(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184129
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】レーザ光の集光点位置検出方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20231221BHJP
【FI】
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098095
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横尾 晋
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 寛和
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD18
4E168CA05
4E168CA06
4E168CA13
4E168CB07
4E168CB22
4E168DA04
4E168DA32
4E168HA01
4E168JA12
4E168JA13
(57)【要約】
【課題】レーザ光の集光点位置を検出する際に要する測定時間を短縮し、生産性を向上することが可能なレーザ光の集光点位置検出方法を提供すること。
【解決手段】レーザ光の集光点位置検出方法は、レーザ光を吸収する第1の部材が第2の部材上に形成され、第1の部材はレーザ光に厚み方向の全域に亘って反応する厚みの板状物を保持する保持ステップ101と、レーザ光を板状物に集光する集光レンズを複数の異なるZ軸方向の位置に位置付け、各々のZ軸方向の位置において、板状物の第1の部材側からレーザ光を照射して、第1の部材から生じるプラズマを受光する受光ステップ102と、各々のZ軸方向の位置と、プラズマの受光量との対応関係情報を記憶する記憶ステップ103と、を備え、記憶ステップ103において記憶された対応関係情報に基づいて、レーザ光の集光点位置を検出する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光の集光点位置を検出する検出方法であって、
該レーザ光を吸収する第1の材料によって形成された第1の部材が第2の材料によって形成された第2の部材上に形成され、該第1の部材は該レーザ光に厚み方向の全域に亘って反応する厚みを有する板状物を保持する保持ステップと、
レーザ発振器から出射されたレーザ光を該板状物に集光する集光器を複数の異なる高さ位置に位置付け、各々の高さ位置において、該板状物の該第1の部材側からレーザ光を照射して、該第1の部材から生じる光を受光する受光ステップと、
該各々の高さ位置と、該光の受光量との対応関係情報を記憶する記憶ステップと、を備え、
該記憶ステップにおいて記憶された対応関係情報に基づいて、該レーザ光の集光点位置を検出することを特徴とする、レーザ光の集光点位置検出方法。
【請求項2】
該対応関係情報に記憶された該光の受光量が最も小さくなる集光器の高さ位置を集光点位置とする、請求項1に記載のレーザ光の集光点位置検出方法。
【請求項3】
該第1の材料と、該第2の材料とは、レーザ光の照射によって生じる光の波長帯域が異なる材料で構成され、
該記憶ステップでは、該第1の部材から生じる光の波長のみの受光量を記憶することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のレーザ光の集光点位置検出方法。
【請求項4】
該板状物は、第2の部材上に第1の部材が縞状に形成されたものであることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ光の集光点位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光の集光点位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の板状の板状物を分割する際には、例えば、レーザ光を板状物に照射するレーザ光照射ユニットを備えたレーザ加工装置が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レーザ光照射ユニットは、一般に、レーザ発振器と、ミラー、レンズ等の複数の光学部品でなる光学系とを含む。レーザ発振器で生成されたレーザ光は、光学系を経て板状物へと照射される。
【0004】
光学系は、レーザ光を集光させるための集光レンズを含む。集光レンズにより集光されたレーザ光が板状物に照射されると、板状物に溝や改質層等が形成される。
【0005】
しかしながら、振動や熱等により光学部品の位置、角度等にズレが生じた場合、レーザ光の集光点位置が変化し、板状物を適切に加工できなくなることがある。
【0006】
そこで、集光レンズの高さ位置を予め設定された高さとは異なる高さに位置付けて試験的に板状物を加工し、集光点の高さ位置を確認する作業が行われることがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-275912号公報
【特許文献2】特開2013-78785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献2に記載された方法では、加工溝の本数が増加するに従い、加工結果の測定に要する時間が多くなるという問題や、作業者による測定バラツキが出るという問題が存在している。
【0009】
本願発明は、係る問題点に鑑みてなされたものであり、レーザ光の集光点位置を検出する際に要する測定時間を短縮し、生産性を向上することが可能なレーザ光の集光点位置検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザ光の集光点位置検出方法は、レーザ光の集光点位置を検出する検出方法であって、該レーザ光を吸収する第1の材料によって形成された第1の部材が第2の材料によって形成された第2の部材上に形成され、該第1の部材は該レーザ光に厚み方向の全域に亘って反応する厚みを有する板状物を保持する保持ステップと、レーザ発振器から出射されたレーザ光を該板状物に集光する集光器を複数の異なる高さ位置に位置付け、各々の高さ位置において、該板状物の該第1の部材側からレーザ光を照射して、該第1の部材から生じる光を受光する受光ステップと、該各々の高さ位置と、該光の受光量との対応関係情報を記憶する記憶ステップと、を備え、該記憶ステップにおいて記憶された対応関係情報に基づいて、該レーザ光の集光点位置を検出することを特徴とする。
【0011】
前記レーザ光の集光点位置検出方法において、該対応関係情報に記憶された該光の受光量が最も小さくなる集光器の高さ位置を集光点位置としても良い。
【0012】
前記レーザ光の集光点位置検出方法において、該第1の材料と、該第2の材料とは、レーザ光の照射によって生じる光の波長帯域が異なる材料で構成され、該記憶ステップでは、該第1の部材から生じる光の波長のみの受光量を記憶しても良い。
