(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183628
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】基板固定装置及び基板固定装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231221BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20231221BHJP
H05B 3/28 20060101ALI20231221BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L23/36 D
H05B3/28
H05B3/20 376
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097236
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春原 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 里駆
【テーマコード(参考)】
3K034
5F131
5F136
【Fターム(参考)】
3K034AA04
3K034AA15
3K034AA16
3K034BB06
3K034BC17
3K034CA22
3K034JA01
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA02
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB11
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
5F136BC04
5F136BC05
5F136BC07
5F136DA21
5F136DA31
5F136EA23
5F136FA53
5F136FA63
(57)【要約】
【課題】接着層における熱応答性及び接着性を向上させること。
【解決手段】基板固定装置は、ベースプレートと、セラミック板と、接着層とを有する。セラミック板は、ベースプレートに固定され、静電力によって基板を吸着する。接着層は、ベースプレートとセラミック板とを接着する。接着層は、線状の複数の伝熱体と、樹脂とを有する。複数の伝熱体は、長手方向がセラミック板とベースプレートとの積層方向を向くように互いに隣接して配置される。樹脂は、隣接する伝熱体の間に充填され、セラミック板とベースプレートとに接着される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに固定され、静電力によって基板を吸着するセラミック板と、
前記ベースプレートと前記セラミック板とを接着する接着層と
を有し、
前記接着層は、
長手方向が前記セラミック板と前記ベースプレートとの積層方向を向くように互いに隣接して配置された線状の複数の伝熱体と、
隣接する前記伝熱体の間に充填され、前記セラミック板と前記ベースプレートとに接着される樹脂と
を有することを特徴とする基板固定装置。
【請求項2】
前記セラミック板と前記接着層との間に配置された第1接着剤と、
前記ベースプレートと前接着層との間に配置された第2接着剤と
をさらに有し、
前記接着層は、前記第1接着剤を介して前記セラミック板に接着されるとともに、前記第2接着剤を介して前記ベースプレートに接着される、請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項3】
前記セラミック板、前記第1接着剤及び前記第2接着剤の少なくとも一つは、発熱する電極を内蔵する、請求項2に記載の基板固定装置。
【請求項4】
前記接着層の外側面は、
前記セラミック板の外側面よりも内方側に位置し、当該基板固定装置の外周において互いに対向する前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面と共に凹部を形成し、
前記凹部には、前記凹部を塞ぐシール部材が配置されることを特徴とする請求項1に記載の基板固定装置。
【請求項5】
前記接着層は、前記樹脂として、互いに分離された第1樹脂及び第2樹脂を有し、
前記第1樹脂は、
前記伝熱体の一方の端部を被覆し、前記セラミック板に接着され、
前記第2樹脂は、
前記伝熱体の他方の端部を被覆し、前記ベースプレートに接着され、
前記シール部材は、前記第1樹脂と前記第2樹脂との間に空隙が形成されるように前記セラミック板と前記ベースプレートとの間隔を保持することを特徴とする請求項4に記載の基板固定装置。
【請求項6】
発熱する電極を内蔵するセラミック板を形成し、
長手方向が前記セラミック板とベースプレートとの積層方向を向くように互いに隣接して配置された線状の複数の伝熱体と、前記伝熱体の端部に接続された樹脂シートとからなる接着層を前記セラミック板に積層し、
前記接着層を介して前記セラミック板を前記ベースプレートに積層し、
