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特開2023-184502ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び有機溶媒を含む液体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184502
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び有機溶媒を含む液体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/08 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
C08B11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099204
(22)【出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2022097328
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】三木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】横澤 拓也
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA05
4C090BA28
4C090BB92
4C090BD02
4C090BD03
4C090BD08
4C090BD36
4C090CA33
4C090CA37
4C090DA23
4C090DA26
(57)【要約】
【課題】MSが従来と同等であっても高い溶解性を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等を提供する。
【解決手段】ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)が、0.1~0.5であり、3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)を、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)で除した値(3位MF/MS)が0.12以上であり、2質量%水溶液の20℃における粘度が50mPa・sを超えて150000mPa・s以下であるHPMCを提供し、HPMCと、有機溶媒とを少なくとも含む液体組成物等を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)が0.1~0.5であり、3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)を、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)で除した値(3位MF/MS)が0.12以上であり、2質量%水溶液の20℃における粘度が50mPa・sを超えて150000mPa・s以下であるヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【請求項2】
メトキシ基の置換度(DS)が、1.0~2.0である請求項1に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【請求項3】
前記3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)が、0.027以上である請求項1に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、有機溶媒とを少なくとも含む液体組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、0質量%を超えて20質量%以下含まれる請求項4に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒が、水と混和性があり、前記液体組成物が、更に水を含む請求項4に記載の液体組成物。
【請求項7】
パルプとアルカリ金属水酸化物溶液とを接触させてアルカリセルロースを得る工程と、
前記アルカリセルロースに、ジメチルエーテルと第一のメチル化剤を混合して第一の反応生成混合物を形成する工程と、
さらにアルカリ金属水酸化物を配合することなく、前記第一の混合物に第二のメチル化剤とヒドロキシプロピル化剤を混合して含む第二の反応生成混合物を得る工程と、
前記第二の反応生成混合物を精製してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得る工程と、
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースを乾燥することにより乾燥されたHPMCを得る工程と
を少なくとも含み、前記第二の反応生成混合物中のヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシ基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)が、前記乾燥されたヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシ基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)と等しくなるメチル化剤及びヒドロキシプロピル化剤の反応率を100%とすると、前記第一と第二のメチル化剤の全反応率が50%の時点におけるヒドロキシプロピル剤の反応率が50%以上90%以下である、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び有機溶媒を含む液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」とも記載する。)と有機溶媒を含む組成物は様々な用途に利用されている。例えば、HPMCと有機溶媒としてアルコールを含む組成物としては、手指消毒剤、医薬用及び食品用保冷剤、ヘアジェル等の化粧料、芳香剤等がある。また、HPMCとジクロロメタンやN-メチル-2-ピロリドン等の有機溶媒を含む組成物は、塗膜剥離剤として使用されることが知られている。
【0003】
しかしながら、有機溶媒の種類や組成によっては、HPMCの溶解性が十分でない場合又はそもそも溶解させることが困難である場合があり、溶解させても組成物の透明性や保存安定性が優れないことがある。したがって、HPMCの有機溶媒への溶解性の向上が求められている。
【0004】
HPMCの有機溶媒への溶解性を向上させる方法としては、HPMCのメトキシ基の置換度(DS)やヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)を増加させる方法が知られており、例えば、HPMCのメトキシ基の置換度(DS)やヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)が高いMethocelTM310が報告されている(非特許文献1)。
【0005】
また、HPMCと有機溶媒の組成物の調製方法を工夫することにより、HPMCの溶解性を改善する方法が提案されている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2015-524425号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dow Chemical Company“METHOCHEL Cellulose Ethers Technical Handbook”、米国、2002年9月、第4~6頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法によれば、HPMCと有機溶媒を含む組成物を調製する際に溶液を加温する必要があり、引火の危険があるほか、工程が複雑になってしまう。また、特許文献1の方法では、組成物には水を含む必要があり、水を含まない組成物の調製には適用できないという課題があった。
