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特開2023-183953マルチコアファイバおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183953
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】マルチコアファイバおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/02 466
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097778
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武笠 和則
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AA51
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB10
2H250AB15
2H250AC64
2H250AC67
2H250AC83
2H250AC93
2H250AC98
2H250AD14
2H250AD19
2H250AD32
2H250AD33
2H250AD35
2H250AD36
2H250AD37
2H250AE11
2H250AE12
2H250AE15
2H250AE16
2H250AE25
2H250AE63
2H250AE64
2H250BB33
2H250BC01
2H250BC02
(57)【要約】
【課題】製造性の高い非結合型のマルチコアファイバおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】マルチコアファイバは、コアと、前記コアの外周を取り囲む内側クラッドとを有する複数のコアガラス体と、前記複数のコアガラス体の外周を取り囲む外側クラッドと、を備え、前記複数のコアガラス体は、長手方向に垂直な断面において略一列にかつ隣接するコアガラス体同士が接触するように配置されており、前記外側クラッドの屈折率は、前記コアの最大屈折率よりも低く、前記内側クラッドの少なくとも前記外側クラッドと隣接する外周部は、前記外側クラッドの屈折率よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアの外周を取り囲む内側クラッドとを有する複数のコアガラス体と、
前記複数のコアガラス体の外周を取り囲む外側クラッドと、
を備え、
前記複数のコアガラス体は、長手方向に垂直な断面において略一列にかつ隣接するコアガラス体同士が接触するように配置されており、
前記外側クラッドの屈折率は、前記コアの最大屈折率よりも低く、
前記内側クラッドの少なくとも前記外側クラッドと隣接する外周部は、前記外側クラッドの屈折率よりも低い
マルチコアファイバ。
【請求項2】
前記内側クラッドの少なくとも一部が、フッ素を含む石英系ガラスからなる
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項3】
前記外側クラッドは、純石英ガラス、意図的に添加されたドーパントを含まない石英系ガラス、またはフッ素を含む石英系ガラスからなる
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項4】
前記コアは、ゲルマニウム、フッ素、塩素、カリウムおよびナトリウムのうち少なくとも一つを含む石英系ガラスからなる
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項5】
所定の使用波長において伝搬モードがシングルモードである
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項6】
所定の使用波長において長さ10mにおけるコア間クロストークが-20dB以下である
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項7】
所定の使用波長において直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turn以下である
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項8】
所定の使用波長においてモードフィールド径が5μm以上である
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項9】
前記外側クラッドは、長手方向に垂直な断面において非円形である
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項10】
前記コアガラス体における、前記外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最大値が0.18%以上0.70%以下であり、
前記コアガラス体における、前記外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最小値が-1.2%以上-0.01%以下であり、
前記コアの直径が5.0μm以上16.0μm以下であり、
前記内側クラッドの外径が17.0μm以上65.0μm以下であり、
前記内側クラッドの外径の、前記コアの直径に対する比が2.0以上6.0以下であり、
前記外側クラッドの外径であるファイバ径が70.0μm以上700.0μm以下であり、前記コアの数が30以下である
