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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183949
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】落雷の電流推定システム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/16 20060101AFI20231221BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01W1/16 E
G01R29/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097773
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幹久
(72)【発明者】
【氏名】工藤 亜美
(57)【要約】
【課題】落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて雷パラメータである雷の電流を的確に推定する。
【解決手段】過去の電波状況、電流状況の蓄積により、観測した電波の状況が過去のデータのどれに近いかにより電波の状況を対応させ、推定した電波の状況、及び、蓄積された電流の状況に基づいて雷放電路モデルMを推定し、構造物1の頂部1aに落ちた雷の電波と雷放電路モデルMとから、大地4に落ちた状態の電流の状況を導出し、構造物1が設置された大地4での雷の電流の状況を的確に推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準構造物に落ちた雷の電波を観測する電波観測手段と、
雷の状況に応じて前記基準構造物での電波の状況を導出する電波状況導出手段と、
前記電波状況導出手段で導出された電波の状況に応じた電流の状況を導出する電流状況導出手段と、
前記電流状況導出手段で導出された電流の状況に対し、前記基準構造物の影響を取り除く補正を行い、大地に落ちた雷の状態での電流の状況を求める電流モデル補正手段と、
前記電流モデル補正手段で求めた電流の状態に基づいて、大地に落ちた状態の雷の電流パラメータを評価する電流評価手段とを備えた
ことを特徴とする落雷の電流推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の落雷の電流推定システムにおいて、
前記電波状況導出手段は、
前記基準構造物に落ちた雷の電波を、多数の電波の状況のデータと比較し、近似する電波の状況を抽出する
ことを特徴とする落雷の電流推定システム。
【請求項3】
請求項1に記載の落雷の電流推定システムにおいて、
前記電流状況導出手段は、
前記電波状況導出手段で導出された電波の状況を、前記基準構造物で計測された多数の電流の状況のデータと比較し、近似する電流の状況を抽出する
ことを特徴とする落雷の電流推定システム。
【請求項4】
請求項1に記載の落雷の電流推定システムにおいて、
前記電流モデル補正手段は、
前記電流状況導出手段で導出された電流の状況を、前記基準構造物の影響が取り除かれた多数の電流の補正状況のデータと比較し、近似する電流の補正状況を、大地に落ちた雷の状態での電流の状況として補正する
ことを特徴とする落雷の電流推定システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の落雷の電流推定システムにおいて、
前記電流評価手段は、
大地に落ちた状態の雷の電流パラメータとして、電流波高値、電流峻度、波尾長の少なくとも一つを評価する
ことを特徴とする落雷の電流推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実際の落雷の状況に応じて落雷の電流の状況(電流パラメータ)を推定することができる落雷の電流推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
雷発生時の落雷電荷量や位置を推定する技術として、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)が使用されている(例えば、特許文献1)。LLSは、落雷に伴う電界や磁界の時間変化などを測定し、落雷の位置や時刻を抽出する技術となっている。
【0003】
