渡し胴201から用紙搬送ドラム210へ受け渡された用紙Pは、用紙グリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって用紙搬送ドラム210の表面に吸着して、用紙搬送ドラム210の表面移動に伴って搬送される。
【0014】
本実施形態の液体吐出ユニット230は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを吐出して画像を形成するものである。液体吐出ユニット230は、インクごとに個別の液体吐出ヘッドを有するヘッド装置220C,220M,220Y,220Kを備えている。液体吐出ヘッドは、液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0015】
ヘッド装置220C,220M,220Y,220Kの液体吐出ヘッドは、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙搬送ドラム210に担持された用紙Pが液体吐出ユニット230との対向領域を通過する際に、各ヘッド装置220C,220M,220Y,220Kの液体吐出ヘッドから各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。なお、本実施形態において、画像形成部200は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
【0016】
[乾燥部]
乾燥部300は、主に、画像形成部200で用紙P上に付着したインクを乾燥させるための乾燥機構301と、画像形成部200から搬送されてくる用紙Pを搬送する搬送機構302とから構成されている。画像形成部200から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構302に受け取られた後、乾燥機構301を通過するように搬送され、排紙部400へ受け渡される。乾燥機構301を通過する際、用紙P上のインクには乾燥処理が施され、これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着するとともに、用紙Pのカールが抑制される。
【0017】
[排紙部]
排紙部400は、主に、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ410から構成されている。乾燥部300から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ410上に順次積み重ねられて保持される。なお、本実施形態において、排紙部400は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0018】
[その他の機能部]
本実施形態のインクジェット記録装置1は、給紙部100、画像形成部200、乾燥部300、排紙部400から構成されているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部100と画像形成部200との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部300と排紙部400との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
【0019】
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。また、後処理部としては、例えば、画像形成部200で画像が形成された用紙を反転させて再び画像形成部200へ送って用紙の両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理が挙げられる。また、後処理部としては、画像が形成された複数枚の用紙を綴じる処理なども挙げられる。しかし、後処理の内容についても特に制限はない。
【0020】
図2は、液体吐出ユニット230の概略構成図である。
本実施形態の液体吐出ユニット230の各ヘッド装置220C,220M,220Y,220Kには、複数の液体吐出ヘッド221C,221M,221Y,221Kが、主走査方向(用紙搬送ドラム210の軸方向)に千鳥状に配列されている。具体的には、複数の液体吐出ヘッドが主走査方向に等間隔で配置された2つのヘッド群で構成され、2つのヘッド群の主走査方向の位置を互いに異ならせている。
【0021】
各ヘッド装置220C,220M,220Y,220Kは、2つのヘッド群からそれぞれ2個(合計4個)の液体吐出ヘッド221を有するヘッドモジュール222が主走査方向に2つ並んで配置されている。
【0022】
図3は、ヘッドモジュール222の概略斜視図であり、
図4は、マニホールド部223の分解斜視図である。
図3に示すように、ヘッドモジュール222は、マニホールド部223を有している。
マニホールド部223は、2つの液体吐出ヘッド221へ液体を供給する供給側マニホールド20と、2つの液体吐出ヘッド221から液体が排出される排出側マニホールド30とが、それぞれ2つ設けられている。2つのヘッド群のうち、一方のヘッド群の2つの液体吐出ヘッドへ液体を供給する供給側マニホールド20と背中合わせに他方のヘッド群の2つの液体吐出ヘッドへ液体を供給する供給側マニホールド20が設けられている。一方のヘッド群の2つの液体吐出ヘッドから液体が排出される排出側マニホールド30と背中合わせに他方のヘッド群の2つの液体吐出ヘッドから液体が排出される排出側マニホールド30が設けられている。
