(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183725
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20231221BHJP
C23C 14/00 20060101ALI20231221BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C23C14/34 T
C23C14/00 B
H01L21/31 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097389
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】武井 純一
【テーマコード(参考)】
4K029
5F045
【Fターム(参考)】
4K029CA05
4K029CA15
4K029DA04
4K029DA08
4K029DA09
4K029DA10
4K029DC16
4K029DC20
4K029DC39
4K029DC46
4K029JA02
4K029JA06
5F045AA19
5F045AB31
5F045AE01
5F045BB15
5F045EB10
5F045EM10
(57)【要約】
【課題】パーティクルの発生を抑制する成膜装置を提供する。
【解決手段】上部開口を有する処理容器本体及び前記上部開口を塞ぐ蓋体を有する処理容器と、前記処理容器内に設けられ、基板を載置するステージと、前記処理容器内に設けられ、スパッタ粒子を放出するターゲットと、前記処理容器内に前記スパッタ粒子を放出させる処理空間を形成するシールドと、を備え、前記シールドは、前記処理容器本体に固定されるチャンバシールドと、前記蓋体に固定されるターゲットシールドと、を有し、前記チャンバシールドは、円筒側壁部と、前記円筒側壁部から径方向外側に形成される水平壁部と、を有し、前記ターゲットシールドは、前記ステージに向かって伸びる円筒部を有し、前記円筒部の外周面の直径は前記円筒側壁部の内周面の直径よりも小さく、かつ、前記円筒部と前記円筒側壁部とは高さ方向において少なくとも一部が重なる二重管構造を形成する、成膜装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を有する処理容器本体及び前記上部開口を塞ぐ蓋体を有する処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、基板を載置するステージと、
前記処理容器内に設けられ、スパッタ粒子を放出するターゲットと、
前記処理容器内に前記スパッタ粒子を放出させる処理空間を形成するシールドと、を備え、
前記シールドは、前記処理容器本体に固定されるチャンバシールドと、前記蓋体に固定されるターゲットシールドと、を有し、
前記チャンバシールドは、円筒側壁部と、前記円筒側壁部から径方向外側に形成される水平壁部と、を有し、
前記ターゲットシールドは、前記ステージに向かって伸びる円筒部を有し、
前記円筒部の外周面の直径は前記円筒側壁部の内周面の直径よりも小さく、かつ、前記円筒部と前記円筒側壁部とは高さ方向において少なくとも一部が重なる二重管構造を形成する、
成膜装置。
【請求項2】
前記円筒部の下端は、前記水平壁部の上面よりも低い位置まで形成される、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記円筒側壁部の内周面の直径は、前記ターゲットのスパッタ粒子放出面を外接する外接円より大きい、
請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記ターゲットシールドは、前記円筒部よりも径方向外側に形成され、前記水平壁部と少なくとも一部が対向して形成され、前記水平壁部にスパッタ粒子が入射することを抑制するスパッタ粒子入射抑制構造部を有する、
請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記スパッタ粒子入射抑制構造部は、前記円筒部と前記円筒側壁部との間を通過した前記スパッタ粒子を捕捉する凹凸構造を有する、
請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記スパッタ粒子入射抑制構造部は、法線方向が径方向内側に向かう傾斜面を有する、
請求項4に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記チャンバシールドは、前記水平壁部から前記ターゲットシールドに向けて立ち上がる立ち上がり部を有し、
前記ターゲットシールドは、前記立ち上がり部が挿入される掘り込み部を有する、