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項11】
前記コアガラス体における、前記外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最大値が0.28%以上0.51%以下であり、
前記コアガラス体における、前記外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最小値が-0.70%以上-0.03%以下であり、
前記コアの直径が6.5μm以上12.0μm以下であり、
前記内側クラッドの外径が29.0μm以上55.0μm以下であり、
前記内側クラッドの外径の、前記コアの直径に対する比が2.5以上5.0以下であり、
前記外側クラッドの外径であるファイバ径が75.0μm以上250.0μm以下であり、前記コアの数が10以下である
請求項1に記載のマルチコアファイバ。
【請求項12】
コアと、前記コアの外周を取り囲む内側クラッドとを有する複数のコアガラス母材を、長手方向に垂直な方向に略一列にかつ隣接するコアガラス母材同士が接触するように配置する配置工程と、
前記配置した複数のコアガラス母材の外周を取り囲む外側クラッドを形成してマルチコアファイバ母材を形成する形成工程と、
前記形成したマルチコアファイバ母材を加熱溶融し、マルチコアファイバを線引きする線引工程と、
を備えるマルチコアファイバの製造方法。
【請求項13】
前記形成工程において、前記配置した複数のコアガラス母材の外周を取り囲むガラススートを火炎堆積法によって形成し、前記ガラススートを焼結してガラス化して前記外側クラッドとする
請求項12に記載のマルチコアファイバの製造方法。
【請求項14】
複数のバーナを用いて前記ガラススートを形成する
請求項13に記載のマルチコアファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチコアファイバおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、配列のしやすさなどのメリットから、長手方向に垂直な断面においてコアが一列に配列された一列型のマルチコアファイバが盛んに検討されている。しかしながら、このような一列型のマルチコアファイバを、穿孔法を用いて製造しようとすると、ガラス母材にコアの数だけ孔を穿設しなければならない。したがって、その製造は比較的困難である。
【0003】
これに対して、特許文献1には、幅広い溝を有するガラス板の溝に複数の光ファイバ素線を列状に配列して、その上をガラス板で覆って一体化して母材とし、一列型のマルチコアファイバを製造する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、結合型である一列型のマルチコアファイバとその製造方法とが開示されている。結合型のマルチコアファイバとは、複数のコアが、互いに光学結合しており、実質的に一つのマルチモード伝送路とみなせるマルチコアファイバである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-294755号公報
【特許文献2】特許第5603306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、複数のコア同士の光学結合が弱く、互いに独立した伝送路とみなせるような非結合型の一列型のマルチコアファイバについては、その製造性の点で改善の余地がある。なお、非結合型の場合、たとえば長さ10mにおいて、2つの隣接するコアの間のクロストーク(2コア間クロストーク(XT)とも呼ばれる)が-20dB以下である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造性の高い非結合型のマルチコアファイバおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、コアと、前記コアの外周を取り囲む内側クラッドとを有する複数のコアガラス体と、前記複数のコアガラス体の外周を取り囲む外側クラッドと、を備え、前記複数のコアガラス体は、長手方向に垂直な断面において略一列にかつ隣接するコアガラス体同士が接触するように配置されており、前記外側クラッドの屈折率は、前記コアの最大屈折率よりも低く、前記内側クラッドの少なくとも前記外側クラッドと隣接する外周部は、前記外側クラッドの屈折率よりも低い、マルチコアファイバである。
【0009】
前記内側クラッドの少なくとも一部が、フッ素を含む石英系ガラスからなるものでもよい。
【0010】
前記外側クラッドは、純石英ガラス、意図的に添加されたドーパントを含まない石英系ガラス、またはフッ素を含む石英系ガラスからなるものでもよい。
【0011】
前記コアは、ゲルマニウム、フッ素、塩素、カリウムおよびナトリウムのうち少なくとも一つを含む石英系ガラスからなるものでもよい。
【0012】
所定の使用波長において伝搬モードがシングルモードであるものでもよい。
【0013】
所定の使用波長において長さ10mにおけるコア間クロストークが-20dB以下であるものでもよい。
【0014】
所定の使用波長において直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turn以下であるものでもよい。
【0015】
所定の使用波長においてモードフィールド径が5μm以上であるものでもよい。
【0016】
前記外側クラッドは、長手方向に垂直な断面において非円形であるものでもよい。
【0017】
