(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184431
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】液滴吐出ヘッド及び液滴吐出ユニット及び液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231221BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056110
(22)【出願日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2022097530
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌央
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AG75
2C057AG99
2C057AN01
2C057AN05
2C057AP25
2C057AQ02
2C057AQ06
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】接着剤中のフィラによるダンパへの局所的な応力集中の発生を抑制し、ダンパの破損を抑制可能な液滴吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】振動エネルギーを軽減する、貫通部77aを有するダンパ77と、ダンパ77が接合されダンパ77が振動可能な一方側空間67,68を有するダンパ保持基板73と、ダンパ77のダンパ保持基板73とは反対側に接合され、圧電素子40を収容する凹部及びダンパ77が振動可能な他方側空間71,72を有する圧電素子保持基板50と、を有し、圧電素子保持基板50は他方側空間71,72を形成する第一の隔壁59を、ダンパ保持基板73は一方側空間67,68を形成する、第一の隔壁59よりも幅が大きく形成された第二の隔壁69をそれぞれ備え、ダンパ77は第二の隔壁69においてダンパ保持基板73に接合され、貫通部77aは第一の隔壁59の幅と対応して形成されている液滴吐出ヘッド1。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動エネルギーを軽減する、貫通部を有するダンパと、
前記ダンパが接合され前記ダンパが振動可能な一方側空間を有するダンパ保持基板と、
前記ダンパの前記ダンパ保持基板とは反対側に接合され、圧電素子を収容する凹部及び前記ダンパが振動可能な他方側空間を有する圧電素子保持基板と、を有し、
前記圧電素子保持基板は前記他方側空間を形成する第一の隔壁を、前記ダンパ保持基板は前記一方側空間を形成する、前記第一の隔壁よりも幅が大きく形成された第二の隔壁をそれぞれ備え、
前記ダンパは前記第二の隔壁において前記ダンパ保持基板に接合され、
前記貫通部は前記第一の隔壁の幅と対応して形成されている液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記貫通部は前記第一の隔壁の端部と対応する位置のみに形成され、前記ダンパは前記第一の隔壁において前記圧電素子保持基板に接合されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記ダンパと前記ダンパ保持基板とはフィラを含む接着剤により互いに接合され、
前記貫通部の大きさは前記フィラの最大径よりも大きく形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記ダンパの厚みは前記フィラの最大径よりも大きく形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記ダンパは、コンプライアンスが7E-17以上、ヤング率が3~200GPaであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記ダンパは複数層からなる積層構造を有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一つに記載の液滴吐出ヘッドを有することを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項8】
請求項7記載の液滴吐出ユニットを有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
振動エネルギーを軽減する、切欠部を有するダンパと、
前記ダンパが接合され前記ダンパが振動可能な一方側空間を有するダンパ保持基板と、
前記ダンパの前記ダンパ保持基板とは反対側に接合され、圧電素子を収容する凹部及び前記ダンパが振動可能な他方側空間を有する圧電素子保持基板と、を有し、
前記圧電素子保持基板は前記他方側空間を形成する第一の側壁を、前記ダンパ保持基板は前記一方側空間を形成する、前記第一の側壁よりも幅が大きく形成された第二の側壁をそれぞれ備え、
前記ダンパは前記第二の側壁において前記ダンパ保持基板に接合され、
前記切欠部は前記第一の側壁の幅と対応して形成されている液滴吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッド及び液滴吐出ユニット及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の画像形成装置に採用される液滴吐出ヘッドが知られている。この液滴吐出ヘッドは、ノズルに連通する個別液室を構成する液室基板と、ノズルが設けられたノズル板とは反対側で液室基板と接合して圧電素子が収容される凹部が形成された圧電素子保持基板と、振動エネルギーを消散させて衝撃または振動の振幅を軽減するダンパと、ダンパが振動可能な空間を有するダンパ保持基板とを備えている。圧電素子保持基板とダンパとを接合する場合には、接合強度を向上させるためにフィラを含む接着剤によって接合することが好ましい。また、ダンパとダンパ保持基板との接合方法として、ダンパ材料を成膜した基板の成膜面とダンパ保持基板とを接着剤で接合し、その後、基板を研磨及びエッチングし、ダンパ材料を露出させる方法が挙げられる。