請求項5または請求項6に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に金属酸化膜を形成する成膜装置であって、減圧可能に構成された処理容器と、前記処理容器内に設けられ処理空間を画成するシールド部と、前記処理容器内に設けられ、基板が前記処理空間に面するように載置される載置台と、前記処理空間にスパッタ粒子を放出するターゲットを保持するホルダと、を有する成膜装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、パーティクルの発生を抑制する成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、上部開口を有する処理容器本体及び前記上部開口を塞ぐ蓋体を有する処理容器と、前記処理容器内に設けられ、基板を載置するステージと、前記処理容器内に設けられ、スパッタ粒子を放出するターゲットと、前記処理容器内に前記スパッタ粒子を放出させる処理空間を形成するシールドと、を備え、前記シールドは、前記処理容器本体に固定されるチャンバシールドと、前記蓋体に固定されるターゲットシールドと、を有し、前記チャンバシールドは、円筒側壁部と、前記円筒側壁部から径方向外側に形成される水平壁部と、を有し、前記ターゲットシールドは、前記ステージに向かって伸びる円筒部を有し、前記円筒部の外周面の直径は前記円筒側壁部の内周面の直径よりも小さく、かつ、前記円筒部と前記円筒側壁部とは高さ方向において少なくとも一部が重なる二重管構造を形成する、成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、パーティクルの発生を抑制する成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】成膜装置におけるターゲットのスパッタ粒子放出面とチャンバシールドとの位置関係を示す平面図の一例。
【
図5】成膜装置におけるターゲット、チャンバシールド及びマスクシールドの位置関係を示す断面図の一例。
【
図7】他の成膜装置におけるターゲットのスパッタ粒子放出面とチャンバシールドとの位置関係を示す平面図の一例。
【
図8】他の成膜装置におけるターゲット、チャンバシールド及びマスクシールドの位置関係を示す断面図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
成膜装置(基板処理装置、スパッタ装置)1について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1及び
図2は、成膜装置1の構成を説明する断面図の一例である。また、
図1は、基板Wに成膜処理を施す際の処理位置にステージ21が配置されている状態を示す。
図2は、基板Wを搬送する際の搬送位置にステージ21が配置されている状態を示す。
【0010】
成膜装置1は、処理容器10と、基板保持部20と、スパッタ粒子放出部30と、ガス供給部40と、シールド50と、制御部60と、を備える。成膜装置1は、例えば、PVD(Physical Vapor Deposition)装置であって、処理容器10内で、スパッタ粒子放出部30から放出されたスパッタ粒子(成膜原子)を基板保持部20に保持された半導体ウエハ等の基板Wの表面に付着させ、成膜するスパッタ装置である。
【0011】
処理容器10は、例えばアルミニウム等の金属材料で形成され、上部が開口された処理容器本体11と、処理容器本体11の上部開口を塞ぐように設けられた蓋体12と、を有する。蓋体12は、略円錐台状をなしている。また、蓋体12は、処理容器本体11から取り外し可能に設けられている。
【0012】
処理容器10の底部には、排気口13が形成されている。排気口13には、排気装置14が接続されている。排気装置14は、圧力制御弁、および真空ポンプを含む。処理容器10の内部空間は、排気装置14によって所定の真空度まで真空排気される。
【0013】
処理容器10の側壁には、処理容器10内に基板Wを搬入または処理容器10内から基板Wを搬出するための搬送口15が形成されている。搬送口15は、ゲートバルブ16により開閉される。
【0014】
基板保持部20は、ステージ21と、円環部材22と、ステージカバー23と、支柱24と、駆動装置25と、真空シール機構26と、を有する。
【0015】
ステージ21は、略円板形状を有し、基板Wを水平に載置する基板載置面を有する。また、ステージ21は、ベースを有する。ベースは、例えばアルミニウム等の金属材料で形成される。ベースの上面には、静電チャックが設けられていてもよい。静電チャックは、誘電体と、誘電体内に設けられた電極と、を有する。また、静電チャックは、上面に基板載置面を有する。静電チャックの電源から電極に電圧を印加することにより、基板載置面に載置された基板Wを静電吸着する。また、ステージ21の内部には、ヒータ等の温調機構が設けられていてもよい。
