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特開2023-184221ラミネート用延伸ポリエチレンフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184221
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ラミネート用延伸ポリエチレンフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20231221BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20231221BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20231221BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20231221BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231221BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C08L23/04
C08K5/053
C08K5/14
C08F10/02
C08J5/18 CES
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098254
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西尾 省治
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA16
4F071AA81
4F071AA82
4F071AC08
4F071AC19
4F071AE02
4F071AE22
4F071AF30
4F071AG12
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BB07
4F071BB09
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK51G
4F100AK62A
4F100AK62B
4F100BA02
4F100BA16
4F100EC182
4F100EH171
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100EJ37A
4F100GB15
4F100JA07A
4F100JA13A
4F100JA13B
4F100JL16
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BB031
4J002BB032
4J002BB051
4J002BB052
4J002BB053
4J002BB153
4J002DE236
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002EG026
4J002EG036
4J002EG046
4J002EH056
4J002EK037
4J002EK057
4J002EK067
4J002EL106
4J002FD206
4J002GG02
4J100AA02P
4J100CA01
4J100DA01
4J100DA15
4J100JA58
(57)【要約】
【課題】リサイクル性が高く、剛性、強度、耐衝撃性等の物理的特性に優れ、かつヒートシール性と透明性に優れたポリエチレン積層体を提供すること。
【解決手段】本発明のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が9万~25万であり、JIS K6922-1(1997年)で測定した密度が95~99.9重量%と、核剤(B)が0.1~5重量%を含むポリエチレン組成物(X)からなるラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が9万~25万であり、JIS K6922-1(1997年)で測定した密度が945~980kg/m3であるポリエチレン(A)を95~99.9重量%、及び核剤(B)を0.1~5重量%含むポリエチレン組成物(X)からなる、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項2】
ポリエチレン(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した分子量1万以下の割合が8重量%以下である、請求項1に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項3】
核剤(B)がソルビトール系核剤である、請求項1に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項4】
核剤(B)がジベンジリデンソルビトール構造を含む、請求項1に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項5】
ポリエチレン(A)が5~100ppmの有機過酸化物およびその分解物を含む、請求項1に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項6】
ポリエチレン組成物(X)が、ポリエチレン組成物(X)100重量部に対し、分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有するエチレン・αーオレフィン共重合体(C)を0.01~10重量部さらに含む、請求項1に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの少なくとも片側に密度が880~940kg/m3であるエチレン系重合体フィルムを有する、ラミネートフィルム。
【請求項8】
以下の工程(1)及び(2)を含む、請求項1~6のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの製造方法。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が9万~25万であり、JIS K6922-1(1997年)で測定した密度が945~980kg/m3であるポリエチレン(A)を90~99.5重量%、及び核剤(B)を0.1~5重量%含むポリエチレン組成物(X)を押出成形し、延伸用ポリエチレンフィルムを製造する工程。
(2)工程(1)で製造した延伸用ポリエチレンフィルムを110℃から140℃でフィルムの機械方向に2~10倍延伸し、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを製造する工程。
