(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183896
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】湿度変動電池用整流素子及び整流方法
(51)【国際特許分類】
H01H 35/42 20060101AFI20231221BHJP
H01M 14/00 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
H01H35/42 A
H01M14/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097696
(22)【出願日】2022-06-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/湿度変動発電素子の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】駒崎 友亮
(72)【発明者】
【氏名】延島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】平間 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 雄一
【テーマコード(参考)】
5H032
【Fターム(参考)】
5H032AA00
(57)【要約】
【課題】 湿度変動を利用した湿度変動電池のための高効率な整流素子及び整流方法の提供。
【解決手段】 湿度変動を利用した湿度変動電池のための整流素子である。回路接点の開閉動作により極性を反転させるリレー部を含み、開閉動作の駆動力を湿度の変動によって与えることを特徴とする。湿度変動電池用の整流方法は、回路接点の開閉動作により極性を反転させるリレー部を含み、開閉動作の駆動力を湿度の変動によって与えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度変動を利用した湿度変動電池のための整流素子であって、
回路接点の開閉動作により極性を反転させるリレー部を含み、前記開閉動作の駆動力を湿度の変動によって与えることを特徴とする湿度変動電池用整流素子。
【請求項2】
前記回路接点は機械的に開閉することを特徴とする請求項1記載の湿度変動電池用整流素子。
【請求項3】
前記リレー部は、湿度変動により形状変化する感湿材料からなる変形部材を含み、前記変形部材の変形により前記開閉動作を与えることを特徴とする請求項2記載の湿度変動電池用整流素子。
【請求項4】
前記変形部材の湿度変動による変形量を拡大するカンチレバー部を有することを特徴とする請求項3記載の湿度変動電池用整流素子。
【請求項5】
前記変形量を所定以下に規定する移動規制部を有することを特徴とする請求項4記載の湿度変動電池用整流素子。
【請求項6】
湿度変動を利用した湿度変動電池のための整流方法であって、
回路接点の開閉動作により極性を反転させるリレー部を含み、前記開閉動作の駆動力を湿度の変動によって与えることを特徴とする湿度変動電池用の整流方法。
【請求項7】
前記回路接点は機械的に開閉することを特徴とする請求項6記載の湿度変動電池用の整流方法。
【請求項8】
前記リレー部は、湿度変動により形状変化する感湿材料からなる変形部材を含み、前記変形部材の変形により前記開閉動作を与えることを特徴とする請求項7記載の湿度変動電池用の整流方法。
【請求項9】
前記変形部材の湿度変動による変形量を拡大するカンチレバー部を有することを特徴とする請求項8記載の湿度変動電池用の整流方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿度変動を利用した湿度変動電池のための整流素子及び整流方法に関する。
【背景技術】
【0002】
湿度変動電池は、主に大気中の湿度の変動を利用して発電を行おうとする電池であり、大気に開放された開放槽と密閉された閉鎖槽、両槽を隔てるイオン交換膜、及び、電極から構成される。そして、開放槽及び閉鎖槽には潮解性材料を含む水系電解液が与えられ、開放槽内の電解液濃度が空気中の湿度に応じて変化することで、開放槽-閉鎖槽間で生じる濃度差を電力として取り出そうとするものである(非特許文献1)。
【0003】