前記コアガラス体における、前記外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最大値が0.18%以上0.70%以下であり、1.2%以上-0.01%以下であり、前記コアの直径が5.0μm以上16.0μm以下であり、前記内側クラッドの外径が17.0μm以上65.0μm以下であり、前記内側クラッドの外径の、前記コアの直径に対する比が2.0以上6.0以下であり、前記外側クラッドの外径であるファイバ径が70.0μm以上700.0μm以下であり、前記コアの数が30以下であるものでもよい。
【0018】
前記コアガラス体における、前記外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最大値が0.28%以上0.51%以下であり、前記コアガラス体における、前記外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最小値が-0.70%以上-0.03%以下であり、前記コアの直径が6.5μm以上12.0μm以下であり、前記内側クラッドの外径が29.0μm以上55.0μm以下であり、前記内側クラッドの外径の、前記コアの直径に対する比が2.5以上5.0以下であり、前記外側クラッドの外径であるファイバ径が75.0μm以上250.0μm以下であり、前記コアの数が10以下であるものでもよい。
【0019】
本発明の一態様は、コアと、前記コアの外周を取り囲む内側クラッドとを有する複数のコアガラス母材を、長手方向に垂直な方向に略一列にかつ隣接するコアガラス母材同士が接触するように配置する配置工程と、前記配置した複数のコアガラス母材の外周を取り囲む外側クラッドを形成してマルチコアファイバ母材を形成する形成工程と、前記形成したマルチコアファイバ母材を加熱溶融し、マルチコアファイバを線引きする線引工程と、を備える、マルチコアファイバの製造方法である。
【0020】
前記形成工程において、前記配置した複数のコアガラス母材の外周を取り囲むガラススートを火炎堆積法によって形成し、前記ガラススートを焼結してガラス化して前記外側クラッドとするものでもよい。
【0021】
複数のバーナを用いて前記ガラススートを形成するものでもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれは、製造性の高い非結合型のマルチコアファイバを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態1に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
図2図2は、実施形態1に係るマルチコアファイバの屈折率プロファイルの例を示す図である。
図3図3は、実施形態2に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
図4図4は、実施形態2に係るマルチコアファイバの屈折率プロファイルの例を示す図である。
図5図5は、最大Δおよびコアガラス体直径と、2コア間クロストークとの関係の一例を示す図である。
図6図6は、コア数および伝送距離と、ファイバ径との関係の一例を示す図である。
図7図7は、波長帯に応じた、最大Δの最適最大値と最適最小値との一例を示す図である。
図8図8は、実施形態1に係るマルチコアファイバの製造方法の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態1に係るマルチコアファイバの製造方法の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態3、4、5、6に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、本明細書においては、カットオフ波長または実効カットオフ波長とは、国際通信連合(ITU)のITU-T G.650.1で定義するケーブルカットオフ波長(λcc)をいう。また、その他、本明細書で特に定義しない用語についてはG.650.1およびG.650.2における定義、測定方法に従うものとする。
【0025】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ10は、複数のコアガラス体である9個のコアガラス体11と、外側クラッド12と、を備えている。
【0026】
コアガラス体11は、コア11aと、コア11aの外周を取り囲む内側クラッド11bとを有し、長手方向に垂直な断面において略円形状である。コア11aは内側クラッド11bの略中心に位置する。
【0027】
9個のコアガラス体11は、長手方向に垂直な断面において略一列に配置されており、かつ隣接するコアガラス体11同士が接触するように配置されている。すなわち、マルチコアファイバ10は、一列型のマルチコアファイバである。
【0028】
外側クラッド12は、9個のコアガラス体11の外周を取り囲んでいる。外側クラッド12は、長手方向に垂直な断面において略円形状ある。
【0029】
つぎに、コア11aと、内側クラッド11bと、外側クラッド12との屈折率の関係について説明する。図2は、マルチコアファイバ10の屈折率プロファイルの例を示す図である。図2は、半径方向における、外側クラッド12の平均屈折率に対する比屈折率差を表している。
【0030】
コア11aは、マルチコアファイバ10の中で屈折率が最大の部分を含む。外側クラッド12の屈折率は、コア11aの最大屈折率よりも低い。
【0031】
