(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184076
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】コンバインの測定装置
(51)【国際特許分類】
A01D 41/127 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A01D41/127 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097997
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】関 正裕
【テーマコード(参考)】
2B396
【Fターム(参考)】
2B396JC08
2B396LA21
2B396LE12
2B396LG12
2B396LJ02
2B396LN02
2B396LN13
2B396MC02
2B396MC07
2B396MC13
2B396ML02
2B396ML10
2B396QA29
2B396QC03
2B396QE24
2B396QG05
2B396QG10
2B396RA11
(57)【要約】
【課題】脱穀・選別処理された穀粒を水分センサ側に取り込むことによって、水分量を正確に把握可能であり、穀粒の詰りにも迅速に対応することが可能なコンバインの測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】水分を検出する水分センサと、脱穀装置によって脱穀・選別され且つ搬送装置によって搬送されてくる穀粒の一部を前記水分センサ側に取り込む取込装置と、前記水分センサによる検出結果に基づいて穀粒の水分量を導出する制御部と、前記制御部によって作動が制御される報知手段とを備え、前記制御部は、穀粒の水分が前記水分センサによって検出されない状態が所定時間以上継続した場合、穀粒が詰まっている状態である詰り状態と判断し、前記報知手段による報知を行う。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインの測定装置であって、
水分を検出する水分センサと、
脱穀装置によって脱穀・選別され且つ搬送装置によって搬送されてくる穀粒の一部を前記水分センサ側に取り込む取込装置と、
前記水分センサによる検出結果に基づいて穀粒の水分量を導出する制御部と、
前記制御部によって作動が制御される報知手段とを備え、
前記制御部は、穀粒の水分が前記水分センサによって検出されない状態が所定時間以上継続した場合、穀粒が詰まっている状態である詰り状態と判断し、前記報知手段による報知を行う
ことを特徴とするコンバインの測定装置。
【請求項2】
前記取込装置は、穀粒を所定の数毎に前記水分センサ側に供給するように構成され、
前記制御部は、前記水分センサによって個々の穀粒の水分量である個別水分量を導出するように構成され、
また、前記制御部は、個別水分量の導出を行った回数である導出回数をカウントし、該導出回数が2回以上の予め定めた所定回数である算出処理回数に達した場合、そのカウント中に導出された個別水分量の平均値を、その時点での穀粒の水分量である平均水分量として算出するように構成され、
さらに、前記制御部は、前記詰り状態であると判断した場合において、その判断を行なった時点での前記導出回数が、予め定めた所定の回数であって且つ算出処理回数よりも小さい値である異常時算出回数以上になっているときには、そのカウント中に導出された個別水分量の平均値を、前記平均水分量として算出する一方で、その判断を行なった時点で前記導出回数が前記異常時算出処理回数に達していないときには、前記平均水分量の算出は行わずに、前記報知手段によるエラーが発生している旨を報知するように構成された
請求項1に記載のコンバインの測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記水分センサによる水分量の導出を所定のタイミングで断続的に行うように構成され、
前記タイミングを変更する変更手段を備えた
請求項1又は2の何れかに記載のコンバインの測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水分を検出する水分センサと、脱穀装置によって脱穀・選別され且つ搬送装置によって搬送されてくる穀粒の一部を前記水分センサ側に取り込む取込装置と、前記水分センサによる検出結果に基づいて穀粒の水分量を導出する制御部とを備えたコンバインの測定装置が公知になっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
このようなコンバインによれば、搬送されてくる穀粒を取込装置によって水分センサ側に取り込み、その検出を行うため、穀粒の水分量を高い精度で導出可能になり、その水分量の導出によって、穀粒の品質を正確に把握可能になる。
【0004】
一方、上述のコンバインによれば、穀粒が、搬送装置により搬送される過程や、取込装置により水分センサ側に取り込まれる過程で、詰りが発生することがあり、その詰りに気付かない場合、穀粒の水分量が把握できない状態が意図せずに継続するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、脱穀・選別処理された穀粒を水分センサ側に取り込むことによって、水分量を正確に把握可能であり、穀粒の詰りにも迅速に対応することが可能なコンバインの測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、コンバインの測定装置であって、水分を検出する水分センサと、脱穀装置によって脱穀・選別され且つ搬送装置によって搬送されてくる穀粒の一部を前記水分センサ側に取り込む取込装置と、前記水分センサによる検出結果に基づいて穀粒の水分量を導出する制御部と、前記制御部によって作動が制御される報知手段とを備え、前記制御部は、穀粒の水分が前記水分センサによって検出されない状態が所定時間以上継続した場合、穀粒が詰まっている状態である詰り状態と判断し、前記報知手段による報知を行うことを特徴とする。
【0008】