新たに提案された湿度変動電池ではあるが、ここまで湿度の変化を検出するようなセンサーの如きについては数多くが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、デュポン社製の商品名:Naflon N-110なるフッ素樹脂系イオン交換膜を挟んで両側に電極を与えた感湿結露素子を開示している。かかる素子では、大気中の相対湿度の上昇に伴って電極間で測定される電気抵抗値が単調に減少し、100%湿度における電気抵抗値から結露に伴う電気抵抗値への変化は急激且つ大きくなるため、スイッチング方式による素子機能を有効に働かせ得るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Energy harvesting by ambient humidity variation with continuous milliampere current output and energy storage", Y. Komazaki et al., Sustain. Energy Fuels, 2021,5, pp.3570-3577
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、湿度変動電池を電源として使用するためには、最大150mV程度と低い出力電圧を昇圧する必要がある。一方、湿度の高低による正負の極性の逆転があるため、昇圧回路に入力する前に整流が必要となるが、順方向でも数百mV程度の電圧降下を有するダイオードなどの受動半導体素子は出力電圧の低い湿度変動電池では利用できない。また、バイポーラ入力の可能な昇圧回路もあるが、このような昇圧回路はユニポーラ入力の昇圧回路よりも低効率で好ましくない。
【0008】
本発明は、上記したような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、湿度変動を利用した湿度変動電池のための高効率な整流素子及び整流方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による整流素子は、湿度変動を利用した湿度変動電池のための整流素子であって、回路接点の開閉動作により極性を反転させるリレー部を含み、前記開閉動作の駆動力を湿度の変動によって与えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明による整流方法は、湿度変動を利用した湿度変動電池のための整流方法であって、回路接点の開閉動作により極性を反転させるリレー部を含み、前記開閉動作の駆動力を湿度の変動によって与えることを特徴とする。
【0011】
かかる特徴によれば、出力電圧の低い湿度変動電池であっても整流回路を組み込み得るとともに、特別な駆動源を必要とせず高い効率にて整流動作を得られるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による実施例としての整流素子の斜視図である。
【
図2】同整流素子の(a)上面図及び(b)A-A断面図である。
【
図5】湿度変動電池に接続したときの(a)与えた湿度変化のグラフ、及び、(b)整流前後の電圧のグラフである。
【
図6】同整流素子のリレー部の構成を変更した例を示す正断面図である。
【
図7】他の実施例としての整流素子の上面図である。
【
図8】さらに他の実施例としての整流素子の上面図である。
【
図9】さらに他の実施例としての整流素子の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明による1つの実施例である湿度変動電池用整流素子及びかかる整流素子を用いた整流方法について、
図1乃至
図6を用いて説明する。
【0014】
[実施例1]
図1に示すように、整流素子1は、基板2とその上に構成されるリレー部3とを含む。リレー部3は、後述するように回路接点の開閉動作により極性を反転させるスイッチング機能を有する。
【0015】
リレー部3は、基板2に対して左右それぞれに立設された2枚のスイッチ取り付け基板11a及び11bと、双方に2つずつ取り付けられる右側のリードスイッチ12a及び左側のリードスイッチ12bと、湿度変動により形状変化する変形部材13と、変形部材13に取り付けられた永久磁石14とを含む。右側のリードスイッチ12a及び左側のリードスイッチ12bは機械的に開閉する回路接点を有し、永久磁石14によって回路接点の近傍の磁場を強めることで回路接点を閉じ、永久磁石14を離して磁場を弱めることで回路接点を開放する。つまり、磁場の変化によって電気回路のスイッチングを行い得る。
【0016】
図2を併せて参照すると、変形部材13としては、例えば、樹脂による板体13aとその一方の主面に塗布によって固定された感湿材料13bとを含む帯状体を用い得る。感湿材料は湿度変動によって形状変形する材料であり、湿度の高い時に膨張し湿度の低いときに収縮する材料とする。このような感湿材料として、例えば、シリコーンゴム及び塩化リチウムの混合物を用い得る。板体13aとしては、例えば、PETなどの湿度によって変形しない材料を用い得る。
【0017】