内側クラッド11bの、少なくとも外側クラッド12と隣接する外周部は、外側クラッド12の屈折率よりも低い。内側クラッド11bは、マルチコアファイバ10の中で屈折率が最小の部分を含む。この場合、内側クラッド11bは、図2(a)のように、コア11aと隣接する内周部では、外側クラッド12の屈折率以上に屈折率が高い部分が存在してもよい。また、内側クラッド11bは、図2(b)のように、半径方向の全体で外側クラッド12の屈折率よりも屈折率が低くてもよい。なお、図2(a)、(b)の屈折率プロファイルは、W型の屈折率プロファイルとも呼ばれる。この場合、内側クラッド11bは、ディプレスト層とも呼ばれる。
【0032】
コア11a、内側クラッド11b、および外側クラッド12の構成材料について例示する。コア11a、内側クラッド11b、および外側クラッド12の構成材料は、上述の屈折率の関係を満たせば特に限定されない。たとえば、コア11aは、ゲルマニウム、フッ素、塩素、カリウムおよびナトリウムのうち少なくとも一つを含む石英系ガラスからなる。塩素は、マルチコアファイバ10の製造工程(脱水工程など)において含まれるドーパントであり、意図的に添加したものではない場合がある。ゲルマニウムは、石英系ガラスの屈折率を上昇させるドーパントである。カリウムおよびナトリウムは、石英系ガラスの屈折率を上昇させるドーパントである。フッ素は、石英系ガラスの屈折率を低下させるドーパントである。
【0033】
また、たとえば、内側クラッド11bは、石英系ガラスからなるが、その少なくとも一部(たとえば外側クラッド12の屈折率よりも低い部分)が、フッ素を含む石英系ガラスからなる。
【0034】
また、たとえば、外側クラッド12は、純石英ガラス、外側クラッド12に意図的に添加されたドーパントを含まない石英系ガラス、またはフッ素を含む石英系ガラスからなる。意図的に添加されたドーパントを含まない石英系ガラスとは、たとえば、製造工程において含まれる塩素や、製造工程においてコア11aや内側クラッド11bから拡散してきたドーパントを含む石英系ガラスである。なお、純石英ガラスとは、波長1550nmにおける屈折率が約1.444である、きわめて高純度の石英ガラスである。
【0035】
このように構成されたマルチコアファイバ10では、隣接するコアガラス体11同士が接触するように配置されているので、後述するように、火炎堆積法などを用いた製造の際に、隣接するコアガラス体11の間に空隙が生じにくい。その結果、マルチコアファイバ10は製造性が高い。
【0036】
さらに、マルチコアファイバ10では、内側クラッド11bの、少なくとも外側クラッド12と隣接する外周部は、外側クラッド12の屈折率よりも低いので、隣接するコア11a同士の2コア間XTを小さくできる。その結果、非結合型のマルチコアファイバ10が好適に実現される。これにより、マルチコアファイバ10は、たとえば、所定の使用波長において長さ10mにおける2コア間XTが-20dB以下、好ましくは-30dB以下である。ここで、所定の使用波長とは、マルチコアファイバ10を光伝送ファイバとして使用する場合に伝送する信号光の波長である。なお、マルチコアファイバ10は、使用波長において伝搬モードがシングルモードであることが好ましい。
【0037】
さらに、マルチコアファイバ10では、コア11aが直線状に並んでいるので、たとえばリボンファイバを用いてコア11aに光を入力させることが容易である。したがって、マルチコアファイバ10はその光学特性を評価することも容易である。
【0038】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。マルチコアファイバ20は、複数のコアガラス体である9個のコアガラス体21と、外側クラッド22と、を備えている。
【0039】
コアガラス体21は、コア21aと、コア21aの外周を取り囲む内側クラッド内周部21bと、内側クラッド内周部21bの外周を取り囲む内側クラッド外周部21cとを有し、長手方向に垂直な断面において略円形状である。内側クラッド内周部21bと内側クラッド外周部21cとは内側クラッドを構成している。コア21aは内側クラッドの略中心に位置する。
【0040】
9個のコアガラス体21は、長手方向に垂直な断面において略一列に配置されており、かつ隣接するコアガラス体21同士が接触するように配置されている。すなわち、マルチコアファイバ20は、一列型のマルチコアファイバである。
【0041】
外側クラッド22は、9個のコアガラス体21の外周を取り囲んでいる。外側クラッド22は、長手方向に垂直な断面において略円形状である。
【0042】
つぎに、コア21aと、内側クラッド内周部21bと、内側クラッド外周部21cと、外側クラッド22との屈折率の関係について説明する。図4は、マルチコアファイバ20の屈折率プロファイルの例を示す図である。図4は、半径方向における、外側クラッド22の平均屈折率に対する比屈折率差を表している。
【0043】
コア21aは、マルチコアファイバ20の中で屈折率が最大の部分を含む。外側クラッド22の屈折率は、コア21aの最大屈折率よりも低い。
【0044】
内側クラッドの、外側クラッド22と隣接する外周部である内側クラッド外周部21cは、外側クラッド22の屈折率よりも低い。内側クラッドは、内側クラッド外周部21cにおいて、マルチコアファイバ20の中で屈折率が最小の部分を含む。この場合、内側クラッドは、図4(a)のように、コア11aと隣接する内側クラッド内周部21bでは、外側クラッド22の屈折率以上に屈折率が高い部分が存在してもよい。なお、図4(a)、(b)の屈折率プロファイルは、トレンチ型の屈折率プロファイルとも呼ばれる。この場合、内側クラッド外周部21cは、トレンチ層とも呼ばれる。
【0045】
コア21a、内側クラッド内周部21b、内側クラッド外周部21c、および外側クラッド22の構成材料についても、上述の屈折率の関係を満たせば特に限定されない。たとえば、内側クラッド外周部21cは、内側クラッド内周部21bよりも多くのフッ素を含む石英系ガラスからなる。
