(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183884
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】システムバランス変動及びその予兆の抽出方法、当該方法を用いた情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231221BHJP
G06F 17/18 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G05B23/02 302R
G05B23/02 301Q
G06F17/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097677
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】鍛冶 良作
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 匠
(72)【発明者】
【氏名】河合 洋明
(72)【発明者】
【氏名】大川 慶直
(72)【発明者】
【氏名】関 健一
(72)【発明者】
【氏名】土田 崇
(72)【発明者】
【氏名】泉 敬介
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄一
【テーマコード(参考)】
3C223
5B056
【Fターム(参考)】
3C223FF04
3C223FF09
3C223FF13
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH03
5B056BB66
(57)【要約】
【課題】貢献度積分を利用した項目選択の自動化によるシステムバランス変動及びその予兆の抽出方法、当該方法を用いた情報処理装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用いる情報処理装置であって、第1のステップとして、各日時のマハラノビス距離D
Mを算出し、第2のステップとして、各項目に係る貢献度を算出し、第4のステップとして、各項目の貢献度を積分し、第4のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図等を表示し、第5のステップとして、項目数Nが3より大きい場合、あるいはユーザから命令の入力を受け付けると、前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後に残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第5のステップを再実行する制御手段11を有する構成とした。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法において、
システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出するステップと、
算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出するステップと、
算出された各項目に係る前記貢献度を、所定の日時にわたって夫々積分するステップを有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法において、
システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出する第1のステップと、
算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出する第2のステップと、
算出された各項目の貢献度を所定の日時にわたって積分する第3のステップと、
マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示する第4のステップと、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザが前記表示されている内容を良しとしなければ、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後に残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから第5のステップを再実行する第5のステップを有することを特徴とする、方法。
【請求項3】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法において、
システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出する第1のステップと、
算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出する第2のステップと、
各日時について、前記項目すべての貢献度を合算する第3のステップと、
各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時に係る、各項目の貢献度を積分する第4のステップと、
マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示する第5のステップと、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザが前記表示されている内容を良しとしなければ、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後に残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから第6のステップを再実行する第6のステップを有することを特徴とする、方法。
【請求項4】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法において、
システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い項目について、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除する第1のステップと、
削除後に残されたL=N-M項目を使用して、各日時のマハラノビス距離DMを算出する第2のステップと、
算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出する第3のステップと、
各日時について、前記項目すべての貢献度を合算する第4のステップと、
各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時に係る、各項目の貢献度を積分する第5のステップと、
マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示する第6のステップと、
項目数である前記Lが3より大きい場合、あるいはユーザが前記表示されている内容を良しとしなければ、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除し、削除後に残されたL-1項目を削除後に残された前記L項目の代わりに用いて、前記第2のステップから第7のステップを再実行する第7のステップを有することを特徴とする、方法。
【請求項5】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用いる情報処理装置であって、
当該情報処理装置は、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出し、
第2のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出し、
第3のステップとして、所定の日時にわたって各項目の貢献度を積分し、
第4のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示し、
第5のステップとして、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後に残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第5のステップを再実行する制御手段を有することを特徴とする、情報処理装置。
【請求項6】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用い、制御手段を有する情報処理装置を動作させるプログラムであって、
当該プログラムは、前記情報処理装置の前記制御手段に、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出させ、
第2のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出させ、
第3のステップとして、所定の日時にわたって各項目の貢献度を積分させ、
第4のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示させ、
第5のステップとして、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除させ、削除後に残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第5のステップを再実行させることを特徴とする、プログラム。
【請求項7】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用いる情報処理装置であって、
当該情報処理装置は、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出し、
第2のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出し、
第3のステップとして、各日時について、前記各項目すべての貢献度を合算し、
第4のステップとして、各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって、各項目の貢献度を積分し、
第5のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示し、
第6のステップとして、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除し、残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第6のステップを再実行する制御手段を有することを特徴とする、情報処理装置。
