(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183287
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】シートベルト装置、および作業車両
(51)【国際特許分類】
B60R 22/48 20060101AFI20231220BHJP
B60R 22/26 20060101ALI20231220BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20231220BHJP
B62D 49/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60R22/48 104
B60R22/26
B62D25/08 A
B62D49/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096821
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幸人
【テーマコード(参考)】
3D018
3D203
【Fターム(参考)】
3D018BA12
3D203AA23
3D203BB53
3D203CB08
3D203CB13
3D203DA02
3D203DA51
3D203DA55
3D203DB06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、所定の条件下において装着を阻止することが可能なシートベルト装置等を提供する。
【解決手段】
シートベルト装置4の締結機構41が、タング側係合部50aを形成するタングプレート50と、タング側係合部50aに係合するバックル側係合部61aを形成するバックル51と、タング側係合部50aとバックル側係合部61aとの係合を阻止する係合阻止位置Px、および、タング側係合部50aとバックル側係合部61aとの係合を可能とする係合許可位置Pyの間で移動可能に設けられた係合阻止部材52と、係合阻止部材52を動作させる駆動源80と、車両本体に設けられた安全フレームが傾倒姿勢となっている状態で係合阻止部材52を係合阻止位置Pxに配置し、安全フレームが起立姿勢となっている状態で係合阻止部材52を係合許可位置Pyに配置するように、駆動源80の動作を制御する制御装置54とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の上方に向かって延びる起立姿勢と、前記運転席の後方に向かって延びる傾倒姿勢との間で姿勢を切替可能に前記運転席の後方に配置される可倒式の門型の安全フレームを構成する作業車両において、前記運転席に設けられるシートベルト装置であって、
前記運転席の幅方向に配置可能なベルトと、
前記ベルトの途中または端部に設けられ、前記ベルトが前記運転席に懸架された結合状態、および、前記ベルトが前記運転席から開放された解除状態を切替可能な締結機構と、
を備え、
前記締結機構は、
タング側係合部を形成するタングプレートと、
前記タング側係合部に係合するバックル側係合部を形成するバックルと、
前記タング側係合部と前記バックル側係合部との係合を阻止する係合阻止位置、および、前記タング側係合部と前記バックル側係合部との係合を可能とする係合許可位置の間で移動可能に設けられた係合阻止部材と、
前記係合阻止部材を動作させる駆動源と、
前記安全フレームが前記傾倒姿勢となっている状態で前記係合阻止部材を前記係合阻止位置に配置し、前記安全フレームが前記起立姿勢となっている状態で前記係合阻止部材を前記係合許可位置に配置するように、前記駆動源の動作を制御する制御装置と、
を備えるシートベルト装置。
【請求項2】
前記バックルは、前記タングプレートが差し込まれる差込口を形成するバックルケースを有し、
前記バックル側係合部、前記係合阻止部材、前記駆動源、および前記制御装置は、前記バックルケース内に設けられている請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項3】
前記係合阻止部材は、前記差込口に差し込まれる前記タングプレートと干渉可能な阻止体を有し、
前記係合阻止位置となる前記阻止体は、前記タング側係合部が前記バックル側係合部と係合する前に該タングプレートと干渉する場所に前記駆動源によって位置決めされ、前記係合許可位置となる前記阻止体は、前記タング側係合部が前記バックル側係合部と係合するまで、前記タングプレートと干渉しない場所に前記駆動源によって位置決めされる請求項2に記載のシートベルト装置。
【請求項4】
前記係合阻止位置となる前記阻止体は、前記バックル側係合部よりも前記タングプレートの差し込み方向の手前側の場所に前記駆動源によって位置決めされる請求項3に記載のシートベルト装置。
【請求項5】
前記係合許可位置となる前記阻止体は、前記バックル側係合部よりも前記差し込み方向の奥側となる、前記バックル側係合部を挟んで前記差込口とは反対側の場所に前記駆動源によって位置決めされる請求項4に記載のシートベルト装置。
【請求項6】
前記係合阻止部材は、前記タングプレートからの外力によって前記差し込み方向に沿って移動する前記阻止体に対して、該外力に対する反力を発生する弾性体をさらに有する請求項3から5のいずれか一項に記載のシートベルト装置。
【請求項7】
前記バックルは、前記タングプレートが差し込まれる差込口を形成するバックルケースを有し、
前記タング側係合部は、前記タングプレートを板厚方向に貫通する貫通孔であり、
前記バックル側係合部は、前記バックルケース内に設けられ、前記タングプレートが前記差込口に差し込まれた際に前記貫通孔外に配置された非係合位置から、前記貫通孔内に配置されて該貫通孔に係合する係合位置に向けて進出可能な係合突起であり、
前記係合阻止部材は、前記係合突起を前記非係合位置に固定可能な固定体を有し、