前記取込装置は、穀粒を所定の数毎に前記水分センサ側に供給するように構成され、前記制御部は、前記水分センサによって個々の穀粒の水分量である個別水分量を導出するように構成され、また、前記制御部は、個別水分量の導出を行った回数である導出回数をカウントし、該導出回数が2回以上の予め定めた所定回数である算出処理回数に達した場合、そのカウント中に導出された個別水分量の平均値を、その時点での穀粒の水分量である平均水分量として算出するように構成され、さらに、前記制御部は、前記詰り状態であると判断した場合において、その判断を行なった時点での前記導出回数が、予め定めた所定の回数であって且つ算出処理回数よりも小さい値である異常時算出回数以上になっているときには、そのカウント中に導出された個別水分量の平均値を、前記平均水分量として算出する一方で、その判断を行なった時点で前記導出回数が前記異常時算出処理回数に達していないときには、前記平均水分量の算出は行わずに、前記報知手段によるエラーが発生している旨を報知するように構成されたものとしてもよい。
【0009】
前記制御部は、前記水分センサによる水分量の導出を所定のタイミングで断続的に行うように構成され、前記タイミングを変更する変更手段を備えたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
脱穀・選別処理された穀粒を水分センサ側に取り込むことによって、水分量を正確に把握可能であり、穀粒の詰りにも迅速に対応することが可能になる。
【0011】
また、前記取込装置は、穀粒を所定の数毎に前記水分センサ側に供給するように構成され、前記制御部は、前記水分センサによって個々の穀粒の水分量である個別水分量を導出するように構成され、また、前記制御部は、個別水分量の導出を行った回数である導出回数をカウントし、該導出回数が2回以上の予め定めた所定回数である算出処理回数に達した場合、そのカウント中に導出された個別水分量の平均値を、その時点での穀粒の水分量である平均水分量として算出するように構成され、さらに、前記制御部は、前記詰り状態であると判断した場合において、その判断を行なった時点での前記導出回数が、予め定めた所定の回数であって且つ算出処理回数よりも小さい値である異常時算出回数よりも多くなっているときには、そのカウント中に導出された個別水分量の平均値を、前記平均水分量として算出する一方で、その判断を行なった時点で前記導出回数が前記異常時算出処理回数に達していないときには、前記平均水分量の算出は行わずに、前記報知手段によるエラーが発生している旨を報知するように構成されたものによれば、詰まり状態が発生した場合でも、条件が整えば、穀粒の水分量が把握できるため、異常時の柔軟な対応が可能になる。
【0012】
また、前記制御部は、前記水分センサによる水分量の導出を所定のタイミングで断続的に行うように構成され、前記タイミングを変更する変更手段を備えたものによれば、連続的に水分量を導出する場合よりも制御部の処理量を軽減できるとともに、変更手段によって、詰り状態の発生頻度も抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用した汎用式のコンバインの側面図である。
【
図2】本発明を適用したコンバインの脱穀装置側の構成を示す要部側面図である。
【
図3】本発明を適用したコンバインの脱穀装置側の構成を示す要部正面図である。
【
図4】一番物搬送装置及び二番物搬送装置の構成を示す側面図である。
【
図5】測定装置の主要部分を構成する測定ユニットの側面図である。
【
図6】測定装置の主要部分を構成する測定ユニットの背面図である。
【
図7】測定装置の主要部分を構成する測定ユニットの平面図である。
【
図8】本コンバインに搭載された制御部の構成を示すブロック図である。
【
図10】自動変更手段を構成する自動変更処理の内容を示すフロー図である。
【
図11】別実施形態に係る測定制御の処理内容を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明を適用した汎用式のコンバインの側面図である。本発明を適用したコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1,1を有する走行機体2と、前記走行機体2の前方に位置した状態で該走行機体2に昇降可能に連結された刈取部3とを備えている。本コンバインは、刈取部3によって圃場の麦や稲等の作物(穀稈)を刈り取り、前記走行機体2の左部に設置された脱穀装置4によって、該穀稈の脱穀・選別処理を行い、その結果得られた籾等の穀粒を、走行機体2の右部に設置されたグレンタンク5まで搬送して貯留する。
【0015】
なお、本発明を適用可能なコンバインの種類は、自脱式のものであってもよいし、或いは、汎用式のものであってもよく、本例では、汎用式のものになる。また、本例では、前後左右をコンバインの前後進を基準として定めるものとする。
【0016】
図2,
図3は、本発明を適用したコンバインの脱穀装置側の構成を示す要部側面図及び要部正面図である。脱穀装置4は、その上部に位置する脱穀部12と、その下部に位置する選別部13とを有している。
【0017】
脱穀部12には、刈取部3から搬送されてくる穀稈の一部又は全部が投入される空間である扱室14が形成されている。この扱室14には、前後方向の円柱状に成形され且つその軸心を支点として回転駆動する扱胴16と、該扱胴16の直下に配置され且つ扱胴16の外周面に沿う円弧面状に成形された受網17とを備えている。
【0018】
選別部13には、受網17に隔てて扱室14の真下に形成された空間である選別室18が設けられている。選別室18の前部且つ下部に唐箕ファン6が設けられ、その上部に前後方向に形成され且つ前後に揺動作動する揺動選別体19が配置されている。唐箕ファン6は、選別室18において、後方斜め上方に向かってエアを流動させる選別風を発生させる。
【0019】
扱室14に投入された穀稈は、回転作動する扱胴16によって扱降し処理(脱穀処理)される。この脱穀処理によって、穀粒及び藁屑等の排塵物を含む処理物が、穀稈から分離される。この処理物が完全に分離された状態又は殆ど分離された状態の穀稈は、排藁等の排出物となって走行機体2の後部から機外に排出される。一方、処理物は、受網17を漏下して、選別室18内に落下して供給される。
