IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図1
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図2
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図3
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図4
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図5
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図6
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図7
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図8
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図9
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図10
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図11
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図12
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図13
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図14
  • 特開-基板処理方法および基板処理装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184466
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231221BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/304 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093726
(22)【出願日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022097878
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】溝本 康隆
(72)【発明者】
【氏名】早川 晋
(72)【発明者】
【氏名】福岡 哲夫
【テーマコード(参考)】
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
5F057AA12
5F057AA21
5F057BA11
5F057BC01
5F057CA14
5F057DA40
5F063AA05
5F063AA15
5F063CA06
5F063CA08
5F063CC49
5F063DD59
5F063DF11
5F063DF13
5F063DF23
5F063EE36
(57)【要約】
【課題】デバイス基板を加工する際に樹脂テープの使用を抑制する、技術を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、下地基板と前記下地基板の上に形成された複数のデバイスとを有するデバイス基板と、前記デバイスを基準として前記下地基板とは反対側から前記デバイス基板を支持する支持基板と、を含む、積層基板を準備することと、前記支持基板で支持されている前記デバイス基板を、前記支持基板とは反対側から第1静電キャリアで静電吸着することと、前記第1静電キャリアで静電吸着されている前記デバイス基板から、前記支持基板を分離することと、前記支持基板から分離した前記デバイス基板を、前記第1静電キャリアに静電吸着した状態で、前記デバイスごとに、複数のチップにダイシングすることと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板と前記下地基板の上に形成された複数のデバイスとを有するデバイス基板と、前記デバイスを基準として前記下地基板とは反対側から前記デバイス基板を支持する支持基板と、を含む、積層基板を準備することと、
前記支持基板で支持されている前記デバイス基板を、前記支持基板とは反対側から第1静電キャリアで静電吸着することと、
前記第1静電キャリアで静電吸着されている前記デバイス基板から、前記支持基板を分離することと、
前記支持基板から分離した前記デバイス基板を、前記第1静電キャリアに静電吸着した状態で、前記デバイスごとに、複数のチップにダイシングすることと、
を有する、基板処理方法。
【請求項2】
前記デバイス基板を前記第1静電キャリアで静電吸着する前に、前記デバイス基板を前記支持基板で支持した状態で、前記デバイス基板の前記下地基板を薄化すること、を有する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記下地基板を薄化することは、前記下地基板を研削することを含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記下地基板は第1半導体基板と第1無機層と第2半導体基板とをこの順番で有し、前記デバイスは前記第2半導体基板の上に形成され、
前記下地基板を薄化することは、前記第1半導体基板を介して前記第1無機層にレーザー光線を照射することで前記第1無機層に第1改質層を形成することと、前記第1改質層を起点に前記第2半導体基板から前記第1半導体基板を剥離することと、を含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記積層基板は、前記デバイス基板と前記支持基板を接合する第2無機層を含み、
前記デバイス基板から前記支持基板を分離することは、前記支持基板を介して前記第2無機層にレーザー光線を照射することで前記第2無機層に第2改質層を形成することと、前記第2改質層を起点に前記デバイス基板から前記支持基板を剥離することと、を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記積層基板は、前記支持基板として、前記デバイスを基準として前記下地基板とは反対側から前記デバイス基板を静電吸着する第2静電キャリアを含み、