加熱及び加圧によって前記接着層において隣接する前記伝熱体の間に前記樹脂シートを形成する樹脂を充填して前記セラミック板と前記ベースプレートとに接着させることにより前記セラミック板を前記ベースプレートに接着する
工程を有することを特徴とする基板固定装置の製造方法。
【請求項7】
前記接着層を積層する工程は、
第1接着剤を介して前記接着層を前記セラミック板に積層し、
前記セラミック板を積層する工程は、
前記第1接着剤、前記接着層及び第2接着剤を介して前記セラミック板を前記ベースプレートに積層し、
前記セラミック板を接着する工程は、
前記接着層において隣接する前記伝熱体の間に充填される前記樹脂を前記第1接着剤を介して前記セラミック板に接着するとともに、前記第2接着剤を介して前記ベースプレートに接着する
ことを特徴とする請求項6に記載の基板固定装置の製造方法。
【請求項8】
前記接着層を積層する工程は、
外側面が前記セラミック板の外側面よりも内方側に位置する前記接着層を前記セラミック板に積層し、
前記セラミック板を接着する工程の後の前記接着層の外側面と、互いに対向する前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面とによって形成される凹部に、当該凹部を塞ぐシール部材を配置する工程をさらに有する
ことを特徴とする請求項6に記載の基板固定装置の製造方法。
【請求項9】
前記接着層を積層する工程は、
前記伝熱体と、前記伝熱体の一方の端部に接続された第1樹脂シートと、前記伝熱体の他方の端部に接続された第2樹脂シートとからなる接着層であって、外側面が前記セラミック板の外側面よりも内方側に位置する前記接着層を前記セラミック板に積層し、
前記セラミック板を積層する工程の後の前記接着層の外側面と、互いに対向する前記セラミック板の接着面及び前記ベースプレートの接着面とによって形成される凹部に、当該凹部を塞ぐシール部材を配置する工程をさらに有し、
前記セラミック板を接着する工程は、
加熱及び加圧によって前記接着層において隣接する前記伝熱体の一方の端部の間に前記第1樹脂シートを形成する第1樹脂を充填するとともに、隣接する前記伝熱体の他方の端部の間に前記第2樹脂シートを形成する第2樹脂を充填し、
前記第1樹脂と前記第2樹脂との間に空隙が形成されるように前記ベースプレートと前記セラミック板との間隔を前記シール部材によって保持する
ことを特徴とする請求項6に記載の基板固定装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置及び基板固定装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体部品を製造する場合などにウエハを吸着して保持する基板固定装置は、静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)とも呼ばれ、電極を内蔵するセラミック板を備える。基板固定装置は、セラミック板がベースプレートに接着された構造を有し、セラミック板に内蔵された電極に電圧を印加することにより、静電力を利用してセラミック板にウエハを吸着する。セラミック板にウエハを吸着して保持することにより、ウエハに対する例えば微細加工やエッチングなどのプロセスが効率的に行われる。
【0003】
かかる基板固定装置においては、セラミック板は、例えばシリコーン樹脂系の接着剤によってベースプレートに接着される。セラミック板とベースプレートとが接着剤によって接着される場合、接着剤の厚み方向における熱抵抗が比較的に大きいため、ウエハを吸着するセラミック板からベースプレートへの熱の移動が阻害され、ウエハの温度調節の迅速性が低下することがある。これに対し、セラミック板からベースプレートへの熱伝達性を向上させるために、接着剤に代えて、長手方向の熱伝導率が高いカーボンナノチューブの集合体からなる接着層によってセラミック板をベースプレートに接着する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カーボンナノチューブの集合体からなる接着層が用いられる場合、接着層における熱応答性が改善されるものの、接着性が低下する恐れがあるという問題がある。具体的には、接着層におけるカーボンナノチューブの分子間力のみに基づきセラミック板とベースプレートとが接着される場合、セラミック板とベースプレートとの接着強度が比較的に低い。このため、セラミック板とベースプレートとの熱膨張係数の相違に起因する応力によって、接着層がセラミック板又はベースプレートから剥離してしまうことがある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、接着層における熱応答性及び接着性を向上させることができる基板固定装置及び基板固定装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する基板固定装置は、一つの態様において、ベースプレートと、セラミック板と、接着層とを有する。セラミック板は、ベースプレートに固定され、静電力によって基板を吸着する。