【0020】
ちなみに、受網17から漏下せずにそこに留まったものは、上述した排塵物として、回転作動する扱胴16の作用や選別風の作用等によって後方搬送され、走行機体2の後端部から機外に搬出させる。また、排出しきれない受網上の排塵物は、扱室14にアクセスする作業者が手作業で除去することも可能である。
【0021】
選別室18に落下供給された処理物は、揺動選別体19による選別(揺動選別)及び上述した選別風による選別(風選)によって、選別室18における唐箕ファン6から近い位置に落下する一番物と、該唐箕ファン6から遠い位置に落下する二番物と、揺動選別及び風選によって選別室18の後部且つ上部に移動する上述の排塵物とに選別される。
【0022】
排塵物は、選別風等の作用によって走行機体2の後端部から機外に排出される。
【0023】
二番物は、穀粒と排塵物とが依然として混合されている状態であるものとして扱う。この二番物は、選別室18の底部における該二番物が落下する位置に左右方向に向けられた姿勢で設置された二番ラセン7によって、脱穀装置4の外側(具体的には、脱穀装置4の下端部におけるグレンタンク5側の側方位置)まで搬送され、その後、還元装置(搬送装置)21によって、選別室18の上部又は扱室14に再投入される。
【0024】
一番物は、上述した穀粒として行う。この穀粒は、選別室18の底部における該一番物が落下する位置に左右方向に向けられた姿勢で設置された一番ラセン8によって、脱穀装置4の外側(具体的には、脱穀装置4の下端部におけるグレンタンク5側の側方位置)まで搬送され、その後、穀粒搬送装置(搬送装置)22によって、グレンタンク5まで搬送されて該グレンタンク5内に収容される。
【0025】
図4は、穀粒搬送装置及び還元装置の構成を示す側面図である。上述した一番物及び二番物の落下位置の前後の位置関係から、二番ラセン7は一番ラセン8の真後ろに配置され、還元搬送装置21は穀粒搬送装置22の真後ろに配置される。また、これら2つの搬送装置21,22は、脱穀装置4におけるグレンタンク5側の側方の近傍に前後に並べて配置されている。
【0026】
還元装置21は、二番ラセン7におけるグレンタンク5側に臨んだ端部から上方に突出形成されたケースである上下方向の還元筒23を備えている。還元筒23の内部には、二番ラセン7によって搬送されてきた二番物を受け取って上方に搬送するコンベヤ装置9(
図2参照)が設けられている。このコンベヤ装置9によって還元筒23の上部まで搬送されてきる二番物は、扱室14又は選別室18の何れか一方(図示する例では扱室14)に還元される。
【0027】
穀粒搬送装置22は、
図3及び
図4に示す通り、その略全体が収容されるケース24と、一番ラセン8により搬送されてくる穀粒を受け取って上方に搬送するコンベヤ装置26と、コンベア装置26からの穀粒を受け渡すことが可能なように側面視でコンベヤ装置26の上端部の前後一方(図示する例では前方)に隣接配置され且つコンベア装置26からグレンタンク5に至る範囲に左右方向に形成された搬送ラセン27と、を備えている。
【0028】
前記ケース24は、一番ラセン8におけるグレンタンク5側に臨んだ端部から上方に突出した筒状の揚穀部28と、揚穀部28の上部から搬送ラセン27側に一体的に延設された接続部29とを一体的に有している。
【0029】
揚穀部28の内部と接続部29の内部とは互いに連通している。揚穀部28にはコンベヤ装置26の全体が収容され、このコンベア装置26によって穀粒が揚穀部28内を上方に搬送される。接続部29には、搬送ラセン27における脱穀装置4側の端部が少なくとも一部(本例では略全体)が収容され、この接続部29内の空間の一部を介して、穀粒のコンベア装置26から搬送ラセン27への受け渡しが行われる。
【0030】
前記コンベヤ装置26は、前記一番ラセン8における揚穀部28内の下部側に配置され且つエンジン等の動力源からの動力によって回転駆動される駆動スプロケット31と、揚穀部28内の上部側に遊転可能に支持された従動スプロケット32と、駆動スプロケット31及び従動スプロケット32に掛け回されて上下方向に長い長孔状の環状をなす搬送チェーン33と、該搬送チェーン33に所定間隔毎に満遍なく並べて取り付け支持された複数のバケット(搬送体)34と、を有している。
【0031】
各バケット34は、穀粒が収容可能なように一方向が開放された凹状の容器であり、搬送チェーン33によって、その形成方向に沿う環状の移動軌跡(環状軌跡)を描きながら移動作動する。
【0032】
図示する例では、このバケット34が右側面視で環状軌跡上を時計回りに移動するように、駆動スプロケット31を回転駆動させる。ちなみに、バケット34は、搬送チェーン33による移動中、その開放側が移動方向を向くようにして、該搬送チェーン33に取り付け支持されている。
【0033】
そして、バケット34は、上述した移動方向によって、前記環状軌跡の前後の範囲における搬送ラセン27から遠い側(後側)の範囲では上方に移動する一方で、搬送ラセン27から近い側(前側)の範囲では下方に移動する。
【0034】
上述した搬送チェーン33へのバケット34の取り付け支持の状態によれば、バケット34は、下方移動している最中、その開放側が下方(さらに具体的には、前方斜め下方)に向けられた姿勢である非収容姿勢で保持される一方で、上方移動している最中、その開放側が上方(さらに具体的には、後方斜め上方)に向けられた姿勢である収容姿勢で保持される。
【0035】
また、バケット34は、前記環状軌跡の下端側範囲を円弧状に移動することに伴って、その姿勢が非収容姿勢から収容姿勢に切り換えられ、この姿勢切換によって、揚穀部28内の下端側まで搬送されてくる穀粒を、所定量掬い上げて自身の中に収容する。すなわち、バケット34の姿勢を非収容姿勢から収容姿勢に切り換える動作は、揚穀部28内の下端側の穀粒をバケット34内に収容する収容動作になる。
【0036】
これに対して、バケット34は、前記環状軌跡の上端側範囲を円弧状に移動することに伴って、その姿勢が収容姿勢から非収容姿勢に切り換えられ、この姿勢切換によって、自身の内部に収容されている穀粒を、穀粒搬送ラセン27側(図示する例では前方)に放出する。すなわち、このバケット34の姿勢を収容姿勢から非収容性に切り換える動作は、前記環状軌跡の上側の範囲を移動することよって、自身の内部にある穀粒を穀粒搬送ラセン27に放出する放出動作になる。