前記デバイス基板から前記支持基板を分離することは、前記第2静電キャリアによる前記デバイス基板の吸着を解除することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記ダイシングすることは、前記デバイス基板に対して前記第1静電キャリアとは反対側からレーザー光線またはプラズマを照射することで前記デバイス基板を切断することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1静電キャリアは、前記チップごとに個別に前記チップを静電吸着する複数の電極を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1静電キャリアは、導電性基板と絶縁膜とを有し、前記絶縁膜を基準として前記導電性基板とは反対側に前記チップを静電吸着し、
前記導電性基板は、前記チップごとに1つ以上の貫通孔を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記ダイシングすることの後に、前記第1静電キャリアから、前記チップごとに個別に前記チップをピックアップすることを有する、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項11】
下地基板と前記下地基板の上に形成された複数のデバイスとを有するデバイス基板と、前記デバイスを基準として前記下地基板とは反対側から前記デバイス基板を支持する支持基板と、を含む、積層基板を搬送する搬送装置と、
前記支持基板で支持されている前記デバイス基板を、前記支持基板とは反対側から第1静電キャリアで静電吸着する積層装置と、
前記第1静電キャリアで静電吸着されている前記デバイス基板から、前記支持基板を分離する分離装置と、
前記支持基板から分離した前記デバイス基板を、前記第1静電キャリアに静電吸着した状態で、前記デバイスごとに、複数のチップにダイシングするダイシング装置と、
を備える、基板処理装置。
【請求項12】
前記デバイス基板を前記第1静電キャリアで静電吸着する前に、前記デバイス基板を前記支持基板で支持した状態で、前記デバイス基板の前記下地基板を薄化する薄化装置を備える、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記薄化装置は、前記下地基板を研削する研削装置を有する、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記下地基板は第1半導体基板と第1無機層と第2半導体基板とをこの順番で含み、前記デバイスは前記第2半導体基板の上に形成され、
前記薄化装置は、前記第1半導体基板を介して前記第1無機層にレーザー光線を照射することで前記第1無機層に第1改質層を形成する第1レーザー加工装置と、前記第1改質層を起点に前記第2半導体基板から前記第1半導体基板を剥離する第1剥離装置と、を有する、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記積層基板は、前記デバイス基板と前記支持基板を接合する第2無機層を含み、
前記分離装置は、前記支持基板を介して前記第2無機層にレーザー光線を照射することで前記第2無機層に第2改質層を形成する第2レーザー加工装置と、前記第2改質層を起点に前記デバイス基板から前記支持基板を剥離する第2剥離装置と、を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記積層基板は、前記支持基板として、前記デバイスを基準として前記下地基板とは反対側から前記デバイス基板を静電吸着する第2静電キャリアを含み、
前記分離装置は、前記第2静電キャリアによる前記デバイス基板の吸着を解除する制御を行なう吸着力制御部を有する、請求項11~14のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記ダイシング装置は、前記デバイス基板に対して前記第1静電キャリアとは反対側からレーザー光線またはプラズマを照射することで前記デバイス基板を切断する、請求項11~14のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記第1静電キャリアは、前記チップごとに個別に前記チップを静電吸着する複数の電極を有する、請求項11~14のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項19】
前記第1静電キャリアは、導電性基板と絶縁膜とを有し、前記絶縁膜を基準として前記導電性基板とは反対側に前記チップを静電吸着し、
前記導電性基板は、前記チップごとに1つ以上の貫通孔を有する、請求項11~14のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の切削方法は、下記(1)~(4)を有する。(1)半導体ウェハをダイシングテープを介して環状フレームで支持する。(2)半導体ウェハの表面に水溶性樹脂を塗布して樹脂膜を形成する。(3)半導体ウェハを切削ブレードで複数のチップに分割する。(4)半導体ウェハの表面に水を供給することで、樹脂膜と共に切削屑を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-136559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、デバイス基板を加工する際に樹脂テープの使用を抑制する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る基板処理方法は、
下地基板と前記下地基板の上に形成された複数のデバイスとを有するデバイス基板と、前記デバイスを基準として前記下地基板とは反対側から前記デバイス基板を支持する支持基板と、を含む、積層基板を準備することと、
前記支持基板で支持されている前記デバイス基板を、前記支持基板とは反対側から第1静電キャリアで静電吸着することと、
前記第1静電キャリアで静電吸着されている前記デバイス基板から、前記支持基板を分離することと、
前記支持基板から分離した前記デバイス基板を、前記第1静電キャリアに静電吸着した状態で、前記デバイスごとに、複数のチップにダイシングすることと、
を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、デバイス基板を加工する際に樹脂テープの使用を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る基板処理方法を示すフローチャートである。
図2図2(A)はステップS101の一例を示す断面図であり、図2(B)はステップS102の一例を示す断面図であり、図2(C)はステップS103の一例を示す断面図である。
図3図3(A)はステップS104の一例を示す断面図であり、図3(B)はステップS105の第1段階の一例を示す断面図であり、図3(C)はステップS105の第2段階の一例を示す断面図である。
図4図4(A)はステップS106の一例を示す断面図であり、図4(B)はステップS107の一例を示す断面図であり、図4(C)はステップS108の一例を示す断面図である。
図5図5は、一実施形態に係る基板処理装置を示す平面図である。
図6図6(A)は変形例に係るステップS101を示す断面図であり、図6(B)は変形例に係るステップS102を示す断面図である。
