(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183498
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】漏血センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097043
(22)【出願日】2022-06-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.MAC
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100140844
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正利
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 晋司
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 英里
(72)【発明者】
【氏名】赤井 日出子
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB13
2G059EE02
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】汗等による誤報の発生を抑制し、漏血を確実に検知することができる漏血センサを提供することを目的とする。
【解決手段】水を浸透させる前後の光散乱において、水を浸透させる前の散乱光の強度を基準とした時、水を浸透させた後の散乱光の強度の変化が20%以内である基材24と、基材24に光を照射する照射部26と、照射部26から照射され、基材24で散乱した光を検出する検出部28と、を備える漏血センサ10である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を浸透させる前後の光散乱において、水を浸透させる前の散乱光の強度を基準とした時、水を浸透させた後の散乱光の強度の変化が20%以内である基材と、
前記基材に光を照射する照射部と、
前記照射部から照射され、前記基材で散乱した光を検出する検出部と、を備える漏血センサ。
【請求項2】
前記基材は、以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか1つを満たす繊維集合体である、請求項1に記載の漏血センサ。
W>0.85 ・・・(1)
W/D>0.93 ・・・(2)
W+3.1W/D>3.48 ・・・(3)
(ここで、W:湿潤防透け指数、D:乾燥防透け指数、W/D:防透け指数比である。)
【請求項3】
前記照射部は、1種類のLEDのみで構成される、請求項1又は2に記載の漏血センサ。
【請求項4】
前記光が近赤外光である、請求項3に記載の漏血センサ。
【請求項5】
前記基材は、血液が接触した際に血液成分に感応する血液成分感応部材を有する、請求項1又は2に記載の漏血センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏血センサに関する。
【背景技術】
【0002】
漏血センサは、医療現場等において血液の漏出を検出するために用いられる。漏血センサにより血液の漏出が検知された場合、独立したセンサ単体がその場で音を発報したり、ランプを点灯させてその場で警報を出すこと、または、透析装置本体から警報を出すことが行われている。例えば特許文献1には、LEDの反射光を利用して漏血を検出する漏血検出センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の漏血検出センサは、血液を吸収した繊維集合体に対して光を照射して、その光が繊維集合体で散乱する光を受光部で受光している。漏血した血液が繊維集合体に浸透すると、光が血液に吸収されて受光部に到達する割合が減少することにより漏血を検出しているが、血液以外の液体、例えば、汗等が繊維集合体に浸透すると、この汗より繊維集合体からの散乱が減少し、受光部に到達する割合が減少する傾向が見られる。したがって、汗による散乱光の変化を漏血として検知する場合があり、誤報も多くなっていた。そのため、汗による散乱光の変化と血液の吸収による散乱光の変化を区別し、漏血を確実に検知することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、汗等による誤報を抑制し、漏血を高感度に検知することができる漏血センサを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた。その結果、基材に水を浸透させた前後の散乱光の強度の変化を抑えることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものであある。
[1]水を浸透させる前後の光散乱において、水を浸透させる前の散乱光の強度を基準とした時、水を浸透させた後の散乱光の強度の変化が20%以内である基材と、前記基材に光を照射する照射部と、前記照射部から照射され、前記基材で散乱した光を検出する検出部と、を備える漏血センサ。
[2]前記基材は、以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか1つを満たす繊維集合体である、[1]に記載の漏血センサ。
W>0.85 ・・・(1)
W/D>0.93 ・・・(2)
W+3.1W/D>3.48 ・・・(3)
(ここで、W:湿潤防透け指数、D:乾燥防透け指数、W/D:防透け指数比である。)
