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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184230
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20231221BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231221BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/17 203
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/175 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098267
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 大介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB06
2C056EB29
2C056EB32
2C056EC06
2C056EC18
2C056EC23
2C056EC30
2C056JA13
2C056JC06
2C056JC13
2C056KB16
2C056KB24
(57)【要約】
【課題】装置の大型化やコストアップを招くことなく、回収した液体の再利用が可能な液体を吐出する装置を提供する。
【解決手段】少なくとも黒色の液体を吐出する液体吐出ヘッド11と、液体吐出ヘッド11に液体を供給する液体カートリッジ20と、液体吐出ヘッド20のメンテナンスを行うメンテナンス部10と、メンテナンス部10から排出された廃液を貯留する単一の固定廃液タンク8と、固定廃液タンク8に貯留された廃液を、黒色の液体を吐出する液体吐出ヘッド11に供給する経路4と、を備え、固定廃液タンク8は、貯留された廃液を撹拌する手段81を備える液体を吐出する装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも黒色の液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体カートリッジと、
前記液体吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部と、
前記メンテナンス部から排出された廃液を貯留する単一の固定廃液タンクと、
前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液を、黒色の液体を吐出する前記液体吐出ヘッドに供給する経路と、を備え、
前記固定廃液タンクは、貯留された前記廃液を撹拌する手段を備えることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記固定廃液タンクの内部は、前記廃液が排出される排出口に向かって低くなる勾配を有する傾斜部を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液の粘度を検知する粘度検知手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液を加温する加温手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記固定廃液タンクの上流側に、前記メンテナンス部から排出された前記廃液をろ過するフィルタ部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記固定廃液タンクの上流側に前記メンテナンス部から排出された前記廃液をろ過するフィルタ部材を備え、
前記固定廃液タンクは、内部に前記廃液が排出される排出口に向かって低くなる勾配を有し、貯留された前記廃液の粘度を検知する粘度検知手段及び貯留された前記廃液を加温する加温手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液の劣化を検知する手段と、交換廃液タンクと、前記固定廃液タンクから廃液を供給する先を前記交換廃液タンクと前記液体吐出ヘッドとの間で切り替えるバルブと、を備え、劣化が検知された液体を前記交換廃液タンクへ供給することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
前記固定廃液タンクの排出口の下流側に、再利用に供する前記廃液を貯留する着脱可能な廃液収容カートリッジを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項9】
前記固定廃液タンクの排出口と前記廃液が供給される前記液体吐出ヘッドとの間に、前記廃液を貯留する着脱可能な廃液収容カートリッジを備え、さらに前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液の劣化を検知する手段と、交換廃液タンクと、前記固定廃液タンクから廃液を供給する先を前記交換廃液タンクと前記液体吐出ヘッドとの間で切り替えるバルブとを備え、劣化が検知された液体を前記交換廃液タンクへ供給することを特徴とする請求項6に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置の一例としてのインクジェット記録装置では、液体吐出ヘッドのノズル内やノズル面に残された液体としてのインクを、空吐出や吸引を行うことにより廃液タンクに回収することが行われている。
【0003】