【0003】
上述の液滴吐出ヘッドとして、複数のノズルと、各ノズルに連通した複数の個別液室と、各個別液室内を昇圧するエネルギーを発生させるアクチュエータと、各個別液室に連通する共通液室とを備えた構成が知られている。この液滴吐出ヘッドでは、インクを共通液室から各ノズルに連通する各個別液室に供給し、各個別液室に対応するアクチュエータを駆動することで各個別液室内を昇圧してノズルからインクを吐出させている。この際に、個別液室内で生じた圧力変動が振動として各個別液室に連通する共通液室にも伝播し、伝播した振動によって隣接する個別液室内のインクに影響が及ぶ相互干渉が発生すると、意図しないノズルからの液滴の漏出や吐出、不安定な吐出状態を誘発して高品質の画像を得ることが困難となる。
【0004】
そこで、共通液室に伝播した振動を軽減する良好なダンパ効果を得ると共に、共通液室からの水分の揮発を抑制する技術として、共通液室の少なくとも一部を形成する可撓性部材を介して共通液室に対向配置された空気貯留室と、この空気貯留室と外部とを連通可能な弁と、を備えた液滴吐出ヘッドが提案されている(例えば「特許文献1」参照)。
また、液滴吐出ヘッドの構成が複雑になるという問題点を解決すべく、簡単な構成で共通液室とダンパ室とを形成して共通液室とダンパ室との間にダンパを配置する技術が提案されている。この技術の一例として、共通液室とダンパ室とを形成するフレーム部材を有し、このフレーム部材はダンパを有するダンパ部材を収容すると共にダンパ室となる凹部を有し、凹部の共通液室側底部にはダンパが臨む開口部とダンパ部材を支持する支持部とが設けられた液滴吐出ヘッドが提案されている(例えば「特許文献2」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし従来の液滴吐出ヘッドでは、ダンパのコンプライアンスすなわち基準圧力当たりの容積変化率を確保するため、ダンパ保持基板の隔壁幅が圧電素子保持基板の隔壁幅よりも狭く形成されている。このため、ダンパ保持基板と圧電素子保持基板とを接合する際に、接着剤に含まれるフィラによってダンパに対して局所的な応力が作用し、ダンパが破損してしまうという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決し、接着剤中のフィラによるダンパへの局所的な応力集中の発生を抑制し、ダンパの破損を抑制可能な液滴吐出ヘッドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、振動エネルギーを軽減する、貫通部を有するダンパと、前記ダンパが接合され前記ダンパが振動可能な一方側空間を有するダンパ保持基板と、前記ダンパの前記ダンパ保持基板とは反対側に接合され、圧電素子を収容する凹部及び前記ダンパが振動可能な他方側空間を有する圧電素子保持基板と、を有し、前記圧電素子保持基板は前記他方側空間を形成する第一の隔壁を、前記ダンパ保持基板は前記一方側空間を形成する、前記第一の隔壁よりも幅が大きく形成された第二の隔壁をそれぞれ備え、前記ダンパは前記第二の隔壁において前記ダンパ保持基板に接合され、前記貫通部は前記第一の隔壁の幅と対応して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着剤中に含まれるフィラは貫通部内に位置してダンパに干渉することが防止され、フィラによってダンパに対して局所的な応力が作用することを防止できる。これにより、ダンパへの局所的な応力集中の発生を防止してダンパの破損を防止でき、ダンパの破損を抑制可能な液滴吐出ヘッドを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を適用可能な従来の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出ユニットのノズル面側から見た概略分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態を適用可能な従来の液滴吐出ユニットの、液滴吐出ヘッドの短手方向に沿った概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態を適用可能な従来の液滴吐出ヘッドの流路基板と共通流路部材との間の概略断面図である。
【
図4】従来の液滴吐出ヘッドの中央部における圧電素子保持基板とダンパとダンパフレーム基板との接合部を示す拡大図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの中央部における特徴部を示す拡大図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの中央部における特徴部を示す拡大図である。
【
図7】本発明の各実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置の概略正面図である。
【
図8】本発明の各実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置の液滴吐出ユニットを説明する概略平面図である。
【
図9】本発明の各実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備えた他の液滴吐出装置の概略平面図である。