【請求項8】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用い、制御手段を有する情報処理装置を動作させるプログラムであって、
当該プログラムは、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出させ、
第2のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出させ、
第3のステップとして、各日時について、前記各項目すべての貢献度を合算させ、
第4のステップとして、各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって、各項目の貢献度を積分させ、
第5のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示させ、
第6のステップとして、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除させ、削除後に残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第6のステップを再実行させることを特徴とする、プログラム。
【請求項9】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用いる情報処理装置であって、
当該情報処理装置は、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い項目について、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除してL=N-M項目とし、
第2のステップとして、削除後に残されたL項目の時系列データを使用して、各日時のマハラノビス距離DMを算出し、
第3のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出し、
第4のステップとして、各日時について、前記各項目すべての貢献度を合算し、
第5のステップとして、各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって、各項目の貢献度を積分し、
第6のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示し、
第7のステップとして、
項目数である前記Lが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除し、削除後に残されたL-1項目を削除後に残された前記L項目の代わりに用いて、前記第2のステップから前記第7のステップを再実行する制御手段を有することを特徴とする、情報処理装置。
【請求項10】
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用い、制御手段を有する情報処理装置を動作させるプログラムであって、
当該プログラムは、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い項目について、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除させ、L=N-M項目とさせ、
第2のステップとして、削除後に残されたL項目を使用して、各日時のマハラノビス距離DMを算出させ、
第3のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出させ、
第4のステップとして、各日時について、前記各項目すべての貢献度を合算させ、
第5のステップとして、各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって、各項目の貢献度を積分させ、
第6のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示させ、
第7のステップとして、
項目数である前記Lが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除させ、削除後に残されたL-1項目を削除後に残された前記L項目の代わりに用いて、前記第2のステップから前記第7のステップ再実行させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の変数の相関性を考慮した距離「マハラノビス距離」を用いて、対象の正常状態と異常状態を判別する多変量解析手法「MT法」を使用する、システムバランス変動及びその予兆の抽出方法、当該方法を用いた情報処理装置及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の変数の相関性を考慮した距離「マハラノビス距離」を用いて、対象の正常状態と異常状態を判別する多変量解析手法「MT法」においては、まず、基準空間データの各項目間の相関係数に係る相関係数行列を作成して、前記基準空間の相関係数行列の逆行列を使って、対象空間に係るマハラノビス距離DMを算出する。それにより、基準空間に対する対象空間の状態変化を把握する。
【0003】
なお、実数データを使用したマハラノビス距離DMの算出方法については、例えば、技術文献「試して究める!品質工学MTシステム解析法入門」(日刊工業新聞社、2012年5月30日初版発行)、複素数データを使用したマハラノビス距離DMの算出方法については、例えば、特許文献「複数の変数を有するシステムの状態解析診断方法、及び当該方法を用いた情報処理装置」(特願2020-045873)の発行等に基づき、既知であるため、ここでは説明を割愛する。
【0004】
近年、このマハラノビス距離DMを用いて監視対象物の異常の有無を判定する方法や装置が多数開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、基板(ウェハ)が格納される格納容器であるポッドから、基板保持具であるボートへ基板を移載する基板移載機や基板移載機上の基板と、基板保持具や基板保持具上の基板とが互いに接触したことを、マハラノビス距離DMを用いて、高精度に検出することで、故障状態の前の軽微な異常を検出することができる基板処理装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、生産設備の状態を示す複数の項目からなる項目群に基づいてマハラノビス距離DMを算出し、このマハラノビス距離DMとしきい値とを比較して生産設備の異常の有無を判定し、生産設備の状態を示す項目が多数ある場合であっても、生産設備の診断を容易に行うことができる生産設備異常診断システムの構成が開示されている。
【0007】
また、特許文献3では、起動運転期間、定格速度運転期間と、運転状態が異なるそれぞれにおいて、対応する期間内で取得した状態量に基づき異なる単位空間を作成し、マハラノビス距離DMを算出する際に、また、求めたマハラノビス距離DMに基づいてプラントが正常であるか否かを判定する際に、評価時における期間が起動運転期間か定格速度運転期間かによって二つの単位空間のいずれかを選択し、マハラノビス距離DMを求め、正常か異常かを判定するプラントの状態を監視する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
これら特許文献1~3はいずれも、基準空間を適切に設定するための「時間軸の工夫」を示したものであり、設備・システムの正常/異常の診断を実現している。
【0012】
一方で、近年、正常/異常の判定に係る分析方法では、その判断経緯・根拠がブラックボックス化されている場合が多く、判断経緯・根拠の透明化が求められている状況にある。これは説明可能性が担保された人工知能(Explainable AI:XAI)とも呼ばれている。MT法では、マハラノビス距離DMとしきい値を比較する等して、異常や事故が検出された際に、どの項目の影響が強いのか、どの項目がマハラノビス距離DMの増大に寄与しているのかを示す「貢献度」という概念があり、この「貢献度」を用いて、正常/異常の判断経緯・根拠の透明化が期待されている。この「貢献度」については、前述の技術文献「試して究める!品質工学 MTシステム解析法入門、p171、9~11行目」にあるように、以下の手順で算出される。
【0013】
システムから得られるN項目全てでマハラノビス距離DMを求める。次に、一つ項目を抜いて、N-1項目でマハラノビス距離DMを求める。そして、「N項目全てで算出されるマハラノビス距離DM」と「一つ項目を抜いた、N-1項目に係るマハラノビス距離DM」の差分を算出する。この差分が、当該項目(抜いた一つの項目)に係るマハラノビス距離DMへの「貢献度」となる。これらの手順を各項目について行うことで、各項目に係るマハラノビス距離DMへの「貢献度」が算出される。以降で「貢献度」と表現する時は、「マハラノビス距離DMへの貢献度」を示すものとする。
【0014】
従来から、専門家等のユーザは、この「貢献度」を用いて、事故や異常を分析し、事故や異常の要因を把握しようと努めていた。
【0015】
図10に示すように、各日時の各項目に係る貢献度を積み上げて表示した貢献度スタック図を作成する。この貢献度スタック図の縦軸は、貢献度の値であり、横軸は、日時である。異常や事故が発生している日時は、他の日時と比べて、貢献度スタックが高くなるため、異常や事故が発生している日時を特定できる。PC等の情報処理装置のディスプレイ上に表示された貢献度スタック図は、注目日時(図では、5月1日18:00)のスタックに、カーソルを合わせると、円グラフが表示される。専門家等のユーザは、この円グラフから、当該日時の貢献度の比率(内訳)を把握することができる。そのため、ユーザは、カーソルをずらして連続的に見ていくことで、日時毎の貢献度の比率の推移を把握していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上述した要因分析行うための貢献度スタックを得るためには、適切な項目を選出した基準空間を作成する必要があり、相当な熟練と経験を積んだユーザでさえも試行錯誤を必要とし、正解と判断するまで項目選択をやり直す必要があった。この過程で幾通りものMT分析結果を相互に比較する必要があるが、すべての上述した円グラフの時系列変化を記憶に留めておくことは困難で、作業の長期化、あるいはMT法の使用を断念する事が避けられなかった。
【0017】
こうした状況下では、前述の技術文献「試して究める!品質工学 MTシステム解析法入門」の事例のように、貢献度分析の結果をマハラノビス距離DMの値の高い部分に利用することが重点的に取り上げられ、マハラノビス距離DMの値が小さくて拡大しない限りは確認不可能である期間については、貢献度の推移を利用しようという発想そのものが稀であり、異常に至る経緯を記述するために貢献度の推移を系統的に利用する方法論が無かった。
【0018】