【0013】
前記レーザ光の集光点位置検出方法において、該板状物は、第2の部材上に第1の部材が縞状に形成されたものでも良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、レーザ光の集光点位置を確認する際に要する測定時間を短縮し、生産性を向上することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法によりレーザ光の集光点位置が検出されるレーザ加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたレーザ加工装置のレーザ光照射ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたレーザ加工装置の光撮像ユニットの撮像画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法においてレーザ光が照射される板状物の構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された板状物を模式的に示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示されたレーザ光の焦点位置検出方法の保持ステップを模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の受光ステップを模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の受光ステップの集光点の位置の一例を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、
図9に示された位置に集光点が位置付けられた時の光撮像ユニットの撮像画像を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の受光ステップの集光点の位置の他の例を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、
図11に示された位置に集光点が位置付けられた時の光撮像ユニットの撮像画像を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の受光ステップの集光点の位置の更に別の例を模式的に示す図である。
【
図14】
図14は、
図13に示された位置に集光点が位置付けられた時の光撮像ユニットの撮像画像を模式的に示す図である。
【
図15】
図15は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の記憶ステップで記憶された対応関係情報を模式的に示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態1の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法の受光ステップを模式的に示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態2に係るレーザ光の焦点位置検出方法の受光ステップを模式的に示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法においてレーザ光が照射される板状物の構成例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法によりレーザ光の集光点位置が検出されるレーザ加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたレーザ加工装置のレーザ光照射ユニットの構成を模式的に示す図である。実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、
図1に示されたレーザ加工装置1により実施される。
図1に示されたレーザ加工装置1は、被加工物200にレーザ光21を照射する加工装置である。
【0018】
(被加工物)
図1に示されたレーザ加工装置1の加工対象の被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板201とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、
図1に示すように、表面202に互いに交差する分割予定ライン203が複数設定され、分割予定ライン203によって区画された領域にデバイス204が形成されている。
【0019】
デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、又はメモリ(半導体記憶装置)である。
【0020】
実施形態1において、被加工物200は、
図1に示すように、被加工物200の外径よりも大径な円板状でかつ外縁部に環状フレーム210が貼着された粘着テープ209が表面202の裏側の裏面205に貼着されて、環状フレーム210の開口内に支持される。被加工物200は、分割予定ライン203にレーザ光21が照射されるなどして、個々のデバイス204に分割される。
【0021】
(レーザ加工装置)
図1に示されたレーザ加工装置1は、被加工物200の表面202から被加工物200を構成する基板201に対して吸収性を有する波長のパルス状のレーザ光21の集光点211を表面202に設定して、レーザ光21を分割予定ライン203に沿って照射して、被加工物200にアブレーション加工を施す加工装置である。なお、本発明では、レーザ加工装置1は、被加工物200の基板201に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザ光21を照射しても良い。
【0022】
レーザ加工装置1は、
図1に示すように、被加工物200を保持する保持ユニット10と、レーザ光照射ユニット20と、移動ユニット30と、撮像ユニット40と、制御ユニット60とを有する。
【0023】
保持ユニット10は、被加工物200を水平方向と平行な保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状であり、図示しない吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。保持ユニット10は、真空吸引源により吸引されることで、保持面11上に載置された被加工物200を吸引保持する。保持ユニット10の周囲には、被加工物200を開口内に支持する環状フレーム210を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0024】