変形部材13は、主面の法線を水平方向へ向けるようにして、その長手方向の根元側を固定台15に固定されている。板状体の主面の法線を水平方向へ向けたことで、水平面内での曲げ変形を容易としつつ、上下方向への曲げ変形を生じないようにされる。これによって変形部材13は、根元側の端部から先端側の端部まで基板2に対する高さを維持しつつ略水平に延びるカンチレバー部とされる。また、変形部材13は、その先端側の端部近傍に永久磁石14を取り付けられ、2枚のスイッチ取り付け基板11a及び11bの間に差し入れるように配置されている。永久磁石14としては、例えば、ネオジム磁石を用いると磁場の変動を大きくできて好ましい。
【0018】
変形部材13は、紙面下側の固定台15から紙面上側に向けて延びつつ左に向けて湾曲している。さらに感湿材料13bは、板体13aに対して湾曲の内側に固定されている。これにより、変形部材13は、湿度の高い時に水分を吸収して膨張する感湿材料13bと寸法を維持しようとする板体13aとにより湾曲を伸ばすように変形して先端側端部の永久磁石14を右側に移動させることができる。また、変形部材13は、湿度の低い場合に水分を放出して収縮する感湿材料13bと寸法を維持しようとする板体13aとにより湾曲をより曲げるように変形して先端側端部の永久磁石14を左側に移動させることができる。特に、変形部材13は、このような湿度変化による変形量の違う材料を貼り合わせた帯状体としたことで変形量を拡大し、先端側の永久磁石14の移動量を大きくすることができる。
【0019】
特に、同図(b)に示すように、紙面右側のスイッチ取り付け基板11aにはリードスイッチ12aが2つ取り付けられ、紙面左側のスイッチ取り付け基板11bにはリードスイッチ12bが2つ取り付けられる。そのため、湿度の高い場合には、永久磁石14を右側に移動させて、右側の2つのリードスイッチ12aの両者をともにONにするとともに、左側の2つのリードスイッチ12bの両者をOFFにすることができる。一方、湿度の低い場合には、永久磁石14を左側に移動させて、左側の2つのリードスイッチ12bの両者をともにONにするとともに、右側の2つのリードスイッチ12aの両者をOFFにすることができる。
【0020】
なお、右側のリードスイッチ12a及び左側のリードスイッチ12bの中央側にはそれぞれ規制部材16a及び16bが備えられる。規制部材16a及び16bは、樹脂などの非磁性体からなる板状体であり、永久磁石14とリードスイッチ12a及び12bとの間をそれぞれ仕切るように配置される。そして、規制部材16a及び16bは、永久磁石14のリードスイッチへの過度の近接を防止するように変形部材13の変形量を所定以下に規定し、永久磁石14の移動範囲を制限する移動規制部として機能し得る。例えば、規制部材16a及び16bとして1mm厚さのアクリル板を用い、それぞれのリードスイッチにその主面を接するように配置させると、リードスイッチに対する永久磁石14の距離を1mm以上とすることができる。
【0021】
これにより、永久磁石14をリードスイッチ12a又は12bに吸着させて移動不能となるような事態を防止することができる。なお、規制部材としては、上記したように永久磁石14の移動範囲を直接制限するものに限られず、例えば、変形部材13の変形量を規定するように変形部材13の先端側端部よりも根本側に配置されるようなものとしてもよい。なお、永久磁石14を右側のリードスイッチ12aと左側のリードスイッチ12bとの間に配したことも、左右の引力で互いを打ち消し合い、一方への吸着を抑止することに資する。
【0022】
図3に示す様に、整流素子1のリレー部3は、配線よる回路19を備える。回路19には入力側の第1電極21a及び第2電極21bと、出力側の正電極22a及び負電極22bとを備える。ここで、右側のリードスイッチ12aのうち一方は入力側の第1電極21aと出力側の正電極22aとをつなぎ、右側のリードスイッチ12aのうち他方は入力側の第2電極21bと出力側の負電極22bとをつないでいる。また、左側のリードスイッチ12bのうち一方は入力側の第1電極21aと出力側の負電極22bとをつなぎ、左側のリードスイッチ12bのうち他方は入力側の第2電極21bと出力側の正電極22aとをつないでいる。そのため、右側の2つのリードスイッチ12aがONになったとき、入力側の第1電極21aと出力側の正電極22aを接続させ、入力側の第2電極21bと出力側の負電極22bとを接続させることになる。一方、左側の2つのリードスイッチ12bがONになったとき、入力側の第1電極21aと出力側の負電極22bとを接続させ、入力側の第2電極21bと出力側の正電極22aとを接続させることになる。つまり、右側と左側とでONにするリードスイッチを切り替えて出力側の電極に対して入力側の電極の極性を入れ替えることができる。このように、リレー部3は、機械的に開閉するリードスイッチによる回路接点の開閉動作により出力側に対して入力側の極性を反転させることができる。
【0023】
また、整流素子1は湿度変動電池20に接続して使用される。湿度変動電池20は、湿度変動を利用して発電する電池であり、例えば、非特許文献1において開示されているものを使用し得る。
【0024】