【請求項9】
以下の工程(3)をさらに含む、請求項8に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの製造方法。
(3)工程(2)で製造したラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを更に機械方向に対して垂直方向に延伸する工程。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを溶融成形したリサイクルポリエチレンペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンフィルムは、適度な柔軟性を有し、透明性、防湿性、耐薬品性等に優れ、かつ、安価であることから、包装材料に使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリエチレンフィルムは、剛性、耐衝撃性、耐熱性等が低く、単体で使用できない用途もある。このような問題を解決するため、ポリエチレンフィルムと、その他の樹脂フィルム(例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム)とを積層して得られたラミネートフィルムが包装材料として広く使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
一方、近年、廃棄プラスチック等の社会問題が注目され、循環型社会構築の要望の高まりとともに、包装材料のリサイクル性向上が求められている。上記のような、異種材料フィルムを組み合わせた包装材料は、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル等のリサイクルに供しがたいという問題があり、これに対し、同種の樹脂材料から構成された包装材料とて、延伸ポリエチレンフィルムと無延伸ポリエチレンフィルムとを積層して形成された包装材料が提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。延伸ポリエチレンフィルムは無延伸ポリエチレンフィルムの機械的特性を補うため、またヒートシールした際にシールバーへの樹脂付着抑制に使用される。しかしながら、当該延伸ポリエチレンフィルムであっても、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルムほどの機械的特性を有さず、また特にヒートシール部の収縮が激しいため、ヒートシール温度を下げる必要があり、ヒートシール強度が不十分となるおそれがある。
【0005】
また、剛性や耐熱性、強度に優れたポリエチレンフィルムとして、超高分子量ポリエチレンフィルムが提案されている(例えば特許文献4参照。)。しかしながら、超高分子量ポリエチレンフィルムは一般的なポリエチレンとの溶融混合性に乏しく、マテリアルリサイクルに供した際に分散ムラや溶融ムラが生じ、リサイクル樹脂の品質を大きく損なうことが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-104525号公報
【特許文献2】特開2019-171860号公報
【特許文献3】特開2019-529165号公報
【特許文献4】特開1994-262679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、リサイクル性や耐熱性に優れ、さらに透明性が良好なラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の延伸ポリエチレンフィルムが優れたリサイクル性、耐熱性、透明性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の各態様は、以下の[1]~[10]である。
[1] ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が9万~25万であり、JIS K6922-1(1997年)で測定した密度が945~980kg/m3であるポリエチレン(A)を95~99.9重量%、及び核剤(B)を0.1~5重量%含むポリエチレン組成物(X)からなる、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
[2] ポリエチレン(A)が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した分子量1万以下の割合が8重量%以下である、上記[1]に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
[3] 核剤(B)がソルビトール系核剤である、上記[1]又は[2]に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
[4] ソルビトール系核剤がジベンジリデンソルビトール構造を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
[5] ポリエチレン(A)が5~100ppmの有機過酸化物およびその分解物を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
[6] ポリエチレン組成物(X)が、ポリエチレン組成物(X)100重量部に対し、分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有するエチレン・αーオレフィン共重合体(C)を0.01~10重量部さらに含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルム。
[7] 上記[1]~[6]のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの少なくとも片側に密度が880~940kg/m3であるエチレン系重合体フィルムを有する、ラミネートフィルム。
[8] 以下の工程(1)及び(2)を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの製造方法。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が9万~25万であり、JIS K6922-1(1997年)で測定した密度が945~980kg/m3であるポリエチレン(A)を90~99.5重量%、及び核剤(B)を0.1~5重量%含むポリエチレン組成物(X)を押出成形し、延伸用ポリエチレンフィルムを製造する工程。
(2)工程(1)で製造した延伸用ポリエチレンフィルムを110℃から140℃でフィルムの機械方向に2~10倍延伸し、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを製造する工程。
