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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183081
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 99/00 20060101AFI20231220BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20231220BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C08L99/00
C08L23/10
C08L23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096502
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 美帆子
(72)【発明者】
【氏名】矢部 真理
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AJ00W
4J002BB11X
4J002BB12X
4J002GA00
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】樹脂成分と植物性有機材料との一体性が高く、かつ、外観に優れる成形品を製造可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記式(i)及び(ii)を満たすポリプロピレン系樹脂、及び(B)常温常圧で固体の植物性有機材料を含む、樹脂組成物。
(i)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm-D)が、40℃以上100℃以下である。
(ii)25℃における半結晶化時間が30秒以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(i)及び(ii)を満たすポリプロピレン系樹脂、及び
(B)常温常圧で固体の植物性有機材料を含む、
樹脂組成物。
(i)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm-D)が、40℃以上100℃以下である。
(ii)25℃における半結晶化時間が30秒以上である。
【請求項2】
ペレット状である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が下記式(iii)を満たす、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
(iii)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-40℃から10℃/分で220℃まで昇温させて5分間保持した後、10℃/分で-40℃まで降温させて15分間保持した後、再び10℃/分で220℃まで昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH-D)が0J/g以上80J/g以下である。
【請求項4】
前記(A)成分が、プロピレン単独重合体である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、木本植物を原料にして得られる木質材料、草本植物を原料にして得られる草本材料、コケ植物を原料にして得られる有機材料、シダ植物を原料にして得られる有機材料、藻類を原料にして得られる有機材料、紙類、及び衣料繊維からなる群から選択される1以上である、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、木本植物を原料にして得られる木質材料;穀物、稲藁、竹又は草を原料にして得られる草本材料;コケ植物を原料にして得られる有機材料;シダ植物を原料にして得られる有機材料;藻類を原料にして得られる有機材料;及び紙類からなる群から選択される1以上である、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の形状が、破片状、チップ状、粉末状、及び繊維状からなる群から選択される1以上である、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(B)成分の含有量が80質量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
