(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183862
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】エアロゾル計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/02 20060101AFI20231221BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20231221BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N15/02 A
G01N21/47 Z
G01N21/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097637
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 海希
(72)【発明者】
【氏名】金井 大造
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA04
2G043CA03
2G043CA06
2G043DA05
2G043EA03
2G043EA14
2G043HA05
2G043HA09
2G043JA01
2G043KA02
2G043KA08
2G043KA09
2G059AA05
2G059BB01
2G059BB04
2G059CC19
2G059EE02
2G059EE03
2G059GG01
2G059GG08
2G059HH02
2G059JJ01
2G059JJ17
2G059JJ22
(57)【要約】
【課題】未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を同時に計測する。
【解決手段】パルスレーザー発振器4からのレーザー光をエアロゾルに照射し、散乱光のシフト波長に基づいて化学物性を計測して粒子を特定する化学物性計測手段6と(ラマン分光)、パルスレーザー発振器4からのレーザー光をエアロゾルに照射し、特定された粒子の散乱光の強度を把握し、粒径を計測する粒径計測手段7と(ミー散乱計測法)、化学物性計測手段6の情報が入力され特定された粒子の情報(屈折率)を粒径計測手段7に送ると共に、粒径計測手段からの情報により特定された粒子の粒子径を導出する制御手段20とを備え、未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を同時に計測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー発振源からのレーザー光をエアロゾルに照射し、散乱光のシフト波長に基づいて化学物性を計測して粒子を特定する化学物性計測手段と、
前記レーザー発振源からのレーザー光を前記エアロゾルに照射し、特定された粒子の散乱光の強度を把握し、粒径を計測する粒径計測手段と、
前記化学物性計測手段からの情報が入力され特定された粒子の情報を前記粒径計測手段に送ると共に、前記粒径計測手段からの情報が入力され特定された粒子の粒子径を導出する制御手段とを備えた
ことを特徴とするエアロゾル計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアロゾル計測装置において、
第2レーザー発振源からのレーザー光を前記エアロゾルに照射し、照射によりプラズマ化された励起状態の原子、イオンが基底状態に戻る際の光の波長に基づいて原子種を検出する原子種計測手段を更に備え、
前記制御手段には、原子種計測手段の計測情報が入力され、
前記制御手段では、粒子を構成する物質を構成する原子種が把握される
ことを特徴とするエアロゾル計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアロゾル計測装置において、
前記エアロゾルは、
長尺筒状の流通経路の一方向に流通され、
前記レーザー発振源からのレーザー光が前記流通経路の第1部位で長手方向に交差する方向に照射され、前記第1部位の散乱光が前記化学物性計測手段、及び、前記粒径計測手段に送られ、
前記第2レーザー発振源からのレーザー光が、前記エアロゾルの流通方向において前記第1部位の下流側の第2部位で、チャンバを介して長手方向に交差する方向に照射され、前記第2部位の散乱光が前記原子種計測手段に送られる
ことを特徴とするエアロゾル計測装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置において、
前記レーザー発振源は、パルスレーザー光を照射するものであり、
シフト波長に基づいて化学物性を計測する散乱光、強度を把握するための散乱光を分けて前記レーザー発振源に動作指令を与えるゲート手段を備えた
