(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183340
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】洗掘抑制ユニット、洗掘抑制構造及び洗掘抑制工法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/42 20060101AFI20231220BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20231220BHJP
E02D 23/02 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
E02D27/42 Z
E02D27/52 Z
E02D23/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096900
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】池谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】谷 和夫
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA37
2D046DA61
(57)【要約】
【課題】柱状の基礎部の周囲において生じ得る洗掘を十分に抑制できる洗掘抑制ユニット、洗掘抑制構造及び洗掘抑制工法を提供すること。
【解決手段】洗掘抑制ユニットは、柱状の基礎部の周囲に配置されて基礎部の近傍における地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制ユニットであって、網部材で形成された環状の袋体と、袋体の内周部に環状に配置されるとともに袋体に連結された少なくとも1本のロープと、袋体内に充填された中詰め材と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の基礎部の周囲に配置されて前記基礎部の近傍における地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制ユニットであって、
網部材で形成された環状の袋体と、
前記袋体の内周部に環状に配置されるとともに前記袋体に連結された少なくとも1本のロープと、
前記袋体内に充填された中詰め材と、を備える、洗掘抑制ユニット。
【請求項2】
前記ロープは、上方ロープと、前記上方ロープの下方に配置された下方ロープとを含む、請求項1に記載の洗掘抑制ユニット。
【請求項3】
前記上方ロープと前記下方ロープとを接続する接続ロープをさらに有する、請求項2に記載の洗掘抑制ユニット。
【請求項4】
環状に配置されるとともに前記袋体に連結された少なくとも1本の成形ロープをさらに有する、請求項1に記載の洗掘抑制ユニット。
【請求項5】
前記ロープにより形成される環の寸法を調整可能な調整機構をさらに有する、請求項1に記載の洗掘抑制ユニット。
【請求項6】
地盤に設置された柱状の基礎部と、
前記基礎部の周囲に配置された請求項1~5のいずれか一項に記載の洗掘抑制ユニットと、を備える、洗掘抑制構造。
【請求項7】
前記地盤上に配置されたフィルター層をさらに備え、
前記洗掘抑制ユニットは、前記フィルター層上に配置される、請求項6に記載の洗掘抑制構造。
【請求項8】
前記洗掘抑制ユニットの外方に配置された他の洗掘抑制ユニットをさらに有する、請求項6に記載の洗掘抑制構造。
【請求項9】
前記他の洗掘抑制ユニットは、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗掘抑制ユニットである、請求項8に記載の洗掘抑制構造。
【請求項10】
前記地盤上に、前記基礎部の周囲に配置されたマット部材をさらに備え、
前記洗掘抑制ユニットは、前記基礎部と前記マット部材との間の隙間の少なくとも一部を覆うように配置される、請求項6に記載の洗掘抑制構造。
【請求項11】
地盤に設置された柱状の基礎部の周囲に、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗掘抑制ユニットを配置する工程を備える、洗掘抑制工法。
【請求項12】