接着層は、ベースプレートとセラミック板とを接着する。接着層は、線状の複数の伝熱体と、樹脂とを有する。複数の伝熱体は、長手方向がセラミック板とベースプレートとの積層方向を向くように互いに隣接して配置される。樹脂は、隣接する伝熱体の間に充填され、セラミック板とベースプレートとに接着される。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する基板固定装置の一つの態様によれば、接着層における熱応答性及び接着性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、セラミック板の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、接着層積層工程の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、セラミック板積層工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、接着層積層工程の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、セラミック板積層工程の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る基板固定装置の第1変形例を示す図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る基板固定装置の第2変形例を示す図である。
【
図13】
図13は、第3実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、セラミック板積層工程の具体例を示す図である。
【
図18】
図18は、第4実施形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
【
図19】
図19は、第4実施形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、シール部材配置工程の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する基板固定装置及び基板固定装置の製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置100の構成を示す斜視図である。
図1に示す基板固定装置100は、ベースプレート110にセラミック板120が接着された構造を有する。
【0012】
ベースプレート110は、例えばアルミニウムなどの金属製の円形部材である。ベースプレート110は、セラミック板120を固定する基材である。ベースプレート110は、例えば半導体製造装置などに取り付けられ、基板固定装置100を、ウエハを保持する半導体保持装置として機能させる。
【0013】
セラミック板120は、絶縁性のセラミックからなる円形部材である。セラミック板120の径はベースプレート110の径よりも小さく、セラミック板120は、ベースプレート110の中央に固定される。すなわち、セラミック板120の下面がベースプレート110に接着される接着面となり、接着面がベースプレート110に接着されることによりセラミック板120が固定される。セラミック板120の上面は、例えばウエハのような吸着される対象物を吸着する吸着面である。
【0014】
セラミック板120は、導電性の電極を内蔵し、かかる電極に電圧が印加される場合に発生する静電力を利用して例えばウエハ等の対象物を吸着面に吸着する。また、セラミック板120は、ヒーター電極を内蔵し、電圧が印加される場合に発熱するヒーター電極によって、セラミック板120及びセラミック板120に吸着されるウエハなどの対象物の温度を調節する。
【0015】
図2は、第1実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図2には、
図1のII-II線における矢視断面が示されている。
図2に示すように、基板固定装置100は、ベースプレート110とセラミック板120とが接着層130によって接着されて構成される。
【0016】
ベースプレート110は、例えば厚さ20~50mm程度の金属製の円形部材である。ベースプレート110の内部には、例えば冷却水や冷却ガスなどの冷媒の通路となる冷媒通路111が形成されている。冷媒通路111を冷媒が通過することにより、セラミック板120が冷却される。セラミック板120が冷却される結果、セラミック板120の吸着面に吸着される例えばウエハなどの対象物が冷却される。ベースプレート110の上面110aは、セラミック板120に接着される接着面であり、接着層130によってセラミック板120の下面120aに接着されている。
【0017】
セラミック板120は、例えば厚さ4~6mmのセラミックからなる円形板である。セラミック板120は、例えば酸化アルミニウムを用いて作製されたグリーンシートを焼成することにより得られる。セラミック板120の下面120aは、ベースプレート110に接着される接着面であり、接着層130によってベースプレート110の上面110aに接着されている。セラミック板120の内部には、電極121及びヒーター電極122が形成されている。