【0023】
供給側マニホールド20と排出側マニホールド30は、同一形状であり、マニホールド部223のベース部材223aに設けられた凹形状の液体収容部23,33と、液体収容部23,33を密閉する弾性体としてのダンパー部材22,32とを備えている。また、供給側マニホールド20および排出側マニホールド30は、ダンパー部材22,32を保護する保護カバー21を備えている。
【0024】
ダンパー部材22,32は、厚さ1.0mm以下の薄膜ゴムであり、中央部22a,32aが、液体収容部23,33側へ突出した形状となっており、保護カバー21との間に所定の隙間が形成されている。
【0025】
ベース部材223aの上部には、供給側マニホールド20の液体流入口23aが設けられている。この液体流入口23aには、一端が供給側サブタンク15(
図5参照)に取り付けられた供給パイプの他端が取り付けられる供給パイプ取付部材24が取り付けられている。また、ベース部材223aの上部には、排出側マニホールド30の液体流出口33aが設けられている。この液体流出口33aには、一端が排出側サブタンク16(
図5参照)に取り付けられた排出パイプの他端が取り付けられる排出パイプ取付部材34が取り付けられている。
【0026】
ダンパー部材22,32は、マニホールド20,30内の液体に伝播した液体吐出動作時に発生する液体吐出ヘッドの液室内で発生した圧力変動による振動を吸収する。これにより、一方の液体吐出ヘッドの振動が、マニホールド20,30を介して他方の液体吐出ヘッドへ伝播する所謂クロストークが発生するのを抑制している。
本実施形態では、ダンパー部材22,32として薄膜ゴムを用いているが、樹脂フィルム、薄膜金属などを用いてもよい。
【0027】
従来、各液体吐出ヘッドの共通液室を構成する壁の一部を弾性変形可能なダンパー部とし、各液体吐出ヘッドの共通液室で液体吐出ヘッドの液室内で発生した圧力変動による振動を吸収するものがある(例えば、特許第5047734号公報や、特許第5035486号公報)。しかし、各液体吐出ヘッドの共通液室にダンパー部を設ける構成は、共通液室が肥大化し、各液体吐出ヘッドが大型化してしまう。一方、本実施形態では、マニホールド20,30にダンパー部材22,32を設けることで、各液体吐出ヘッドを小型化することができ、ヘッドモジュール222を小型化することができる。
【0028】
図5は、液体を循環させる液体循環機構10の構成を説明するための説明図である。
液体循環機構10は、液体吐出ヘッド221から吐出される液体を貯留する手段として、メインタンク11と、中間サブタンク13と供給側サブタンク15と、排出側サブタンク16とを備えている。また、液体循環機構10は、中間サブタンク13から供給側サブタンク15に送液する供給ポンプ14を備えている。また、液体循環機構10は、排出側サブタンク16から中間サブタンク13に送液する排出ポンプ17と、メインタンク11から中間サブタンク13に送液する補給ポンプ12とを備えている。また、液体循環機構10は、複数の液体吐出ヘッド221へ液体を供給する供給側マニホールド20を備えている。また、液体循環機構10は、液体吐出ヘッド221から液体が排出される排出側マニホールド30を備えている。
【0029】
中間サブタンク13は、補給ポンプ12による送液動作によって、メインタンク11から液体の補給を受ける。補給ポンプ12は、中間サブタンク13内の液面位置(液面高さ)を検知する液面検知手段の検知結果に基づき、中間サブタンク13内の液面が所定の高さに維持されるように送液動作を行う。
【0030】
本実施形態においては、中間サブタンク13から、供給側サブタンク15、供給側マニホールド20、液体吐出ヘッド221、排出側マニホールド30、排出側サブタンク16を経て、中間サブタンク13に戻るという循環経路で液体が循環する。
【0031】
供給側マニホールド20の圧力を検出する圧力センサ及び排出側マニホールド30の圧力を検出する圧力センサの検出結果に基づき、供給ポンプ14及び排出ポンプ17を制御し、所定のメニスカス圧力が得られるように液体を循環させる。
【0032】
なお、
図5に示す液体循環機構10の構成は、一例であり、これに限られるものではない。例えば、中間サブタンク13を無くし、排出側サブタンク16の液体やメインタンク11の液体を直接、供給側サブタンク15へ移送するようにしてもよい。
【0033】
次に、本実施形態の特徴部について説明する。
従来は、供給側マニホールド20、排出側マニホールド30(以下、供給側マニホールド20と排出側マニホールド30とを特に区別しない場合は、単にマニホールドという)は、直方形状である。そして、マニホールドの壁部の一部を構成するダンパー部材は、四角形状であった。このような従来技術においては、以下の課題があった。
【0034】
すなわち、マニホールド内に気泡があると、その気泡が、液体吐出ヘッドへ流れ込み吐出不良を起こすなどの不具合が発生するおそれがある。そのため、液体の初期充填時にマニホールド内に気泡が残らないように、マニホールドに液体を充填する必要がある。しかしながら、マニホールドが直方形状の場合は、マニホールド内の空気がうまく抜けず、マニホールドの上部4角に気泡が残る場合があった。
