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特開2023-183223搬送装置、搬送方法、電子デバイスの製造方法及び成膜装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183223
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法、電子デバイスの製造方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20231220BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20231220BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20231220BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20231220BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20231220BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231220BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/68 G
H01L21/68 T
C23C14/50 A
C23C14/56 G
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096734
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大智
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5F131
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107GG04
3K107GG32
4K029AA02
4K029AA09
4K029AA11
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DB06
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
4K029JA01
4K029JA05
4K029KA01
5F131AA03
5F131AA12
5F131AA33
5F131BA04
5F131BB03
5F131BB13
5F131BB23
5F131CA55
5F131CA70
5F131DA02
5F131DA05
5F131DA09
5F131DA22
5F131DA32
5F131DA33
5F131DA37
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB62
5F131DB76
5F131DB82
5F131DC18
5F131DC22
5F131DD33
5F131DD75
5F131DD85
5F131EA02
5F131EB02
5F131GA03
5F131GA22
5F131GA32
(57)【要約】
【課題】磁気浮上により搬送されるキャリアにおいて、構成部品間のクリアランスをより確保しやすくすること
【解決手段】 基板を保持可能なキャリアと、
前記キャリアを磁気浮上させて搬送する搬送手段と、を備えた搬送装置であって、
前記キャリアは、マスクのフレームを磁気吸着する吸着手段、を含む、
ことを特徴とする搬送装置。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持可能なキャリアと、
前記キャリアを磁気浮上させて搬送する搬送手段と、を備えた搬送装置であって、
前記キャリアは、マスクのフレームを磁気吸着する吸着手段を含む、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置であって、
前記キャリアは、前記基板を吸着して保持する保持面を含み、
前記吸着手段は、前記マスクが前記保持面と対向するように、前記フレームを磁気吸着する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置であって、
前記搬送手段は、前記吸着手段が前記フレームを磁気吸着した状態で、前記キャリアを磁気浮上させて搬送する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の搬送装置であって、
前記搬送手段は、前記基板を保持した前記キャリアを磁気浮上させて移動させることにより、前記基板とマスク台に載置された前記マスクとのアライメントを実行可能である、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置であって、
前記吸着手段は電磁石を含み、
前記吸着手段により前記フレームを磁気吸着する際には、前記電磁石と前記フレームの第1の部分とが対向し、
前記アライメントが実行される際には、前記電磁石と、前記フレームの前記第1の部分と異なる部分に設けられ、前記フレームとの干渉を回避するための回避部とが対向する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送装置であって、
前記回避部は、前記フレームに形成された切り欠きである、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項5に記載の搬送装置であって、
前記電磁石は、前記キャリアの前記基板の保持面よりも所定の距離、下方に突出するように設けられ、