ことを特徴とするエアロゾル計測装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置において、
前記粒径計測手段は、
粒子の散乱光の強度を計測する粒径のレンジを複数有している
ことを特徴とするエアロゾル計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルを計測するエアロゾル計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中のエアロゾルを計測するため、レーザー散乱光を用いて大気中の空間に存在する微粒子の数量、粒径を取得する技術が従来から知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術を用いることにより、エアロゾルの空間分布を計測することができる。
【0003】
近年、自然現象(火山噴火)に対する事前対策、大気汚染や環境汚染などに対する環境保護の対策から、エアロゾルの分布だけではなく、その場の環境(気象状況)などに応じて、エアロゾルの種類や大きさを把握して、より詳細な情報を得ることが求められてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を同時にリアルタイムで計測することができる、即ち、未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を、エアロゾルが発生しているその時その場で計測することができるエアロゾル計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のエアロゾル計測装置は、レーザー発振源からのレーザー光をエアロゾルに照射し、散乱光のシフト波長に基づいて化学物性を計測して粒子を特定する化学物性計測手段と、前記レーザー発振源からのレーザー光を前記エアロゾルに照射し、特定された粒子の散乱光の強度を把握し、粒径を計測する粒径計測手段と、前記化学物性計測手段からの情報が入力され特定された粒子の情報を前記粒径計測手段に送ると共に、前記粒径計測手段からの情報が入力され特定された粒子の粒子径を導出する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る本発明では、化学物性計測手段からの情報により粒子が特定され、特定された粒子の情報に基づいて粒径計測手段により粒径が計測される。このため、必要な粒子(粒径を求めたい粒子)の粒径を計測することができ、未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を、一つの機器で同時に計測することが可能になる。化学物性計測手段と粒径計測手段とは同軸のレーザー光が入射されるので、同軸のレーザー光を用いた一つの機器で未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を計測することが可能になる。
【0008】
また、請求項2に係る本発明のエアロゾル計測装置は、請求項1に記載のエアロゾル計測装置において、第2レーザー発振源からのレーザー光を前記エアロゾルに照射し、照射によりプラズマ化された励起状態の原子、イオンが基底状態に戻る際の光の波長に基づいて原子種を検出する原子種計測手段を更に備え、前記制御手段には、原子種計測手段の計測情報が入力され、前記制御手段では、粒子を構成する物質を構成する原子種(イオン種:原子、元素)が把握されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る本発明では、水溶液中のエアロゾルの原子種(原子、元素)を判断して粒径を計測することができる。例えば、固体の塩の成分(Na、Cl)を計測したい場合に、霧(H、O:含む塩が溶解している水)が発生していても、霧(水)に溶解している塩の成分(Na、Cl)を把握し、固体の塩の成分、溶解している塩の成分の有無を計測することができる。
【0010】
また、請求項3に係る本発明のエアロゾル計測装置は、請求項2に記載のエアロゾル計測装置において、前記エアロゾルは、長尺筒状の流通経路の一方向に流通され、前記レーザー発振源からのレーザー光が前記流通経路の第1部位で長手方向に交差する方向に照射され、前記第1部位の散乱光が前記化学物性計測手段、及び、前記粒径計測手段に送られ、前記第2レーザー発振源からのレーザー光が、前記エアロゾルの流通方向において前記第1部位の下流側の第2部位で、チャンバを介して長手方向に交差する方向に照射され、前記第2部位の散乱光が前記原子種計測手段に送られることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る本発明では、エアロゾルの流通方向に沿って、上流側に、化学物性計測手段、及び、粒径計測手段の散乱光の計測の経路が設けられ、下流側に、原子種計測手段の散乱光の計測の経路が設けられる装置となる。
【0012】