[9] 以下の工程(3)をさらに含む、上記[8]に記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの製造方法。
(3)工程(2)で製造したラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを更に機械方向に対して垂直方向に延伸する工程。
[10] 上記[1]~[6]のいずれかに記載のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを溶融成形したリサイクルポリエチレンペレット。
【発明の効果】
【0009】
本発明のラミネート用延伸ポリエチレンフィルムは、耐熱性が高く、食品や飲料、医薬品等の包装用ラミネートフィルムの基材として有用である。また、大部分をポリエチレン系材料で構成されるラミネートフィルムが得られることから、リサイクル性に優れ、環境負荷を低減することができる。
【0010】
本発明によれば、耐熱性に優れるためフィルム外観やヒートシール性に優れたラミネートフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一態様であるラミネート用延伸ポリエチレンフィルムは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が9万~25万であり、JIS K6922-1(1997年)で測定した密度が945~980kg/m3であるポリエチレン(A)を95~99.9重量%、及び核剤(B)を0.1~5重量%含むポリエチレン組成物(X)からなるものである。
【0012】
ポリエチレン(A)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が9万~25万、好ましくは10万~20万、より好ましくは10万~15万である。Mwが9万未満の場合、延伸加工性が悪化するため好ましくなく、Mwが25万を超える場合はマテリアルリサイクルにおける溶融押出性に劣り、また得られたリサイクル樹脂の性能を悪化させるため好ましくない。
【0013】
また、ポリエチレン(A)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した分子量1万以下の割合が好ましくは8重量%以下、更に好ましくは6重量%以下、特に好ましくは4重量%以下であると延伸フィルムの耐熱性が向上し、ラミネートフィルムのヒートシール外観が優れるため好ましい。このことは、延伸過程において分子量の低い分子により分子鎖が緩和し、ポリエチレン結晶の配向が不十分となるためと推定される。
【0014】
また、ポリエチレン(A)はJIS K6922-1(1997年)で測定した密度が945~980kg/m3である。密度が945kg/m3未満の場合、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの耐熱性が悪化するため好ましくなく、980kg/m3を超える密度のポリエチレンは工業生産が困難である。
【0015】
このようなポリエチレン(A)は、エチレンの単独重合体、もしくはエチレンと少量のα-オレフィンを共重合することにより得られる。重合には、一般的にマグネシウムとチタンを含有する固体触媒成分及び有機アルミニウム化合物からなるチーグラー触媒、シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び/又は有機金属化合物からなるメタロセン触媒、バナジウム系触媒等を用いることができ、メタロセン触媒やバナジウム系触媒が分子量1万以下の割合を制御し易いため好ましい。例えばスラリー法、溶液法、気相法等の製造法により製造することが可能である。また、ポリエチレン(A)の製法は、特に限定されるものではないが、分子量1万以下の割合を制御し易いことからスラリー法又は溶液法が好ましい。
【0016】
上記したエチレンやα-オレフィンは石油由来のナフサ、生物由来のナフサ、あるいはプラスチックをリサイクルして得られるナフサから製造される。
【0017】
核剤(B)は、ポリエチレン(A)の結晶化を促進するものであれば特に限定はなく、ソルビトール系、ノニトール系、キシリトール系等の糖類系核剤、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸等のカルボン酸金属塩や無水物、無機粒子、グリセロール、高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0018】
その具体例として、ソルビトール系核剤では1,3:2,4-O-ジベンジリデン-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-エチルベンジリデン)-D-ソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’-メチル-4’-フルオロベンジリデン)1-プロピルソルビトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1’-メチル-2’-プロペニルソルビトール、ビス-1,3,2,4-ジベンジリデン2’,3’-ジブロモプロピルソルビトール等のジベンジリデンソルビトール構造を含む化合物が挙げられ、ノニトール系核剤では1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール等が、またキリシトール系核剤ではビス-1,3:2,4-(5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-2-ナフトアルデヒドベンジリデン)1-アリルキシリトール、ビス-1,3:2,4-(3’,4’-ジメチルベンジリデン)1-プロピルキシリトール等が挙げられる。
【0019】
またカルボン酸金属塩としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸とナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等との金属塩、無機粒子としてはタルク、炭酸カルシウム、カオリン等、高級脂肪酸エステルとしてはグリセリンモノグリセリド等が例示される。
【0020】
このような核剤(B)は、新日本理化(株)より商品名ゲルオール、(株)ADEKAより商品名アデカスタブ、ミリケンジャパン合同会社よりハイパフォームなどが販売されている。この内、ソルビトール系核剤がヒートシールに供した際のフィルム収縮が小さいため最も好ましく、中でもジベンジリデンソルビール構造を含むソルビトール系核剤が最も好ましい。
【0021】