LLSを用いて落雷の地域ごとの雷パラメータ(ピーク電流、電流峻度、電荷量、電流波尾長などの落雷の電流)を取得することが従来から行われている。雷パラメータを取得するためには、雷放電路モデル(落雷点から上空に向かって延びる雷放電路のモデル)、及び、実際に観測された電波を用い、雷パラメータを推定している。
【0004】
観測される電波は、距離や環境などにより強度が変化し、同じ雷の電波を観測した場合であっても、雷放電路モデルの推定結果が異なってしまう。雷パラメータの状況は雷放電路モデルの特性に大きく左右されるため、雷放電路の性質を正確に推定した雷放電路モデルを構築することで、正確な雷パラメータ(落雷の電流)を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-197017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて雷パラメータである雷の電流を的確に推定できる落雷の電流推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、実際の構造物、及び、実際の構造物に落ちた雷を用いて雷放電路モデルを構築し、既知の構造物の影響を補正して、大地での雷の電流を推定する技術であり、例えば、過去のデータの蓄積により、観測した電波が過去のデータのどれに近いかにより雷放電路モデルを推定し、推定した雷放電路モデルに基づいて、観測した電波の場合の大地での電流を推定する技術である。
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の落雷の電流推定システムは、基準構造物に落ちた雷の電波を観測する電波観測手段と、雷の状況に応じて前記基準構造物での電波の状況を導出する電波状況導出手段と、前記電波状況導出手段で導出された電波の状況に応じた電流の状況を導出する電流状況導出手段と、前記電流状況導出手段で導出された電流の状況に対し、前記基準構造物の影響を取り除く補正を行い、大地に落ちた雷の状態での電流の状況を求める電流モデル補正手段と、前記電流モデル補正手段で求めた電流の状態に基づいて、大地に落ちた状態の雷の電流パラメータを評価する電流評価手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、電波状況導出手段により雷の状況に応じた基準構造物での電波の状況が導出され、導出された電波の状況に応じた電流の状況が電流状況導出手段で導出され、電流の状況に対し、基準構造物の影響を取り除く補正が電流モデル補正手段により行われて大地に落ちた雷の状態での電流の状況が求められ、電流の状態に基づいて、大地に落ちた状態の雷の電流パラメータが電流評価手段により評価される。
【0010】
例えば、基準構造物の電流を計測してデータ化されたものに基づいて電流の状況が導出される。また、電流モデル補正手段での処理までの一連の機能(電波状況導出手段、電流状況導出手段、電流モデル補正手段)を経る動作により、雷放電路モデルが構築される(推定される)。
【0011】
推定された雷放電路モデルは、基準構造物以外の構造物など(任意の場所)に雷が落ちた際に、雷の電波と推定された雷放電路モデルを用い、任意の場所の大地に落ちた状態での電流の状況を求めることに適用される。即ち、電流計を用いることなく、基準構造物での落雷により推定された「雷放電路モデル」と、実際の電波の状況とにより、任意の場所での大地での電流の状況を推定することができる。
【0012】
このため、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて、大地での雷パラメータである雷の電流を的確に推定することが可能になる。
【0013】
そして、請求項2に係る本発明の落雷の電流推定システムは、請求項1に記載の落雷の電流推定システムにおいて、前記電波状況導出手段は、前記基準構造物に落ちた雷の電波を、多数の電波の状況のデータと比較し、近似する電波の状況を抽出することを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明では、基準構造物に落ちた雷の電波を多数の電波の状況のデータと比較し、観測した電波が過去のデータのどれに近いかにより近似する電波の状況を抽出することができる(雷放電路モデルを推定することができる)。
【0015】
また、請求項3に係る本発明の落雷の電流推定システムは、請求項1に記載の落雷の電流推定システムにおいて、前記電流状況導出手段は、前記電波状況導出手段で導出された電波の状況を、前記基準構造物で計測された多数の電流の状況のデータと比較し、近似する電流の状況を抽出することを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る本発明では、電波状況導出手段で導出された電波の状況が、基準構造物で計測された多数の電流の状況のデータと比較され、近似する電流の状況が抽出されることで、観測した電波の状況に応じた電流の状況が導出される。