【0037】
このような一連の動作によって、コンベア装置26は、一番ラセン8によって搬送されてくる穀粒を、順次上方に搬送し、その後、穀粒搬送ラセン27側に投げ入れて放出する。
【0038】
前記搬送ラセン27は、コンベア装置26から受け取った穀粒をグレンタンク5まで搬送するように構成されている。この搬送ラセン27の直下には、該搬送ラセン27による穀粒の搬送を効率化させる左右方向の搬送樋36が配置されている。この搬送樋36は、搬送ラセン27の直下をカバーする側面視で上方が開放された楔状をなす形状に成形されている。
【0039】
ところで、このようにしてグレンタンク5まで搬送される穀粒の水分量が分かると、該穀粒の品質を取得することが可能になるため、本コンバインには、圃場で刈り取られ且つ脱穀装置4によって脱穀・選別された穀粒の水分量を測定する測定装置が設けられている。
【0040】
次に、
図3乃至
図7に基づいて測定装置の主要部分を構成する測定ユニット38について詳述する。
【0041】
図5乃至
図7は測定装置の主要部分を構成する測定ユニットの側面図、背面図及び平面図である。図示する例では、測定装置の主要部分を構成する測定ユニット38が、穀粒搬送装置22側に配置され、この測定ユニット38は、コンベア装置26によって搬送され且つ該コンベア装置26によって搬送ラセン27側に放出される穀粒の一部を取り込むように構成されている。
【0042】
これに対応して、上述したケース24の接続部29の内部には、上述した搬送ラセン27と共に、測定装置の少なくとも一部を構成する測定ユニット38が収容されている。図示する例では、測定ユニット38が接続部29内において搬送ラセン27よりもコンベア装置26から遠い位置に配置されている。このため、コンベア装置26のバケット34の放出作動によって、搬送ラセン27を飛び越えてさらに遠くに放出された穀粒が測定ユニット38に取り込まれる。
【0043】
測定ユニット38は、コンベア装置26と対向する方向(本例では前後方向)である放出方向に対して平面視で交差する方向(本例では、左右方向)である配列方向に間隔を空けて並べて配置され且つ穀粒の品質を取得可能に構成された一対の品質取得機器39,41と、一対の品質取得機器39,41の間に形成された空間38aの放出方向の両側を覆うように設置され且つ互いに対向する一対のカバー体42,43とを備え、これらが一体的にユニット化されている。
【0044】
品質取得機器39,41の一方は個々の穀粒の水分量を取得することによって穀粒の品質を取得する水分計39であり、他方は穀粒の画像を取得することによって穀粒の品質を取得する画像取得機器41である。
【0045】
前記空間38aは、その上下方向に形成され、測定ユニット38側に投げ入れられた穀粒が取り込まれる取込スペースになる。このため、測定ユニット38の上部には、取込スペース38aの上方(具体的には、コンベア26側である後方側に向かって斜め上方)に開放する開口部であって且つコンベア装置26から放出されてくる穀粒を取り込む取込口38bが形成され、該測定ユニット38の下部には、取込スペース38aの下方(真下側)を開放する開口部であって且つ取込スペース38a内に取り込まれて落下してくる穀粒を、測定ユニット38の直下に排出する排出口38cが形成されている。
【0046】
ちなみに、コンベア装置26から放出されて穀粒ラセン27を飛び越えた穀粒は、取込口38b側まで届いて取込スペース38aに取り込まれるものと、取込口38b側までは届かずにコンベア装置26から近い側のカバー体42に衝突して搬送ラセン27側に戻されるものとに分類される。これに対応して、カバー体42側には、その表面に沿って上下にスライド移動する板状の調整部材44(
図4参照)が支持され、この調整部材44のスライド位置によって、取込口38bに開口度合いを調整することが可能になる。
【0047】
また、排出口38cから排出された穀粒は、選別室18に再投入され、上述の選別処理が再度実行される。測定ユニット38には、この排出口38cを開閉する板状の開閉部材46が設けられている。開閉部材46は、一対のカバー体42,43の間に架設された状態で設けられ且つ前記放出方向に形成された支持軸47を支点として上下揺動可能に、一対の品質取得機器39,41の何れか(図示する例では、画像取得機器41)側に支持されている。
【0048】
開閉部材46を上方に揺動した場合、該開閉部材46が前記放出方向に延びる上限ピン(規制部材)48に当接してそれよりも高い位置に上方揺動できない閉姿勢に切り換えられ、排出口38cが閉じられた状態になる。この状態では、取込スペース38aに取り込まれた穀粒が開閉部材46の上面側に貯められる状態となる。
【0049】
一方、開閉部材46を下方に揺動した場合、該開閉部材46が前記放出方向に延びる下限ピン(規制部材)49に当接してそれよりも低い位置に下方揺動できない開姿勢に切り換えられ、排出口38cが開かれた状態になる。この状態では、取込スペース38aに取り込まれた穀粒が排出口38cから排出される状態となる。
【0050】
すなわち、開閉部材46は、自身の上下揺動によって、排出状態と貯留状態とを切り換える。ちなみに、この開閉部材46は、コンベア装置26から遠い側のカバー体43における取込スペース38aに接しない側の面に沿って設置されたモータ等の開閉アクチュエータ51によって上下に揺動駆動され、その位置が制御される。
【0051】
続いて、画像取得機器41について説明すると、この画像取得機器41は、ボックス状に成形されたハウジング52と、該ハウジング52内に設置されたカメラ53と、取込スペース38a内で閉姿勢に切り換えられた開閉部材46の上面側に溜まった穀粒を前記カメラ53により撮影可能とする覗き窓54とを有している。この覗き窓54は、ハウジング52における取込スペース38aとカメラ53とを隔てる壁部に穿設された孔に嵌め込み固定される透明なパネルであり、カメラ53は、その撮影方向が覗き窓54を介して取込スペース38a側に向けられている。