【0035】
また、マニホールド20,30は、所定のメニスカス圧力を得るとともに、供給側マニホールド20と排出側マニホールド30との圧力差で液体が流路抵抗に抗して移送されるように高い圧力(排出側マニホールドは高い負圧に、供給側マニホールドは高い正圧)に設定される場合がある。ダンパー部材22,32は、このような高圧でも液が漏れ出すことがないようにする必要がある。一方、ダンパー部材22,32は、マニホールド20,30に伝播した液体吐出ヘッドの振動を良好に吸収するには、なるべく薄膜とする必要がある。このように、ダンパー部材22,32としては、薄膜でかつ、高圧に耐えうる信頼性の高い材料が用いられるため、高額であり、ダンパー部材22,32の面積としては、なるべく狭くするのが好ましい。
【0036】
本実施形態では、マニホールド20,30を、空気が抜けやすく、かつ、ダンパー部材22,32の面積をなるべく小さくできる形状とした。以下、本実施形態の特徴部について、図面を用いて説明する。
【0037】
図6は、供給側マニホールド20と排出側マニホールド30の主走査方向(マニホールドの長手方向)の概略断面図である。
図6(a)が、供給側マニホールド20の断面図であり、
図6(b)が、排出側マニホールド30の断面図である。
図6に示すように、本実施形態のマニホールド20,30は、上部から下部に向かって末広がる台形形状となっている。そして、供給側マニホールド20は、ベース部材223aに設けられた凹形状の供給側液体収容部23を有している。この供給側液体収容部23の天井壁の主走査方向中央に、供給側サブタンク15と供給パイプを介して接続される供給側タンク接続部26を有している。供給側タンク接続部26は、液体流入口23aと、この液体流入口23aに取り付けられた供給パイプ取付部材24とで構成されている。なお、供給側タンク接続部26を複数設けてもよい。また、供給側タンク接続部26に複数のタンクを接続してもよい。
【0038】
供給側液体収容部23の底壁の主走査方向両端に、ヘッド供給パイプを介して液体吐出ヘッドに接続される供給側ヘッド接続部27を有している。各供給側ヘッド接続部27は、液体流出口23bと、この液体流出口23bに取り付けられたヘッド供給パイプ取付部材25とで構成されている。ヘッド供給パイプ取付部材25に一端が液体吐出ヘッドに取り付けられたヘッド供給パイプの他端が取り付けられている。
【0039】
供給側ヘッド接続部27を底壁の主走査方向両端に設けることで、一方の供給側ヘッド接続部から他方の供給側ヘッド接続部までの距離を最大限離すことができる。これにより、一方の供給側ヘッド接続部から供給側マニホールドに伝播した液体吐出ヘッドの振動が、他方の供給側ヘッド接続部まで伝播するのを良好に抑制することができる。これにより、クロストークの発生を良好に抑制することができる。
【0040】
また、
図6(a)に示すように、供給側マニホールド20の底壁の主走査方向の中央位置から供給側ヘッド接続部27までの距離Yを、供給側ヘッド接続部27から供給側マニホールド20の底壁の主走査方向の端部までの距離X以上(Y≧X)にするのが好ましい。より好ましくは、Y=(2~20)Xである。このような関係とすることで、一方の供給側ヘッド接続部27から供給側マニホールド20に伝播した液体吐出ヘッドの振動を他方の供給側ヘッド接続部まで伝播するのを抑制することができ、クロストークの発生を抑制できる。
【0041】
供給側マニホールド20は、供給側サブタンク15からの液体が供給側タンク接続部26から供給され、供給側ヘッド接続部27から各液体吐出ヘッドへ液体を分配供給する。
【0042】
図6(b)に示すように、排出側マニホールド30は、供給側マニホールド20と同様の構成となっており、天井壁の主走査方向中央に排出パイプを介して排出側サブタンク16に接続される排出側タンク接続部36が設けられている。排出側タンク接続部36は、液体流出口33aと、この液体流出口33aに取り付けられた排出パイプ取付部材34とで構成されている。排出パイプ取付部材34に排出パイプの一端が取り付けられており、排出パイプの他端は、排出側サブタンク16に取り付けられている。なお、排出側タンク接続部36は、複数設けてもよい。また、排出側タンク接続部36に複数のタンクを接続してもよい。
【0043】
排出側液体収容部33の底壁の主走査方向両端に、ヘッド排出パイプを介して液体吐出ヘッドに接続される排出側ヘッド接続部37を有している。各排出側ヘッド接続部37は、液体流入口33bと、この液体流入口33bに取り付けられたヘッド排出パイプ取付部材35とで構成されている。ヘッド排出パイプ取付部材35に、一端が液体吐出ヘッドに取り付けられたヘッド排出パイプの他端が取り付けられている。
【0044】
排出側ヘッド接続部37を底壁の主走査方向両端に設けることで、一方の排出側ヘッド接続部から他方の排出側ヘッド接続部までの距離を最大限離すことができる。これにより、一方の排出側ヘッド接続部から排出側マニホールド30に伝播した液体吐出ヘッドの振動が、他方の排出側ヘッド接続部まで伝播するのを良好に抑制することができる。これにより、クロストークの発生を良好に抑制することができる。
【0045】