[3]前記照射部は、1種類のLEDのみで構成される、[1]又は[2]に記載の漏血センサ。
[4]前記光が近赤外光である、[3]に記載の漏血センサ。
[5]前記基材は、血液が接触した際に血液成分に感応する血液成分感応部材を有する、[1]から[4]のいずれかに記載の漏血センサ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、血液と汗を区別して検知することができるので、汗による誤報の発生を抑制し、確実に漏血を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の漏血センサの基材に用いられる繊維の一例、及び、通常の繊維の一例を示す断面図である。
【
図3】漏血センサの各部材の位置関係を説明する図である。
【
図4】漏血センサシステムの構成を示すブロック図である。
【
図5】基材に水を滴下した際の散乱光シグナルの経時変化を示す図である。
【
図6】第2実施形態の漏血センサを含む漏血センサシステムの構成を示すブロック図である。
【
図7】加速度センサを用いた漏血検知方法を説明する図である。
【
図8】実施例で用いた基材の防透け指数比(W/D)と湿潤防透け指数(W)の関係を示すグラフである。
【
図9】実施例5における、水と血液の滴下による散乱光の経時変化を示す図である。
【
図10】実施例6における、水と血液の滴下による散乱光の経時変化を示す図である。
【
図11】比較例6における、水と血液の滴下による散乱光の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の漏血センサの実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はこれらの内容に何ら限定されない。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
【0010】
(第1実施形態)
[漏血センサ]
図1は、本発明の漏血センサを説明する図である。漏血センサ10は、漏血した血液2と接触する基材24と、基材24に光26aを照射する照射部(光源)26と、照射部26から照射された光26aが基材24で散乱した散乱光28aを検出する検出部(光検出器)28と、を備える。
漏血センサ10は、例えば、血液透析における血液2の漏出を検出するために用いられる。血液透析における針4の穿刺による血液2の体外への導出及び体外で処理した血液の体内への導入を行う際の、抜針を原因とする血液2の漏出の検出に用いられる。血液2の漏出の検出は、針4を穿刺した皮膚6に基材24を載せ、この基材24が吸収した血液2を検出することで、血液2の漏出を検出する。皮膚6と基材24は、接触、又は、漏れた血液が基材24に浸透するような配置とするが、接触が好ましい。また、皮膚6と基材24との間に透明なフィルム等を挿入してもよい。なお、
図1においては、構成をわかりやすくするため、基材24と皮膚6を離して記載している。
【0011】
≪基材≫
本実施形態の漏血センサ10は、水を浸透させる前後の光散乱において、水を浸透させる前の散乱光の強度を基準とした時、水を浸透させた後の散乱光の強度の変化が20%以内である基材24を有する。水を浸透させた前後の散乱光の強度の変化を上記範囲内とすることで、水の浸透による散乱光の強度の変化を抑制し、血液の光の吸収による散乱光の変化を、検出しやすくすることができる。したがって、血液の浸透による散乱光の強度の変化と、汗等の水分による散乱光の変化を明確に区別することができ、漏血を確実に検知することができる。
水を浸透させた後の散乱光の強度の変化は、例えば、後述する含水散乱率により、評価することができる。また、後述する防透け性により、評価することができる。
【0012】
防透け性の良好な基材24に利用できる生地として、白色顔料を含有した多葉繊維から成る不織布、織物(布帛)、編物等が挙げられる。白色顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が用いられるが、特に酸化チタンが望ましい。基質ポリマは、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ナイロン、アセテート等が用いられる。本実施形態に用いられる基材24としては、これらの基質ポリマに白色顔料を含有した不透明白色ポリマ組成物と透明な基質ポリマ単体を溶融複合紡糸して、繊維内部に多葉構造を付与したものが好ましい。このような、繊維として、例えば、
図2(a)に示すような、内部に多葉構造を有する繊維40を用いることができる。繊維40の内部の内部ポリマ42を多葉構造を有する不透明白色ポリマ組成物からなるポリマとし、その外の外部ポリマ44を透明な基質ポリマとする。このような構成とすることで、
図2(a)に示すように、繊維の外部に水が浸透し、屈折率が上がって外部での光の散乱が低下しても、多葉構造を有する内部ポリマ42の部分に当たる光の量を増やすことができるので、散乱光が低下することを防止することができる。
【0013】
図2(b)は通常の基材に用いられていた繊維50の断面形状を示す図である。繊維50は、内部に構造を有していない単一成分の繊維54のみから成っており、繊維50の表面で光が散乱されるだけであるため、
図2(a)に示す繊維40に比べて透過する光が多くなり、散乱光が低下する。
【0014】
一般に、基材として利用できる不織布や織物、編み物などの繊維の集合体としての基材24は、繊維と空気の屈折率差により乱反射が起こるために光を強く散乱する。これに水等の屈折率が繊維に近い液体が浸透すると散乱が弱くなる。そのために水が浸透する事により基材24からの散乱が変化する。繊維内部に多葉構造を有する繊維とすることで、繊維に水が浸透した場合においても、不透明白色ポリマに当たった光が散乱することで、散乱光の強度の変化を抑えることができる。