【0046】
このように構成されたマルチコアファイバ20では、マルチコアファイバ10と同様に、隣接するコアガラス体21同士が接触するように配置されているので、製造性が高い。
【0047】
さらに、マルチコアファイバ20では、外側クラッド22と隣接する内側クラッド外周部21cは、外側クラッド22の屈折率よりも低いので、非結合型のマルチコアファイバ10が好適に実現される。これにより、マルチコアファイバ20は、たとえば、所定の使用波長において長さ10mにおける2コア間XTが-20dB以下、好ましくは-30dB以下である。なお、マルチコアファイバ20は、使用波長において伝搬モードがシングルモードであることが好ましい。
【0048】
さらに、マルチコアファイバ20では、コア21aが直線状に並んでいるので、たとえばリボンファイバを用いてコア21aに光を入力させることが容易である。したがって、マルチコアファイバ20はその光学特性を評価することも容易である。
【0049】
(マルチコアファイバの好適な特性)
つぎに、実施形態に係るマルチコアファイバの好適な特性について説明する。マルチコアファイバの使用波長は、光通信に使用される波長帯に属する。そのような波長帯は、たとえば、800~900nm帯、1.0μm帯(たとえば1000nm~1100nm)、1.3μm帯(たとえば1260nm~1360nm)、C-band(たとえば1530nm~1565nm)、L-band(たとえば1565nm~1625nm)などである。
【0050】
本発明者は、上記各波長帯において、実施形態に係るマルチコアファイバに関する数多くのシミュレーション計算や実験を行った。その結果、実施形態に係るマルチコアファイバにおいて、使用波長かつ長さ10mにおける2コア間XTが-20dB以下、好ましくは-30dB以下であるという特性を実現できることを確認した。
【0051】
また、本発明者は、使用波長において長さ10mにおける2コア間XTが-20dB以下という特性を得るためには、マルチコアファイバにおいて、使用波長において直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turn以下であるものとすることが好ましいことを確認した。
【0052】
また、実施形態に係るマルチコアファイバに関して同種のマルチコアファイバ同士の融着接続実験を行ったところ、使用波長においてモードフィールド径が5μm以上であると、複数のコアの平均の接続損失を0.5dB以下とでき、好ましいことを確認した。
【0053】
そして、使用波長において、長さ10mにおいて2コア間XTが-20dB以下、直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turn以下、およびモードフィールド径が5μm以上を実現するためには、構造パラメータが以下の条件であることが好ましいことを確認した。
【0054】
すなわち、マルチコアファイバにおける構造パラメータとして、コアガラス体における、外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最大値が0.18%以上0.70%以下であり、コアガラス体における、外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最小値が-1.2%以上-0.01%以下であり、コアの直径が5.0μm以上16.0μm以下であり、内側クラッドの外径が17.0μm以上65.0μm以下であり、内側クラッドの外径の、コアの直径に対する比が2.0以上6.0以下であり、外側クラッドの外径であるファイバ径が70.0μm以上700.0μm以下であることが好ましい。
【0055】
なお、コアガラス体における、外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最大値は、コアにおける最大屈折率の、外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差であり、以下では最大Δと記載する場合がある。また、コアガラス体における、外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最小値は、内側クラッドにおける最小屈折率の、外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差であり、以下では最小Δと記載する場合がある。
【0056】
さらには、マルチコアファイバにおける構造パラメータとして、コアガラス体における、外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最大値(最大Δ)が0.28%以上0.51%以下であり、コアガラス体における、外側クラッドの屈折率に対する比屈折率差の最小値(最小Δ)が-0.70%以上-0.03%以下であり、コアの直径が6.5μm以上12.0μm以下であり、内側クラッドの外径が29.0μm以上55.0μm以下であり、内側クラッド外径の、コアの直径に対する比が2.5以上5.0以下であり、外側クラッドの外径であるファイバ径が75.0μm以上250.0μm以下であであることが、より好ましい。
【0057】
ただし、上述した好適な構造パラメータの範囲は、使用波長帯に応じてさらに最適な範囲を選択することが好ましい。
【0058】
たとえば、使用波長がC-bandに属する場合の構造パラメータの設定について説明する。図5は、シミュレーション計算によって得られた、最大Δおよびコアガラス体直径と、2コア間XT(図中のXT)との関係の一例を示す図である。なお、図5では、最小Δを-2.5%に固定し、コアの直径は、実効カットオフ波長が1450nmになるように設定して最適化をおこなったものである。また、図5では、使用波長は1550nmとしている。