また、保持ユニット10は、移動ユニット30の回転移動ユニット33により保持面11に対して直交しかつ鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。保持ユニット10は、回転移動ユニット33とともに、移動ユニット30のX軸移動ユニット31により水平方向と平行なX軸方向(加工進行方向に相当)に移動されかつY軸移動ユニット32により水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動される。保持ユニット10は、移動ユニット30によりレーザ光照射ユニット20の下方の加工領域と、レーザ光照射ユニット20の下方から離れて被加工物200が搬入、搬出される搬入出領域とに亘って移動される。
【0025】
移動ユニット30は、保持ユニット10とレーザ光照射ユニット20が照射するレーザ光21の集光点211とをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させるものである。X軸方向及びY軸方向は、互いに直交し、かつ保持面11(即ち水平方向)と平行な方向である。Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との双方と直交する方向である。
【0026】
移動ユニット30は、保持ユニット10をX軸方向に移動させる加工送りユニットであるX軸移動ユニット31と、保持ユニット10をY軸方向に移動させる割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット32と、保持ユニット10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット33と、レーザ光照射ユニット20のレーザ光21の集光点211をZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニット34とを備えている。
【0027】
Y軸移動ユニット32は、保持ユニット10と、レーザ光照射ユニット20のレーザ光21の集光点211とをY軸方向に相対的に移動する割り出し送りユニットである。実施形態1では、Y軸移動ユニット32は、レーザ加工装置1の装置本体2上に設置されている。Y軸移動ユニット32は、X軸移動ユニット31を支持した移動プレート5をY軸方向に移動自在に支持している。
【0028】
X軸移動ユニット31は、保持ユニット10と、レーザ光照射ユニット20のレーザ光21の集光点211とをX軸方向に相対的に移動する加工送りユニットである。X軸移動ユニット31は、移動プレート5上に設置されている。X軸移動ユニット31は、保持ユニット10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット33を支持した第2移動プレート6をX軸方向に移動自在に支持している。第2移動プレート6は、回転移動ユニット33、保持ユニット10を支持している。回転移動ユニット33は、保持ユニット10を支持している。
【0029】
Z軸移動ユニット34は、保持ユニット10と、レーザ光照射ユニット20のレーザ光21の集光点211とをZ軸方向に相対的に移動する送りユニットである。Z軸移動ユニット34は、装置本体2から立設した立設壁3に設置されている。Z軸移動ユニット34は、レーザ光照射ユニット20の後述する集光レンズ23等を含む一部を先端に配置した支持柱4をZ軸方向に移動自在に支持している。
【0030】
X軸移動ユニット31は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると第2移動プレート6をX軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、第2移動プレート6をX軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。Y軸移動ユニット32は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると移動プレート5をY軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、移動プレート5をY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。Z軸移動ユニット34は、軸心回りに回転自在に設けられかつ軸心回りに回転されると支持柱4をZ軸方向に移動させる周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、支持柱4をZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。回転移動ユニット33は、保持ユニット10を軸心回りに回転するモータ等を備える。
【0031】
また、レーザ加工装置1は、保持ユニット10のX軸方向の位置を検出するための図示しないX軸方向位置検出ユニットと、保持ユニット10のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、レーザ光照射ユニット20の集光レンズ23(
図2に示す)のZ軸方向の位置(高さ位置に相当)を検出するための図示しないZ軸方向位置検出ユニットを備える。各位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット60に出力する。なお、実施形態1では、レーザ加工装置1の保持ユニット10のX軸方向の位置、Y軸方向及び、レーザ光照射ユニット20の集光レンズ23のZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置からのX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の距離等により定められる。
【0032】
レーザ光照射ユニット20は、保持ユニット10の保持面11に保持された被加工物200に対してパルス状のレーザ光21を集光して照射するレーザ光照射手段である。実施形態1では、レーザ光照射ユニット20の一部は、
図1に示すように、装置本体2から立設した立設壁3に設置されたZ軸移動ユニット34により支持された支持柱4の先端に配置されている。
【0033】
レーザ光照射ユニット20は、保持ユニット10に保持された被加工物200の基板201に対して吸収性を有する波長のレーザ光21を照射するものである。レーザ光照射ユニット20は、
図2に示すように、パルス状のレーザ光21を出射するレーザ発振器22と、レーザ発振器22から出射したレーザ光21を集光して被加工物200に照射する集光器である集光レンズ23とを備える。なお、
図2は、クランプ部12を省略している。
【0034】
また、実施形態1では、レーザ光照射ユニット20は、レーザ発振器22と集光レンズ23との間に配設され、レーザ発振器22から出射したレーザ光21を反射して進行方向を変更するミラー24を備える。
【0035】
集光レンズ23は、保持ユニット10の保持面11とZ軸方向に対向する位置に配置されている。集光レンズ23は、保持ユニット10に保持された被加工物200に対してパルス状のレーザ光21を集光して照射する集光光学素子である。集光レンズ23は、レーザ発振器22から出射されかつミラー24により反射されたレーザ光21を透過して、レーザ光21を集光点211に集光する。なお、実施形態1では、集光レンズ23は、レーザ光21の集光点211を保持ユニット10の保持面11に保持された被加工物200の表面202に集光する。