99質量%超が前記(A)成分及び前記(B)成分である、請求項1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて得られた成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品の多くは、機能性付与や着色等の目的で種々の添加剤が配合された熱可塑性樹脂から製造される。例えば、特許文献1には、特定のオレフィン系重合体を用いて、顔料や金属粉等のプラスチック用添加剤をオレフィン系樹脂中に配合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-176750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、装飾目的や環境対応等の観点から、樹脂製品の原料として植物性の有機材料を混合した樹脂材料が使用される場合がある。例えば、樹脂と木質材料の混合材料からなる人工木材や、米粉を混ぜた樹脂材料からなる玩具等が知られている。こうした材料は従来の樹脂材料にはない新たな装飾的効果又は環境効果をもたらすものであるが、植物性の有機材料は、樹脂との混練が困難であったり、高温下での樹脂との混合により、変質(焦付き等)が生じ、外観を損ねたりすることから、意図する樹脂製品(成形品)を製造することが容易ではなかった。
本発明の目的は、樹脂成分と植物性有機材料との一体性が高く、かつ、外観に優れる成形品を製造可能な樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が鋭意検討した結果、樹脂成分(植物性有機材料の分散媒)として特定の物性を有するポリプロピレン系樹脂を採用することで、低温下で樹脂成分と植物性有機材料との理想的な混合状態を実現できることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の樹脂組成物等が提供される。
1.(A)下記式(i)及び(ii)を満たすポリプロピレン系樹脂、及び
(B)常温常圧で固体の植物性有機材料を含む、
樹脂組成物。
(i)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm-D)が、40℃以上100℃以下である。
(ii)25℃における半結晶化時間が30秒以上である。
2.ペレット状である、1に記載の樹脂組成物。
3.前記(A)成分が下記式(iii)を満たす、1又は2に記載の樹脂組成物。
(iii)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-40℃から10℃/分で220℃まで昇温させて5分間保持した後、10℃/分で-40℃まで降温させて15分間保持した後、再び10℃/分で220℃まで昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH-D)が0J/g以上80J/g以下である。
4.前記(A)成分が、プロピレン単独重合体である、1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.前記(B)成分が、木本植物を原料にして得られる木質材料、草本植物を原料にして得られる草本材料、コケ植物を原料にして得られる有機材料、シダ植物を原料にして得られる有機材料、藻類を原料にして得られる有機材料、紙類、及び衣料繊維からなる群から選択される1以上である、1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.前記(B)成分が、木本植物を原料にして得られる木質材料;穀物、稲藁、竹又は草を原料にして得られる草本材料;コケ植物を原料にして得られる有機材料;シダ植物を原料にして得られる有機材料;藻類を原料にして得られる有機材料;及び紙類からなる群から選択される1以上である、1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.前記(B)成分の形状が、破片状、チップ状、粉末状、及び繊維状からなる群から選択される1以上である、1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.前記(B)成分の含有量が80質量%以下である、1~7のいずれかに記載の樹脂組成物。
9.99質量%超が前記(A)成分及び前記(B)成分である、1~8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.1~9のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて得られた成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、樹脂成分と植物性有機材料との一体性が高く、かつ、外観に優れる成形品を製造可能な樹脂組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る樹脂組成物及び成形体について説明する。本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。一の技術的事項に関して、「x以上」等の下限値が複数存在する場合、又は「y以下」等の上限値が複数存在する場合、当該上限値及び下限値から任意に選択して組み合わせることができるものとする。
【0008】
1.樹脂組成物
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、下記の(A)成分及び(B)成分を含む。
(A)下記式(i)及び(ii)を満たすポリプロピレン系樹脂
(i)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される融点(Tm-D)が、40℃以上100℃以下である。
(ii)25℃における半結晶化時間が30秒以上である。
(B)常温常圧で固体の植物性有機材料