ポリエチレン(A)と核剤(B)の比率は、ポリエチレン(A)が95~99.9重量%、核剤(B)0.1~5重量%であり、ポリエチレン(A)が98~99.8重量%、核剤(B)が0.2~2重量%であることが好ましく、最も好ましくはポリエチレン(A)が0.5~99重量%、核剤(B)が0.5~1重量%である。ポリエチレン(A)が99.9重量%未満であるとラミネート用延伸フィルムのヒートシールにおける収縮抑制効果が小さいため好ましくなく、95重量%を超えると透明性とリサイクル性が悪化するため好ましくない。なお、(A)及び(B)の配合比率の合計は100重量%とする
ポリエチレン(A)は、5~100ppmの有機過酸化物およびその分解物を含むと延伸ポリエチレンフィルムの示差走査熱量測定装置にて測定した吸熱曲線のピーク温度が高く、耐熱性が更に向上した延伸ラミネートフィルムが得られるため好ましい。
【0022】
有機過酸化物としては、例えばジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのジアルキルパーオキサイド類、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレートなどのパーオキシエステル類、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレートなどのパーオキシケタール類が挙げられる。この中で、特にジアルキルパーオキサイド類、なかでもα,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3を用いることが好ましい。
【0023】
ポリエチレン組成物(X)は、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等、通常ポリオレフィンに使用される添加剤を添加したものでも構わない。
【0024】
ポリエチレン組成物(X)には、分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有するエチレン・αーオレフィン共重合体(C)を0.01~10重量部添加することもできる。該エチレン・αーオレフィン共重合体(C)をこの割合で添加することにより、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの成形性と透明性が向上するため好ましい。
【0025】
上記エチレン・αーオレフィン共重合体(C)は、メタロセン触媒を用いて製造される。用いるメタロセン触媒は、メタロセン錯体、活性化助触媒、および必要に応じて有機アルミニウム化合物を構成成分として有し、マクロモノマーの合成と同時に、マクロモノマーとエチレンと炭素数3~6のオレフィンの共重合を行うことが好ましい。マクロモノマーとは、末端にビニル基を有するオレフィン重合体であり、エチレンと炭素数3~6のオレフィンを共重合することによって得られる末端にビニル基を有するエチレン共重合体である。
【0026】
上記ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの厚みは、好ましくは10~200μmであり、より好ましくは12~100μmであり、さらに好ましくは14~50μmである。このような範囲であれば、好ましいヒートシール強度を有するラミネートフィルムを得ることができる。
【0027】
上記ラミネート用延伸フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のインフレーション成形やTダイキャスト成形等の押出成形にて延伸用フィルムを得た後、テンター法やロール圧延成型等により延伸する方法が挙げられる。
【0028】
本発明の一態様であるラミネート用延伸フィルムの製造方法は、以下の工程(1)及び(2)を含む。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)が9万~25万であり、JIS K6922-1(1997年)で測定した密度が945~980kg/m3であるポリエチレン(A)を90~99.5重量%、及び核剤(B)を0.1~5重量%含むポリエチレン組成物(X)を押出成形し、延伸用ポリエチレンフィルムを製造する工程。
(2)工程(1)で製造した延伸用ポリエチレンフィルムを110℃から140℃でフィルムの機械方向に2~10倍延伸し、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを製造する工程。
【0029】
工程(2)における延伸温度は、110℃から140℃が好ましい。110℃未満では延伸用ポリエチレンフィルムの引張応力が高く延伸できない場合があり、140℃を超えると延伸成形性や透明性が悪化することがある。
【0030】
ロール圧延成型とは、2本以上のロール間でTダイ等から供出されたポリエチレンシートを圧延し、所定の厚みを有するフィルムを成形する成形方法をいう。ロール圧延成型としてはTダイ押出成形で用いられるポリィッシングロール方式やカレンダー成型が好適に用いられる。カレンダー成型装置としては、例えば、2本直列カレンダー、3本直列カレンダー、4本直列カレンダー、S型カレンダー、逆L型カレンダー、Z型カレンダー、斜Z型カレンダー等が挙げられる。
【0031】
延伸回数は1回であってもよく、複数回であってもよいが、延伸回数を複数回とすることによりラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの強度や耐熱性が向上するため好ましい。
【0032】
本発明の一態様である一態様であるラミネート用延伸フィルムの製造方法において、上記工程(1)、(2)に加えて、以下の工程(3)をさらに含んでいても良い。
(3)工程(2)で製造したラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを更に機械方向に対して垂直方向に延伸する工程。
【0033】
ラミネート用ポリエチレン延伸フィルムをさらに機械方向に対して垂直方向に延伸することにより二軸延伸フィルムを製造することができる。横延伸の方法としては、テンター法が好ましい。
【0034】
上記ラミネート用ポリエチレン延伸フィルムには、ラミネートフィルムの接着性を高めるため、任意の適切な表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理等が挙げられる。
【0035】
また、ラミネート用ポリエチレン延伸フィルムには、アルミニウム、アルミナ、二酸化珪素などの蒸着処理が施されていてもよく、ポリビニルアルコールやポリ塩化ビニリデン等のガスバリア樹脂、又はガスバリア樹脂に層状フィラーが分散した材料がコートされていてもよい。
【0036】
また、ラミネート用ポリエチレン延伸フィルムは、ポリエチレン組成物(X)とエチレン-ビニルアルコール共重合体やポリアミド、ポリエステルとポリビニルアルコールやポリ塩化ビニリデン等のガスバリア樹脂を共押出成形されたものでもよい。