【0059】
図5に示すように、2コア間XTは、グラフの左下の領域で10dB~20dBであるが、グラフの右上に向かうにしたがって徐々に小さくなり、最も右上の領域では-120dB~-110dBである。なお、図中、線L1は、2コア間XTが-20dBであることを示す線であり、線L1より上側の領域では、2コア間XTが-20dBより小さい。また、図中、線L2は、直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turnであることを示す線であり、線L2より右側の領域では直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turnより小さい。また、図中、線L3は、伝送損失が0.5dBであることを示す線であり、線L3より左側の領域では伝送損失が0.5dBより小さい。
【0060】
図5に示すように、最大Δおよびコアガラス体直径は、要求される曲げ損失や伝送損失や2コア間XTに応じて、最適な組み合わせを設定することができる。また、最大Δを高くした場合は、伝送損失が増えるとともに、モードフィールド径が小さくなるので、接続特性も考慮して構造パラメータを設計することが好ましい。
【0061】
また、コアガラス体直径を大きくした場合は、2コア間XTの低減のためには好ましいが、ファイバ径(外側クラッドの外径)が増大する。また、ファイバ径を一定にしながら2コア間XTを低減させようとすると、マルチコアファイバに含まれるコアガラス体の数(すなわちコアの数)が少なくなる。したがって、構造パラメータを設定する際に、どの程度の伝送距離(マルチコアファイバの長さ)、コアの数、ファイバ径をターゲットとするかは重要である。
【0062】
図6は、コア数および伝送距離と、ファイバ径との関係の一例を示す図である。図6では、伝送距離(マルチコアファイバの長さ)において2コア間XTとして-30dBが得られるように構造パラメータを設定している。また、図6では、使用波長は1550nmとしている。
【0063】
図6に示すように、ファイバ径は、グラフの左下の領域で100μm~120μmであるが、グラフの右上に向かうにしたがって徐々に大きくなり、最も右上の領域では520μm~540μmである。
【0064】
図6から、たとえば、ファイバ径のターゲットを160μmとした場合には、伝送距離が10mの場合コア数は6であり、伝送距離が1kmの場合コア数は5であり、伝送距離が50kmの場合コア数は4である。また、伝送距離が100mで、コア数を8にしたい場合は、ファイバ径を250μm程度まで増大する必要がある。また、ファイバ径を典型的な125μmとしたい場合は、伝送距離が100mの場合は、コア数は4程度が限界である。
【0065】
このように、或るファイバ径において実現できるコア数は、使用波長や伝送距離などに依存する。したがって、所望のコア数を実現したい場合は、使用波長や伝送距離などに応じて、ファイバ径を設定すればよい。なお、コア数は特に限定されないが、たとえば30以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0066】
なお、後述するように、実施形態に係るマルチコアファイバにおいて、外側クラッドが長手方向に垂直な断面において非円形である場合がある。この場合、ファイバ径とは、外側クラッドの長手方向に垂直な断面において最も長い部分の長さとして定義できる。
【0067】
また、構造パラメータの最適な範囲は、使用波長などに依存するので、使用波長に応じて適切な構造パラメータを設定することが好ましい。たとえば、図7は、波長帯に応じた、最大Δの最適最大値と最適最小値との一例を示す図である。なお、最適最大値および最適最小値は、シングルモード伝搬、長さ10mにおいて2コア間XTが-20dB以下、直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turn以下、およびモードフィールド径が5μm以上という特性を得る観点から最適な値である。図7に示すように、最大Δの最適な最小値、最適な最大値、およびその範囲は、波長帯によって異なり、かつ波長帯が長くなるにつれて大きくなる傾向にある。
【0068】
さらに、表1は、本発明者が体系的な検討の結果得た、それぞれの波長帯での、構造パラメータの好適な範囲を示す表である。なお、この好適な範囲は、シングルモード伝搬、長さ10mにおいて2コア間XTが-20dB以下、直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turn以下、およびモードフィールド径が5μm以上という特性を得る観点から好適な範囲である。表1に示すように、波長帯に応じて適正な構造パラメータの組み合わせとすることで、一列型で非結合型のマルチコアファイバとして好適な特性が得られる。なお、コアの数については特に限定されないが、ファイバ径の過度な増大を抑制する観点からは、いずれの波長帯でもコアの数は4以上10以下程度が好ましい。
【表1】
【0069】
(製造方法)
実施形態に係るマルチコアファイバの製造方法の一例について、図8、9を参照して説明する。本例に係るマルチコアファイバの製造方法は、実施形態1に係るマルチコアファイバの製造方法の一例であって、少なくとも、配置工程と、形成工程と、線引工程と、を有する。
【0070】