【0009】
(A)成分のポリプロピレン系樹脂は、融点(Tm-D)が極めて低く、例えば100℃超130℃以下といった低温条件下でも溶融加工が可能である。このような(A)成分を(B)成分の分散媒として用い、混練及び成形を行うことで、(B)成分を変質させることなく(又は最低限にとどめて)、(B)成分に由来する意匠性をそのまま表現した成形品を製造することができる。また、(A)成分は結晶化すなわち固化までの時間が非常に長い材料であるため、(B)成分と混練した際には、(A)成分が(B)成分の表面上でそれぞれに十分にまとわりついて隙間なく覆う状態になった後に固化するため、両成分の一体性が高い、緻密な成形体とすることができる。これにより、(B)成分の脱落等の不具合が生じにくい高品質な樹脂製品とすることができる。また、上記の樹脂組成物は加工性にも優れ、例えば、ペレット化のためにストランド状に押出し、急冷して裁断した場合であっても、(A)成分と(B)成分とのまとまりがよいため、(B)成分が露出したり脱落するようなことなく、所望のペレット形状を実現できる。
さらに、本発明の樹脂組成物から得られた成形品は強度が高く、壊れにくいものである。このような効果も両成分の高い一体性等に起因するものと考えられる。
【0010】
融点の高い樹脂成分の場合、混練及び成形に一定以上の高温条件が必要となるため、(B)成分の変色や劣化等が懸念され、場合によっては(B)成分が燃焼したり焦げたりする恐れも想定される。また、融点が低い樹脂成分であっても、そもそも材料自体の結晶化の程度が低く製品化しづらかったり、そうでなくとも、結晶化時間が短い材料である場合、(B)成分を十分に覆う前に樹脂成分が固化してしまい、空隙の多い疎な混合状態になることが避けられない。このような成形体は両成分の一体性が低いため、成形体表面から(B)成分の脱落が生じることが懸念される。また、構造が脆いため、例えば、ペレット化のために裁断した場合には、形状の崩れや破砕が生じうる。
【0011】
以下、本発明の一態様に係る樹脂組成物の各構成について説明する。
((A)成分)
(A)成分は、融点(Tm-D)が極めて低く(条件(i))、かつ、結晶化までの時間が非常に長い材料である(条件(ii))。このような樹脂を用いることで上述した効果が得られる。
一実施形態において、(A)成分の融点(Tm-D)は50℃以上、又は60℃以上である。一実施形態において、(A)成分の融点(Tm-D)は90℃以下である。
【0012】
融点(Tm-D)は、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製「DSC-8500」)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークトップとして定義される値である。
【0013】
一実施形態において、(A)成分の半結晶化時間は1分以上、又は5分以上である。一実施形態において、(A)成分の半結晶化時間は30分以下、40分以下、又は50分以下である。
【0014】
半結晶化時間は、以下の方法で測定する。
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製「DSC-8500」)を用い、試料10mgを25℃で5分間保持し、320℃/秒で220℃に昇温し5分間保持した後、320℃/秒で25℃に冷却し、60分間保持することにより、等温結晶化過程における、発熱量の時間変化を測定する。等温結晶化開始時から結晶化完了時までの発熱量の積分値を100%とした時、等温結晶化開始時から発熱量の積分値が50%となるまでの時間を半結晶化時間として求める。
【0015】
(A)成分は、好ましくは下記条件(iii)を満たす。
(iii)示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を窒素雰囲気下-40℃から10℃/分で220℃まで昇温させて5分間保持した後、10℃/分で-40℃まで降温させて15分間保持した後、再び10℃/分で220℃まで昇温させることにより得られた融解吸熱カーブから得られる融解吸熱量(ΔH-D)が0J/g以上80J/g以下である。
【0016】
融解吸熱量(ΔH-D)が0J/g以上80J/g以下であることは、結晶化度が非常に低い材料であることを意味し、すなわち、非晶部分の割合が相当多く、密度が低く疎な非晶領域が樹脂全体に無数に存在している材料であるといえる。このような無数の非晶領域のそれぞれに(B)成分が極微量ずつ留まることで、(B)成分が樹脂組成物全体に拡散(分散)しやすくなり、凝集も生じにくくなる。
【0017】
一実施形態において、(A)成分の融解吸熱量(ΔH-D)は、70J/g以下、60J/g以下、又は50J/g以下である。融解吸熱量(ΔH-D)が低いほど(A)成分中の非晶領域が増え、(B)成分の分散性をより向上し得ることが期待される。
一実施形態において、(A)成分の融解吸熱量(ΔH-D)は、5J/g以上、又は15J/g以上である。融解吸熱量(ΔH-D)がこのような範囲であることにより、べたつきを抑制できハンドリング性を向上し得る。
【0018】
融解吸熱量(ΔH-D)は以下の方法で測定する。