前記搬送手段は、前記アライメントの実行時には、前記回避部により前記電磁石と前記フレームとの干渉を回避することで、前記基板と前記マスクとの距離を前記所定の距離よりも接近可能である、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の搬送装置であって、
前記吸着手段は複数の電磁石を含み、
前記複数の電磁石は、前記キャリアの前記基板を保持する保持面の周囲に互いに離間して配置される、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の搬送装置であって、
前記キャリアは、フレーム部を備え、
前記フレーム部の下面に前記基板の前記保持面が形成され、
前記複数の電磁石は、フレーム部から下方に突出して設けられる、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の搬送装置であって、
前記搬送手段の上下方向の位置を規制するメカストッパをさらに備える、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
基板を保持可能なキャリアが、マスクのフレームを磁気吸着する吸着工程と、
前記吸着工程により前記フレームが前記キャリアに磁気吸着された状態で、前記キャリアを磁気浮上させて搬送する搬送工程と、を含む、
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項12】
請求項11に記載の搬送方法により前記マスクを搬送することと、
前記搬送することによって搬送された前記マスクを用いて基板に成膜することと、を含む、
ことを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
基板を保持可能なキャリアと、
前記キャリアを磁気浮上させて搬送する搬送手段と、
前記キャリアに保持された前記基板に対して成膜する成膜手段と、を備えた成膜装置であって、
前記キャリアは、マスクのフレームを磁気吸着する吸着手段と、を含む、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項14】
請求項13に記載の成膜装置であって、
前記キャリアは、前記基板を吸着して保持する保持面を含み、
前記吸着手段は、前記マスクが前記保持面と対向するように、前記フレームを磁気吸着する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項15】
請求項14に記載の成膜装置であって、
前記成膜手段が設けられる成膜室と、
前記成膜室に設けられ、前記マスクが載置されるマスク台と、をさらに備え、
前記搬送手段は、前記基板を保持した前記キャリアを磁気浮上させて移動させることにより、前記基板とマスク台に載置された前記マスクとのアライメントを実行可能である、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項16】
請求項15に記載の成膜装置であって、
前記成膜室に設けられ、前記キャリアに保持される前記基板と、前記マスクとを密着させる密着手段と、をさらに備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、搬送方法、電子デバイスの製造方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造設備として、成膜室に基板を搬送して基板に対する成膜を行う装置が知られている。このような成膜装置において、基板の搬送を、基板を保持しながら移動可能なキャリアにより行うことがある。例えば、特許文献1には、蒸着対象の基板を静電力により吸着する静電吸着手段を有するキャリア本体を備え、前記基板を前記静電吸着手段で保持しながら蒸着装置内を搬送される搬送キャリアが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-094262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の搬送キャリアは、磁気浮上により搬送可能であり、また、マスク周縁のマスクフレームを挟持するチャック片を有するマスクチャックを備えている。しかし、磁気浮上により搬送可能なキャリアにおいて、チャック片を用いて機械的にマスクをチャックする場合、構成部品間の接触を回避するためのクリアランスを確保しにくい場合がある。
【0005】
本発明は、磁気浮上により搬送されるキャリアにおいて、構成部品間のクリアランスをより確保しやすくする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
基板を保持可能なキャリアと、
前記キャリアを磁気浮上させて搬送する搬送手段と、を備えた搬送装置であって、
前記キャリアは、マスクのフレームを磁気吸着する吸着手段を含む、
ことを特徴とする搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁気浮上により搬送されるキャリアにおいて、構成部品間のクリアランスをより確保しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】成膜装置のレイアウト図。
図2】成膜室の構成を説明するための模式図。
図3図2の部分拡大図。
図4】(A)は磁気要素及び永久磁石の位置関係を示す図。(B)はメカストッパローラ及びキャリアの端部の位置関係を示す図。
図5】マスクの構造を示す平面図。
図6】キャリアが、各受取位置に位置している状態を示す図。
図7】キャリアの各状態を示す図。