【0018】
電極121は、セラミック板120の内部に配置され、電圧が印加されることにより静電力を発生させる。この静電力により、セラミック板120は、吸着面となる上面120bに例えばウエハ等の対象物を吸着する。
【0019】
ヒーター電極122は、セラミック板120の内部において電極121よりも下方に配置され、電圧が印加されることにより発熱する。このヒーター電極122の発熱により、セラミック板120は、セラミック板120及びセラミック板120の上面120bに吸着されるウエハ等の対象物を加熱する。
【0020】
接着層130は、ベースプレート110とセラミック板120とを接着している。接着層130は、ベースプレート110とセラミック板120との積層方向(以下、単に「積層方向」と表記する場合がある)の熱伝導率が該積層方向に垂直な平面方向の熱伝導率よりも高い性質(以下適宜「熱的異方性」と呼ぶ)を有する。具体的には、接着層130は、樹脂132に、長手方向の熱伝導率が他の方向の熱伝導率よりも高い複数のカーボンナノチューブ131が埋め込まれた構造を有している。
【0021】
複数のカーボンナノチューブ131は、炭素からなる線状の結晶であり、長手方向がベースプレート110とセラミック板120との積層方向を向くように互いに隣接した状態で配置されている。カーボンナノチューブ131の長手方向の熱伝導率は、セラミック板120の熱伝導率よりも高い。カーボンナノチューブ131は、伝熱体の一例である。
【0022】
樹脂132は、隣接するカーボンナノチューブ131の間に充填され、セラミック板120とベースプレート110とに接着されている。樹脂132としては、例えば、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂又はシリコーン系樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂又はフッ素系樹脂等を用いることができる。
【0023】
樹脂132に複数のカーボンナノチューブ131が埋め込まれた構造の接着層130によってベースプレート110とセラミック板120とを接着することで、接着剤を用いる場合と比べて、接着層130を介した熱の移動を円滑化することができる。このため、セラミック板120から接着層130を介したベースプレート110への熱伝達性が向上することから、接着層130における熱応答性を向上させることができる。また、樹脂132がセラミック板120とベースプレート110とに接着されることから、カーボンナノチューブの集合体からなる接着層を用いる場合と比べて、セラミック板120とベースプレート110との接着強度が高くなる。これにより、セラミック板120とベースプレート110との熱膨張係数の相違に起因する応力が接着層130に作用する場合でも、接着層130の剥離を抑制して、接着層130における接着性を向上させることができる。
【0024】
また、樹脂132は、カーボンナノチューブ131の長手方向の上下端面が露出された状態でカーボンナノチューブ131を被覆している。これにより、カーボンナノチューブ131の長手方向の上端面をセラミック板120に接触させるとともに、下端面をベースプレート110に接触させることができることから、接着層130を介した熱の移動をより円滑化することができる。
【0025】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図3を参照ししながら説明する。
図3は、第1実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。
【0026】
まず、ウエハ等の対象物を吸着するセラミック板120が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば酸化アルミニウムを主材料とする複数のグリーンシートが作製され、適宜、グリーンシートの一面に電極121が形成されるとともに、他のグリーンシートの一面にヒーター電極122が形成される。電極121及びヒーター電極122は、例えばグリーンシートの表面に金属ペーストをスクリーン印刷することにより、形成することができる。そして、複数のグリーンシートが積層され焼成されることにより、セラミック板120が形成される。セラミック板120は、例えば
図4に示すように、電極121の層及びヒーター電極122の層を内蔵する。
図4は、セラミック板120の具体例を示す図である。なお、必要に応じて、ヒーター電極122は、省略されてもよい。
【0027】
セラミック板120が形成されると、セラミック板120に接着層が積層される(ステップS102)。具体的には、例えば
図5に示すように、複数のカーボンナノチューブ131と、樹脂シート132a、132bとからなる接着層130が樹脂シート132a側からセラミック板120の下面120aに仮接着される。