また、排出側マニホールド30についても、排出側マニホールド30の底壁の主走査方向の中央位置から排出側ヘッド接続部37までの距離Yを、排出側ヘッド接続部37から排出側マニホールド30の底壁の主走査方向の端部までの距離X以上(Y≧X)とするのが好ましい。より好ましくは、Y=(2~20)Xである。このような関係とすることで、一方の排出側ヘッド接続部から排出側マニホールド30に伝播した液体吐出ヘッドの振動を他方の排出側ヘッド接続部まで伝播するのを抑制することができ、クロストークの発生を抑制できる。
【0046】
排出側マニホールド30は、排出側タンク接続部36に向かって尻窄んでいくため、液体充填時に排出側マニホールド内の空気が、排出側タンク接続部36に集まり、排出側タンク接続部36から良好に排出側マニホールド内の空気が排出される。これにより、液体充填後に排出側マニホールド内に空気が残留して気泡が形成されるのを抑制できる。
【0047】
液体充填後に供給側マニホールド内に残留した空気(気泡)は、供給側タンク接続部26付近に集まる。液体充填後に供給ポンプ14(
図5参照)により供給側マニホールド内の液体を供給側サブタンク15へ移送して供給側マニホールド20内の空気を抜く動作を行う。この動作に際に供給側タンク接続部26付近に集まっている気泡が供給側タンク接続部26を通って供給側サブタンク15へ排出される。これにより、供給側マニホールド内に残留する空気を良好に排出でき、供給側マニホールド内に空気が残留するのを良好に抑制できる。
【0048】
図7は、供給側マニホールド20に伝播した液体吐出ヘッドの振動の吸収について説明する図である。なお、供給側マニホールド20について、説明するが、排出側マニホールド30についても同様である。
図7に示す一点鎖線で示すように、弾性体たるダンパー部材22を四角形にした場合に比べて、ダンパー部材22の面積を小さくすることができ、ダンパー部材22の材料費を削減することができる。これにより、ダンパー部材22のコストを抑えることができ、装置のコスト削減を図ることができる。
【0049】
供給側ヘッド接続部27から供給側マニホールド20に伝播した振動を減衰するのに必要なダンパー部材22の面積がある。
図7に示すように、一方の供給側ヘッド接続部27から供給側マニホールド20に伝播した振動を減衰するのに必要なダンパサイズAの形状、他方の供給側ヘッド接続部27からマニホールドに伝播した振動を減衰するのに必要なダンパサイズBの形状を平行四辺形としたとき、上部にダンパサイズAとBとが重なる部分Cが生じる。一方で、下方には、ダンパサイズAとダンパサイズBとが重なっていない部分C´が生じる。この重なる部分Cのサイズと、重なっていない部分C´の部分のサイズは、同じである。従って、ダンパー部材を台形形状とすることで、上部のダンパサイズAとBとが重なる部分Cを、重なっていない部分C´の部分で補うことができる。よって、ダンパー部材を台形形状としても、各供給側ヘッド接続部27の振動を減衰するのに必要なダンパー部材の面積をそれぞれ確保することが可能となる。
【0050】
図8は、供給側マニホールド20の副走査方向(マニホールド短手方向)の概略断面図である。なお、排出側マニホールド30についても同様である。
図8に示すように、副走査方向断面において、供給側ヘッド接続部27と供給側タンク接続部26は、供給側マニホールド20の副走査方向の中央O2に設けられている。ダンパー部材22は、上述したように、中央部22aが、液体収容部23側へ突出した形状である。そのため、ベース部材223aに取り付けられたダンパー部材22は、縁部22bが、ダンパー部材22の中央部22aよりも、外側に位置する。これにより、ダンパー部材22の中央部22aと、保護カバー21との間には、十分な隙間が形成される。これにより、ダンパー部材22が、弾性変形して供給側マニホールド20に伝播した液体吐出ヘッドの振動を吸収する際に保護カバー21に突き当たることを抑制できる。これにより、ダンパー部材22で良好に供給側マニホールド20に伝播した液体吐出ヘッドの振動を吸収することができ、クロストークを良好に抑制できる。
【0051】
また、
図8に示すように、ダンパー部材22の中央部22aは、副走査方向において、供給側マニホールド20の副走査方向の中央O2と、供給側ヘッド接続部27のダンパー部材側端部と供給側タンク接続部26のダンパー部材側端部とを結んだ線X1との間に位置させるのが好ましい。これにより、ダンパー部材22の中央部22aが供給側マニホールド20の副走査方向の中央O2よりも内側に位置する場合に比べて、供給側マニホールド内の液体の流れ(供給側タンク接続部26から供給側ヘッド接続部27へ向かう液体の流れ)を阻害するのを抑制できる。また、ダンパー部材22の中央部22aが上記線X1よりも外側に位置する場合に比べて、ダンパー部材22が弾性変形して供給側マニホールド20に伝播した液体吐出ヘッドの振動を吸収する際に保護カバー21に突き当たるのを良好に抑制できる。
【0052】
すなわち、ダンパー部材22の中央部22aを、供給側マニホールド20の副走査方向の中央O2と、線X1との間に位置させることで、高いダンパー機能と、供給側タンク接続部26から供給側ヘッド接続部27へ向かう液体の流れの確保とを両立できる。
【0053】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の他の一例について、
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は同装置の要部平面説明図、