前記係合阻止位置となる前記固定体は、前記係合突起を前記非係合位置に固定する場所に前記駆動源によって位置決めされ、前記係合許可位置となる前記固定体は、前記係合突起を前記非係合位置から前記係合位置に向けて進出可能となる場所に前記駆動源によって位置決めされる請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項8】
前記バックルは、前記タングプレートが差し込まれる差込口を形成するバックルケースを有し、
前記タング側係合部は、前記タングプレートを板厚方向に貫通する貫通孔であり、
前記バックル側係合部は、前記バックルケース内に設けられ、前記タングプレートが前記差込口に差し込まれた際に前記貫通孔外に配置された非係合位置から、前記貫通孔内に配置されて該貫通孔に係合する係合位置に向けて進出可能な係合突起であり、
前記係合阻止部材は、前記タングプレートが前記差込口に差し込まれた際に、前記係合突起に干渉可能な閉塞体を有し、
前記係合阻止位置となる前記閉塞体は、前記貫通孔の少なくとも一部を閉塞する場所に前記駆動源によって位置決めされ、前記係合許可位置となる前記閉塞体は、前記貫通孔を開放する場所に前記駆動源によって位置決めされる請求項1に記載のシートベルト装置。
【請求項9】
請求項1、7、および8のいずれか一項に記載のシートベルト装置と、
前記シートベルト装置が設けられた前記運転席を配置する車両本体と、
前記車両本体に設けられた前記安全フレームと、
前記安全フレームが前記傾倒姿勢となっている状態を検知するフレーム姿勢検知装置と、
を備え、
前記シートベルト装置における前記制御装置は、前記フレーム姿勢検知装置からの信号に基づいて前記駆動源の動作を制御する作業車両。
【請求項10】
前記車両本体における前記運転席に運転者が着座した状態を検知する着座検知装置をさらに備え、
前記シートベルト装置における前記制御装置は、前記着座検知装置および前記フレーム姿勢検知装置からの信号に基づいて、前記運転者が前記運転席に着座した状態で、かつ、前記安全フレームが前記傾倒姿勢となっている状態において、前記係合阻止部材を前記係合阻止位置に配置するように前記駆動源の動作を制御する請求項9に記載の作業車両。
【請求項11】
前記安全フレームに設けられた方向指示器と、
前記方向指示器を動作させる電源と、
前記電源と前記方向指示器とを接続する指示器配線と、
前記指示器配線から分岐して前記駆動源および前記制御装置に接続され、前記駆動源および前記制御装置に対して、動力としての電力を供給するシートベルト駆動用配線と、
をさらに備える請求項9に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト装置、およびこれを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタ等の作業車両の転落・転倒時に運転者を保護することを目的として、ROPS(Roll-Over Protective Structure)と呼ばれる門型の安全フレームが運転席に設けられる場合がある。
【0003】
このような安全フレームとしては、例えば特許文献1に記載されているように、車庫入れ時などに障害物との接触を避ける目的で、運転席の後方や前方に折り畳むことのできる構造が一般に採用されている。
【0004】
ところで、安全フレームを折り畳んだ状態のまま、運転者がシートベルトを装着して車両を走行させてしまうと、仮に車両が転落・転倒した際には運転者の脱出が困難となってしまう可能性がある。この点、特許文献1では安全フレームを折り畳むとシートベルトが巻き取られ、シートベルトを装着できないようにして安全を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載された技術では、安全フレームの動作に連動してシートベルトを巻き取るため構造が複雑になるといった懸念がある。また仮にシートベルトが巻き取られたとしても、巻き取り量が十分でない場合には運転者の体格によってはフレームを折り畳んだ状態においてもシートベルトを装着できてしまう可能性があり、必ずしも上述したような安全性に関する問題を解決できるわけではない。
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成で、所定の条件下において装着を阻止することが可能なシートベルト装置、およびこれを備えた作業車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るシートベルト装置は、運転席の上方に向かって延びる起立姿勢と、前記運転席の後方に向かって延びる傾倒姿勢との間で姿勢を切替可能に前記運転席の後方に配置される可倒式の門型の安全フレームを構成する作業車両において、前記運転席に設けられるシートベルト装置であって、前記運転席の幅方向に配置可能なベルトと、前記ベルトの途中または端部に設けられ、前記ベルトが前記運転席に懸架された結合状態、および、前記ベルトが前記運転席から開放された解除状態を切替可能な締結機構と、を備え、前記締結機構は、タング側係合部を形成するタングプレートと、前記タング側係合部に係合するバックル側係合部を形成するバックルと、前記タング側係合部と前記バックル側係合部との係合を阻止する係合阻止位置、および、前記タング側係合部と前記バックル側係合部との係合を可能とする係合許可位置の間で移動可能に設けられた係合阻止部材と、前記係合阻止部材を動作させる駆動源と、前記安全フレームが前記傾倒姿勢となっている状態で前記係合阻止部材を前記係合阻止位置に配置し、前記安全フレームが前記起立姿勢となっている状態で前記係合阻止部材を前記係合許可位置に配置するように、前記駆動源の動作を制御する制御装置と、を備える。
【0009】
上記のシートベルト装置では、前記バックルは、前記タングプレートが差し込まれる差込口を形成するバックルケースを有し、前記バックル側係合部、前記係合阻止部材、前記駆動源、および前記制御装置は、前記バックルケース内に設けられていてもよい。
【0010】