図7図7(A)は変形例に係るステップS103の第1段階を示す断面図であり、図7(B)は変形例に係るステップS103の第2段階を示す断面図である。
図8図8(A)は変形例に係るステップS104を示す断面図であり、図8(B)は変形例に係るステップS105の第1段階を示す断面図であり、図8(C)は変形例に係るステップS105の第2段階を示す断面図である。
図9図9は、図6(A)に示すデバイス基板の下地基板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図10図10(A)はステップS201の一例を示す断面図であり、図10(B)はステップS202の一例を示す断面図であり、図10(C)はステップS203の一例を示す断面図である。
図11図11は、ステップS204の一例を示す断面図である。
図12図12(A)は第2変形例に係るステップS104を示す断面図であり、図12(B)は第2変形例に係るステップS106を示す断面図であり、図12(C)は第2変形例に係るステップS108を示す断面図である。
図13図13は、図12(A)に示すステップS104の具体例を示す断面図である。
図14図14は、図12(C)に示すステップS108の具体例を示す断面図である。
図15図15は、図14の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
図1図4を参照して、一実施形態に係る基板処理方法について説明する。基板処理方法は、例えば図1に示すように、ステップS101~S108を有する。なお、基板処理方法は、少なくともステップS104~S106を有すればよい。また、基板処理方法は、ステップS101~S108以外のステップを有してもよい。
【0010】
ステップS101は、図2(A)に示すようにデバイス基板10を準備することを含む。デバイス基板10は、下地基板11と、下地基板11の上に形成された複数のデバイス12とを有する。下地基板11は、例えば、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハまたはガラス基板などを含む。デバイス12は、例えば、半導体素子、回路または端子などを含む。デバイス12は、下地基板11の表面に間隔をおいて複数形成される。
【0011】
図2(A)に示すように、複数のデバイス12の上には、無機膜31が形成されてもよい。無機膜31は、後述するステップS102においてデバイス基板10と支持基板20の接合に用いられる。無機膜31は、酸化膜、窒化膜または炭化膜などである。無機膜31は、例えばシリコン酸化膜である。
【0012】
シリコン酸化膜は、熱酸化法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法またはALD(Atomoic Layer Deposition)法などで形成される。CVD法でシリコン酸化膜を形成する場合、シリコン酸化膜の原料ガスとして、例えばTEOS(Tetraethoxysilane)が用いられる。
【0013】
ステップS102は、図2(B)に示すように、デバイス基板10と支持基板20を積層することで積層基板30を製造することを含む。支持基板20は、デバイス12を基準として下地基板11とは反対側からデバイス基板10を支持する。支持基板20は、例えば、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハまたはガラス基板などを含む。
【0014】
ステップS102は、例えば、第2無機層33を介してデバイス基板10と支持基板20を接合することを含む。第2無機層33は、例えば2つの無機膜31、32を含む。一の無機膜31はデバイス基板10(詳細にはデバイス12)の上に予め形成され、別の無機膜32は支持基板20の上に予め形成される。無機膜32は、無機膜31と同様に構成される。
【0015】
デバイス基板10と支持基板20は、2つの無機膜31、32を向かい合わせて接合される。2つの無機膜31、32の互いに対向する接合面は、予めプラズマなどで活性化されてもよく、更に水または水蒸気の供給によって親水化されてもよい。接合時にOH基同士の水素結合が生じる。また、水素結合の脱水縮合反応で共有結合が生じてもよい。
【0016】
ステップS103は、図2(C)に示すように、デバイス基板10を支持基板20で支持した状態で、デバイス基板10の下地基板11を薄化することを含む。下地基板11を薄化することで、下地基板11とデバイス12とで構成されるチップ13(図4(B)および図4(C)参照)を薄化できる。
【0017】
例えば、ステップS103は、デバイス基板10を支持基板20で支持した状態で、デバイス基板10の下地基板11を研削することを含む。具体的には、ステップS103は、砥石131と積層基板30を回転させながら、砥石131を下地基板11に押し当てることを有する。
【0018】
本実施形態によれば、下地基板11を薄化する際に、デバイス基板10を支持基板20で補強できる。支持基板20の代わりに、第1樹脂テープを使用する場合とは異なり、第1樹脂テープの厚みムラまたは変形に起因するチップ13の厚みムラを防止できる。また、第1樹脂テープからデバイス12への有機汚染を防止できる。第1樹脂テープは、一般的にバックグラインドテープと呼ばれるものである。
【0019】
ステップS104は、図3(A)に示すように、支持基板20で支持されているデバイス基板10を、支持基板20とは反対側から第1静電キャリア40で静電吸着することを含む。第1静電キャリア40は、例えば、キャリア基板41と、複数の電極42と、複数の操作端子43と、を備える。
【0020】
キャリア基板41は、複数の電極42を絶縁し、各電極42に供給された電荷を維持する。電荷は、正電荷と負電荷のいずれでもよい。電極42に電荷が蓄積されることで、吸着力が発生する。吸着力は、クーロン力またはジョンソン・ラーベック力である。電極42から電荷が排出されることで、吸着力が消失する。
【0021】
電極42は、キャリア基板41に設けられ、チップ13(図4(C)参照)ごとに個別にチップ13を静電吸着する。チップ13ごとに電極42が設けられる。電極42は、単極方式と双極方式のいずれでもよい。電極42は、キャリア基板41の表面41aに露出しているが、露出していなくてもよく、キャリア基板41の内部に埋設されていてもよい。
【0022】
操作端子43は、キャリア基板41に設けられ、接触端子141を介して吸着力制御部142と有線で接続される。なお、操作端子43は吸着力制御部142と無線で接続されてもよく、接触端子141は無くてもよい。また、操作端子43は、キャリア基板41の裏面41b(表面41aとは反対側の面)に露出しているが、表面41aまたは側面に露出していてもよい。
【0023】