また、請求項4に係る本発明のエアロゾル計測装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置において、前記レーザー発振源は、パルスレーザー光を照射するものであり、シフト波長に基づいて化学物性を計測する散乱光(ラマン散乱)、強度を把握するための散乱光(ミー散乱)を分けて前記レーザー発振源に動作指令を与えるゲート手段(時間フィルター)を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る本発明では、ゲート手段により、化学物性計測手段の計測光(ラマン散乱)と粒径計測手段(ミー散乱)の時間的な偏差を把握してレーザー光(パルス光)を出すタイミング、及び、レーザー光の受光のタイミングを制御することができる。例えば、ラマン散乱が起きる時だけゲートを開き、レーザー発振源からのレーザー光(パルス光)の発振と計測を制御することができる(レーザー光の発振と化学物性計測手段の分光器への入力との時間を同期させることができる)。
【0014】
また、請求項5に係る本発明のエアロゾル計測装置は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエアロゾル計測装置において、前記粒径計測手段は、粒子の散乱光の強度を計測する粒径のレンジを複数有していることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る本発明では、粒径を複数のレンジで計測することで(計測する粒径の系統を複数に分けることで)、広帯域での粒径分布を計測することができる(計測可能な濃度範囲を広げることができる)。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエアロゾル計測装置は、未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を同時にリアルタイムで計測することが可能になる。即ち、本発明のエアロゾル計測装置は、未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を、エアロゾルが発生しているその時その場で計測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例に係るエアロゾル計測装置の構成概念図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るエアロゾル計測装置の系統図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るエアロゾル計測装置の系統図である。
【
図5】分子種の波長信号の一例を表すグラフである。
【
図6】原子種(原子、元素)の波長信号の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には本発明の一実施例に係るエアロゾル計測装置の構成の概念、
図2には化学物性計測手段(ラマン散乱)、及び、粒径計測手段(ミー散乱)の系統のブロック構成、
図3には原子種計測手段(LIBS)の系統のブロック構成を示してある。また、
図4には粒径の波長信号の一例を表すグラフ、
図5には分子種の波長信号の一例を表すグラフ、
図6には原子種(原子、元素)の波長信号の一例を表すグラフを示してある。
【0019】
図1に基づいて本発明の一実施例に係るエアロゾル計測装置の構成の全体の構成を説明する。
【0020】
図1に示すように、長尺筒状の流通経路1が備えられ、流通経路1には図中上から下に向けてエアロゾルが送られる(一方向にエアロゾルが流通する)。流通経路1の第1部位2には第1チャンバ3が備えられ、レーザー発振源としてのパルスレーザー発振器4からのレーザー光が、長手方向に交差する方向(直交方向)に第1チャンバ3に照射される。
【0021】
パルスレーザー発振器4は、高強度単一波長(Xnm:例えば、532nm)のパルスレーザーが光源とされてレーザー光が発振される。
【0022】
第1チャンバ3からの散乱光(同軸のレーザー光)は、ビームスプリッター5を介して、分光器を含む化学物性計測手段6、及び、マルチチャンネルアナライザを含む粒径計測手段7に分光される。化学物性計測手段6は、第1チャンバ3からの散乱光のシフト波長に基づいて化学物性(分子種)が計測され(ラマン分光)、エアロゾルの粒子種が特定される。特定された粒子種の情報(屈折率)は、フィードバック手段8を経由して粒径計測手段7に送られる。
【0023】
粒径計測手段7は、特定された粒子種の散乱光の強度が把握され、特定された粒子種の粒子径が計測される。化学物性計測手段6と粒径計測手段7とは同軸のレーザー光が入射されるので、同軸のレーザー光の一つの機器で未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を計測することが可能になる。特定された粒子種の粒子径の情報はフィードバック手段8を経由して制御手段20に送られ、制御手段20では、化学物性(分子種)及び粒子径が把握される。