【
図10】本発明の各実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備えた他の液滴吐出装置の概略側面図である。
【
図11】本発明の各実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備えた他の液滴吐出装置の液滴吐出ユニットを説明する概略平面図である。
【
図12】本発明の各実施形態に係る液滴吐出ヘッドを備えた他の液滴吐出装置の他の液滴吐出ユニットを説明する概略正面図である。
【
図13】従来の液滴吐出ヘッドの端部における圧電素子保持基板とダンパとダンパフレーム基板との接合部を示す拡大図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの端部における特徴部を示す拡大図である。
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの端部における特徴部を示す拡大図である。
【
図16】本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出ヘッドのダンパとダンパ保持基板との接合面を示す概略平面図である。
【
図17】本発明の第1の実施形態の変形例に係る液滴吐出ヘッドのダンパとダンパ保持基板との接合面を示す概略平面図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態に係る液滴吐出ヘッドのダンパとダンパ保持基板との接合面を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の一実施形態を適用可能な従来より周知の液滴吐出ユニット100の概略分解斜視図を、
図2は液滴吐出ユニット100の液滴記録ヘッド短手方向に沿った概略断面図をそれぞれ示している。同図において液滴吐出ユニット100は、液滴を吐出する複数の液滴吐出ヘッド101、複数の液滴吐出ヘッド101を保持するベース部材102、液滴吐出ヘッド101のノズルカバーとなるカバー部材103を備えている。さらに液滴吐出ユニット100は、放熱部材104、複数の液滴吐出ヘッド101に対して液体を供給する流路を形成しているマニホールド105、ドライバIC(駆動回路)91を備えたフレキシブル配線部材90に接続されるプリント基板(PCB)106、モジュールケース107を備えている。
【0010】
複数の液滴吐出ヘッド101は、ノズル11が形成されたノズル板10、ノズル11に通じる圧力室である個別液室21等が形成された流路基板20、圧電素子40を含む振動板30、振動板30上に積層された圧電素子保持基板50、圧電素子保持基板50上に積層された共通流路部材(フレーム部材)70等を備えている。
流路基板20は、個別液室21と共に、個別液室21に通じる供給側個別流路22、個別液室21に通じる回収側個別流路24を形成している。
圧電素子保持基板50は、供給側個別流路22に振動板30の開口31を介して通じる供給側中間個別流路51、回収側個別流路24に振動板30の開口32を介して通じる回収側中間個別流路52を形成している。また圧電素子保持基板50には、
図3に示すように、圧電素子40を収容する凹部50aが形成されている。
【0011】
圧電素子保持基板50及び共通流路部材70は、供給側中間個別流路51に通じる供給側共通流路71、回収側中間個別流路52に通じる回収側共通流路72を形成している。供給側共通流路71はマニホールド105の流路151を介して供給ポート81に通じており、回収側共通流路72はマニホールド105の流路152を介して回収ポート82に通じている。
プリント基板106と圧電素子40とはフレキシブル配線部材90を介して接続され、フレキシブル配線部材90にはドライバIC91が実装されている。
【0012】
本実施形態において、複数の液滴吐出ヘッド101はそれぞれ所定の間隔を空けてベース部材102に取り付けられている。液滴吐出ヘッド101のベース部材102への取り付けは、ベース部材102に設けた開口部121に液滴吐出ヘッド101を挿入し、ベース部材102に接合して固定したカバー部材103に液滴吐出ヘッド101を構成するノズル板10の周縁部を接合して固定している。
また、液滴吐出ヘッド101の共通流路部材70の外側に設けた図示しないフランジ部をベース部材102に接合して固定している。なお、液滴吐出ヘッド101とベース部材102との固定構造は上述の構成には限定されず、接着、カシメ、ねじ固定等、どのような構成を採用してもよい。
【0013】
本実施形態において、ベース部材102は線膨張係数が低い材質で形成されていることが好ましい。線膨張係数が低い材質としては、例えば鉄にニッケルを添加した42alloy(アロイ)やインバー材等が挙げられ、本実施形態ではインバー材を用いている。
この構成により、液滴吐出ヘッド101が発熱してベース部材102の温度が上昇しても、ベース部材102の膨張量が少ないため所定のノズル位置からのノズルの位置ずれが生じにくくなり、液滴の着弾位置ずれの発生を抑制できる。
同様に、ノズル板10及び流路基板20及び振動板30はそれぞれシリコン単結晶基板で形成し、線膨張係数をベース部材102とほぼ同じとしている。これにより、熱膨張に起因するノズル位置ずれの発生を低減できる。
【0014】
図3は、従来の液滴吐出ヘッド101における流路基板20と共通流路部材70との間の概略断面図を示している。
図3において、共通流路部材70はその下方に、液体の衝撃や振動を減衰させるダンパ74の一方の面が接合されたダンパ保持基板73を有している。ダンパ74の他方の面は、接着剤75を介して圧電素子保持基板50に接合されている。