吸着力制御部142は、操作端子43を介して電極42に電荷を供給する制御を行う。電荷は、キャリア基板41に設けたコンデンサから電極42に供給されてもよいし、外部から電極42に供給されてもよい。吸着力制御部142は、操作端子43を介して電極42から電荷を排出する制御を行うことも可能である。
【0024】
吸着力制御部142は、電極42ごとに個別に吸着力を制御可能である。操作端子43は、電極42ごとに個別に設けられる。なお、操作端子43は、複数の電極42に共通のものが1つ設けられてもよい。吸着力制御部142が電極42ごとに個別に吸着力を制御可能であればよい。
【0025】
操作端子43は、操作端子43と吸着力制御部142との接続が解除された後も、電極42に電荷が蓄積された状態を維持し、吸着力が発生した状態を維持する。従って、第1静電キャリア40でデバイス基板10を静電吸着した状態のまま、第1静電キャリア40を搬送できる。
【0026】
ステップS105は、図3(B)および図3(C)に示すように、第1静電キャリア40で静電吸着されているデバイス基板10から、支持基板20を分離することを含む。支持基板20を分離することで、デバイス基板10をダイシングすること(ステップS106)が可能になる。
【0027】
ステップS105は、例えば、図3(B)に示すように、支持基板20を介して第2無機層33にレーザー光線LB2を照射することで第2無機層33に第2改質層33aを形成することを含んでもよい。第2改質層33aは、剥離予定面に形成される。剥離予定面は、例えば第2無機層33を構成する2つの無機膜31、32の界面であるが、支持基板20と第2無機層33の界面またはデバイス基板10と第2無機層33の界面であってもよく、特に限定されない。第2改質層33aを形成する位置は、レーザー光線LB2の焦点の位置で制御可能である。
【0028】
ステップS105は、図3(C)に示すように、第2改質層33aを起点にデバイス基板10から支持基板20を剥離することを含んでもよい。例えば、ステップS105は、支持基板20と第1静電キャリア40を相対的に離隔させることを含む。支持基板20と第1静電キャリア40を相対的に離隔させると、第2改質層33aを起点にクラックが面状に広がり、デバイス基板10から支持基板20が剥離する。なお、支持基板20と第1静電キャリア40の相対的な離隔に加えて、支持基板20または第1静電キャリア40の回転が実施されてもよい。
【0029】
支持基板20は、デバイス基板10から剥離された後、別のデバイス基板10と接合されてもよい。つまり、支持基板20は、ステップS102~S105に繰り返し供されてもよい。支持基板20は、再利用可能である。
【0030】
なお、詳しくは後述するが、支持基板20として、第2静電キャリア80(図6(B)参照)が用いられてもよい。第2静電キャリア80は、第1静電キャリア40として再利用することも可能である。
【0031】
ステップS106は、図4(A)に示すように、支持基板20から分離したデバイス基板10を、第1静電キャリア40に静電吸着した状態で、デバイス12ごとに、複数のチップ13にダイシングすることを含む。
【0032】
例えば、ステップS106は、デバイス基板10に対して第1静電キャリア40とは反対側からレーザー光線LB3を照射することで、デバイス基板10を切断することを含む。デバイス基板10は、レーザー光線LB3を吸収することで発熱し、昇華又は蒸発する。その結果、デバイス基板10を貫通して溝が形成される。溝は、隣り合うチップ13の間に形成される。
【0033】
なお、ステップS106は、レーザー光線LB3の代わりにプラズマをデバイス基板10に対して照射することを含んでもよい。デバイス基板10は、プラズマによってエッチングされる。その結果、デバイス基板10を貫通する溝が形成される。溝は、隣り合うチップ13の間に形成される。
【0034】
本実施形態によれば、デバイス基板10を複数のチップ13にダイシングする際に、複数のチップ13の位置を第1静電キャリア40で固定できる。第1静電キャリア40の代わりに、第2樹脂テープを使用する場合とは異なり、第2樹脂テープの粘着剤が下地基板11に付着しない。また、第2樹脂テープからの汚染を抑制できる。第2樹脂テープは、一般的にダイシングテープと呼ばれるものである。
【0035】
ステップS107は、図4(B)に示すように、複数のチップ13を第1静電キャリア40に静電吸着した状態で、複数のチップ13を洗浄液Lで洗浄することを含む。洗浄液Lは、チップ13の上に残る残留物、例えば無機膜31を除去する。
【0036】
本実施形態によれば、複数のチップ13を洗浄する際に、複数のチップ13の位置を第1静電キャリア40で固定できる。第1静電キャリア40は、セラミック等の無機材料で形成され、第2樹脂テープに比べて耐久性に優れている。それゆえ、洗浄液Lの選択肢と洗浄方法の選択肢を広げることができる。
【0037】
ステップS108は、図4(C)に示すように、第1静電キャリア40から、チップ13ごとに個別にチップ13をピックアップすることを含む。ピックアップしたチップ13は、上下反転され、別のデバイス基板に実装される。
【0038】
ステップS108において、第1静電キャリア40の操作端子43は、接触端子161を介して吸着力制御部162と有線で接続される。なお、操作端子43は吸着力制御部162と無線で接続されてもよく、接触端子161は無くてもよい。吸着力制御部162は、電極42から電荷を排出する制御を行う。吸着力が消失し、第1静電キャリア40からチップ13を分離することが可能になる。
【0039】
チップ13ごとに電極42が設けられる。電極42から電荷を排出させるタイミング、つまり、吸着力を消失させるタイミングは、チップ13ごとに異なる、一のチップ13を第1静電キャリア40からピックアップする際に、残りのチップ13を第1静電キャリア40に静電吸着でき、残りのチップ13の位置ズレを防止できる。
【0040】
本実施形態によれば、既述の通り、第1静電キャリア40の代わりに、第2樹脂テープを使用する場合とは異なり、第2樹脂テープの粘着剤が下地基板11に付着しない。それゆえ、ピックアップしたチップ13を洗浄する手間を省略できる。
【0041】
次に、図5を参照して、一実施形態に係る基板処理装置100について説明する。基板処理装置100は、例えばステップS103~S107を実施する。なお、基板処理装置100は、少なくともS104~S106を実施すればよい。ステップS101~S103およびS107~S108は、基板処理装置100の外部にある装置によって実施してもよい。
【0042】
基板処理装置100は、搬入出ステーション110と、処理ステーション120と、制御装置190と、を備える。搬入出ステーション110と、処理ステーション120とは、この順番で、X軸負方向側からX軸正方向側に並ぶ。図5において、X軸方向とY軸方向とZ軸方向とは互いに垂直な方向であって、X軸方向とY軸方向は水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0043】
