(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183362
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】波長変換部材及びその製造方法、発光装置並びにプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20231220BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20231220BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20231220BHJP
F21V 9/35 20180101ALI20231220BHJP
F21V 7/30 20180101ALI20231220BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20231220BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20231220BHJP
C09K 11/02 20060101ALI20231220BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20231220BHJP
C09K 11/78 20060101ALI20231220BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231220BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20231220BHJP
【FI】
G02B5/20
G03B21/00 D
G03B21/14 A
F21V9/35
F21V7/30
F21S2/00 311
F21V29/502 100
C09K11/02 Z
C09K11/80
C09K11/78
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022198516
(22)【出願日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2022096431
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】義田 衣里
【テーマコード(参考)】
2H148
2K203
4H001
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA18
2H148AA19
2H148AA26
2K203FA02
2K203FA07
2K203FA44
2K203FA45
2K203GA35
2K203GA40
2K203HA08
2K203HA30
2K203HB25
2K203HB26
2K203HB29
2K203MA04
2K203MA31
4H001CA02
4H001XA08
4H001XA13
4H001XA21
4H001XA31
4H001XA39
4H001XA57
4H001XA64
4H001XA65
4H001XA71
4H001YA58
(57)【要約】
【課題】発光効率がより高い発光装置を構成可能な波長変換部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基板と、前記基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層と、を備える波長変換部材である。前記波長変換層は、前記結着材に対する前記蛍光体の体積比が0.75以上1.45以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である。波長変換部材の製造方法は、結着材と溶剤と蛍光体とを含む蛍光体組成物であり、前記溶剤の沸点が200℃以上300℃以下であり、前記結着材に対する前記溶剤の質量比が0.01以上0.4以下であり、前記結着材に対する前記蛍光体の質量比が3.15以上6.05以下である蛍光体組成物を基板上に付与することと、前記基板上に付与した前記蛍光体組成物を熱処理して波長変換層を形成することと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層と、を備え、
前記波長変換層は、前記結着材に対する前記蛍光体の体積比が0.75以上1.45以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である波長変換部材。
【請求項2】
基板と、前記基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層と、を備え、
前記波長変換層の前記基板への配置面に直交する断面において、前記蛍光体の粒子断面積の総和の比率が、前記波長変換層の断面積に対して、56%以上70%以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である波長変換部材。
【請求項3】
前記蛍光体は、イットリウム、ランタン、ルテチウム、ガドリニウム及びテルビウムからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素と、アルミニウム、ガリウム及びスカンジウムからなる群から選択される少なくとも1種を含み、少なくともアルミニウムを含む第2元素と、セリウムと、を含む組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む請求項1又は2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記蛍光体は、中心粒径が15μm以上40μm以下である請求項3に記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記基板は、銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む材料からなる反射面を有し、前記波長変換層は、前記反射面に配置される請求項1又は2に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記結着材は、シリコーン樹脂を含む請求項1又は2に記載の波長変換部材。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の波長変換部材と、前記波長変換部材を回転させるモーターと、前記波長変換部材に光を照射する光源と、を備える発光装置。
【請求項8】
請求項7に記載の発光装置と、画像表示系と、投射光学系と、を備えるプロジェクター。
【請求項9】