【0037】
本発明の一態様であるラミネート用ポリエチレン延伸フィルムは、その少なくとも一方の片側にエチレン系重合体フィルムを有するものである。
【0038】
上記エチレン系重合体フィルムの厚みは、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは10~150μmであり、さらに好ましくは20~120μmである。このような範囲であれば、ヒートシール性に優れたラミネートフィルムを得ることができる。
【0039】
上記エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンと共重合可能な単量体の共重合体であってもよい。エチレン系重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・一酸化炭素共重合体、エチレン・スチレン共重合体等が挙げられる。この内、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体がラミネートフィルムのヒートシール性に優れるため好ましい。
【0040】
高密度ポリエチレンおよびエチレン・α-オレフィン共重合体の製造方法は、特に限定されず、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができる。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロンハード、ニポロン-L、ニポロン-Zの商品名で各々市販されている。エチレン・α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどを例示することができる。高圧法低密度ポリエチレンの製造方法は、高圧ラジカル重合を例示することができる。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社からペトロセンの商品名で市販されている。エチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法としては、高圧法ラジカル重合、溶液重合や乳化重合等の公知の製造方法が挙げられる。このような樹脂は市販品の中から便宜選択することができ、エチレン-酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で市販されている。
【0041】
上記エチレン系重合体フィルムは、石油由来のナフサ、生物由来のナフサ、あるいはプラスチックをリサイクルして得られるナフサから製造される。
【0042】
エチレン系重合体の密度は、好ましくは880~940kg/m3であり、より好ましくは890~930kg/m3であり、最も好ましくは895~925kg/m3である。このような範囲であれば、ヒートシール外観に優れるラミネートフィルムを得ることができる。エチレン系重合体の密度は、JIS K6922-1(1997年)に準じて測定される。
【0043】
エチレン系重合体のメルトフローレートは、好ましくは0.1~30g/10分であり、より好ましくは0.5~25g/10分であり、さらに好ましくは1~20g/10分である。このような範囲のメルトフローレートを有するエチレン系重合体は、エチレン系重合体フィルムを製造する際の成型性に優れる点で有利である。
【0044】
エチレン系重合体の融点は、好ましくは80℃~130℃であり、より好ましくは80℃~120℃である。エチレン系重合体の融点は、測定機DSC6220(セイコーインスツル社製)を使用し、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で開始温度30℃から230℃まで昇温することで測定することができる。
【0045】
エチレン系重合体フィルムは、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含んでいてもよい。また、エチレン系重合体フィルムは、粘着付与剤を含み得る。粘着付与材を含むエチレン系重合体フィルムを形成すれば、ヒートシール性に優れるラミネートフィルムを得ることができる。
【0046】
上記粘着付与剤としては、脂肪族系石油樹脂、脂肪族系水添石油樹脂、芳香族系石油樹脂、芳香族系水添石油樹脂、脂環族系石油樹脂、脂環族系水添石油樹脂、共重合系水添石油樹脂などの石油樹脂、クマロン樹脂、スチレン系樹脂、天然樹脂系粘着付与剤であるロジン系樹脂、メチルエステル系樹脂、グリセリンエステル系樹脂、ペンタエリストールエステル系樹脂、テルペン系樹脂及びそれらの変性物等が挙げられる。これらの粘着付与剤のうち、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種類からなる粘着付与剤が、接着性向上の観点から、好ましい。
【0047】
上記粘着付与剤は、環球法で測定した軟化点が90℃以上140℃以下の範囲にあるものが好ましく、100℃以上135℃以下であることがより好ましく、105℃以上130℃以下であればさらに好ましい。軟化点が前記範囲にある場合は、成形後のフィルムのブロッキングが少なく、また低温環境下での接着強度保持性が好適となる。
【0048】
上記粘着付与剤は、市販されているものが用いることができる。具体的には、石油樹脂としては(商品名)アルコンP100、アルコンP125、アルコンP140、アルコンM90、アルコンM115、アルコンM135(以上荒川化学工業株式会社製)、アイマーブS110、アイマーブP125(以上出光興産株式会社製)、T-REZ RC115、T-REZ HA125(以上JXTGエネルギー株式会社製)等を例示することができる。ロジン系樹脂としては、パインクリスタルKE-311(荒川化学工業株式会社製)等を例示することができる。テルペン系樹脂としては、YSレジンPX1150、YSレジンPX1150N(以上ヤスハラケミカル株式会社製)等を例示することができる。
【0049】
上記粘着付与剤の含有割合は、エチレン系重合体フィルムを構成するエチレン系重合体100重量部に対して、好ましくは1重量部~30重量部であり、より好ましくは5重量部~40重量部である。このような範囲であれば、ヒートシール性に優れるラミネートフィルムを得ることができる。
【0050】