圧電素子保持基板50は、ダンパ74が振動可能な他方側空間として供給側共通流路71と回収側共通流路72とを隔離する、第一の隔壁としての隔壁59を有している。また圧電素子保持基板50は、
図3における両側端部に隔壁59と同じ幅で形成された第一の側壁としての側壁55をそれぞれ有している。
ダンパ保持基板73は、供給側共通流路71と対向して形成されダンパ74が振動可能な一方側空間67と、回収側共通流路72と対向して形成されダンパ74が振動可能な一方側空間68とを隔離する、第二の隔壁としての隔壁69を有している。またダンパ保持基板73は、
図3における両側端部に隔壁69と同じ幅で形成された第二の側壁としての側壁65をそれぞれ有している。
ダンパ74の一方の面は各側壁65及び隔壁69にそれぞれ接合され、ダンパ74の他方の面は接着剤75によって各側壁55及び隔壁59にそれぞれ接合されている。
【0015】
図4は、
図3における部分A、すなわち圧電素子保持基板50の隔壁59と、ダンパ74と、ダンパ保持基板73の隔壁69との接合部における拡大図を示している。
図4に示すように、隔壁59とダンパ74とは接着剤75によって互いに接着されている。ここで用いられる接着剤75としては、接着性を向上させるためあるいは接着強度を向上させるため等の目的により、充填剤であるフィラ60を含んだものが好ましく用いられる。本実施形態で示した接着剤75には、それぞれ球形状を呈した複数個のフィラ60が含まれており、その最大粒径は10μmである。
ダンパ保持基板73及びダンパ74は、半導体プロセスを用いて作製されている。本実施形態では、基材となるウエハにダンパ74となる材料を成膜し、成膜面とダンパ74が振動可能な空間がパターニングされたダンパ保持基板73とを接合する。
【0016】
図4に示す従来の構成において、隔壁69の幅は隔壁59の幅よりも狭く形成されていた。このため、フィラ60の直径が大きく、隔壁59とダンパ74との間にフィラ60が直接的に挟まれてしまいダンパ74が隔壁69によってバックアップされない箇所では、フィラ60によってダンパ74に対して局所的な応力が作用し、
図4に示すように亀裂76が生じてダンパ74が破損してしまうという問題点があった。亀裂76は液滴流路に生じるため、液滴吐出ヘッド101には液滴吐出不良が発生していた。以下に、この問題点の発生を防止する本発明の構成を説明する。
【0017】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出ヘッド1の中央部における、圧電素子保持基板50の隔壁56とダンパ77とダンパ保持基板73の隔壁66との接合部の拡大図である。液滴吐出ヘッド1は、上述した液滴吐出ヘッド101と比較すると、隔壁59に代えて第一の隔壁としての隔壁56を有する点、隔壁69に代えて第二の隔壁としての隔壁66を有する点、ダンパ74に代えてダンパ77を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
隔壁56は、隔壁59と同様に他方側空間71,72を隔離しており、その幅は隔壁59よりも小さく形成されている。隔壁66は、隔壁69と同様に一方側空間67,68を隔離しており、その幅は隔壁56よりも大きく形成されている。ダンパ77は、貫通穴である貫通部77aを有している。貫通部77aは、隔壁56の幅と対応して形成、本実施形態では隔壁56の幅よりも大きくなるように形成されており、かつ隔壁66の幅よりも小さくなるように形成されている。隔壁56は、フィラ60を含む接着剤75によって直接隔壁66に固定される。
【0018】
上述した本発明の液滴吐出ヘッド1によれば、隔壁56の幅に比して隔壁66の幅を大きく形成すると共に、貫通部77aを有するダンパ77を用いている。この構成により、接着剤75中に含まれるフィラ60は貫通部77a内に位置してダンパ77に干渉することが防止され、フィラ60によってダンパ77に対して局所的な応力が作用することを防止できる。これにより、ダンパ77への局所的な応力集中の発生を防止してダンパ77の破損を防止できる。また、ダンパ77はダンパ保持基板73に保持されるので、振動エネルギーを消散させて衝撃または振動の振幅を軽減する機能は良好に保持される。
【0019】
図13は、
図3における部分B、すなわち圧電素子保持基板50の側壁55と、ダンパ74と、ダンパ保持基板73の側壁65との接合部における拡大図を示している。
図13に示すように、側壁55とダンパ74とは上述した接着剤75によって互いに接着されている。
図13に示す従来の構成においても、
図4に示す構成と同様に側壁65の幅は側壁55の幅よりも小さく形成されていた。このため、
図4と同様にフィラ60によってダンパ74に対して局所的な応力が作用し、亀裂76が生じてダンパ74が破損してしまうという問題点があった。
【0020】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出ヘッド1の端部における、圧電素子保持基板50の側壁54とダンパ77とダンパ保持基板73の側壁64との接合部の拡大図である。液滴吐出ヘッド1は、上述した液滴吐出ヘッド101と比較すると、側壁55に代えて第一の側壁としての側壁54を有する点、側壁65に代えて第二の側壁としての側壁64を有する点、ダンパ74に代えてダンパ77を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