結着材と溶剤と蛍光体とを含む蛍光体組成物であり、前記溶剤の沸点が200℃以上300℃以下であり、前記結着材に対する前記溶剤の質量比が0.01以上0.4以下であり、前記結着材に対する前記蛍光体の質量比が3.15以上6.05以下である蛍光体組成物を基板上に付与することと、
前記基板上に付与した前記蛍光体組成物を熱処理して波長変換層を形成することと、を含む波長変換部材の製造方法。
【請求項10】
前記蛍光体組成物を基板上に付与することは、前記蛍光体組成物をスクリーン印刷することを含む請求項9に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項11】
前記蛍光体組成物を熱処理することは、200℃未満で熱処理することを含む請求項9に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項12】
前記蛍光体は、イットリウム、ランタン、ルテチウム、ガドリニウム及びテルビウムからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素と、アルミニウム、ガリウム及びスカンジウムからなる群から選択される少なくとも1種を含み、少なくともアルミニウムを含む第2元素と、セリウムと、を含む組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む請求項9に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項13】
前記蛍光体は、中心粒径が15μm以上40μm以下である請求項12に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項14】
前記溶剤は、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン及びヘキサデカンからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項9に記載の波長変換部材の製造方法。
【請求項15】
前記基板は、銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む材料からなる反射面を有し、前記蛍光体組成物を基板上に付与することは、前記反射面に前記蛍光体組成物を付与することを含む請求項9に記載の波長変換部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換部材及びその製造方法、発光装置並びにプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
発光装置から射出された光をマイクロミラー表示素子等によって、スクリーン上に投影してカラー画像を表示させる画像投影装置(プロジェクター)においては、発光装置の高出力化が求められている。例えば、特許文献1には、励起光から蛍光への変換効率がより高い波長変換素子を備える発光装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、発光効率がより高い発光装置を構成可能な波長変換部材及びその製造方法、発光装置並びにプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一態様は、基板と、前記基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層と、を備える波長変換部材である。前記波長変換層は、前記結着材に対する前記蛍光体の体積比が0.75以上1.45以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である。
【0006】
第二態様は、基板と、前記基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層と、を備える波長変換部材である。前記波長変換層は、前記波長変換層の前記基板への配置面に直交する断面において、前記蛍光体の粒子断面積の総和の比率が、前記波長変換層の断面積に対して、56%以上70%以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である。
【0007】
第三態様は、第一態様又は第二態様の波長変換部材と、前記波長変換部材を回転させるモーターと前記波長変換部材に光を照射する光源と、を備える発光装置である。第四態様は、第三態様の発光装置と、画像表示系と、投射光学系と、を備えるプロジェクターである。
【0008】
第五態様は、結着材と溶剤と蛍光体とを含む蛍光体組成物であり、前記溶剤の沸点が200℃以上300℃以下であり、前記結着材に対する前記溶剤の質量比が0.01以上0.4以下であり、前記結着材に対する前記蛍光体の質量比が3.15以上6.05以下である蛍光体組成物を基板上に付与することと、前記基板上に付与した前記蛍光体組成物を熱処理して波長変換層を形成することと、を含む波長変換部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、発光効率がより高い発光装置を構成可能な波長変換部材及びその製造方法、発光装置並びにプロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】発光装置の構成の一例を示す概略構成図である。
【
図2】プロジェクターの構成の一例を示す概略構成図である。
【
図3】(a)は波長変換部材の構成の一例を示す概略断面図であり、(b)は波長変換部材の構成の一例を示す概略斜視図であり、(c)は波長変換部材の構成の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、蛍光体又は発光材料の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。蛍光体の半値幅は、蛍光体の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光スペクトルの波長幅(半値全幅;FWHM)を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、波長変換部材及びその製造方法、発光装置並びにプロジェクターを例示するものであって、本発明は、以下に示す波長変換部材及びその製造方法、発光装置並びにプロジェクターに限定されない。
【0012】
波長変換部材
第一態様である波長変換部材は、基板と、基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層と、を備える。波長変換層は、結着材に対する蛍光体の体積比が0.75以上1.45以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である。
【0013】