なお、散乱光の強度の変化は、基材24本体の散乱だけでなく、基材24と外部の界面の反射や、照射部26と検出部28の配置に依存する為に、基材24の置き方や液体の浸透のさせ方に依存して測定ごとに変化する。漏血センサ10の誤動作を抑制するためには、そのような変化が小さいものが望ましい。
【0015】
基材24の厚さは、基材24の厚さを厚くすることで、後述する防透け性を高くすることができる。しかしながら、漏血センサ10として使用するためには、照射部26及び検出部28と反対側の面から、血液が照射部26及び検出部28の近傍まで浸透する必要がある。そのため、基材24の厚さは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。また、下限は、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましい。基材24の厚さを上記範囲とすることで、少量の血液でも基材24の厚さ方向に浸透させることができ、検出部28により血液の検知が可能となる。また、下限値以上とすることで、透過する光を抑えることができ、散乱光が低下することを抑制することができる。
【0016】
また、基材24は、近赤外光を利用する際には、血液凝集促進材料を含む血液成分感応部材を有することが好ましい。血液凝集促進材料は、血液との接触により血液(主には赤血球や血小板)の凝集を誘引する材料である。血液成分感応部材は血液凝集促進材料を含むため、血液成分に特異的に感応する。特に、血液成分感応部材は、赤血球に特異的に感応することが好ましい。
【0017】
基材24の形状は、漏血センサ10として使用され得る形状であれば特に限定されない。また、基材24の大きさは、使用される漏血センサ10に合わせて適宜調整すればよい。
漏血センサ10の小型化、薄型化の点、基材24の形状はシート状が好ましい。また、基材24は、絆創膏や包帯等の別の基材を重ねて利用することもできる。
【0018】
基材24としては、多孔質構造を有するものが好ましい。基材24が多孔質構造を有すると、光散乱が大きくなり、かつ血液を多孔質構造の空隙に保持できるため、漏血を検出しやすくなる。多孔質構造を有する基材24としては、血液成分感応部材そのものを成形または加工することで多孔質構造を形成したものであってもよく、織布、不織布等の多孔質の基材24の繊維の表面に、何かの機能を有する材料(後述の血液成分感応部材等)が付着したものであってもよい。多孔質の基材24の繊維は、織布のみからなっていてもよく、織布と不織布からなっていてもよく、不織布のみからなっていてもよい。
【0019】
血液成分感応部材は、血液と接触することにより、血液成分に感応し、近赤外光の吸収が増大するため、基材24での光の散乱量が減少する。そのため、凝集した赤血球を漏血センサ10の検出部28により散乱光強度の減少として検出することにより、漏血センサ10が血液の漏出を検出する。
血液成分感応部材は、近赤外光の吸収がさらに増大し、散乱光強度の減少から漏血を検出しやすくなる点から、ヘモグロビンに作用して、メトヘモグロビン、あるいは3価の鉄を含むヘムを生じる部材が好ましい。このような部材として、カチオン性基を有する化合物がヘモグロビンを酸化する作用を利用できる材料として用いることができる。
【0020】
特に水酸イオン(OH-)を放出する塩基性化合物は本実施形態では好ましく利用する事ができる。さらに、漏血センサ10は、透析の際に皮膚に接して用いるものであるので、人体への影響の小さいものが望ましい。塩基性化合物としては、カチオン性重合体が好ましい例として用いることができる。
【0021】
カチオン性重合体は、カチオン性基を有する構成単位を含む重合体であってもよく、カチオン性基を有する構成単位とカチオン性基を有する構成単位以外の他の構成単位とを含む共重合体であってもよい。また、カチオン性重合体は、コアの部分にカチオン性基を含む鎖を有する有機化合物を反応させたデンドリマー構造を有してもよい。
【0022】
カチオン性基としては、たとえば、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基が挙げられる。これらの中でも、アンモニウム塩基が好ましい。
【0023】
アンモニウム塩基としては、-N+H3、-N+H2RA1、-N+HRA1RA2、-N+RA1RA2RA3が挙げられる。
ここで、RA1、RA2、RA3は、それぞれ同一または異なったアルキル基またはアリール基を示す。RA1、RA2、RA3としては、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0024】
ホスホニウム塩基としては、-P+H3、-P+H2RA1、-P+HRA1RA2、-P+RA1RA2RA3が挙げられる。
ここで、RA1、RA2、RA3は、それぞれ同一または異なったアルキル基またはアリール基を示す。RA1、RA2、RA3としては、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキル基、フェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0025】
これらのカチオン性基のカウンターアニオンは、特に限定されない。例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、亜硫酸イオン、アルキル硫酸イオン、硫酸イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、酢酸イオンやギ酸イオン等のカルボン酸イオンが挙げられる。