【0036】
レーザ光照射ユニット20は、保持ユニット10に保持された被加工物200に対して、被加工物200の基板201が吸収性を有する波長のレーザ光21を照射して、被加工物200にアブレーション加工を施す。実施形態1では、レーザ光21の波長は、355nmであり、レーザ光21の集光点211におけるスポット径は、10μmである。
【0037】
なお、レーザ光21は、被加工物200等に照射されると、照射される箇所の物質の温度を上昇させ、照射される箇所の周囲の物質の分子の原子から電子等を電離させ、電離によって生じた荷電粒子を含む気体即ちプラズマ21-1(光に相当)を発生する。実施形態1では、プラズマ21-1は、所定以上の強度を有するレーザ光21が照射される箇所の周囲で発生するプラズマである。
【0038】
また、レーザ光照射ユニット20は、ミラー24と、集光レンズ23との間に配設されたダイクロイックミラー26を備える。ダイクロイックミラー26は、ミラー24が反射したレーザ光21を集光レンズ23に向けて透過する。ダイクロイックミラー26は、集光レンズ23を通して入射したレーザ光21の集光点211において発生したプラズマ21-1を反射する。
【0039】
また、レーザ加工装置1は、
図2に示す光撮像ユニット50を備えている。次に、光撮像ユニット50を説明する。
図3は、
図1に示されたレーザ加工装置の光撮像ユニットの撮像画像の一例を示す図である。
【0040】
光撮像ユニット50は、ダイクロイックミラー26により反射されたプラズマ21-1を撮像する撮像装置である。実施形態1では、光撮像ユニット50は、ダイクロイックミラー26と、ミラー52とに順に反射されたプラズマ21-1を撮像する。光撮像ユニット50は、プラズマ21-1等を受光して撮像可能なCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を複数備えている。光撮像ユニット50は、撮像素子が受光したプラズマ21-1の受光量及び撮像素子が撮像して得た撮像画像500(
図3に示す)を制御ユニット60に出力する。
【0041】
実施形態1では、光撮像ユニット50は、撮像領域内の予め定められた位置に配設された
図3に示す基準線51を有している。なお、撮像領域とは、光撮像ユニット50が撮像可能なX軸方向とY軸方向との双方に平行な平面上の領域である。光撮像ユニット50が撮像して取得する撮像画像500には、
図3に示すように、予め定められた位置に基準線51が設定されている。
【0042】
なお、実施形態1では、光撮像ユニット50が撮像して取得する撮像画像500即ち光撮像ユニット50の撮像領域は、長手方向がX軸方向と平行でかつ短手方向がY軸方向と平行な矩形状である。実施形態1では、光撮像ユニット50は、撮像画像500即ち撮像領域内に、基準線51として、撮像画像500即ち撮像領域のY軸方向の中央に位置しX軸方向と平行な第一の基準線511と、撮像画像500即ち撮像領域のX軸方向の中央に位置しY軸方向と平行な第二の基準線512とを有している。なお、基準線511,512は、撮像画像500内即ち撮像領域内の仮想的な線であって、実際には存在しない。
【0043】
撮像ユニット40は、保持ユニット10に保持された被加工物200を撮像するものである。撮像ユニット40は、対物レンズがZ軸方向に対向するものを撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備えている。実施形態1では、撮像ユニット40は、
図1に示すように、支持柱4の先端に配置されて、対物レンズが集光レンズ23とX軸方向に沿って並ぶ位置に配置されている。
【0044】
撮像ユニット40は、撮像素子が撮像した画像を取得し、取得した画像を制御ユニット60に出力する。また、撮像ユニット40は、保持ユニット10の保持面11に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200とレーザ光照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を取得する。
【0045】
制御ユニット60は、レーザ加工装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作をレーザ加工装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット60は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット60の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザ加工装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してレーザ加工装置1の上述した構成要素に出力して、制御ユニット60の機能を実現する。
【0046】
また、レーザ加工装置1は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示手段である表示ユニット61と、オペレータが加工条件などを入力する際に用いる入力手段である入力ユニットを備えている。表示ユニット61及び入力ユニットは、制御ユニット60に接続している。入力ユニットは、表示ユニット61に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置との少なくとも一方により構成される。
【0047】
(レーザ光の集光点位置検出方法)
実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、レーザ光の集光点位置を検出する方法である。なお、
図4は、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法の流れを示すフローチャートである。
図5は、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法においてレーザ光が照射される板状物の構成例を模式的に示す斜視図である。
図6は、
図5に示された板状物を模式的に示す側面図である。
【0048】
実施形態1において、
図4に示すレーザ光の集光点位置検出方法は、レーザ光の集光点位置として、
図5に示された板状物70の第1の部材71の表面711に集光点211が位置する際の集光レンズ23のZ軸方向の位置を検出する方法である。板状物70は、被加工物200と同様に、円板状に形成され、
図5及び
図6に示すように、第1の部材71が第2の部材72上に形成されている。
【0049】