【0016】
ステージ21の上面には、基板載置面を囲むように円環部材22が固定されている。円環部材22は、例えばステンレス等の材料で形成される。
【0017】
ステージ21の側面には、略円筒形状のステージカバー23が固定されている。ステージカバー23は、例えばアルミニウム等の材料で形成される。
【0018】
支柱24は、処理容器10の底壁を貫通し、一端が処理容器10内に設けられたステージ21の底面中心に固定され、他端が処理容器10外に設けられた駆動装置25と接続する。処理容器10の底壁と支柱24との間には、支柱24が回転可能かつ挿抜可能とするとともに、処理容器10内を真空シールする真空シール機構26が設けられている。
【0019】
駆動装置25は、支柱24を上下方向(挿抜方向)に駆動可能に構成され、かつ、支柱24を回転可能に構成される。
【0020】
駆動装置25は、支柱24を下方向に移動させることにより、ステージ21を搬送位置(
図2参照)に移動させることができる。
【0021】
駆動装置25は、支柱24を上方向に移動させることにより、ステージ21を処理位置(
図1参照)に移動させることができる。ここで、ステージ21を処理位置まで上昇させることにより、後述するマスクシールド53は、ステージ21に載置される。また、ステージ21を処理位置に移動させることにより、ステージ21、円環部材22及びシールド50によって、スパッタ粒子を放出させる処理空間が形成される。
【0022】
駆動装置25は、ステージ21を処理位置に配置した状態で支柱24を回転させることにより、ステージ21、円環部材22、ステージカバー23、及び、後述するマスクシールド53が回転する。
【0023】
スパッタ粒子放出部30は、ターゲット31と、ターゲットフォルダ32と、絶縁体33と、マグネット装置34と、電源35と、有する。スパッタ粒子放出部30は、処理容器10の蓋体12の傾斜面に設けられる。
図1及び
図2に示す例において、スパッタ粒子放出部30は、2つ設けられているものとして図示しているがこれに限られるものではなく、例えば、1つであってもよく、支柱24の回転軸を中心とする円周上に複数設けられていてもよい。
【0024】
ターゲット31は、成膜しようとする膜の構成元素を含む材料からなり、導電性材料であっても誘電体材料であってもよい。ターゲット31は、平面形状が略矩形状を有する。なお、スパッタ粒子放出部30が複数設けられている場合、ターゲット31の材料は同じものであってもよく、異なっていてもよい。また、ターゲット31は、ステージ21の基板載置面(基板載置面に載置される基板Wの表面)に対して、対向して配置される。
【0025】
ターゲットフォルダ32は、導電性材料で形成され、ターゲット31を保持する。ターゲットフォルダ32は、絶縁体33を介して蓋体12に支持される。
【0026】
電源35は、ターゲット31のスパッタリング実行時において、ターゲットフォルダ32に対して、例えば負の直流電圧を印加する。これにより、ターゲット31の周囲で解離したスパッタガス中のイオンがターゲット31に衝突し、ターゲット31からスパッタ粒子が放出される。
【0027】
マグネット装置34は、ターゲットフォルダ32の裏面側に配置されるマグネットと、マグネットを往復運動させるマグネット駆動機構と、を有する。マグネットの磁場によって、スパッタガス中のイオンがターゲット31に衝突する位置を変化させる。
【0028】
ガス供給部40は、ガス供給源41と、マスフローコントローラ42と、ガス供給配管43と、を有する。ガス供給源41は、プラズマ発生用のガスであるスパッタガス(不活性ガス)、例えばArガスを供給する。また、スパッタ粒子と反応する反応ガス(例えば、酸化ガス、窒化ガス等)を供給してもよい。マスフローコントローラ42は、処理容器10内に供給するガスの流量を制御する。ガス供給配管43は、処理容器10内の処理空間(処理位置に配置したステージ21、円環部材22及びシールド50によって形成される空間)にガスを供給する。
【0029】
シールド50は、ターゲットシールド51と、チャンバシールド52と、マスクシールド53と、を有する。
【0030】
ターゲットシールド51は、ターゲット31が露出する開口を有し、蓋体12の下面に固定されている。即ち、処理容器本体11から蓋体12を取り外した際、ターゲットシールド51は蓋体12とともに処理容器本体11から取り外される。ターゲットシールド51は、例えばアルミニウム等の材料で形成される。
【0031】
チャンバシールド52は、略円筒形状に形成され、処理容器本体11内に固定される。即ち、処理容器本体11から蓋体12を取り外した際、チャンバシールド52は処理容器本体11内に位置する。チャンバシールド52は、例えばアルミニウム等の材料で形成される。