上記のシートベルト装置では、前記係合阻止部材は、前記差込口に差し込まれる前記タングプレートと干渉可能な阻止体を有し、前記係合阻止位置となる前記阻止体は、前記タング側係合部が前記バックル側係合部と係合する前に該タングプレートと干渉する場所に前記駆動源によって位置決めされ、前記係合許可位置となる前記阻止体は、前記タング側係合部が前記バックル側係合部と係合するまで、前記タングプレートと干渉しない場所に前記駆動源によって位置決めされてもよい。
【0011】
上記のシートベルト装置では、前記係合阻止位置となる前記阻止体は、前記バックル側係合部よりも前記タングプレートの差し込み方向の手前側の場所に前記駆動源によって位置決めされてもよい。
【0012】
上記のシートベルト装置では、前記係合許可位置となる前記阻止体は、前記バックル側係合部よりも前記差し込み方向の奥側となる、前記バックル側係合部を挟んで前記差込口とは反対側の場所に前記駆動源によって位置決めされてもよい。
【0013】
上記のシートベルト装置では、前記係合阻止部材は、前記タングプレートからの外力によって前記差し込み方向に沿って移動する前記阻止体に対して、該外力に対する反力を発生する弾性体をさらに有してもよい。
【0014】
上記のシートベルト装置では、前記バックルは、前記タングプレートが差し込まれる差込口を形成するバックルケースを有し、前記タング側係合部は、前記タングプレートを板厚方向に貫通する貫通孔であり、前記バックル側係合部は、前記バックルケース内に設けられ、前記タングプレートが前記差込口に差し込まれた際に前記貫通孔外に配置された非係合位置から、前記貫通孔内に配置されて該貫通孔に係合する係合位置に向けて進出可能な係合突起であり、前記係合阻止部材は、前記係合突起を前記非係合位置に固定可能な固定体を有し、前記係合阻止位置となる前記固定体は、前記係合突起を前記非係合位置に固定する場所に前記駆動源によって位置決めされ、前記係合許可位置となる前記固定体は、前記係合突起を前記非係合位置から前記係合位置に向けて進出可能となる場所に前記駆動源によって位置決めされてもよい。
【0015】
上記のシートベルト装置では、前記バックルは、前記タングプレートが差し込まれる差込口を形成するバックルケースを有し、前記タング側係合部は、前記タングプレートを板厚方向に貫通する貫通孔であり、前記バックル側係合部は、前記バックルケース内に設けられ、前記タングプレートが前記差込口に差し込まれた際に前記貫通孔外に配置された非係合位置から、前記貫通孔内に配置されて該貫通孔に係合する係合位置に向けて進出可能な係合突起であり、前記係合阻止部材は、前記タングプレートが前記差込口に差し込まれた際に、前記係合突起に干渉可能な閉塞体を有し、前記係合阻止位置となる前記閉塞体は、前記貫通孔の少なくとも一部を閉塞する場所に前記駆動源によって位置決めされ、前記係合許可位置となる前記閉塞体は、前記貫通孔を開放する場所に前記駆動源によって位置決めされてもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る作業車両は、上記のシートベルト装置と、前記シートベルト装置が設けられた前記運転席を配置する車両本体と、前記車両本体に設けられた前記安全フレームと、前記安全フレームが前記傾倒姿勢となっている状態を検知するフレーム姿勢検知装置と、を備え、前記シートベルト装置における前記制御装置は、前記フレーム姿勢検知装置からの信号に基づいて前記駆動源の動作を制御する。
【0017】
上記の作業車両は、前記車両本体における前記運転席に運転者が着座した状態を検知する着座検知装置をさらに備え、前記シートベルト装置における前記制御装置は、前記着座検知装置および前記フレーム姿勢検知装置からの信号に基づいて、前記運転者が前記運転席に着座した状態で、かつ、前記安全フレームが前記傾倒姿勢となっている状態において、前記係合阻止部材を前記係合阻止位置に配置するように前記駆動源の動作を制御してもよい。
【0018】
上記の作業車両は、前記安全フレームに設けられた方向指示器と、前記方向指示器を動作させる電源と、前記電源と前記方向指示器とを接続する指示器配線と、前記指示器配線から分岐して前記駆動源および前記制御装置に接続され、前記駆動源および前記制御装置に対して、動力としての電力を供給するシートベルト駆動用配線と、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
上記のシートベルト装置等によれば、簡易な構成で、所定の条件下において装着を阻止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る作業車両の全体側面図である。
【
図2】上記作業車両の安全フレームの姿勢を変更する様子を示す安全フレームの側面図であって、(a)は安全フレームが起立姿勢となっている場合の図であり、(b)は安全フレームが傾倒姿勢となっている場合の図である。
【
図3】上記作業車両の安全フレームが起立状態となっている場合の斜視図である。
【
図4】上記作業車両の運転席を拡大して示す斜視図である。
【
図5】上記作業車両のシートベルト装置を示す上面図であって、バックルの内部を透過して示した図である。また(a)は係合阻止部材が係合阻止位置に配置された状態を示し、(b)は係合阻止部材が係合許可位置に配置された状態を示す。
【
図6】上記作業車両のシートベルト装置におけるタングプレートとバックルとの係合の様子を模式的に示す側面図であって、(a)はタングプレートがタングロック部材の手前側にある状態を示し、(b)はタングプレートがタングロック部材と接触した状態を示し、(c)はタングプレートがタングロック部材と係合した状態を示す図である。
【
図7】上記作業車両のシートベルト装置における制御装置のハードウェア構成図である。
【
図8】上記作業車両のシートベルト装置における制御装置の機能ブロック図である。
【
図9】上記作業車両のシートベルト装置における制御装置の制御フローを示す図である。
【
図10】本発明の第二実施形態に係る作業車両のシートベルト装置におけるタングプレートとバックルとの係合の様子を模式的に示す側面図であって、バックル側係合部が非係合位置に固定された状態を示す図である。
【