その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等の通常ポリオレフィンに使用される添加剤;他のポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記ラミネートフィルムは、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの少なくとも片側表面上、またはアンカーコート剤などの接着剤層を設けたラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの接着剤層表面に、エチレン系重合体フィルムを貼り合わせることにより製造することができる。このような方法としては、例えば、シングルラミネート加工法、タンデムラミネート加工法、サンドウィッチラミネート加工法、共押出ラミネート加工法などの各種押出ラミネート加工やドライラミネート法等が挙げられる。押出ラミネート法におけるエチレン系重合体の加工温度は200℃~350℃の範囲が好ましく、冷却ロールの表面温度は10℃~50℃の範囲が好ましい。押出ラミネート加工に供する際、良好な接着性を得るためオゾンガスを吹き付けてもよい。その場合は、ダイより押出された該エチレン系重合体の温度は200℃以上であることが好ましい。またオゾンガスの処理量としては、ダイより押出された押出ラミネート用樹脂組成物よりなるフィルム1m2当たり0.5mg以上であることが好ましい。
【0052】
上記接着層は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系接着剤、イソシアネート系接着剤、ポリエチレンイミン系接着剤、ポリブタジエン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。ポリウレタン系接着剤又はイソシアネート系接着剤は、分子内に少なくとも2個以上の水酸基を有する少なくとも1種以上のポリオール成分と分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基を有する少なくとも1種以上のポリイソシアネート成分及び/又はジイソシアネートから構成される接着剤であることが好ましい。ポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールなどから適宜選択することができる。ジイソシアネートとしては、4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネートジフェニルメタン、1,5-ジイソシアネートナフタリン、4,4’-ジイソシアネートジシクロヘキシルメタン、1,4-ジイソシアネートベンゼン、及び/又は2,4-もしくは2,6-ジイソシアネートトルエンなどの芳香族ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,10-ジイソシアネートデカン、1,3-ジイソシアネートシクロペンタン、1,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、1-イソシアネート-3,3,5-トリメチル-3もしくは-5-イソシアネートメタンシクロヘキサンなどの脂肪族および脂環式ジイソシアネートを例示することができる。ポリイソシアネート成分は、これらのジイソシアネート単量体から製造することができる。このようなアンカーコート剤は、適宜市販品の中から選択することができ、ポリウレタン系接着剤は東ソー(株)から商品名ニッポラン3228などが、ポリエチレンイミン系接着剤は東ソー(株)から商品名トヨバインなどが市販されている。
【0053】
接着剤層の厚みは、押出ラミネート成形の場合、好ましくは、0.01~2.0μm以下、より好ましくは0.01~1μm、最も好ましくは0.01~0.5μmであり、ドライラミネート成形の場合、好ましくは、0.5~5.0μm以下、より好ましくは0.8~3μm、最も好ましくは0.8~2μmである。このような範囲であれば、リサイクル性と接着性に優れるラミネートフィルムを得ることができる。
【0054】
ラミネートフィルムは、その大部分をポリエチレン系材料で占めるため、リサイクル性に優れる。リサイクルの方法としては、ラミネートフィルムを溶融混練してペレットを得るマテリアルリサイクル法、ラミネートフィルムを熱分解し低分子炭化水素を得るケミカルリサイクルが挙げられ、特にマテリアルリサイクルが低コスト、低エネルギーのため好ましい。
【0055】
ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムの溶融混練装置としては、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを均一に分散できれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混練装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ-、回転ロール、インターナルミキサーなどの混練装置によりリサイクルペレットを得ることができる。この中で、分散性および連続生産性に優れることから、二軸押出機がより好ましい。
【0056】
二軸押出機で混練を行う場合のスクリュ回転数は特に制限されないが、50rpm以上3000rpm以下で混練することが好ましく、より好ましくは300rpm以上3000rpm以下である。スクリュ回転数50rpm以上であれば混合した各成分の分散性が向上し、得られた樹脂の物性に優れるため好ましく、スクリュ回転数3000rpm以下であれば過剰なせん断発熱による樹脂の劣化が生じないことから、得られた樹脂の物性に優れるため好ましい。
【0057】
混練工程において押出機を使用する場合、押出機で混練した樹脂組成物、好ましくは前記50rpm以上3000rpm以下の高速せん断条件で混練した樹脂組成物を原料として用いることができる。また、そのまま押出機で押出成形することで得られる成形体を成形品として用いることができる。
【0058】
また、本発明の一態様であるリサイクルポリエチレンペレットは、上記ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを溶融成形して得られたものである。リサイクルポリエチレンペレットは、本発明の効果を損なわない範囲で、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、着色剤、無機系中和剤、塩酸吸収剤、充填剤導電剤、鎖長延長剤、加水分解防止剤等が用いられても良い。
【実施例0059】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。実施例および比較例における評価方法は以下のとおりである。
<密度>
JIS K6922-1(1997年)に準拠して測定した。
<粘度>
円錐-円板レオメーター(レオメトリックス社製、商品名:SR2000)を用い、温度=190℃、角速度ω=1(s-1)における貯蔵弾性率G’(Pa)及び損失弾性率G’’(Pa)を求め、複素粘性率(η*)を以下式により算出した。
【0060】
η*=(G’2+G’’2)1/2/ω
<分子量>