搬入出ステーション110は、載置台111を備える。載置台111には、カセットC1~C4が載置される。カセットC1は、積層基板30を収容する。カセットC2は、第1静電キャリア40を収容する。カセットC3は、第1静電キャリア40に静電吸着されている複数のチップ13を収容する。カセットC4は、デバイス基板10から分離した支持基板20を収容する。以下、デバイス基板10、支持基板20、積層基板30または第1静電キャリア40を、単に基板と記載することがある。
【0044】
搬入出ステーション110は、第1搬送領域112と、第1搬送装置113と、を備える。第1搬送領域112は、載置台111と後述するトランジション装置121に隣接する。第1搬送装置113は、第1搬送領域112に隣接する複数の装置間で基板を搬送する。第1搬送装置113は、基板を保持する搬送アームと、搬送アームを移動または回転させる駆動部と、を有する。搬送アームは、水平方向(X軸方向及びY軸方向の両方向)及び鉛直方向の移動と、鉛直軸を中心とする回転とが可能である。複数の搬送アームが設けられてもよい。
【0045】
処理ステーション120は、トランジション装置121と、第2搬送領域122と、第2搬送装置123と、薄化装置124と、積層装置125と、分離装置126と、ダイシング装置127と、洗浄装置128と、反転装置129と、を備える。なお、処理ステーション120を構成する装置の配置および数は、図5に示す配置および数には限定されない。
【0046】
トランジション装置121は、基板を一時的に保管する。トランジション装置121は、第1搬送領域112と第2搬送領域122との間に設けられ、第1搬送装置113と第2搬送装置123の間で基板を中継する。
【0047】
第2搬送領域122は、トランジション装置121と、薄化装置124と、積層装置125と、分離装置126と、ダイシング装置127と、洗浄装置128と、反転装置129とに隣接する。第2搬送装置123は、第2搬送領域122に隣接する複数の装置間で基板を搬送する。第2搬送装置123は、基板を保持する搬送アームと、搬送アームを移動または回転させる駆動部と、を有する。搬送アームは、水平方向(X軸方向及びY軸方向の両方向)及び鉛直方向の移動と、鉛直軸を中心とする回転とが可能である。複数の搬送アームが設けられてもよい。
【0048】
薄化装置124は、図2(C)に示すように、デバイス基板10を支持基板20で支持した状態で、デバイス基板10の下地基板11を薄化する。薄化装置124は、例えば、研削装置130を有する。研削装置130は、砥石131で下地基板11を研削することで、下地基板11を薄化する。
【0049】
なお、薄化装置124は、詳しくは後述するが、図7(A)に示す第1レーザー加工装置132と、図7(B)に示す第1剥離装置133と、を有してもよい。第1レーザー加工装置132は、下地基板11の内部にレーザー光線LB1を照射することで、下地基板11の内部に第1改質層60aを形成する。第1剥離装置133は、第1改質層60aを起点に下地基板11を分割することで、下地基板11を薄化する。
【0050】
積層装置125は、図3(A)に示すように、支持基板20で支持されているデバイス基板10を、支持基板20とは反対側から第1静電キャリア40で静電吸着する。積層装置125は、例えば、接触端子141と、吸着力制御部142と、を備える。接触端子141は、第1静電キャリア40の操作端子43と接触する。複数の操作端子43に対応して複数の接触端子141が設けられる。
【0051】
吸着力制御部142は、第1静電キャリア40の操作端子43と接続された状態で、吸着力を制御する。吸着力制御部142は、電極42に電荷を蓄積することで、吸着力を発生させる。吸着力を発生させるタイミングは、複数の電極42で同じタイミングでも、異なるタイミングでもよい。
【0052】
分離装置126は、図3(B)および図3(C)に示すように、第1静電キャリア40で静電吸着されているデバイス基板10から、支持基板20を分離する。分離装置126は、例えば、図3(B)に示す第2レーザー加工装置151と、図3(C)に示す第2剥離装置152と、を有する。
【0053】
第2レーザー加工装置151は、支持基板20を介して第2無機層33にレーザー光線LB2を照射することで、第2無機層33に第2改質層33aを形成する。第2剥離装置152は、第2改質層33aを起点にデバイス基板10から支持基板20を剥離する。第2剥離装置152は、支持基板20と第1静電キャリア40を相対的に離隔させるべく、例えば、第3チャック153と、第4チャック154と、駆動部155とを有する。
【0054】
第3チャック153が支持基板20を保持し、第4チャック154が第1静電キャリア40を保持する。駆動部155は、第3チャック153と第4チャック154を相対的に離隔させることで、支持基板20と第1静電キャリア40を相対的に離隔させる。その結果、第2改質層33aを起点にクラックが面状に広がり、デバイス基板10から支持基板20が剥離する。駆動部155は、第3チャック153または第4チャック154を回転させてもよい。
【0055】
ダイシング装置127は、図4(A)に示すように、支持基板20から分離したデバイス基板10を、第1静電キャリア40に静電吸着した状態で、デバイス12ごとに、複数のチップ13にダイシングする。例えば、ダイシング装置127は、デバイス基板10に対して第1静電キャリア40とは反対側からレーザー光線LB3またはプラズマを照射することでデバイス基板10を切断する。
【0056】
洗浄装置128は、図4(B)に示すように、複数のチップ13を第1静電キャリア40に静電吸着した状態で、複数のチップ13を洗浄液Lで洗浄する。洗浄方法は、スピン洗浄には限定されず、例えばスクラブ洗浄またはディップ洗浄でもよい。洗浄液Lは、チップ13の上に残る残留物、例えば無機膜31を除去する。なお、チップ13の用途によっては、無機膜31の除去は不要である。
【0057】
反転装置129は、積層基板30を上下反転する。
【0058】
制御装置190は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)などの演算部191と、メモリなどの記憶部192と、を備える。記憶部192には、基板処理装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御装置190は、記憶部192に記憶されたプログラムを演算部191に実行させることにより、基板処理装置100の動作を制御する。基板処理装置100を構成するユニットごとにユニットの動作を制御するユニット制御部が設けられ、複数のユニット制御部を統括制御するシステム制御部が設けられてもよい。ユニット制御部とシステム制御部とで制御装置190が構成されてもよい。
【0059】
次に、上記構成の基板処理装置100の動作について説明する。基板処理装置100の動作は、制御装置190による制御下で実施される。
【0060】