図11】本発明の第二実施形態に係る作業車両のシートベルト装置におけるタングプレートとバックルとの係合の様子を模式的に示す側面図であって、バックル側係合部の非係合位置への固定が解除された状態を示す図である。また(a)はタングプレートがタングロック部材の手前側にある状態を示し、(b)はタングプレートがタングロック部材と接触した状態を示し、(c)はタングプレートがタングロック部材と係合した状態を示す図である。
【
図12】本発明の第三実施形態に係る作業車両のシートベルト装置を示す上面図であって、係合阻止部材周りの構成品を透過して示した図である。また(a)は係合阻止部材が係合阻止位置に配置された状態を示し、(b)は係合阻止部材が係合許可位置に配置された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第一実施形態〕
(全体構成)
以下、本発明の実施形態に係る作業車両100について説明する。
作業車両100は、例えば乗用型トラクタ等の農業機械であって、運転者が搭乗して走行しながら所定の作業を行うものである。
図1に示すように本実施形態の作業車両100は、車両本体1と、車両本体1に設けられた運転席2、安全フレーム3、およびシートベルト装置4と、安全フレーム3の姿勢を検知するフレーム姿勢検知装置5と、運転者の運転席2への着座を検知する着座検知装置6と、シートベルト装置4の装着状態を検知するベルト装着検知装置7とを備えている。
【0022】
(車両本体)
車両本体1は、走行輪10aを構成する走行装置10と、走行装置10を駆動するエンジン11と、各種機器に電力を供給するバッテリ(電源)12等を有している。
【0023】
走行装置10の走行輪10aとしては、作業車両の前側に配置される前輪および後側に配置される後輪が設けられ、前輪は運転者によって操舵が可能になっている。
【0024】
(運転席)
運転席2は、車両本体1の上部に配置されている。なお本実施形態の車両本体1には、運転席2を上方から覆うようなキャビンは設けられていない。
【0025】
(安全フレーム)
安全フレーム3は門型をなし、運転席2の後方に配置される可倒式のフレームであって、運転席2の上方に向かって地面に対して直交する方向に延びる起立姿勢P1と、運転席2の後方に向かって延びる傾倒姿勢P2との間で姿勢を切替可能になっている。
本実施形態の安全フレーム3は、運転席2の幅方向(以下、単に幅方向とする)に間隔をあけて各々が運転席2に対して幅方向の外側に位置するように配置され、車両本体1から突出する一対の基部30と、各々の基部30に支持されて基部30から離れる方向に延びる一対の縦柱31と、これら一対の縦柱31同士を上端で接続して幅方向に延びる横柱32と、基部30と縦柱31との間にわたって設けられて基部30を貫通して縦柱31に差し込まれる位置決めピン33とを有している。
【0026】
図2に示すように、安全フレーム3の姿勢を切り替える場合には、この位置決めピン33を抜き取って基部30に対して縦柱31を回動させ、安全フレーム3の姿勢を変更した後に再び位置決めピン33を挿入する。すなわち各々の基部30には、位置決めピン33が挿入される穴として、起立姿勢P1において位置決めピン33が挿入される第一位置決め穴と30a、および、傾倒姿勢P2において位置決めピン33が挿入される第二位置決め穴30bが形成されている。そして起立姿勢P1となる安全フレーム3の上端が、運転席2(
図1参照)に着座した運転者の上方に位置するように、安全フレーム3の寸法が設定されている。なお安全フレーム3の姿勢を切り替える構造は、本実施形態の場合に限定されるものではい。
【0027】
ここで
図3に示すように、本実施形態の安全フレーム3には方向指示器37が設けられている。方向指示器37には車両本体1のバッテリ12から延びる指示器配線38が接続され、バッテリ12から給電されて方向指示器37が動作するようになっている。
【0028】
(フレーム姿勢検知装置)
フレーム姿勢検知装置5は、安全フレーム3の姿勢、すなわち起立姿勢P1および傾倒姿勢P2を検知するセンサを有している。このセンサは特に限定されるものではないが、本実施形態の場合、例えば位置決めピン33の基部30への接触部分となる第一位置決め穴30aまたは第二位置決め穴30b(
図2参照)への接触を検知することで安全フレーム3の姿勢を検知可能な接触検知センサが採用される。本実施形態においてフレーム姿勢検知装置5は、安全フレーム3内に設けられている。
【0029】
(着座検知装置)
図4に示すように着座検知装置6は、運転者の運転席2への着座の有無を検知するセンサを有している。このセンサは特に限定されるものではないが、例えば運転席2の座面の内側に設けられて運転者の体重によって抵抗値を変化させる歪みゲージ等によって構成されたセンサが採用される。
【0030】
(ベルト装着検知装置)
図5(a)および
図5(b)に示すようにベルト装着検知装置7は、詳しく後述するシートベルト装置4の装着の有無、すなわち後述するタングプレート50とバックル51との係合の有無を検知するセンサを有している。このセンサは特に限定されるものではないが、例えば後述するバックル51のバックルケース60内に設けられ、バックル51と後述するタングプレート50とが係合した際の短絡を検知することで、シートベルト装置4の装着の有無を検知可能となっている。
【0031】
(シートベルト装置)
次にシートベルト装置4について詳しく説明する。
図4に戻ってシートベルト装置4は、運転席2の幅方向に配置可能に設けられたベルト40と、ベルト40の端部に設けられてベルト40が運転席2に懸架された結合状態、および、ベルト40が運転席2から開放された解除状態を切替可能な締結機構41とを備えている。
【0032】
(ベルト)
ベルト40は、運転者がシートベルト装置4を装着した際に、運転席2の座面に沿って幅方向に延び、運転者の腹部の上方に配置されるようになっている。
【0033】
(締結機構)
締結機構41は、運転席2における幅方向の一端に設けられている(