地盤に配置された請求項1~5のいずれか一項に記載の洗掘抑制ユニットの内側に、柱状の基礎部を設置する工程を備える、洗掘抑制工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗掘抑制ユニット、洗掘抑制構造及び洗掘抑制工法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電に用いられる風力発電装置は、風を受けて回転するブレード、発電機を収容したナセル、ナセルを支持するタワー及び当該タワーを地盤に固定するための基礎部を有している。基礎部は、その下端部が地盤内に配置されており、地盤から上方に突出した部分は水中に位置している。このとき、基礎部の周りに生じる水の流れによって、基礎部の近傍の地盤が侵食される、いわゆる洗掘が生じ得る。洗掘により基礎部の近傍の地盤の形状が変化すると、基礎部が地盤により適切に支持されなくなり、基礎部が傾いたり地盤に沈み込んだりし得るため、好ましくない。このため、基礎部の近傍における洗掘を防止する技術が開発されている。なお、この洗掘による問題は、風力発電装置に限られず、地盤に固定され、地盤から上方に突出した部分が水中に位置するような、他の柱状の基礎部においても生じ得る。
【0003】
図29に、洗掘を抑制するための構造の一例を示す。
図29に示された洗掘抑制構造110は、地盤に設置された柱状の基礎部112と、基礎部112の周囲に配置された複数の洗掘抑制ユニット120と、を有している。洗掘抑制ユニット120は、袋体と、袋体内に充填された、砕石や砂利等の中詰め材と、を有している。このような洗掘抑制構造110では、基礎部112と洗掘抑制ユニット120との間や、隣り合う2つの洗掘抑制ユニット120の間に隙間126が生じる。これにより、隙間126に露出した地盤が、この隙間126を介して流れ込む水流の作用により洗掘され得る問題があった。特許文献1では、地盤に環状の洗掘防止ユニットの少なくとも一部を沈設させることにより、上記の問題の解決を試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本件発明者らの検討によれば、特許文献1に開示された技術においても、洗掘防止ユニットの形状、特に基礎部に接する内縁部の形状、を維持可能に構成されておらず、基礎部と洗掘防止ユニットとの間に隙間が生じ、この隙間から流れ込む水流の作用により、基礎部の周囲の地盤が洗掘されるおそれがあることがわかった。すなわち、特許文献1に開示された技術においても、基礎部の周囲における洗掘の抑制効果は十分ではないことがわかった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、柱状の基礎部の周囲において生じ得る洗掘を十分に抑制できる洗掘抑制ユニット、洗掘抑制構造及び洗掘抑制工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による洗掘抑制ユニットは、
[1]柱状の基礎部の周囲に配置されて前記基礎部の近傍における地盤の洗掘を抑制する洗掘抑制ユニットであって、
網部材で形成された環状の袋体と、
前記袋体の内周部に環状に配置されるとともに前記袋体に連結された少なくとも1本のロープと、
前記袋体内に充填された中詰め材と、を備える、洗掘抑制ユニット、である。
【0008】
本発明による洗掘抑制ユニットは、
[2]前記ロープは、上方ロープと、前記上方ロープの下方に配置された下方ロープとを含む、[1]に記載の洗掘抑制ユニット、である。
【0009】
本発明による洗掘抑制ユニットは、
[3]前記上方ロープと前記下方ロープとを接続する接続ロープをさらに有する、[2]に記載の洗掘抑制ユニット、である。
【0010】
本発明による洗掘抑制ユニットは、
[4]環状に配置されるとともに前記袋体に連結された少なくとも1本の成形ロープをさらに有する、[1]~[3]のいずれか1つに記載の洗掘抑制ユニット、である。
【0011】
本発明による洗掘抑制ユニットは、
[5]前記ロープにより形成される環の寸法を調整可能な調整機構をさらに有する、[1]~[4]のいずれか1つに記載の洗掘抑制ユニット、である。
【0012】
本発明による洗掘抑制構造は、
[6]地盤に設置された柱状の基礎部と、
前記基礎部の周囲に配置された[1]~[5]のいずれか1つに記載の洗掘抑制ユニットと、を備える、洗掘抑制構造、である。
【0013】
本発明による洗掘抑制構造は、
[7]前記地盤上に配置されたフィルター層をさらに備え、
前記洗掘抑制ユニットは、前記フィルター層上に配置される、[6]に記載の洗掘抑制構造、である。
【0014】
本発明による洗掘抑制構造は、
[8]前記洗掘抑制ユニットの外方に配置された他の洗掘抑制ユニットをさらに有する、[6]又は[7]に記載の洗掘抑制構造、である。
【0015】
本発明による洗掘抑制構造は、
[9]前記他の洗掘抑制ユニットは、[1]~[5]のいずれか1つに記載の洗掘抑制ユニットである、[8]に記載の洗掘抑制構造、である。
【0016】
本発明による洗掘抑制構造は、
[10]前記地盤上に、前記基礎部の周囲に配置されたマット部材をさらに備え、