まとめると、現状では試行錯誤的/経験者依存的な項目選択による基準空間の決定が分析作業の長期化の原因となっている。そして、マハラノビス距離の値が小さな期間を積極利用する方法論が整っておらず、システムの異常予兆、システムバランス変動等を見逃していて、異常に至る経緯がブラックボックス化した状態になっている。
【0019】
そこでこの発明は、上記問題点に対処するため、貢献度積分を利用した項目選択の自動化によるシステムバランス変動及びその予兆の抽出方法、当該方法を用いた情報処理装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法において、
システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出するステップと、
算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出するステップと、
算出された各項目に係る前記貢献度を、所定の日時にわたって夫々積分するステップを有する、方法とした。
【0021】
また、請求項2に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法において、
システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出する第1のステップと、
算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出する第2のステップと、
算出された各項目の貢献度を所定の日時にわたって積分する第3のステップと、
マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示する第4のステップと、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザが前記表示されている内容を良しとしなければ、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、
削除後に残されたN-1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから第5のステップを再実行する第5のステップを有する、方法とした。
【0022】
また、請求項3に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法において、
システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出する第1のステップと、
算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出する第2のステップと、
各日時について、前記項目すべての貢献度を合算する第3のステップと、
各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時に係る、各項目の貢献度を積分する第4のステップと、
マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示する第5のステップと、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザが前記表示されている内容を良しとしなければ、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、
削除後に残されたN-1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから第6のステップを再実行する第6のステップを有する、方法とした。
【0023】
また、請求項4に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法において、
システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い項目について、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除する第1のステップと、
削除後に残されたL=N-M項目を使用して、各日時のマハラノビス距離DMを算出する第2のステップと、
算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出する第3のステップと、
各日時について、前記項目すべての貢献度を合算する第4のステップと、
各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時に係る、各項目の貢献度を積分する第5のステップと、
マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示する第6のステップと、
項目数である前記Lが3より大きい場合、あるいはユーザが前記表示されている内容を良しとしなければ、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除し、
削除後に残されたL-1項目を削除後に残された前記L項目の代わりに用いて、前記第2のステップから第7のステップを再実行する第7のステップを有する、方法とした。
【0024】
また、請求項5に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用いる情報処理装置であって、
当該情報処理装置は、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出し、
第2のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出し、
第3のステップとして、所定の日時にわたって各項目の貢献度を積分し、
第4のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示し、
第5のステップとして、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後に残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第5のステップを再実行する制御手段を有する、情報処理装置とした。
【0025】
また、請求項6に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用い、制御手段を有する情報処理装置を動作させるプログラムであって、
当該プログラムは、前記情報処理装置の前記制御手段に、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出させ、
第2のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出させ、
第3のステップとして、所定の日時にわたって各項目の貢献度を積分させ、
第4のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示させ、
第5のステップとして、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除させ、削除後に残されたN―1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第5のステップを再実行させる、プログラムとした。
【0026】
また、請求項7に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用いる情報処理装置であって、
当該情報処理装置は、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出し、
第2のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出し、
第3のステップとして、各日時について、前記各項目すべての貢献度を合算し、
第4のステップとして、各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって、各項目の貢献度を積分し、
第5のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示し、
第6のステップとして、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除し、残されたN-1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第6のステップを再実行する制御手段を有する、情報処理装置とした。
【0027】
また、請求項8に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用い、制御手段を有する情報処理装置を動作させるプログラムであって、
当該プログラムは、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出させ、
第2のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出させ、
第3のステップとして、各日時について、前記各項目すべての貢献度を合算させ、
第4のステップとして、各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって、各項目の貢献度を積分させ、
第5のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示させ、
第6のステップとして、
項目数である前記Nが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除させ、削除後に残されたN-1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、前記第1のステップから前記第6のステップを再実行させる、プログラムとした。
【0028】
また、請求項9に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用いる情報処理装置であって、
当該情報処理装置は、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い項目について、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除してL=N-M項目とし、
第2のステップとして、削除後に残されたL項目の時系列データを使用して、各日時のマハラノビス距離DMを算出し、
第3のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出し、
第4のステップとして、各日時について、前記各項目すべての貢献度を合算し、
第5のステップとして、各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって、各項目の貢献度を積分し、