従来、廃液タンクへ排出されたインクはそのまま廃棄処理されていた。廃棄は環境負荷につながるという問題があった。また、ユーザーは廃液を回収するタンクを買い替える必要があり、コスト負担になるという問題があった。
このような問題に対し、回収した廃インクを再利用する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、回収手段によって回収したインクを再利用インクとして再利用インク用記録ヘッドへ供給する手段を備えたインクジェット記録装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、再利用インク専用の記録ヘッドを備える構成であるため、装置の大型化につながり、コスト低減が困難となるおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、装置の大型化やコストアップを招くことなく、回収した液体の再利用が可能な液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の液体を吐出する装置は、少なくとも黒色の液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体カートリッジと、前記液体吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部と、前記メンテナンス部から排出された廃液を貯留する単一の固定廃液タンクと、前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液を、黒色の液体を吐出する前記液体吐出ヘッドに供給する経路と、を備え、前記固定廃液タンクは、貯留された前記廃液を撹拌する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の大型化やコストアップを招くことなく、回収した液体の再利用が可能な液体を吐出する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の液体を吐出する装置における要部概略構成を示す説明図である。
図2】固定廃液タンクの例を示す模式図である。
図3】固定廃液タンクの例を示す模式図である。
図4】本実施形態の液体を吐出する装置における要部概略構成を示す説明図である。
図5】本実施形態に係る液体を吐出する装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
図1は、本発明に係る液体を吐出する装置の一実施形態の要部概略構成を示す説明図である。
本実施形態の液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッド11と、液体吐出ヘッド11に液体を供給する液体カートリッジ20と、液体吐出ヘッド11のメンテナンスを行うメンテナンス部と、メンテナンス部から排出された廃液を貯留する固定廃液タンク8と、固定廃液タンク8に貯留された廃液を液体吐出ヘッド11に供給する経路4と、を備え、固定廃液タンク8は、貯留された廃液を撹拌する手段81を備えている。
【0012】
図1に示す液体を吐出する装置は、例えばインクジェット記録装置であり、複数の液体吐出ヘッド11を備えている。各液体吐出ヘッド11は、ノズル面11aに複数のノズル孔が開口しており、それぞれブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクが吐出される。
【0013】
液体カートリッジ20は、対応する色のインクを液体吐出ヘッド11に供給する。なお、液体カートリッジ20は着脱可能である。
【0014】
本実施形態の液体を吐出する装置は、少なくとも黒色(ブラック(Bk))の液体を吐出する液体吐出ヘッド11及び黒色(ブラック(Bk))の液体を供給する液体カートリッジ20を備えていればよく、その他の色の液体吐出ヘッド11及び液体カートリッジ20の有無や種類は、適宜選択することができる。
貯留された廃液は、黒色(ブラック(Bk))の液体を吐出する液体吐出ヘッド11に供給される。
【0015】
メンテナンス部10(図5参照)は、メンテナンス部10は、ワイパー12や吸引キャップ14、保湿キャップ16等を備え、液体吐出ヘッド11の正常な吐出を維持する動作を行う。図1では吸引キャップ14のみを図示している。
吸引キャップ14は、液体吐出ヘッド11の維持動作を行う際に、ノズル面11aから液体を吸引するための吸引機構を備えたキャップ部材である。
【0016】
吸引キャップ14による吸引動作時には、いずれかの液体吐出ヘッド11(図1ではBk)のノズル面11aに当接してノズル孔を覆う。液体吐出ヘッド11を複数備える態様において、吸引キャップ14は、順次すべての液体吐出ヘッド11のノズル面11aと当接する。また、複数の液体吐出ヘッド11に対応する複数の吸引キャップ14を備える態様であってもよい。
【0017】
吸引キャップ14のノズル面11aと反対側には、チューブ5を介して吸引ポンプ6が接続されている。
吸引キャップ14をノズル面11aに装着した状態で、吸引ポンプ6を駆動する。これにより、吸引ポンプ6はノズル内及びノズル面11aに残留したインクを吸引し、吸引されたインクは、連結されたチューブ5を通って固定廃液タンク8に到達し、固定廃液タンク8に貯留される。
【0018】
なお、吸引されたインクは、ノズル面11a等に付着したゴミ等の異物が含まれているため、固定廃液タンク8の上流側に、メンテナンス部から排出された廃液をろ過するフィルタ部材7を備えることが好ましい。
【0019】
図2は固定廃液タンク8の内部を示す模式図であり、固定廃液タンク8が備える貯留された廃液を撹拌する手段(以下、単に「撹拌手段」ともいう)81の例を示したものである。