前記洗掘抑制ユニットは、前記基礎部と前記マット部材との間の隙間の少なくとも一部を覆うように配置される、[6]~[9]のいずれか1つに記載の洗掘抑制構造、である。
【0017】
本発明による洗掘抑制工法は、
[11]地盤に設置された柱状の基礎部の周囲に、[1]~[5]のいずれか1つに記載の洗掘抑制ユニットを配置する工程を備える、洗掘抑制工法、である。
【0018】
本発明による洗掘抑制工法は、
[12]地盤に配置された[1]~[5]のいずれか1つに記載の洗掘抑制ユニットの内側に、柱状の基礎部を設置する工程を備える、洗掘抑制工法、である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、柱状の基礎部の周囲において生じ得る洗掘を十分に抑制できる洗掘抑制ユニット、洗掘抑制構造及び洗掘抑制工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための図であって、洗掘抑制構造の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、洗掘抑制ユニットの製造方法の一例について説明するための図である。
【
図4】
図4は、洗掘抑制ユニットの製造方法の一例について説明するための図である。
【
図5】
図5は、洗掘抑制ユニットの製造方法の一例について説明するための図である。
【
図6】
図6は、洗掘抑制ユニットの製造方法の一例について説明するための図である。
【
図7】
図7は、洗掘抑制ユニットの製造方法の一例について説明するための図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の洗掘抑制ユニットを用いた洗掘抑制工法の一例について説明するための図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の洗掘抑制ユニットを用いた洗掘抑制工法の一例について説明するための図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の洗掘抑制ユニットを用いた洗掘抑制工法の一例について説明するための図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の洗掘抑制ユニットを用いた洗掘抑制工法の一例について説明するための図である。
【
図12】
図12は、洗掘抑制工法の一変形例について説明するための図である。
【
図13】
図13は、洗掘抑制ユニットの一変形例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、洗掘抑制ユニットの他の変形例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、洗掘抑制ユニットのさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図17】
図17は、洗掘抑制ユニットのさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図19】
図19は、洗掘抑制ユニットのさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図20】
図20は、洗掘抑制ユニットのさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図21】
図21は、洗掘抑制ユニットのさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図22】
図22は、洗掘抑制構造の一変形例を示す平面図である。
【
図24】
図24は、洗掘抑制構造の他の変形例を示す平面図である。
【
図26】
図26は、洗掘抑制構造のさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図27】
図27は、洗掘抑制構造のさらに他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための図であって、洗掘抑制構造10の一例を示す平面図であり、
図2は、
図1のII-II線に対応する断面図である。本実施形態の洗掘抑制構造10は、地盤Gに設置された基礎部12と、基礎部12の周囲に配置された洗掘抑制ユニット20と、を備えている。基礎部12は、柱状の形状を有しており、概ね鉛直方向に沿って延びている。基礎部12の下端は、地盤G内に埋設されており、地盤Gに対して固定されている。基礎部12は、地盤Gから上方へ向かって延びている。地盤Gは、海洋、湖沼、河川等の底部を構成しており、地盤G上には、海水、淡水等の水の層が存在している。したがって、基礎部12における地盤Gから突出した部分のうちの少なくとも一部は、水面下に位置している。基礎部12の上端は、水面下に位置していてもよいし、水面から上方に突出していてもよい。基礎部12は、例えば、洋上風力発電に用いられる風力発電装置の基礎部や橋梁の基礎部等である。なお、これに限られず、基礎部12は、地盤に固定され、地盤から上方に突出した部分が水中に位置するような、他の柱状の基礎部であってもよい。