第1の部材71は、レーザ光21を吸収する第1の材料によって形成され、第2の材料によって形成された第2の部材72上に厚み712が一様に積層されている。また、第1の部材71は、レーザ光21に厚み方向の全域に亘って反応する厚み712を有している。実施形態1では、第1の部材71は、反応として、レーザ光21により厚み方向の全域に亘ってアブレーション加工されて、プラズマ21-1を発生するとともに厚み方向の全域に亘って蒸散して第2の部材72上から除去される。このため、実施形態1では、第1の部材71は、レーザ光21により厚み方向の全域に亘ってアブレーション加工されて第2の部材72上から除去される厚み712の第1の材料により形成されている。
【0050】
実施形態1では、第1の部材71を形成する第1の材料は、第2の部材72を形成する第2の材料よりもレーザ光21を吸収しやすい材料である。なお、レーザ光21が照射されると、第1の部材71がアブレーション加工されてプラズマ21-1を発生するとともに、第2の部材72もアブレーション加工されてプラズマを発生する。しかしながら、実施形態1では、第1の部材71が発生するプラズマ21-1の光量を板状物70全体が発生するプラズマ21-1の光量としても問題のない程度に、第1の部材71が発生するプラズマ21-1の光量が、第2の部材72が発生するプラズマの光量よりもはるかに大きい。また、本発明では、第1の部材71を形成する第1の材料が、レーザ光21を吸収する材料であり、第2の部材72を形成する第2の材料が、レーザ光21を透過する材料としても良い。
【0051】
実施形態1では、第1の部材71を形成する第1の材料は、例えば、ポリイミド又はエポキシ樹脂である。実施形態1では、第2の部材72を形成する第2の材料は、シリコンであり、即ち第2の部材72はシリコンウェーハであるが、本発明では、第2の部材72を形成する第2の材料は、ガラスでも良い。
【0052】
また、実施形態1では、第1の部材71のレーザ光21に厚み方向の全域に亘って反応する反応する厚み712とは、レーザ光21の集光点211が板状物70の第1の部材71の表面711に位置付けられても、集光点211が板状物70の内部に位置付けられても、集光点211が板状物70の表面711よりも集光レンズ23寄りに位置付けられても、厚み方向の全域に亘って反応する(実施形態1では、蒸散して除去される)厚みであることをいう。
【0053】
なお、第1の部材71の厚み712は、0.1μm以上でかつ40μm以下であるが、1μm以上でかつ10μm以下であるのが好ましい。なお、第1の部材71の厚み712が、0.1μm未満であると、プラズマ21-1を光撮像ユニット50が受光しにくくなるので望ましくなく、40μmを超えると第1の部材71が厚み方向の全域に亘ってレーザ光21に反応しないからである。第1の部材71の厚み712が0.1μm以上でかつ40μm以下であると、プラズマ21-1を光撮像ユニット50が受光するとともに、第1の部材71が厚み方向の全域に亘ってレーザ光21に反応する。
【0054】
また、実施形態1では、レーザ光の集光点位置検出方法は、
図1に示されたレーザ加工装置1が、レーザ光の集光点位置を検出する方法でもある。実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、
図4に示すように、保持ステップ101と、受光ステップ102と、記憶ステップ103と、集光点位置検出ステップ105とを備える。
【0055】
(保持ステップ)
図7は、
図4に示されたレーザ光の焦点位置検出方法の保持ステップを模式的に示す側面図である。保持ステップ101は、前述した板状物70を保持ユニット10に保持するステップである。実施形態1において、保持ステップ101では、レーザ加工装置1の制御ユニット60がオペレータにより入力された集光点位置の検出条件等を受け付けて登録し、板状物70の第2の部材72が搬入出領域に位置付けられた保持ユニット10の保持面11に載置される。
【0056】
なお、集光点位置の検出条件は、板状物70の厚み、集光点位置の検出動作時のレーザ光21の出力、プラズマ21-1の受光回数、プラズマ21-1を受光する間の支持柱4即ち集光レンズ23のZ軸方向の移動距離等を含む。また、実施形態1において、集光点位置の検出条件の集光点位置の検出動作時のレーザ光21の出力は、第1の部材71のみアブレーション加工し、第2の部材72をアブレーション加工しない(即ち、アブレーション加工することを規制する)出力である。実施形態1において、保持ステップ101では、レーザ加工装置1は、オペレータからの集光点位置の検出動作の開始指示を制御ユニット60が受け付けると、
図7に示すように、保持ユニット10の保持面11に板状物70を吸引保持する。
【0057】
(受光ステップ)
図8は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の受光ステップを模式的に示す図である。
図9は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の受光ステップの集光点の位置の一例を模式的に示す図である。
図10は、
図9に示された位置に集光点が位置付けられた時の光撮像ユニットの撮像画像を模式的に示す図である。
図11は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の受光ステップの集光点の位置の他の例を模式的に示す図である。
図12は、
図11に示された位置に集光点が位置付けられた時の光撮像ユニットの撮像画像を模式的に示す図である。
図13は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の受光ステップの集光点の位置の更に別の例を模式的に示す図である。
図14は、
図13に示された位置に集光点が位置付けられた時の光撮像ユニットの撮像画像を模式的に示す図である。
【0058】
受光ステップ102は、レーザ発振器22から出射されたレーザ光21を、板状物70の第1の部材71側から照射して、第1の部材71から生じるプラズマ21-1を受光するステップである。実施形態1において、受光ステップ102では、レーザ加工装置1の制御ユニット60が移動ユニット30を制御して保持ユニット10を加工領域に移動し、集光点の検出条件に基づいて、
図8に示すように、板状物70の任意の位置にレーザ光21を照射することで生じるプラズマ21-1を光撮像ユニット50で受光する。
【0059】
なお、実施形態1において、最初の受光ステップ102では、
図9に示すように、集光点211を板状物70の第2の部材72内に設定し、光撮像ユニット50でプラズマ21-1を受光し、受光したプラズマ21-1の受光量及び
図10に示す撮像画像500を取得する。なお、
図10では、光撮像ユニット50が撮像する撮像画像500の基準線511,512の交点513にプラズマ21-1の中心が位置する。
【0060】
(記憶ステップ)
図15は、
図4に示されたレーザ光の集光点位置検出方法の記憶ステップで記憶された対応関係情報を模式的に示す図である。記憶ステップ103は、直前の受光ステップ102の集光レンズ23のZ軸方向の位置と、光撮像ユニット50が受光したプラズマ21-1の受光量とを1対1で紐付けて記憶装置に記憶する。
