IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

特開2023-184044半導体ウェーハの製造方法、及び半導体ウェーハ
<>
  • 特開-半導体ウェーハの製造方法、及び半導体ウェーハ 図1
  • 特開-半導体ウェーハの製造方法、及び半導体ウェーハ 図2
  • 特開-半導体ウェーハの製造方法、及び半導体ウェーハ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184044
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの製造方法、及び半導体ウェーハ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20231221BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 21/322 20060101ALI20231221BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20231221BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20231221BHJP
   C30B 25/20 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/205
H01L21/322 Y
H01L21/324 X
C30B29/06 504G
C30B25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097941
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 温
【テーマコード(参考)】
4G077
5F045
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077BA04
4G077DB04
4G077EA02
4G077EB01
4G077ED06
4G077GA01
4G077HA12
4G077TA07
4G077TB02
5F045AA06
5F045AB02
5F045AC01
5F045AC05
5F045AC08
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AD15
5F045AD16
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045AE25
5F045AF03
5F045BB12
5F045DA52
5F045DA59
5F045EK26
5F045EK27
5F045HA16
5F152LL03
5F152NN03
5F152NP03
5F152NP30
5F152NQ03
(57)【要約】
【課題】ウェーハ表面にSiCの析出が無く、その他の欠陥も抑制されたカーボンを含有するシリコン層を含む半導体ウェーハを製造するための方法を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体ウェーハの製造方法であって、(1)シリコン基板上に、第一の温度にて、カーボンがドープされたシリコン膜を形成する工程、(2)前記カーボンがドープされたシリコン膜上に、前記第一の温度にて、カーボンがドープされていないシリコン膜を形成することで、積層ウェーハを得る工程、及び(3)前記積層ウェーハを前記第一の温度よりも高い第二の温度にてアニールするか、もしくは、前記積層ウェーハ上に前記第二の温度にてさらに成膜を行うことで、半導体ウェーハを得る工程、を有することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの製造方法であって、
(1)シリコン基板上に、第一の温度にて、カーボンがドープされたシリコン膜を形成する工程、
(2)前記カーボンがドープされたシリコン膜上に、前記第一の温度にて、カーボンがドープされていないシリコン膜を形成することで、積層ウェーハを得る工程、及び
(3)前記積層ウェーハを前記第一の温度よりも高い第二の温度にてアニールするか、もしくは、前記積層ウェーハ上に前記第二の温度にてさらに成膜を行うことで、半導体ウェーハを得る工程、
を有することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記第一の温度を、400℃~1000℃とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記第一の温度を、600℃~800℃とすることを特徴とする請求項2に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚を、5nm~200nmとすることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚を、5nm~50nmとすることを特徴とする請求項4に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+17atoms/cm以上、4.5E+22atoms/cm以下とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+18atoms/cm以上、2.0E+22atoms/cm以下とすることを特徴とする請求項6に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+19atoms/cm以上、5.0E+21atoms/cm以下とすることを特徴とする請求項7に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項9】