【0023】
本明細書において、基礎部12における柱状の形状とは、中心軸線に沿って延びる長尺状の形状を意味する。基礎部12の中心軸線に直交する断面の形状は特に限られないが、例えば、円、楕円、多角形等である。また、基礎部12は、中実の部材であってもよく、中空の部材であってもよい。基礎部12は、例えば、コンクリート、金属等で形成され得る。
【0024】
洗掘抑制ユニット20は、基礎部12の周囲に配置されて基礎部12の近傍における地盤の洗掘を抑制する機能を有する。本実施形態の洗掘抑制ユニット20は、袋体22と、袋体22内に充填された中詰め材24と、を備えている。袋体22は、網部材で形成されている。中詰め材24は、砕石、砂利等の、粒状又は塊状の部材である。袋体22には複数の中詰め材24が充填されている。袋体22を構成する網部材の目の大きさは、水の通過を阻害せず、中詰め材24の通過を阻害する程度とされていることが好ましい。なお、図面においては、中詰め材24は、便宜上円形(球形)で記載されているが、中詰め材24の形状は特に限られない。中詰め材24は、不定形の形状を有してもよい。
【0025】
中詰め材24が充填された状態で、袋体22は、平面視において環状の形状を有している。したがって、洗掘抑制ユニット20も、平面視において環状の形状を有している。とりわけ、洗掘抑制ユニット20は、概ね中心軸線Aを中心とした回転体で構成される環状の形状を有している。本明細書において、平面視とは、洗掘抑制ユニット20を中心軸線Aに沿って見ることを意味する。なお、洗掘抑制ユニット20が基礎部12の周囲に適切に配置された状態において、中心軸線Aが鉛直方向と一致する場合には、平面視は、鉛直方向に沿って上方から見ることと同じである。洗掘抑制ユニット20が環状の形状を有していることにより、
図29に示した従来技術のように、基礎部12と洗掘抑制ユニット20との間や、隣り合う2つの洗掘抑制ユニット20の間に隙間が生じることを、抑制することができる。
【0026】
しかしながら、本件発明者らの検討によれば、洗掘抑制ユニット20を環状に形成するだけでは、基礎部12と洗掘抑制ユニット20との間の隙間を十分に小さくすることができず、この隙間から流れ込む水流の作用により、基礎部12の周囲の地盤が洗掘されるおそれがあることがわかった。すなわち、洗掘抑制ユニット20を環状に形成するだけでは、基礎部12の周囲における洗掘の抑制効果は十分ではないことがわかった。
【0027】
本実施形態では、基礎部12の周囲における洗掘を十分に抑制するために、洗掘抑制ユニット20に、袋体22の内縁を画定し得る少なくとも1本のロープ30を配置している。ロープ30は、袋体22の内周部に環状に配置されるとともに袋体22に連結されている。ロープ30により形成される環の平面視における周長により、袋体22の内縁の平面視における周長が確定される。したがって、ロープ30により形成される環の周長を適切に調整することにより、袋体22の内縁の周長を調整することができる。
【0028】
本実施形態の洗掘抑制ユニット20では、基礎部12の外面の周長に対応して袋体22の内縁の周長を調整することにより、基礎部12と洗掘抑制ユニット20との間に生じる隙間を十分に小さくすることができる。したがって、この隙間を介して流れる水流の流速を十分に小さくすることができる。これにより、基礎部12の周囲において生じ得る洗掘を十分に抑制することが可能になる。
【0029】
図3~
図7を参照して、本実施形態の洗掘抑制ユニット20の製造方法の一例について説明する。
図4は、
図3のIV-IV線に対応する断面図である。
【0030】
まず、
図3及び
図4に示されているように、内枠42及び外枠44を有する枠40を準備する。内枠42及び外枠44は、それぞれ平面視において環状の形状を有している。
図3に示された例では、内枠42及び外枠44は、それぞれ平面視において円形の形状を有している。
【0031】
図5に示されているように、枠40に、袋体22を構成する網部材を配置する。例えば、網部材を、内枠42及び外枠44の上端を覆うように配置する。なお、
図3~
図7では、見やすくなるよう、袋体22を、内枠42、外枠44及び底面から離間して示しているが、実際には、袋体22は、内枠42、外枠44及び底面に接触している。
【0032】
次に、