分子量は、GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC-8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr-H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。測定の結果、得られたクロマトグラムより、重量平均分子量Mwおよび分子量1万以下の成分量割合を算出した。
<長鎖分岐>
炭素原子1000個当りの長鎖分岐数は、Bruker社製 AVANCE600核磁気共鳴装置を用いたカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)法によって、重合体のカーボン核磁気共鳴(13C-NMR)スペクトルを測定し、下記算出方法より、重合体中の炭素原子数1000個当りの長鎖分岐の数を求めた。測定温度は130℃に設定し、溶媒は1,2-ジクロロベンゼン/1,2-ジクロロベンゼン-d4=75/25(容積比)の混合液を用いた。
<長鎖分岐(LCB)の数の算出方法>
窓関数をガウシャンで処理したNMRスペクトルにおいて、5~50ppmにピークトップを有するすべてのピークのピーク面積の総和を1000として、炭素原子数7以上の分岐が結合したメチン炭素に由来するピークのピーク面積から長鎖分岐の数(炭素原子数7以上の分岐の数)を求めた。本測定条件においては、38.22~38.27ppm付近にピークトップを有するピークのピーク面積から長鎖分岐の数(炭素原子数7以上の分岐の数)を求めた。当該ピークのピーク面積は、高磁場側で隣接するピークとの谷の
ケミカルシフトから、低磁場側で隣接するピークとの谷のケミカルシフトまでの範囲でのシグナルの面積とした。なお、本測定条件においては、エチレン-1-オクテン共重合体の測定において、ヘキシル分岐が結合したメチン炭素に由来するピークのピークトップの位置が38.21ppmであった。
<ヘイズ>
ヘイズメーター(NDH-300A、日本電色工業(株)製)を用いてラミネート用延伸ポリエチレンフィルムのヘイズを測定した。
<ヒートシール外観>
実施例により得られたラミネートフィルムを、ヒートシール試験機TP-701B(テスター産業(株)製)を用いて設定温度130℃、両面加熱、エアー圧力0.2MPa、シール時間1秒間でヒートシールした後空冷し、ヒートシール部のラミネートフィルムの収縮率を外観として評価した。収縮率は((ヒートシール前のフィルム幅mm)-(ヒートシール後のフィルム幅mm))÷(ヒートシール前のフィルム幅mm)×100にて求めた。収縮率が小さいとヒートシール外観に優れるとした。
<リサイクル性>
実施例により得られたラミネート用延伸ポリエチレンフィルムとエチレン系重合体フィルムを粉砕し、スクリュ径が25mmである二軸押出機(テクノベル製 商品名ULTnano25TW)を用いて、樹脂温度160℃、スクリュ回転数300rpmの条件で溶融混練し、ストランドを得た。得られたストランド表面を目視観察し、突起状の異物が認められない場合、リサイクル性に優れる(〇)とし、突起状異物が著しく多い場合、リサイクル性に劣る(×)とした。該異物が若干認められた場合は(△)とした。
[実施例1]
[有機変性粘土の調製]
1リットルのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製、(商品名)エキネンF-3)300ml及び蒸留水300mlを入れ、濃塩酸15.0g及びジオレイルメチルアミン((C18H35)2(CH3)N、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、(商品名)リポミンM2O)63.7g(120mmol)を添加し、45℃に加熱した後、合成ヘクトライト(BYK社製、(商品名)ラポナイトRD)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mlで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより130gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[有機変性粘土の調製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド0.392g(1ミリモル)及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。室温まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、220mLのヘキサンにて2回洗浄後、ヘキサンを220ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0wt%)。
[ポリエチレンパウダー(A1)の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を200mg(固形分24mg相当)加え、85℃に昇温後、分圧が0.90MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:450ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することでポリエチレンパウダー(A1)を得た。
【0061】
得られたポリエチレンパウダー(A1)は、重量平均分子量11.1万、分子量1万以下の成分割合が3.4重量%、密度が950kg/m3であった。
[ポリエチレン組成物(X1)の製造]
得られたポリエチレンパウダー(A1)に有機過酸化物(パーヘキサC、日油(株)製)を50ppm添加しスクリュ径が25mmである二軸押出機(テクノベル製 商品名ULTnano25TW)を用いて、樹脂温度150℃、スクリュ回転数100rpmの条件で溶融混練し、ポリエチレンペレット(A1)を得た。
【0062】
得られたポリエチレンペレット(A1)を99.8重量%、核剤としてソルビトール系核剤(1,3:2,4-O-ジベンジリデン-D-ソルビトール、新日本理化株式会社製、以下B1と記す場合がある)を0.2重量%混合し、スクリュ径が25mmである二軸押出機(テクノベル製 商品名ULTnano25TW)を用いて、樹脂温度220℃、スクリュ回転数300rpmの条件で溶融混練し、ポリエチレン組成物ペレット(X1)を得た。
[ポリエチレン延伸フィルムの製造]
続いて、ポリエチレン組成物ペレット(X1)をスクリュ径が50mmである押出機を有するインフレーション成形機にてフィルム化した。押出温度は220℃、ダイのリップクリアランス(L)は3mm、得られた延伸用ポリエチレンフィルムの厚みは100μmであった。
【0063】
得られたポリエチレンフィルムをテンター法延伸機(東洋精機製作所(株)製、商品名EX10-B)で、延伸倍率が3倍となるように120℃で一軸延伸し、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムを得た。