図4参照)。締結機構41はベルト40とともに二点式のシートベルトを構成している。より詳しく締結機構41は、
図5(a)および
図5(b)に示すように、タングプレート50と、タングプレート50が係合するバックル51と、タングプレート50とバックル51との係合を阻止可能な係合阻止部材52と、係合阻止部材52を動作させる駆動装置53と、駆動装置53を制御する制御装置54とを備えている。
【0034】
(タングプレート)
タングプレート50は金属の板状をなし、ベルト40の端部に接続されている。またタングプレート50はタング側係合部50aを形成している。タング側係合部50aは、タングプレート50を板厚方向に貫通する貫通孔となっている。
【0035】
(バックル)
バックル51は、運転席2における側面に支持されて設けられている(
図4参照)。バックル51は、バックルケース60と、バックルケース60に収容されたタングロック部材61とを有している。
【0036】
(バックルケース)
バックルケース60は箱状をなし、バックルケース60の内側空間に向けてタングプレート50を差し込み可能となるように、バックルケース60にはタングプレート50の差し込み方向Dの手前側に開口する差込口60aが形成されている。
【0037】
(タングロック部材)
タングロック部材61は金属製であり、バックルケース60内においてバックルケース60の差込口60aに対して差し込み方向Dの奥側に配置されているとともに、タング側係合部50aに係合するバックル側係合部61aを形成している。
【0038】
図6(a)~
図6(c)に示すように本実施形態のタングロック部材61におけるバックル側係合部61aは、タングプレート50が差込口60aに差し込まれた際に、タング側係合部50a(貫通孔)の外側に配置された非係合位置Paから、タング側係合部50a(貫通孔)の内側に配置されてタング側係合部50aに係合する係合位置Pbに向けて進出可能な係合突起となっている。
【0039】
詳しくは、タングロック部材61は運転席2の側となる下方から、上方に向けて弾性部材62によって付勢されていることで、
図6(a)に示すように通常ではバックル側係合部61a(係合突起)が係合位置Pbに配置されている。そして
図6(b)に示すようにタングプレート50をバックルケース60内に差し込んだ際には、バックル側係合部61a(係合突起)に形成されて差し込み方向Dの奥側に向かって上方に傾斜する傾斜面61xをタングプレート50が差し込み方向Dに押すことによって、弾性部材62の付勢力に抗してタングロック部材61が下方に押し込まれ、弾性部材62が圧縮されてバックル側係合部61a(係合突起)が非係合位置Paに一旦退避し、その後、
図6(c)に示すようにさらにタングプレート50を差し込むと、弾性部材62の復元力によって、バックル側係合部61a(係合突起)がタング側係合部50a(貫通孔)に向けて、すなわち係合位置Pbに向けて進出するようになっている。
【0040】
(係合阻止部材)
図5に戻って係合阻止部材52は、タング側係合部50a(貫通孔)とバックル側係合部61a(係合突起)との係合を阻止する係合阻止位置Px(
図5(a)参照)と、タング側係合部50aとバックル側係合部61aとの係合を可能とする係合許可位置Py(
図5(b)参照)との間で移動可能に設けられている。本実施形態において係合阻止部材52はバックルケース60内に収容され、差込口60aに差し込まれるタングプレート50と干渉可能な阻止体70と、阻止体を支持する支持体71と、阻止体70を差し込み方向Dの手前側に向けて付勢する弾性体72とを有している。
【0041】
阻止体70は、差し込み方向Dに交差するバックル幅方向に延びている。また係合阻止位置Pxにおいて阻止体70は、タング側係合部50aがバックル側係合部61aと係合する前にタングプレート50と干渉する場所に、詳しく後述する駆動源80によって位置決めされ、係合許可位置Pyにおいて阻止体70は、タング側係合部50aがバックル側係合部61aと係合するまで、タングプレート50と干渉しない場所に後述する駆動源80によって位置決めされる。
【0042】
具体的に本実施形態において阻止体70は、
図5(a)に示すように係合阻止位置Pxにおいてバックル側係合部61aよりもタングプレート50の差し込み方向Dの手前側の場所、すなわち差込口60aとバックル側係合部61aとの間の場所に配置されて、タングプレート50の差し込みを阻止する。なお係合阻止位置Pxにおいては、差込口60aからバックルケース60の外に飛び出すように阻止体70が配置されてもよい。
【0043】
その一方で阻止体70は、
図5(b)に示すように係合許可位置Pyにおいて差し込み方向Dにバックル側係合部61aよりも差し込み方向Dの奥側の場所、すなわち、バックル側係合部61aを挟んで差込口60aとは反対側の場所に配置され、タングプレート50の差し込みを可能とする。
【0044】
支持体71は、阻止体70から差し込み方向Dの奥側に延びる棒状もしくは板状をなしている。支持体71には詳しく後述する駆動装置53のラックギア81bが設けられ、このラックギア81bによって阻止体70とともに差し込み方向Dに移動する。
【0045】
弾性体72は、支持体71において詳しく後述する駆動装置53のラックギア81bと阻止体70との間に設けられたコイルバネ等であって、差し込み方向Dの奥側から手前側に向かって阻止体70を付勢する。すなわち弾性体72は、タングプレート50からの外力によって差し込み方向Dに沿って移動する阻止体70に対して、当該外力に対する反力を発生する。
【0046】
(駆動装置)
駆動装置53はバックルケース60内においてタングロック部材61よりも差し込み方向Dの奥側に配置され、係合阻止部材52を差し込み方向Dにスライド動作させる。すなわち駆動装置53は、駆動源(例えばモータ)80と、駆動源80からの動力を係合阻止部材52に伝達する伝達機構81とを有している。
【0047】
駆動源80へは上述の方向指示器37の指示器配線38(
図3参照)から分岐したシートベルト駆動用配線39が接続され、車両本体1のバッテリ12から給電されるようになっている。