先ず、第1搬送装置113が、積層基板30をカセットC1から取り出し、トランジション装置121に搬送する。次に、第2搬送装置123が、トランジション装置121から積層基板30を取り出し、薄化装置124に搬送する。次に、薄化装置124が、デバイス基板10を支持基板20で支持した状態で、デバイス基板10の下地基板11を薄化する。その後、第2搬送装置123が、積層基板30を薄化装置124から取り出し、反転装置129に搬送する。次に、反転装置129が、積層基板30を上下反転する。その後、第2搬送装置123が、積層基板30を反転装置129から取り出し、積層装置125に搬送する。
【0061】
積層基板30は、上記の通り、カセットC1からトランジション装置121と薄化装置124と反転装置129を経て積層装置125に搬送される。一方、第1静電キャリア40は、カセットC2からトランジション装置121を経て積層装置125に搬送される。先ず、第1搬送装置113が、第1静電キャリア40をカセットC2から取り出し、トランジション装置121に搬送する。次に、第2搬送装置123が、トランジション装置121から第1静電キャリア40を取り出し、積層装置125に搬送する。
【0062】
次に、積層装置125が、支持基板20で支持されているデバイス基板10を、支持基板20とは反対側から第1静電キャリア40で静電吸着する。その後、第2搬送装置123が、第1静電キャリア40で静電吸着されている積層基板30を、積層装置125から取り出し、分離装置126に搬送する。
【0063】
次に、分離装置126が、第1静電キャリア40で静電吸着されているデバイス基板10から、支持基板20を分離する。その後、第2搬送装置123が、第1静電キャリア40で静電吸着されているデバイス基板10を、分離装置126から取り出し、ダイシング装置127に搬送する。
【0064】
次に、ダイシング装置127が、支持基板20から分離したデバイス基板10を、第1静電キャリア40に静電吸着した状態で、デバイス12ごとに、複数のチップ13にダイシングする。その後、第2搬送装置123が、第1静電キャリア40で静電吸着されている複数のチップ13を、ダイシング装置127から取り出し、洗浄装置128に搬送する。
【0065】
次に、洗浄装置128が、複数のチップ13を第1静電キャリア40に静電吸着した状態で、複数のチップ13を洗浄液Lで洗浄する。その後、第2搬送装置123が、第1静電キャリア40で静電吸着されている複数のチップ13を、洗浄装置128から取り出し、トランジション装置121に搬送する。最後に、第1搬送装置113が、第1静電キャリア40に静電吸着されている複数のチップ13をトランジション装置121から取り出し、カセットC3に収納する。
【0066】
第1静電キャリア40で静電吸着されているデバイス基板10は、上記の通り、分離装置126からダイシング装置127と洗浄装置128とトランジション装置121を経て、カセットC3に搬送される。一方、デバイス基板10から分離された支持基板20は、分離装置126からトランジション装置121を経てカセットC4に搬送される。先ず、第2搬送装置123が、デバイス基板10から分離された支持基板20を、分離装置126から取り出し、トランジション装置121に搬送する。次に、第1搬送装置113が、デバイス基板10から分離された支持基板20を、トランジション装置121から取り出し、カセットC4に搬送する。
【0067】
次に、図6図8を参照して、変形例に係る基板処理方法について説明する。以下、上記実施形態との相違点について主に説明する。
【0068】
ステップS101は、図6(A)に示すようにデバイス基板10を準備することを含む。デバイス基板10は、下地基板11と、下地基板11の上に形成された複数のデバイス12とを有する。下地基板11は、第1半導体基板50と、第1無機層60と、第2半導体基板70とをこの順番で有してもよい。
【0069】
第1半導体基板50と第2半導体基板70は、シリコンウェハまたは化合物半導体ウェハである。第2半導体基板70は、第1半導体基板50よりも薄い。第2半導体基板70の上に、デバイス12が形成される。第1無機層60は、絶縁性を有する。第1半導体基板50と第2半導体基板70がシリコンウェハであって第1無機層60がシリコン酸化層である場合、下地基板11はいわゆるSOI(Silicon on Insulator)基板である。
【0070】
ステップS102は、図6(B)に示すようにデバイス基板10と支持基板20を積層することで積層基板30を製造することを含む。積層基板30は、支持基板20として、第2静電キャリア80を有してもよい。第2静電キャリア80は、デバイス12を基準として下地基板11とは反対側からデバイス基板10を静電吸着する。
【0071】
第2静電キャリア80は、例えば第1静電キャリア40と同じ構成を有し、キャリア基板81と、複数の電極82と、複数の操作端子83と、を備える。キャリア基板81は、複数の電極82を絶縁し、各電極82に供給された電荷を維持する。操作端子83は、キャリア基板81に設けられ、接触端子171を介して吸着力制御部172と有線で接続される。なお、操作端子83は吸着力制御部172と無線で接続されてもよく、接触端子171は無くてもよい。また、操作端子83は、キャリア基板81の裏面41b(表面41aとは反対側の面)に露出しているが、表面41aまたは側面に露出していてもよい。
【0072】
吸着力制御部172は、操作端子83を介して電極82に電荷を供給する制御を行う。電荷は、キャリア基板81に設けたコンデンサから電極82に供給されてもよいし、外部から電極82に供給されてもよい。吸着力制御部172は、操作端子83を介して電極82から電荷を排出する制御を行うことも可能である。
【0073】
吸着力制御部172は、電極82ごとに個別に吸着力を制御可能である。操作端子83は、電極82ごとに個別に設けられる。なお、操作端子83は、複数の電極82に共通のものが1つ設けられてもよい。吸着力制御部172が電極82ごとに個別に吸着力を制御可能であればよい。但し、吸着力制御部172は、複数の電極82の吸着力を一括で制御してもよい。
【0074】
操作端子83は、操作端子83と吸着力制御部172との接続が解除された後も、電極82に電荷が蓄積された状態を維持し、吸着力が発生した状態を維持する。従って、第2静電キャリア80でデバイス基板10を静電吸着した状態のまま、第2静電キャリア80を搬送できる。
【0075】
第2静電キャリア80は、第1静電キャリア40として再利用可能である。なお、第2静電キャリア80を第1静電キャリア40として再利用しない場合、第2静電キャリア80は第1静電キャリア40と同じ構成を有しなくてもよい。第2静電キャリア80は、第1静電キャリア40とは異なり、デバイス基板10をダイシングする前に、デバイス基板10から分離される。それゆえ、電極82の数は1つでもよい。
【0076】