図8】(A)はキャリアとマスクの位置関係を示す側面図。(B)はキャリアとマスクの位置関係を示す平面図。
図9】(A)はキャリアとマスクの位置関係を示す側面図。(B)はキャリアとマスクの位置関係を示す平面図。
図10】成膜装置の動作例を示すフローチャート。
図11】成膜装置の動作説明図。
図12】成膜装置の動作説明図。
図13】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<成膜装置の概要>
図1は成膜装置1のレイアウト図である。なお、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。矢印θはZ軸周りの回転方向を示す。
【0011】
成膜装置1は、搬送室2と、ターミナル室3と、成膜室4とを含む。各室はそれぞれ、それらを構成する壁部により気密に維持可能である。すなわち、各室は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。本実施形態では、各室は不図示の真空ポンプに接続されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。
【0012】
ここでは、搬送室2とターミナル室3とがX方向に並んで設けられるとともに、二つの成膜室4がターミナル室3のY方向の両側に設けられる構成が例示されている。成膜装置1は、一つの搬送室2、一つのターミナル室3及び二つの成膜室4を一つのクラスタとして、複数のクラスタをX方向に連結可能に構成されている。なお、連結されるクラスタの数は適宜設定可能である。また、成膜室4がターミナル室3に対してY方向の一方側にのみ設けられてもよい。
【0013】
成膜装置1は、搬送装置5A及び5Bを含む。搬送装置5A及び5Bは、ターミナル室3から成膜室4に渡って設けられ、ターミナル室3及び成膜室4の間で基板W及びマスクMの搬送を行う。
【0014】
成膜装置1の制御系は、ホストコンピュータとしてライン全体を制御する上位装置300と、各構成要素を制御する制御装置301~305とを含み、これらは有線又は無線の通信回線300aを介して通信可能である。制御装置301は、搬送室2に設けられた後述する搬送ロボット2aを制御する。ベース部302は、ターミナル室3に設けられた後述する搬送ロボット3aを制御する。複数の制御装置303はそれぞれ、対応する成膜室4の後述する蒸着源8及び移動ユニット9を制御する。制御装置304及び305はそれぞれ、後述する搬送装置5A及び搬送装置5Bを制御する。上位装置300は、基板Wに関する情報や搬送タイミング等の指示を各制御装置301~305に送信し、各制御装置301~305は受信した指示に基づき各構成要素を制御する。また、上位装置300及び各制御装置301~305は例えば、CPU等のプロセッサ、半導体メモリやハードディスクなどの記憶デバイス、入出力インタフェースを備える。
【0015】
また、成膜装置1は、搬送室2に隣接して設けられ、マスクMが収容されるマスク室104を含む。
【0016】
<搬送室>
搬送室2では、基板W又はマスクMのターミナル室3への搬送が行われる。搬送室2には、搬送ロボット2aが設けられている。搬送ロボット2aは、ベース部20上に二組のアーム21及びハンド22が支持されたダブルアーム型のロボットである。二組のアーム21及びハンド22は、ベース部20上でθ方向に旋回し、また、伸縮自在である。搬送ロボット2aは、基板Wの搬送の他、マスクMの搬送も行う。ハンド22はフォーク形状を有しており、基板MやマスクMはハンド22上に載置されて搬送される。
【0017】
<ターミナル室>
ターミナル室3では、搬送室2と成膜室4との間での基板W又はマスクMの受け渡しの他、成膜室4に対する基板W又はマスクMの振り分けが行われる。ターミナル室3には搬送ロボット3aが設けられている。搬送ロボット3aは、ベース部30にアーム31及びハンド32が支持されたロボットである。アーム31及びハンド32は、ベース部30上でθ方向に旋回し、また、伸縮自在である。搬送ロボット3aは、搬送室2の搬送ロボット2aから基板W又はマスクMを受け取り、後述する搬送装置5に受け渡す。また、搬送装置5から受け取った基板W又はマスクMを下流の搬送室2へ搬出する。ターミナル室3には、搬送ロボット3aが搬送装置5に基板W又はマスクMを受け渡す際に、基板W又はマスクMの位置を特定するためのカメラ(不図示)が設けられる。
【0018】
<成膜室>
成膜室4では、基板Wに対して成膜処理が行われる。二つの成膜室4には、それぞれ、二つのマスク台41が配置されている。合計で四つのマスク台により、蒸着処理を行う蒸着位置JA~JDが規定される。二つの成膜室4の構造は同じであり得る。このように、本実施形態では、各成膜室4は、二枚の基板Wを、Y方向を長手方向としてX方向に互いに離間するように配置可能に構成されている。しかしながら、各成膜室4に一枚の基板W又は三枚以上の基板Wが配置可能であってもよいし、基板WがX方向を長手方向として配置されてもよい。
【0019】
図2は、成膜室4の構成を説明するための模式図である。なお、図2では、成膜室4のうち蒸着位置JAにおける成膜処理に関係する要素が中心に示されているが、蒸着位置JB~JDにおける成膜処理に関係する要素も同様の構成を有し得る。
【0020】
成膜室4には、蒸着源8と、蒸着源8を移動する移動ユニット9が設けられている。蒸着源8は、蒸着物質の原材料を収容する坩堝や、坩堝を加熱するヒータ等を備え、原材料を加熱してその蒸気である蒸着物質を開口部8aから上方へ放出する。移動ユニット9は、蒸着源8をX方向及びY方向に移動可能である。蒸着源8は、移動ユニット9によってY方向に移動しながら基板Wに向けて蒸着物質を放出する。また、蒸着源8は移動ユニット9によってX方向に移動することで、成膜室4においてX方向に並んで設けられる基板Wのそれぞれに対して成膜を行うことができる。