第6のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示し、
第7のステップとして、
項目数である前記Lが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除し、削除後に残されたL-1項目を削除後に残された前記L項目の代わりに用いて、前記第2のステップから前記第7のステップを再実行する制御手段を有する、情報処理装置とした。
【0029】
また、請求項10に係る発明は、
システムバランスの変動及びその予兆を抽出する方法に用い、制御手段を有する情報処理装置を動作させるプログラムであって、
当該プログラムは、
第1のステップとして、システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い項目について、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除させ、L=N-M項目とさせ、
第2のステップとして、削除後に残されたL項目を使用して、各日時のマハラノビス距離DMを算出させ、
第3のステップとして、算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、前記各項目に係る貢献度を算出させ、
第4のステップとして、各日時について、前記各項目すべての貢献度を合算させ、
第5のステップとして、各日時についての貢献度合算値のうち、所定の値より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって、各項目の貢献度を積分させ、
第6のステップとして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、同10割図、予兆項目抽出図、同10割図のうち少なくとも2つ以上の図、各項目の時系列データ、貢献度の時系列データを並べて表示させ、
第7のステップとして、
項目数である前記Lが3より大きい場合、あるいはユーザから最小の積分値に係る項目を削除する旨の命令の入力を受け付けると、
前記各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除させ、削除後に残されたL-1項目を削除後に残された前記L項目の代わりに用いて、前記第2のステップから前記第7のステップ再実行させる、プログラムとした。
【発明の効果】
【0030】
この発明では、計算で求められた対象空間の貢献度を注目する日時に関して積分した結果から、システム異常に関係の薄い項目を特定・除外して残された項目にて新たに基準空間を構成し、その基準空間を用いて新たに対象空間の貢献度を計算するという過程を繰り返し、項目数を絞り込んで適切な基準空間を構成し、システムバランスの変動及びその予兆を視認可能にする方法を提案している。
【0031】
その結果、ユーザは、貢献度を、システムバランスの変動の把握、システムの事故や異常の要因分析、システムの事故や異常の予兆分析等に役立てることができる。これは貢献度による状態の可視化が、判断経緯・根拠の透明化を示していることから明らかなように、説明可能性が担保された人工知能(Explainable AI:XAI)としての機能を実現できていることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】上から順に、マハラノビス距離、システムから得られる各項目の時系列データを示した図である。
【
図2】上から順に、貢献度スタック、マハラノビス距離、各項目の貢献度を示した図である。
【
図3】項目数、項目名、貢献度スタック、その10割表示、予兆項目抽出図、その10割表示を一行とし、以下項目数を一つずつ減じて再計算した結果を示した図である。項目の除外方法は、貢献度積分最小値の項目を除外する方式による。
【
図4】項目数、項目名、貢献度スタック、その10割表示、予兆項目抽出図、その10割表示を一行とし、以下項目数を一つずつ減じて再計算した結果を示した図である。項目の除外方法は、貢献度合算値30以下の日時についての貢献度積分最小値の項目を除外する方式による。
【
図5】項目数、項目名、貢献度スタック、その10割表示、予兆項目抽出図、その10割表示を一行とし、以下項目数を一つずつ減じて再計算した結果を示した図である。項目の除外方法は、一回目は二重共線性のある項目を削除する方式(図中二段目)、二回目以降は、貢献度合算値30以下の日時についての貢献度積分最小値の項目を除外する方式による(図中三段目以降)。
【
図6】左側半分は、上から順に予兆項目抽出図、その10割表示図、項目の色、貢献度スタック10割図、貢献度スタックで振幅が10までの図、マハラノビス距離で振幅が10までの図、七段目以降はシステムから得られる時系列データを貢献度積分値の大きい順に六つだけ列挙した図であり、右側半分は上から六段までは左側と同じで、七段目以降は貢献度積分値の大きい順に左側で示されている項目に対応する項目の貢献度を列挙したものである。
【
図8】予兆項目抽出図とその10割表示図を例示した図である。
【
図9】この発明の方法を実現するための情報処理装置の概略図である。
【
図10】各マハラノビス距離に対する各項目の貢献度を積み上げて、時系列で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<実施の形態例1>
以下、添付図面を参照してこの発明に係る実施の形態例を詳細に説明する。ただし、この実施の形態例に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、後述する
図1~
図5ではマハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、各項目の貢献度の日時変化図が描画されているが、説明の便宜上、最大値を適宜適切な値で区切って示しており、必ずしも最大値が示されているわけではない。各項目の生データに関しては最大値、最小値が含まれるように描画されている。
【0034】
<マハラノビス距離DMの算出>
複数の変数の相関性を考慮した距離「マハラノビス距離」を用いて、対象の正常状態と異常状態を判別する多変量解析手法「MT法」においては、まず、基準空間データの各項目間の相関係数に係る相関係数行列を作成して、前記基準空間の「相関係数行列の逆行列」を使って、対象空間に係るマハラノビス距離DMを算出する。それにより、基準空間に対する対象空間の状態変化を把握する。
【0035】
なお、実数データを使用したマハラノビス距離DMの算出方法については、例えば、技術文献「試して究める!品質工学 MTシステム解析法入門」(日刊工業新聞社、2012年5月30日初版発行)、複素数データを使用したマハラノビス距離DMの算出方法については、例えば、特許文献「複数の変数を有するシステムの状態解析診断方法、及び当該方法を用いた情報処理装置」(特願2020-045873)の発行等に基づき、既知であるため、ここでは説明を割愛する。
【0036】
MT法が適切に効果を発揮するためには、「基準空間の設定」(=捉えたい事故や異常の予兆に対して、如何に普通の状態のデータを選別するか)が肝要である。なお、基準空間の設定には、対象とするデータの期間(時間軸)とデータ項目(計測・取得している各種のデータの項目)を選定する必要がある。
【0037】
<各項目の貢献度の算出>
マハラノビス距離DMは基準空間が適切に選定された時、その大きさが異常度を表すようになる。この時、どの項目がDMに寄与するかを表す指標として貢献度が使用される。貢献度の算出方法は以下となる。
【0038】
システムから得られるN項目の時系列データを使用してマハラノビス距離DMを求める。次に、一つの項目を抜いて、N-1項目でマハラノビス距離DMを求める。そして、「N項目で算出したマハラノビス距離DM」と「一つの項目を抜いた、N-1項目に係るマハラノビス距離DM」の差分を算出する。この差分が、当該項目(抜いた一つの項目)に係る「貢献度」となる。これらの手順を各項目について行うことで、各項目に係る「貢献度」が算出される。
【0039】
なお、「N」は、特定の数を示したものではなく、マハラノビス距離DMを算出するために使用した項目の数を示している。
【0040】
<システムバランスの変動及びその予兆の抽出1>
(ステップ1-1)
システムから得られるN項目の時系列データ(基準空間作成用の期間1)を使用して各日時(対象空間の期間2:期間1と同じでも異なっていても良い)のマハラノビス距離DMを算出する。算出された前記各日時(即ち期間2)のマハラノビス距離DMについて、各項目に係る貢献度を算出する。前記各日時について、N項目すべての貢献度を合算する。前記各日時について、各項目の貢献度を前記貢献度合算値で除して、各項目に係る貢献度の割合を算出する。
【0041】
図1で上記ステップ1-1の前半の手順(=マハラノビス距離D
Mの算出)を説明する。同図上から2番目の以降は順にN=39項目の時系列データをそれぞれ示している。ここに横軸は日時である。これら39項目の時系列データの先頭(=左端)から4日間で基準空間を構成する(詳しくは段落[0035]の技術文献、特許文献参照のこと)。この基準空間を用いて対象空間の各日時のマハラノビス距離を算出した結果が同
図1番上の「MD値max300」と記された図である。同図では手順が矢印にて示されている。
【0042】
図2で上記ステップ1-1の後半の手順(=各項目に係る貢献度を算出)を説明する。同図上から2番目の図は
図1で求められたマハラノビス距離(MD値)と同じものである。同図上から3番目以降の図は、このMD値から各項目の貢献度を求めたものである。同
図1番上の「スタックmax300」は、これら各項目の貢献度をスタック(積み上げて表示)したものである。同図では手順が矢印にて示されている。
【0043】
(ステップ1-2)
ステップ1-1で求められた各項目に係る貢献度を、所定の日時にわたって夫々積分する。そして、各項目に係る積分値をソーティングして積分値の大きな順に対応する項目のリストを作成する。
【0044】
(ステップ1-3)
そして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタックの日時変化図、その10割表示図、予兆項目抽出図、その10割表示図(詳細は後述する)等の各種図面を作成する。
【0045】
作成したこれらの図を、例えば
図6及び
図7のように、一段目に予兆項目抽出図、二段目にその10割表示図、三段目に項目の色、四段目に貢献度スタック10割表示図、五段目に貢献度スタック、六段目にマハラノビス距離の日時変化図、七段目以降に各項目の貢献度積分値を降順にソーティングした項目リストに対応する生データ(左側)と貢献度(右側)を並べて表示する。ただし、この表示の構成に限定されるものではなく、一段目から六段目はユーザの分析終了判断に必要な図面に絞り込んでもよい。さらに、ステップ1-1から1-3を繰り返した回数分だけ、前記各種図面を例えば