半導体ウェーハであって、
前記半導体ウェーハは、少なくとも、上面と下面を有するシリコン基板、該シリコン基板の上面に形成されたカーボンがドープされたシリコン膜、及び該カーボンがドープされたシリコン膜上に形成されたカーボンがドープされていないシリコン膜を有するものであり、かつ、
前記半導体ウェーハは、前記シリコン基板の下面と反対側の表面にSiCが析出していないものであることを特徴とする半導体ウェーハ。
【請求項10】
前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚が、5nm~200nmであることを特徴とする請求項9に記載の半導体ウェーハ。
【請求項11】
前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚が、5nm~50nmであることを特徴とする請求項10に記載の半導体ウェーハ。
【請求項12】
前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+17atoms/cm以上、4.5E+22atoms/cm以下であることを特徴とする請求項9に記載の半導体ウェーハ。
【請求項13】
前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+18atoms/cm以上、2.0E+22atoms/cm以下であることを特徴とする請求項12に記載の半導体ウェーハ。
【請求項14】
前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+19atoms/cm以上、5.0E+21atoms/cm以下であることを特徴とする請求項13に記載の半導体ウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンを含有するシリコン層を含む半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボン(C)ドープしたシリコン(Si)では、金属ゲッタリング能や酸素捕集効果などノンドープのSiでは見られなかった特性が確認されている。上記の特性から様々なデバイスへの応用が期待できるが、高濃度のCドープSiは熱処理によってSiCが表層に析出してしまうという問題があった。デバイス応用の際にはアニールやSi層との積層化のため高温での成膜が必要になるなど、熱への安定性が求められる場面が多いため、CドープSiの熱不安定性が課題であった。
【0003】
従来のカーボンを含有するシリコン層の成膜においては、基板上にエピタキシャル層をスタック形成する場合においてターゲット炭素濃度が200ppm~5%原子の炭素を含む層を700℃以下で形成し、その後炭素を含まないキャップ層を700℃以下で形成後、エッチングガスでエッチングすることを特徴とするエピタキシャル膜スタック形成方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、エッチングという追加工程が必要なことなどによる工程数の増加によるコストアップや、欠陥など膜質への影響が議論されていない状況であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5090451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ウェーハ表面にSiCの析出が無く、その他の欠陥も抑制されたカーボンを含有するシリコン層を含む半導体ウェーハを製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、
半導体ウェーハの製造方法であって、
(1)シリコン基板上に、第一の温度にて、カーボンがドープされたシリコン膜を形成する工程、
(2)前記カーボンがドープされたシリコン膜上に、前記第一の温度にて、カーボンがドープされていないシリコン膜を形成することで、積層ウェーハを得る工程、及び
(3)前記積層ウェーハを前記第一の温度よりも高い第二の温度にてアニールするか、もしくは、前記積層ウェーハ上に前記第二の温度にてさらに成膜を行うことで、半導体ウェーハを得る工程、
を有する半導体ウェーハの製造方法を提供する。
【0007】
このようにすれば、第一の温度にてカーボンがドープされていないシリコン膜を形成することで表面にSiCの析出が無く、その他の欠陥も抑制された、カーボンを含有するシリコン層を含む半導体ウェーハを製造することができる。
【0008】
また、前記第一の温度を、400℃~1000℃とすることが好ましい。
【0009】
このとき、前記第一の温度を、600℃~800℃とすることがより好ましい。
【0010】
このような温度でカーボンがドープされたシリコン膜とカーボンがドープされていないシリコン膜を形成することが望ましい。
【0011】
また、前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚を、5nm~200nmとすることが好ましい。
【0012】
このとき、前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚を、5nm~50nmとすることがより好ましい。
【0013】
カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚をこのような厚さにすれば、本発明の効果をより確実に発揮することができる。
【0014】