図6に示されているように、内枠42と外枠44との間に位置する袋体22上に中詰め材24を配置する。その後、
図7に示されているように、袋体22を閉合して、洗掘抑制ユニット20を形成する。このとき、ロープ30により、袋体22を閉合してもよい。すなわち、袋体22の内縁を画定するロープ30が、袋体22を閉合するロープを兼ねてもよい。この場合、袋体22を閉合する際にロープ30により形成される環の平面視における周長を調整することにより、袋体22の内縁の平面視における周長を調整することができる。
【0033】
図8~
図11を参照して、本実施形態の洗掘抑制ユニット20を用いた洗掘抑制工法の一例について説明する。なお、
図8及び
図10では、見やすくなるよう、袋体22を、内枠42、外枠44、底面及び地盤Gから離間して示しているが、実際には、袋体22は、内枠42、外枠44、底面及び地盤Gに接触している。
【0034】
まず、
図8に示されているように、外枠44を取り外し、洗掘抑制ユニット20と吊り治具50とを連結する連結部材46を洗掘抑制ユニット20に取り付ける。本実施形態では、連結部材46は、洗掘抑制ユニット20及び内枠42に対して取り付けられる。さらに、本実施形態では、連結部材46の洗掘抑制ユニット20への取り付けは、連結部材46をロープ30に取り付けることにより行われる。
【0035】
次に、
図9に示されているように、クレーン(図示せず)で吊り治具50を吊り上げることにより、連結部材46を上方へ引き上げる。上述のように、連結部材46は洗掘抑制ユニット20(ロープ30)及び内枠42に対して取り付けられているので、連結部材46が引き上げられることにより、連結部材46とともに洗掘抑制ユニット20及び内枠42が引き上げられる。なお、本実施形態では、外枠44を取り外してから洗掘抑制ユニット20及び内枠42が引き上げられているが、これに限られず、外枠44を残したまま洗掘抑制ユニット20及び内枠42が引き上げられてもよい。
【0036】
図10に示されているように、地盤Gに設置された基礎部12の周囲に、洗掘抑制ユニット20を配置する。詳細には、洗掘抑制ユニット20を移動し、環状の洗掘抑制ユニット20の内側に基礎部12が位置するようにして、洗掘抑制ユニット20を降下させる。
【0037】
ここで、洗掘抑制ユニット20を吊り上げた際に、洗掘抑制ユニット20が自重により変形して、洗掘抑制ユニット20(袋体22)の内縁の形状が維持されないことがある。この場合、洗掘抑制ユニット20を降下させた際に、洗掘抑制ユニット20が基礎部12にぶつかり、洗掘抑制ユニット20を適切に配置できないおそれがある。本実施形態では、洗掘抑制ユニット20を内枠42とともに吊り下げるので、内枠42により洗掘抑制ユニット20(袋体22)の内縁の形状が維持される。内枠42の内径は基礎部12の外径よりもわずかに大きくなっており、これにより、洗掘抑制ユニット20を基礎部12の周囲にスムーズに降下させることができる。
【0038】
その後、連結部材46を洗掘抑制ユニット20から切り離し、
図11に示されているように、内枠42及び連結部材46を上昇させる。以上の工程により、洗掘抑制構造10が形成される。
【0039】
図12は、
図9に対応する図であり、本実施形態の洗掘抑制ユニットを用いた洗掘抑制工法の一変形例について説明するための図である。
【0040】
図9に示されているように、吊り治具50で洗掘抑制ユニット20の内縁部分のみを吊り上げるようにすると、洗掘抑制ユニット20の外縁部分が自重により下方に撓み、洗掘抑制ユニット20が変形する場合がある。この場合、
図12に示されているように、洗掘抑制ユニット20における内縁よりも外方部分に、保持ロープ48を取り付けておき、吊り治具50で洗掘抑制ユニット20の内縁部分及び保持ロープ48の両方を吊り上げるようにしてもよい。これにより、吊り治具50で洗掘抑制ユニット20を吊り上げた際に、洗掘抑制ユニット20の外縁部分が自重により下方に撓むことを抑制することができる。したがって、洗掘抑制ユニット20の形状を適切に維持することが可能になる。なお、保持ロープ48の具体的な配置は特に限られないが、保持ロープ48は、例えば、袋体22の上面部分と下面部分とを接続するように配置されてもよい。
【0041】
本実施形態の洗掘抑制ユニット20は、柱状の基礎部12の周囲に配置されて基礎部12の近傍における地盤Gの洗掘を抑制する洗掘抑制ユニット20であって、網部材で形成された環状の袋体22と、袋体22の内周部に環状に配置されるとともに袋体22に連結された少なくとも1本のロープ30と、袋体22内に充填された中詰め材24と、を備える。
【0042】
本実施形態の洗掘抑制構造10は、地盤Gに設置された柱状の基礎部12と、基礎部12の周囲に配置された上述の洗掘抑制ユニット20と、を備える。