図3のように項目数に対応させて並べて表示し、項目を絞り込むことでどの程度視認性が向上したかを確認するために利用する。当然のことながら本図は最初に一段しかなく、ステップ1-1から1-3の繰り返しが行われる毎に一段ずつ増えてゆく、という性質をもつ。
【0046】
(ステップ1-4)
分析終了の判定は大別して2種類ある。
<判定種1:人による判定>
前記各種図面を参考にしてシステムバランスの変動及びその予兆が視認可能な状態であれば、あるいはユーザが分析を止めたい状態であれば、分析を終了する。
<判定種2:自動判定>
あるいは、視認による終了判定の代わりに、貢献度や貢献度積分値等や項目数を直接、もしくは間接的に利用して終了判定を行っても良い。例えば、項目数が次のステップで3(貢献度分析の必要最小の数)より小さくなることを終了判定の条件としても良い。この場合にはユーザの判断は不要なのでステップ1-3の表示は都度行う必要はなく、解析が全て終了した後にまとめて表示して、貢献度パターンの項目数依存性分析に活用する。
【0047】
図1、2では、ステップ1-2の手順で求められた貢献度積分値の降順のソーティング順に、項目を並べ替えて表示している。本図からわかるように、最大の積分値を持つ項目から順に、缶水pH、軸移動量、木質チップ供給量・・・と並んでおり、最小値は空気流量(一次)となっている。次のステップ1-5で貢献度積分値が最小である空気流量(一次)を削除する。
【0048】
(ステップ1-5)
終了の条件に該当しない場合、ステップ1-2で求められた最小の積分値に係る項目を削除する。削除後に残されたN-1項目をステップ1-1の「システムから得られるN項目」の代わりに用いて、ステップ1-1から1-5までを再実行する。つまり、例えば39項目で実行したステップ1-1からステップ1-5のプロセスを38(=39-1)項目で再実行するということである。そして、終了の条件(項目数N≦3)に該当するまで、ステップ1-1からステップ1-5のプロセスを、37項目、36項目、35項目・・・と削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、再実行する(ループする)。即ち、これは、終了の条件に合致するまで、ステップ1―5の中で、ステップ1-1からステップ1-5までのプロセスを呼び出し、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、ステップ1-1からステップ1-5までのプロセスを繰り返し実行する、いわゆる「再帰呼び出し」である。
【0049】
なお、この削除する項目の数は1としているが、適宜調整して任意の個数Kを削除してもよい。その場合はN-K項目をN項目に置き換えて同様のプロセスを実行する。この時、再帰呼び出し終了の条件は、N-Kが3より小さい場合プロセスを終了する、としなければならない。何故ならば、貢献度は項目数が3より小さいと算出できないからである。
【0050】
また、この削除する項目種の決定については、前記ソーティングの結果から自動的に最小のものを選ぶ代わりに、ベテラン技術者の経験・勘に基づき、積分結果に加えて貢献度推移の図などから判断して削除する一項目以上のK項目を選んでも良い。その場合はN-K項目をN項目に置き換えて同様のプロセスを実行する。この時、再帰呼び出し終了の条件は、N-Kが3より小さい場合プロセスを終了する、としなければならない。何故ならば、貢献度は項目数が3より小さいと算出できないからである。
【0051】
図3はステップ1-1から1-5までを複数回繰り返し、項目数を減じて再分析した結果を並べたものである。本図は項目削除の妥当性をチェックするために使用される。例えば、ある項目を削除した時、異常時のピークが消えるなどの矛盾が確認されれば、その項目を削除することは当該異常抽出には不適切であるなどの判断を行う。
【0052】
このように、貢献度を積分し、最小の積分値に係る項目を削除して再分析する過程を繰り返すことで、例えば人間の能力では見分けることが不可能な項目の数から、視認できる程度にまで項目数を自動的に減じることが可能になる。その結果、貢献度の推移を把握することができるようになる。
【0053】
図3は上述の項目数を減じる様子を示したものである。上から順に39項目から1項目ずつ削除して30項目まで減じた時の前記各種図面を示している。本図からわかるように、項目をある程度(この場合30)まで削除していくと、貢献度max400の最下段の図の右端(赤丸)の日時のピークが消失して、異常時に貢献度が低くなって見えるようになり、異常に寄与する項目(予兆項目抽出図から缶水導電率とわかる)を監視必須の項目から除外してしまうという恐れがある。そこで次のアプローチでこれを克服する。
【0054】
なお、ステップ1-2で言及した「所定の日時」とは、例えば対象空間全域の日時でも良いし、マハラノビス距離の計算結果から所望のしきい値より低い値の日時でも良い。前者はマハラノビス距離が大きな日時へ影響をもつ項目がソーティング上位に浮上し、後者はマハラノビス距離が小さな日時へ影響をもつ項目がソーティング上位に浮上するという特徴を有する。
図3の例での所定の日時が対象空間全域であったため、上記問題(=異常に寄与する項目を監視必須の項目から除外してしまう)が発生した。以下では所定の日時を自動的に選択して必須項目を温存するアプローチを紹介する。
【0055】
<システムバランスの変動及びその予兆の抽出2>
(ステップ2-1)
システムから得られるN項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出する。算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、各項目に係る貢献度を算出する。前記各日時について、N項目すべての貢献度を合算する。前記各日時について、各項目の貢献度を前記貢献度合算値で除して、各項目に係る貢献度の割合を算出する。
【0056】
(ステップ2-2)
そして、前記各日時に係る貢献度合算値(貢献度スタック)のうち、所定の値1より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって各項目の貢献度を積分する。そして、各項目に係る貢献度積分値をソーティングして積分値の大きな順に対応する項目のリストを作成する。
【0057】
(ステップ2-3)
そして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタックの日時変化図、その10割表示図、予兆項目抽出図、その10割表示図(詳細は後述)を作成する。これらを例えば、
図6及び
図7を用いて、段落[0045]で上記したステップ1-3の場合と同様に前記各種図面を配置して表示する。さらに、ステップ2-1から2-3を繰り返した回数分だけ、前記各種図面を例えば
図3のように項目数に対応させて並べて表示し、項目を絞り込むことでどの程度視認性が向上したかを確認するために利用する。当然のことながら本図は最初に一段しかなく、ステップ2-1から2-3の繰り返しが行われる毎に一段ずつ増えてゆく、というものである。
【0058】
(ステップ2-4)
分析終了の判定は大別して2種類ある。
<判定種1:人による判定>
前記各種図面を参考にしてシステムバランスの変動及びその予兆が視認可能な状態であれば、あるいはユーザが分析を止めたい状態であれば、前記各種図面を並べて表示し、分析を終了する。
<判定種2:自動判定>
あるいは、視認による終了判定の代わりに、貢献度や貢献度積分値や項目数を直接、あるいは間接的に利用して終了判定を行っても良い。例えば、次のステップの項目数が3(貢献度分析の必要最小の数)より小さくなることを終了判定の条件としても良い。この場合にはユーザの判断は不要なのでステップ2-3の表示は都度行う必要はなく、解析が全て終了した後にまとめて貢献度パターンの項目数依存性分析に活用する。
【0059】
(ステップ2-5)
終了の条件に該当しない場合、ステップ2-2で求められた最小の積分値に係る項目を削除する。削除後に残されたN-1項目をステップ2-1の「システムから得られるN項目」の代わりに用いて、ステップ2-1から2-5までを再実行する。そして、終了の条件(項目数N≦3)に該当するまで、ステップ2-1からステップ2-5のプロセスを、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、再実行する(ループする)。即ち、これは、終了の条件に合致するまで、ステップ2―5の中で、ステップ2-1からステップ2-5までのプロセスを呼び出し、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、ステップ2-1からステップ2-5までのプロセスを繰り返し実行する、いわゆる「再帰呼び出し」である。
【0060】
なお、この削除する項目の数は1としているが、適宜調整して任意の個数Kを削除してもよい。その場合はN-K項目をN項目に置き換えて同様のプロセスを実行する。この時、再帰呼び出し終了の条件は、N-Kが3より小さい場合プロセスを終了する、としなければならない。何故ならば、貢献度は項目数が3より小さいと算出できないからである。
【0061】
また、この削除する項目種の決定については、前記ソーティングの結果から自動的に最小のものを選ぶ代わりに、ベテラン技術者の経験・勘に基づき、積分結果に加えて貢献度推移の図などから判断して削除する一項目以上のK項目を選んでも良い。その場合はN-K項目をN項目に置き換えて同様のプロセスを実行する。この時、再帰呼び出し終了の条件は、N-Kが3より小さい場合プロセスを終了する、としなければならない。何故ならば、貢献度は項目数が3より小さいと算出できないからである。
【0062】
図4はステップ2―1から2-5の手順を繰り返し行い、項目残数が3になるまでの項目数に対する前記各種図面を示している。
【0063】
図4の例では前記ステップ2-2の所定の値1が、30である事例であり、項目数が3になるまで、「項目の削除→マハラノビス距離の算出→貢献度の算出→積分→前記各種図面作成」の手順を繰り返し行っている。
図4の貢献度max300の最終時間にかけての急激な上昇に注目すると、貢献度スタックの高さが最後まで温存されていることがわかる。上記抽出1の手法では30項目で削除されてしまった異常に関連する項目(缶水導電率)が温存されていることを示している。
【0064】
ここで注意したいことは、項目を絞り込んだ最後に残った項目のうち2つが、ほとんど同じ貢献度比率を持っていることである。
図4中の予兆項目抽出図に係る箇所で示したように、これは二重共線性が強いデータが含まれた場合に現れる特徴で、他の項目に比べて共線性の強いデータの貢献度が過大評価されてしまうという特徴がある。要するに、貢献度が大きく評価されるべき他の項目が、これら二重共線性のあるデータの項目よりも貢献度積分値が過小評価されて、早く削除されてしまう恐れがあるということである。そこで、これを克服するアプローチを次に紹介する。