図10は同装置の要部側面説明図である。
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0054】
このキャリッジ403には、本発明に係るヘッド装置404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440は、上述した実施形態と同様、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のヘッド装置404を備える。ヘッド装置404は、上述した実施形態と同様のヘッドモジュール222を少なともひとつ備えている。
【0055】
ヘッド装置404の外部に貯留されている液体をヘッド装置404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0056】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0057】
この装置は、用紙Pを搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0058】
搬送ベルト412は用紙Pを吸着してヘッド装置404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0059】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0060】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方にヘッド装置404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0061】
維持回復機構420は、例えばヘッド装置404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0062】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0063】
このように構成したこの装置においては、用紙Pが搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙Pが副走査方向に搬送される。
【0064】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じてヘッド装置404を駆動することにより、停止している用紙Pに液体を吐出して画像を形成する。
【0065】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0066】
次に、液体吐出ユニットの他の例について
図11を参照して説明する。
図11は同ユニットの要部平面説明図である。
【0067】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A,491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、ヘッド装置404で構成されている。
【0068】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0069】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図12を参照して説明する。
図12は同ユニットの正面説明図である。
【0070】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられたヘッド装置404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0071】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部にはヘッド装置404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0072】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッド装置又はヘッド装置を備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0073】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0074】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0075】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0076】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録材、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0077】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0078】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0079】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0080】