【0052】
そして、カメラ53によって撮影された穀粒の画像のデータを解析することによって、該穀粒の品質を取得することが可能になる。ちなみに、カメラ53によって取込スペース38aにある穀粒を撮影する場合、開閉部材46が閉姿勢に切り換えられ、該取込スペース38aに所定量の穀粒が貯留されていることが前提になる。
【0053】
続いて、水分計39について説明すると、穀粒の水分を個別に検出する水分センサ56(
図8を参照)と、該水分センサ56の本体を収容したセンサケース57と、取込スペース38a内に落下してくる穀粒を受け止めて水分センサ56(センサケース57内)に取り込む取込機構58とを備えている。
【0054】
取込機構58は、前記並列方向に軸心を有する筒状に成形され且つ前記放出方向に並べて隣接配置された一対の搬送ローラ59,59を有している。取込口38bから取り込まれて取込スペース38aを落下してくる穀粒は、この一対の搬送ローラ59,59の外周面における上寄り部分よって受け止められる。
【0055】
この搬送装置ローラ59は、その軸心に形成された支持軸61によってセンサケース57側に回転可能に支持され、その外周には搬送溝59aが螺旋状に形成されている。一対の搬送ローラ59,59は、その一方の搬送ローラ59の回転に伴って、他方の搬送ローラ59が反対側に回転作動するように、互いの搬送溝59a,59a同士が係合している。
【0056】
2つの搬送ローラ59,59の一方はモータ等の取込アクチュエータによって回転駆動される駆動側搬送ローラになり、他方は駆動側搬送ローラの回転に伴って回転作動する従動側搬送ローラになる。一対の搬送ローラ59,59の外周面における互いに接する部分の上側近傍には、搬送ローラ59,59の軸方向視で楔形の溝状をなし且つ該軸方向に延びる整列部58aが形成される。
【0057】
駆動側搬送ローラ59を正転駆動させた場合、一対の搬送ローラ59,59は、その外周面における整列部58a側の部分が互い近づく側に変位することによって、搬送ローラ59,59上にある穀粒が整列部58aの底側に整列されるとともに、搬送溝59aの作用によって、搬送ローラ59,59の外周面の上寄り部分にある穀粒をセンサケース57側に移送する。このような一対の搬送ローラ59,59の構造によって、穀粒は、整列部58aの底側に一列に整列されながら、水分センサ56側に向かって移送させる。
【0058】
これに対応して、搬送ローラ59の軸方向視でセンサケース57における前記整列部58aが位置する部分には、センターケース57の外部の穀粒をその内部に供給する供給孔57aが穿設されている。この供給孔57aによって、搬送ローラ59,59により整列搬送される穀粒が、水分センサ56によって水分を検出可能なように、センターケース57内の前記水分センサ56側に導入される。ちなみに、供給孔57aから導入された穀粒は、センサケース57内の一対の電極ローラ上に案内される。一対の電極ローラの間に位置する穀粒は、その正転により、その間に挟まれて圧砕される。水分センサ56によって、穀粒の圧砕時における電極ローラ間での電気抵抗値が測定され、この値から該穀粒の水分量が導出される。また、このようにして水分の測定を終えた穀粒は、センサケース57から排出口38c側に導出される。
【0059】
一方、駆動側搬送ローラ59を逆転駆動させた場合、一対の搬送ローラ59,59は、その外周面における整列部58a側の部分が互い遠ざかる側に変位することによって、搬送ローラ59,59上の穀粒を、そこから落下させるとともに、搬送溝59aの作用により、搬送ローラ59,59上の穀粒を、水分センサ56から遠ざかる側に移送し、該搬送ローラ59,59から落下させる。
【0060】
すなわち、駆動側搬送ローラ59を正転駆動させることによって、一対の搬送ローラ59,59の上面側に受け止められた穀粒を、所定の数毎に水分センサ56側に供給する処理(供給処理)が実行される一方で、駆動側搬送ローラ59を逆転駆動させることによって、一対の搬送ローラ59,59の上面側に受け止められた穀粒を、該搬送ローラ59,59上から除去して落下させる処理(除去処理)が実行される。
【0061】
供給処理の実行時における水分センサ56側までまとめ供給される穀粒の数である供給単位は、予め定めた所定の範囲に収まるように設定されており、本例では、1粒毎に個別に水分センサ56に供給され、水分センサ56は1粒の穀粒毎に水分の検出を行う。なお、穀粒が2~3粒の単位毎に水分センサ56にまとめて供給されるように、上述した取込機構58を構成してもよい。ただし、その単位は、その時点以前に収穫している穀稈や穀粒の量や、脱穀や選別の処理の状態や、コンベア装置26による穀粒の搬送状態によっても変動し、常に一定になるわけではなく、許容される範囲(例えば、1~3粒の間)に収まるよう各部が設計されている。
【0062】
一方、水分センサ56は、予め定めた所定の数である検出単位(本例では1粒)の穀粒毎に検出処理が実行され、その検出の結果に応じた電気的な信号が、後述する制御部64に入力される。この検出単位は、取込機構58によって取り込まれ且つ水分センサ56に供給される穀粒の単位時間当たりの量に応じて、適切に設定されている。
【0063】
以上のような構成によれば、コンベア装置26と、ケース24内の空間と、取込口38bと、取込スペース38aと、取込機構58等とによって、穀粒搬送装置22によって搬送されてくる穀粒の一部を、水分センサ56側に取り込む取込装置の一部又は全部(本例では、全部)が構成されている。
【0064】
ところで、取込口38bを介して取込スペース38aに投げ入れられて落下してくる穀粒が、搬送ローラ59側と衝突してそのまま供給孔57aに不測に供給されること、或いは、搬送ローラ59側の穀粒に衝突し、その衝撃で搬送ローラ59側の穀粒が供給孔57aに不測に供給されることがある。
【0065】
水分計39は、上述した構造によって、穀粒を個々に水分センサ56側に供給し、一粒毎に水分の検出を行うように構成されており、その検出のタイミングも最適化されているため、水分センサ56側に不測に穀粒が供給されると、その検出精度が低下するという不具合が発生する場合がある。
【0066】