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製「DSC-8500」)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下-40℃から10℃/分で220℃まで昇温させて5分間保持した後、10℃/分で-40℃まで降温させて15分間保持した後、再び10℃/分で220℃まで昇温させる。当該2度目の昇温時に得られた融解吸熱カーブから融解吸熱量(ΔH-D)を求める。
融解吸熱量(ΔH-D)は、熱量変化の無い低温側の点と熱量変化の無い高温側の点とを結んだ線をベースラインとして、示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製「DSC-8500」)を用いたDSC測定により得られた融解吸熱カーブのピークを含むライン部分と当該ベースラインとで囲まれる面積を求めることで算出される。
【0019】
(A)成分は、好ましくはプロピレン単独重合体である。
【0020】
(A)成分は、好ましくは下記条件(iv)を満たす。
(iv)メソペンタッド分率[mmmm]が20~60モル%である。
メソペンタッド分率[mmmm]は、プロピレン単独重合体の立体規則性を表す指標であり、メソペンタッド分率[mmmm]が大きいほど、立体規則性が高いことを意味する。
一実施形態において、(A)成分のメソペンタッド分率[mmmm]は、30モル%以上、又は40モル%以上である。一実施形態において、(A)成分のメソペンタッド分率[mmmm]は、55モル%以下、又は50モル%以下である。
メソペンタッド分率[mmmm]は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等により「Macromolecules,6,925(1973)」で提案された方法に準拠し、13C-NMRスペクトルのメチル基のシグナルにより測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのメソ分率として求められる値である。
【0021】
(A)成分は、好ましくは下記条件(v)を満たす。
(v)重量平均分子量(Mw)が25,000以上である。
一実施形態において、(A)成分のMwは、30,000以上、35,000以上、又は40,000以上である。上限は特にないが、例えば500,000以下である。
【0022】
重量平均分子量(Mw)は、下記に示すGPC装置を用いて、下記に示す条件で測定し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)法により求められる値である。
<GPC装置>
機器 :東ソー(株)製「HLC8321GPC/HT」
検出器 :RI検出器
カラム :東ソー(株)製「TOSOH GMHHR-H(S)HT」×2本
<測定条件>
溶媒 :1,2,4-トリクロロベンゼン
測定温度 :145℃
流速 :1.0mL/分
試料濃度 :0.5mg/mL
注入量 :300μL
検量線 :PS標準物質を用いて作製
分子量換算 :Universal Calibration法を用いて換算
αPS:0.707、κPS:0.00121、αPP:0.750、κPP:0.0137
解析プログラム:8321GPC-WS
【0023】
(A)成分は、好ましくは下記条件(vi)を満たす。
(vi)メルトフローレート(MFR)が1g/10分以上である。
一実施形態において、(A)成分のMFRは、7g/10分以上、又は10g/10分以上である。一実施形態において、(A)成分のMFRは、5000g/10分以下、4500g/10分以下、又は4000g/10分以下である。
MFRは、ISO 1133:1997に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定する。
【0024】
(A)成分は特許文献1の「オレフィン系重合体」の製造方法と同様の方法で製造することができる。
(A)成分としては市販品を用いることもでき、例えば、出光興産(株)製の「L-MODU」(登録商標)(例えば「S400」、「S401」、「S600」、「S901」)等を用いることができる。
【0025】
((B)成分)
植物性有機材料(分散質)としては、常温常圧(1barかつ0℃の環境)で固体の植物性有機材料であれば制限なく使用できる。
植物性有機材料としては、例えば、木本植物を原料にして得られる木質材料、草本植物を原料にして得られる草本材料、コケ植物を原料にして得られる有機材料、シダ植物を原料にして得られる有機材料、及び藻類を原料にして得られる有機材料等が挙げられ、紙類や衣料繊維も含む。なお、木質材料及び草本材料には果実や果皮からなる材料も含む。
木本植物としては、スギ、モミ、ヒノキ、マツ等の針葉樹、ユーカリ、アカシア、シラカバ、ブナ、ナラ等の広葉樹が挙げられ、それらの果実や果皮も含まれる。草本植物としては、穀物(例えば、米、小麦、大麦等)、稲藁、麦藁、バガス、竹、ケナフ、葦等が挙げられ、それらの果実や果皮も含まれる他、いわゆる草(雑草)も含む。藻類としては、コンブ、ワカメ等の海藻やミドリムシ(ユーグレナ)等の微細藻類等が挙げられる。
なお、これらは新規の材料でなくてもよく、木質材料や草木材料の使用済の廃材、古紙、使用済の衣料繊維等を原料とする材料であってもよい。すなわち、木質材料や草木材料の使用済の廃材は上記の木質材料及び草木材料に含まれ、古紙は上記の紙類に含まれ、使用済の衣料繊維は上記の衣料繊維に含まれる。