【0065】
なお、本実施の形態例1では、貢献度合算値のしきい値である所定の値1として、「30」を用いる構成を示したが、この構成に限定されるものではない。貢献度を算出する対象によっては、所定の値1は、変動する。すなわち所定の値1は、貢献度合算値として明らかに異常な値の下限を示す値である。
【0066】
<システムバランスの変動及びその予兆の抽出3>
(ステップ3-1)
システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い項目について、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除する。ここで、相関係数が1に近い項目を削除するのは、多重共線性(マルチコリニアリティ)を排除するためである。なお、「1に近い」とは、項目間の相関係数が高く、それらの項目が併存していることによってマハラノビス距離DMや貢献度の算出に影響を与えることを指す。ここでシステムから得られるデータは(N-M)項目となるが、これを改めてL項目とする。
【0067】
ただし、一つだけ残す選択方法はM+1種類の組み合わせがあり、必要な場合には、これから説明するステップ全てを、M+1回行ってもよい。たいていは興味ある項目を数種選んで以下のステップを実行する。
【0068】
(ステップ3-2)
システムから得られるL項目の時系列データを使用して各日時のマハラノビス距離DMを算出する。算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、各項目に係る貢献度を算出する。各日時について、L項目すべての貢献度を合算する。各日時について、各項目の貢献度を前記貢献度合算値で除して、各項目に係る貢献度の割合を算出する。
【0069】
(ステップ3-3)
そして、前記各日時に係る貢献度合算値(貢献度スタック)のうち、所定の値1より小さい貢献度合算値を持つ日時にわたって各項目の貢献度を積分する。そして、各項目に係る貢献度積分値をソーティングして積分値の大きな順に対応する項目のリストを作成する。
【0070】
(ステップ3-4)
そして、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタックの日時変化図、その10割表示図、予兆項目抽出図、その10割表示図(詳細は後述)を作成する。これらを例えば、
図6及び
図7を用いて、段落[0045]で上記したステップ1-3の場合と同様に前記各種図面を配置して表示する。さらに、ステップ3-2から3-4を繰り返した回数分だけ、前記各種図面を例えば
図3のように項目数に対応させて並べて表示し、項目を絞り込むことでどの程度視認性が向上したかを確認するために利用する。当然のことながら本図は最初に一段しかなく、繰り返しがある毎に一段ずつ増えてゆく、というものである。
【0071】
(ステップ3-5)
分析終了の判定は大別して2種類ある。
<判定種1:人による判定>
前記各種図面を参考にしてシステムバランスの変動及びその予兆が視認可能な状態であれば、あるいはユーザが分析を止めたい状態であれば、前記各種図面を並べて表示し、分析を終了する。
<判定種2:自動判定>
あるいは、視認による終了判定の代わりに、貢献度や貢献度積分値や項目数を直接、あるいは間接的に利用して終了判定を行っても良い。例えば、次のステップの項目数が3(貢献度分析の必要最小の数)より小さくなることを終了判定の条件としても良い。この場合にはユーザの判断は不要なのでステップ3-4の表示は都度行う必要はなく、解析が全て終了した後にまとめて貢献度パターンの項目数依存性分析に活用する。
【0072】
(ステップ3-6)
終了の条件に該当しない場合、ステップ3-3で求められた最小の積分値に係る項目を削除する。削除後に残されたL-1項目をステップ3-2の「システムから得られるL項目」の代わりに用いて、ステップ3-2から3-6までを再実行する。そして、終了の条件(項目数L≦3)に該当するまで、ステップ3-2からステップ3-6のプロセスを、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、再実行する(ループする)。即ち、これは、終了の条件に合致するまで、ステップ3―6の中で、ステップ3-2からステップ3-6までのプロセスを呼び出し、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、ステップ3-2からステップ3-6までのプロセスを繰り返し実行する、いわゆる「再帰呼び出し」である。
【0073】
なお、この削除する項目の数は1としているが、適宜調整して任意の個数Kを削除してもよい。その場合はL-K項目をL項目に置き換えて同様のプロセスを実行する。この時、再帰呼び出し終了の条件は、L-Kが3より小さい場合プロセスを終了する、としなければならない。何故ならば、貢献度は項目数が3より小さいと算出できないからである。
【0074】
また、この削除する項目種の決定については、前記ソーティングの結果から自動的に最小のものを選ぶ代わりに、ベテラン技術者の経験・勘に基づき、積分結果に加えて貢献度推移の図などから判断して削除する一項目以上のK項目を選んでも良い。その場合はL-K項目をL項目に置き換えて同様のプロセスを実行する。この時、再帰呼び出し終了の条件は、L-Kが3より小さい場合プロセスを終了する、としなければならない。何故ならば、貢献度は項目数が3より小さいと算出できないからである。
【0075】
ところで、
図3~5の左から4列目の図は、同左から3列目の貢献度スタックを10割で表示したものである。即ち、貢献度スタック内の各項目の値を、貢献度スタックのピーク値で除して、各項目の割合を算出する。そして、算出された割合に基づき、各項目を、10割における割合で表示したものである。同図のように、貢献度スタックを10割で表示すると、貢献度スタックでは値が小さくて拡大しない限りは確認不可能であった日時毎の貢献度の比率や推移(=貢献度の比率の時系列的な変化)を確認することができる。具体的には色彩パターンの変わり目に着目し、色の入れ替わりを観察する事でどの項目に重要度が移ったかを把握したり、特定の色が目立ってくる時間帯に注目するとそれは異常時値が出る前であり予兆発見に活用することができる。
【0076】
図3~5の左から5列目の図は、同左から3列目の貢献度スタック図を項目毎に分離して縦の方向に等幅で積み上げ、貢献度の大きさを寒暖色で表現することによって項目間の貢献度の重要度の推移を可視化した予兆項目抽出図である。本図からは、前記した色彩パターンの変わり目の時刻から遡って項目の重要度の移り変わりを追跡できるので、色彩パターン変化を引き起こす要因の推定に利用できる。
【0077】
図3~5の左から6列目の図は、同左から4列目の貢献度スタック10割表示図を項目毎に分離して縦の方向に等幅で積み上げ、貢献度の割合の大きさを寒暖色で表現することによって項目間の貢献度の重要度の推移を可視化した予兆項目抽出図の10割表示図である。
【0078】
上記のステップ3-1から3-7までを通しで説明する。まず、ステップ3-1に入る前に、システムから得られる39項目の時系列データでマハラノビス距離、貢献度を求め、貢献度積分によるソーティングを行うと
図7に類する基本図と
図5の項目数39の段のような貢献度推移図が得られる。この最初の分析シークエンス(貢献度推移分析)を行った上で、多重共線性の排除(ステップ3-1)を行う。
【0079】
上記39項目のデータのうち、相関係数が1に近い項目について、1つを残し、その1つ以外の項目を削除する(ステップ3-1)。
【0080】
残された38項目の時系列データでマハラノビス距離、貢献度を求め(ステップ3-2)、貢献度積分によるソーティングを行うと(ステップ3-3)、
図8に類する基本図と
図5の項目数38の段のような貢献度推移図が得られる(ステップ3―4)。
【0081】
ただし、貢献度積分は、各日時の38項目のすべての項目に係る貢献度合算値のうち、当該合算値が「30」より小さい日時に着目して、この「30」を所定の値1として、当該合算値が「30」より小さい日時だけ、各項目について夫々行われるものとする。
【0082】
分析終了の判定は大別して2種類ある。
<判定種1:人による判定>
上で得られた図面から、システムバランスの変動及びその予兆が視認可能な状態であると判断すれば終了する(ステップ3-5)。
<判定種2:自動判定>
若しくは項目数が3で終了する(ステップ3-5)。
【0083】
終了の条件に該当しない場合、貢献度積分値のソーティングで最小値であった項目を削除して37項目とし(ステップ3-6)、上記の段落[0080]の38項目の代わりに37項目を用いて[0080]のステップ3-2から3-6を再実行する。補足すると、ループが終了しない限りは項目数を1つずつ削除して、現在の分析より項目が1つ少ない状態で再分析を行う。つまり項目数が38、37,36、…という具合に減っていき最後は3になって終了する。段落[0080]の数値38、段落[0083]の数値37、38は変数であり、ステップ3-2からステップ3-6を繰り返し再実行する際に、適宜読み替える必要があることに注意されたい。
【0084】
図5はステップ3-2から3-6の手順を繰り返し、項目を削除していった時の各種図面を示している。項目数が3になるまで、「項目の削除→マハラノビス距離の算出→貢献度の算出→積分→前記各種図面作成」の手順を繰り返し行っている。
【0085】
本
図3列目の図は、貢献度スタック図を示しているが、日時の右端の異常ピークは、項目を減じていった3項目の場合まで温存されている。これは段落[0040]で示した抽出1では実現できない特徴である。実用面では、項目間の遷移が把握できるような項目数までの繰り返しとすればよく、3項目まで絞り込む必要はない。
【0086】
本
図5列目の図は、予兆項目抽出図を示している。これは、各項目を縦軸上に並べ、各項目の貢献度の大きさの時間列変化を、例えば小さな値を青、大きな値を赤、その間の値を緑というように、グラデーションを用いた色付けをして横軸上に並べて横長のボックスとし、前記各項目のボックスを縦方向に同一の面積で並べて、同時刻の項目間の差異が縦のラインの色彩変化で目視できるように表示したものである。本図からわかるように日時が進行するにつれて各項目の貢献度が基準空間(青色)から逸脱して行き(緑色)、終盤ではほとんどの項目が逸脱して行く様子(赤色)が描画されている。なお、縦一列の赤いラインはシステムが停止した日時を示している場合も含まれる。これは基準空間を運転状態にとったために基準外(赤色)に見えている。その他の日時の赤い部分は運転状態での基準外の値を示しており、システムバランスが経年劣化していく状況が可視化できていることがわかる。
【0087】