[ラミネートフィルムの製造、および評価]
また、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルムと、エチレン系重合体フィルムとして、エチレン・1-ヘキセン共重合体(東ソー社製、商品名「ニポロンZZF230-1」、MFR:2g/10分、密度:920kg/m3)を用いインフレーション成形機(プラコー社製)にてフィルム成形して得られた厚み50μmのエチレン・1-ヘキセン共重合体フィルムとを、ウレタン系接着剤(三井化学社製の商品名「タケラックA3210」と商品名「タケネートA3072」との混合物)を介し接着させ、ラミネートフィルムを得た。得られたラミネートフィルムを用い、ヒートシール外観を評価した。評価結果を表1に示した。
【0064】
更に、ラミネート用延伸ポリエチレンフィルム20重量%と上記エチレン・1-ヘキセン共重合体フィルム80重量%を用い、リサイクル性を評価した。
[実施例2]
ポリエチレンペレット(A1)を99.5重量%、核剤B1を0.5重量%とした以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示した。
[実施例3]
ポリエチレンペレット(A1)を99.1重量%、核剤B1を0.9重量%とした以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示した。
[実施例4]
核剤としてB1の代わりに、ソルビトール系核剤(1,3:2,4-O-(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、新日本理化株式会社製、以下B2と記す場合がある)を0.5重量%を混合したこと以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例5]
核剤としてB1の代わりに、ミリケンジャパン合同会社製ハイパフォームHPN-20E、以下B2と記す場合がある)を0.5重量%混合したこと以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
[実施例6]
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸18.8g及びジメチルヘキサコシルアミン(Me2N(C26H53)、常法によって合成)49.1g(120mmol)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additives社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより140gの有機変性粘土を得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を14μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[変性粘土の調製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2、4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:12.0重量%)。
[エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を75mg(固形分9.0mg相当)加え、80℃に昇温後、1-ブテンを8.3g加え、分圧が0.85MPaになるようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度:850ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで58.5gのエチレン・1-ブテン共重合体パウダーを得た。得られたパウダーを得られたポリマーの密度は941kg/m3で あった。また、長鎖分岐数は、主鎖1000炭素数あたり0.30個であった。
【0065】
実施例1に用いたポリエチレン組成物ペレット(X1)100重量部に対し、エチレン・1-ブテン共重合体パウダーを5重量部追加し、スクリュ径が25mmである二軸押出機(テクノベル製 商品名ULTnano25TW)を用いて、樹脂温度150℃、スクリュ回転数100rpmの条件で溶融混練し、ポリエチレン組成物ペレット(X2)を得た。ポリエチレン組成物ペレット(X2)を用いたフィルム、延伸、ラミネートの各成形は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示した。
[実施例7]
ポリエチレンパウダー製造における水素濃度を調整し、重量平均分子量が13.1万、分子量1万以下の成分割合が1.5重量%、密度が950kg/m3であるポリエチレンパウダー(A2)を得たこと以外は実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示した。
[実施例8]
ポリエチレンペレット(A1)の代わりに、重量平均分子量が12.2万、分子量1万以下の成分割合が10.2重量%、密度が954kg/m3であるポリエチレンペレット(東ソー(株)製 商品名二ポロンハード5700、以下A3と記す場合がある)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。
[比較例1]
ポリエチレン組成物ペレット(X1)の代わりに、ポリエチレンペレット(A1)を100重量%としたこと以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示すが、シール外観、透明性が劣っていた。
[比較例2]
ポリエチレンペレット(A1)の代わりに、重量平均分子量が26.0万、分子量1万以下の成分割合が26.1重量%、密度が952kg/m3であるポリエチレンペレット(東ソー(株)製 商品名二ポロンハード7300A、以下A4と記す場合がある)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示すが、シール外観が著しく劣っていた。
[比較例3]
ポリエチレンペレット(A1)の代わりに、重量平均分子量が8.8万、分子量1万以下の成分割合が18.7重量%、密度が960kg/m3であるポリエチレンペレット(東ソー(株)製 商品名二ポロンハード4000、以下A5と記す場合がある)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示すが、延伸成形性が劣り、均質なフィルムが得られなかった。
[比較例4]
ポリエチレンペレット(A1)を94重量%、核剤B1を6重量%とした以外は、実施例1と同様にしてラミネートフィルムを得た。評価結果を表1に示すが、透明性、シール外観が劣っていた。
【0066】
【表1】