【0021】
基板WにはマスクMを用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成可能である。基板Wの材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、代表的にはガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが用いられる。本実施形態の場合、基板Wは矩形である。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。
【0022】
蒸着源8の上方には、マスクMが載置されるマスク台41が設けられている。また、マスク台41の上方には基板W及びマスクMを搬送可能な搬送装置5Aが設けられている。
また、成膜室4には基板WとマスクMとのアライメントに用いられるカメラ42と、マスクMのマスク箔M2(図6参照)を磁気吸着して基板WとマスクMをと密着させる箔吸着マグネット43が設けられている。
【0023】
箔吸着マグネット43は、昇降機構44により昇降可能に設けられている。昇降機構44は、箔吸着マグネット43を、位置43aと、それよりも下方の位置43bとの間で昇降可能である。ここで、位置43aはキャリア6Aと上下方向(Z方向)に重複しない位置であり、位置43bはキャリア6Aと上下方向に重複する位置である。キャリア6Aの移動時には箔吸着マグネット43が位置43aに位置することによりキャリア6Aと箔吸着マグネット43との干渉が回避される。また、成膜時には、箔吸着マグネット43が昇降機構44によって位置43bまで降下することで箔吸着マグネット43とマスクMとの距離が近くなるので、箔吸着マグネット43の磁力をマスクMに及ぼすことができる。なお、昇降機構44としては、ボールねじ機構等の公知の機構を適宜採用可能である。また、本実施形態では、成膜室4に箔吸着マグネット43が設けられるが、後述するキャリア6Aの側にマスク箔M2を吸着可能な要素が設けられてもよい。
【0024】
<搬送装置>
図1に示すように、成膜装置1は、ターミナル室3から二つの成膜室4に渡って配置された二組の搬送装置5A及び5Bを備える。搬送装置5Aはキャリア6A及び6Cと、これらを独立して基板Wの成膜面に沿った方向(本実施形態ではY方向)に平行移動する搬送部7Aを備える。搬送装置5Bは、搬送装置5Aと同様の構造であり、キャリア6B及び6Dと、これらを独立して基板Wの成膜面に沿った方向(本実施形態ではY方向)に平行移動する搬送部7Bとを備える。なお、搬送装置並びにこれを構成するキャリア及び搬送部の数や配置等は、ターミナル室3及び成膜室4の構成等に応じて適宜変更され得る。
【0025】
図1図3を参照する。図3は、図2の部分拡大図であり、搬送装置5Aに関連する要素を中心に示している。なお、図2及び図3は搬送装置5A(搬送部7A及びキャリア6A)の構造を示すが、キャリア6A~6Dは同じ構造を有し、搬送部7A及び7Bも同じ構造を有し得る。
【0026】
搬送装置5Aは、搬送ロボット3aよりも高い位置でキャリア6Aを水平姿勢でY方向に独立して往復させるユニットであって、X方向に並設されている。
【0027】
<搬送部>
本実施形態の搬送部7Aは、キャリア6Aを磁力により移動する機構であり、特に磁気浮上により移動する機構である。搬送部7Aは、複数の磁気要素71と、検知部72と、メカストッパローラ73とを含む。
【0028】
複数の磁気要素71は、キャリア6Aを磁気浮上させるためのものである。複数の磁気要素71は、Y方向に等ピッチで配列されている。図4(A)に、X方向からみた場合の磁気要素71及び後述する永久磁石61の位置関係が示されている。ここでは、複数の磁気要素71は電磁石である。
【0029】
検知部72は、キャリア6Aの位置を検知する。検知部72は、キャリア6Aに設けられる被検知部64を検知することによって、キャリア6Aの位置を検知する。検知部72は、例えば複数の光学式のエンコーダ等のセンサで構成され、X方向の位置を検知するセンサ、Y方向の位置を検知するセンサ及びZ方向の位置を検知するセンサを含む。なお、キャリア6Aの側に検知部が設けられ、搬送部7Aの側に被検知部(例えばセンサにより読み取り可能なスケール)が設けられてもよい。
【0030】
メカストッパローラ73は、キャリア6Aの落下を防止するためのものである。すなわち、メカストッパローラ73は、キャリア6Aの上下方向の位置を規制する。メカストッパローラ73は、X方向でキャリア6Aの両側に、それぞれ上下一対で設けられている。また、メカストッパローラ73は、Y方向に渡って所定の間隔で設けられている。図4(B)に、X方向からみた場合の、メカストッパローラ73及び後述するキャリア6Aの端部65の位置関係が示されている。メカストッパローラ73は、端部65を上下で挟むように設けられるとともに、その一部がX方向で端部65に重複する。これによって、磁気要素71が磁力を発生できなくなった場合等に下側のメカストッパローラ73がキャリア6Aの落下を防止する。また、メカストッパローラ73はそれぞれX方向を軸方向として回転可能であり、端部65がメカストッパローラ73上をスライドすることによって移動することもできる。
【0031】
<キャリア>
キャリア6Aは、基板WやマスクMを搬送するためのものである。キャリア6Aは、それぞれ、平面視で矩形状の本体部材67を備える。本体部材67は、キャリア6Aの構成部品を支持するフレーム部である。
【0032】