配置工程では、図8(a)に示すように、9本のコアガラス母材110を、長手方向に垂直な方向に、略一列に、かつ隣接するコアガラス母材110同士が接触するように配置し、支え治具などでコアガラス母材110を固定する。ここで、長手方向は、図面に垂直な方向であり、長手方向に垂直な方向は、図面左右方向である。
【0071】
コアガラス母材110は、コア110aと、コア110aの外周を取り囲む内側クラッド110bとを有し、長手方向に垂直な断面において略円形状である。コアガラス母材110は、マルチコアファイバ10のコアガラス体11となる部分である。コア110aはコア11aとなる部分であり、内側クラッド110bは内側クラッド11bとなる部分である。このようなコアガラス母材110は、VAD(Vapor-phase Axial Deposition)法をはじめとする気相法などをベースに一括で作製することが可能である。
【0072】
形成工程では、配置した9本のコアガラス母材110の外周を取り囲む外側クラッドを形成して、マルチコアファイバ母材を形成する。本例の形成工程では、配置した9本のコアガラス母材110の外周を取り囲むガラススートを火炎堆積法によって形成し、そのガラススートを焼結してガラス化して外側クラッドとする。
【0073】
具体的には、図8(a)~図8(c)に示すように、火炎堆積法(たとえばOVD(Outside Vapor Deposition)法)を実施するための2本のバーナB1、B2を、9本のコアガラス母材110を図面上下方向から挟むように配置する。そして、バーナB1、B2をコアガラス母材110の配列方向(図面左右方向)の第1の一端側から第2の一端側に移動させながら、コアガラス母材110にガラススート120を堆積させる。バーナB1、B2が第2の一端側の所定位置に到達したら、バーナB1、B2を第2の一端側に移動させる、すなわちバーナB1、B2をコアガラス母材110の配列方向において往復移動させる。
【0074】
つづいて、図9(a)に示すように、バーナB1を、矢印Arで示すように往復距離が徐々に小さくなるように往復移動させる。なお、図9(a)にはバーナB1のみ図示してあるが、バーナB2もバーナB1と同じように往復移動させる。これにより、ガラススート120は、長手方向に垂直な断面においてコアガラス母材110の配列方向の中央部が膨らむように堆積し、円形状に近くなる。なお、形状を円形状に近づけるために、バーナB1、B2の往復移動速度や単位時間当たりのガラススート120の堆積量などを調整してもよい。
【0075】
つづいて、図9(b)に示すように、コアガラス母材110にガラススート120が堆積したものである中間体を、長手方向に垂直な軸回りに回転させながら、バーナB1とバーナB2(図9(b)では不図示)とでさらにガラススート120を堆積させる。このとき、回転速度や単位時間当たりのガラススート120の堆積量などを調整することにより、ガラススート120の形状を長手方向に垂直な断面においてさらに円形状に近づける。
【0076】
その後、ガラススート120を焼結してガラス化し、マルチコアファイバ母材の外側クラッドを形成する。これにより、マルチコアファイバ母材が形成される。
【0077】
線引工程では、マルチコアファイバ母材を公知の線引き装置を用いて加熱溶融し、線引きを行う。これにより、マルチコアファイバ10を製造することができる。
【0078】
上記製造方法では、隣接するコアガラス母材110同士が接触するように配置するため、2つのコアガラス母材110の間に、ガラススート120が堆積しない部分(空隙)が形成されにくい。このような空隙は、その後のガラススート120の堆積によっては埋めることが困難であり、かつマルチコアファイバの特性に影響を及ぼすおそれがあるので、製造性の低下の原因となり得る。したがって、上記製造方法のようにして、空隙を形成されにくくすることが、製造性の観点から有効である。また、空隙を形成されないようにすることがさらに有効である。
【0079】
また、上記製造方法では、バーナB1、B2を用いてガラススート120を形成している。このように複数のバーナを用いることで、製造時間を短縮することができ、マルチコアファイバ10の製造コストを低減できる。ただし、バーナの数は特に限定されず、1でもよいし、3以上でもよい。
【0080】
(実施例)
上記製造方法にしたがい、実施例のマルチコアファイバを作製した。実施例のマルチコアファイバは、実施形態2に係るマルチコアファイバ20の構成において、コアガラス体の数を4とした構成を有する。なお、コアガラス母材はVAD法を用いて作製した。
【0081】
実施例のマルチコアファイバにおける屈折率プロファイルは、図4(b)のような形状を有した。また、実施例のマルチコアファイバの構造パラメータは以下の通りである。すなわち、最大Δは0.38%であり、最小Δは-0.25%である。また、コアの半径は4.1μm(すなわち直径は8.2μm)である。内側クラッドの外径(すなわちコアガラス体の外径)は24μmである。内側クラッドの外径の、コアの直径に対する比は2.9である。ファイバ径は125μmである。
【0082】
実施例のマルチコアファイバを測定して得られた光学特性を表2に示す。表2では、光学特性として、ゼロ分散波長λ0、ゼロ分散波長における分散Slope、波長1310nmにおけるモードフィールド径(MFD)、カットオフ波長λcc、波長1550nmにおける伝送損失、波長1550nmにおける直径20mmで曲げたときの曲げ損失、および波長1550nmかつ長さ10mにおける2コア間XTを示している。また、4つのコアには、端から、コア1、コア2、コア3、コア4のように番号を付けた。2コア間XTにおいて、たとえば(1-2間)とは、コア1とコア2との間の2コア間XTである。
【0083】