【0026】
カチオン性重合体を構成する構成単位が2種類以上ある場合、それぞれの構成単位の含有比率は特に限定されない。カチオン性重合体のカチオン電荷量が以下の好ましい範囲内となるような含有比率とすることが好ましい。
カチオン性重合体のカチオン電荷量は、3meq/g以上が好ましく、5meq/g以上がより好ましく、7meq/g以上がさらに好ましい。カチオン性重合体のカチオン電荷量の上限は、特に限定されない。例えば、ポリビニルアミン塩酸塩のカチオン電荷量がおよそ12meq/gであることを考慮し、また、ラジカル重合可能なモノマー構造を考慮すれば、カチオン性重合体のカチオン電荷量の上限は、12meq/g程度であると考えられる。ここで、ポリビニルアミン塩酸塩とは、ビニルアミン単位のみからなる重合体であって、そのアミノ基のすべてが塩酸塩化されている重合体である。
カチオン性重合体のカチオン電荷量が前記下限値以上であれば、血液成分の感応性が良好となる。前記上限値以下であれば、合成しやすい傾向にある。
重合体のカチオン電荷量は、カチオン性基1つが含まれる重合体の重量に従って決定される。例えば、上述のポリビニルアミン塩酸塩の場合、ビニルアミン塩酸塩モノマー構造一つにカチオン性基一つが存在するため、1eq/81g=12meq/gとなる。
【0027】
血液成分感応部材を組み合わせる場合、基材24は、血液成分感応部材のみからなるものであってもよく、基材24の表面に血液成分感応部材を有するものであってもよい。後者の場合、基材24を血液成分感応部材の溶液に浸漬することや、血液成分感応部材の溶液を塗布することで、基材24の表面に血液成分感応部材を有する基材24を準備してもよい。
【0028】
血液成分感応部材のみからなる基材24は、例えば、血液成分感応部材の成形、カチオン性重合体を含むカチオン性重合体組成物の成形によって製造できる。
血液成分感応部材、又はカチオン性重合体組成物を繊維状に成形し、カチオン性重合体を含む繊維を織布、不織布としてシート状の基材24を得てもよい。
【0029】
血液成分感応部材は、血液成分に対する血液成分感応部材の感応性能を損ねない範囲で、血液成分感応部材以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、血液成分感応部材以外の成分、粘着付与樹脂、軟化剤、腐食防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、防カビ剤、pH調整剤、難燃剤、結晶核剤、導電性粒子、無機粒子、有機粒子、粘度調整剤、滑剤、表面処理剤、レベリング剤、架橋剤、消泡剤が挙げられる。
【0030】
≪照射部≫
照射部26は、基材24に光26aを照射する。
図1に示す例では、シート状の基材24の厚さ方向の一方の側に照射部26が配置されている。照射部26の光源としては、LED、半導体レーザ、タングステンランプ等を用いることができる。また、所定の光を用いて検知する場合は、用いる光以外の波長の光をカットするフィルターを組み合わせてもよい。照射部26の光源としては、コストが低く、コンパクトで使いやすい点から、LEDが好ましい。LEDとしては、例えば、赤外LED、赤色LED;青色LED;緑色LED;紫色LED;紫外LED;黄色LED;白色LED;有機EL(OLED)等が適用できる。
【0031】
また、用いられるLEDは、1種類のLEDのみで構成され単色の光で測定しても良く、2種類以上の複数のLEDを用いても良い。本実施形態によれば、基材24の水を浸透させる前後の散乱光の強度の変化が20%以内に抑えられているため、1種類の光で測定した場合においても、散乱光の低下が、血液による光の吸収による低下であると確実に区別することができる。1種類の光は近赤外光であることが好ましい。近赤外光とすることにより、照射部26から漏れてくる光が目障りにならないような漏血センサ10とすることができる。
【0032】
また、血液の吸光度の異なる2つ以上の波長を用いることで、血液の吸収による散乱光の変化を確実に検知することができる。例えば、血液は近赤外の吸光度は小さく、可視光領域での吸光度が大きいので、近赤外LEDと緑色LEDを組み合わせて、近赤外LEDと緑色LEDの散乱光を同時に測定する。これにより、近赤外LEDの散乱光強度が存在する事を確認して、基材が装着されているかを判断できる事に加え、その比(緑色LED散乱光/近赤外LED散乱光)を取れば、センサの位置のずれなどの血液以外での擾乱による変化は緑色LED、近赤外LED両方に同じように起こる事から、血液の吸収の違いのみによる散乱光の変化を感知する事ができる。また、より少ない血液の量で、漏血の検出が可能になる。
【0033】
≪検出部≫
検出部28は、照射部26から照射された光26aのうち、基材24で照射部26と同じ側に散乱した散乱光28aを検出する。検知部28は、基材24の照射部26が配置されている側と同じ側に配置されている。
【0034】
検出部28の散乱光28aを受光する受光素子としては、基材24で散乱した散乱光28aを受光できるものであればよく、フォトダイオード(PD)やフォトトランジスタ、光電子増倍管を例示できる。コストや寸法の面から、フォトダイオードやフォトトランジスタが望ましい。外光の影響を除くために、検出する光以外の光をカットするフィルターを組み合わせることが望ましい。
【0035】
図3は、漏血センサ10の各部材の位置関係を示す図である。照射部26及び検出部28と、基材24との距離L
1は、検出部28で充分な強度の散乱光28aが検出されるように調節すればよく、例えば0~10mmとすることができる。