伝達機構81は、駆動源80によって回転させられるピニオンギア81aと、ピニオンギア81aに噛み合って係合阻止部材52の支持体71に設けられたラックギア81bとを有している。駆動源80によってピニオンギア81aが回転させられると、ラックギア81bとともに支持体71が差し込み方向Dの両側に動作し、この結果、係合阻止部材52が差し込み方向Dの両側にスライド移動して係合阻止位置Pxと係合許可位置Pyとの間で移動可能となっている。
【0048】
(制御装置)
制御装置54はバックルケース60内に収容され、安全フレーム3が傾倒姿勢P2となっている状態(
図1参照)において係合阻止部材52を係合阻止位置Pxに配置し、安全フレーム3が起立姿勢P1となっている状態(
図1参照)で係合阻止部材52を係合許可位置Pyに配置するように、駆動装置53における駆動源80の動作を制御する。すなわち制御装置54は、フレーム姿勢検知装置5、着座検知装置6、およびベルト装着検知装置7に対して通信回線を介して電気的に接続されており、フレーム姿勢検知装置5、着座検知装置6、およびベルト装着検知装置7からの信号を受信して、これらの信号に基づいて駆動装置53における駆動源80を動作させる。なお通信回線の規格は特に限定されるものではなく、また、有線、無線を問わない。
【0049】
図7に示すように制御装置54は計算機500を有し、計算機は、CPU(Central Processing Unit)510と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリ520と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置530と、電源装置540と、入力インターフェース550と、出力インターフェース560と、これらを接続するバス配線570とを有している。
【0050】
CPU510は中央演算処理装置であって、後述する制御方法のプログラムを実行する。メモリ520はCPU510の作業領域や記憶領域として使用され、記憶装置530はCPU510で実行されるオペレーティングシステムやプログラム等を記憶する。電源装置540には上述の方向指示器37の指示器配線38(
図3参照)から分岐したシートベルト駆動用配線39が接続され、車両本体1のバッテリ12から給電されるようになっている。
【0051】
すなわち
図8に示すように、制御装置54は、フレーム姿勢情報取得部90と、着座情報取得部91と、ベルト装着情報取得部92と、制御信号生成発信部93とを備えている。
【0052】
フレーム姿勢情報取得部90は、フレーム姿勢検知装置5からの信号を受信し、安全フレーム3の姿勢(起立姿勢P1または傾倒姿勢P2)に関する情報を取得する。
着座情報取得部91は、着座検知装置6からの信号を受信し、運転席2への運転者の着座の有無に関する情報を取得する。
【0053】
ベルト装着情報取得部92は、ベルト装着検知装置7からの信号を受信し、シートベルト装置4の装着の有無、すなわち、タング側係合部50a(貫通孔)とバックル側係合部61a(係合突起)との係合の有無に関する情報を取得する。
【0054】
制御信号生成発信部93は、安全フレーム3の姿勢が傾倒姿勢P2であり、かつ、運転者が運転席2に着座してる条件において、係合阻止部材52を係合阻止位置Pxに配置するようにし、その他の条件では係合阻止部材52を係合許可位置Pyに配置するように駆動源80を動作させるための信号を生成し、この信号を、駆動源80に設けられた不図示のモータドライバに向けて発信する。
【0055】
次に
図9を参照して制御装置54による駆動源80の制御のフロー(制御方法)について説明する。
まず、安全フレーム3の姿勢に関する情報を取得する姿勢情報取得ステップS1を実行する。その後、安全フレーム3の姿勢を判定する姿勢判定ステップS2を実行する。このステップS2では安全フレーム3が傾倒姿勢P2となっている場合に「YES」と判定し、着座情報取得ステップS3に進む。一方で安全フレーム3が起立姿勢P1となっている場合に「NO」と判定する。
【0056】
姿勢判定ステップS2で「NO」と判定された場合、すなわち係合阻止部材52が起立姿勢P1となっている場合には係合阻止部材52の位置を判定する許可位置判定ステップS10へ進む。この許可位置判定ステップS10においては、係合阻止部材52が係合許可位置Pyに配置されている場合には「YES」と判定され、係合阻止部材52が係合許可位置Pyに配置されていない場合、すなわち係合阻止位置Pxに配置されている場合に「NO」と判定される。
【0057】
許可位置判定ステップS10で「YES」と判定された場合には、フローを終了する。一方、許可位置判定ステップS10で「NO」と判定された場合、すなわち係合阻止部材52が係合阻止位置Pxに配置されている場合には、許可制御信号生成・発信ステップS11に進み、係合阻止部材52を係合阻止位置Pxから係合許可位置Pyに移動させるための制御信号を生成して駆動源80へ発信し、フローを終了する。
【0058】
ところで姿勢判定ステップS2に戻って、このステップS2で「YES」と判定された後の着座情報取得ステップS3では、運転者の運転席2への着座の有無に関する情報を取得する。そして着座情報取得ステップS3の後に着座判定ステップS4を実行する。このステップS4では、運転者が運転席2に着座している場合に「YES」と判定し、運転者が運転席2に着座していない場合に「NO」と判定する。着座判定ステップS4で「YES」と判定された場合、すなわち運転者が着座している場合には阻止位置判定ステップS5に進む。一方で、着座判定ステップS4で「NO」と判定された場合、すなわち運転者が着座していない場合には上述した許可位置判定ステップS10に進む。
【0059】