図5は、接着層積層工程の具体例を示す図である。樹脂シート132a、132bは、樹脂132を形成するための半硬化状態の樹脂を用いて形成されたシート状の部材であり、複数のカーボンナノチューブ131を挟んで支持している。樹脂シート132aは、カーボンナノチューブ131の上端部に接続されており、樹脂シート132bは、カーボンナノチューブ131の下端部に接続されている。セラミック板120に接着層130が積層された段階では、接着層130において隣接するカーボンナノチューブ131の間には樹脂132が未だ充填されていない。
【0028】
そして、接着層130が積層されたセラミック板120は、接着層130を介してベースプレート110に積層される(ステップS103)。具体的には、例えば
図6に示すように、接着層130が積層されたセラミック板120が接着層130の樹脂シート132b側からベースプレート110の上面110aに仮接着される。
図6は、セラミック板積層工程の具体例を示す図である。
【0029】
そして、接着層130を介してベースプレート110に積層されたセラミック板120は、ベースプレート110に接着される(ステップS104)。具体的には、樹脂シート132a、132bを形成する半硬化状態の樹脂が、加熱及び加圧によって、接着層130において隣接するカーボンナノチューブ131の間に充填されるとともに、充填された樹脂がセラミック板120とベースプレート110とに接触した状態で硬化する。これにより、隣接するカーボンナノチューブ131の間に充填され且つセラミック板120とベースプレート110とに接着された樹脂132が形成される。その結果、接着層130によってベースプレート110とセラミック板120とが接着されて基板固定装置100が完成する。
【0030】
この基板固定装置100では、樹脂132に複数のカーボンナノチューブ131が埋め込まれた構造の接着層130によってベースプレート110とセラミック板120とが接着されるため、接着層130における熱応答性及び接着性を向上させることができる。
【0031】
以上のように、第1実施形態に係る基板固定装置(例えば、基板固定装置100)は、ベースプレート(例えば、ベースプレート110)と、セラミック板(例えば、セラミック板120)と、接着層(例えば、接着層130)とを有する。セラミック板は、ベースプレートに固定され、静電力によって基板(例えば、ウエハ)を吸着する。接着層は、ベースプレートとセラミック板とを接着する。接着層は、線状の複数の伝熱体(例えば、カーボンナノチューブ131)と、樹脂(例えば、樹脂132)とを有する。複数の伝熱体は、長手方向がセラミック板とベースプレートとの積層方向を向くように互いに隣接して配置される。樹脂は、隣接する伝熱体の間に充填され、セラミック板とベースプレートとに接着される。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、接着層における熱応答性及び接着性を向上させることができる。
【0032】
また、セラミック板は、発熱する電極(例えば、ヒーター電極122)を内蔵してもよい。これにより、第1実施形態に係る基板固定装置によれば、セラミック板の温度及びセラミック板に吸着される基板の温度を所望の温度に調節することができる。
【0033】
(第2実施形態)
第2実施形態は、接着層に加えて接着剤を用いてセラミック板とベースプレートとを接着する点が第1実施形態と異なる。
【0034】
図7は、第2実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図7において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
図7に示す基板固定装置100は、
図2に示した各部に加えて、第1接着剤140及び第2接着剤150を有する。
【0035】
第1接着剤140は、セラミック板120と接着層130との間に配置される。第2接着剤150は、ベースプレート110と接着層130との間に配置される。第1接着剤140及び第2接着剤150は、例えば接着層130の樹脂132と同じ樹脂によって形成されてもよく、樹脂132と異なる樹脂によって形成されてもよい。第1接着剤140及び第2接着剤150を形成する樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂又はシリコーン系樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂又はフッ素系樹脂等を用いることができる。
【0036】
接着層130は、第1接着剤140を介してセラミック板120に接着されるとともに、第2接着剤150を介してベースプレート110に接着されている。換言すれば、接着層130、第1接着剤140及び第2接着剤150によって、セラミック板120がベースプレート110に接着されている。かかる構成により、接着層130のみによってセラミック板120がベースプレート110に接着される場合と比べて、セラミック板120とベースプレート110との接着強度が高くなる。