また、照射部26と検出部28との距離L
2は、0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。また、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。照射部26と検出部28との距離L
2を上記の下限値以上とすることで、照射部26と検出部28が一体となったIC(Integrated Circuit)29が小型になるため、そのコストを下げることができる。また、基材24に入らずに戻ってくる迷光を少なくすることができる。また、照射部26から照射された光は、
図3に示すうように、基材24の内部を散乱しながら検出部28で検出されるが、距離L
2を上記の上限値以下とすることで、照射部26から照射され基材24で散乱した散乱光28aが検出部28で検出される強度を確保することができる。
検出部28の大きさは、検出部28のサイズ一辺の長さMが、0.5~5mm×0.5~5mmの正方形又は長方形が好ましい。
【0036】
漏血センサ10は、照射部26と検出部28が1つのチップに搭載されたIC29を用いることが好ましい。IC29を利用することにより、漏血センサ10を小型化することができ、精度良く検出することができ、また、コストも下げることができる。照射部26としてのLEDは、一つもしくは複数のLEDを搭載することができ、IC29の上部の窓からLED光が出射され、散乱光あるいは反射光が検出部28で検出される。
【0037】
漏血センサ10は、上記以外の構成として、本体制御部30(
図4参照)を設けることができる。本体制御部30は、外部から、例えば、漏血センサ制御部14(
図4参照)からの指令を受けて照射部26への電流を制御することで、基材24への光26aの照射を制御する。また、検出部28で検出した散乱光28aの強度をAD変換し、デジタル値として外部に出力、例えば、漏血センサ制御部14に伝達する。本体制御部30への命令を伝達したり、本体制御部30からのデータを伝送するのにI2C(Inter-Integrated Circuit)バスを用いるICが利用できる。
照射部26と検出部28と本体制御部30の二つ以上が一体となった素子は、フォトリフレクタ、反射フォトセンサー、近接センサ、パルスオキシメータ、心拍センサ用ICとして市販されており、それらを利用する事が小型化、低コスト化の面で好ましい。例えば、Maxim社製MAX30101、Osram社製SFH7050、新日本無線社製NJR5501R、GENIXTEK社製TPR-105、ローム社製BH1790GLC等の市販の素子を採用できる。
【0038】
[漏血センサシステム]
図4は、本発明の漏血センサ10を含む漏血センサシステム1の構成を示すブロック図である。漏血センサシステム1は、上述した漏血センサ10と、漏血センサ10で検知した結果の送受信を制御する漏血センサ制御部14と、漏血センサ10で血液が検知された場合に警報を出す報知部16と、漏血センサ10で検知した結果を表示する表示部18と、を備える。
【0039】
≪漏血センサ制御部≫
漏血センサ制御部14は、マイクロコントローラ機能を有しており、漏血センサ10で検知した結果を基に漏血の有無を判断し、それを基に、発報したりその判断結果を不図示の本体機器及び透析装置本体に、送受信したりする。
漏血の有無の判定は、後述するように、基材24に血液が接触すると、基材24からの散乱光28aの強度が低下し、この散乱光28aの強度の低下の程度により血液の有無を判定する。漏血センサ制御部14は、不図示の記憶部を有し、血液が基材24に接触する前の散乱光28aの強度(初期の値)を記憶する。また、初期の値に対して、どの程度の割合で散乱光28aの強度が減少した場合に血液があると判定するかその閾値を記憶する。2波長のLED光を利用する際は、上記散乱光強度は、2波長の散乱光の比(例えば緑LEDの散乱光/近赤外LEDの散乱光)で表す。
漏血センサ制御部14は、上記のような漏血判定アルゴリズムをプログラムとしてメモリに有しており、記憶部に記憶された散乱光の初期の値、閾値、及び、検出部28で検出された散乱光28aの強度に基づいて、血液の漏血の有無を判定する。
漏血センサ制御部14は、漏血判定結果を報知部16及び表示部18に通知する。また、漏血センサ制御部14は、本体機器及び透析装置本体に送信する。本体機器及び透析装置本体への漏血判定結果は、有線方式、無線方式のいずれで送信してもよい。なお、「漏血判定結果」とは、漏血センサ10で検知した結果、及び、この結果を基に漏血センサ制御部14で漏血の有無を判定した結果の少なくとも一方又は両方を含むものである。
【0040】
漏血センサ制御部14としては、例えば、無線通信モジュールを備えるTWELITE(登録商標)、Raspberry Pi(登録商標)さらにはWindowsやMac等のマイクロコントローラやマイクロコンピュータ等を用いることができる。無線方式は、特に限定されず、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi-Fi等を用いることができる。また、無線通信モジュールを有さない漏血センサ制御部14としては、例えば、Arduino(登録商標)やPIC(登録商標)等のマイクロコントローラを用いることができる。
【0041】
≪報知部、表示部≫
報知部16は、漏血センサ制御部14で漏血していると判定した場合に、警告を報知する。報知部16は、漏血センサ制御部14で漏血していると判定された場合に点灯することで視覚的に外部に向けて警告するLEDランプ20、音を鳴らすことで可聴的に外部に向けて警告するブザー22等を用いることができる。