同図の左から4列目は、貢献度スタック
図10割表示、6列目は、予兆項目抽出
図10割表示を示しているが、色彩パターンの変化から、項目バランスの変動がある期間を視認にて特定することができる。特にマハラノビス距離の小さな期間に活用すると、予兆に関連する項目が抽出できる。
【0088】
図3~5のような項目数による基準空間の絞り込み状況を通しで観察しつつ、ユーザの興味を引いた特定の項目数について分析の内訳を呼び出すと、例えば
図6のような表示が得られる。すなわち、項目数を減じて分析を行う毎に、その結果を呼び出し可能な状態でメモリなどの記憶手段に保存している。これらの保存作業はステップ3-4の実行時に行われる。
【0089】
図6では、貢献度の積分期間を3/15~3/24と指定した。同図七段目以下には、着目する期間において積分値の高い項目が上から順に表示されている。同図五段目と六段目の貢献度スタック、マハラノビス距離からショックリレー動作の前に両者の値が急上昇していることがわかる。同図一段目、二段目の予兆項目抽出図、その10割表示図を見ると、スタック値、MD値急上昇の前から特定の項目の貢献度が先行上昇していることがわかる。同10割表示図の方からは、項目の重要度の移り変わりも併せて把握することができる。同図四段目の貢献度スタック
図10割表示からは、項目の貢献度の比率の変化が色彩パターンから明確に分かり、ショックリレーまでに少なくとも4つ以上の状態変化を起こしていることが把握できる。同図七段目以降には当該積分期間における貢献度積分値の降順に各項目の生データ(
図6の左側)と貢献度(
図6の右側)が列挙されているが、これから主要な項目の貢献度推移のチェックと対応する生データの推移の確認を行う。同図では、硫黄酸化物の大きな変動が確認されているが、さらに硫黄酸化物が大きくなる前の期間に積分期間を絞ることにより、硫黄酸化物が大きくなる前の原因を調べることも可能である。
【0090】
上述のように、貢献度積分の活用を通して、システムバランス変動や異常予兆の分析を進め、項目間の貢献度の移り変わりを把握することができる。さらに、系統図との比較により、システム変動・予兆のメカニズム、機序の解明にも利用でき、マハラノビス距離や貢献度が異常値に至るまでの経緯・根拠の明確化が可能になる。
【0091】
<情報処理装置1の構成>
次に、システムバランスの変動及びその予兆の抽出を的確に行うことが可能な、システムバランス変動抽出方法を実現するための情報処理装置1について説明する。
【0092】
この情報処理装置1は、マハラノビス距離DMを算出し、各項目の貢献度を算出し、貢献度積分ソーティングを行い、分析結果を保存・表示し、非重要項目を削除するプロセスを繰り返して、システムバランスの変動及びその予兆を抽出する。
【0093】
次に、情報処理装置1のハードウェア構成について、
図9を参照して説明する。
図9は情報処理装置1のハードウェアを模式的に示した概念図である。
【0094】
図9において、制御手段11は、例えばCPUで実現され、後述する記憶手段12に含まれるハードディスク(HD)等に格納されているアプリケーションプログラム、オペレーティングシステム(OS)や制御プログラム等を実行し、記憶手段12に含まれるRAMにプログラムの実行に必要な情報、ファイル等を一時的に格納する制御を行う。
【0095】
特に、制御手段11は、マハラノビス距離DMを算出する。即ち、制御手段11は、基準空間データの各項目間の相関係数に係る相関係数行列を作成して、前記基準空間の「相関係数行列の逆行列」を使って、対象空間に係るマハラノビス距離DMを算出する。より詳しく言うと、基準空間データ、対象空間データ共にシステムから得られるN項目の時系列データのことであるが、両者は項目が同一でなければならないが、時間に関しては同一である必要はない。
【0096】
また、制御手段11は、各項目の貢献度を算出する。即ち、制御手段11は、システムから得られるN項目の時系列データからマハラノビス距離DMを求めた後に、一つ項目を抜いて、N-1項目でマハラノビス距離DMを求める。そして、「N項目で算出されるマハラノビス距離DM」と「一つの項目を抜いた、N-1項目で算出されるマハラノビス距離DM」の差分を算出する。この差分が、当該項目(抜いた一つの項目)に係るマハラノビス距離DMへの「貢献度」となる。これらの手順を各項目について行うことで、各項目に係るマハラノビス距離DMへの「貢献度」が算出される。そして、制御手段11は、各日時について、すべての項目に係る貢献度を合算する。各日時について、各項目の貢献度を前記貢献度合算値で除して、各項目に係る貢献度の割合を算出する。制御手段11は、各項目に係る貢献度を、所定の日時にわたって夫々積分する。制御手段11は、積分結果(貢献度積分値)を降順に(あるいは昇順に)ソーティングして対応する項目順に並べた項目リストを作成する。そして、制御手段11は、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、貢献度スタック10割表示図、予兆項目抽出図、予兆項目抽出図の10割表示図を作成し、さらに、計算に使用したN項目分の時系列データ図と対応する貢献度時系列データ図等の各種図面を作成し、表示手段14上に表示させる。
【0097】
更に、制御手段11は、システムバランスの変動及びその予兆を抽出する。以降にそのプロセスを示す。
【0098】
<システムバランスの変動及びその予兆の抽出1>
(ステップ11-1)
即ち、制御手段11は、N項目の時系列データからマハラノビス距離DMを算出し、各項目の貢献度を算出し、N項目すべての貢献度を合算する。各項目の貢献度を前記貢献度合算値で除して、各項目に係る貢献度の割合を算出する。
【0099】
(ステップ11-2)
各項目の貢献度を、所定の日時にわたって夫々積分する。積分結果(貢献度積分値)を降順に(あるいは昇順に)ソーティングして対応する項目順に並べた項目リストを作成する。
【0100】
(ステップ11-3)
制御手段11は、生データと貢献度を対比させながら、加えて貢献度スタック、貢献度スタックの10割表示、マハラノビス距離、予兆項目抽出図、予兆項目抽出図の10割表示等の各種図面も併せて表示手段14上に表示させる。
【0101】
具体的には例えば、
図6及び
図7(
図6の概説図)のように、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、貢献度スタック図の10割表示図、予兆項目抽出図、予兆項目抽出図の10割表示図のうち少なくとも2つ以上の図について時間軸を揃えて縦に並べて、これらの図の下部か上部に、各項目の時系列の生データを前記項目リストで並べられた順と同じ順で、時間軸を揃えて並べて、左パネルを構成し、かつ、前記生データの右側には対応する項目の貢献度の時系列データを並べて表示させる。
【0102】
また、
図3から
図5のように、特定の図面のみを選び出し、項目数を減じていく過程の色彩変化を並べて表示させる。ただしこれらの図は再分析毎に一段ずつ表示が増えてゆくという性質のもので、最初の解析ではN項目の1段しかないことに注意されたい。
【0103】
分析終了の判定は、人が判定する構成と、制御手段11が自動で判断する構成の2種類ある。
(ステップ11-4)
<判定種1:人の判断>
分析終了の判定を人が行う構成の場合には、ユーザは前記各種図面を参考にしてシステムバランスの変動及びその予兆が視認可能な状態であるか否かを分析・確認する。そして、システムバランスの変動及びその予兆が視認できない等、ユーザが前記各種図面の内容を良しとせず、ユーザから入力手段13を通じて、項目を削除する旨の命令の入力を認識すると(ステップ11-4)、制御手段11は、各項目に係る積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後の残りN-1項目をN項目の代わりに用いて、ステップ11-1からステップ11-3の処理を再度実行する。なお、ユーザから再実行の命令入力が無い場合には(ステップ11-4)、分析を終了する。
<判定種2:自動>
(ステップ11-5及び11-6)
一方、分析終了の判定を人ではなく、制御手段11が自動で判断する構成の場合には、システムから得られる項目数Nが3より大きい場合(ステップ11-5)、制御手段11は、各項目に係る積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、N項目の代わりに削除後の残りのN-1項目を対象として、ステップ11-1からステップ11-6の処理を再度実行する(ステップ11-6)。そして、終了の条件(項目数N≦3)に該当するまで、ステップ11-1からステップ11-6のプロセス(ステップ11-4は除く)を、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、再実行する(ループする)。即ち、これは、終了の条件に合致するまで、ステップ11―6の中で、ステップ11-1からステップ11-6までのプロセスを呼び出し、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、ステップ11-1からステップ11-6までのプロセスを繰り返し実行する、いわゆる「再帰呼び出し」である。なお、この判定種2では制御手段11にステップ11-3として示した図表示を都度行わせる必要はなく、処理の再実行を終えた後に(ループを抜けた後に)、制御手段11にまとめて全分析結果を
図3から
図5や
図6のように表示させる構成としてもよい。何故ならユーザが表示を見て処理の再実行を行わせるか否かの判断をする必要がないからである。また、項目数Nが3以下である場合、乃ち、削除後の項目数N-1が2以下である場合には(ステップ11-5)、貢献度が計算できなくなるので、分析を終了する。
【0104】
<システムバランスの変動及びその予兆の抽出2>
(ステップ12-1)
また、制御手段11は、N項目の時系列データからマハラノビス距離DMを算出し、各項目の貢献度を算出し、N項目すべての貢献度を合算する。各項目の貢献度を前記貢献度合算値で除して、各項目に係る貢献度の割合を算出する。
【0105】
(ステップ12-2)
すべての項目に係る貢献度を合算した、各日時に係る貢献度合算値(貢献度スタック)のうち、所定の値1より小さい貢献度合算値(例えば、「30」より小さい貢献度合算値)を持つ日時について、各項目の貢献度を積分する。制御手段11は、積分結果(貢献度積分値)を降順に(あるいは昇順に)ソーティングして対応する項目順に並べた項目リストを作成する。
【0106】
(ステップ12-3)
制御手段11は、生データと貢献度を対比させながら、加えて貢献度スタック、貢献度スタックの10割表示、マハラノビス距離、予兆項目抽出図、予兆項目抽出図の10割表示等の各種図面も併せて表示手段14上に表示させる。
【0107】
分析終了の判定は人によるものと、自動判断との2種類ある。
<判定種1:人の判断>
(ステップ12-4)