湿度変動電池20は、湿度が高いときと、湿度が低いときのそれぞれにおいて、互いに逆向きの起電力を生じる。そこで、湿度変動電池20の高湿時に正(低湿時に負)となる側の電極を整流素子1の入力側の第1電極21aに接続し、高湿時に負(低湿時に正)となる側の電極を整流素子1の入力側の第2電極21bに接続する。
【0025】
次に、整流素子1を用いた整流方法について、整流素子1の湿度変化に伴う動作とともに説明する。
【0026】
まず、低湿から高湿に変化すると、整流素子1では、湿度変動電池20に接続された入力側の第1電極21aを正、第2電極21bを負とする起電力を受ける。また、高湿時には、上記したように変形部材13が湾曲を伸ばすように変形して先端部の永久磁石14を右側に移動させる。すると、永久磁石14によって、右側の2つのリードスイッチ12aをともにONにし、左側の2つのリードスイッチ12bをともにOFFにする。その結果、入力側の第1電極21aを出力側の正電極22aに接続させるとともに、入力側の第2電極21bを出力側の負電極22bに接続させる。よって、湿度変動電池20による起電力の正側を出力側の正電極22aに対応させ、起電力の負側を出力側の負電極22bに対応させるように湿度変動電池20と整流素子1とを接続させていることになる。
【0027】
一方、高湿から低湿に変化すると、整流素子1では、湿度変動電池20に接続された入力側の第1電極21aを負、第2電極21bを正とする起電力を受ける。また、低湿時には、上記したように変形部材13が湾曲をより曲げるように変形して先端部の永久磁石14を左側に移動させる。すると、永久磁石14によって、右側の2つのリードスイッチ12aをともにOFFにし、左側の2つのリードスイッチ12bをともにONにする。その結果、入力側の第1電極21aを出力側の負電極22bに接続させるとともに、入力側の第2電極21bを出力側の正電極22aに接続させる。よって、湿度変動電池20による起電力の正側を出力側の正電極22aに対応させ、起電力の負側を出力側の負電極22bに対応させるように湿度変動電池20と整流素子1とを接続させていることになる。
【0028】
このように、整流素子1は、湿度の変化に伴い変形部材13から得られる駆動力によってリードスイッチ12a及び12bによる回路接点を機械的に開閉させ、かかる開閉動作によりリレー部3の極性を反転させることができる。これにより、高湿時、低湿時のいずれであっても湿度変動電池20による起電力の正側及び負側をそれぞれ同じ出力側電極に接続するように極性を切り替えて整流できる。
【0029】
一般に、湿度変動電池は出力電圧が低く、ダイオードなどの受動半導体素子は湿度変動電池用の整流素子として利用できない。これに対し、本実施例による整流素子1によれば、湿度変動によって得られる駆動力を利用して機械的に開閉する回路接点を利用することで特別な駆動源を要することなく湿度変動電池用の整流素子としての整流動作を得られるのである。
【0030】
図4に示す様に、実際に製作した整流素子1によると、永久磁石14は、湿度を30%にしたときに左側に移動し(同図(a))、湿度を60%にしたときに中央に移動し(同図(b))、湿度を75%にしたときに右側に移動する(同図(c))様子が観察された。そして、永久磁石14を左側に移動させたときに左側の2つのリードスイッチ12bがONになり(同図(a);左側回路導通)、中央に移動させたときにリードスイッチ12a及び12bのいずれもOFFになり(同図(b);両側回路非導通)、右側に移動させたときに右側の2つのリードスイッチ12aがONになった(同図(c);右側回路導通)。なお、同図(b)に示すように、両側のリードスイッチをOFFとできる状態を設けておくことで、左右の切り換えの際に左右両側をONにして整流できなくなるような事態を防止できる。
【0031】
図5に示すように、この整流素子1を湿度変動電池20に接続し、両者に同じ湿度変動を与えた。両者を恒温恒湿槽に入れ、4時間ごとに湿度40%及び湿度80%を交互に繰り返すようにした(同図(a)参照)。すると、整流素子1の入力側の電圧(湿度変動電池20の出力;「整流前」)は、4時間毎に正負を逆転させているのに対し、整流素子1の出力側の電圧(「整流後」)は常に正(≧0)となり(同図(b)参照)、湿度変動電池20からの出力を整流できていることを確認できた。
【0032】
なお、
図6に示すように、上記したリレー部3の構成を変更することもできる。例えば、補助基板2’を基板2と平行に設けて、規制部材16a及び16bによって互いの間隔を保つように組み合わせ、補助基板2’と基板2の両者にそれぞれリードスイッチ12a及び12bのうちそれぞれ一方ずつを取り付ける。結果として、このようにして得たリレー部3’は、上記したリレー部3と同様の配置となり、同様の整流素子を得ることができる。
【0033】
次に、本発明による他の実施例である整流素子について、