また、前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+17atoms/cm以上、4.5E+22atoms/cm以下とすることが好ましい。
【0015】
このとき、前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+18atoms/cm以上、2.0E+22atoms/cm以下とすることがより好ましい。
【0016】
このとき、前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+19atoms/cm以上、5.0E+21atoms/cm以下とすることがさらに好ましい。
【0017】
カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度をこのような範囲とすることが、実用面において好ましい。
【0018】
また本発明では、
半導体ウェーハであって、
前記半導体ウェーハは、少なくとも、上面と下面を有するシリコン基板、該シリコン基板の上面に形成されたカーボンがドープされたシリコン膜、及び該カーボンがドープされたシリコン膜上に形成されたカーボンがドープされていないシリコン膜を有するものであり、かつ、
前記半導体ウェーハは、前記シリコン基板の下面と反対側の表面にSiCが析出していないものである半導体ウェーハを提供する。
【0019】
本発明の半導体ウェーハの製造方法により、このような熱による劣化のないカーボンを含有するシリコン層を含むとともに表面のカーボンがドープされていないシリコン膜の膜質も良好な半導体ウェーハを製造することができる。
【0020】
また、前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚が、5nm~200nmであることが好ましい。
【0021】
このとき、前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚が、5nm~50nmであることがより好ましい。
【0022】
カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚がこのような厚さであれば、本発明の効果をより確実に発揮することができる。
【0023】
また、前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+17atoms/cm以上、4.5E+22atoms/cm以下であることが好ましい。
【0024】
このとき、前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+18atoms/cm以上、2.0E+22atoms/cm以下であることがより好ましい。
【0025】
このとき、前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+19atoms/cm以上、5.0E+21atoms/cm以下であることがさらに好ましい。
【0026】
カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度がこのような範囲であれば、実用面において好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、カーボンがドープされたシリコン膜を形成後に同一温度にて前記カーボンがドープされたシリコン膜の上にカーボンがドープされていないシリコン膜を形成することで、その後の高温の熱処理によるカーボンがドープされたシリコン膜の熱による劣化を防ぎ、良質なカーボンがドープされたシリコン層を含むとともに表面のカーボンがドープされていないシリコン膜の膜質も良好な半導体ウェーハを製造可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の半導体ウェーハの製造方法の第一態様の一例を示すフロー図である。
図2】本発明の半導体ウェーハの製造方法の第二態様の一例を示すフロー図である。
図3】実施例と比較例における半導体ウェーハ成膜時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
上述のように、熱による劣化を防ぎつつ、カーボンを含有するシリコン層を含む半導体ウェーハを製造するための方法の開発が求められていた。
【0030】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ゲッタリング効果を持つエピタキシャルウェーハにおいて、炭素濃度が1.0E+17atoms/cm以上4.5E+22atoms/cm以下となるようにドープしたシリコンエピタキシャル層と、その上の炭素をドープしないシリコンエピタキシャル層をどちらも700℃、圧力1~80Torrで形成した後に、デバイス活性層となるシリコンエピタキシャル層を1080℃で形成することにより、エピタキシャル層表面の炭素ドープエピタキシャル層由来の欠陥を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0031】
即ち、本発明は、半導体ウェーハの製造方法であって、(1)シリコン基板上に、第一の温度にて、カーボンがドープされたシリコン膜を形成する工程、(2)前記カーボンがドープされたシリコン膜上に、前記第一の温度にて、カーボンがドープされていないシリコン膜を形成することで、積層ウェーハを得る工程、及び(3)前記積層ウェーハを前記第一の温度よりも高い第二の温度にてアニールするか、もしくは、前記積層ウェーハ上に前記第二の温度にてさらに成膜を行うことで、半導体ウェーハを得る工程、を有する半導体ウェーハの製造方法である。