側壁54は、側壁55と同様に圧電素子保持基板50の両端部に設けられており、その幅は側壁55よりも小さく形成されている。側壁64は、側壁65と同様にダンパ保持基板73の両端部に設けられており、その幅は側壁54よりも大きく形成されている。ダンパ77は、両端部に切欠部77bをそれぞれ有している。切欠部77bはその幅が側壁54の幅と対応してそれぞれ形成、本実施形態では側壁54の幅よりもそれぞれ大きく形成されており、かつ側壁64の内側端部よりも外側にそれぞれ位置するように形成されている。側壁54は、フィラ60を含む接着剤75によって直接側壁64に固定される。
この構成により、上述と同様の、ダンパ77への局所的な応力集中の発生を防止してダンパ77の破損を防止できるという作用効果を得ることができる。
【0021】
図16は、本発明の第1の実施形態におけるダンパ77とダンパ保持基板73との接合面を示す概略平面図である。第1の実施形態では、隔壁56,66は円柱状に、側壁54,64は角柱状にそれぞれ形成されており、隔壁56,66はそれぞれ6個ずつ、側壁54,64はそれぞれ12個ずつ設けられている。1組の隔壁56,66と2組の側壁54,64とがそれぞれ対応して一方側空間67,68及び他方側空間71,72を形成しており、本実施形態では6組の隔壁56,66及び12組の側壁54,64がそれぞれ等間隔で配置されている。本実施形態では隔壁56,66が円柱形状であるので、それぞれの幅はそれぞれの直径となる。
図17は、本発明の第1の実施形態の変形例におけるダンパ77とダンパ保持基板73との接合面を示す概略平面図である。この変形例では、隔壁56,66及び側壁54,64はそれぞれ角柱状に形成されており、1組の隔壁56,66と2組の側壁54,64とがそれぞれ対応して一方側空間67,68及び他方側空間71,72を形成している。
【0022】
上述した構成において、ダンパ77はコンプライアンスすなわち基準圧力当たりの容積変化率が7E-17以上、ヤング率が3~200GPaとなるように形成されている。この構成により、ダンパ77はダンパとして必要な機能、すなわち振動エネルギーを消散させて衝撃または振動の振幅を軽減するという機能を確実に満たすことができる。
また、ダンパ77は複数の層からなる積層構造となるように構成されているため、成膜により形成されるダンパ77の物性を任意に変更することができる。
【0023】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る液滴吐出ヘッド2の中央部における、隔壁56とダンパ78と隔壁66との接合部の拡大図である。液滴吐出ヘッド2は、上述した液滴吐出ヘッド1と比較すると、ダンパ77に代えてダンパ78を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
ダンパ78は、貫通穴である貫通部78aを有している。貫通部78aは、隔壁56の幅と対応して形成、本実施形態では隔壁56の端部と対応する位置にのみそれぞれ形成され隔壁56の中央部には形成されておらず、かつ隔壁66の端部よりも隔壁66の幅の内側にそれぞれ位置するように形成されている。隔壁56は、フィラ60を含む接着剤75によって貫通部78aよりも内側のダンパ78に固定される。ダンパ78は、その厚みがフィラ60の最大径よりも大きく形成されていると共に、各貫通部78aの幅方向の大きさがフィラ60の最大径よりもそれぞれ大きく形成されている。
【0024】
この構成によれば、接着剤75中のフィラ60がダンパ78に干渉しても、ダンパ78が隔壁66によってバックアップされているため、フィラ60によってダンパ78に対して局所的な応力が作用することを防止できる。これにより、ダンパ78への局所的な応力集中の発生を防止してダンパ78の破損を防止できる。また、ダンパ78はその厚みがフィラ60の最大径よりも大きく形成されていると共に、貫通部78aの幅方向の大きさがフィラ60の最大径よりも大きく形成されているため、フィラ60がはみ出した場合でも貫通部78a内にフィラ60を完全に収容することができ、フィラ60がダンパ78に干渉することを確実に防止できる。
【0025】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る液滴吐出ヘッド2の端部における、側壁54とダンパ78と側壁64との接合部における拡大図である。液滴吐出ヘッド2は、上述した液滴吐出ヘッド1と比較すると、ダンパ77に代えてダンパ78を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
ダンパ78は、両端部に切欠部78bをそれぞれ有している。切欠部78bはその幅が側壁54の幅と対応して形成、本実施形態では側壁54の内側端部と対応する位置にのみそれぞれ形成されており、かつ側壁64の内側端部よりも外側にそれぞれ位置するように形成されている。側壁54は、フィラ60を含む接着剤75によってダンパ78に固定される。
この構成により、上述と同様の、ダンパ78への局所的な応力集中の発生を防止してダンパ78の破損を防止できるという作用効果を得ることができる。
【0026】
図18は、本発明の第2の実施形態の変形例におけるダンパ78とダンパ保持基板73との接合面を示す概略平面図である。この変形例では、隔壁56,66及び側壁54,64はそれぞれ角柱状に形成されており、1組の隔壁56,66と2組の側壁54,64とがそれぞれ対応して一方側空間67,68及び他方側空間71,72を形成している。
図18に示すように、貫通部78aは隔壁56の幅と対応して形成されており、各貫通部78aに隔壁56の各側縁部がそれぞれ露出するように、ダンパ78に各貫通穴78a,78aがそれぞれ配置されている。
【0027】
上述した構成において、ダンパ78はコンプライアンスが7E-17以上、ヤング率が3~200GPaとなるように形成されている。この構成により、ダンパ78はダンパとして必要な機能、すなわち振動エネルギーを消散させて衝撃または振動の振幅を軽減するという機能を確実に満たすことができる。