【0024】
一方、エアロゾルの流通方向において第1部位2の下流側(
図1中下側)の第2部位11には第2チャンバ12が備えられ、第2レーザー発振源としての第2パルスレーザー発振器13からのレーザー光が、長手方向に交差する方向(直交方向)に第2チャンバ12に照射される。
【0025】
第2パルスレーザー発振器13は、高強度の短パルスレーザーが光源としてされてレーザー光が発振される。第2チャンバ12では照射部位がプラズマ化され、発生する原子線/イオン線が用いられて発光分光により元素組成の分析が行われる。
【0026】
即ち、第2チャンバ12で発生する原子線/イオン線の光が原子種計測手段14に送られる。原子種計測手段14では、プラズマ化された励起状態の原子やイオンが基底状態に戻る際の光の波長に基づいて原子種が検出される(レーザー誘起ブレークダウン分光法:LIBS)。
【0027】
原子種計測手段14では、検出対象の物理的状態に依存せず、固体、液体、ガスの分析が行われる。例えば、水に溶解した原子、元素が把握される。検出された原子種(イオン種:原子、元素)の情報は制御手段20に送られ、制御手段20では、粒子を構成する物質を構成する原子種(イオン種:原子、元素)が把握される。第2パルスレーザー発振器13の動作と原子種計測手段14での原子種の計測は、時間フィルター(ディレイ回路)15で調整される。
【0028】
図2に基づいて化学物性計測手段6(ラマン散乱)、及び、粒径計測手段7(ミー散乱)の系統を具体的に説明する。
【0029】
図2に示すように、パルスレーザー発振器4からのレーザー光が、モニタ手段21、光学調整手段22、ビームエキスパンダー23を介して第1チャンバ3に照射される。第1チャンバ3の散乱光は光学系24を介してビームスプリッター5に送られ、化学物性計測手段6、及び、粒径計測手段7に分光される。
【0030】
化学物性計測手段6に分光された光は、例えば、光ファイバを介して分子種特定手段25に送られる。分子種特定手段25は、パルスレーザー発振器4から出されたレーザー光の散乱光のシフト波長に基づいて化学物性を計測される。散乱光中の、パルスレーザー発振器4から出されたレーザー光の波長の成分(Xnm:例えば、532nm)の光がフィルター10で除去され、シフト波長に対応する散乱光のみが分子種特定手段25に入力される。
【0031】
後述する
図5の例の計測でシフト長の変化に基づき現れるピークを見て水の分子種が特定される。
【0032】
粒径計測手段7に分光された光は、測定レンジの異なる4つの光強度センサー26a、26b、26c、26dで散乱光の強度が計測される。例えば、光強度センサー26aは10μmから100μm(Ch4)の測定レンジ、光強度センサー26bは2.5μmから25μm(Ch3)の測定レンジ、光強度センサー26cは0.5μmから5.0μm(Ch2)の測定レンジ、光強度センサー26dは0.1μmから1.0μm(Ch1)の測定レンジで散乱光の強度が計測される。
【0033】
光強度センサー26a、26b、26c、26dの計測情報は、それぞれ、アンプ、ゲートを介して各チャンネルのフィルター手段27に送られ、ノイズが除去された状態でフィードバック手段8に送られる。計測する粒径の系統を複数に分けることで、広帯域での粒径分布を計測することができる(計測可能な濃度範囲を広くすることができる)。
【0034】
後述する
図4の例の散乱光強度の分布に基づき粒径の分布が計測される。
【0035】
シフト波長に基づいて化学物性を計測する散乱光(ラマン散乱)、強度を把握するための散乱光(ミー散乱)を分けてレーザー発振源に動作指令を与えるゲート手段(時間フィルター)30が備えられている。ゲート手段(時間フィルター)30により、化学物性計測手段6の計測光(ラマン散乱)と粒径計測手段7(ミー散乱)の時間的な偏差を把握してレーザー光(パルス光)を出すタイミング、及び、レーザー光の受光のタイミングが制御される。
【0036】
例えば、ラマン散乱が起きる時だけゲートを開き、パルスレーザー発振器4からのレーザー光(パルス光)の発振と計測を制御する。つまり、パルスレーザー発振器4からのレーザー光の発振と化学物性計測手段6の分子種特定手段25(分光器)への散乱光の入力とのタイミング、及び、レーザー光の受光のタイミングを同期させることができる。
【0037】
上述した構成により、必要な粒子(粒径を求めたい粒子)の粒径を計測することができる。例えば、固体の塩の成分(Na、Cl)を計測したい場合、霧(H、O:含む塩が溶解している水)が発生していても、霧(水)の成分を排除して固体の塩の成分だけを把握して固体の塩の成分の粒径を計測することができる。
【0038】
図3に基づいて原子種計測手段(LIBS)の系統を具体的に説明する。
【0039】