図7乃至
図9を用いて説明する。
【0034】
[実施例2]
図7に示すように、整流素子51では、一端を軸支されて回動可能なレバー31を用いて他端側に取り付けられた永久磁石14を移動させるようにされる。ここでは、レバー31は変形するのではなく、回動軸32の周りに回動可能とされるが、水平面内で回動するように配置されると、永久磁石14の移動に重力の影響を受けづらく好ましい。レバー31には、その回動軸32から所定距離だけ離れた位置に略紐状又は略帯状の変形部材33と引きばね34とが取り付けられる。レバー31は、変形部材33によって左へ向けて引っ張られ、引きばね34によって右へ向けて引っ張られてつり合うように変形部材33及び引きばね34の端部が基板2上に固定される。変形部材33としては、上記と同様に高湿時に膨張し、低湿時に収縮する感湿材料であり、例えば、ナイロンフィルムを用い得る。これにより高湿時には変形部材33が伸びてレバー31を時計回りに回動させて永久磁石14を右へ移動させる。一方、低湿時には変形部材33が収縮してレバー31を反時計回りに回動させて永久磁石14を左へ移動させる。つまり、変形部材33及び引きばね34をレバー31の駆動源として用いている。その他は、上記した整流素子1と同様である。
【0035】
このような整流素子51によっても、同様に湿度変動電池の整流動作を得られる。なお、変形部材33の取付けられる位置によって、変形部材33の変形量に対する永久磁石14の移動量の拡大率を調整可能である。すなわち、回動軸32からの所定距離を短くすると拡大率が大きくなり、所定距離を長くすると拡大率が小さくなる。
【0036】
[実施例3]
図8に示すように、整流素子52では、永久磁石を用いずに双極双投(2回路2接点)のマイクロスイッチ41を用いることで上記したリレー部3と同様の機能を得ている。レバー31及びその駆動源は上記と同様であるが、永久磁石を備えていない。そして、レバー31の先端寄りの右側にマイクロスイッチ41のアクチュエータ部41aを備え、高湿時にレバー31の先端を右側に移動させたときに押圧するようにされる。アクチュエータ部41aは例えばピン押釦であり、押圧したときと離したときとで回路接点の切り換えを行う。このような整流素子52によっても、上記と同様に湿度変動電池の整流動作を得られる。
【0037】
[実施例4]
図9に示すように、整流素子53では、上記した整流素子1とは永久磁石14を駆動する方法において異なる。整流素子53は、カンチレバー型の変形部材の代わりに、両持ち梁構造の変形部材35を備える。変形部材35は紙面上下に配置された固定台15’に両端を固定された帯状体であり、板体35aの一方の主面に感湿材料35bが固定されたものである。板体35aは、中央にたわみを生じるように両主面を左右に向けて固定台15’に両端を固定されており、感湿材料35bを紙面左側の主面に固定されている。
【0038】
これにより、変形部材35は、湿度の高い時に水分を吸収して膨張する感湿材料35bと寸法を維持しようとする板体35aとにより感湿材料35bを外側にする湾曲、すなわち紙面左へ凸となる湾曲を生じる。これによって永久磁石14を左に移動させて、左側の2つのリードスイッチ12bをONとする。一方、変形部材35は、湿度の低い時に水分を放出して収縮する感湿材料35bと寸法を維持しようとする板体35aとにより感湿材料35bを内側にする湾曲、すなわち紙面左へ凸となる湾曲を生じる、これによって永久磁石14を右に移動させて、右側の2つのリードスイッチ12aをONとする。このような整流素子53によっても、上記と同様に湿度変動電池の整流動作を得られる。なお、整流素子53では、高湿時と低湿時の永久磁石の移動方向が整流素子1とは左右逆となるので、湿度変動電池20への接続については極性を逆にする。
【0039】
[実施例5]
上記したリードスイッチやマイクロスイッチに替えて、湿度変化に応じて電気抵抗値を大きく変化させる素子を用いることもできる。例えば、特開平11-345551号公報に開示されているスイッチング素子を利用できる。かかるスイッチング素子は、櫛歯型の電極同士のギャップに乾湿層を備える。かかる乾湿層は、導電性物質と、メソ空間を有する吸湿性物質とを高分子樹脂中に分散配置させており、湿度の変化に応じて電気抵抗を大きく変化させるものである。これによって、機械的な動作によらず、湿度の変動に基づく物性の変化によって回路接点の開閉動作を行うことができ、上記したリレー部3と同様のスイッチング機能を与えることができる。
【0040】
以上、本発明による代表的な実施例及び変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0041】
1 整流素子
3 リレー部
12a リードスイッチ(右側)
12b リードスイッチ(左側)
13 変形部材
13a 板体
13b 感湿材料
14 永久磁石
20 湿度変動電池