また、ダンパ78は複数の層からなる積層構造となるように構成されているため、成膜により形成されるダンパ78の物性を任意に変更することができる。
【0028】
次に、上述した各液滴吐出ヘッド1,2を備えた液滴吐出装置について説明する。
図7、
図8に示すように、液滴吐出装置である印刷装置500は、被記録媒体である連続体510を搬入する搬入手段501、搬入手段501によって搬入された連続体510を印刷手段505に向けて案内搬送する案内搬送手段503を備えている。また印刷装置500は、連続体510に対して液滴を吐出して画像を形成する印刷動作を行う印刷手段505、液滴が付着した連続体510を乾燥させる乾燥手段507、連続体510を搬出する搬出手段509等を備えている。
連続体510は、搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509がそれぞれ有するローラによって案内及び搬送され、搬出手段509の巻き取りローラ591に巻き取られる。連続体510は、印刷手段505において搬送ガイド部材559上を液滴吐出ユニットであるヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液滴によって画像が印刷される。
【0029】
印刷装置500は、ヘッドユニット550に上述した液滴吐出ユニット100と同様の液滴吐出ユニット100A,100Bを備えており、各液滴吐出ユニット100A,100Bはそれぞれ共通ベース部材552上に設けられている。
各液滴吐出ユニット100A,100Bは、連続体搬送方向と直交する方向における液滴吐出ヘッド1の並び方向をヘッド配列方向とするとき、液滴吐出ユニット100Aのヘッド列1A1,1A2の組で同じ色の液滴を吐出する。同様に、液滴吐出ユニット100Aのヘッド列1B1,1B2の組、液滴吐出ユニット100Bのヘッド列1C1,1C2の組、液滴吐出ユニット100Bのヘッド列1D1,1D2の組で、それぞれ所望の色の液滴を吐出する。
【0030】
次に、本発明に係る液滴吐出装置である印刷装置の他の例を
図9及び
図10に基づいて説明する。
液滴吐出装置としての印刷装置400はシリアル型印刷装置であり、主走査移動機構493によってキャリッジ403が主走査方向に向けて往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を有している。ガイド部材401は左右の側板491A,491Bに掛け渡されており、キャリッジ403を移動可能に保持している。キャリッジ403は、駆動プーリ406と従動プーリ407との間に掛け渡されたタイミングベルト408を介して、主走査モータ405の駆動力を伝達されて主走査方向に往復移動される。
【0031】
キャリッジ403には、液滴吐出ヘッド1及びヘッドタンク441を一体的に有する液滴吐出ユニット440が搭載されている。ここで液滴吐出ヘッド1は、例えばイエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液滴を吐出する。また液滴吐出ヘッド1は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、液滴吐出方向を下方とした状態で装着されている。液滴吐出ヘッド1は、図示しない液体循環装置と接続されており、液滴吐出ヘッド1には所望の色の液体が循環供給される。
【0032】
印刷装置400は、被記録媒体である用紙410を搬送する搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動する副走査モータ416を有している。無端状ベルトである搬送ベルト412は搬送ローラ413とテンションローラ414との間に掛け渡されており、用紙410を吸着して液滴吐出ヘッド1に対向する位置で搬送する。吸着は、静電吸着あるいはエア吸引等によって実施される。搬送ベルト412は、副走査モータ416の駆動力をタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して伝達されることにより、副走査方向に周回移動される。
【0033】
キャリッジ403の主走査方向の一方側であって搬送ベルト412の側方には、液滴吐出ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。維持回復機構420は、例えば液滴吐出ヘッド1のノズル面をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422等で構成されている。また、主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
上述した構成の印刷装置400では、用紙410が搬送ベルト412によって吸着され、搬送ベルト412の周回移動により用紙410が副走査方向に搬送される。このとき、キャリッジ403を主走査方向に移動させつつ画像信号に応じて液滴吐出ヘッド1を駆動することにより、停止している用紙410に液滴を吐出して画像を形成する。
【0034】
次に、上述した液滴吐出ユニット440を
図11に基づいて説明する。
液滴吐出ユニット440は、液滴吐出装置である印刷装置400を構成している各部材のうち、各側板491A,491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493、キャリッジ403、液滴吐出ヘッド1等によって構成されている。
なお、この液滴吐出ユニット440の例えば側板491Bに、上述した維持回復機構420をさらに取り付けた液滴吐出ユニットを構成することも可能である。
【0035】
次に、本発明の一実施形態に係る液滴吐出ユニットの他の例を、