本体部材67のX方向の各端部の上面にはそれぞれ不図示のヨークが設けられた永久磁石61が固定されている。永久磁石61は、本体部材67に、Y方向に渡って所定のパターンで複数設けられている。永久磁石61は、搬送部7Aの磁気要素71と対向している。永久磁石61と磁気要素71との反発力によってキャリア6Aに浮上力を生じさせることができる。Y方向に多数設けられた磁気要素(電磁石)71のうち、磁力を発生させる磁気要素71を順次切り替えることにより、永久磁石61と磁気要素71との吸引力によってキャリア6AにY方向の移動力を生じさせることができる。
【0033】
キャリア6Aは、それぞれ、基板Wを保持可能な基板保持部62を備える。基板保持部62は本実施形態の場合、静電気力により基板Wを吸着する静電チャックであり、基板保持部62はキャリア6Aの下面に配置された複数の電極62aを含む。電極62aは、セラミクスの板状部材の内部に導電性の部材が埋め込まれた構造を有する。複数の電極62aにより、キャリア6Aの下面に基板Wを保持する保持面62bが形成される。なお、基板保持部62は、粘着力により基板Wを保持する粘着パッドや、バキュームパッド等を備えたものであってもよい。
【0034】
キャリア6Aは、それぞれ、マスクMを磁気吸着して保持するマスク保持部63を備える。マスク保持部63は、マスクフレームM1を磁気吸着する複数の電磁石63aで構成される。電磁石63aは、本体部材67の下面から下方に突出するように設けられている。複数の電磁石63aは、基板Wの保持面62bの周囲に互いに離間して配置される(図8参照)。本実施形態では、キャリア6Aの本体部材67の長辺に沿って複数の電磁石63aが互いに離間して配置されている。しかしながら、複数の電磁石63aの配置については変更可能であり、本体部材67の短辺にも複数の電磁石63aが配置されてもよいし、本体部材67の四隅に複数の電磁石63aが配置されてもよい。また、複数の電磁石63aの形状、大きさ等についても変更可能である。図示の例では電磁石63aは直方体の形状を有しているが、例えば下側から見たが正方形、他の多角形、円形、楕円形等であってもよい。また、複数の電磁石63a同士が互いに異なる形状或いは大きさを有していてもよい。すなわち、電磁石63aの位置によってマスクMの保持に必要な磁力が異なり得るので、電磁石63aの位置に応じた形状、或いは大きさとしてもよい。
【0035】
また、本体部材67には前述した被検知部64が設けられており、被検知部64が検知部72に検知されることによってキャリア6Aの位置が特定される。
【0036】
また、本体部材67には制御ボックス66が搭載されている。制御ボックス66は、充電式の電源と、制御装置304からの指示を受け付ける無線通信部と、受け付けた指示に基づいて所定の処理を実行するプロセッサ等の処理部と、半導体メモリ等の記憶デバイスを含み得る。制御ボックス66は、製造プロセス全工程において、外部より電源供給ケーブル、通信ケーブル等の接続を行う必要がないように考慮されている。制御ボックス66の配置については適宜変更可能であるが、例えば、成膜時に後述する箔吸着マグネット43と干渉しないように配置される。
【0037】
<マスク>
図5は、マスクMの構造を示す平面図である。マスクMは、基板W上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、マスク台41の上に載置される。マスクMとしては、枠状のマスクフレームM1に数μm~数十μm程度の厚さのマスク箔M2が溶接固定された構造を有するマスクを用いることができる。マスクMの材質は特に限定はされないが、インバー材などの熱膨張係数の小さい金属を用いることが好ましい。成膜処理は、基板WがマスクMの上に載置され、基板WとマスクMとが互いに重ね合わされた状態で行われる。
【0038】
本実施形態では、マスクフレームM1は、マスク保持部63によって磁気吸着される被吸着部M11と、マスク保持部63との干渉を回避するための回避部M12とを含む。本実施形態では、回避部M12はマスクフレームM1に形成された切り欠きである。なお、回避部M12は、マスクフレームM1に形成され、電磁石63aが通過可能な開口等であってもよい。
【0039】
前述したマスク保持部63によりマスクフレームM1を磁気吸着する際には、複数の電磁石63aと被吸着部M11が対向する。また、後述する基板WとマスクMとのアライメントが実行される際には、複数の電磁石63aと、回避部M12とが対向する。これにより、アライメントの実行時には電磁石63aとマスクフレームM1との干渉が回避されるので、基板WとマスクMとをより接近させることができる。
【0040】
<基板の受取動作>
搬送ロボット3aから搬送される基板WやマスクMのキャリア6A~6Dによる受け取りは、ターミナル室3内の所定の位置で行われる。図6はキャリア6A~6Dが、各受取位置PA~PDに位置している状態を示している。受取位置PA~PDはX-Y平面状でマトリクス状(2×2)に配置されており、成膜室4の外部であるターミナル室3の内部に設定されている。四か所の異なる受取位置PA~PDがあることで、下流側でのシステム障害が生じた場合に、基板Wを停留させておくバッファとしてもこれら受取位置PA~PDを用いることもできる。
【0041】
<キャリアによる基板及びマスクの保持動作>
図7図9を用いて、キャリア6A~6Dによる基板W及びマスクMの保持動作について説明する。図7は、キャリア6A~6Dの各状態を示す図であり、成膜時の状態(状態ST1)、基板搬送時の状態(状態ST2)及びマスク搬送時の状態(状態ST3)が示されている。また、図8(A)及び図8(B)はそれぞれ、状態ST1におけるキャリア6A~6DとマスクMの位置関係を示す側面図及び平面図である。図9(A)及び図9(B)はそれぞれ、状態ST3におけるキャリア6A~6DとマスクMの位置関係を示す側面図及び平面図である。