表示部18は、漏血判定結果等を表示する。表示する結果としては、検出部28で検出された散乱光28aの強度、又は、漏血センサ制御部14で求めた初期の値に対する散乱光28aの強度の割合等を表示する。表示部18としては、液晶モジュール23を用いることができる。
また、本漏血センサ1からの結果を受けて何らかの対応をする機能が外部にある場合には、漏血センサ1には報知部、表示部の一部あるいは全部が備わっている必要は無い。
【0042】
[基材の水を浸透させる前後の散乱光の変化の評価方法]
次に、基材24の、水を浸透させる前後の光散乱において、水を浸透させる前の散乱光の強度を基準とした時、水を浸透させた後の散乱光の強度の変化が20%以内であることを評価する方法について説明する。
【0043】
〔含水散乱率の評価:乾燥状態の基材が含水することによる光散乱(含水散乱率)の変化が±20以下である評価法〕
含水散乱率の評価として、基材24が水を含んだ際の光散乱の変化を評価する。漏血センサ10の構成として、光源(LED、照射部26)-光検出器(PD、検出部28)-基材24を用いる。このような漏血センサ10として、例えば、MAX30101に基材24を接触させて載せたものを用いることができる。LEDの電流は、1cm×1cm程度に切り出した乾燥した基材をセンサに載せ、LEDを点灯し、LEDから放射された光が基材で散乱して光検出器で検出される光強度が、AD変換器のフルスケールの半分程度になるようにLEDの電流を調整する。光検出器のシグナルをモニターしながら、基材のLED光が照射されている箇所にスポイトで水を1滴滴下し、シグナルの時間変化を記録する。
【0044】
図5は、基材に水を滴下した際の散乱光シグナルの時間変化をプロットした図である。
図5に示すように、基材24に水を滴下する前の乾燥状態においては、一定の散乱光シグナルを示す。これを、乾燥生地定常散乱と定義する。乾燥した基材24に水を滴下すると、散乱光シグナルは一時的に大きく変動することがある。その後、20秒以上経過すると、一定の値となる。これを湿潤生地定常散乱と定義する。そして、乾燥生地定常散乱に対する湿潤生地定常散乱の割合を含水散乱率と定義する。すなわち、含水散乱率=湿潤生地定常散乱/乾燥生地定常散乱である。含水散乱率が1に近いものほど水による散乱光の変化が小さいことを示す。また、1からの含水散乱率の偏移の絶対値を水感指数=|1-含水散乱率|×100(|a|はaの絶対値)と定義すると、0に近いものほど光学式漏血センサで汗による影響が小さい事になる。また、水感指数20以下が、水を浸透させた後の散乱光の強度の変化が20%以内に相当する。
【0045】
なお、上記測定を複数回行うと、同じ基材24を用いても測定ごとにばらつきが生じる。これは、基材24を測定する場所による不均一性や、基材24とIC29の位置関係、及び間隙などが異なるためと考えられる。漏血センサ10は、誤動作が少ない事が望ましく、このようなばらつきが少ないものが好ましい。水感指数の評価は、最低10回の測定を行い、その平均値で求めるが、10回の測定中、0.2を超えるものの回数は、5回以下、好ましくは3回以下、さらに好ましくは1回以下である。
【0046】
〔防透け性の評価〕
また、防透け性を所定の範囲とすることで、水を浸透させる前後の散乱光の強度の変化を20%以内とすることができる。防透け性とは、繊維素材の色が透ける程度のことであり、防透け性が高いとは、透けにくいことを意味している。したがって、水の浸透前後の防透け性に差がないとは、基材に当たった光の散乱光の変化が少ないことを意味している。
【0047】
防透け性は、基材24の厚みが厚いほどどのような基材24でも高くなるが、漏血センサ10に利用できる基材24は、照射部26及び検出部28とは反対の面から照射部26及び検出部28側の面まで血液が浸透する必要がある。したがって、防透け性の評価に用いられる基材24の膜厚は、漏血センサ10に使用する膜厚で評価を行う。
防透け性の評価は、JIS L1923に準じた方法で行う。具体的には、基材サンプルを2cm×5cm程度に切り出し、乾燥(Dry)生地と湿潤(Wet)生地を準備する。湿潤生地は、水道水に浸した後、ろ紙で挟んで余分な水分を除去して準備する。また、白色のインクジェット光沢紙(耐水)に黒い1cm角の■(黒べたの四角形)のパターンを3つ並べてレーザープリンタで印刷する。インクジェット光沢紙の■のパターンの上に、乾燥生地と湿潤生地をのせて、カメラで撮影し、■内部の7mm×7mmの範囲(黒色部分)、及び、■から1cm以内の生地の白色部分で同じ面積の明度を算出した。それぞれ、bDry、wDry、bWet、wWetとし、bはblack、wはwhite、Dryは乾燥生地、Wetは湿潤生地の意味であり、例えば、bDryは乾燥生地を通した■部分の明度を表す。また、カメラの明度は、標準のグレースケールチャートで校正したものを用い、下地の■部分と白色部分の明度を比較して十分なコントラスト(1:15以上)がある事を確認する。
【0048】
求めた明度から防透け性を次のように算出する。
1)乾燥防透け指数(D):bDry/wDry
2)湿潤防透け指数(W):bWet/wWet
3)防透け指数比:W/D
上記で求めた防透け性が、少なくとも以下の式(1)~(3)の少なくともいずれか1つを満たす繊維集合体である基材であることが好ましい。
W>0.85 ・・・(1)
W/D>0.93 ・・・(2)
W+3.1W/D>3.48 ・・・(3)
また、上記のそれぞれの式は、以下の式(1’)~(3’)の範囲であることがさらに好ましく、上記のそれぞれの式(1)~(3)は、下記の対応する式(1’)~(3’)のいずれか1つと置き換えることができ、また、2つ以上と置き換えることができる。