単一の固定廃液タンク8を備える本実施形態の装置では、黒色の他に複数の色の液体吐出ヘッド11及び液体カートリッジ20を備える態様において、メンテナンス部から排出される廃液は、黒色の液体とその他の色の液体とが混在することとなる。
これに対し、固定廃液タンク8の内部に撹拌手段81を設けることにより、各色の液体が撹拌されて全体として黒色に近い色となる。また撹拌手段81により撹拌を行うことにより、貯留されている液体の増粘の発生を遅延し、液体の鮮度維持を図ることができる。
【0020】
撹拌手段81としては、図2(A)に示すような撹拌スクリューとすることができる。撹拌スクリューとしては、例えば、固定廃液タンク8の長手方向に沿った回転軸に、捩れ羽根等の羽根状部材が所定間隔で取付けられたものが挙げられる。羽根状部材が回転することにより、廃液が撹拌される。
また、撹拌手段81としては、図2(B)に示すようなファンとすることもできる。
撹拌手段81の駆動機構は、例えば、回転軸に接続されるモータ及び変速機等で構成される。
【0021】
撹拌手段81の駆動機構は、例えば、回転軸に接続されるモータ及び変速機等で構成される。
撹拌手段81の駆動機構は、近接する吸引ポンプ6の駆動機構と共有することが好ましい。これにより装置の省スペース化及びコストダウンを図ることができる。
【0022】
図3は、固定廃液タンク8の内部の形状を模式的に示した図であり、撹拌手段81の図示は省略している。
図3(A)は固定廃液タンク8の長手方向の側面の断面図であり、図3(B)は図3(A)のX-Xの断面図である。
固定廃液タンク8の内部は、廃液2が排出される排出口8bに向かって低くなる勾配を有する傾斜部8aを備えている。傾斜部8aは、長手方向及び短手方向にそれぞれ形成されている。
【0023】
固定廃液タンク8は、内部に傾斜部8aを備えることにより、廃液2を確実に排出口8bへ送り出すことができる。また、排出口8bよりも上方に空気が集められることにより、排出される廃液2に空気が混入するのを防止することができる。
【0024】
図4は、本発明に係る液体を吐出する装置の他の実施形態の要部概略構成を示す説明図である。図4に示す液体を吐出する装置は例えば、図1と同様にインクジェット記録装置であり、複数の液体吐出ヘッド11を備えている。各液体吐出ヘッド11は、ノズル面11aに複数のノズル孔が開口しており、それぞれブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクが吐出される。
【0025】
本実施形態の液体を吐出する装置において、固定廃液タンク8には、貯留された廃液の特性を検知する検知手段を設けることができる。検知対象となる廃液の特性としては、例えば、粘度、濃度、pH等が挙げられ、必要に応じて適宜選択することができる。
【0026】
図4に示す例において、固定廃液タンク8は、粘度を検知する粘度検知手段83を備えている。
粘度検知手段83としては、例えば、粘度計が挙げられる。また、粘度検知手段83を設けずに、撹拌手段81の駆動機構の出力負荷(モータの出力負荷)を粘度の代替値とすることもできる。
【0027】
本実施形態の液体を吐出する装置において、固定廃液タンク8には、貯留された廃液を加温する加温手段82を設けることができる。加温手段82を設けることにより、固定廃液タンク8の内部の温度が低温となる環境下においても、廃液の粘度上昇を防止することができる。
加温手段82としては、所定の温度に加温できるものであれば特に限定されず、例えば、サーモスタット等の自動温度調節手段を備えるヒータなどが挙げられる。
【0028】
図4の例では、固定廃液タンク8の上流側にメンテナンス部から排出された廃液をろ過するフィルタ部材7を備え、固定廃液タンク8は、内部に廃液が排出される排出口に向かって低くなる勾配8a(図示せず)を有し、貯留された廃液の粘度を検知する粘度検知手段83及び貯留された廃液を加温する加温手段82を備えている。
【0029】
また、本実施形態の液体を吐出する装置において、固定廃液タンク8に貯留された廃液の劣化を検知する手段と、交換廃液タンク31と、固定廃液タンク8から廃液を供給する先を交換廃液タンク31と液体吐出ヘッド11との間で切り替える切替バルブ33と、を備え、劣化が検知された液体を交換廃液タンク31へ供給する構成とすることができる。
廃液の劣化を検知する手段としては、上述の粘度検知手段83を適用することができる。また、図4に示すように、切替バルブ33の上流側には、固定廃液タンク8内の廃液を吸引する廃液吸引ポンプ32を設けることが好ましい。
【0030】
廃液の劣化を検知する手段による検知結果に応じて、固定廃液タンク8内の廃液を再利用に供するか、廃棄するかを選択することができる。例えば、廃液の劣化を検知する手段として粘度検知手段83を用いる場合、所定の粘度を超えた廃液は再利用に適さないものとして廃棄を選択する。廃液を再利用せずに廃棄する場合は、廃液を交換廃液タンク31へ供給し、交換廃液タンク31に収容して処分する。
【0031】
また、本実施形態の液体を吐出する装置は、固定廃液タンク8の排出口8bの下流側に、再利用に供する廃液を貯留する着脱可能な廃液収容カートリッジ30を備える構成とすることができる。
廃液収容カートリッジ30は、図4に示すように、固定廃液タンク8の排出口8bと廃液が供給される液体吐出ヘッド11との間、すなわち廃液を液体吐出ヘッド11に供給する経路4上に設けることができる。
【0032】
容量一杯に廃液を収容した廃液収容カートリッジ30は、取り外して保管しておくことができ、例えば、黒色(ブラック(Bk))の液体吐出ヘッド11に液体を供給するカートリッジのリサイクル品として利用することができる。