光源と波長変換部材と、例えばレンズや反射鏡を含む光学系とから構成される発光装置の発光効率は、波長変換部材における蛍光効率と、光学系における収光効率との積であるトータル効率で評価される。すなわち、発光装置のトータル効率とは、発光装置全体としての発光効率を意味する。蛍光効率は、波長変換部材の波長変換効率に相当し、光源からの入射光の強度に対する波長変換層からの射出光の強度の比として評価される。また、収光効率は、波長変換部材からの射出光が光学系に取り込まれる効率に相当し、波長変換層からの射出光の強度に対する光学系からの光出力の強度の比として評価される。
【0014】
波長変換層に含まれる結着材に対する蛍光体の体積比が0.75以上1.45以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である波長変換層が基板上に配置されて構成される波長変換部材は、光源と組み合わせて発光装置を構成する場合に、より高い蛍光効率を達成することができる。これは例えば、以下のように考えることができる。波長変換層に含まれる蛍光体の体積比率が高いため、波長変換層における蛍光効率が高く、また波長変換層から取り出される光の広がりが抑制されて収光効率が高く、発光装置としてのトータル効率が向上する。さらに、波長変換層の厚みが所定の範囲であることで、光の広がりが抑制され収光効率が高くなり、波長変換層の放熱性が向上し、表面温度の上昇が抑制されることで蛍光効率が高くなる。このように蛍光効率及び収光効率が高くなることにより、発光装置のトータル効率が向上すると考えられる。
【0015】
第二態様である波長変換部材は、基板と、基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層と、を備える。波長変換層は、波長変換層の基板への配置面に直交する断面において、蛍光体の粒子断面積の総和の比率が、波長変換層の断面積に対して、56%以上70%以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である。
【0016】
波長変換層の断面において、蛍光体の粒子断面積の総和の比率が、波長変換層の断面積に対して、56%以上70%以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である波長変換層が基板上に配置されて構成される波長変換部材は、光源と組み合わせて発光装置を構成する場合に、より高い蛍光効率を達成することができる。これは例えば、以下のように考えることができる。波長変換層に含まれる蛍光体の体積比率が高いため、波長変換層における蛍光効率が高く、また波長変換層から取り出される光の広がりが抑制されて収光効率が高く、発光装置としてのトータル効率が向上する。さらに、波長変換層の厚みが所定の範囲であることで、光の広がりが抑制され収光効率が高くなり、波長変換層の放熱性が向上し、表面温度の上昇が抑制されることで蛍光効率が高くなる。このように蛍光効率及び収光効率が高くなることにより、発光装置のトータル効率が向上すると考えられる。
【0017】
ここで図面を用いて、蛍光効率及び収光効率の評価方法について説明する。
図1は発光装置の一例を示す概略構成図である。発光装置200は、光源210と、光源210からの光を波長変換部材250に集光するレンズ222と、波長変換部材250からの出力光を反射して、出力光の方向をレンズ系230に向けるダイクロイックミラー224と、を備える。波長変換部材250は、円板状の基板252と、蛍光体と結着材を含む波長変換層254と、を備える。波長変換層254は、例えば基板252の円周に沿った円環状に配置される。発光装置200の蛍光効率は、位置Aにおいてパワーメーターで測定される励起出力で、位置Bにおいてパワーメーターで測定される蛍光出力を除することで算出される。また、収光効率は、位置Bにおいてパワーメーターで測定される蛍光出力で、位置Cにおいてパワーメーターで測定される射出出力を除することで算出される。そして発光装置200のトータル効率は、蛍光効率と収光効率との積として算出され、射出出力を励起出力で除した値に対応する。なお、蛍光効率の評価においては、波長変換層254の表面温度を赤外線サーモグラフィで測定することで、表面温度の上昇が抑制されていることを確認してもよい。
【0018】
波長変換部材は、基板と基板上に配置される波長変換層とを備える。ここで波長変換部材の構成の一例について図面を参照して説明する。
図3(a)は波長変換部材の構成の一例を示す概略断面図であり、
図3(b)は波長変換部材の構成の一例を示す概略斜視図であり、
図3(c)は波長変換部材の構成の一例を示す概略平面図である。波長変換部材10は、基板12上に蛍光体層14が形成されている。
図3では、基板12は円板状の形状を有している。蛍光体層14は基板12の円周に沿って円環状に配置されている。波長変換部材10は、光源から照射された励起光を吸収して、励起光とは波長の異なる変換光を発生させて、変換光を放射する。波長変換部材10は、例えば、光源からの青色光を吸収し、蛍光体層14で変換された青色光とは波長の異なる変換光を放射するとともに、青色光を反射させて、変換光と青色光の混色光を放射してもよく、変換光のみを放射してもよい。波長変換部材は光源からの励起光を様々な色の光に変換できる。
【0019】
波長変換部材を構成する基板は、円板状に限られず、例えば多角形板状等の形状を有していてもよい。基板の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下であってよく、好ましくは0.4mm以上、又は0.6mm以下であってよい。
【0020】
基板は、例えばアルミニウム、鉄、銅、銀、ニッケル、ステンレス等の金属材料を含む金属部材であってよい。基板が金属材料を含む金属部材であることで、波長変換部材に入射する光を波長変換層で波長変換して、入射する面と同じ側に反射することができる。更に、蛍光体からの放熱性がより良好になるので、波長変換部材の蛍光効率を高くすることができる。
【0021】
また、基板は、例えばガラス、酸化アルミニウム等の透光性材料を含む透光性部材であってもよい。基板が透光性部材であることで、波長変換部材に入射する光を波長変換層で波長変換して、入射する面とは反対側に射出することができる。透光性部材の波長変換層が形成された主面又はそれと対向する他の主面の少なくとも一方を、例えばエッチングやレーザー加工等により予め粗面化してもよい。これにより、波長変換部材の発光面での発光むらを抑制することができる。
【0022】