また、「液体を吐出する装置」には、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルから噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0081】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、液体循環機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0082】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0083】
例えば、液体吐出ユニットとして、
図10で示した液体吐出ユニット440のように、ヘッド装置404とヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、ヘッド装置とヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクとヘッド装置との間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0084】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッド装置とキャリッジが一体化されているものがある。
【0085】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッド装置を走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、ヘッド装置と走査移動機構が一体化されているものがある。また、
図11で示したように、液体吐出ユニットとして、ヘッド装置とキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0086】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッド装置が取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、ヘッド装置とキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0087】
また、液体吐出ユニットとして、
図12で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられたヘッド装置にチューブが接続されて、ヘッド装置と供給機構と循環機構とが一体化されているものがある。
【0088】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0089】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用するアクチュエータが限定されるものではない。例えば、前記実施形態で説明したような圧電素子(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0090】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0091】
最後に、上述の実施形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。このような実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0092】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
液体を貯留する壁の一部がダンパー部材などの弾性体からなり、複数の液体吐出ヘッドに接続されたマニホールドにおいて、弾性体からなる壁に直交する直交壁(本実施形態では、液体収容部23,33の底壁)に液体吐出ヘッドに接続するための2つのヘッド接続部を有し、直交壁に対向する対向壁(本実施形態では、液体収容部23,33の天井壁)にタンク(本実施形態では、供給側サブタンク15または排出側サブタンク16)に接続するためのタンク接続部を有し、2つのヘッド接続部は、直交壁の長手方向(本実施形態では主走査方向)に離間して配置され、弾性体は、対向壁から直交壁へ向かって広がる形状である。
ヘッド接続部を介してマニホールド内の液体に伝播した液体吐出ヘッドで発生した液室内の振動を、弾性体で減衰させるダンパー機能を良好に発揮させるためには、弾性体を薄くする必要がある。しかし、薄い弾性体では、液体の漏れが発生しやすくなる。薄さと液体の漏れの両方を満足する機能を有する弾性体は高額であり、これが装置のコストアップの原因となっていた。
そこで、本出願人が鋭意検討したところ、弾性体を、対向壁から直交壁へ向かって広がる形状として、タンク接続部側の面積がヘッド接続部側の面積に比べて狭くてもダンパー機能が低下しないことがわかった。
態様1では、このような知見に基づいて、弾性体を対向壁から直交壁へ向かって広がる形状とした。これにより、弾性体のダンパー機能を低下させることなく、弾性体の面積を四角形状の場合に比べて削減して装置のコストダウンを図ることが可能となる。
【0093】
(態様2)