【0032】
マスクシールド53は、略円環形状を有する。マスクシールド53は、例えばステンレス等の材料で形成される。ここで、ステージ21を処理位置(
図1参照)に移動させた際、マスクシールド53は、ステージ21に載置される。そして、駆動装置25によってステージ21が回転する際、ステージ21とともにマスクシールド53も回転する。また、ステージ21を搬送位置(
図2参照)に移動させた際、マスクシールド53は、支持部材(図示せず)によって係止され、下方向への移動が制限される。これにより、マスクシールド53は、ステージ21から離間する。
【0033】
制御部60は、コンピュータからなり、成膜装置1の各構成部、例えば、排気装置14、ゲートバルブ16、静電チャックの電源、駆動装置25、マグネット装置34、電源35、ガス供給源41、マスフローコントローラ42等を制御する。制御部60は、実際にこれらの制御を行うCPUからなる主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、記憶装置とを有している。記憶装置には、成膜装置1で実行される各種処理のパラメータが記憶されており、また、成膜装置1で実行される処理を制御するためのプログラム、すなわち処理レシピが格納された記憶媒体がセットされるようになっている。制御部60の主制御部は、記憶媒体に記憶されている所定の処理レシピを呼び出し、その処理レシピに基づいて成膜装置1に所定の処理を実行させる。
【0034】
次に、成膜装置1の動作の一例について説明する。なお、処理容器10内は、排気装置14によって、所定の真空度まで真空排気されている。
【0035】
まず、制御部60は、駆動装置25を制御してステージ21を搬送位置(
図2参照)に下降させ、ゲートバルブ16を制御してゲートバルブ16を開く。これにより、搬送装置(図示せず)は、搬送口15を介して基板Wを処理容器10内に搬入して、ステージ21の基板載置面に基板Wを載置する。また、ステージ21に静電チャックが設けられている場合、制御部60は、静電チャックの電源を制御して静電チャックの電極に電圧を印加することにより、ステージ21の基板載置面に基板Wを静電吸着する。そして、搬送装置が搬送口15から退避すると、制御部60は、ゲートバルブ16を制御してゲートバルブ16を閉じる。
【0036】
次に、制御部60は、駆動装置25を制御してステージ21を処理位置(
図1参照)まで上昇させる。これにより、チャンバシールド52内において支持部材(図示せず)によって支持されたマスクシールド53は、ステージ21によって持ち上げられ、ステージ21に載置される。また、ステージ21を処理位置まで上昇することにより、上方がターゲットシールド51で画成され、側面がチャンバシールド52で画成され、下方がマスクシールド53、円環部材22、ステージ21の基板載置面で画成される処理空間が形成される。
【0037】
次に、制御部60は、駆動装置25を制御して支柱24を回転させる。これにより、基板W、ステージ21、円環部材22、ステージカバー23、及び、マスクシールド53が回転する。また、制御部60は、ガス供給源41及びマスフローコントローラ42を制御して、処理空間内にプラズマ発生用のスパッタガス(例えばArガス)を供給する。また、制御部60は、電源35を制御して、ターゲットフォルダ32に負の電圧を印加する。これにより、ターゲット31の周囲で解離したスパッタガス中のイオンがターゲット31に衝突し、ターゲット31から処理空間内にスパッタ粒子が放出される。これにより、基板Wにスパッタ粒子が付着し、基板Wに膜が形成される。また、マグネット装置34のマグネットが往復運動することにより、ターゲット31の消耗の偏りを抑制する。
【0038】
ここで、蓋体12に固定されるターゲットシールド51と処理容器本体11に固定されるチャンバシールド52との間には、隙間を有する。処理空間内のガスは、ターゲットシールド51とチャンバシールド52との間の隙間を通り、処理空間よりも外側の処理容器10内の空間に排気され、更に排気口13を介して排気装置14によって処理容器10外に排気される。なお、ターゲットシールド51とチャンバシールド52との間の隙間で形成されるガスの流路には、後述するラビリンス構造が設けられ、スパッタ粒子がシールド50で囲われた処理空間内から処理空間よりも外側の処理容器10内に飛散することを防止する。
【0039】