基板はその表面の少なくとも一部が反射面となっていてよい。反射面は、少なくとも波長変換層が配置される領域に形成されていてよい。反射面は、例えば銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む材料から形成されていてよい。基板の反射面は、基板の材質自体から形成されていてもよい。すなわち、基板自体が、例えば、銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む材料から形成されており、その表面の少なくとも一部が反射面となっていてよい。あるいは、基板上に配置された反射層の表面によって反射面が形成されていてもよい。反射層を形成する材料としては、例えば銀、アルミニウム、それらから選択された少なくとも1種を含む合金、酸化チタン等の金属酸化物を含む樹脂等が挙げられる。反射面の正反射率は、例えば80%以上であってよく、好ましくは85%以上、又は90%以上であってよい。正反射率の上限は、例えば100%以下であってよい。反射面の正反射率が、80%以上であることで、より光の取り出し量を増やすことができる傾向がある。なお、基板の反射面の正反射率は波長450nmの光を用いて測定される。
【0023】
基板上に配置される波長変換層は、結着材と蛍光体とを含んでいてよい。波長変換層を構成する結着材は、有機結着材であってもよいし、無機結着材であってもよい。有機結着材は、樹脂の硬化物を含んでいてよく、好ましくは透光性樹脂の硬化物を含んでいてよい。樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。樹脂がシリコーン樹脂を含むことで、より耐熱性、耐光性等に優れる傾向がある。シリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂は、フェニルシリコーン樹脂、変性フェニルシリコーン樹脂、ジアルキルシリコーン樹脂及び変性ジアルキルシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。無機結着材としては、例えばガラス、セラミックス、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0024】
波長変換層における結着材の含有量は、例えば波長変換層の総質量に対して10質量%以上25質量%以下であってよく、好ましくは12質量%以上、又は14質量%以上であってよく、また好ましくは25質量%未満、23質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0025】
波長変換層を構成する蛍光体は、例えば希土類アルミン酸塩蛍光体の少なくとも1種を含んでいてよい。希土類アルミン酸塩蛍光体は、例えばイットリウム、ランタン、ルテチウム、ガドリニウム及びテルビウムからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素と、アルミニウム、ガリウム及びスカンジウムからなる群から選択される少なくとも1種を含み、少なくともアルミニウムを含む第2元素と、セリウムと、を含む組成を有していてよい。希土類アルミン酸塩蛍光体の組成は、例えば第2元素の総モル数を5モルとした場合に、第1元素のモル含有比が、例えば2.5以上3.5以下であってよく、好ましくは2.8以上3.2以下であってよい。また、第2元素の総モル数を5モルとした場合の酸素原子のモル含有比は、例えば10以上14以下であってよく、好ましくは11以上13以下であってよい。また、第2元素の総モル数に対するアルミニウムのモル含有比は、例えば0を超えて1以下であってよく、好ましくは0.4以上1.0以下であってよい。希土類アルミン酸塩蛍光体の組成における第2元素は、その一部がケイ素及びゲルマニウムからなる群から選択される少なくとも1種に置換されていてもよい。希土類アルミン酸塩蛍光体は、例えば下記式(1)で表される理論組成を有していてよい。
【0026】
(Y,Lu,Gd)3(Ga,Al)5O12:Ce (1)
【0027】
希土類アルミン酸塩蛍光体は、式(1)で表される理論組成と同等の発光特性が得られる限り、理論組成とは異なる組成であってもよい。例えば希土類アルミン酸塩蛍光体は、下記式(1a)で表される組成を有していてもよい。
【0028】
(Y,Lu,Gd)i(Ga,Al)5Oj:Ce (1a)
【0029】
式(1a)中、i及びjは、2.5≦i≦3.5、及び10≦j≦14を満たしていてよく、好ましくは2.8≦i≦3.2、及び11≦j≦13を満たしていてよい。
【0030】
希土類アルミン酸塩蛍光体の発光ピーク波長は、例えば450nm以上580nm以下であってよく、好ましくは490nm以上、500nm以上、520nm以上、又は550nm以上であってよい。発光ピーク波長の上限は、好ましくは575nm以下、570nm以下、又は560nm以下であってよい。また、半値幅は、例えば80nm以上150nm以下であってよく、好ましくは90nm以上、100nm以上、又は110nm以上であってよく、好ましくは140nm以下、130nm以下、又は125nm以下であってよい。
【0031】
蛍光体の中心粒径は、例えば15μm以上40μm以下であってよく、好ましくは17μm以上、20μm以上、22μm以上、又は24μm以上であってよく、また好ましくは35μm以下、33μm以下、又は31μm以下であってよい。蛍光体の中心粒径が前記範囲内であることで、より蛍光効率が高い波長変換部材を得られ傾向がある。なお、蛍光体の中心粒径は、体積平均粒径(メジアン径)を意味し、体積累積粒度分布において、小径側からの体積累積頻度50%に対応する粒径である。体積平均粒径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。
【0032】
蛍光体の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよく、好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。具体的には、体積基準の粒径分布において、小径側からの体積累積10%に対応する粒径をD10、体積累積90%に対応する粒径をD90とすると、D10に対するD90の比(D90/D10)が、例えば3.0以下であってよい。
【0033】
蛍光体の密度は、例えば4g/cm3以上7g/cm3以下であってよく、好ましくは4.5g/cm3以上であってよく、また好ましくは6.9g/cm3以下、6g/cm3以下、又は5g/cm3以下であってよい。
【0034】
波長変換層は、蛍光体及び結着材に加えてその他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、例えばシリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等のフィラー、光安定化剤、着色剤等を挙げることができる。波長変換部材がその他の成分を含む場合、その含有量は目的等に応じて適宜選択することができる。例えば、その他の成分として、フィラーを含む場合、その含有量は結着材100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下とすることができる。