分析終了の判定を人が行う構成の場合には、ユーザは前記各種図面を参考にしてシステムバランスの変動及びその予兆が視認可能な状態であるか否かを分析・確認する。そして、システムバランスの変動及びその予兆が視認できない等、ユーザが前記各種図面の内容を良しとせず、ユーザから入力手段13を通じて、項目を削除する旨の命令の入力を認識すると(ステップ12-4)、制御手段11は、各項目に係る積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後の残りのN-1項目をN項目の代わりに用いて、ステップ12-1からステップ12-3の処理を再度実行する。なお、ユーザから再実行の命令入力が無い場合には(ステップ12-4)、分析を終了する。
<判定種2:自動>
(ステップ12-5及び12-6)
一方、分析終了の判定を人ではなく、制御手段11が自動で判断する構成の場合には、システムから得られる項目数Nが3より大きい場合(ステップ12-5)、制御手段11は、各項目に係る積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、N項目の代わりに削除後の残りのN-1項目を対象として、ステップ12-1からステップ12-6の処理を再度実行する(ステップ12-6)。そして、終了の条件(項目数N≦3)に該当するまで、ステップ12-1からステップ12-6のプロセス(ステップ12-4は除く)を、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、再実行する(ループする)。即ち、これは、終了の条件に合致するまで、ステップ12―6の中で、ステップ12-1からステップ12-6までのプロセスを呼び出し、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、ステップ12-1からステップ12-6までのプロセスを繰り返し実行する、いわゆる「再帰呼び出し」である。なお、この判定種2では制御手段11にステップ12-3として示した図表示を都度行わせる必要はなく、処理の再実行を終えた後に(ループを抜けた後に)、制御手段11にまとめて全分析結果を
図3から
図5や
図6のように表示させる構成としてもよい。何故ならユーザが表示を見て処理の再実行を行わせるか否かの判断をする必要がないからである。また、項目数Nが3以下である場合には(ステップ12-5)、分析を終了する。
【0108】
<システムバランスの変動及びその予兆の抽出3>
(ステップ13-1)
更に、制御手段11は、システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い、即ち、相関係数が高い項目のうち、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除する。
【0109】
(ステップ13-2)
制御手段11は、L項目(N項目-M項目)の時系列データから各日時のマハラノビス距離DMを算出する。算出された各日時のマハラノビス距離DMについて、削除後に残された各項目に係る貢献度を算出する。各日時について、削除後に残されたL項目のすべての項目の貢献度を合算する。各日時について、各項目の貢献度を前記貢献度合算値で除して、各項目に係る貢献度の割合を算出する。
【0110】
(ステップ13-3)
各日時に係る貢献度合算値(貢献度スタック)のうち、所定の値1より小さい貢献度合算値(例えば、「30」より小さい貢献度合算値)を持つ日時について、各項目の貢献度を積分する。積分結果(貢献度積分値)を降順に(あるいは昇順に)ソーティングして対応する項目順に並べた項目リストを作成する。
【0111】
(ステップ13-4)
制御手段11は、生データと貢献度を対比させながら、加えて貢献度スタック、貢献度スタックの10割表示、マハラノビス距離、予兆項目抽出図、予兆項目抽出図の10割表示等の各種図面も併せて表示手段14上に表示させる。
【0112】
分析終了の判定は人によるものと、自動判断との2種類ある。
(ステップ13-5)
<判定種1:人の判断>
分析終了の判定を人が行う構成の場合には、ユーザは前記各種図面を参考にしてシステムバランスの変動及びその予兆が視認可能な状態であるか否かを分析・確認する。そして、システムバランスの変動及びその予兆が視認できない等、ユーザが前記各種図面の内容を良しとせず、ユーザから入力手段13を通じて、項目を削除する旨の命令の入力を認識すると(ステップ13-5)、制御手段11は、各項目に係る積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後の残りのL-1項目をL項目の代わりに用いて、ステップ13-2からステップ13-4の処理を再度実行する。なお、ユーザから再実行の命令入力が無い場合には(ステップ13-5)、分析を終了する。
<判定種2:自動>
(ステップ13-6及び13-7)
一方、分析終了の判定を人ではなく、制御手段11が自動で判断する構成の場合には、削除後に残された項目数Lが3より大きい場合(ステップ13-6)、制御手段11は、各項目に係る積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、L項目の代わりに削除後の残りのL-1項目を対象として、ステップ13-2からステップ13-7の処理を再度実行する(ステップ13-7)。そして、終了の条件(項目数L≦3)に該当するまで、ステップ13-2からステップ13-7のプロセス(ステップ13-5は除く)を、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、再実行する(ループする)。即ち、これは、終了の条件に合致するまで、ステップ13―7の中で、ステップ13-2からステップ13-7までのプロセスを呼び出し、削除後に残された項目を用いて(=あてはめて)、ステップ13-2からステップ13-7までのプロセスを繰り返し実行する、いわゆる「再帰呼び出し」である。なお、この判定種2では制御手段11にステップ13-4として示した図表示を都度行わせる必要はなく、処理の再実行を終えた後に(ループを抜けた後に)、制御手段11にまとめて全分析結果を
図3から
図5や
図6のように表示させる構成としてもよい。何故ならユーザが表示を見て処理の再実行を行わせるか否かの判断をする必要がないからである。また、項目数Lが3以下である場合には、分析を終了する(ステップ13-6)。
【0113】
記憶手段12は、各種情報を一時記憶するためのものであり、制御手段11の主メモリ、ワークエリア等として機能するRAMや、内部に基本I/Oプログラム等のプログラム、基本処理において使用する各種情報を記憶するROMを有している。また、大容量メモリとして機能するHDを有している。また、記憶手段12内に、マハラノビス距離DM、貢献度の積分値等を記憶する構成としても良い。
【0114】
入力手段13は、ユーザから情報処理装置1に対する情報や命令の入力を受け付ける。例えば、キーボード、タッチパネル、ボタンである。特に、入力手段13は、ユーザから、項目を削除する旨の命令や、削除すべき項目の指定を受け付ける。なお、ユーザから入力手段13を通じて、命令の入力を受け付けると、制御手段11が動作する構成としても良い。詳しくは、例えば、命令の入力を認識すると、制御手段11が、マハラノビス距離DMを算出する。貢献度を算出する。各日時について、すべての項目に係る貢献度を合算する。各日時について、各項目の貢献度を前記貢献度合算値で除して、各項目に係る貢献度の割合を算出する。各項目に係る貢献度を、所定の日時にわたって夫々積分する。積分結果(貢献度積分値)を降順に(あるいは昇順に)ソーティングして対応する項目順に並べた項目リストを作成する。生データと貢献度を対比させながら、加えて貢献度スタック、貢献度スタックの10割表示、マハラノビス距離、予兆項目抽出図、予兆項目抽出図の10割表示等の各種図面も併せて表示手段14上に表示させる。各項目に係る積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除する。すべての項目に係る貢献度を合算した、各日時に係る貢献度合算値(貢献度スタック)のうち、所定の値1より小さい貢献度合算値(例えば、「30」より小さい貢献度合算値)を持つ日時について、各項目の貢献度を積分する。システムから得られるN項目の時系列データのうち、相関係数が1に近い、即ち、相関係数が高い項目のうち、1つを残し、その1つ以外のM項目を削除する。
【0115】
表示手段14は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ドットマトリクス型のディスプレイであり、入力手段13から入力された命令や、それに対する情報処理装置1の応答出力等を表示するものである。特に、表示手段14は、マハラノビス距離の日時変化図、貢献度スタック図、貢献度スタック10割表示図、予兆項目抽出図及び予兆項目抽出図の10割表示図等の各種図面を表示する。
【0116】
バス16は、情報処理装置1内の流れを司るものである。通信手段15はインターフェイス(I/F)であり、情報処理装置1はこの通信手段15を介して外部機器と接続される。
【0117】
なお、以上の各装置と同等の機能を実現させるソフトウェアにより、ハードウェア装置の代替として構成することもできる。
【0118】
また、実施の形態例1では、この実施の形態例1に係るプログラム及び関連データを直接RAM等の記憶手段12にロードして実行させることもできるが、この実施の形態例1に係るプログラムを動作させる度に、既にプログラムがインストールされているHD等の記憶手段12にロードするようにしてもよい。また、この実施の形態例1に係るプログラムをROM等の記憶手段12に記憶しておき、これをメモリマップの一部をなすように構成し、直接CPU等の制御手段11で実行することも可能である。
【0119】
また、実施の形態例1では、分析終了の条件に合致するまで、プロセスを再実行する(ループする)構成について、いわゆる「再帰呼び出し」を用いる構成を示したが、この構成に限定されるものではない。要は、分析終了の条件に合致するまで、以下のプロセスを繰り返し再実行する(ループする)構成であれば、良い。
【0120】
『分析終了の判定を、制御手段11が自動で行う、あるいは人が行い、項目数Nが3より大きい場合、あるいはユーザが前記表示されている内容を良しとしなければ、各項目の貢献度積分値のうち、最小の積分値に係る項目を削除して、削除後に残されたN-1項目をシステムから得られた前記N項目の代わりに用いて、「マハラノビス距離DMの算出→貢献度の算出→積分→各種図面の表示」を行う。』以降、項目数Nを1つずつ減じながら、Nが3以下になるまで、『』で囲まれたことを繰り返す。
【符号の説明】
【0121】
1:情報処理装置、11:制御手段、12:記憶手段、13:入力手段、14:表示手段、15:通信手段、16:バス