【0042】
状態ST1で示されるように、成膜時には、キャリア6A~6Dが基板Wを基板保持部62により吸着して保持した状態で、キャリア6A~6Dが下降することによって基板WがマスクMに対して近づけられる。また、マスク台41に載置されているマスクMのマスク箔M2は、箔吸着マグネット43によって基板Wの側に吸着され、基板Wと密着する。なお、このとき、マスク保持部63の複数の電磁石63aは、マスクフレームM1の回避部M12と対向しているため、複数の電磁石63aとマスクフレームM1との接触が回避されている。そのため、キャリア6A~6Dは、基板WとマスクMのマスクフレームM1との距離D1を、電磁石63aの保持面62bからの下端までの長さL1よりも小さくすることができる。これにより、基板WとマスクMのマスク箔M2とをより接近可能である。
【0043】
状態ST2で示されるように、基板搬送時には、キャリア6A~6Dが基板Wを基板保持部62により吸着して保持した状態でキャリア6A~6Dが状態ST1よりも上昇する。これにより、マスク台41や搬送ロボット3aのハンド32等の他の部品との接触を回避しつつ基板Wを搬送することができる。このとき、基板Wとマスク台41上のマスクMとの間には距離D2のクリアランスを確保することができ、電磁石63aとマスク台41上のマスクMのマスクフレームM1との間には距離D3のクリアランスを確保することができる。
【0044】
状態ST3で示されるように、マスク搬送時には、キャリア6A~6DがマスクMをマスク保持部63により保持した状態でキャリア6A~6Dが状態ST1よりも上昇する。これにより、マスク台41や搬送ロボット3aのハンド32等の他の部品との接触を回避しつつマスクMを搬送することができる。このとき、マスクMとマスク台41との間には距離D4のクリアランスを確保することができる。
【0045】
また、このとき、マスク保持部63の複数の電磁石63aは、マスクフレームM1の被吸着部M11と対向しているため、電磁石63aがマスクフレームM1を吸着保持することができる。
【0046】
本実施形態では、マスク保持部63は、マスクMが基板Wの保持面62bと対向するように、マスクMのマスクフレームM1を磁気吸着している。さらに言えば、マスク保持部63は、マスクMと保持面62bとの間に所定の間隔D5を確保した状態で、マスクMが保持面62bと対向するように、マスクフレームM1を磁気吸着している。
【0047】
本実施形態では、電磁石63aが本体部材67の下面(保持面62b)から長さL1だけ下方に突出しているので、マスクフレームM1と本体部材67との間に長さL1以上の間隔を確保した状態でマスクフレームM1がキャリア6A~6Dにより保持される。よって、マスク搬送時におけるキャリア6A~6DとマスクMとの間のクリアランスを確保することができる。ここで、長さL1は、例えばマスクフレームM1に形成される段差の高さH1(図7(C)参照)よりも大きい値に設定される。例えば、長さL1は、高さH1の1.2倍~2.0倍以上であってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、電磁石63aがマスクフレームM1の上面を磁気吸着する。すなわち、本実施形態ではマスクフレームM1を下側から支持する必要がない。したがって、マスクMの搬送時に、マスクM及びこれを保持するキャリア6Aと、マスク台41や搬送ロボット3aのハンド32等の他の構成部品との間のクリアランスを容易に確保することができる。また、マスクMを機械式のチャック等により下側から支持する場合、チャックを支持するための支持部を、マスクフレームM1を支持した状態においてマスクフレームM1よりも幅方向外側に位置するようにキャリア6Aに設ける必要がある。しかしながら、本実施形態では、電磁石63aを用いてマスクフレームM1の上面を吸着して保持するため、マスク保持部63(電磁石63a)をマスクフレームM1の幅内に収めることができる。したがって、この点からも他の構成部品とのクリアランスをより容易に確保できるともに、装置の小型化にも寄与することができる。
【0049】
また、状態ST3では、状態ST2によりもさらにキャリア6A~6Dが上昇している。これにより、マスクMとマスク台41や搬送ロボット3aのハンド32等の他の部品とのクリアランスをより確実に確保することができる。
【0050】
なお、キャリア6Aの搬送経路であって、マスク台41や搬送ロボット3a等が存在しない領域において、マスクMの落下を防止するメカストッパ等が設けられてもよい。
【0051】
<成膜装置1の動作例>
図10のフローチャート及び図11図12を参照して、成膜装置1による成膜動作の例を説明する。例えば本フローチャートは、上位装置103が、各制御装置301~305に指示を送信し、各制御装置301~305が受信した指示に基づいて各構成要素を動作させることによって実現される。また、ここでは一例として、成膜室4の成膜位置JAにおいて成膜が行われる際の動作を説明する。しかしながら、成膜室4の成膜位置JB~JDにおいても同様の動作により成膜を行うことができる、また、各成膜位置JA~JDで成膜を行うための動作は適宜並行して実行され得る。また、図11~12は、成膜装置1の成膜動作の説明図である。
【0052】
S1~S8はマスク台41へのマスクMの設置動作である。S1において、搬送室2の搬送ロボット2aによりマスク室104(MT室)からマスクMを搬出する。S2において、搬送室2の搬送ロボット2aからターミナル室3(TE室)の搬送ロボット3aへマスクMが受け渡される。搬送ロボット3aは、搬送ロボット2aから受け渡されたマスクMをハンド32により保持する。S3において、搬送ロボット3aがマスクMをキャリア6Aの下方へと移動する。キャリア6は、初期位置として、ターミナル室3内の受取位置PAに位置しているものとする。