【0035】
波長変換層に含まれる結着材に対する蛍光体の質量比は、例えば3.15以上6.05以下であってよく、好ましくは3.5以上、3.8以上、又は4以上であってよく、また好ましくは6以下であってよい。
【0036】
波長変換層に含まれる結着材に対する蛍光体の体積比は、例えば0.75以上1.45以下であってよく、好ましくは0.8以上、0.84以上、0.88以上、0.94以上、又は0.96以上であってよく、また好ましくは1.44以下、1.43以下、1.2以下、又は1.0以下であってよい。結着材に対する蛍光体の体積比が前記範囲内であると、発光装置におけるトータル効率がより向上する傾向がある。ここで波長変換層に含まれる結着材に対する蛍光体の体積比は、波長変換層の任意の断面において、蛍光体の占有面積を樹脂の占有面積で除することで算出される。ここで樹脂の占有面積は、例えば波長変換層の面積から蛍光体の占有面積を差し引くことで算出される。また、波長変換層の任意の断面は、波長変換層が配置される基板と交差する断面であってよい。
【0037】
また、波長変換層に含まれる結着材に対する蛍光体の体積比は、波長変換層を形成する蛍光体組成物に含まれる結着材の体積に対する蛍光体の体積の比として近似的に算出されてもよい。ここで、結着材の体積は、蛍光体組成物に含まれる結着材の質量を結着材の密度で除することで算出される。また蛍光体の体積は、蛍光体組成物に含まれる蛍光体の質量を蛍光体の密度で除することで算出される。
【0038】
波長変換層の基板への配置面に直交する断面において、波長変換層の断面積に対する蛍光体の粒子断面積の総和の比率(以下、「断面比率」ともいう。)は、例えば56%以上70%以下であってよい。断面比率は、好ましくは58%以上、60%以上、61%以上、又は62%以上であってよい。また断面比率は68%以下、66%以下、65%以下、又は64%以下であってもよい。断面比率が前記範囲であると出力光の発光強度がより向上する傾向がある。ここで蛍光体の粒子断面積の総和は、波長変換層の断面において観察される個々の蛍光体粒子の断面積の総和である。
【0039】
断面比率は、例えば以下のようにして算出される。基板の波長変換層が配置される主面に直交する波長変換層の断面において、所定の横幅(例えば、640μm)を有する領域を任意に選択する。波長変換層の縦幅については、波長変換層の厚み方向に直交する2本の平行線を用いて、平行線のそれぞれの直線が波長変換層の上面と下面に一致するように目視で調整し、2本の直線間の距離として波長変換層の縦幅が測定される。波長変換層の所定の横幅に波長変換層の縦幅を乗じることで、測定対象となる波長変換層の断面積が算出される。
【0040】
蛍光体の粒子断面積の総和は、測定対象となる波長変換層の断面において観察される各蛍光体粒子の断面積の総和として算出される。波長変換層の断面における各蛍光体粒子の断面積は、測定対象となる波長変換層の断面を走査顕微鏡(SEM)で観察して得られる反射電子像において、蛍光体粒子として識別される粒子の断面積として測定される。算出される蛍光体の粒子断面積の総和を波長変換層の断面積で除することで断面比率が算出される。
【0041】
波長変換層の平均厚みは、例えば55μm以上146μm以下であってよく、好ましくは60μm以上、又は75μm以上であってよく、また好ましくは145μm以下、140μm以下、又は120μm以下であってよい。波長変換層の平均厚みが前記範囲内であると、発光装置におけるトータル効率がより向上する傾向がある。波長変換層の厚みは、波長変換層と基板の合計厚みの算術平均値から、基板の厚みの算術平均値を差し引いて算出される。波長変換層と基板の合計厚みの算術平均値及び基板の厚みの算術平均値は、それぞれ任意の6箇所における測定値から算出される。波長変換層と基板の合計厚み及び基板の厚みは、例えば接触式厚み測定機によって測定される。
【0042】
波長変換層は、略均一な厚みを有していてよい。波長変換層の厚みの変動係数は、例えば0.4以下であってよく、好ましくは0.3以下であってよい。波長変換層の厚みの変動係数の下限値は、例えば0.09以上であってよい。波長変換層の厚みの変動係数は、波長変換層の厚みの標準偏差を波長変換層の平均厚みで除して算出される。
【0043】
一態様において、波長変換部材は、反射面を有する円板状の基板と、基板の反射面上に基板の円周に沿って円環状に配置される波長変換層とを備えていてよい。
【0044】
波長変換部材の製造方法
波長変換部材の製造方法は、結着材と溶剤と蛍光体とを含む蛍光体組成物を基板上に付与する付与工程と、基板上に付与した蛍光体組成物を熱処理して波長変換層を形成する熱処理工程と、を含んでいてよい。蛍光体組成物を構成する溶剤は、沸点が200℃以上300℃以下であってよい。また蛍光体組成物は、結着材に対する溶剤の質量比が0.01以上0.4以下であり、結着材に対する蛍光体の質量比が3.15以上6.05以下であってよい。
【0045】
波長変換層を形成する蛍光体組成物が、特定の沸点を示す溶剤を特定の含有量で含むことで、蛍光体の含有量が多い場合であっても、所望の平均厚みを有する波長変換層を生産性よく効率的に形成することができる。形成される波長変換層は、蛍光体の含有量が多く、所定の平均厚みを有していることで、波長変換部材を用いて構成される発光装置において良好なトータル効率を達成することができる。
【0046】
蛍光体組成物は、結着材と溶剤と蛍光体とを少なくとも含む。蛍光体組成物が含む結着材は、有機結着材であってもよいし、無機結着材であってもよい。有機結着材は、例えば樹脂を含んでいてよく、好ましくは透光性樹脂を含んでいてよい。樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。樹脂がシリコーン樹脂を含むことで、より耐熱性、耐光性等に優れる傾向がある。シリコーン樹脂又は変性シリコーン樹脂は、フェニルシリコーン樹脂、変性フェニルシリコーン樹脂、ジアルキルシリコーン樹脂及び変性ジアルキルシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。また、無機結着材としては、例えばガラス、セラミックス、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0047】
蛍光体組成物が含む蛍光体は、例えば希土類アルミン酸塩蛍光体の少なくとも1種を含んでいてよい。希土類アルミン酸塩蛍光体の詳細については既述の通りである。蛍光体組成物における蛍光体の含有量は、結着材に対する質量比として、例えば3.15以上6.05以下であってよく、好ましくは3.5以上、又は4以上であってよく、また好ましくは6以下であってよい。蛍光体の含有量が前記範囲内であると、発光装置のトータル効率がより高くなる傾向がある。