【0032】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
[半導体ウェーハの製造方法]
本発明の半導体ウェーハの製造方法は、工程(1)と工程(2)で第一の温度にてシリコン基板上にカーボンがドープされたシリコン膜とその上のカーボンがドープされていないシリコン膜を形成して積層ウェーハを得た後、工程(3)で第一の温度よりも高い第二の温度にて積層ウェーハ上にさらに成膜を行う態様(第一態様)と、工程(1)と工程(2)を第一態様と同様に行い積層ウェーハを得た後、工程(3)で第一の温度よりも高い第二の温度にて積層ウェーハのアニールを行う態様(第二態様)とを含む。以下、図面を参照して各態様を詳細に説明する。
【0034】
[第一態様]
図1に、本発明の半導体ウェーハの製造方法の第一態様の一例を示すフロー図を示す。第一態様では、下記の工程(1)~(3)を行うことによって半導体ウェーハを得る。以下、図1に沿って第一態様を説明する。
【0035】
<工程(1)>
工程(1)は、図1に示すように、シリコン基板1上に、第一の温度にて、カーボンがドープされたシリコン膜2を形成する工程である。
【0036】
シリコン基板1としては特に限定はされないが、単結晶シリコン基板であることが好ましい。単結晶シリコン基板としても特に限定はされず、CZ基板であっても、FZ基板であってもよい。また、ノンドープであってもよいし、ドープされていてもよい。ドープされている場合には、n型であってもp型であってもよい。n型の場合には、例えば、P、Sb、又はAsドープとすることができる。p型の場合には、例えば、B、Al、又はGaドープとすることができる。その他、基板の方位、直径、抵抗率等にも特に制限はない。
【0037】
このようなシリコン基板1上に、例えばCVD、好ましくはRP-CVD(減圧CVD)により、第一の温度にてカーボンがドープされたシリコン膜(シリコンエピタキシャル層)2を形成する。このとき使用する原料ガスは、例えば、炭素源としてはモノメチルシランやトリメチルシラン、シリコン源としてはジクロロシランやモノシランを用いる。しかし、原料ガスはこれに限らない。このときの成膜温度が「第一の温度」であり、例えば400~1000℃、好ましくは600~800℃とすることができるが、これに限定されない。シリコン層にドープする炭素原子濃度は、原料ガスの流量や成膜温度によって調整することができる。また、CVD時の圧力は1~80Torr(133~10640Pa)とすることができる。
【0038】
カーボンがドープされたシリコン膜2の炭素原子濃度は、好ましくは1.0E+17atoms/cm以上4.5E+22atoms/cm以下であり、より好ましくは1.0E+18atoms/cm以上2.0E+22atoms/cm以下である、さらに好ましくは1.0E+19atoms/cm以上5.0E+21atoms/cm以下である。なお、炭素原子濃度はSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)により確認することができる。
【0039】
カーボンがドープされたシリコン膜2の膜厚は特に限定されないが、例えば、10~1000nm、好ましくは20~500nm、より好ましくは30~200nmとすることができる。
【0040】
<工程(2)>
工程(2)は、図1に示すように、カーボンがドープされたシリコン膜2上に、第一の温度にて、カーボンがドープされていないシリコン膜3を形成することで、積層ウェーハ10を得る工程である。
【0041】
カーボンがドープされていないシリコン膜(シリコンエピタキシャル層)3も、例えばCVD、好ましくはRP-CVD(減圧CVD)により形成することができる。このとき使用する原料ガスは、例えば、ジクロロシランやモノシランを用いる。しかし、原料ガスはこれに限らない。また、CVD時の圧力は1~80Torrとすることができる。ただし、カーボンがドープされていないシリコン膜3は、上述のカーボンがドープされたシリコン膜2の成膜温度と同一温度(すなわち、第一の温度)にて形成する。
【0042】
なお、工程(1)と工程(2)は、同じCVD装置で行ってもよいし、別のCVD装置で行ってもよい。
【0043】
第一の温度にて形成されたカーボンがドープされていないシリコン膜はSi-Cap層として機能し、後述の工程(3)における第一の温度よりも高い第二の温度にてさらに成膜を行う際に、高温によってカーボンがドープされたシリコン膜2からカーボンが上層へ拡散するのを抑制することができる。
【0044】
カーボンがドープされていないシリコン膜3の膜厚は、例えば、5nm~200nm、好ましくは5nm~50nmとすることができる。このような膜厚とすれば、カーボンがドープされたシリコン膜2からカーボンが半導体ウェーハ表面へ拡散するのをより確実に抑制することができる。
【0045】
<工程(3)>
工程(3)は、図1に示すように、積層ウェーハ10上に第一の温度よりも高い第二の温度にてさらに成膜を行うことで、半導体ウェーハ100を得る工程である。なお、図1では積層ウェーハ10上にデバイス活性層となるシリコン膜4をさらに成膜した例を挙げているが、本工程でさらに成膜する層はこれに限定されない。
【0046】
デバイス活性層となるシリコン膜(シリコンエピタキシャル層)4も、例えばCVD、好ましくはRP-CVD(減圧CVD)により形成することができる。このとき使用する原料ガスは、例えば、ジクロロシランやモノシランを用いる。しかし、原料ガスはこれに限らない。また、CVD時の圧力は1~80Torrとすることができる。ただし、本工程における成膜は、第一の温度よりも高い第二の温度にて行う。