このような不測の穀粒の供給を防止する観点から、取込口38bを介して取込スペース38aに投げ入れられて落下してくる穀粒が、一対の搬送ローラ59による通常の移送過程を経ずに不測に供給孔57aに入ることを規制する規制部材62を、測定ユニット38に設けている。
【0067】
規制部材62は、取込スペース38aの内部において取込口38bから整列部58aに至る経路の途中に配置され且つ前記放出方向に厚みを有する板状に成形された規制部62aと、測定ユニット38のフレーム部分に取り付ける取付部62bとを一体的に有している。
【0068】
規制部62aは、取込口38bから取込スペース38aに取り込まれて放物線を描きながら落下してくる穀粒が、整列部58aに直接当接することを規制するように空間を隔てている。このため、取込スペース38aからみて、整列部58aの前記配列方向の全範囲が規制部62aによって遮られていることは好ましくなく、規制部62aの形成範囲を限定している。具体的には、取込スペース38aから整列部58aをみて、該整列部58aの前記配列方向のセンサケース57寄りの範囲のみが規制部62aによって遮られるように、規制部62aを配置形成している。
【0069】
ところで、開閉部材46が閉姿勢に切り換えて取込スペース38aに貯留されている穀粒の量が増加し、該穀粒が搬送ローラ59,59側まで達すると種々の不具合が発生するので、取込スペース38aの貯留される穀粒の量を、不具合が生じない予め定めた所定の量(上限量)以下に制限する必要がある。これに対応して、取込スペース38aに上限量以下の予め定めた所定の量(設定量)以上の穀粒が貯留された状態を検出するか、或いは、そこに貯留されている穀粒の量を検出する検出センサ63を、上述したカバー体42に嵌め込み固定して設けている。
【0070】
以上のように構成される測定ユニット38は、上述した通り、測定装置の一部を構成しているが、該測定装置は、その他、情報のリード・ライトが可能な記憶部、RAM及びマイコン等から構成されて各種の処理を実行する制御部64(
図8参照)によってもその一部が構成されている。言い換えると、測定装置は、上述した取込装置と、測定ユニット38及び制御部64とを有している。
【0071】
次に、
図8及び
図9に基づいて制御部64の構成を説明する。
【0072】
図8は、本コンバインに搭載された制御部の構成を示すブロック図である。制御部64には、前記測定ユニット38と、タッチパネル液晶モニタ66とが入出力可能に接続されている。
【0073】
測定ユニット38と制御部64との電気的な接続構造について説明すると、測定ユニット38のカメラ53、水分センサ56及び検出センサ63が制御部64の入力側に接続され、該測定ユニット38の開閉アクチュエータ51及び取込アクチュエータが制御部64の出力側に接続されている。
【0074】
タッチパネル液晶モニタ66は、走行機体2におけるオペレータが乗り込む操縦部65(
図1参照)に配置され、各種の情報を表示する情報出力手段として機能するとともに、タッチ操作によって各種の操作を行う操作手段としても機能する。また、タッチパネル液晶モニタ66は、各種の情報の出力により所定の事項を報知する報知手段としても機能する。
【0075】
制御部64は、前記設定量以上の量の穀粒が取込スペース38aに貯留されている状態を、検出センサ63によって検出した場合、開閉アクチュエータ51によって開閉部材46を閉姿勢から開姿勢に切り換え、取込スペース38aに貯留された穀粒を排出口38cから排出させる。制御部64によるカメラ53を用いた撮影の処理は、上述した手順により実行される。
【0076】
また、制御部64の入力側には、上述したものの他、メインキースイッチ67と、刈・脱クラッチスイッチ68と、穀稈センサ69と、選別物量センサ71と、堆積検出センサ72と、作物設定操作具73とが夫々接続されている。また、制御部64の出力側にも、上述したものの他、ブザー音によって報知を行う報知手段であるブザー74が接続されている。
【0077】
メインキースイッチ67は、制御部64による穀粒の水分量を測定する測定制御の実行の有無を切り替える操作具である
【0078】
刈・脱クラッチスイッチ68は、走行機体2に設置されたエンジン等の動力源からの動力における伝動経路の途中に設けられた刈取クラッチ及び脱穀クラッチが共に切断状態に切り換えられて刈取部3及び脱穀装置4が駆動停止された停止状態と、刈取クラッチが切断状態に切り換えられて刈取部3が駆動停止されるとともに脱穀クラッチが接続状態に切り換えられて脱穀装置4が駆動されている脱穀状態と、刈取クラッチ及び脱穀クラッチが共に接続状態に切り換えられて刈取部3及び脱穀装置4が共に駆動されている刈取状態と、の3つ状態の切換の操作を行う操作具又は該切換の検出を行う検出手段である。
【0079】
穀稈センサ69は、刈取部3側で穀稈を検出することによって、本コンバインが収穫中であるか否かを検出する収穫状態検出手段である。
【0080】
選別物量センサ71は、選別室18において選別されている最中の処理物の量を、揺動選別体状に堆積した処理物の層厚等を検出することによって取得し、本コンバインが収穫中であるか否かを検出する収穫状態検出手段である。
【0081】
堆積検出センサ72は、グレンタンク5の貯留されている穀粒の量をその堆積量から検出することによって、本コンバインが収穫中であるか否かを検出する収穫状態検出手段である。
【0082】
作物設定操作具73は、本コンバインで収穫する作物を設定するように構成されている。収穫の選択肢となる作物としては、大豆や麦や米等が挙げられる。
【0083】
図9は、測定制御の処理内容を示すフロー図である。切状態のメインキースイッチ67を入状態に操作した場合、測定制御を開始し、ステップS1に進む。ステップS1では、刈・脱クラッチスイッチ68によって刈取部3及び脱穀装置4の駆動状態を確認し、上述した刈取状態である場合、ステップS2に処理を進める一方で、それ以外の状態である脱穀状態又は停止状態の何れかである場合、ステップS20に処理を進める。
【0084】
ステップS20では、駆動側搬送ローラ59の回転を停止させることにより取込機構58の駆動を停止させ、穀粒が水分センサ56側に取り込まれない非検出状態とした後、その処理をステップS1に戻す。
【0085】