【0037】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、第2実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。なお、
図8において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0038】
ステップS101においてセラミック板120が形成されると、セラミック板120に接着層が積層される(ステップS202)。具体的には、例えば
図9に示すように、複数のカーボンナノチューブ131と、樹脂シート132a、132bとからなる接着層130が樹脂シート132a側から第1接着剤140を介してセラミック板120の下面120aに仮接着される。
図9は、接着層積層工程の具体例を示す図である。セラミック板120に接着層130が積層された段階では、接着層130において隣接するカーボンナノチューブ131の間には樹脂132が未だ充填されていない。
【0039】
そして、接着層130が積層されたセラミック板120は、第1接着剤140、接着層130及び第2接着剤150を介してベースプレート110に積層される(ステップS203)。具体的には、例えば
図10に示すように、接着層130が積層されたセラミック板120が、接着層130の樹脂シート132b側から第2接着剤150を介してベースプレート110の上面110aに仮接着される。
図10は、セラミック板積層工程の具体例を示す図である。
【0040】
そして、第1接着剤140、接着層130及び第2接着剤150を介してベースプレート110に積層されたセラミック板120は、ベースプレート110に接着される(ステップS204)。具体的には、樹脂シート132a、132bを形成する半硬化状態の樹脂が、加熱及び加圧によって、接着層130において隣接するカーボンナノチューブ131の間に充填されるとともに、充填された樹脂が第1接着剤140と第2接着剤150とに接触した状態で硬化する。これにより、隣接するカーボンナノチューブ131の間に充填される樹脂132が、第1接着剤140を介してセラミック板120に接着されるとともに、第2接着剤150を介してベースプレート110に接着される。その結果、第1接着剤140、接着層130及び第2接着剤150によってベースプレート110とセラミック板120とが接着されて基板固定装置100が完成する。
【0041】
以上のように、第2実施形態に係る基板固定装置は、第1接着剤(例えば、第1接着剤140)と、第2接着剤(例えば、第2接着剤150)とをさらに有する。第1接着剤は、セラミック板と接着層との間に配置される。第2接着剤は、ベースプレートと接着層との間に配置される。そして、接着層は、第1接着剤を介してセラミック板に接着されるとともに、第2接着剤を介してベースプレートに接着されている。これにより、第2実施形態に係る基板固定装置によれば、接着層のみによってセラミック板がベースプレートに接着される場合と比べて、セラミック板とベースプレートとの接着強度が高くなる。
【0042】
なお、本実施形態においては、セラミック板120がヒーター電極122を内蔵するが、ヒーター電極の配置はこれに限定されず種々変更することが可能である。以下、基板固定装置100の変形例について、具体的に説明する。
【0043】
図11は、第2実施形態に係る基板固定装置100の第1変形例を示す図である。
図11において、
図7と同じ部分には同じ符号を付す。
【0044】
図11に示す変形例では、第1接着剤140の内部にヒーター電極141が配置される。ヒーター電極141は、電圧が印加されることにより発熱する。このヒーター電極122の発熱により、第1接着剤140は、セラミック板120及びセラミック板120の上面120bに吸着されるウエハ等の対象物を加熱する。このようにすることにより、セラミック板120の温度及びセラミック板120に吸着されるウエハ等の対象物の温度を所望の温度に調節することができる。
【0045】
図12は、第2実施形態に係る基板固定装置100の第2変形例を示す図である。
図12において、
図7と同じ部分には同じ符号を付す。
【0046】
図12に示す変形例では、第2接着剤150の内部にヒーター電極151が配置される。ヒーター電極151は、電圧が印加されることにより発熱する。このヒーター電極151の発熱により、第2接着剤150は、セラミック板120及びセラミック板120の上面120bに吸着されるウエハ等の対象物を加熱する。このようにすることにより、セラミック板120の温度及びセラミック板120に吸着されるウエハ等の対象物の温度を所望の温度に調節することができる。
【0047】
なお、ヒーター電極は、セラミック板120、第1接着剤140及び第2接着剤150の内部に個別に配置されるだけでなく、セラミック板120、第1接着剤140及び第2接着剤150の少なくとも一つの内部に配置されてもよい。
【0048】
(第3実施形態)
第3実施形態は、接着層の外側面をプラズマから保護するための構造が第1実施形態と異なる。
【0049】