【0047】
第二の温度としては、第一の温度より高い温度であれば特に限定はされないが、例えば、800℃以上とすることができ、好ましくは1000~1200℃である。
【0048】
本工程でさらに成膜するデバイス活性層となるシリコン膜4の膜厚には特に制限はなく、用途に応じて適切な膜厚に設定すればよい。
【0049】
なお、工程(3)は、工程(2)と同じCVD装置で行ってもよいし、別のCVD装置で行ってもよい。
【0050】
本発明では、工程(3)における高温(第二の温度)による成膜を、カーボンがドープされたシリコン膜2の直上にではなく、その上に低温(第一の温度)で形成されたカーボンがドープされていないシリコン膜(Si-Cap層)3の上に行う。これにより、カーボンがドープされたシリコン膜2から上層へカーボンが拡散するのを抑制することができる。したがって、本発明によって製造された半導体ウェーハ100は、デバイス活性層となるシリコン膜4中にカーボンが拡散していないもの、すなわち、エピタキシャル層の表面にSiCの析出がないものとなる。
【0051】
[第二態様]
図2に、本発明の半導体ウェーハの製造方法の第二態様の一例を示すフロー図を示す。本発明の半導体ウェーハの製造方法の第二態様では、下記の工程(1)~(3)を行うことによって半導体ウェーハを得る。以下、図2に沿って第二態様を説明する。
【0052】
<工程(1)>
工程(1)は、図2に示すように、シリコン基板1上に、第一の温度にて、カーボンがドープされたシリコン膜2を形成する工程である。工程(1)については、上述の第一態様のところで説明した通りである。
【0053】
<工程(2)>
工程(2)は、図2に示すように、カーボンがドープされたシリコン膜2上に、第一の温度にて、カーボンがドープされていないシリコン膜3を形成することで、積層ウェーハ10を得る工程である。工程(2)についても、上述の第一態様のところで説明した通りである。
【0054】
<工程(3)>
工程(3)は、図2に示すように、積層ウェーハ10を第一の温度よりも高い第二の温度にてアニールすることで、半導体ウェーハ100を得る工程である。
【0055】
アニールを行う際の第二の温度としては、第一の温度より高い温度であれば特に限定はされないが、例えば、800℃以上とすることができる。好ましくは1000~1200℃である。
【0056】
第二態様においては、工程(3)の高温(第二の温度)によるアニールを、カーボンがドープされていないシリコン膜(Si-Cap層)3を低温(第一の温度)で形成した後に行う。したがって、第一態様と同様、高温下においてカーボンがドープされたシリコン膜2から上層へカーボンが拡散するのを抑制することができる。本発明の第二態様によって製造された半導体ウェーハ100も、エピタキシャル層の表面にSiCの析出がないものとなる。
【0057】
[半導体ウェーハ]
また本発明では、少なくとも、上面と下面を有するシリコン基板、該シリコン基板の上面に形成されたカーボンがドープされたシリコン膜、及び該カーボンがドープされたシリコン膜上に形成されたカーボンがドープされていないシリコン膜を有するものであり、かつ、前記シリコン基板の下面と反対側の表面にSiCが析出していないものである半導体ウェーハを提供する。
【0058】
本発明の半導体ウェーハは、カーボンがドープされていないシリコン膜の上にさらに別のエピタキシャル層、例えばデバイス活性層となるシリコン膜が形成されていてもよい。
【0059】
本発明の半導体ウェーハは、上述の本発明の半導体ウェーハの製造方法によって製造することができる。それゆえに、カーボンがドープされたシリコン膜からのカーボンの拡散は、その上に形成されたカーボンがドープされていないシリコン膜によって抑制されるので、エピタキシャル層の表面にはSiCが析出していない。
【0060】
したがって、本発明の半導体ウェーハは、金属ゲッタリング能や酸素捕集効果、RF特性の向上の効果があるとともに、表面のカーボンがドープされていないシリコン膜も高品質であるので、様々なデバイス(RFデバイスやCIS)に応用することができる。
【実施例0061】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例、比較例において、半導体ウェーハ表面の欠陥評価としては、KLAテンコール社製のSP3を用いてLLS欠陥の個数を測定することにより行った。
【0062】
下記の実施例1~8では、図3のフローに示すように、本発明の半導体ウェーハの製造方法における工程(1)~(3)を行った。一方、下記の比較例1~7では、図3のフローに示すように、本発明の半導体ウェーハの製造方法における工程(1)と工程(3)のみを行い、工程(2)を行わなかった。
【0063】
(実施例1)
シリコン基板上にRP-CVDを使用して、700℃、5Torrの条件下でSiHとSiH(CHを含有する混合ガス雰囲気にて、CドープSi層(炭素原子濃度:1.0E+20atoms/cm)を100nm成長させた。その後、同700℃にてCノンドープSi層(Si-cap層)を30nm成長させた。さらにその後、1080℃に昇温し、Si層を成長させて半導体ウェーハを製造した。このとき、LLSは32nmupにて16個だった。
【0064】
(実施例2)
評価する半導体ウェーハとして、CノンドープSi層(Si-cap層)の厚さを100nmとしたこと以外は実施例1と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにて25個だった。
【0065】