【0043】
本実施形態の洗掘抑制工法は、地盤Gに設置された柱状の基礎部12の周囲に、上述の洗掘抑制ユニット20を配置する工程を備える。
【0044】
このような洗掘抑制ユニット20、洗掘抑制構造10及び洗掘抑制工法によれば、基礎部12の外面の周長に対応して袋体22の内縁の周長を調整することにより、基礎部12と洗掘抑制ユニット20との間に生じる隙間を十分に小さくすることができる。したがって、この隙間を介して流れる水流の流速を十分に小さくすることができる。これにより、基礎部12の周囲において生じ得る洗掘を十分に抑制することが可能になる。
【0045】
なお、上述した実施形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、上述した実施形態の変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0046】
図13は、洗掘抑制ユニット20の一変形例を示す断面図である。
図13に示された例では、ロープ30が、上方ロープ32と、上方ロープ32の下方に配置された下方ロープ34とを含んでいる。上方ロープ32及び下方ロープ34は、いずれも環状に配置されている。
【0047】
本変形例では、上方ロープ32及び下方ロープ34のそれぞれの平面視における周長を調整することにより、洗掘抑制ユニット20(袋体22)の内縁をより適切に基礎部12の外面に沿わせることができる。とりわけ、洗掘抑制ユニット20が地盤Gに近接する部分に下方ロープ34を有していることにより、地盤Gに近接する部分における基礎部12と洗掘抑制ユニット20との間の隙間をより小さくすることができる。したがって、この隙間を介して流れる水流の流速をさらに小さくすることができる。これにより、基礎部12の周囲において生じ得る洗掘をさらに抑制することが可能になる。
【0048】
図14は、洗掘抑制ユニット20の他の変形例を示す断面図である。
図14に示された例では、上方ロープ32と下方ロープ34とを接続する接続ロープ36を有している。接続ロープ36は、概ね鉛直方向に沿って延びており、その上端において上方ロープ32と連結され、その下端において下方ロープ34と連結されている。このとき、接続ロープ36を締め付けることによって、上方ロープ32と下方ロープ34との間隔を狭めるようにしてもよい。
【0049】
本変形例では、接続ロープ36により、上方ロープ32と下方ロープ34との間の間隔を所定の範囲に規制することができる。これにより、洗掘抑制ユニット20(袋体22)の内縁の形状をより適切に画定することができる。
【0050】
図15及び
図16は、洗掘抑制ユニット20のさらに他の変形例を示す図である。
図15は、洗掘抑制ユニット20を示す平面図であり、
図16は、
図15のXVI-XVI線に対応する断面図である。本変形例では、洗掘抑制ユニット20は、少なくとも1本の成形ロープ38を有している。
図15に示されているように、成形ロープ38は、平面視において環状に配置されるとともに袋体22に連結されている。本変形例では、袋体22の上面に成形ロープ38が連結されている。
【0051】
本変形例では、成形ロープ38の平面視における周長を調整することにより、洗掘抑制ユニット20の全体の形状を調整することができる。なお、成形ロープ38を配置する箇所は、袋体22の上面に限られない。成形ロープ38は、例えば、袋体22の下面、外周面等に設けられてもよい。また、洗掘抑制ユニット20は、複数の成形ロープ38を有してもよい。
【0052】
図17及び
図18は、洗掘抑制ユニット20のさらに他の変形例を示す図である。
図17は、洗掘抑制ユニット20を示す平面図であり、
図18は、
図17のXVIII-XVIII線に対応する断面図である。本変形例では、洗掘抑制ユニット20は、少なくとも1本の成形ロープ38を有している。
図18に示された断面、すなわち中心軸線Aを含む断面、において、成形ロープ38は、中詰め材24を取り囲むように配置されるとともに袋体22に連結されている。本変形例では、洗掘抑制ユニット20は、複数の成形ロープ38を有している。
図17に示されているように、複数の成形ロープ38は、中心軸線Aの周りに概ね等角度間隔を有して配置されることが好ましい。
図17に示された例では、洗掘抑制ユニット20は、6本の成形ロープ38を有しているが、これに限られず、洗掘抑制ユニット20は、1~5本又は7本以上の成形ロープ38を有していてもよい。なお、成形ロープ38の長さは、それぞれ個別に調整可能であってもよい。
【0053】