態様1において、対向壁が上壁であり、主走査方向などの長手方向の断面において、液体を貯留する液体収容部23,33などの液体貯留部の形状が、上部から下部に向かって広がる形状である。
これによれば、実施形態で説明したしたように、マニホールド内の気泡を対向壁の長手方向中央付近に集めることができる。よって、タンク接続部を、対向壁の長手方向の中央に設ければ、良好にタンク接続部からマニホールド内の気泡を排出することができる。
【0094】
(態様3)
態様2において、タンク接続部は、対向壁の主走査方向などの長手方向の中央に設けられている。
これによれば、実施形態で説明したように、マニホールド内の気泡を良好にタンク接続部から排出することができる。
【0095】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、直交壁の長手方向の両端にヘッド接続部が設けられている。
これによれば、実施形態で説明したように、一方のヘッド接続部と他方のヘッド接続部とを最大限離すことができ、一方のヘッド接続部からマニホールド内に伝播した液体吐出ヘッドの振動が、他方のヘッド接続部を介して別の液体吐出ヘッドへ伝播する所謂クロストークが発生するのを良好に抑制できる。
【0096】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、直交壁の短手方向の断面において、ダンパー部材などの弾性体の縁部は、弾性体の中央部よりも、外側に位置している。
これによれば、実施形態で説明したように、弾性体の中央部と、弾性体の外面に対向する部材(本実施形態では保護カバー21)との隙間を弾性体の中央部が縁部と同一の位置に位置する場合に比べて広げることができる。これにより、マニホールドに伝播した液体吐出ヘッドの振動を弾性体が弾性変形して吸収するときに、弾性体が弾性体の外面に対向する部材に当たるのを抑制でき、弾性体の弾性変形が阻害されるのを抑制できる。これにより、弾性体で良好にマニホールドに伝播した液体吐出ヘッドの振動を吸収することができる。
【0097】
(態様6)
態様5において、ダンパー部材などの弾性体は、中央部がマニホールドの内部側へ向けて突出する形状である。
これによれば、弾性体をマニホールドに取り付けたときに、短手方向の断面において、弾性体の縁部を、弾性体の中央部よりも、外側に位置させることができる。
【0098】
(態様7)
態様5または6において、短手方向の断面において、ヘッド接続部およびタンク接続部は、短手方向の中央に設けられたおり、ダンパー部材などの弾性体の中央部は、ヘッド接続部の弾性体側端部とタンク接続部の弾性体側端部とを結んだ線X1と、短手方向の中央との間に位置する。
これによれば、実施形態で説明したように、マニホールド内でのヘッド接続部とタンク接続部との間の液体の流れを弾性体が阻害するのを抑制し、かつ、弾性体の中央部分と、弾性体の外面に対向する部材(本実施形態では保護カバー21)との隙間を十分設けることができる。
【0099】
(態様8)
ヘッドモジュール222は、複数の液体吐出ヘッドと、態様1乃至7いずれかのマニホールドとを備える。
これによれば、ヘッドモジュール222のコストダウンを図ることができる。また、マニホールドにダンパー機能を持たせることで、各液体吐出ヘッドにダンパー機能を持たせるものに比べて、装置の小型化を図ることができる。
【0100】
(態様9)
態様8において、マニホールドは、複数の液体吐出ヘッドへ液体を移送する供給マニホールド、および/または、複数の液体吐出ヘッドから液体が移送される排出マニホールドである。
【0101】
(態様10)
液体吐出ユニットは、態様1乃至7いずれかのマニホールド、又は、態様8または9のヘッドモジュールを備える。
これによれば、液体吐出ユニットのコストダウンを図ることができる。また、各液体吐出ヘッドにダンパー機能を持たせるものに比べて、装置の小型化を図ることができる。
【0102】
(態様11)
液体を吐出する装置は、態様10に記載の液体吐出ユニットを備える。
これによれば、装置のコストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0103】
1 :インクジェット記録装置
10 :液体循環機構
11 :メインタンク
12 :補給ポンプ
13 :中間サブタンク
14 :供給ポンプ
15 :供給側サブタンク
16 :排出側サブタンク
17 :排出ポンプ
20 :供給側マニホールド
21 :保護カバー
22 :ダンパー部材
22a :中央部
22b :縁部
23 :供給側液体収容部
23a :液体流入口
23b :液体流出口
24 :供給パイプ取付部材
25 :ヘッド供給パイプ取付部材
26 :供給側タンク接続部
27 :供給側ヘッド接続部
30 :排出側マニホールド
32 :ダンパー部材
32a :中央部
33 :排出側液体収容部
33a :液体流出口
33b :液体流入口
34 :排出パイプ取付部材
35 :ヘッド排出パイプ取付部材
36 :排出側タンク接続部
37 :排出側ヘッド接続部
200 :画像形成部
220 :ヘッド装置
221 :液体吐出ヘッド
222 :ヘッドモジュール
223 :マニホールド部
223a :ベース部材
230 :液体吐出ユニット
P :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0104】