W>0.86 ・・・(1’)
W/D>0.94 ・・・(2’)
W+3.1W/D>3.55 ・・・(3’)
【0049】
[漏血検出方法]
次に第1実施形態の漏血センサ10の漏血検出方法について説明する。漏血センサ10を用いる漏血検出方法では、基材24をプローブとして漏血の検出を行う。
漏血センサ10において、漏血によって血液が基材24に浸透すると、血液による光の吸収が増大していき、基材24からの散乱光28aが減少する。この散乱光強度の経時変化を漏血センサ10の検出部28が検出し、あらかじめ血液以外の要因での変化と区別可能な値(閾値)を設定しておき、その値よりも減少した事をもって漏血を検出する。
本実施形態の漏血センサ10によれば、基材24の水の浸透前後の散乱光の強度の変化を20%以内としているので、汗等による散乱光の変化を抑制することができる。これにより、散乱光の強度の変化を、主に血液の光の吸収によるものとすることができるので、例えば、基材24からの散乱光が初期の値から75%以下に低下した際に漏血と判断することができる。また、この変化は、近赤外光を用いた際の血液の変化より大きいため、光が漏れても目障りにならない単一の近赤外LEDを漏血センサに用いることができる。また、感度の高い可視光LEDと組み合わせることで、より少ない血液の量での検出が可能になる。さらに、血液による散乱光の変化を増大するための血液成分感応材を基材に含ませることで、漏血により散乱光の変化を増大させることができるので、確実に漏血を検知することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の漏血センサについて説明する。
図6は、第2実施形態の漏血センサ110を含む漏血センサシステム101を示すブロック図である。第2実施形態の漏血センサ110は、加速度センサ132を備える点で、第1実施形態の漏血センサ10と相違する。以下、第2実施形態の漏血センサ110について、加速度センサ132を備えた構成を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
第2実施形態の漏血センサ110は、基材24、照射部26、検出部28、及び加速度センサ132を備える。また、照射部24の制御、及び検出結果を外部に出力する本体制御部30を備える。
漏血センサの誤作動の原因としては、汗以外にも、漏血センサが動くことにより、基材24、照射部26、及び検出部28の位置がお互いにずれることで、検出部28で検出されるシグナルが変化することが挙げられる。
本実施形態によれば、加速度センサ132により、漏血センサ110の動きをモニターする。これにより、漏血センサ110の検出部28が検知したシグナルが、加速度センサ132で検知したシグナルと同じ時間である場合は、漏血センサ110の動きによるものであると判定することができる。したがって、加速度センサ132の値が一定である、すなわち、漏血センサ110が動いていない状態における散乱光のシグナルを測定することで、検出部28で検出されるシグナルは漏血センサ110の動きによるシグナルを除外して測定することができる。これにより、血液の光の吸収による散乱光の変化を検出することができ、漏血を確実に検知することができる。また、加速度センサ132により、漏血センサ110の動きが激しいと判定される場合は、安静にするように警告を出すこともできる。
【0052】
また、第2実施形態の漏血センサ110で用いられる基材24は、特に限定されない。上述した第1実施形態の漏血センサ10で用いられる基材24を用いてもよく、水を浸透させる前後の散乱光の強度の変化が20%を超える基材24を用いてもよい。同様に、血液凝集促進材料についても、含んでいても含まなくてもよい。
【0053】
また、第2実施形態においても、安定した血液のセンシングには、血液の吸光度の異なる2つ以上の波長を利用する事が望ましい。加速度センサ132を用いて、漏血センサ110が動いていない状態で測定した2つの波長の散乱光の比を取ることで、血液の吸収による2つの波長の散乱光の変化を安定に測定することができ、漏血の検知感度を向上させることができる。また、2つの波長のそれぞれの散乱光の変化により、漏血の検知を行うことができる。
【0054】
さらに、漏血センサ110の動きと、検出部28により検出されるシグナルとの相関を利用して、機械学習を組み合わせて、漏血センサ110の動きによるシグナルと漏血によるシグナルを区別することもできる。機械学習は、例えば、漏血センサの動きにより検出部28で検出されるシグナルを学習用データとして機械学習した学習済みモデルを用いて、漏血センサの動きによるシグナルと、漏血によるシグナルを区別し、漏血によるシグナルを用いて漏血の検知を行うことができる。機械学習アルゴリズムの種類については、公知のものを用いることができる。
【0055】
<加速度センサを用いた漏血検知方法>
次に加速度センサ132を用いた漏血検知方法について説明する。
図7(a)は加速度センサのシグナル、
図7(b)は検出部で検出されるシグナルを示す図である。
漏血センサ110が漏血したと判断する閾値を、例えば、
図7(b)で示す「閾値1」とする。そして、
図7(a)、(b)で示すように、漏血センサ110が動かず、加速度センサ132のシグナルが一定(通常は1G)の値の時は、検出部28のシグナルも一定である。漏血センサ110が動いてしまい、加速度センサ132が一定の値から振れている間は、検出部28のシグナルも、
図7(b)に示すように振れることになり、P1の点で、「閾値1」以下となっている。しかしながら、これは、漏血センサ110が動くことによって生じた変化であるため、漏血とは判定しない。すなわち、加速度センサ132が一定の値から振れている間は、漏血センサ110が動いていることが原因であり、検出部28のシグナルが「閾値1」以下となっても、漏血とは判定しない。