ステップS2では、複数の収穫状態検出手段69,71,72の少なくとも1つ(本例では全て)を用いて、本コンバインが収穫中の状態であるか否かを確認し、収穫中であればステップS3に処理を進める一方で、収穫中でなければ前記ステップS20に処理を進めて非検出状態への切換を行う。
【0086】
ステップS3では、その処理の時点が測定タイミングであるか否かを確認し、測定タイミングでなければステップS20に処理を進めて非検出状態への切換を行う一方で、測定タイミングであればステップS4に処理を進める。
【0087】
ちなみに、後述するステップS4からステップS10までの一連の処理は、2粒以上の予め定めた所定の数である測定個数(算出処理回数)の穀粒の個々の水分量(個別水分量)を水分センサ56による検出結果に基づいて個別に順次導出し、その後、それらの個別水分量の平均値を平均水分量として算出する測定処理になる。
【0088】
この測定処理は、絶え間なく連続的に実行してもよく、その場合、ステップS2の処理が完了した後、その処理を直ちにステップS4に進めればよい。ただし、本例では、測定処理が適切なタイミングで断続的に実行され、その処理のソフトウェア的な演算負荷及び機械的な負荷の低減が図られている。
【0089】
この適切なタイミングを設定するパラメータとして、本例では、上述の測定タイミングを用いる。その内容について具体的に説明すると、測定タイミングは、測定処理を行う頻度に関連した設定パラメータである。
【0090】
例えば、測定処理を所定の周期(測定周期)毎に実行する場合、この測定周期によって測定タイミングの一部又は全部(本例では、一部)が定まる。具体的に説明すると、制御部64のマイコンに内蔵されたタイマーを用いて、前の測定処理を開始した時点や終了した時点から経過した時間(経過時間)をカウントする。そして、ステップS3の処理時点において前記経過時間を確認した結果、測定周期が経過していれば、測定タイミングが到来したものとの判断を下し、ステップS4に処理を進める。ちなみに、本例では、このステップS3の処理の終了のタイミングで、経過時間を0にリセットしてタイマーによる経過時間のカウントの実行を再度開始する再カウント処理を実行する。
【0091】
ちなみに、測定周期は、測定処理に要する時間よりは長い時間に設定される。再カウント処理を実行するタイミングは、上述した通り、ステップS3の処理の終了時点が正確ではあるが、測定処理に要する時間が測定周期中で無視又は軽視できる程度に短い時間であれば、その直後に実行される一連の測定処理を終えるタイミングや、その回の
図9に示す測定制御のルーチン(測定ルーチン)の処理を終えるタイミングで、再カウント処理を実行してもよい。
【0092】
ところで、測定処理の頻度である測定タイミングは、この測定周期の他、取込装置の処理速度や前記測定個数によっても変化する。このうち、測定個数は、所定の制約があるものの、機械的な性能とは無関係に任意に設定できる。このため、本例では、測定周期及び測定個数の設定によって測定タイミングを調整する。
【0093】
ステップS4では、取込機構58による除去処理を実行し、一対の搬送ローラ59,59上の穀粒を除去し、ステップS5に進む。ステップS5では、取込機構58による供給処理を実行し、穀粒が水分センサ56側に取り込まれる検出状態に切り換え、その状態を保持したままステップS6に処理を進める。このように除去処理から供給処理への続く一連の処理によって、検出状態における取込機構58での穀粒の詰りを効率的に防止できる。
【0094】
ステップS6では、その処理の実行中、供給処理が継続されるが、この供給処理の実行中にもかかわらず、水分センサ56による穀粒の水分が検出されない状態が、予め設定された所定の時間(設定不検出時間)継続している現象(継続不検出現象)が発生しているか否かを確認し、継続不検出現象が確認できなかった場合には、ステップS7に進む。
【0095】
ステップS7では、供給処理が継続されている状態で、水分センサ56による穀粒の水分検出を行い、その個別水分量を導出した後、ステップS8に処理を進める。ステップS8では、一回の測定処理の実行中、個別水分量を導出した穀粒の数をカウントし、ステップS9に進む。ステップS9では、個別水分量を導出した穀粒の数が測定個数(例えば、2個)に達しているか否かを確認し、達していないことが確認された場合には、ステップS6に処理を戻す一方で、達していることが確認された場合には、ステップS10に処理を進める。
【0096】
すなわち、ステップS4からの測定処理が開始された場合、測定個数分の穀粒に対して水分センサ56による個別水分量の導出が行われるまでは、ステップS6→ステップS7→ステップS8→ステップS9→ステップS6→・・・のように処理が繰り返され、その間は取込機構58による供給処理が継続される。
【0097】
そして、水分センサ56を用いた測定個数分の穀粒の個別水分量の検出が完了した場合、ステップS9→ステップS10と処理が進む。ステップS10では、測定個数分の穀粒の個別水分量の平均値を、平均水分量として算出し、その処理をステップS1に戻す。ちなみに、上述した通り、測定処理の実行が完了した時点であるステップS10の処理終了時点で、タイマーによる経過時間のカウントを0にリセットしてもよい。
【0098】
一方、ステップ6において、継続不検出現状が確認された場合、穀粒搬送装置22側又は取込装置(特に、取込機構58)側で穀粒が詰まっている状態(詰まり状態)が発生しているものと判断し、その処理をステップS11に進める。ステップS11では、駆動側搬送ローラ59の回転を停止させることにより、上述した非検出状態への切換を行い、ステップS12に進む。
【0099】
ステップS12では、タッチパネル液晶モニタ66により視覚に訴える報知を実行するとともにブザー74により聴覚に訴える報知を実行することによって、この詰り状態を、本コンバインを操作するオペレータや本コンバインの周囲にエラーとして知らせ、その処理をステップS1に戻す。
【0100】
ちなみに、ステップS11及びステップS12の一連の処理は報知処理であり、ステップS6からステップS11の処理が進める時点で、測定処理は終了される。この報知処理によれば、穀粒搬送装置22側又は取込装置側で穀粒が詰まった場合には、その旨が報知され、そのまま処理が続行されて詰り状態がさらに助長される事態や、品質が不明なまま作物の収穫作業が継続される事態が効率的に防止される。