また、ステージ21とともに回転するマスクシールド53及びステージカバー23と処理容器本体11に固定されるチャンバシールド52との間には、隙間を有する。処理空間内のガスは、チャンバシールド52とマスクシールド53との間の隙間及びチャンバシールド52とステージカバー23との間の隙間を通り、処理空間よりも外側の処理容器10内の空間に排気され、更に排気口13を介して排気装置14によって処理容器10外に排気される。なお、チャンバシールド52とマスクシールド53との間の隙間及びチャンバシールド52とステージカバー23との間の隙間で形成されるガスの流路には、後述するラビリンス構造が設けられ、スパッタ粒子がシールド50で囲われた処理空間内から処理空間よりも外側の処理容器10内に飛散することを防止する。
【0040】
成膜処理が終了すると、制御部60は、ガス供給源41及びマスフローコントローラ42を制御して、スパッタガスの供給を停止する。また、制御部60は、電源35を制御して、ターゲットフォルダ32への電圧の印加を停止する。また、制御部60は、駆動装置25を制御して支柱24の回転を停止させる。
【0041】
次に、制御部60は、駆動装置25を制御してステージ21を搬送位置(
図2参照)まで下降させる。これにより、マスクシールド53は、支持部材(図示せず)によって係止され下方向への移動が制限され、チャンバシールド52内において支持部材(図示せず)によって支持される。
【0042】
そして、ステージ21に静電チャックが設けられている場合、制御部60は、静電チャックの電源を制御して静電チャックの電極への電圧の印加を停止することにより、静電吸着を解除する。また、制御部60は、ゲートバルブ16を制御してゲートバルブ16を開く。これにより、搬送装置(図示せず)は、ステージ21の基板載置面に載置された基板Wを受け取り、搬送口15を介して処理容器10外に搬出する。そして、搬送装置が搬送口15から退避すると、制御部60は、ゲートバルブ16を制御してゲートバルブ16を閉じる。
【0043】
以上のように、成膜装置1は、ターゲット31からスパッタ粒子を放出し、基板Wの表面にスパッタ粒子を付着させ、成膜する。また、スパッタ粒子がシールド50で囲われた処理空間内から処理空間よりも外側の処理容器10内に飛散することを防止する。
【0044】
次に、シールド50の構造について、
図3から
図5を用いてさらに説明する。
図3は、成膜装置1の部分拡大断面図の一例である。
図4は、成膜装置1におけるターゲット31のスパッタ粒子放出面31aとチャンバシールド52との位置関係を示す平面図の一例である。
図5は、成膜装置1におけるターゲット31、チャンバシールド52及びマスクシールド53の位置関係を示す断面図の一例である。
【0045】
図3に示すように、チャンバシールド52は、円筒側壁部52aと、水平壁部52bと、立ち上がり部52cと、を有する。
【0046】
円筒側壁部52aは、ステージ21の基板載置面に対して垂直な軸を中心軸とする円筒形状に形成される。円筒側壁部52aの内周面は、ステージ21の基板載置面に対して、垂直な面(直立面)である。換言すれば、円筒側壁部52aの内周面は、ステージ21の基板載置面に対向して配置されるターゲット31に対して、略垂直な面である。また、円筒側壁部52aは、処理空間の側面を画成する。円筒側壁部52aの内周面の直径は、マスクシールド53の外周面の直径よりも大きく形成されている。
【0047】
水平壁部52bは、円筒側壁部52aの上側(または上端)から径方向外側に水平に延びる円環形状に形成される。水平壁部52bの上面は、ステージ21の基板載置面に対して、平行な面(水平面)である。換言すれば、水平壁部52bの上面は、ターゲット31に対して対向して配置される対向面である。
【0048】
立ち上がり部52cは、水平壁部52bの径方向外側(または外周端)から上方に向かって(ターゲットシールド151に向かって)伸び、ステージ21の基板載置面に対して垂直な軸を中心軸とする円筒形状に形成される。
【0049】
また、ターゲットシールド51は、底面部51aと、円筒部51bと、トラップ構造部51cと、掘り込み部51dと、を有する。
【0050】
底面部51aは、ターゲット31を露出する開口を有しターゲット31の周囲を含む蓋体12の底面を覆うように形成される。
【0051】
円筒部51bは、底面部51aから下方に向かって(ステージ21に向かって)伸び、ステージ21の基板載置面に対して垂直な軸を中心軸とする円筒形状に形成される。ここで、円筒部51bは、円筒側壁部52aよりも内側に配置される。換言すれば、円筒部51bの外周面の直径は、円筒側壁部52aの内周面の直径よりも小さく形成されている。また、円筒部51bの下端は、水平壁部52bの上面よりも低い位置まで形成されている。即ち、円筒部51bと円筒側壁部52aとは、高さ方向において少なくとも一部がオーバーラップする構造を有する。換言すれば、円筒部51bと円筒側壁部52aとは、高さ方向において少なくとも一部が重なる二重管構造を形成する。これにより、ターゲット31からみて、水平壁部52bは円筒部51bによって隠されている。