表2に示す光学特性は、コア1、コア2、コア3、コア4のいずれにおいても好適な値である。たとえば、λccの値から分かるように、いずれのコアについても、波長1310nmにおいて伝搬モードがシングルモードである。したがって、いずれのコアについても、波長1550nmにおいても、伝搬モードがシングルモードである。
【0084】
また、たとえば、いずれの2コア間においても、波長1550nmかつ長さ10mにおける2コア間XTが-30dB以下である。
【0085】
また、波長1550nmにおけるコア1、コア2、コア3、コア4のモードフィールド径は、それぞれ、9.73μm、9.71μm、9.75μm、9.72μmであり、いずれも5μm以上であった。したがって、実施例のマルチコアファイバは、コア1、コア2、コア3、コア4のいずれも、使用波長を1550nmとして、シングルモード伝搬、長さ10mにおいて2コア間XTが-20dB以下、直径20mmで曲げたときの曲げ損失が1dB/turn以下、およびモードフィールド径が5μm以上という特性を満たしていた。
【0086】
また、実施例のマルチコアファイバについて、波長1310nmにおいて2コア間XTを測定したところ、長さ100mにおいて-30dB以下の値が得られた。
【表2】
【0087】
(その他の実施形態)
図10は、その他の実施形態としての、実施形態3、4、5、6に係るマルチコアファイバの長手方向に垂直な面における模式的な断面図である。これらのマルチコアファイバは、外側クラッドが、長手方向に垂直な断面において非円形である。
【0088】
図10(a)は、実施形態3に係るマルチコアファイバ30についての図である。マルチコアファイバ30は、9個のコアガラス体11と、外側クラッド32と、を備えている。マルチコアファイバ30は、図1に示す実施形態1に係るマルチコアファイバ10において、外側クラッド12を外側クラッド32に置き換えた構成を有する。
【0089】
外側クラッド32は、長手方向に垂直な断面が楕円形状である点以外は外側クラッド12と同じであるので、重複する説明を省略する。このようなマルチコアファイバ30も、マルチコアファイバ10と同様に、製造性が高い非結合型のマルチコアファイバである。たとえば、外側クラッド32の楕円形状は、上述した製造方法の例において、バーナの往復移動速度やコアガラス母材の回転速度や単位時間当たりのガラススートの堆積量などを調整することにより実現可能である。
【0090】
図10(b)は、実施形態4に係るマルチコアファイバ40についての図である。マルチコアファイバ40は、9個のコアガラス体11と、外側クラッド42と、を備えている。マルチコアファイバ40は、マルチコアファイバ10において、外側クラッド12を外側クラッド42に置き換えた構成を有する。
【0091】
外側クラッド42は、長手方向に垂直な断面が円盤形状である点以外は外側クラッド12と同じであるので、重複する説明を省略する。このようなマルチコアファイバ40も、マルチコアファイバ10と同様に、製造性が高い非結合型のマルチコアファイバである。たとえば、外側クラッド42の円盤形状は、上述した製造方法の例において、バーナの往復移動速度やコアガラス母材の回転速度や単位時間当たりのガラススートの堆積量などを調整することにより実現可能である。
【0092】
図10(c)は、実施形態5に係るマルチコアファイバ50についての図である。マルチコアファイバ50は、9個のコアガラス体11と、外側クラッド52と、を備えている。マルチコアファイバ50は、マルチコアファイバ10において、外側クラッド12を外側クラッド52に置き換えた構成を有する。
【0093】
外側クラッド52は、長手方向に垂直な断面が長方形状である点以外は外側クラッド12と同じであるので、重複する説明を省略する。このようなマルチコアファイバ50も、マルチコアファイバ10と同様に、製造性が高い非結合型のマルチコアファイバである。たとえば、外側クラッド42の長方形状は、上述した製造方法の例において、図9のようなバーナの往復移動距離の調整やコアガラス母材の回転をしなくても、図8のようなバーナの往復移動だけで実現可能である。
【0094】
図10(d)は、実施形態6に係るマルチコアファイバ60についての図である。マルチコアファイバ60は、実施形態5に係るマルチコアファイバ50の外側クラッド52の外周を取り囲むように2層の被覆層63、64を設けた構成を有する。被覆層63、64は、樹脂からなる。この樹脂は、たとえば、紫外線硬化樹脂であるが、光ファイバの被覆として使用される樹脂であれは特に限定されない。このように被覆層63、64を設けることで、マルチコアファイバ60のガラス部分が保護される。なお、被覆層は2層に限られず、1層や3層以上でもよい。
【0095】
また、被覆層63、64のような被覆層は、他の実施形態1~4に係るマルチコアファイバに設けてもよい。外側クラッドが長手方向に垂直な断面において非円形である場合も、被覆プロセスの最適化によって、好適な被覆層を形成することができる。
【0096】
なお、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10、20、30、40、50、60 :マルチコアファイバ
11、21 :コアガラス体
11a、110a :コア
11b、110b :内側クラッド
12、22、32、42、52 :外側クラッド
21a :コア
21b :内側クラッド内周部
21c :内側クラッド外周部
63、64 :被覆層
110 :コアガラス母材
120 :ガラススート
Ar :矢印
B1、B2 :バーナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10