【0061】
記憶ステップ103後、レーザ加工装置1の制御ユニット60が、集光点位置の検出条件に基づいて集光点位置の検出動作が終了したか否かを判定する(ステップ104)。レーザ加工装置1の制御ユニット60が、集光点位置の検出動作が終了していないと判定する(ステップ104:No)と、受光ステップ102に戻る。
【0062】
戻った受光ステップ102では、レーザ加工装置1の制御ユニット60が、既に実施ずみの受光ステップ102におけるZ軸方向の位置と異なるZ軸方向の位置に支持柱4即ち集光レンズ23を位置付けるとともに、既に実施ずみの受光ステップ102における板状物70上のX軸方向及びY軸方向の位置と異なるX軸方向及びY軸方向の位置に支持柱4即ち集光レンズ23を位置付ける。即ち、戻った受光ステップ102では、レーザ加工装置1の制御ユニット60が、
図11及び
図13に示すように、既に実施ずみの受光ステップ102における集光点211の位置と異なる位置に集光点211を設定し、既に実施ずみの受光ステップ102においてレーザ光21を照射した位置と異なる板状物70の位置にレーザ光21を照射して、光撮像ユニット50でプラズマ21-1を受光し、受光したプラズマ21-1の受光量及び
図12及び
図14に示す撮像画像500を取得する。なお、
図12及び
図14では、光撮像ユニット50が撮像する撮像画像500の基準線511,512の交点513にプラズマ21-1の中心が位置する。
【0063】
こうして、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、レーザ加工装置1の制御ユニット60が、集光点位置の検出動作が終了したと判定(ステップ104:Yes)まで、集光レンズ23のZ軸方向の位置と、板状物70のレーザ光21を照射する位置とを変更して、受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返す。このために、受光ステップ102は、レーザ発振器22から出射されたレーザ光21を板状物70に集光する集光レンズ23を複数の異なるZ軸方向の位置に位置付け、各々のZ軸方向の位置において、板状物70の第1の部材71側からレーザ光21を照射して、第1の部材71から生じるプラズマ21-1を受光することとなる。また、記憶ステップ103は、受光ステップ102における集光レンズ23の各々のZ軸方向の位置と、プラズマ21-1の受光量とを1対1で対応付けて、
図15に示す対応関係情報400を記憶することとなる。
【0064】
なお、
図15に示された対応関係情報400の横軸は、集光レンズ23のZ軸方向の位置を示し、
図15中の右側に向かうにしたがって集光レンズ23が上側に位置することを示している。また、
図15に示された対応関係情報400の縦軸は、光撮像ユニット50が受光したプラズマ21-1の受光量を示し、
図15中の上側に向かうにしたがって受光量が増加することを示している。
【0065】
実施形態1では、レーザ加工装置1の制御ユニット60が、集光点211が第2の部材72内の位置から第1の部材71の表面711よりも集光レンズ23寄りの位置に位置するまで、集光レンズ23のZ軸方向の位置を段階的に上側に位置付けて、受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返す。なお、光撮像ユニット50が受光したプラズマ21-1の受光量は、第1の部材71の厚み712が前述した厚みであるので、
図11に示すように、集光点211が第1の部材71の表面711に位置した時又は最も第1の部材71の表面711に近い時が最小値となる。
【0066】
光撮像ユニット50が受光したプラズマ21-1の受光量は、第1の部材71の厚み712が前述した厚みであるので、
図9及び
図13に示すように、集光点211が第1の部材71の表面711から離れると、第1の部材71の表面711におけるレーザ光21のスポット径が増加して、集光点211が第1の部材71の表面711に位置した時又は最も第1の部材71の表面711に近い時よりも増加する。また、光撮像ユニット50が受光したプラズマ21-1の受光量は、集光点211が第1の部材71の表面711から離れすぎると、レーザ光21により第1の部材71がアブレーション加工されにくくなるので、減少する。
【0067】
このために、実施形態1では、レーザ加工装置1の制御ユニット60が、光撮像ユニット50が受光量の2つの極大値401(
図15に示す)と1つの最小値402を検出するまで、受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返す。このように受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返して記憶された対応関係情報400は、プラズマ21-1の受光量が2つの極大値401と、1つの最小値402とを有することとなる。実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、レーザ加工装置1の制御ユニット60が、集光点位置の検出動作が終了したと判定(ステップ104:Yes)すると、集光点位置検出ステップ105に進む。なお、本発明では、受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返して、最小値402を検出すれば、極大値401を検出しなくても良い。
【0068】
(集光点位置検出ステップ)
集光点位置検出ステップ105は、記憶ステップ103において記憶された対応関係情報400に基づいて、レーザ光21の集光点位置を検出する。実施形態1では、レーザ加工装置1の制御ユニット60が、記憶ステップ103で記憶された対応関係情報400の受光量の最小値402に紐付けられた集光レンズ23のZ軸方向の位置231を、レーザ光21の集光点位置として検出する。こうして、実施形態1では、対応関係情報400に記憶されたプラズマ21-1の受光量が最も小さくなる集光レンズ23のZ軸方向の位置231を、レーザ光21の集光点位置として検出する。集光点位置検出ステップ105は、検出したレーザ光の集光点位置を記憶装置に記憶する。
【0069】
また、本発明では、集光点位置検出ステップ105において、対応関係情報400の受光量の2つの極大値401に紐付けられた集光レンズ23のZ軸方向の位置232の中間の位置233を、レーザ光21の集光点位置と検出しても良い。なお、前述した中間の位置233は、2つの極大値401に紐付けられた集光レンズ23のZ軸方向の位置232間の距離を2等分する位置である。
【0070】
前述した構成のレーザ加工装置1は、被加工物200を保持ユニット10の保持面11に保持し、被加工物200の厚みなどの加工条件及び集光点位置検出ステップ105で検出したレーザ光21の集光点位置等に基づいて、集光点211を被加工物200の表面202に設定する。レーザ加工装置1は、保持ユニット10とレーザ光照射ユニット20の集光点211とを分割予定ライン203に沿って相対的に移動させながら被加工物200の分割予定ライン203に基板201の表面202側からパルス状のレーザ光21を照射して、被加工物200を個々のデバイス204に分割する。