【0052】
トラップ構造部(スパッタ粒子入射抑制構造部)51cは、円筒部51bよりも径方向外側に形成される。また、トラップ構造部51cは、水平壁部52bと少なくとも一部が対向する。ここで、処理空間内のスパッタ粒子は、基板Wの表面等で反射したり、他のスパッタ粒子や不活性ガスと衝突したりすることにより、円筒部51bと円筒側壁部52aとの間を通過して、トラップ構造部51cに入射する。トラップ構造部51cは、入射したスパッタ粒子を捕捉(トラップ)する構造を有する。例えば、トラップ構造部51cは、例えば、凹凸が形成された凹凸構造または凹凸面であってもよい。また、トラップ構造部51cは、ブラスト処理されたブラスト処理面であってもよい。これにより、円筒部51bと円筒側壁部52aとの間を通過して、トラップ構造部51cに入射したスパッタ粒子が、トラップ構造部51cで反射して、水平壁部52bに入射することを抑制することができる。よって、水平壁部52bにスパッタ粒子による堆積物が堆積することを抑制することができる。換言すれば、トラップ構造部51cは、水平壁部52bへのスパッタ粒子に入射することを抑制するスパッタ粒子入射抑制構造部を構成する。
【0053】
なお、スパッタ粒子入射抑制構造部は、トラップ構造部に限られるものではない。円筒部51bよりも径方向外側に形成されるスパッタ粒子入射抑制構造部は、傾斜面であってもよい。傾斜面は、その法線方向が径方向内側に向かう面である。即ち、傾斜面は、径方向内側が径方向外側よりも高い位置に形成される面である。これにより、円筒部51bと円筒側壁部52aとの間を通過して、傾斜面に入射したスパッタ粒子が水平壁部52bへ向かって反跳することを抑制することができる。これにより、水平壁部52bにスパッタ粒子による堆積物が堆積することを抑制することができる。
【0054】
なお、スパッタ粒子入射抑制構造部は、傾斜面かつトラップ構造が形成されていてもよい。また、スパッタ粒子入射抑制構造部は、膜の剥離を抑制する溶射膜(例えば、イットリアを含む溶射膜等)が形成されていてもよい。
【0055】
掘り込み部51dは、トラップ構造部51cよりも径方向外側に形成される。処理容器本体11に蓋体12を取り付けた際、掘り込み部51dには、立ち上がり部52cが挿入される。これにより、ターゲットシールド51とチャンバシールド52との間の隙間で形成されるガスの流路には、ラビリンス構造が形成される。
【0056】
また、
図3及び
図4に示すように、ターゲット31は、底面部51aの開口から処理空間に露出するスパッタ粒子放出面31aを有する。ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aは、円筒部51bよりも内側に配置されている。即ち、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31a(底面部51aの開口)は、円筒部51bの内周面より内側に配置される。換言すれば、平面視した際、円筒部51bの内周面の直径は、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aの外接円31bの直径よりも大きく形成されている。
【0057】
また、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aは、チャンバシールド52の円筒側壁部52aよりも内側に配置される。換言すれば、平面視した際、円筒側壁部52aの内周面の直径は、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aの外接円31bの直径よりも大きく形成されている。さらに換言すれば、平面視した際、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aの外接円31bの直径と水平壁部52bとが重ならない位置に、ターゲット31が配置されている。即ち、
図4に示すように、平面視した際、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aが水平壁部52bと重ならない位置に、ターゲット31が配置されている。
【0058】
また、
図5に示すように、チャンバシールド52は、下側水平壁部52dと、下側立ち上がり部52eと、を有する。
【0059】
下側水平壁部52dは、円筒側壁部52aの下側から径方向内側に水平に延びる円環形状に形成される。
【0060】
下側立ち上がり部52eは、水平壁部52bの径方向内側から上方に向かって伸び、ステージ21の基板載置面に対して垂直な軸を中心軸とする円筒形状に形成される。
【0061】
また、