【0017】
尚、基準構造物に落ちた雷の電波、及び、基準構造物の仕様などを基に、観測した電波の状況に応じた電流の状況を演算により求めること(雷放電路モデルを構築すること)も可能である。
【0018】
また、請求項4に係る本発明の落雷の電流推定システムは、請求項1に記載の落雷の電流推定システムにおいて、前記電流モデル補正手段は、前記電流状況導出手段で導出された電流の状況を、前記基準構造物の影響が取り除かれた多数の電流の補正状況のデータと比較し、近似する電流の補正状況を、大地に落ちた雷の状態での電流の状況として補正することを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る本発明では、電流状況導出手段で導出された電流の状況が、基準構造物の影響が取り除かれた多数の電流の補正状況のデータと比較され、近似する電流の補正状況が、大地に落ちた雷の状態での電流の状況とされる(補正される)。
【0020】
尚、観測した電波の状況に応じた電流の状況(雷放電路モデル)に基づき、基準構造物の仕様などを考慮して演算により電流の補正状況を求めることも可能である。また、雷放電路モデルの推定のデータ蓄積の一例として、雷放電路モデルの雷パラメータを仮定し、実測の雷パラメータと比較して再現できているか否かにより、雷放電路モデルを補正することが可能である。
【0021】
また、請求項5に係る本発明の落雷の電流推定システムは、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の落雷の電流推定システムにおいて、前記電流評価手段は、大地に落ちた状態の雷の電流パラメータとして、電流波高値(ピーク値)、電流峻度、波尾長の少なくとも一つを評価することを特徴とする。
【0022】
請求項5に係る本発明では、電流波高値(ピーク値)、電流峻度、波尾長の少なくとも一つを評価することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の落雷の電流推定システムは、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された雷の電波に基づいて雷パラメータである雷の電流を実際の雷の状況に基づいて的確に推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例に係る落雷の電流推定システムの全体構成を説明する概念図である。
図2】本発明の一実施例に係る落雷の電流推定システムのブロック構成図である。
図3】構造物に落ちた雷の電界の一例を表すグラフである。
図4】構造物に対する落雷の電界のデータの一例を表すグラフである。
図5図4に示したデータに基づいて推定される電流の状況を表すグラフである。
図6図4に示したデータに基づいて推定される電流の状況を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に基づいて落雷の電流推定システムの全体の構成を説明する。図1には本発明の一実施例に係る落雷の電流推定システムの全体の構成を説明するための概念状況を示してある。
【0026】
図に示すように、落雷の電流推定システムは、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)を備えている。即ち、基準構造物である構造物(鉄塔など)1の頂部1aに落ちた雷の電波が電波計測手段2で計測される。電波計測手段2で計測された情報は制御手段3に入力される。
【0027】
構造物1には電流を計測する手段が備えられ、構造物1の頂部1aに落ちた雷の電流が計測されてデータが蓄積されている。
【0028】
制御手段3では、電波計測手段2で計測された情報に基づいて、構造物1が設置されている大地4での雷の状況が導出される。つまり、実際に構造物1に落ちた雷の状況(落雷点が構造物1の頂部1a)から、大地4に落ちた雷の状況を導き、実際の雷の状況に基づいて大地での雷の電流を推定する。
【0029】
図2から図6に基づいて制御手段3のブロック構成、及び、電流の推定状況を説明する。
【0030】