ステップS103は、図7(A)および図7(B)に示すように、デバイス基板10を支持基板20で支持した状態で、デバイス12を支持する下地基板11を薄化することを含む。下地基板11は、薄化前に、第1半導体基板50と、第1無機層60と、第2半導体基板70と、をこの順番で有する。下地基板11は、薄化によって第1半導体基板50を失う。
【0077】
ステップS103は、例えば、図7(A)に示すように、第1半導体基板50を介して第1無機層60にレーザー光線LB1を照射することで第1無機層60に第1改質層60aを形成することを含んでもよい。第1改質層60aは、剥離予定面に形成される。剥離予定面は、例えば第1無機層60を構成する2つの無機膜61、62の界面であるが、第1半導体基板50と第1無機層60の界面または第2半導体基板70と第1無機層60の界面であってもよく、特に限定されない。第1改質層60aを形成する位置は、レーザー光線LB1の焦点の位置で制御可能である。
【0078】
ステップS103は、図7(B)に示すように、第1改質層60aを起点に第2半導体基板70から第1半導体基板50を剥離することを含んでもよい。第1剥離装置133は、第1チャック134と、第2チャック135と、駆動部136とを有する。第1チャック134が第1半導体基板50を保持し、第2チャック135が第2静電キャリア80を保持する。駆動部136は、第1チャック134と第2チャック135を相対的に離隔させる。駆動部136は、第1チャック134または第2チャック135を回転させてもよい。
【0079】
例えば、ステップS103は、第1チャック134と第2チャック135を相対的に離隔させることで、第1半導体基板50と第2静電キャリア80を相対的に離隔させることを含む。第1改質層60aを起点にクラックが面状に広がり、第2半導体基板70から第1半導体基板50が剥離する。なお、第1半導体基板50と第2静電キャリア80の相対的な離隔に加えて、第1半導体基板50または第2静電キャリア80の回転が実施されてもよい。
【0080】
第1半導体基板50は、第2半導体基板70から剥離された後、別の下地基板11の製造に用いられてもよい。第1半導体基板50は、再利用可能である。第1半導体基板50の再利用については後述する。
【0081】
ステップS104は、図8(A)に示すように、支持基板20で支持されているデバイス基板10を、支持基板20とは反対側から第1静電キャリア40で静電吸着することを含む。本変形例のステップS104は、支持基板20として第2静電キャリア80を用いることを除き、上記実施形態のステップS104と同様に行われるので、説明を省略する。
【0082】
ステップS105は、図8(B)および図8(C)に示すように、第1静電キャリア40で静電吸着されているデバイス基板10から、支持基板20を分離することを含む。支持基板20として第2静電キャリア80が用いられる場合、デバイス基板10から支持基板20を分離することは、第2静電キャリア80によるデバイス基板10の静電吸着を解除することを含む。
【0083】
第2静電キャリア80の操作端子83は、吸着力制御部182と接続される。操作端子83は、接触端子181を介して吸着力制御部182と有線で接続される。なお、操作端子83は吸着力制御部182と無線で接続されてもよく、接触端子181は無くてもよい。吸着力制御部182は、電極82から電荷を排出させることで、吸着力を消失させる。その後、第2静電キャリア80からデバイス基板10を分離することが可能になる。
【0084】
ステップS106以降の処理は、上記実施形態と同様に行われるので、説明を省略する。なお、支持基板20として第2静電キャリア80が用いられる場合、ステップS105の後に、デバイス12が露出する。そこで、ステップS105の後、ステップS106の前に、デバイス12を保護する保護膜を形成するステップが行われてもよい。保護膜は、ステップS106において生じるデブリからデバイス12を保護する。保護膜は、ステップS107において洗浄液Lで除去される。
【0085】
次に、図9図11を参照して、図6(A)に示すデバイス基板10の下地基板11の製造方法の一例について説明する。下地基板11の製造方法は、例えば図9に示すように、ステップS201~S206を有する。なお、基板処理方法は、ステップS201~S206以外のステップを有してもよい。
【0086】
ステップS201は、図10(A)に示すように第1無機層60を介して第1半導体基板50と第2半導体基板70を接合することを含む。第1無機層60は、例えば2つの無機膜61、62を含む。一の無機膜61は第1半導体基板50の上に予め形成され、別の無機膜62は第2半導体基板70の上に予め形成される。無機膜61、62は、無機膜31、32と同様に構成される。
【0087】
第1半導体基板50と第2半導体基板70は、2つの無機膜61、62を向かい合わせて接合される。2つの無機膜61、62の互いに対向する接合面は、予めプラズマなどで活性化されてもよく、更に水または水蒸気の供給によって親水化されてもよい。接合時にOH基同士の水素結合が生じる。また、水素結合の脱水縮合反応で共有結合が生じてもよい。
【0088】
ステップS202は、図10(B)に示すように第2半導体基板70に対して第1無機層60とは反対側からレーザー光線LB4を照射することで第2半導体基板70の内部に第3改質層70aを形成することを含む。第3改質層70aは、分割予定面に形成される。分割予定面は、例えば、第2半導体基板70の主面に対して平行な平面と、当該平面の外周から第1半導体基板50に向けて垂直に延びる円柱面と、を含む。第3改質層70aを形成する位置は、レーザー光線LB4の焦点の位置で制御可能である。
【0089】
ステップS203は、図10(C)に示すように、第3改質層70aを起点に第2半導体基板70を分割することで、第1無機層60を介して第1半導体基板50と接合されている第2半導体基板70を薄化することを含む。
【0090】
ステップS204は、図11に示すように、第1無機層60を介して第1半導体基板50と接合されている第2半導体基板70を砥石101で研削することを含む。第2半導体基板70を更に薄化できる。
【0091】
ステップS205は、研削した第2半導体基板70の厚みムラを低減すべく、第2半導体基板70を局所加工することを含む。局所加工することは、例えば局所的にプラズマを照射することを含む。
【0092】
なお、研削した第2半導体基板70の厚みムラが小さい場合、ステップS205は不要である。
【0093】
ステップS206は、第2半導体基板70の研削した表面をエッチングすることを含む。研削によって生じたダメージ層を除去できる。ダメージ層は、変質層である。変質層は傷を含む。変質層は残留応力を含んでもよい。ダメージ層を除去した表面にデバイス12を形成することで、デバイス12の破損を抑制できる。
【0094】
第1半導体基板50は、図1のステップS103において第2半導体基板70から剥離された後、図9のステップS201~S206に再び供され、別の下地基板11の製造に用いられてもよい。第1半導体基板50は、再利用可能である。
【0095】