図19は、洗掘抑制ユニット20のさらに他の変形例を示す断面図である。本変形例では、洗掘抑制ユニット20は、少なくとも1本の成形ロープ38を有している。成形ロープ38は、中詰め材24を取り囲んで螺旋状に巻き付けられるように配置されるとともに袋体22に連結されている。
図19に示された例では、1本の成形ロープ38が螺旋状に配置されているが、これに限られず、複数の成形ロープ38がそれぞれ螺旋状に配置されてもよい。また、成形ロープ38の長さは調整可能であってもよい。
【0054】
図20及び
図21は、洗掘抑制ユニット20のさらに他の変形例を示す断面図である。
図20及び
図21に示された例では、洗掘抑制ユニット20は、フィルター部材26をさらに備えている。フィルター部材26は、基礎部12の周囲における地盤Gへ向かう水の流れを妨げる機能を有する部材である。洗掘抑制ユニット20がフィルター部材26を有することにより、基礎部12の周囲における地盤Gの洗掘をさらに効果的に抑制することができる。
【0055】
図20に示された例では、フィルター部材26は、袋体22のうち下方側に位置する部分に取り付けられた布27である。布27としては、例えば、帆布、不織布等を用いることができる。布27は、平面視において環状の形状を有している。
【0056】
図21に示された例では、フィルター部材26は、袋体28と、袋体28内に充填された中詰め材29と、を備えている。フィルター部材26は、平面視において環状の形状を有している。袋体28は、網部材で形成されている。中詰め材29の平均粒径は、中詰め材24の平均粒径よりも小さいことが好ましい。中詰め材24,29及び後述のフィルター部材15の中詰め材15bの平均粒径は、中詰め材24,29,15bのそれぞれを構成する複数の粒状体のうち任意の20個の粒状体における粒径の平均値とする。また、各粒状体の粒径は、粒状体を任意の平行な2つの平面で挟んだときに、その2つの平面間の距離が最大となるような2つの平面の組み合わせにおける当該平面間の距離の値である。袋体28を構成する網部材の目の大きさは、水の通過を阻害せず、中詰め材29の通過を阻害する程度とされていることが好ましい。また、袋体28を構成する網部材の目の大きさは、袋体22を構成する網部材の目の大きさよりも小さいことが好ましい。
【0057】
図22及び
図23は、洗掘抑制構造10の一変形例を示す図である。
図22は、本変形例の洗掘抑制構造10を示す平面図であり、
図23は、
図22のXXIII-XXIII線に対応する断面図である。
【0058】
図22及び
図23に示された例では、洗掘抑制構造10は、地盤G上に配置されたフィルター層14を備えている。また、洗掘抑制ユニット20は、フィルター層14上に配置されている。フィルター層14は、例えば礫の層である。基礎部12の周囲の地盤G上に礫を敷き詰め、これをフィルター層14とすることができる。
【0059】
本変形例では、フィルター層14により、基礎部12の周囲における地盤Gの洗掘を抑制することができるとともに、フィルター層14上に配置された洗掘抑制ユニット20がフィルター層14に含まれる礫の移動を規制するので、洗掘抑制ユニット20及びフィルター層14により、基礎部12の周囲における地盤Gの洗掘がさらに効果的に抑制される。
【0060】
また、本変形例では、洗掘抑制ユニット20の外方に配置された他の洗掘抑制ユニット60を有している。また、本変形例では、他の洗掘抑制ユニット60は、平面視において環状の形状を有するとともにロープ30を有する洗掘抑制ユニット20である。
【0061】
本変形例では、他の洗掘抑制ユニット60が、洗掘抑制ユニット20の外方においてフィルター層14に含まれる礫の移動を規制するので、洗掘抑制ユニット20及びフィルター層14により、基礎部12の周囲における地盤Gの洗掘がさらに効果的に抑制される。
【0062】
なお、
図22及び
図23に示された例において、フィルター層14を省略してもよい。この場合、洗掘抑制構造10は、洗掘抑制ユニット20と、この洗掘抑制ユニット20の外方に配置された他の洗掘抑制ユニット60を有し、洗掘抑制ユニット20及び他の洗掘抑制ユニット60が地盤G上に配置される。この場合においても、他の洗掘抑制ユニット60が、洗掘抑制ユニット20の外方において地盤Gを覆うようになるので、基礎部12の周囲における地盤Gの洗掘が効果的に抑制される。
【0063】
図24及び
図25は、洗掘抑制構造10の他の変形例を示す図である。
図24は、本変形例の洗掘抑制構造10を示す平面図であり、
図25は、
図24のXXV-XXV線に対応する断面図である。
【0064】
本変形例では、他の洗掘抑制ユニット60は、洗掘抑制ユニット20の外方に配置された複数の他の洗掘抑制ユニット60を有している。本変形例では、他の洗掘抑制ユニット60は、ロープ30を有しない洗掘抑制ユニットであってもよい。すなわち、他の洗掘抑制ユニット60は、袋体と、袋体内に充填された中詰め材とを備え、ロープ30を有しない洗掘抑制ユニットであってもよい。