(実施例3)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を3.0E+21atoms/cmとしたこと以外は実施例1と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにて15個だった。
【0066】
(実施例4)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を8.0E+21atoms/cmとしたこと以外は実施例1と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにて165個だった。
【0067】
(実施例5)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を2.5E+22atoms/cmとしたこと以外は実施例1と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにて861個だった。
【0068】
(実施例6)
シリコン基板上にRP-CVDを使用して、850℃、5Torrの条件下でSiHとSiH(CH)を含有する混合ガス雰囲気にて、CドープSi層(炭素原子濃度:2.0E+19atoms/cm)を100nm成長させた。その後、同850℃にてCノンドープSi層(Si-cap層)を30nm成長させた。さらにその後、1080℃に昇温し、Si層を成長させて半導体ウェーハを製造した。このとき、LLSは32nmupにて6個だった。
【0069】
(実施例7)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を2.0E+18atoms/cmとしたこと以外は実施例6と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにて26個だった。
【0070】
(実施例8)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を4.0E+17atoms/cmとしたこと以外は実施例6と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにて12個だった。
【0071】
(比較例1)
シリコン基板上にRP-CVDを使用して、700℃、5Torrの条件下でSiHとSiH(CHを含有する混合ガス雰囲気にて、CドープSi層(炭素原子濃度:1.0E+20atoms/cm)を100nm成長させた。その後、1080℃に昇温しSi層を成長させて半導体ウェーハを製造した。このとき、LLSは32nmupにてoverloadだった。なお、overloadは、おおよそLLSが30000個以上/ウェーハであることを意味する。
【0072】
(比較例2)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を3.0E+21atoms/cmとしたこと以外は比較例1と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにてoverloadだった。
【0073】
(比較例3)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を8.0E+21atoms/cmとしたこと以外は比較例1と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにてoverloadだった。
【0074】
(比較例4)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を2.5E+22atoms/cmとしたこと以外は比較例1と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにてoverloadだった。
【0075】
(比較例5)
シリコン基板上にRP-CVDを使用して、850℃、5Torrの条件下でSiHとSiH(CH)を含有する混合ガス雰囲気にて、CドープSi層(炭素原子濃度:2.0E+19atoms/cm)を100nm成長させた。その後、1080℃に昇温し、Si層を成長させて半導体ウェーハを製造した。このとき、LLSは32nmupにてoverloadだった。
【0076】
(比較例6)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を2.0E+18atoms/cmとしたこと以外は比較例5と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにてoverloadだった。
【0077】
(比較例7)
評価する半導体ウェーハとして、炭素原子濃度を4.0E+17atoms/cmとしたこと以外は比較例5と同じ条件で半導体ウェーハを製造したところ、LLSは32nmupにてoverloadだった。
【0078】
実施例1~8、比較例1~7の結果を表1にまとめた。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から明らかなように、実施例1~8のような本発明の半導体ウェーハの製造方法によって製造された半導体ウェーハは、エピタキシャル層の表面にSiCの析出はなくLLSが非常に少なく、Si-Cap層によりカーボンの拡散が抑制されていることが分かる。特にCドープSi層の炭素濃度が3.0E21atoms/cm以下の場合において特に結果が優れていた。一方、比較例1~7では、本発明の工程(2)を実施せず、CドープSi層の上に直接、高温でデバイス活性層を成膜することによって、CドープSi層からカーボンが拡散してデバイス活性層表面にSiCが析出し、LLSは非常に多い(OverLoad)結果となった。
【0081】