次に、図12図15を参照して、第2変形例に係る基板処理方法について説明する。以下、上記実施形態及び上記変形例との相違点について主に説明する。本変形例の第1静電キャリア40は、例えば、図12(A)に示すように、導電性基板45と絶縁膜46とを有し、絶縁膜46を基準として導電性基板45とは反対側に積層基板30を静電吸着する。積層基板30は、デバイス基板10と、支持基板20と、デバイス基板10と支持基板20を接合する第2無機層33と、を有する。第1静電キャリア40は、支持基板20で支持されているデバイス基板10を、支持基板20とは反対側から静電吸着する。なお、本変形例の第1静電キャリア40は、上記変形例の第2静電キャリア80として使用することも可能である。
【0096】
導電性基板45は、例えばシリコン、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス又はチタンで構成される。導電性基板45には、チップ13ごとに1つ以上の貫通孔45aが形成されてもよい。詳しくは後述するが図14又は図15に示すように貫通孔45aにガスを供給することで、チップ13を第1静電キャリア40から剥離できる。貫通孔45aの数及び配置は、特に限定されない。なお、貫通孔45aにガスを供給する代わりに、貫通孔45aに図示しないピンを差し込むことで、チップ13を第1静電キャリア40から剥離することも可能である。
【0097】
絶縁膜46は、図13に示すように、デバイス基板10と導電性基板45の間での電荷の移動を制限する。絶縁膜46は、絶縁破壊電圧が30kV以上であることが好ましく、40kV以上であることがより好ましい。
【0098】
絶縁膜46は、柔軟性を有する材料、具体的には弾性率が2GPa以下、より好ましくは0.5GPa以下である材料で構成されることが好ましい。薬液に対する耐久性の観点から、例えばポリイミド又はEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)が使用される。絶縁膜46の厚みは、例えば10μmである。
【0099】
絶縁膜46には、導電性基板45の貫通孔45aに連通する貫通孔46aが形成されてもよい。図14に示すように、絶縁膜46の貫通孔46aの直径は、導電性基板45貫通孔45aの直径よりも小さいことが好ましい。なお、図15に示すように、貫通孔46aは無くてもよい。
【0100】
図13に示すように、積層装置125は、電荷供給部143と、除電部144と、を備える。電荷供給部143は、導電性基板45に電圧を印可することで、第1極性(例えば正)の電荷を導電性基板45に供給する。除電部144は、第1極性の電荷をデバイス基板10から除去することで、第1極性とは逆極性である第2極性(例えば負)の電荷をデバイス基板10に残す。
【0101】
導電性基板45には第1極性の電荷が蓄積するのに対し、デバイス基板10には第2極性の電荷が蓄積する。その結果、絶縁膜46を挟んで、導電性基板45とデバイス基板10の間に電位差が生じ、静電吸着力が生じる。生じた静電吸着力は、導電性基板45に対する電圧の印可、及びデバイス基板10の除電を解除した後も維持される。
【0102】
電荷供給部143は、例えば、導電性基板45に接触する給電ピン143aを有する。給電ピン143aは、例えば第1静電キャリア40を保持する図示しない保持部に設けられ、図示しない電源に電気的に接続される。除電部144は、例えば、アース線144aを有する。アース線144aは、デバイス基板10から第1極性の電荷を除去する。
【0103】
アース線144aの先端は、例えばデバイス基板10に接触する。なお、アース線144aは、デバイス基板10に電気的に接続されればよく、アース線144aの先端は支持基板20に接触してもよい。第2無機層33が薄ければ、第2無機層33を介してデバイス基板10からアース線144aに第1極性の電荷が移動可能である。
【0104】
絶縁膜46は、上記の通り、柔軟性を有する材料で構成されている。静電吸着力によってデバイス基板10が絶縁膜46に押し付けられる際に、デバイス基板10と絶縁膜46の間から空気が抜けるように絶縁膜46が変形し、デバイス基板10と絶縁膜46の間に真空吸着力が生じる。
【0105】
導電性基板45又はデバイス基板10から電荷が漏出し、静電吸着力が消失しても、真空吸着力でデバイス基板10を保持し続けることが可能である。電荷が漏出する原因としては、例えば薬液又は洗浄液がデバイス基板10に供給されることが挙げられる。ステップS104の後で、静電吸着力が消失し、真空吸着力のみがデバイス基板10に作用してもよい。
【0106】
ステップS104は、図12(A)に示すように、支持基板20で支持されているデバイス基板10を、支持基板20とは反対側から第1静電キャリア40で静電吸着することを含む。その後、図示しないが、第1静電キャリア40で静電吸着されているデバイス基板10から、支持基板20を分離すること(ステップS105)により、デバイス基板10をダイシングすること(ステップS106)が可能になる。
【0107】
ステップS106は、図12(B)に示すように、支持基板20から分離したデバイス基板10を、第1静電キャリア40に静電吸着した状態で、デバイス12ごとに、複数のチップ13にダイシングすることを含む。例えば、ステップS106は、デバイス基板10に対して第1静電キャリア40とは反対側からレーザー光線LB3を照射することで、デバイス基板10を切断する。その後、図示しないが、複数のチップ13を第1静電キャリア40に静電吸着した状態で、複数のチップ13を洗浄液で洗浄する(ステップS107)。洗浄液は、チップ13の上に残る残留物、例えば無機膜31を除去する。
【0108】
ステップS108は、図12(C)に示すように、第1静電キャリア40から、チップ13ごとに個別にチップ13をピックアップすることを含む。ピックアップしたチップ13は、上下反転され、別のデバイス基板に実装される。ステップS108において、吸着力制御部162は、チップ13ごとにチップ13の吸着を解除する制御を行なう。
【0109】
吸着力制御部162は、例えば導電性基板45の貫通孔45aにガスを供給することで、チップ13を第1静電キャリア40から剥離する。貫通孔45aの数及び配置は、特に限定されない。絶縁膜46には、図17に示すように貫通孔46aが有ってもよいし、図18に示すように貫通孔46aが無くてもよい。吸着力制御部162は、貫通孔45aにガスを供給する代わりに、貫通孔45aに図示しないピンを差し込んでもよい。
【0110】
以上、本開示に係る基板処理方法および基板処理装置の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0111】
10 デバイス基板
11 下地基板
12 デバイス
13 チップ
20 支持基板
30 積層基板
40 第1静電キャリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15