【0071】
以上、説明した実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、受光ステップにおいて板状物70の第2の部材72上に形成された第1の部材71に対してレーザ光21を照射して、アブレーション加工によって生じるプラズマ21-1を受光する。この際、レーザ光21の集光点211ではレーザ光21のスポット径が小さくなり、逆に集光点211から離れるとレーザ光21のスポット径が大きくなる。そのため、第1の部材71の厚み712がレーザ光21に厚み方向の全域に亘ってアブレーション加工される厚みであるため、第1の部材71の表面711上に集光点211が位置したときのプラズマ21-1の光量が、集光点211が第1の部材71の表面711から離れたときのプラズマ21-1の光量よりも小さい。
【0072】
このため、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、記憶ステップ103において集光レンズ23のZ軸方向の位置と受光量とを紐付けて対応関係情報400を記憶するため、対応関係情報400から集光点211が第1の部材71の表面711上に位置する際の集光レンズ23のZ軸方向の位置を検出することが可能となる。
【0073】
その結果、実施形態1に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返して対応関係情報400を取得、記憶することで、集光点211が第1の部材71の表面711上に位置する際の集光レンズ23のZ軸方向の位置を検出することが可能となるので、レーザ光21の集光点位置を検出する際に要する測定時間を短縮し、生産性を向上することが可能になるという効果を奏する。
【0074】
〔変形例〕
実施形態1の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法を図面に基づいて説明する。
図16は、実施形態1の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法の受光ステップを模式的に示す図である。なお、
図16は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0075】
実施形態1の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法で用いられる板状物70は、第2の部材72を形成する第2の材料が、ガラスである。また、実施形態1の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法を実施するレーザ加工装置1-1は、
図16に示すように、保持ユニット10が、板状物70の外縁部を挟持して保持し、レーザ光照射ユニット20がダイクロイックミラー26を備えずに、光撮像ユニット50を保持ユニット10を挟んで集光レンズ23とZ軸方向に対向する位置に配置している。
【0076】
実施形態1の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法を実施するレーザ加工装置1-1は、プラズマ21-1を保持ユニット10により保持された板状物70越しに受光し、撮像画像500を取得する。なお、実施形態1の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法を実施するレーザ加工装置1は、保持ユニット10と光撮像ユニット50との間にプラズマ21-1を透過し、レーザ光21の透過を規制する図示しないフィルタを備えるのが望ましい。
【0077】
実施形態1の変形例に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、実施形態1と同様に、受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返して対応関係情報400を取得、記憶することで、集光点211が第1の部材71の表面711上に位置する際の集光レンズ23のZ軸方向の位置を検出することが可能となるので、レーザ光21の集光点位置を検出する際に要する測定時間を短縮し、生産性を向上することが可能になるという効果を奏する。
【0078】
〔実施形態2〕
実施形態2に係るレーザ光の焦点位置検出方法を図面に基づいて説明する。
図17は、実施形態2に係るレーザ光の焦点位置検出方法の受光ステップを模式的に示す図である。なお、
図17は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
実施形態2に係るレーザ光の焦点位置検出方法で用いられる板状物70は、第1の部材71を形成する第1の材料と、第2の部材72を形成する第2の材料とが、レーザ光21の照射によって生じるプラズマ21-1の波長帯域が異なる材料で構成されている。実施形態2では、第1の部材71を形成する第1の材料がポリイミドであり、第1の部材71が生じるプラズマ21-1の中心波長が487nm程度である。また、実施形態2では、第2の部材72を形成する第2の材料がシリコンであり、第2の部材72が生じるプラズマ21-1の中心波長が635nm程度である。
【0080】
また、実施形態2に係るレーザ光の焦点位置検出方法を実施するレーザ加工装置1-2は、光撮像ユニット50の代わりに回折格子53と、ラインセンサ54を備える。回折格子53は、プラズマ21-1を波長ごとに異なる角度で回折してラインセンサ54に向けて反射して、プラズマ21-1を波長毎の光21-2に分光する。ラインセンサ54は、撮像素子を直線状に配置し、回折格子53により分光された光21-2を各撮像素子で受光する。ラインセンサ54は、各撮像素子が受光した各波長の光21-2の受光量を制御ユニット60に向けて出力する。
【0081】
実施形態2に係るレーザ光の焦点位置検出方法は、記憶ステップ103では、レーザ加工装置1の制御ユニット60がラインセンサ54からの各波長の光21-2の受光量のうち第1の部材71が生じるプラズマ21-1の中心波長と波長の差が所定値以下の光21-2のみの受光量の合計値を集光レンズ23のZ軸方向の位置と紐付けて、対応関係情報400として記憶する。
【0082】
実施形態2に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、実施形態1と同様に、受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返して対応関係情報400を取得、記憶することで、集光点211が第1の部材71の表面711上に位置する際の集光レンズ23のZ軸方向の位置を検出することが可能となるので、レーザ光21の集光点位置を検出する際に要する測定時間を短縮し、生産性を向上することが可能になるという効果を奏する。