【0056】
また、加速度センサ132により漏血センサ110が動いたと判断された場合は、漏血センサ110の検知部28のシグナルの初期値がずれる場合があるため、閾値を再度設定する。
図7(b)においては、「閾値2」として再設定する。閾値を再設定した後、加速度センサ132のシグナルが安定し、漏血センサ110が安静にしていると判断される状態において、検出部28のシグナルが「閾値2」以下になった点(P2)を漏血と判断する。
【0057】
このように、漏血センサ110に加速度センサ132を設けることで、漏血センサ110が動いていることを判断することができる。したがって、漏血センサ110が動いている状態ではなく、安静にしている状態で、漏血の判断をすることで、確実に漏血の有無を判断することができる。
【実施例0058】
以下、本発明について、実施例、及び比較例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、以下の実施例、及び比較例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1~4、比較例1~5>(含水による散乱光の変化の評価)
以下に示す9種類の基材を用いて、上述した方法により、防透け性、含水散乱率、水感指数を評価した。基材の厚さは、0.3~0.45mmの範囲であり、各サンプルの厚さを表1に示す。また、測定した結果を表1に示す。なお、実施例で用いたサンプルは以下のとおりである。
BSPP-1~3:市販されている東レ社製ボディシェルを用いた衣類から切り出した生地
BSPP-4:三菱ケミカル社製FINESPEC(製品名)
BSPP-5:ニプロ社製見針絆のセンサより取り出した不織布パッド
BSPP-6:不織布(製品名:ワイプオール(日本製紙クレシア社製))
BSPP-7:不織布ガーゼ(製品名:fine treat(エフスリィー社製))
BSPP-8:共和社製サンフティパッド(製品名)のパッド部分
BSPP-9:ニトムズ社製優肌パッド(製品名)のパッド部分
【0060】
【0061】
また、
図8に、縦軸に防透け指数比(W/D)、横軸に湿潤防透け指数(W)をとり、各サンプルのデータをプロットしたグラフを示す。好ましい基材の生地は、
図8中の■の点である実施例1~3(BSPP-1~3)であり、W>0.85、あるいは、W/D>0.93、あるいはW+3.1W/D>3.48の範囲にある。
【0062】
<実施例5>(実施例3(BSPP-3)を用いた水と血液による散乱光の変化の測定)
実施例3の基材(BSPP-3)を用い、照射部及び検出部としてMAX30101を組み合わせた漏血センサに、水及び血液を滴下し、IR-LEDのみ用いた散乱光の変化を複数回測定した。結果を
図9に示す。
散乱光が初期値から大きく変化する時点が、水又は血液を滴下した時点である。水を滴下した後の散乱光の変化が、20%以内に抑えられており、0.75を閾値とすることで、明確に水(汗)と血液を区別することができる。
【0063】
<実施例6>(実施例3(BSPP-3)を用いたカチオンポリマーの効果)
実施例3の基材(BSPP-3)に、カチオン性ポリマ溶液として、ポリN-ビニルホルムアミドの部分加水分解物 塩酸塩(製品名:KP8080、カチオン当量:10meq/g、重量平均分子量:200万(ポリエチレングリコール換算)、三菱ケミカル社製)の水溶液を添加して乾燥した基材を用いた。この基材とMAX30101を組み合わせた漏血センサに、水及び血液を滴下し、IR-LEDの散乱光の変化を複数回測定した。結果を
図10に示す。
KP8080(血液感応材)の効果により、IR吸収が増加するため、基材への血液の浸透により、IRシグナルが低下している。
図10によれば、閾値を0.55~0.75に設定でき(例えば、閾値が0.6でも可)、より汗と血液を区別しやすくなる。閾値を小さくすると、汗による誤動作をより確実に防止する事ができ、閾値を高めにすることで少量の血液による変化も検出しやすくすることができる。
【0064】
<比較例6>(実施例5、6に対する比較例)
比較例2の基材(BSPP-6)を用い、MAX30101を組み合わせた漏血センサに水及び血液を滴下し、IRLEDの散乱光の変化を複数回測定した。結果を
図11に示す。
図11に示すように、水によって変化したIRシグナルは、初期値を1とした時、0.8よりも下にきていることから、水の浸透前後の散乱光の強度の変化が20%より大きな変化になっていることが確認できる。
図11に示すように、水によるIRシグナルの変化が大きすぎて、血液と水を区別することができなかった。
【0065】
<実施例7>
実施例3の基材(BSPP-3)を用い、MAX30101を組み合わせた漏血センサシステムを構築した。照射部として、IR-LEDのみを用いた。また、漏血していると判断する閾値を初期シグナルの0.75に設定した。
この基材に食塩水50μL、及び、ブタ血液50μLを滴下した。食塩水を滴下しても、漏血センサシステムは発報しなかったが、ブタ血液を滴下すると発報した。これにより、汗による影響を受けることなく、漏血を検出できることが確認できた。
【0066】
<比較例7>
実施例7で、実施例3の基材(BSPP-3)の代わりに比較例2の基材(BSPP-6)を用いた以外は、実施例7と同様の方法により、漏血センサシステムが漏血を検知するか実験を行った。
比較例2の基材(BSPP-6)を用いると、食塩水の滴下により、散乱光シグナルが0.6まで減衰し、発報するものがあった。誤報が生じる可能性が示された。