【0053】
S4において、キャリア6Aはマスク保持部63でマスクMのマスクフレームM1を磁気吸着する。詳細には、搬送ロボット3aに支持されたマスクMがキャリア6Aの下方に到達した後に、キャリア6Aが下降してマスク保持部63によりマスクフレームM1を磁気吸着する。磁気吸着動作は、制御ボックス66が制御装置304から受付けた指示に基づいて電磁石63aの磁力を制御することによって行われる。その後、キャリア6AはマスクMを搬送する際の搬送位置まで上昇する。
【0054】
S5において、搬送部7Aがキャリア6Aをターミナル室3から成膜室4(EV室)へと搬送する。S6において、搬送部7Aはキャリア6Aをマスク台41の上方へ移動する(図11の状態ST101)。
【0055】
S7において、マスクMのアライメントが行われる。搬送部7Aは、マスクフレームM1を吸着して保持した状態のキャリア6Aの位置を調整することで、マスクMとマスク台41の相対的な位置関係を調整する(図11の状態ST102)。なお、マスクMのアライメント動作については公知の技術を適宜用いることができる。概略を述べると、まず、キャリア6Aがマスク搬送時の高さから下降してマスクMとマスク台41とを接近させる。カメラ42によりマスクMに予め形成されているアライメントマーク(不図示)を読取り、マスクMの基準位置からの位置ずれ量を特定する。そして、磁気浮上しているキャリア6Aの位置を微調整しながら、マスクMとマスク台41との位置関係が所定の条件を満たすように、これらの位置合わせ(アライメント)が行われる。マスクMの位置の調整は本実施形態の場合、搬送部7Aの磁気要素71の磁力を調節して行う。X方向、Y方向に離間した各磁気要素71の磁力を調整することで、キャリア6Aの位置をX方向、Y方向、θ方向に変位させることができ、これによりキャリア6Aに保持されているマスクMのX方向、Y方向、θ方向の位置を変位させることができる。後述する基板WとマスクMとの位置調整においても同様である。マスク台41の位置の情報は、予め上位装置300等に保持されていてもよい。アライメントが終わると、S8において、マスクMがマスク台41に載置される(図11の状態ST103)。
【0056】
S9~S18は、基板Wを成膜位置にセットするための動作である。S9において、搬送部7Aは、キャリア6Aを成膜室4からターミナル室3へ搬送する。S10において、搬送室2に基板Wが投入される。S11において、搬送室2の搬送ロボット2aにより投入された基板Wを受け取る。S12において、搬送室2の搬送ロボット2aからターミナル室3の搬送ロボット3aに基板Wが受け渡される。搬送ロボット3aは、搬送ロボット2aから受け渡された基板Wをハンド32により保持する。S13において、搬送ロボット3aが基板Wをキャリア6Aの下方へと移動する。
【0057】
S14において、キャリア6Aは基板保持部62で基板Wを吸着する。詳細には、搬送ロボット3aに支持された基板Wがキャリア6Aの下方に到達した後に、キャリア6Aが下降して基板保持部62により基板Wを吸着する。吸着動作は、制御ボックス66が制御装置304から受付けた指示に基づいて基板保持部62により発生させる静電気力を制御することによって行われる。その後、キャリア6Aは基板Wを搬送する際の搬送位置まで上昇する。
【0058】
なお、キャリア6Aが基板Wを吸着する前には、キャリア6Aと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行う。ターミナル室3にはアライメント用のカメラ(不図示)が設けられている。カメラの撮像画像からキャリア6Aと基板Wとの相対位置を特定し、基板WのX方向、Y方向及びθ方向の位置を搬送ロボット3aによって調整する。
【0059】
S15において、搬送部7Aがキャリア6Aをターミナル室3から成膜室4(EV室)へと搬送する。S16において、搬送部7Aはキャリア6Aをマスク台41の上方へ移動する。(図7の状態ST2、図12の状態ST201)
【0060】
S17において、基板WとマスクMとのアライメントが行われる。
搬送部7Aは、基板Wを吸着して保持した状態のキャリア6Aの位置を調整することで、基板WとマスクMの相対的な位置関係を調整する(図11の状態ST202)。なお、基板WとマスクMのアライメント動作については公知の技術を適宜用いることができる。概略を述べると、まず、キャリア6Aが基板搬送時の高さから下降して基板WとマスクMとを接近させる。カメラ42により基板W及びマスクMに予め形成されているアライメントマーク(不図示)を読取り、基板W及びマスクMの位置を特定する。そして、磁気浮上しているキャリア6Aの位置を微調整しながら、基板WとマスクMとの位置関係が所定の条件を満たすように、これらの位置合わせ(アライメント)が行われる。
【0061】
S18において、基板Wがセットされる。基板WとマスクMとを接近(或いは接触)させた状態で、昇降機構44が箔吸着マグネット43を下降させ、箔吸着マグネット43がよってマスクMを基板Wに密着させる(図12の状態ST203)。
【0062】
S19において、成膜処理が行われる。すなわち、蒸着源8は、移動ユニット9によってY方向に移動しながら基板Wに向けて蒸着物質を放出する。
【0063】
S20において、搬送部7Aは基板Wを保持した状態のキャリア6Aを上昇させる。S21において、搬送部7Aはキャリア6Aを成膜室4からターミナル室3へ搬送する。
【0064】