【0048】
蛍光体組成物が含む溶剤は、例えば沸点が200℃以上300℃以下であってよく、好ましくは210℃以上、又は230℃以上であってよく、また好ましくは280℃以下、260℃以下、又は250℃以下であってよい。溶剤の沸点が前記範囲内であることで、付与工程における作業性がより向上する傾向がある。溶剤は、結着材の溶解性の観点から、例えば脂肪族炭化水素系溶剤を含んでいてよく、炭素数が12から16の脂肪族炭化水素系溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。溶剤は、好ましくはドデカン(沸点216℃)、トリデカン(沸点234℃)、テトラデカン(沸点254℃)、ペンタデカン(沸点271℃)及びヘキサデカン(沸点287℃)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0049】
蛍光体組成物における溶剤の含有量は、結着材に対する溶剤の質量比として、例えば0.01以上0.4以下であってよく、好ましくは0.02以上、0.04以上、又は0.05以上であってよく、また好ましくは0.38以下、0.35以下、0.3以下、0.2以下、又は0.1以下であってよい。また蛍光体組成物における溶剤の含有量は、結着材と蛍光体の総質量に対する溶剤の質量比として、例えば0.002以上0.06以下であってよく、好ましくは0.01以上、又は0.05以下であってよい。溶剤の含有量が前記範囲内であると、付与工程における作業性がより向上する傾向がある。
【0050】
蛍光体組成物は、例えば結着材と溶剤と蛍光体とを混合することで調製することができる。また蛍光体組成物は、結着材と溶剤との混合物と、蛍光体とを混合することで調製してもよい。混合方法は、通常用いられる混合方法から適宜選択することができる.混合方法としては、例えば真空脱泡混合機、撹拌装置等を用いる方法を挙げることができる。
【0051】
付与工程では、蛍光体組成物を基板に付与する。蛍光体組成物が付与される基板の詳細については既述の通りである。蛍光体組成物は、好ましくは基板の反射面上に付与されてよい。蛍光体組成物の基板への付与方法としては、印刷法、塗布法、蛍光体組成物シートの接着等が挙げられる。蛍光体組成物の基板への付与方法は、好ましくは印刷法であってよい。
【0052】
印刷法による蛍光体組成物の付与は、例えば基板の所望の位置にスクリーン版を配置し、配置したスクリーン版上でスキージを移動させることで蛍光体組成物を透過させて、基板上に所定厚みの蛍光体組成物層を形成するスクリーン印刷で行うことができる。これにより、ほぼ均一な厚みで蛍光体組成物を基板上に付与することができる。また、スクリーンを構成する繊維の線径、線形、紗厚、開口率、メッシュ数等を適宜調整したスクリーン版を用いることで、形成される蛍光体組成物層の厚みを調整することができる。基板上に形成される蛍光体組成物層の厚みは、目的とする波長変換層の厚みに応じて適宜調整すればよい。また、蛍光体組成物の付与量は、形成される波長変換層が所望の厚みとなるような付与量であればよい。形成される波長変換層の平均厚みは、例えば55μm以上146μm以下であってよく、好ましくは60μm以上、又は75μm以上であってよく、また好ましくは145μm以下、140μm以下、又は120μm以下であってよい。
【0053】
熱処理工程では、基板上に付与した蛍光体組成物を熱処理して波長変換層を形成する。熱処理工程は、蛍光体組成物に含まれる結着材を熱硬化させて波長変換層を形成することを含んでいてよい。熱処理工程における熱処理温度は、結着材の熱硬化特性に応じて適宜設定してもよい。また熱処理温度は、例えば蛍光体組成物に含まれる溶剤の沸点未満の温度であってよい。これにより溶剤の揮発に起因する空隙等の形成を抑制することができる。熱処理温度は、例えば50℃以上180℃以下であってよく、好ましくは100℃以上、又は150℃以下であってよい。熱処理時間は、例えば1時間以上10時間以下であってよく、好ましくは4時間以上、又は8時間以下であってよい。熱処理の雰囲気は、例えば大気雰囲気であってよい。
【0054】
熱処理工程では、結着材の熱硬化に先立って、蛍光体組成物に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去してもよい。溶剤の除去は、蛍光体組成物に対して、例えば加熱、減圧等を行うことで実施することができる。溶剤の除去を加熱で行う場合、その温度は、例えば50℃以上180℃以下であってよく、好ましくは100℃以上、又は150℃以下であってよい。溶剤の除去時間は、例えば1時間以上10時間以下であってよく、好ましくは4時間以上、又は8時間以下であってよい。
【0055】
発光装置
発光装置は、第一態様の波長変換部材と、波長変換部材を回転させるモーターと、波長変換部材に光を照射する光源と、を備える。発光装置は、光源からの光と、光源からの光が照射された波長変換部材からの光の混色光を発するように構成される。発光装置が、特定の構成を有する波長変換部材を備えることで、良好なトータル効率を達成することができる。発光装置を構成する波長変換部材の詳細については記述の通りである。
【0056】
発光装置において、波長変換部材は、モーターの回転軸に固定され、モーターによって回転可能に配置される。波長変換部材に光を照射する光源としては、例えば、発光素子等を挙げることができる。発光素子は、半導体発光素子であってよく、発光ダイオードであっても、レーザーダイオードであってもよい。光源を構成する発光素子は1種単独でもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。更に光源を構成する発光素子は、1個であっても、複数個であってもよい。
【0057】
光源は、例えば440nm以上470nm以下の波長範囲内に発光ピーク波長を有していてよい。光源の発光ピーク波長は、好ましくは450nm以上460nm以下の波長範囲内にあってよい。光源の半値幅は、例えば30nm以下であってよい。
【0058】
光源の出力は、例えば、波長変換部材に照射される光パワー密度として、0.5W/mm2以上であってよく、好ましくは5W/mm2以上、又は10W/mm2以上であってよい。発光素子の出力の上限は、例えば、1000W/mm2以下であってよく、好ましくは500W/mm2以下、又は150W/mm2以下であってよい。
【0059】