着座判定ステップS4で「YES」と判定された後の阻止位置判定ステップS5では、係合阻止部材52が係合阻止位置Pxに配置されている場合に「YES」と判定され、係合阻止部材52が係合許可位置Pyに配置されている場合に「NO」と判定される。阻止位置判定ステップS5で「YES」と判定された場合には、フローを終了する。一方、阻止位置判定ステップS5で「NO」と判定された場合には、阻止制御信号生成・発信ステップS6に進み、係合阻止部材52を係合許可位置Pyから係合阻止位置Pxに移動させるための制御信号を生成し、駆動源80へ発信する。
【0060】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作業車両100によれば、係合阻止部材52を安全フレーム3が傾倒姿勢P2となっており、かつ運転者が運転席2に着座している条件において、シートベルト装置4における制御装置54によって係合阻止部材52をタングプレート50の差し込み方向Dの手前側にスライド移動させ、係合阻止位置Pxに配置するようになっている。そして係合阻止位置Pxに係合阻止部材52を配置することで、阻止体70によってタングプレート50のバックル51への差し込みを阻止することができる。したがって係合阻止部材52をスライド移動させるといった簡易な構成によって、上述したような所定の条件下においてシートベルト装置4の装着を阻止することができ、安全フレーム3が傾倒姿勢P2にある状態で運転者が誤ってシートベルト装置4を装着してしまうことを強制的に回避でき、運転者が安心して作業車両100を使用することができる。
【0061】
さらに、バックル側係合部61a(係合突起)を形成するタングロック部材61、係合阻止部材52、駆動装置53、および制御装置54は、バックル51におけるバックルケース60内に収容されて設けられている。このため、既存のバックルを本実施形態のバックル51に交換することによって、タングプレート50とバックル51との係合を阻止するための機構を、既存のシートベルトに容易に付加することができる。
【0062】
また、係合阻止部材52の阻止体70は、係合阻止位置Pxにおいてタングプレート50と干渉する場所、すなわちバックル側係合部61a(係合突起)よりもタングプレート50の差し込み方向Dの手前側の場所に配置される。よって、係合阻止位置Pxにおいて阻止体70がバックルケース60の差込口60aを塞ぐように配置され、タングプレート50をバックル51へ差し込むことができなくなり、確実にタングプレート50とバックル51との係合を回避することができる。
【0063】
さらに、係合阻止部材52の阻止体70は、係合許可位置Pyにおいてタングプレートと干渉しない場所、すなわちバックル側係合部61a(係合突起)よりもタングプレート50の差し込み方向Dの奥側の場所に配置される。よって、係合許可位置Pyにおいてはタングプレート50の差し込みが完了するまで、阻止体70がタングプレート50に接触することがなくなり、タングプレート50とバックル51とを確実に係合させることができる。
【0064】
また係合阻止部材52には弾性体72が設けられているため、係合阻止位置Pxに阻止体70が配置された状態において、仮にタングプレート50がバックル51に差し込まれた場合には、弾性体72によって差し込み方向Dの力を吸収し、タングプレート50を阻止体70が優しく受け止めることができ、係合阻止部材52の損傷を回避することができる。
【0065】
また安全フレーム3に設けられた方向指示器37へバッテリ12から電力を供給する指示器配線58からシートベルト駆動用配線39を分岐させ、このシートベルト駆動用配線39と駆動源80、および制御装置54とが接続されることで、駆動源80、および制御装置54への電力を供給するための配線を、新たにバッテリ12側に設けることなく、より運転席2に近い安全フレーム3の側から設けることができるため、シートベルト装置4を既存のシートベルトに置き換える場合にも、シートベルト装置4の設置が容易である。
【0066】
なお、本実施形態では、係合阻止部材52、駆動装置53、および制御装置54は必ずしもバックルケース60内に設けられなくともよい。
【0067】
また、係合阻止部材52は、タングプレート50の差し込み方向Dにスライド移動するものに限定されず、例えばバックルケース60の差込口60aに対して差し込み方向Dに交差するベルト幅方向にスライド移動することで、差込口60aを閉塞/開放するようにしてもよい。
【0068】
〔第二実施形態〕
次に
図10および
図11を参照して本発明の第二実施形態に係る作業車両100Aのシートベルト装置4Aについて説明する。本実施形態では、係合阻止部材52Aおよび駆動装置53Aの構成が第一実施形態とは異なっている。
(駆動装置)
本実施形態の駆動装置53Aはバックルケース60内に設けられ、例えば駆動源80Aとして、例えば差し込み方向Dと反対方向となる進出方向F(
図10参照)に動作可能な進出機構を構成するソレノイドアクチュエータを有している。なお駆動源80にはソレノイドアクチュエータ以外のアクチュエータを採用してもよいし、駆動装置53Aとして、第一実施形態の駆動装置53のようなモータおよびラック・アンド・ピニオンによる装置を採用してもよく、特に限定されるものではない。
【0069】
(係合阻止部材)
係合阻止部材52Aはバックルケース60内に設けられ、係合阻止位置Pxとしてタングロック部材61のバックル側係合部61a(係合突起)を非係合位置Paに固定する位置(
図10参照)と、係合許可位置Pyとしてバックル側係合部61a(係合突起)を非係合位置Paから係合位置Pbに向けて進出可能となるようにバックル側係合部61aの固定を解除する位置(
図11(a)参照)との間で移動可能に設けられている。
【0070】
より具体的には係合阻止部材52Aは、例えばタングロック部材61と駆動源80となるソレノイドアクチュエータとを接続し、ソレノイドアクチュエータによって入力される進出方向Fの力を、タングロック部材61の退避方向の力に変換する梃子状をなす固定体70Aを有している。そして駆動源80となるソレノイドアクチュエータを通電させて固定体70Aを進出方向Fに押すと、
図11(a)に示す状態から