図13は、第3実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図13において、
図2と同じ部分には同じ符号を付す。
図13に示す基板固定装置100では、接着層130の外側面は、セラミック板120の外側面よりも内方側に位置している。接着層130の外側面は、基板固定装置100の外周において互いに対向するセラミック板の下面120a及びベースプレート110の上面110aと共に凹部135を形成している。かかる凹部135には、凹部135を塞ぐシール部材160が配置されている。このようにすることにより、接着層130の外側面をプラズマから保護することができる。
【0050】
すなわち、仮にシール部材160が配置されない場合、基板固定装置100が例えばウエハのプラズマエッチングに使用されることにより、接着層130の外側面がプラズマに暴露され、消耗する恐れがある。これに対して、接着層130の外側面と、互いに対向するセラミック板の下面120a及びベースプレート110の上面110aとにより形成される凹部135にシール部材160が配置されることにより、接着層130の外側面へのプラズマの到達が阻止される。結果として、プラズマが接着層130に接触することを抑制することができることから、プラズマによる接着層130の消耗を抑制することができる。
【0051】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図14を参照しながら説明する。
図14は、第3実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。なお、
図14において、
図3と同じ部分には同じ符号を付す。
【0052】
ステップS101においてセラミック板120が形成されると、セラミック板120に接着層が積層される(ステップS302)。具体的には、例えば
図15に示すように、複数のカーボンナノチューブ131と、樹脂シート132a、132bとからなる接着層130が樹脂シート132a側からセラミック板120の下面120aに仮接着される。
図15は、接着層積層工程の具体例を示す図である。接着層130は、外側面がセラミック板120の外側面よりも内方側に位置している。セラミック板120に接着層130が積層された段階では、接着層130において隣接するカーボンナノチューブ131の間には樹脂132が未だ充填されていない。
【0053】
そして、接着層130が積層されたセラミック板120は、接着層130を介してベースプレート110に積層される(ステップS303)。具体的には、例えば
図16に示すように、接着層130が積層されたセラミック板120が、接着層130の樹脂シート132b側からベースプレート110の上面110aに仮接着される。
図16は、セラミック板積層工程の具体例を示す図である。
【0054】
そして、接着層130を介してベースプレート110に積層されたセラミック板120は、ベースプレート110に接着される(ステップS304)。具体的には、樹脂シート132a、132bを形成する半硬化状態の樹脂が、加熱及び加圧によって、接着層130において隣接するカーボンナノチューブ131の間に充填されるとともに、充填された樹脂が第1接着剤140と第2接着剤150とに接触した状態で硬化する。これにより、隣接するカーボンナノチューブ131の間に充填され且つセラミック板120とベースプレート110とに接着された樹脂132が形成される。その結果、例えば
図17に示すように、接着層130によってベースプレート110とセラミック板120とが接着された基板固定装置100の中間構造体が得られる。
図17は、中間構造体の具体例を示す図である。かかる中間構造体では、接着層130の外側面と、互いに対向するセラミック板120の下面120a及びベースプレート110の上面110aとによって中間構造体の外周において凹部135が形成される。
【0055】
中間構造体が得られると、中間構造体の外周における凹部135に、凹部135を塞ぐシール部材160が配置される(ステップS305)。具体的には、例えば環状のシール部材160が凹部135に嵌合される。環状のシール部材160としては、例えば、Oリング又はポッティング樹脂等を用いることができる。ポッティング樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂等を用いることができる。凹部135にシール部材160が配置されて基板固定装置100が完成する。
【0056】
以上のように、第3実施形態に係る基板固定装置では、接着層の外側面は、セラミック板の外側面よりも内方側に位置している。接着層の外側面は、基板固定装置の外周において互いに対向するセラミック板の接着面(例えば、下面120a)及びベースプレートの接着面(例えば、上面110a)と共に凹部(例えば、凹部135)を形成する。凹部には、凹部を塞ぐシール部材(例えば、シール部材160)が配置される。これにより、第3実施形態に係る基板固定装置によれば、基板固定装置100が例えばウエハのプラズマエッチングに使用される場合であっても、プラズマによる接着層の消耗を抑制することができる。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態は、第3実施形態における接着層130及びシール部材160の構造のバリエーションに関する。