発光装置は、例えば後述するプロジェクターを構成することができる。良好なトータル効率を示す発光装置を用いることで、高出力のプロジェクターを構成することができる。発光装置は、プロジェクター用光源装置だけでなく、例えば、シーリングライト等の一般照明装置、スポットライト、スタジアム用照明、スタジオ用照明等の特殊照明装置、ヘッドランプ等の車両用照明装置、ヘッドアップディスプレイ等の投影装置、内視鏡用ライト、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォンなどの撮像装置、パーソナルコンピュータ(PC)用モニター、ノート型パーソナルコンピュータ、テレビ、携帯情報端末(PDX)、スマートフォン、タブレットPC、携帯電話などの液晶ディスプレイ装置等における光源に備えられる発光装置として用いることができる。
【0060】
プロジェクター
プロジェクターは、上述した発光装置と、画像表示系と、投射光学系と、を備える。プロジェクターの構成の一例を、
図2を参照して説明する。
図2はプロジェクター100の概略構成図である。プロジェクター100は、光源110、波長変換部材50、画像表示系120及び投射光学系130を備える。プロジェクター100では、光源110からの光と、光源110からの光が波長変換部材50で波長変換された光の混合光が、画像表示系120に照射される。画像表示系120は照射された光を画像に変換して、投射光学系130を介して外部に投影する。
【0061】
プロジェクター100を構成する光源110、波長変換部材50の詳細については既述の通りである。画像表示系120は、プロジェクター100が投影する画像を表示する。画像表示系120には、液晶パネル、デジタルミラーデバイス(DMD)などを用いることができる。投射光学系130は、波長変換部材50から射出された光を画像表示系120が変換した画像を外部に投射する。投射光学系130は、複数のレンズ131からなり、ズーム、ピントの調整等を行うことができる。プロジェクター100は、上記の構成のほか、レンズ131、ダイクロイックミラー132などにより構成される。また、プロジェクター100の設計に応じて、
図2に図示されていない、ミラー、ダイクロイックミラー、レンズ、プリズムなどを更に備えていてもよい。
【0062】
本発明は、以下の態様を包含してよい。
[1] 基板と、前記基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層とを備え、前記波長変換層は、前記結着材に対する前記蛍光体の体積比が0.75以上1.45以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である波長変換部材。
【0063】
[2] 基板と、前記基板上に配置され、結着材と蛍光体とを含む波長変換層と、を備え、前記波長変換層の前記基板への配置面に直交する断面において、前記蛍光体の粒子断面積の総和の比率が、前記波長変換層の断面積に対して、56%以上70%以下であり、平均厚みが55μm以上146μm以下である波長変換部材。
【0064】
[3] 前記蛍光体は、イットリウム、ランタン、ルテチウム、ガドリニウム及びテルビウムからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素と、アルミニウム、ガリウム及びスカンジウムからなる群から選択される少なくとも1種を含み、少なくともアルミニウムを含む第2元素と、セリウムと、を含む組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む[1]又は[2]に記載の波長変換部材。
【0065】
[4] 前記蛍光体は、中心粒径が15μm以上40μm以下である[1]から[3]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0066】
[5] 前記基板は、銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む材料からなる反射面を有し、前記波長変換層は、前記反射面に配置される[1]から[4]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0067】
[6] 前記結着材は、シリコーン樹脂を含む[1]から[5]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0068】
[7] [1]から[6]のいずれかに記載の波長変換部材と、前記波長変換部材を回転させるモーターと、前記波長変換部材に光を照射する光源と、を備える発光装置。
【0069】
[8] [7]に記載の発光装置と、画像表示系と、投射光学系と、を備えるプロジェクター。
【0070】
[9] 結着材と溶剤と蛍光体とを含む蛍光体組成物であり、前記溶剤の沸点が200℃以上300℃以下であり、前記結着材に対する前記溶剤の質量比が0.01以上0.4以下であり、前記結着材に対する前記蛍光体の質量比が3.15以上6.05以下である蛍光体組成物を基板上に付与することと、前記基板上に付与した前記蛍光体組成物を熱処理して波長変換層を形成することと、を含む波長変換部材の製造方法。
【0071】
[10] 前記蛍光体組成物を基板上に付与することは、前記蛍光体組成物をスクリーン印刷することを含む[9]に記載の波長変換部材の製造方法。
【0072】
[11] 前記蛍光体組成物を熱処理することは、200℃未満で熱処理することを含む[9]又は[10]に記載の波長変換部材の製造方法。
【0073】
[12] 前記蛍光体は、イットリウム、ランタン、ルテチウム、ガドリニウム及びテルビウムからなる群から選択される少なくとも1種の第1元素と、アルミニウム、ガリウム及びスカンジウムからなる群から選択される少なくとも1種を含み、少なくともアルミニウムを含む第2元素と、セリウムと、を含む組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体を含む[9]から[11]のいずれかに記載の波長変換部材の製造方法。
【0074】
[13] 前記蛍光体は、中心粒径が15μm以上40μm以下である[9]から[12]のいずれかに記載の波長変換部材の製造方法。
【0075】
[14] 前記溶剤は、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン及びヘキサデカンからなる群から選択される少なくとも1種を含む[9]から[13]のいずれかに記載の波長変換部材の製造方法。
【0076】
[15] 前記基板は、銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む材料からなる反射面を有し、前記蛍光体組成物を基板上に付与することは、前記反射面に前記蛍光体組成物を付与することを含む[9]から[14]のいずれかに記載の波長変換部材の製造方法。
【実施例0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
蛍光体