以上説明した動作においては、キャリア6AによってマスクMがターミナル室3と成膜室4との間で搬送される。本実施形態では、このとき、マスクMのマスクフレームM1が基板保持部62によって磁気吸着される。したがって、例えば機械的なマスクチャック等によりマスクMを保持して搬送する場合等と比較して他の構成部品とのクリアランスが確保しやすくなる。また、マスクMのマスク台41への設置時や、基板WとマスクMのアライメント時、成膜時等においても、例えば機械的なマスクチャック等が用いられる場合と比べて他の構成部品とのクリアランスを確保しやすくなる。また、本実施形態では、マスク保持部63だけでなく基板保持部62も基板Wを下面で吸着保持する構成であるため、基板Wの保持部としてチャック等の機械的な方式が用いられる場合と比べてクリアランスの確保が容易となる。
【0065】
<電子デバイスの製造方法>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。例えば、図1に示される一つの搬送室2、一つのターミナル室3及び二つの成膜室4を一つのクラスタとして、三つのクラスタを連結することによって、後述する第1の成膜室~第6の成膜室が提供されてもよい。
【0066】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図13(A)は有機EL表示装置50の全体図、図13(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0067】
図13(A)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0068】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0069】
図13(B)は、図13(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0070】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、図13(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0071】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0072】
図13(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0073】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0074】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0075】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。
【0076】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板53を準備する。なお、基板53の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板53として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0077】
第1の電極54が形成された基板53の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0078】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜室に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0079】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜室に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板53の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板53上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0080】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0081】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室に移動し、第2電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室~第6の成膜室では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室における第2電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2電極68までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0082】
ここで、第1の成膜室~第6の成膜室での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板53とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板53を載置して成膜が行われる。
【0083】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1:成膜装置、5A~5B:搬送装置、6A~6D:キャリア、7A~7B:搬送部、63:マスク保持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13