【0026】
一実施形態において、(B)成分は、木本植物を原料にして得られる木質材料;穀物、稲藁、竹又は草を原料にして得られる草本材料;コケ植物を原料にして得られる有機材料;シダ植物を原料にして得られる有機材料;藻類を原料にして得られる有機材料;及び紙類からなる群から選択される1以上である。
【0027】
植物性有機材料の形状は特に限定されないが、通常、木本植物、草本植物、コケ植物、シダ植物、藻類、紙類又は衣料繊維の粉砕物であり、例えば、破片状、チップ状、粉末状、繊維状等である。
【0028】
植物性有機材料の大きさにも特に制限はなく、例えば、チップ状、粉体状又は繊維状の場合、直径(長径)1μm~10mm程度であってもよいし、破片状の場合、最大径1mm~100mm程度であってもよい。
【0029】
(B)成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、形状や大きさが揃った材料であってもよいし、揃っていなくてもよい。
本発明で用いる(A)成分は、(B)成分の種類、形状及び大きさに関係なく良好な混合状態を形成でき、(B)成分が異種混合材料又は異形混合材料であっても同様にその効果を発揮できる。そのため、(B)成分は、例えば、木質材料と草木材料の混合材料であってもよいし、粉体状材料と破片状材料の混合材料であってもよいし、直径数μmの材料と最大径数mmの材料の混合材料であってもよい。
【0030】
(樹脂組成物)
本発明の一態様に係る樹脂組成物は上述した(A)成分と(B)成分を含めばその他の条件は特に制限はない。
本発明の一態様に係る樹脂組成物における(B)成分の含有量には特に制限はないが、例えば、(A)成分と(B)成分の全量に対して80質量%以下であり、また、例えば、(A)成分と(B)成分の全量に対して1質量%以上、10質量%以上、又は30質量%以上である。
【0031】
一実施形態において、上記の樹脂組成物は実質的に(A)成分及び(B)成分からなる。
一実施形態において、上記の樹脂組成物は、90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が(A)成分及び(B)成分である。
【0032】
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、ペレット化されたものであってもよい。例えば、(B)成分が微粒子を主体とする材料である場合、ペレット状であれば、成形品製造の便宜上有用である。
ペレットの製造方法としては、例えば、(A)成分と(B)成分とを押出機に投入し、加熱、混練して、ストランド上に押出し、ペレット状に切断する方法等が挙げられるが、これに限定されない。
【0033】
(B)成分が木本片等の一定以上の大きさの材料を含む場合、ペレット化を経ずに、最終製品(成形品)を製造する態様も可能である。この場合、当該成形品を本発明の一態様に係る樹脂組成物と言うこともできる。
【0034】
2.成形体とその製造方法
本発明の一態様に係る樹脂組成物を用いて成形を行うことで多様な樹脂製品(成形品、成形体)を製造することができる。
成形品としては、例えば、食器、玩具、雑貨等の日用品;内外装材料等の建築材料;農業用資材;緩衝資材;包装容器:繊維;その他、シートやパイプ等の汎用材料や部品等が挙げられる。
成形方法としては、例えば、射出成形、押し出し成形、圧縮成形、3Dプリンタ成形等が挙げられる。
【実施例0035】
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例により限定されない。
【0036】
実施例及び比較例で用いた材料は以下の通りである。
<ポリプロピレン>
A1:ホモポリプロピレン(出光興産株式会社製「L-MODU S401」、融点(Tm-D):80℃、25℃における半結晶化時間:21分、融解吸熱量(ΔH-D):36J/g、重量平均分子量:45,000、MFR:2,600g/10分)
A2:ホモポリプロピレン(出光興産株式会社製「L-MODU S901」、融点(Tm-D):80℃、25℃における半結晶化時間:4分、融解吸熱量(ΔH-D):40J/g、重量平均分子量:130,000、MFR:50g/10分)
A’1:ホモポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製「NOVATEC SA03」、融点(Tm-D):167℃、25℃における半結晶化時間:1秒未満、融解吸熱量(ΔH-D):105J/g、重量平均分子量:164,000、MFR:30g/10分)
A’2:エチレン-プロピレン共重合体(クラリアント社製「Licocene PP 2602」、エチレン:プロピレン=15mol%:85mol%、融点(Tm-D):80℃、25℃における半結晶化時間:1秒未満、融解吸熱量(ΔH-D):45J/g、重量平均分子量:42,000)
<植物性有機材料>
B1:木粉(株式会社カジノ製「No.100」、原材料:栂と松の混合材料、粒度:約150μm)
B2:木粉(株式会社カジノ製「No.100」、原材料:栂と松の混合材料、粒度:約1.7mm)
【0037】
実施例1