【0101】
以上のような処理内容によれば、本コンバインが脱穀状態又は停止状態である場合、作物を収穫可能な状態になっていないため、ステップS1→ステップS20と処理が進み、非検出状態で保持される。さらに、本コンバインが、刈取状態であっても、作物を実際に収穫していない場合でも、ステップS2→ステップS20と処理が進み、非検出状態で保持される。
【0102】
また、測定タイミングで、
図9に示す測定ルーチンが実行された場合、ステップS3→ステップS4と処理が進められ、一連の測定処理の実行が開始される。測定処理の実行中は、その途中過程でステップS5による処理が行われ、非検出状態から検出状態への切換が行われる。
【0103】
これに対して、測定タイミングでないタイミングで、この測定ルーチンが実行された場合、ステップS3→ステップS20と処理が進み、非検出状態で保持される。
【0104】
ちなみに、測定処理を実行した直後の測定ルーチンを実行するタイミングは、測定タイミングでないタイミングであるため、ステップS3→ステップS20と処理が進み、駆動側搬送ローラ59の回転が停止され、検出状態から非検出状態への切換が行われる。また、測定処理を行っている最中に詰り状態が生じている場合、ステップS6→ステップS11と処理が進み、該測定処理の実行が終了し、報知処理が実行され、エラーの報知が行われる。
【0105】
次に、
図10に基づき、測定装置の別実施形態について上述の形態と異なる部分を説明する。
【0106】
測定装置では、処理負荷を低減しつつ、穀粒の水分量を正確に測定するため、測定タイミングを適切の値に設定することが非常に重要である。このような事情から、この測定タイミングを手動で変更する変更手段として、手動変更操作具を設けてもよい。
【0107】
さらに、詰り状態の検出に基づいて、測定タイミングを自動的に補正(変更)する変更手段として、自動変更手段を設けてもよい。
【0108】
図10は、自動変更手段を構成する自動変更処理の手順を示すフロー図である。制御部64は、同図に示す自動変更処理を、上述した測定ルーチンの実行毎に実行してもよいし、測定ルーチンの実行回数に応じて所定の頻度で実行してもよいし、測定ルーチンの実行頻度とは無関係に独立して実行してもよい。ちなみに、本例では、この自動変更処理は、測定ルーチンの実行頻度とは無関係に独立して実行される。
【0109】
自動変更処理が開始されると、ステップS31から処理を開始する。ステップS31では、収穫対象の作物を、作物設定操作具73からの入力信号に基づいて識別し、ステップS32に進む。ステップS32では、直前のステップS31によって識別された収穫対象の作物に基づいて測定タイミング(本例では、測定周期及び測定個数)を決定し、ステップS33に進む。
【0110】
ステップS33では、制御部64の記憶部に記憶され且つ過去に測定された多数の個別水分量のデータに基づき、その測定値のバラツキや傾向から測定タイミングの補正値を導出し、ステップS34に進む。ステップS34では、直前のステップS33の処理によって導出された補正値を測定タイミングに反映させて補正する処理を行い、ステップS35に進む。
【0111】
ステップS35では、詰り状態が発生したか否かを確認し、詰り状態が発生していなければ、ステップS33に処理を戻し、以下、ステップS33→ステップS34→ステップS35→ステップS33→・・・と処理を繰り返す。
【0112】
一方、ステップS35において、詰り状態の発生が確認された場合、その処理をステップS36に進める。ステップS36では、詰り状態が生じた原因として、測定個数が多すぎる点や、測定周期が短い等の原因を加味し、許容される上述の条件が満たされる限度で、測定タイミングを自動的に変更して補正し、ステップS33に処理を戻す。すなわち、詰り状態が発生している場合、ステップS36の処理時に測定タイミングの補正が実行される。ちなみに、詰り状態の発生に伴う変更は、測定周期を長くすることや、測定個数を減らすこと等、水分量の測定を容易化する方向への補正がその内容になる。
【0113】
以上のような処理内容によれば、それまでの個別水分量の導出や、詰り状態のエラー発生等によって、測定タイミングが順次適切に変更されていくため、収穫される穀粒に対して、より高精度な水分量の測定が可能になる。
【0114】
次に、
図11に基づき、測定制御の別実施形態について上述の形態と異なる部分を説明する。
【0115】
図11は、別実施形態に係る測定制御の処理内容を示すフロー図である。同図に示す例では、ステップS6において、継続不検出現象の発生が確認された場合でも、測定処理の実行を直ちには中止せず、ステップS13に処理を進める。
【0116】
ステップS13では、その時点で個別水分量の導出を完了している穀粒の個数を確認し、その個数が予め設定された個数である限界個数(異常時算出処理回数)以上であれば、穀粒の水分量の算出(導出)は可能であるものとして、ステップS14に処理を進める一方で、限定個数未満であれば、ステップS11に処理を進め、測定処理を終了し且つ報知処理の実行を開始する。
【0117】
限界個数は、測定個数よりは小さい値であって且つ1個以上の数に設定されており、本例では1個に設定されている。なお、この限定個数を、変更手段による変更の対象としてもよい。
【0118】
ステップS14では、駆動側搬送ローラ59の回転を停止させて検出状態から非検出状態への切換を行い、ステップS15に処理を進める。ステップS15では、
図11に示す測定ルーチンの1回の実行中に導出が完了した穀粒の個別水分量から平均水分量を算出し、ステップS1に処理を戻す。ちなみに、限界個数が1個の場合、導出された個別水分量が平均水分量にもなる。
【0119】
以上のような構成によれば、穀粒の供給が滞っているような状況下においても、その水分量を測定することが可能になり、メリットが大きい。
【符号の説明】
【0120】
56 水分センサ
11 脱穀装置
64 制御部
66 タッチパネル液晶モニタ(報知手段)
74 ブザー(報知手段)