図3に示すように、第2パルスレーザー発振器13からのレーザー光が、光学調整手段31を介して第2チャンバ12に照射される。第2チャンバ12で発生する原子線/イオン線の光が原子種計測手段14の分光器32に送られ、原子種が検出される。分光器32で検出された原子種の情報は制御手段20に送られ、固体、液体、ガスの分析が行われて、例えば、水に溶解した原子、元素が把握される。
【0040】
即ち、化学物性計測手段6の計測光(ラマン散乱)では、水に溶解している水滴粒子は水として判定されることになる一方、原子種計測手段14の分光器32に送られた原子線/イオン線の光により、水に溶解した原子、元素も把握される。
【0041】
後述する
図6の例の波長で特定される原子・元素の信号強度により、原子、元素が判断される。
【0042】
第2パルスレーザー発振器13の動作、及び、分光器32での検出は、時間フィルター15で調整される。即ち、時間フィルター15により、単一のレーザー照射の信号と分光器32の計測に時間の遅れを生じさせ、プラズマの冷却が進みバックグラウンド光が減衰した後に、対象元素の発光を時間分解計測し、ノイズの除去を行っている。
【0043】
上述した構成により、水溶液中のエアロゾルの原子種(原子、元素)を判断することができる。つまり、必要な粒子(粒径を求めたい粒子)、及び、水溶液中の原子種(原子、元素)の粒径を計測することができる。
【0044】
例えば、固体の塩の成分(Na、Cl)を計測したい場合に、霧(H、O:含む塩が溶解している水)が発生していても、霧(水)に溶解している塩の成分(Na、Cl)を把握し、固体の塩の成分、溶解している塩の成分の有無を計測することができる。
【0045】
即ち、
図4に示したように、散乱光強度と信号カウント(粒子個数)の関係から、例えば、0.6μmまでの粒径信号の粒子個数、2.0μmまでの粒径信号の粒子個数が計測され、散乱光の分布に基づいて粒径の分布が計測される。つまり、粒径により表れる波長の信号強度のピークを計測することで、粒子の粒径が把握される。
【0046】
また、
図5に示したように、波長のシフト長(変化長)に基づき現れる水の波長の信号強度のピークを検出することにより、分子種である水が特定される。
【0047】
また、
図6に示したように、強度がピークとなる波長により特定される原子・元素であるNaの信号強度、Clの信号強度により水の微粒子に含まれる塩の原子種(Na、Cl)の存在を把握することができる。
【0048】
これにより、例えば、固体の塩の成分(Na、Cl)の粒径分布と、固体の塩の成分(Na、Cl)、液体中の塩の成分(Na、Cl)を対応させることができ、塩害に対する評価を1つの装置で適切に行うことができる。
【0049】
つまり、湿度や天気などの環境(気候)による乾燥状態の違いなどに係わらず、液体中の塩の成分(Na、Cl)を対応させて塩の成分(Na、Cl)を適切に評価することができる。
【0050】
尚、塩害の他に、大気中を浮遊するPM、ディーゼル粉塵、環境汚染物質、火山灰、花粉などの成分を適切に評価することができる。
【0051】
上述したエアロゾル計測装置は、未知のエアロゾルの化学物性及び粒径を同時に計測することができる。特に、水溶液中のエアロゾルの原子種(原子、元素)を含めて、必要な粒子(粒径を求めたい粒子)、及び、水溶液中の原子種(原子、元素)の粒径を計測することができる。
【0052】
本発明のエアロゾル計測装置は、化学組成の異なるエアロゾルが混在する環境から、目標とする化学組成のエアロゾルの粒径を抽出することが可能である。原子力発電所のエアロゾルの放出の評価では、大量に存在する水ミストと対象とするエアロゾルの粒径が同じ粒径を持つことから、従来法では、水ミストと対象とするエアロゾルを分別することは困難であった。
【0053】
本発明のエアロゾル計測装置は、ラマンスペクトルやLIBSスペクトルから、評価対象とするエアロゾルの粒径成分を抽出することが可能となっている。このため、本発明のエアロゾル計測装置を、原子力発電所のエアロゾルモニタ装置として使用することで、エアロゾルの粒径と組成を同時に計測することができ、高い精度での周辺区域の環境変化の評価が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、エアロゾルを計測するエアロゾル計測装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 流通経路
2 第1部位
3 第1チャンバ
4 パルスレーザー発振器
5 ビームスプリッター
6 化学物性計測手段
7 粒径計測手段
8 フィードバック手段
11 第2部位
12 第2チャンバ
13 第2パルスレーザー発振器
14 原子種計測手段
15 時間フィルター
20 制御手段
21 モニタ手段
22 光学調整手段
23 ビームエキスパンダー
24 光学系
25 分子種特定手段
26 光強度センサー
27 フィルター手段
30 ゲート手段(時間フィルター)
31 光学調整手段
32 分光器