ポリプロピレンA1(ペレット状)と植物性有機材料B1とを二軸混練機に投入し、これらを120℃で5分間混練して混練物1とした。B1の量は、A1とB1の全量に対して60質量%とした。
【0038】
以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(混練性)
混練物1を二軸混練機から取り出し、室温程度になるまで冷却した。このときの混練性を以下の基準で評価した。
〇:(A)成分と(B)成分が十分に混練された樹脂組成物となっており、冷却の結果、(A)成分と(B)成分がまとまった成形体(以下、成形体1ともいう)が得られた。
×:(A)成分の溶融が不十分であるか、(A)成分と(B)成分が一体とならず、まとまった成形体が得られなかった。
【0039】
(ペレット化の可否)
混練性評価で得られた成形体1を二軸押出機に投入し、120℃でストランド状に押し出し、当該ストランドをペレット状(ペレットの長さ:3~8mm程度)に裁断した。このときのペレット加工性を以下の基準で評価した。
〇:形状の崩れや破砕が生じず、意図した形状にペレット化することができた。
×:混練性評価において成形不可であったためペレット化もできなかった。または、混練性評価において一応成形はできたものの、成形体中に空隙が存在し、ペレット化(裁断)の際に形状の崩れや破砕が生じ、意図した形状にペレット化することができなかった。
【0040】
(引張試験)
混練物1をシート状に成形し、JIS-K-7113(2002年)-2号(1/2)に準じた試験片をサンプリングした。引張試験機(株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AG-X 10kN」)を用いて引張速度30m/秒で伸張し、得られた値から応力σ(MPa)-歪みε(%)曲線を求めた。得られた応力-歪み曲線から破断点歪み(最大歪み)を求めた。試験環境は1気圧、25℃とした。なお、比較例1では、120℃での混練でまとまった成形体が得られなかったため、引張試験ができなかった(表1中、「-」で示す)。
【0041】
実施例2
ポリプロピレンA1をポリプロピレンA2に変更した以外は実施例1と同じ方法で混練物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0042】
実施例3
植物性有機材料B1を植物性有機材料B2に変更した以外は実施例1と同じ方法で混練物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0043】
実施例4
ポリプロピレンA1をポリプロピレンA2に変更した以外は実施例3と同じ方法で混練物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
ポリプロピレンA1をポリプロピレンA’1に変更した以外は実施例1と同じ方法で混練物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0045】
比較例2
ポリプロピレンA1をポリプロピレンA’2に変更した以外は実施例1と同じ方法で混練物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0046】
比較例3
植物性有機材料B1を植物性有機材料B2に変更した以外は比較例2と同じ方法で混練物を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(考察)
(1)実施例1~4では、(A)成分と(B)成分との混練が十分になされ、(A)成分中に(B)成分がまんべんなく分散し、これらが十分にまとまった成形体を製造することができた。また、(B)成分の燃焼(焦げ)や変色等の不具合もなく、(B)成分に由来する想定通りの外観を実現できた。さらに、ペレット化の際も形状の崩れや破砕といった不具合が生じず、(A)成分と(B)成分の一体性の高さが確認された。120℃という低温で混練及び成形を行ったにも関わらず上記のような効果が得られたのは、特定の物性を有するポリプロピレン系樹脂((A)成分)を用いたことにより、低温での混練・成形が可能となり、また、(A)成分と(B)成分との緻密な混合状態が実現されたことに起因するものと考えられる。
一方、比較例1では融点の高いポリプロピレン系樹脂A’1を用いたことから、120℃では混練及び成形ができなかった。A’1を用いて成形を行うためには、ある程度の高温条件が必要となるが、その場合には(B)成分の燃焼(焦げ)や変色が生じやすくなり、成形体の外観の劣化や性能への影響が懸念される。
比較例2及び3では融点の低いポリプロピレン系樹脂A’2を用いたが、成形体内部に空隙が存在し、又はペレット化の際の混練時に空隙が発生して、ペレット裁断時に(B)成分が脱落する等の不具合が生じた。A’2と(B)成分との一体性が不十分であることに起因するものと考えられる。
(2)引張試験でも実施例1~4の優位性が確認された。すなわち、本発明の樹脂組成物を用いることで、よりしなりやすく、強度の高い成形体が得られた。この効果も(A)成分と(B)成分の一体性の高さ等に起因するものと考えられる。なお、引張試験は(B)成分の大きさ(粒度)による影響が大きいため、(B)成分を揃えて比較すると実施例の優位性がより明確になる。