【0065】
このような洗掘抑制構造10によっても、基礎部12の近傍にはロープ30を有する洗掘抑制ユニット20が配置されているので、基礎部12の周囲における地盤Gの洗掘が効果的に抑制される。
【0066】
図26は、洗掘抑制構造10のさらに他の変形例を示す断面図である。
図26に示された例では、フィルター層14は、袋体15aと、袋体15a内に充填された中詰め材15bと、を備えたフィルター部材15である。フィルター部材15は、平面視において環状の形状を有している。
【0067】
袋体15aは、網部材で形成されている。フィルター部材15の中詰め材15bの平均粒径は、洗掘抑制ユニット20の中詰め材24の平均粒径よりも小さいことが好ましい。袋体15aを構成する網部材の目の大きさは、水の通過を阻害せず、中詰め材15bの通過を阻害する程度とされていることが好ましい。また、袋体15aを構成する網部材の目の大きさは、洗掘抑制ユニット20の袋体22を構成する網部材の目の大きさよりも小さいことが好ましい。
【0068】
図27及び
図28は、洗掘抑制構造10のさらに他の変形例を示す図である。
図27は、本変形例の洗掘抑制構造10を示す平面図であり、
図28は、
図27のXXVIII-XXVIII線に対応する断面図である。
【0069】
洗掘抑制構造10は、地盤G上に、基礎部12の周囲に配置されたマット部材16を備えている。基礎部12とマット部材16との間には、隙間18が形成される場合がある。マット部材16は、水の流れの作用を抑制する部材であり、例えばアスファルトマット、コンクリートマットである。マット部材16は水の流れの作用を抑制することから、マット部材16に覆われた地盤Gにおいては、洗掘が生じることが抑制される。しかしながら、基礎部12とマット部材16との間に隙間18が形成されている場合には、この隙間18から流れ込む水流の作用により、基礎部12の周囲の地盤が洗掘されるおそれがある。
【0070】
本変形例では、基礎部12とマット部材16との間の隙間18の少なくとも一部を覆うように洗掘抑制ユニット20が配置されている。とりわけ、
図28に示されているように、洗掘抑制ユニット20の内側部分の一部が隙間18の中に入り込むように変形することにより、隙間18が閉塞され、隙間18を通って地盤Gへ向かって水が流れることが抑制される。したがって、この隙間18から流れ込む水流の作用により基礎部12の周囲の地盤が洗掘されることを、効果的に抑制することができる。
【0071】
他の変形例として、洗掘抑制ユニット20は、ロープ30により形成される環の寸法を調整可能な調整機構を有してもよい。このような調整機構としては、ロープ30により形成される環の平面視における周長を調整可能な機構であってもよい。
【0072】
このような洗掘抑制ユニット20によれば、
図8~
図11を参照して説明した洗掘抑制工法において、洗掘抑制ユニット20を基礎部12の周囲の地盤G上に配置した後に、すなわち
図11に示した状態において、ロープ30の寸法を調整することによりロープ30により形成される環の寸法を小さくし、基礎部12と洗掘抑制ユニット20との間に形成される隙間をさらに小さくすることが可能になる。すなわち、基礎部12と洗掘抑制ユニット20との間の密着性をさらに向上させることができる。これにより、基礎部12の周囲における地盤Gの洗掘がさらに効果的に抑制される。
【0073】
また、ロープ30が、周方向に並べられた複数のロープで構成され、各ロープの長さが独立して調整可能とされてもよい。この場合、ロープ30の長さを部分的に変更することが可能になる。
【0074】
図8~
図11を参照して説明した洗掘抑制工法では、先に基礎部12を地盤Gに設置しておき、その後、基礎部12の周囲に洗掘抑制ユニット20を配置した。しかし、これに限られず、先に洗掘抑制ユニット20を基礎部12の設置予定箇所における地盤Gに設置しておき、その後、洗掘抑制ユニット20の内側に、基礎部12を設置するようにしてもよい。
【0075】
このような工法によっても、基礎部12の周囲において生じ得る洗掘を抑制することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 洗掘抑制構造
12 基礎部
14 フィルター層
15 フィルター部材
16 マット部材
18 隙間
20 洗掘抑制ユニット
22 袋体
24 中詰め材
26 フィルター部材
30 ロープ
32 上方ロープ
34 下方ロープ
36 接続ロープ
38 成形ロープ
42 内枠
44 外枠
46 連結部材
48 保持ロープ
50 吊り治具
60 他の洗掘抑制ユニット
G 地盤