【0033】
図4に示すインクジェット記録装置における廃液の再利用の流れの一例を説明する。
まず、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクが吐出される各液体吐出ヘッド11から、メンテナンス部により排出された廃液が固定廃液タンク8に貯留される。
固定廃液タンク8に貯留された廃液は、粘度検知手段83によりインクの劣化程度の目安としての粘度が検知され、再利用または廃棄が判断される。廃液は廃液吸引ポンプ32に吸引され、切替バルブ33によって供給先が切り替えられる。廃棄が選択された場合、廃液は、交換廃液タンク31へ送られる。交換廃液タンク31は交換可能となっている。一方、再利用が選択された場合は、ブラック(Bk)のインクが吐出される液体吐出ヘッド11、または着脱可能な廃液収容カートリッジ30に供給される。
廃液収容カートリッジ30に供給された廃液が容量一杯となったときは、取り外して保管しておき、ブラック(Bk)の液体吐出ヘッド11へインクを供給するためのリサイクル品として利用することができる。
なお、固定廃液タンク8の内部に貯留された廃液は、撹拌手段81による撹拌と、加温手段82による温度管理により、増粘が防止され、鮮度維持が図られている。
【0034】
以上の構成により、本実施形態の液体を吐出する装置によれば、装置の大型化やコストアップを招くことなく、回収した液体の再利用を行うことができる。
【0035】
本発明に係る液体を吐出する装置としてのインクジェット記録装置の例について、図5を参照して説明する。
図5はシリアル型のヘッドユニット(液体吐出装置)を備えたものである。図5に示すように、インクジェット記録装置100は、主ガイド部材61および従ガイド部材により、キャリッジ63を主走査方向D1に移動可能に保持している。主ガイド部材61および従ガイド部材は左右の側板に横架されている。
【0036】
タイミングベルト68が、駆動プーリ66と従動プーリ67との間に架け渡しされている。主走査モータ65の駆動力により、駆動プーリ66が回転すると、タイミングベルト68が周回走行し、従動プーリ67が従動回転する。このタイミングベルト68の周回走行により、キャリッジ63が主走査方向D1(キャリッジ移動方向)に往復移動する。
【0037】
このキャリッジ63には、複数の液体吐出ヘッド11を備えたヘッドユニット3が搭載されている。液体吐出ヘッド11は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出する。また、液体吐出ヘッド11は、複数のノズルからなるノズル列11nを主走査方向D1と直交する副走査方向D2に複数有する。各ノズルは下方(図5の紙面垂直方向のおもて面から裏面側へ向かう方向)に向けて開口しており、この方向が滴吐出方向である。
【0038】
また、インクジェット記録装置100は搬送手段である搬送ベルト69を備えている。搬送ベルト69は、用紙Pを静電吸着し、液体吐出ヘッド11に対向する位置で用紙Pを副走査方向D2へ搬送する。この搬送ベルト69は、無端状ベルトであり、搬送ローラ78とテンションローラ79との間に掛け渡されている。
【0039】
副走査モータ70の駆動力により、タイミングベルト71およびタイミングプーリ72を介して、搬送ローラ78が副走査方向D2に周回走行する。この搬送ベルト69は、周回移動しながら帯電ローラによって帯電(電荷付与)される。搬送ローラ78の周回走行により、搬送ローラ78上の用紙Pを副走査方向D2へ搬送することができる。
【0040】
さらに、インクジェット記録装置100は、キャリッジ63の主走査方向D1の一方側で搬送ベルト69の側方に、メンテナンス部10を備える。メンテナンス部10は、ワイパー12や吸引キャップ14、保湿キャップ16等を備える。
【0041】
また、インクジェット記録装置100は、エンコーダスケール73およびエンコーダセンサ74を有する。エンコーダスケール73は、キャリッジ63の主走査方向D1に沿って両側板間に張装されており、主走査方向D1に沿って所定のパターンを有する。エンコーダセンサ74は透過型フォトセンサを有し、エンコーダスケール73のこの所定のパターンを読み取ることができる。これらのエンコーダスケール73とエンコーダセンサ74によって、キャリッジ63の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)を構成している。
【0042】
また搬送ローラ78の軸には、所定のパターンを形成したコードホイール75と、エンコーダセンサ76とが設けられている。エンコーダセンサ76は透過型フォトセンサを有し、コードホイール75に形成したパターンを検出できる。これらのコードホイール75とエンコーダセンサ76によって、搬送ベルト69の移動量および移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)を構成している。
【0043】
このように構成したインクジェット記録装置100において、給紙トレイから用紙Pが搬送されてくると、帯電された搬送ベルト69がその表面に用紙Pを吸着する。そして、搬送ベルト69の周回走行によって用紙Pが副走査方向D2に搬送される。これに連動して、キャリッジ63を主走査方向D1に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド11を駆動することにより、停止している用紙Pにインク滴を吐出して1行分を記録する。そして、用紙Pを所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙Pを排紙トレイに排紙する。