蛍光体として下記式で表される理論組成を有し、中心粒径が24μmである希土類アルミン酸塩蛍光体と、中心粒径が31μmである希土類アルミン酸塩蛍光体とを準備した。
Y3Al5O12:Ce
【0079】
基板
基板として、アルミニウムを含む金属製で、直径が33mm、厚みが0.47mmの円盤状の基板を準備した。基板の反射面における450nmの光に対する正反射率は89%であった。
【0080】
実施例1
ジメチルシリコーン樹脂100質量部に、ドデカン5質量部を添加し、真空脱泡混合機を用いて混合した。そこに中心粒径が24μmである希土類アルミン酸塩蛍光体400質量部を添加し、真空脱泡混合機で混合して蛍光体組成物を得た。得られた蛍光体組成物をスクリーン印刷により基板上に付与して蛍光体組成物層を形成した。その後、60℃のオーブンで4時間、次いで150℃のオーブンで4時間熱処理して、波長変換層を形成して実施例1の波長変換部材を得た。
【0081】
実施例2から16、比較例1及び比較例2
蛍光体の中心粒径及び添加量、溶剤の種類及び添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、それぞれの波長変換部材を得た。
【0082】
上記で得られた波長変換部材について、以下のようにして波長変換層における結着材に対する蛍光体の体積比と、蛍光体層の平均厚みを測定した。結果を表1に示す。
【0083】
体積比の測定
ジメチルシリコーン樹脂の密度を1.1g/cm3として、蛍光体組成物に添加したジメチルシリコーン樹脂の質量をその密度で除して、蛍光体組成物中のジメチルシリコーン樹脂の体積を算出した。また、希土類アルミン酸塩蛍光体の密度を4.6g/cm3として、蛍光体組成物に添加した希土類アルミン酸塩蛍光体の質量をその密度で除して、蛍光体組成物中の希土類アルミン酸塩蛍光体の体積を算出した。蛍光体組成物に含まれるジメチルシリコーン樹脂の体積で希土類アルミン酸塩蛍光体の体積を除することで、形成された波長変換層における結着材に対する蛍光体の体積比を算出した。
【0084】
平均厚みの測定
波長変換層と基板の合計厚みを6箇所で測定した値の算術平均値から、基板のみの厚みを6箇所で測定した値の算術平均値を差し引いて、波長変換層の平均厚みを算出した。なお、波長変換層と基板の合計厚みと、基板のみの厚みは、接触式厚み測定機を用いて測定した。
【0085】
相対トータル効率
上記で得られた波長変換部材について、以下のようにして発光装置における蛍光効率と収光効率とを算出し、蛍光効率と収光効率の積としてトータル効率を算出した。各発光装置におけるトータル効率を、比較例1の波長変換部材を用いた発光装置のトータル効率を基準(100%)とする相対トータル効率として、表1に示す。
【0086】
トータル効率の測定用として、
図1に示すような発光装置を準備した。波長変換部材はモーターの回転軸に固定され、モーターで回転可能な状態とした。モーターの回転数を7200rpmとして以下のようにして、蛍光効率と収光効率を測定した。
【0087】
蛍光効率
各実施例及び比較例の波長変換部材に対して、波長が450nmであるレーザーダイオードによるレーザー光を入射光の光径が0.25mm2となるようにダイクロイックミラーを通して、10Wの強度で照射して波長変換部材に入射した。そして、レーザー光を入射した面と同一の面から出射された光の放射束をダイクロイックミラーで分離し、積分球を用いて射出光の強度を測定した。入射光の強度で射出光の強度を除することで蛍光効率を求めた。
【0088】
収光効率
各実施例及び比較例の波長変換部材に対して、波長が455nmのレーザーダイオードによるレーザー光を照射した。この照射は、レーザー光が入射された波長変換部材の上面上で入射光の光径が直径0.6mmとなるように照射した。次に、レーザー光が入射された波長変換部材の上面と同一の面から出射された出射光を以下の方法により測定した。まず、各実施例及び比較例の波長変換部材から出射された光の発光輝度を色彩輝度計で測定し、得られた発光スペクトルにおいて最大輝度を示す位置を中心(測定中心)とし、発光スペクトルにおいて輝度が最大輝度の100分の1(1%)となる2か所の位置の測定中心からの距離(mm)を絶対値として測定した。そして、測定中心から当該2か所の位置の距離(mm)の和を計算した。この数値を「1%幅(mm)」と呼ぶこととする。この1%幅の数値が小さいほど、狭いエリアで発光していることになり、2次光学系に光が入りやすくなり収光効率が高くなる。得られた1%幅の数値と一般的な実際の2次光学系で測定した収光効率(=射出出力×100/蛍光出力)とを比較すると、収光効率は、1%幅の数値をxとして以下の式で近似できることが分かっている。この数式を用いて、測定された1%幅の数値から収光効率を算出した。
収光効率=-0.0012x2+0.1243x+58.783
【0089】
【0090】
表1に示されるように、波長変換層における結着材に対する蛍光体の体積比が0.75以上1.45以下であり、波長変換層の平均厚みが55μm以上146μm以下であることで、実施例にかかる発光装置は、比較例にかかる発光装置よりもトータル効率が高かった。また、表1に示されるように、沸点が200℃以上300℃以下である溶剤、ドデカン(沸点216℃)、トリデカン(沸点234℃)、ヘキサデカン(沸点287℃)を用いて、結着材に対する溶剤の質量比を0.01以上0.4以下とし、結着材に対する蛍光体の質量比を3.15以上6.05以下とした蛍光体組成物を用いて、例えば、55μm以上146μm以下の厚みの波長変換層を形成することで、実施例にかかる製造方法により得られた発光装置は、比較例にかかる発光装置よりもトータル効率が高かった。
【0091】
上記で得られた波長変換部材の代表的なものについて、以下のようにして、波長変換層の断面積に対する蛍光体の粒子断面積の総和の比率(断面比率)を評価した。結果を表2に示す。
【0092】
断面比率の評価
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて得られた波長変換層の断面SEM画像(横幅:640μm)について、画像解析ソフトウェア(ImageJ)を用いて画像解析を行い、断面SEM画像で個々の蛍光体の断面の外形が確認できる粒子について2値化処理を行った。2値化処理した各蛍光体粒子の断面積を積算して蛍光体の総断面積を算出した。波長変換層の断面積は、波長変換層の厚み方向に直交する2本の平行線が波長変換層を挟み込むように平行線の位置を目視で調整し、2本の平行線間の距離として測定される波長変換層の縦幅に横幅640μmを乗じることで算出した。次いで、蛍光体の総断面積を波長変換層の断面積で除して断面比率(%)を算出した。
【0093】
本開示に係る波長変換部材及びそれを備える発光装置は、プロジェクター用光源装置、照明装置、自動車用、ディスプレイ、液晶ディスプレイのバックライト光源等に利用可能である。