図10に示す状態となり、すなわち固定体70Aが支点O回りに回転してタングロック部材61を係合位置Pbから非係合位置Paに向けて引っ張り、バックル側係合部61a(係合突起)が非係合位置Paに固定される。一方、駆動源80Aとなるソレノイドアクチュエータの通電を停止すると、
図10に示す状態から
図11(a)に示す状態となり、すなわち固定体70Aによるタングロック部材61の非係合位置Paへの固定が解除される。そしてタングロック部材61の非係合位置Paへの固定が解除された状態においてタングプレート50が差込口60aに差し込まれると、バックル側係合部61a(係合突起)が係合位置Pbに配置された状態(
図11(a))から、タングプレート50が傾斜面61xを押すことでタングロック部材61が下方に押し込まれ、バックル側係合部61a(係合突起)が非係合位置Paに一旦退避し(
図11(b)、その後さらにタングプレート50を差し込むと、弾性部材62の復元力によって、バックル側係合部61a(係合突起)がタング側係合部50a(貫通孔)に向けて進出可能となる(
図11(c))。
【0071】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作業車両100Aでは、安全フレーム3が傾倒姿勢P2となっており、かつ運転者が運転席2に着座している条件において、係合阻止部材52Aを係合阻止位置Pxに配置すると、係合阻止部材52Aの固定体70Aによってバックル側係合部61a(係合突起)が非係合位置Paに固定される。この状態で、仮にタングプレート50をバックル51に差し込んだとしても、タング側係合部50a(貫通孔)の外にバックル側係合部61a(係合突起)が配置されることになり、タングプレート50とバックル51とを係合させることができなくなる。よって、係合阻止部材52Aによってバックル側係合部61a(係合突起)を非係合位置Paに固定するといった簡易な構成によって、シートベルト装置4Aの装着を阻止することができ、安全フレーム3が傾倒姿勢P2にある状態で運転者が誤ってシートベルト装置4Aを装着してしまうことを強制的に回避できる。
【0072】
〔第三実施形態〕
次に
図12を参照して本発明の第三実施形態に係る作業車両100Bのシートベルト装置4Bについて説明する。本実施形態では、係合阻止部材52Bおよび駆動装置53Bの構成が第一実施形態および第二実施形態とは異なっている。
【0073】
(係合阻止部材)
係合阻止部材52Bはタングプレート50に設けられ、タングプレート50がバックル51に差し込まれた際に、バックル側係合部61a(係合突起)に干渉可能な、例えば板状をなす閉塞体70Bを有している。係合阻止位置Pxにおいて閉塞体70Bは、タング側係合部50a(貫通孔)の少なくとも一部を閉塞する場所に後述する駆動源80Bによって位置決めされ(
図12(a)参照)、係合許可位置Pyにおいて閉塞体70Bは、タング側係合部50a(貫通孔)を開放する場所に後述する駆動源80Bによって位置決めされる(
図12(b)参照)。
【0074】
(駆動源)
駆動装置53Bは、例えば第一実施形態の駆動装置53と同様に、駆動源(例えばモータ)80Bと、駆動源80Bからの動力を係合阻止部材52Bに伝達するラック・アンド・ピニオンによる伝達機構81Bとを有しているが、駆動装置53Bの構成は特に限定されるものではない。駆動装置53Bは、例えばタングプレート50に対して差し込み方向Dの手前側でベルト40に設けられ、係合阻止部材52Bの閉塞体70Bをタング側係合部50a(貫通孔)上で差し込み方向Dに進退させる。なお駆動装置53Bの構成は上述の場合に限定されず、例えばアクチュエータ等を採用してもよい。
【0075】
(作用効果)
以上説明した本実施形態の作業車両100Bでは、安全フレーム3が傾倒姿勢P2となっており、かつ運転者が運転席2に着座している条件において、係合阻止部材52Bを係合阻止位置Pxに配置すると、係合阻止部材52Bの閉塞体70Bがタング側係合部50a(貫通孔)を閉塞する場所に配置される。この状態で仮にタングプレート50をバックル51に差し込んだとしても、タング側係合部50a(貫通孔)にバックル側係合部61a(係合突起)が進入することができなくなり、タングプレート50とバックル51とを係合させることができなくなる。よって、係合阻止部材52Bの閉塞体70Bによってタング側係合部50a(貫通孔)を閉塞するといった簡易な構成によって、シートベルト装置4Bの装着を阻止することができ、安全フレーム3が傾倒姿勢P2にある状態で運転者が誤ってシートベルト装置4を装着してしまうことを強制的に回避できる。
【0076】
ここで本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、締結機構41は、ベルト40における途中の位置に設けられてもよい。
【0077】
また、係合阻止部材52、52A、52Bが係合阻止位置Pxに配置される条件として、運転席2への運転者の着座の有無に関する条件は含めなくともよく、単に安全フレーム3の姿勢のみを条件として係合阻止部材52、52A、52Bの位置を決定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のシートベルト装置等によれば、簡易な構成で、かつ、所定の条件下において装着を阻止することが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 車両本体
2 運転席
3 安全フレーム
4、4A、4B シートベルト装置
5 フレーム姿勢検知装置
6 着座検知装置
12 バッテリ
37 方向指示器
38 指示器配線
39 シートベルト駆動用配線
40 ベルト
41 締結機構
50 タングプレート
50a タング側係合部
51 バックル
52、52A、52B 係合阻止部材
53、53A、53B 駆動装置
54 制御装置
58 指示器配線
60 バックルケース
60a 差込口
61 タングロック部材
61a バックル側係合部
70 阻止体
70A 固定体
70B 閉塞体
72 弾性体
80、80A、80B 駆動源
100、100A、100B 作業車両