本明細書は、以下の発明を包含する。
【0082】
[1]:半導体ウェーハの製造方法であって、(1)シリコン基板上に、第一の温度にて、カーボンがドープされたシリコン膜を形成する工程、(2)前記カーボンがドープされたシリコン膜上に、前記第一の温度にて、カーボンがドープされていないシリコン膜を形成することで、積層ウェーハを得る工程、及び(3)前記積層ウェーハを前記第一の温度よりも高い第二の温度にてアニールするか、もしくは、前記積層ウェーハ上に前記第二の温度にてさらに成膜を行うことで、半導体ウェーハを得る工程、を有することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【0083】
[2]:前記第一の温度を、400℃~1000℃とすることを特徴とする上記[1]に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0084】
[3]:前記第一の温度を、600℃~800℃とすることを特徴とする上記[1]又は上記[2]に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0085】
[4]:前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚を、5nm~200nmとすることを特徴とする上記[1]、上記[2]、又は上記[3]に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0086】
[5]:前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚を、5nm~50nmとすることを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、又は上記[4]に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0087】
[6]:前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+17atoms/cm以上、4.5E+22atoms/cm以下とすることを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、又は上記[5]に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0088】
[7]:前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+18atoms/cm以上、2.0E+22atoms/cm以下とすることを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、又は上記[6]に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0089】
[8]:前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度を、1.0E+19atoms/cm以上、5.0E+21atoms/cm以下とすることを特徴とする上記[1]、上記[2]、上記[3]、上記[4]、上記[5]、上記[6]、又は上記[7]に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0090】
[9]:半導体ウェーハであって、前記半導体ウェーハは、少なくとも、上面と下面を有するシリコン基板、該シリコン基板の上面に形成されたカーボンがドープされたシリコン膜、及び該カーボンがドープされたシリコン膜上に形成されたカーボンがドープされていないシリコン膜を有するものであり、かつ、前記半導体ウェーハは、前記シリコン基板の下面と反対側の表面にSiCが析出していないものであることを特徴とする半導体ウェーハ。
【0091】
[10]:前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚が、5nm~200nmであることを特徴とする上記[9]に記載の半導体ウェーハ。
【0092】
[11]:前記カーボンがドープされていないシリコン膜の膜厚が、5nm~50nmであることを特徴とする上記[9]又は上記[10]に記載の半導体ウェーハ。
【0093】
[12]:前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+17atoms/cm以上、4.5E+22atoms/cm以下であることを特徴とする上記[9]、上記[10]、又は上記[11]に記載の半導体ウェーハ。
【0094】
[13]:前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+18atoms/cm以上、2.0E+22atoms/cm以下であることを特徴とする上記[9]、上記[10]、上記[11]、又は上記[12]に記載の半導体ウェーハ。
【0095】
[14]:前記カーボンがドープされたシリコン膜の炭素原子濃度が、1.0E+19atoms/cm以上、5.0E+21atoms/cm以下であることを特徴とする上記[9]、上記[10]、上記[11]、上記[12]、又は上記[13]に記載の半導体ウェーハ。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0097】
1…シリコン基板、 2…カーボンがドープされたシリコン膜、
3…カーボンがドープされていないシリコン膜、
4…デバイス活性層となるシリコン膜、 10…積層ウェーハ、
100…半導体ウェーハ。
図1
図2
図3