図5に示すように、マスクシールド53は、処理空間に露出する上面53aを有する。また、マスクシールド53の下面側には、下側掘り込み部53bが形成されている。ステージ21を処理位置(
図1参照)に配置した際、下側掘り込み部53bには、下側立ち上がり部52eが挿入される。これにより、チャンバシールド52とマスクシールド53との間の隙間及びチャンバシールド52とステージカバー23との間の隙間で形成されるガスの流路には、ラビリンス構造が形成される。
【0062】
ここで、他の成膜装置における他のシールド構造について、
図6から
図8を用いて説明する。
図6は、他の成膜装置の部分拡大断面図の一例である。
図7は、他の成膜装置におけるターゲット31のスパッタ粒子放出面31aとチャンバシールド152との位置関係を示す平面図の一例である。
図8は、他の成膜装置におけるターゲット31、チャンバシールド152及びマスクシールド153の位置関係を示す断面図の一例である。
【0063】
図6から
図8に示す他の成膜装置は、
図1から
図5に示す成膜装置1と比較して、シールド構造が異なっている。その他の構造は同様であり、重複する説明を省略する。他の成膜装置のシールド150は、ターゲットシールド151と、チャンバシールド152と、マスクシールド153とを有する。
【0064】
図6に示すように、チャンバシールド152は、円筒側壁部152aと、水平壁部152bと、立ち上がり部152cと、外側水平壁部152fを有する。
【0065】
円筒側壁部152aは、ステージ21の基板載置面に対して垂直な軸を中心軸とする円筒形状に形成される。円筒側壁部152aの内周面は、ステージ21の基板載置面に対して、垂直な面である。換言すれば、円筒側壁部152aの内周面は、ステージ21の基板載置面に対向して配置されるターゲット31に対して、略垂直な面である。また、円筒側壁部152aは、処理空間の側面を画成する。円筒側壁部152aの内周面の直径は、マスクシールド153の外周面の直径よりも大きく形成されている。
【0066】
水平壁部152bは、円筒側壁部152aの上側から径方向外側に水平に延びる円環形状に形成される。水平壁部152bの上面は、ステージ21の基板載置面に対して、平行な面である。換言すれば、水平壁部152bの上面は、ターゲット31に対して対向して配置される対向面である。
【0067】
立ち上がり部152cは、水平壁部152bの径方向外側から上方に向かって伸び、ステージ21の基板載置面に対して垂直な軸を中心軸とする円筒形状に形成される。外側水平壁部152fは、立ち上がり部152cの下側径方向外側に水平に延びる円環形状に形成される。
【0068】
また、ターゲットシールド151は、底面部151aと、円筒部151bと、掘り込み部151cと、を有する。
【0069】
底面部151aは、ターゲット31を露出する開口を有しターゲット31の周囲を含む蓋体12の底面を覆うように形成される。
【0070】
円筒部151bは、底面部151aから下方に向かって伸び、ステージ21の基板載置面に対して垂直な軸を中心軸とする円筒形状に形成される。ここで、円筒部151bは、円筒側壁部152aよりも外側に配置される。換言すれば、円筒部151bの内周面の直径は、円筒側壁部152aの内周面の直径よりも大きく形成されている。また、円筒部151bの下端は、水平壁部152bの上面よりも高い位置に形成されている。即ち、円筒部151bと円筒側壁部152aとは、高さ方向においてオーバーラップしない構造を有する。これにより、ターゲット31からみて、少なくとも一部の水平壁部152bが露出している。
【0071】
掘り込み部151cは、円筒部151bよりも径方向外側に形成される。処理容器本体11に蓋体12を取り付けた際、掘り込み部151cには、立ち上がり部152cが挿入される。これにより、ターゲットシールド51とチャンバシールド52との間の隙間で形成されるガスの流路には、ラビリンス構造が形成される。
【0072】
また、
図6及び
図7に示すように、ターゲット31は、底面部151aの開口から処理空間に露出するスパッタ粒子放出面31aを有する。ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aは、円筒部151bよりも内側に配置されている。即ち、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31a(底面部151aの開口)は、円筒部151bの内周面より内側に配置される。換言すれば、平面視した際、円筒部151bの内周面の直径は、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aの外接円31bの直径よりも大きく形成されている。
【0073】