【0044】
また、液体吐出ヘッド11のクリーニングを行う場合は、印字(記録)待機中にキャリッジ63をメンテナンス部10に移動し、メンテナンス部10によりメンテナンス動作を実施する。また、液体吐出ヘッド11は移動せず、メンテナンス部10が移動してメンテナンス動作を実施するようにしてもよい。
【0045】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニットなどを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0046】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0047】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0048】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0049】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0050】
本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。また、液体は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0051】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 少なくとも黒色の液体を吐出する液体吐出ヘッドと
前記液体吐出ヘッドに液体を供給する液体カートリッジと、
前記液体吐出ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンス部と、
前記メンテナンス部から排出された廃液を貯留する単一の固定廃液タンクと、
前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液を、黒色の液体を吐出する前記液体吐出ヘッドに供給する経路と、を備え、
前記固定廃液タンクは、貯留された前記廃液を撹拌する手段を備えることを特徴とする液体を吐出する装置である。
<2> 前記固定廃液タンクの内部は、前記廃液が排出される排出口に向かって低くなる勾配を有する傾斜部を備えることを特徴とする前記<1>に記載の液体を吐出する装置である。
<3> 前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液の粘度を検知する粘度検知手段を備えることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の液体を吐出する装置である。
<4> 前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液を加温する加温手段を備えることを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<5> 前記固定廃液タンクの上流側に、前記メンテナンス部から排出された前記廃液をろ過するフィルタ部材を備えることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<6> 前記固定廃液タンクの上流側に前記メンテナンス部から排出された前記廃液をろ過するフィルタ部材を備え、
前記固定廃液タンクは、内部に前記廃液が排出される排出口に向かって低くなる勾配を有し、貯留された前記廃液の粘度を検知する粘度検知手段及び貯留された前記廃液を加温する加温手段を備えることを特徴とする前記<1>に記載の液体を吐出する装置である。
<7> 前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液の劣化を検知する手段と、交換廃液タンクと、前記固定廃液タンクから廃液を供給する先を前記交換廃液タンクと前記液体吐出ヘッドとの間で切り替えるバルブと、を備え、劣化が検知された液体を前記交換廃液タンクへ供給することを特徴とする前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<8> 前記固定廃液タンクの排出口の下流側に、再利用に供する前記廃液を貯留する着脱可能な廃液収容カートリッジを備えることを特徴とする前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<9> 前記固定廃液タンクの排出口と前記廃液が供給される前記液体吐出ヘッドとの間に、前記廃液を貯留する着脱可能な廃液収容カートリッジを備え、さらに前記固定廃液タンクに貯留された前記廃液の劣化を検知する手段と、交換廃液タンクと、前記固定廃液タンクから廃液を供給する先を前記交換廃液タンクと前記液体吐出ヘッドとの間で切り替えるバルブとを備え、劣化が検知された液体を前記交換廃液タンクへ供給することを特徴とする前記<6>に記載の液体を吐出する装置である。
【符号の説明】
【0052】
6 吸引ポンプ
7 フィルタ
8 固定廃液タンク
8a 傾斜部
8b 排出口
9 供給ポンプ
10 メンテナンス部
11 液体吐出ヘッド
14 吸引キャップ
20 液体カートリッジ
30 廃液収容カートリッジ
31 交換廃液タンク
32 廃液吸引ポンプ
33 切替バルブ
81 撹拌手段
82 加温手段
83 検知手段
100 液体を吐出する装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【特許文献1】特開2006-305902号公報
図1
図2
図3
図4
図5