【0058】
図18は、第4実施形態に係る基板固定装置100の断面を示す模式図である。
図18において、
図13と同じ部分には同じ符号を付す。
図18に示す基板固定装置100では、接着層130が、樹脂132として、互いに分離された第1樹脂132A及び第2樹脂132Bを有する。第1樹脂132Aは、カーボンナノチューブ131の上端部を被覆しており、セラミック板120に接着されている。第2樹脂132Bは、カーボンナノチューブ131の下端部を被覆しており、ベースプレート110に接着されている。そして、シール部材160は、第1樹脂132Aと第2樹脂132Bとの間に空隙が形成されるようにセラミック板120とベースプレート110との間隔を保持している。すなわち、シール部材160は、第1樹脂132Aと第2樹脂132Bとを互いに接触させない程度の厚みを有している。このようにすることにより、セラミック板120とベースプレート110との熱膨張係数の相違に起因する応力が接着層130に作用する場合でも、第1樹脂132Aと第2樹脂132Bとの間の空隙に応力を吸収させて接着層130の破損を抑止することができる。
【0059】
次に、上記のように構成された基板固定装置100の製造方法について、
図19を参照しながら説明する。
図19は、第4実施形態に係る基板固定装置100の製造方法を示すフローチャートである。なお、
図19において、
図14と同じ部分には同じ符号を付す。
【0060】
ステップS303においてセラミック板120が接着層130を介してベースプレート110に積層されることにより、接着層130の外側面は、互いに対向するセラミック板の下面120a及びベースプレート110の上面110aと共に凹部135を形成する。かかる凹部135に、凹部135を塞ぐシール部材160が配置される(ステップS404)。具体的には、例えば
図20に示すように、環状のシール部材160が凹部135の底面に載置される。
図20は、シール部材配置工程の具体例を示す図である。環状のシール部材160としては、例えば、Oリング又は樹脂スペーサ等を用いることができる。
【0061】
シール部材160が配置されると、セラミック板120がベースプレート110に接着される(ステップS405)。具体的には、樹脂シート132aを形成する半硬化状態の樹脂が、加熱及び加圧によって、接着層130において隣接するカーボンナノチューブ131の上端部の間に充填されるとともに、充填された樹脂がセラミック板120に接触した状態で硬化する。これにより、隣接するカーボンナノチューブ131の上端部の間に充填され且つセラミック板120に接着された第1樹脂132Aが形成される。また、樹脂シート132bを形成する半硬化状態の樹脂が、加熱及び加圧によって、接着層130において隣接するカーボンナノチューブ131の下端部の間に充填されるとともに、充填された樹脂がベースプレート110に接触した状態で硬化する。これにより、隣接するカーボンナノチューブ131の下端部の間に充填され且つベースプレート110に接着された第2樹脂132Bが形成される。第1樹脂132A及び第2樹脂132Bが形成される際に、第1樹脂132Aと第2樹脂132Bとの間に空隙が形成されるように、ベースプレート110とセラミック板120との間隔がシール部材160によって保持される。ベースプレート110とセラミック板120との間隔が所望の間隔に到達すると、加熱及び加圧が解除され、接着層130によってベースプレート110とセラミック板120とが接着された基板固定装置100が完成する。
【0062】
以上のように、第4実施形態に係る基板固定装置では、接着層は、樹脂として、互いに分離された第1樹脂(例えば、第1樹脂132A)及び第2樹脂(例えば、第2樹脂132B)を有する。第1樹脂は、伝熱体(例えば、カーボンナノチューブ131)の一方の端部(例えば、上端部)を被覆し、セラミック板に接着される。第2樹脂は、伝熱体の他方の端部(例えば、下端部)を被覆し、ベースプレートに接着される。シール部材は、第1樹脂と第2樹脂との間に空隙が形成されるようにセラミック板とベースプレートとの間隔を保持する。これにより、第4実施形態に係る基板固定装置によれば、接着層の破損を抑止することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 基板固定装置
110 ベースプレート
110a 上面
111 冷媒通路
120 セラミック板
120a 下面
120b 上面
121 電極
122 ヒーター電極
130 接着層
131 カーボンナノチューブ
132 樹脂
132a 樹脂シート
132A 第1樹脂
132b 樹脂シート
132B 第2樹脂
135 凹部
140 第1接着剤
141 ヒーター電極
150 第2接着剤
151 ヒーター電極
160 シール部材