ここで、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aの外接円31bの直径は、水平壁部152bの内周面の直径よりも大きく形成されている。これにより、
図7に示すように、平面視した際、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aの一部が水平壁部152bと重なる位置に、ターゲット31が配置されている。
【0074】
また、
図8に示すように、チャンバシールド152は、下側水平壁部152dと、下側立ち上がり部152eと、を有する。
【0075】
下側水平壁部152dは、円筒側壁部152aの下側から径方向内側に水平に延びる円環形状に形成される。
【0076】
下側立ち上がり部152eは、水平壁部152bの径方向内側から上方に向かって伸び、ステージ21の基板載置面に対して垂直な軸を中心軸とする円筒形状に形成される。
【0077】
また、
図8に示すように、マスクシールド153は、処理空間に露出する上面153aを有する。また、マスクシールド153の下面側には、下側掘り込み部153bが形成されている。ステージ21を処理位置に配置した際、下側掘り込み部153bには、下側立ち上がり部152eが挿入される。これにより、チャンバシールド152とマスクシールド153との間の隙間及びチャンバシールド152とステージカバー23との間の隙間で形成されるガスの流路には、ラビリンス構造が形成される。
【0078】
ここで、ターゲット31からスパッタ粒子を放出させ、基板Wの表面に成膜する際、ターゲット31から放出されたスパッタ粒子は、シールド150の表面にも付着し、堆積物を形成する。
【0079】
図6から
図8に示す成膜装置において、ターゲット31から放出されたスパッタ粒子が、ターゲット31と対向し、かつ、静止された面であるチャンバシールド152の水平壁部152bの上面に入射することにより、水平壁部152bの上面において堆積物がフレーク状に成長する。このフレーク状の堆積物が壁面から剥離することにより、パーティクルが発生するおそれがある。
【0080】
なお、静止された面であっても、直立する円筒側壁部152aの内周面には、フレーク状の堆積物は確認されなかった。また、ターゲット31と対向する面であっても、回転するマスクシールド153の上面には、フレーク状の堆積物は確認されなかった。
【0081】
これに対し、
図1から
図5に示す成膜装置1においては、ターゲット31と対向し、かつ、静止された面であるチャンバシールド52の水平壁部52bを、ターゲットシールド51の円筒部51bでターゲット31からみて隠す構造を有する。これにより、ターゲット31から放出されたスパッタ粒子がチャンバシールド52の水平壁部52bの上面に入射することを抑制する。即ち、水平壁部52bの上面においてフレーク状に成長する堆積物を抑制する。よって、このフレーク状の堆積物に起因するパーティクルを抑制することができる。
【0082】
また、円筒部51bと円筒側壁部52aとの間を通過するスパッタ粒子は、トラップ構造部51cによって、トラップされる。これにより、トラップ構造部51cで反射したスパッタ粒子がチャンバシールド52の水平壁部52bの上面に入射することを抑制する。即ち、水平壁部52bの上面においてフレーク状に成長する堆積物を抑制する。よって、このフレーク状の堆積物に起因するパーティクルを抑制することができる。
【0083】
また、
図4に示すように、平面視した際、ターゲット31のスパッタ粒子放出面31aが水平壁部52bと重ならない位置に、ターゲット31が配置されている。これにより、ターゲット31から放出されたスパッタ粒子がチャンバシールド52の水平壁部52bの上面に入射することを抑制する。即ち、水平壁部52bの上面においてフレーク状に成長する堆積物を抑制する。よって、このフレーク状の堆積物に起因するパーティクルを抑制することができる。
【0084】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0085】
1 成膜装置
10 処理容器
11 処理容器本体
12 蓋体
20 基板保持部
21 ステージ
22 円環部材
23 ステージカバー
24 支柱
25 駆動装置
26 真空シール機構
30 スパッタ粒子放出部
31 ターゲット
31a スパッタ粒子放出面
31b 外接円
32 ターゲットフォルダ
33 絶縁体
34 マグネット装置
35 電源
40 ガス供給部
50 シールド
51 ターゲットシールド
51a 底面部
51b 円筒部
51c トラップ構造部(スパッタ粒子入射抑制構造部)
51d 掘り込み部
52 チャンバシールド
52a 円筒側壁部
52b 水平壁部
52c 立ち上がり部
52d 下側水平壁部
52e 下側立ち上がり部
53 マスクシールド
53a 上面
53b 下側掘り込み部
60 制御部
W 基板