【0083】
また、実施形態2に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、記憶ステップ103では、第1の部材71が生じるプラズマ21-1の中心波長と波長の差が所定値以下の光21-2のみの受光量の合計値を集光レンズ23のZ軸方向の位置と紐付けて、対応関係情報400として記憶するので、集光点211が第1の部材71の表面711上に位置する際の集光レンズ23のZ軸方向の位置を正確に検出することが可能となる。
【0084】
また、実施形態2に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、第2の部材72が生じるプラズマと分離して、第1の部材71が生じるプラズマ21-1の受光量を観察できるため、第2の部材72が加工されてプラズマが放出されたとしても集光点位置を正確に検出できる。
【0085】
〔変形例〕
実施形態1及び実施形態2の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法を図面に基づいて説明する。
図18は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法においてレーザ光が照射される板状物の構成例を模式的に示す斜視図である。
図19は、
図18に示された板状物を模式的に示す側面図である。なお、
図19及び
図20は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0086】
実施形態1及び実施形態2の変形例に係るレーザ光の焦点位置検出方法で用いられる板状物70-1は、
図18及び
図19に示すように、第2の部材72上に第1の部材71が縞状に形成されている。実施形態1及び実施形態2の変形例では、板状物70-1は、直線状に延在しかつ互いに等間隔に平行に配置された第1の部材71が第2の部材72上に複数形成されている。
【0087】
実施形態1及び実施形態2の変形例では、板状物70-1の第1の部材71を形成する第1の材料がポリイミドであり、第2の部材72を形成する第2の材料が、シリコンである。また、実施形態1及び実施形態2の変形例では、板状物70-1の第1の部材71の厚み712が、0.5μmである。
【0088】
実施形態1及び実施形態2の変形例では、板状物70-1の第1の部材71の幅と、第1の部材71同士の間隔とは、レーザ光21の集光点211のスポット径よりも小さい。実施形態1及び実施形態2の変形例では、板状物70の第1の部材71の幅と、第1の部材71同士の間隔とは、それぞれ、0.5μmである。
【0089】
実施形態1及び実施形態2の変形例に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、実施形態1及び実施形態2と同様に、受光ステップ102と記憶ステップ103とを繰り返して対応関係情報400を取得、記憶することで、集光点211が第1の部材71の表面711上に位置する際の集光レンズ23のZ軸方向の位置を検出することが可能となるので、レーザ光21の集光点位置を検出する際に要する測定時間を短縮し、生産性を向上することが可能になるという効果を奏する。
【0090】
また、実施形態1及び実施形態2の変形例に係るレーザ光の集光点位置検出方法は、板状物70が第2の部材72上に縞状に第1の部材71を形成しているので、第1の部材71の表面711上のレーザ光21のスポット径の変化に対する光撮像ユニット50が受光するプラズマ21-1の受光量の変化が実施形態1の場合よりも大きくなる。例えば、集光点211でのスポット径が10μmである場合、集光点211が第1の部材71の表面711上に位置すると、光撮像ユニット50が受光するプラズマ21-1の受光量が10本分の第1の部材71が生じるプラズマ21-1の光量であるのに対し、第1の部材71の表面711上のスポット径が11μmになると、光撮像ユニット50が受光するプラズマ21-1の受光量が11本分の第1の部材71が生じるプラズマ21-1の光量となる。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態等に等限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明では、第1の部材71としてレーザ光21によりアブレーション加工される第1の材料により第1の部材71を形成することに限定されずに、第1の部材71を形成する第1の材料をレーザ光21を蓄光(反応に相当)する材料、又は、レーザ光21が照射されることで蛍光(反応に相当)する材料としてもよい。
【0092】
これらの場合も、第1の部材71は、レーザ光21を厚み方向の全域に亘って蓄光する厚み、又はレーザ光21が照射されることで厚み方向の全域に亘って蛍光する厚みを有し、光撮像ユニット50により第1の部材71が蓄光により蓄えて発光した光の受光量が検出され、又は光撮像ユニット50により第1の部材71が蛍光した光の受光量が検出される。これらの場合も、集光点211が第1の部材71の表面711上に位置するときの光撮像ユニット50が受光した光の受光量が、集光点211が第1の部材71の表面から離れたときの光撮像ユニット50が受光した光の受光量よりも小さい。
【0093】
なお、第1の部材71を形成するレーザ光21を蓄光する材料として、アルミン酸ストロンチウム、フォトセラミック等の蓄光材料を樹脂材料やガラスに混合したものを用いることができる。第1の部材71を形成するレーザ光21により蛍光する材料として、例えば、蛍光シリカナノ粒子、又はYAG(Y3Al5O12)等の蛍光体を樹脂材料(シリコーン樹脂等)やガラスに混合したものを用いることができる。なお、第1の材料をレーザ光21を蓄光する材料、又は、レーザ光21が照射されることで蛍光する材料とした場合には、第1の部材71が加工されないので、板状物70を複数回、レーザ光の集光点位置の検出に用いることができる。
【0094】
また、本発明では、光撮像ユニット50の代わりに、プラズマ21-1の受光量、蓄光により発光した光の受光量、又は、蛍光した光の受光量を検出するフォトダイオードや又はパワーメータなどの検出手段を用いても良い。また、実施形態等では、対応関係情報400が、受光量(光の状態量に相当)と集光レンズ23のZ軸方向の位置とを対応付けているが、本発明では、撮像画像500内の光の大きさ(光の状態量に相当)と集光レンズ23のZ軸方向の位置とを対応付けてもよく、この場合も、対応関係情報400に基づいて、実施形態等と同様に、レーザ光21の集光点位置を検出することができる。
【符号の説明】
【0095】
21 レーザ光
21-1 プラズマ(光)
22 レーザ発振器
23 集光レンズ(集光器)
70,70-1 板状物
71 第1の部材
72 第2の部材
101 保持ステップ
102 受光ステップ
103 記憶ステップ
211 集光点
400 対応関係情報
712 厚み