図12に基づいて説明する。
図12に示す液滴吐出ユニット450は、流路部品444が取り付けられた液滴吐出ヘッド1と、流路部品444に接続されたチューブ456とを有している。流路部品444はカバー442の内部に配置されており、流路部品444の上部には液滴吐出ヘッド1と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。なお、流路部品444に代えてヘッドタンク441を含む構成も可能である。
【0036】
上述した液滴吐出ヘッド1を含む、液滴吐出ユニット100,100A,100B,440,450,550、及び液滴吐出装置である印刷装置400,500では、上述した液滴吐出ヘッド1における作用効果と同様の作用効果を得ることができる。また、上記各構成では液滴吐出ヘッドとして液滴吐出ヘッド1を用いる構成を示したが、液滴吐出ヘッド1に代えて液滴吐出ヘッド2を用いることも可能である。この場合には、液滴吐出ヘッド2と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
本発明において、使用される液体はヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく特に限定されないが、常温・常圧下において、または加熱・冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やタンパク質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、これ等を含む溶液や懸濁液やエマルション等である。これ等は、例えばインクジェット用インク、表面処理液、三次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
液滴を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極とからなる静電アクチュエータ等を使用するものが含まれる。
【0038】
「液滴吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上述したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい)以外にも、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータ等を使用するものでもよい。
「液滴吐出ユニット」は、液滴吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液滴の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば「液滴吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液滴吐出ヘッドと組み合わせたもの等が含まれる。
ここで一体化とは、例えば液滴吐出ヘッドと機能部品や機構が、締結、接着、係合等によって互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液滴吐出ヘッドと機能部品や機構が互いに着脱可能であってもよい。
【0039】
液滴吐出ユニットとして、液滴吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているもの、両者がチューブ等で互いに接続されて一体化されているものがある。ここで、これ等の液滴吐出ユニットの液滴吐出ヘッドとヘッドタンクとの間に、フィルタを含むユニットを追加することも可能である。
また液滴吐出ユニットとして、液滴吐出ヘッドとキャリッジとが一体化されているもの、液滴吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構とが一体化されているものがある。また液滴吐出ユニットとして、液滴吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させ、液滴吐出ヘッドと走査移動機構とが一体化されているものがある。
【0040】
液滴吐出ユニットとして、液滴吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液滴吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構とが一体化されているものがある。また液滴吐出ユニットとして、ヘッドタンクまたは流路部品が取り付けられた液滴吐出ヘッドにチューブが接続され、液滴吐出ヘッドと供給機構とが一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液滴吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。供給機構は、チューブ単体及び装填部単体も含むものとする。
【0041】
本発明では、液滴吐出ユニットについて液滴吐出ヘッドとの組み合わせで説明しているが、液滴吐出ユニットには上述した液滴吐出ヘッドを含むヘッドモジュールやヘッドユニットと上述したような機能部品や機構が一体化されたものも含まれる。
液滴吐出装置には、液滴吐出ヘッド、液滴吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニット等を備え、液滴吐出ヘッドを駆動させて液滴を吐出させる装置が含まれる。液滴吐出装置には、液滴が付着可能なものに対して液滴を吐出することが可能な装置だけではなく、液滴を気体中や液体中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0042】