図2には本発明の一実施例に係る落雷の電流推定システムのブロック構成、図3には構造物1に落ちた雷の電界の一例を表すグラフ、図4には構造物1に対する落雷の電界のデータの一例を表すグラフ、図5には立ち上がり時間が速い場合の図4に示したデータに基づいて推定される構造物1と大地4における電流の状況を表すグラフ、図6には立ち上がり時間が遅い場合の図4に示したデータに基づいて推定される構造物1と大地4における電流の状況を表すグラフを示してある。
【0031】
図2に基づいて制御手段3の構成を説明する。
【0032】
図に示すように、制御手段3には電波状況導出手段11が備えられている。電波状況導出手段11は、構造物1に落ちた雷の電波の状況(電界の経時変化)を多数のデータと比較して、近い状況のデータを抽出する。
【0033】
電波状況導出手段11で抽出された電波の状況のデータは、電流状況導出手段12に送られる。電流状況導出手段12では、電波状況導出手段11から送られた電波の状況のデータを、予め計測されて蓄積された多数の電流のデータと比較して、近い電流の状況のデータを抽出する。
【0034】
尚、電波状況導出手段11から送られた電波の状況に基づいて、構造物1の高さや構造仕様などを加味した演算により電流のモデルを構築することも可能である。
【0035】
電流状況導出手段12で抽出された電流の状況のデータは、電流モデル補正手段13に送られる。電流モデル補正手段13では、電流状況導出手段12で抽出された電流の状況のデータに対し、演算、データの比較などにより、構造物1の影響を取り除く補正を行い、大地4に落ちた雷の状態での電流の状況が求められる。
【0036】
即ち、電波状況導出手段11、電流状況導出手段12、電流モデル補正手段13での処理までの一連の機能を経る処理により、雷放電路モデルM(図1参照)が構築される(推定される)。雷放電路モデルM(図1参照)が構築されることで、雷の電波の状況と雷放電路モデルM(図1参照)の情報とで、構造物1が建てられた場所の大地4での電流の状況が求められる。
【0037】
尚、構造物1に落ちた雷の電波の状況(電界の経時変化)、雷の電流が計測されてデータ化された蓄積データなどに基づいて、構造物1の高さや構造仕様などを加味した演算により、雷放電路モデルM(図1参照)を構築することも可能である。
【0038】
構造物1を用いて推定された雷放電路モデルM(図1参照)は、基準構造物である構造物1以外の構造物など(任意の場所)に雷が落ちた際に、大地の電流を求める際に適用される。つまり、任意の場所に落ちた雷の電波と、推定された雷放電路モデルM(図1参照)を用い、任意の場所の大地に落ちた状態での電流の状況を求めることができる。
【0039】
即ち、電流計を用いることなく、構造物1での落雷により推定された「雷放電路モデルM(図1参照)」と、実際の電波の状況とに基づいて、任意の場所での大地での電流の状況を推定することができる。
【0040】
電流モデル補正手段13で補正された電流の状況は電流評価手段14に送られ、電流評価手段14では、電流モデル補正手段13で求められた電流の状況に基づいて、大地4に落ちた状態の雷の電流の状況を評価する(電流パラメータを評価する)。例えば、電流波高値(ピーク値)、電流峻度、波尾長が評価される。
【0041】
これにより、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された実際に構造物1に落ちた雷の電波に基づいて、大地4に落ちた状態の雷の電流雷を導出して評価することができる。
【0042】
図3から図6に基づいて制御手段3の処理の状況(電流の推定状況)を具体的に説明する。
【0043】
電波状況導出手段11では、構造物1に落ちた雷の電波の状況(電界の経時変化)が、図3に示すように、立ち上がり時間が速い場合(図3に実線で示してある)と、立ち上がり時間が遅い場合(図3に点線で示してある)とで検出される。
【0044】
電波状況導出手段11には、雷の電波の状況(電界の経時変化)のデータが多数記憶されている。そして、図3に示した電波の状況(実際の電界の経時変化)が多数の電波の状況のデータと比較され、図3の状況に近い状況のデータが、図4に示すように、立ち上がり時間が速い場合(図4に実線で示してある)と、立ち上がり時間が遅い場合(図4に点線で示してある)とで抽出される。
【0045】
つまり、電波状況導出手段11では、雷の電波の状況(電界の経時変化)における多数のデータと実際の測定結果とが比較され、実際の測定結果に近いデータが図4として抽出される。
【0046】
電流状況導出手段12には、構造物1に落ちた雷の電流が予め計測されて、電流のデータが多数蓄積されて記憶されている。即ち、立ち上がり時間が速い状態の構造物1と大地4における雷の電流の状況のデータと、立ち上がり時間が遅い状態の構造物1と大地4における雷の電流の状況のデータとが多数記憶されている。