液滴吐出装置は、液滴が付着可能なものの給送、搬送、排紙に関わる手段、その他の前処理装置や後処理装置等にも含むことができる。
例えば液滴吐出装置としては、インクを吐出させて被記録媒体に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出する立体造形装置(三次元造形装置)が挙げられる。
また液滴吐出装置は、吐出された液滴によって文字や図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体では意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0043】
上述した液滴が付着可能なものとは、液滴が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するものや付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体が挙げられ、特に限定しない限り液滴が付着する全てのものが含まれる。
液滴が付着可能なものの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液滴が一時的でも付着可能であれば、どのような材質のものであってもよい。
【0044】
液滴吐出装置には、液滴吐出ヘッドと液滴が付着可能なものとが相対的に移動する構成を含むが、移動する対象は何れか一方には限定されない。具体例としては、液滴吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液滴吐出ヘッドを移動させないライン型装置が共に含まれる。
また、液滴吐出装置としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために用紙表面に対して処理液を吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等が挙げられる。
【0045】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
[1]振動エネルギーを軽減する、貫通部を有するダンパと、前記ダンパが接合され前記ダンパが振動可能な一方側空間を有するダンパ保持基板と、前記ダンパの前記ダンパ保持基板とは反対側に接合され、圧電素子を収容する凹部及び前記ダンパが振動可能な他方側空間を有する圧電素子保持基板と、を有し、前記圧電素子保持基板は前記他方側空間を形成する第一の隔壁を、前記ダンパ保持基板は前記一方側空間を形成する、前記第一の隔壁よりも幅が大きく形成された第二の隔壁をそれぞれ備え、前記ダンパは前記第二の隔壁において前記ダンパ保持基板に接合され、前記貫通部は前記第一の隔壁の幅と対応して形成されている液滴吐出ヘッドである。
[2]前記貫通部は前記第一の隔壁の端部と対応する位置のみに形成され、前記ダンパは前記第一の隔壁において前記圧電素子保持基板に接合されていることを特徴とする[1]に記載の液滴吐出ヘッドである。
[3]前記ダンパと前記ダンパ保持基板とはフィラを含む接着剤により互いに接合され、前記貫通部の大きさは前記フィラの最大径よりも大きく形成されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の液滴吐出ヘッドである。
[4]前記ダンパの厚みは前記フィラの最大径よりも大きく形成されていることを特徴とする[1]ないし[3]の何れか一つに記載の液滴吐出ヘッドである。
[5]前記ダンパは、コンプライアンスが7E-17以上、ヤング率が3~200GPaであることを特徴とする[1]ないし[4]の何れか一つに記載の液滴吐出ヘッドである。
[6]前記ダンパは複数層からなる積層構造を有することを特徴とする[1]ないし[5]の何れか一つに記載の液滴吐出ヘッドである。
[7][1]ないし[6]の何れか一つに記載の液滴吐出ヘッドを有することを特徴とする液滴吐出ユニットである。
[8][1]ないし[6]の何れか一つに記載の液滴吐出ヘッドを有することを特徴とする液滴吐出装置である。
[9][7]記載の液滴吐出ユニットを有することを特徴とする液滴吐出装置である。
[10]振動エネルギーを軽減する、切欠部を有するダンパと、前記ダンパが接合され前記ダンパが振動可能な一方側空間を有するダンパ保持基板と、前記ダンパの前記ダンパ保持基板とは反対側に接合され、圧電素子を収容する凹部及び前記ダンパが振動可能な他方側空間を有する圧電素子保持基板と、を有し、前記圧電素子保持基板は前記他方側空間を形成する第一の側壁を、前記ダンパ保持基板は前記一方側空間を形成する、前記第一の側壁よりも幅が大きく形成された第二の側壁をそれぞれ備え、前記ダンパは前記第二の側壁において前記ダンパ保持基板に接合され、前記切欠部は前記第一の側壁の幅と対応して形成されている液滴吐出ヘッドである。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0047】
1,2 液滴吐出ヘッド
40 圧電素子
50 圧電素子保持基板
50a 凹部
54 第一の側壁(側壁)
56 第一の隔壁(隔壁)
60 フィラ
64 第二の側壁(側壁)
66 第二の隔壁(隔壁)
67,68 一方側空間
71 他方側空間(供給側共通流路)
72 他方側空間(回収側共通流路)
73 ダンパ保持基板
75 接着剤
77,78 ダンパ
77a,78a 貫通部
77b,78b 切欠部
100A,100B,440,450,550 液滴吐出ユニット
400,500 液滴吐出装置(印刷装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特許第6260853号公報
【特許文献2】特開2016-26912号公報