【0047】
電流状況導出手段12では、電波状況導出手段11から送られた電波の状況のデータ(図4に示したデータ)が、多数の電流の状況のデータと比較され、多数の電流の状況のデータの中から、図4の状況に近い状況のデータが、図5図6に示すように抽出される。
【0048】
即ち、図5に示すように、立ち上がり時間が速い状態の構造物1(実線で示してある)と大地4(一点鎖線で示してある)における雷の電流の状況のデータが図4の状況に基づいて抽出される。また、図6に示すように、立ち上がり時間が遅い状態の構造物1(実線で示してある)と大地4(一点鎖線で示してある)における雷の電流の状況のデータが図4の状況に基づいて抽出される。
【0049】
図5に示した、立ち上がり時間が速い状態の構造物1(実線で示してある)における雷の電流の状況に対する、立ち上がり時間が速い状態の大地4(一点鎖線で示してある)における雷の電流の状況の導出(補正)は、電流モデル補正手段13で実施される。つまり、電流モデル補正手段13では、構造物1に対する放電電路を大地4に落ちた状態に補正する処理が実施される。
【0050】
図6に示した、立ち上がり時間が遅い状態の構造物1(実線で示してある)における雷の電流の状況に対する、立ち上がり時間が速い状態の大地4(一点鎖線で示してある)における雷の電流の状況の導出(補正)は、電流モデル補正手段13で実施される。つまり、電流モデル補正手段13では、構造物1に対する放電電路を大地4に落ちた状態に補正する処理が実施される。
【0051】
構造物1に対する放電電路を大地4に落ちた状態に補正する処理は、例えば、構造物1の仕様{高さ(H:図1参照)や鉄骨総重量など}に基づいて構造物1の影響を取り除き、構造物1が設置された位置の大地4に雷が落ちた状態での電流モデルを作成する。具体的には、例えば、予め蓄積されたデータに基づいて、図5図6の実線に対し、予め蓄積されている一点鎖線の状態に電流の状況が補正されて補正状況とされる。
【0052】
つまり、電流状況導出手段12で導出された電流の状況を、構造物1の影響が取り除かれた多数の電流の補正状況のデータと比較し、近似する電流の補正状況を、大地4に落ちた雷の状態での電流の状況として補正される。尚、演算により補正することも可能である。
【0053】
上述した、電波状況導出手段11、電流状況導出手段12、電流モデル補正手段13での処理までの一連の機能を経る処理により、雷放電路モデルM(図1参照)が構築される(推定される)。
【0054】
電流評価手段14では、図5図6の一点鎖線で示したデータに基づいて、立ち上がり時間が速い状態、及び、立ち上がり時間が遅い状態における電流の状況に基づいて、大地4の落ちた状態の雷の電流の状況(電流状況:電流パラメータ)が評価される。例えば、電流波高値(ピーク値)、電流峻度、波尾長の少なくとも一つが評価される。
【0055】
したがって、過去の電波状況、電流状況の蓄積により、観測した電波の状況が過去のデータのどれに近いかにより雷放電路モデルM(図1参照)を推定し(電波の状況を対応させ)、推定した雷放電路モデル(電波の状況)に基づいて、構造物1の頂部1aに落ちた雷の電波から大地4に落ちた状態の電流の状況が推定される。
【0056】
このため、落雷位置標定システム(Lightning Location Systems:LLS)で観測された実際に構造物1に落ちた雷の電波の状況に基づいて、雷放電路モデルM(図1参照)を推定し、大地4に落ちた雷の電流の状況を導出することができ、構造物1が設置された大地4での雷の電流の状況を的確に推定することができる。
【0057】
前述したように、雷放電路モデルM(図1参照)が推定されることで、基準構造物である構造物1以外の構造物など(任意の場所)に雷が落ちた際に、任意の場所に落ちた雷の電波を測定することで、任意の場所に落ちた雷の電波と、推定された雷放電路モデルM(図1参照)を用い、任意の場所で電流計を用いることなく、任意の場所の大地に落ちた状態での電流の状況(電流パラメータ)を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、雷に基づく情報の提供システムの産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 構造物
2 電波計測手段
3 制御手段
4 大地
11 電波状況導出手段
12 電流状況導出手段
13 電流モデル補正手段
14 電流評価手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6