一方、非特許文献1のように、メトキシ基のDSやヒドロキシプロポキシ基のMSを増加する方法ではコストアップになるうえに、HPMCの溶解性以外の他の物性(熱ゲル特性、粘着性など)も変化させてしまうため、メトキシ基のDSやヒドロキシプロポキシ基のMSを変化させることなく、有機溶媒への溶解性を向上させることが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、MSが従来と同等であっても、溶媒に簡便に溶解でき、高い溶解性を有するHPMCを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)が、0.1~0.5であり、3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)を、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)で除した値(3位MF/MS)が、0.12以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロースが有機溶媒に対して高い溶解性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の一つの態様によれば、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)が、0.1~0.5であり、3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)を、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)で除した値(3位MF/MS)が0.12以上であり、2質量%水溶液の20℃における粘度が50mPa・sを超えて150000mPa・s以下であるヒドロキシプロピルメチルセルロースが提供される。
本発明の別の態様によれば、このヒドロキシプロピルメチルセルロースと、有機溶媒とを少なくとも含む液体組成物が提供される。
本発明の更に別の態様によれば、
パルプとアルカリ金属水酸化物溶液とを接触させてアルカリセルロースを得る工程と、
前記アルカリセルロースに、ジメチルエーテルと第一のメチル化剤を混合して第一の反応生成混合物を形成する工程と、
さらにアルカリ金属水酸化物を配合することなく、前記第一の反応生成混合物に第二のメチル化剤とヒドロキシプロピル化剤を混合して第二の反応生成混合物を得る工程と、
前記第二の反応生成混合物を精製してヒドロキシプロピルメチルセルロースを得る工程と、
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースを乾燥することにより乾燥されたHPMCを得る工程と
を少なくとも含み、前記第二の反応生成混合物中のヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシ基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)が、前記乾燥されたヒドロキシプロピルメチルセルロースのメトキシ基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)と等しくなるメチル化剤及びヒドロキシプロピル化剤の反応率を100%とすると、前記第一と第二のメチル化剤の全反応率が50%の時点におけるヒドロキシプロピル剤の反応率が50%以上90%以下である、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法が提供される。
なお、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)は、無水グルコース単位1モル当たりのヒドロキシプロポキシ基の平均モル数のことをいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、HPMCを有機溶媒に溶解する際の溶解性が向上し、透明性が高く、良好な保存安定性を有する液体組成物を得られる。また、本発明によれば、水を含まなくとも又は有機溶媒の含有量が60質量%以上であっても、上記特性を有する液体組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)HPMC
まず、HPMCについて説明する。
HPMCについて、3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)を、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)で除した値(3位MF/MS)は、有機溶媒への溶解性の観点から、0.12以上であり、好ましくは0.12~0.30、より好ましくは0.14~0.25、もっとも好ましくは0.15~0.20である。
【0012】
HPMCについて、3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)は、以下に定義する(i)~(iv)の平均モル分率の合計値をいう。
(i)2、3、6位の炭素における水酸基のうち、2位及び6位の炭素における水酸基がメトキシ基で置換され、3位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基又はメトキシプロポキシ基で置換されている無水グルコース単位の平均モル分率。
(ii)2、3、6位の炭素における水酸基のうち、2位の炭素における水酸基がメトキシ基で置換され、6位における水酸基は置換されず、3位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基又はメトキシプロポキシ基で置換されている無水グルコース単位の平均モル分率。
(iii)2、3、6位の炭素における水酸基のうち、2位の炭素における水酸基は置換されず、6位の炭素における水酸基がメトキシ基で置換され、3位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基又はメトキシプロポキシ基で置換されている無水グルコース単位の平均モル分率。
(iv)2、3、6位の炭素における水酸基のうち、2位及び6位の炭素における水酸基は置換されず、3位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基又はメトキシプロポキシ基で置換されている無水グルコース単位の平均モル分率。
【0013】
HPMCにおける3位MFは、特に制限されないが、有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは0.027以上、より好ましくは0.027~0.050、更に好ましくは0.027~0.045、特に好ましくは0.040~0.045である。
【0014】
HPMCについて、3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)は、Macromolecules,20,2413(1987)や繊維学会誌,40,T-504(1984)に記載されているように、HPMCを硫酸中で加水分解した後に中和して濾過精製したものを還元し、更にアセチル化して、13C-NMR、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーのうちのいずれかと質量分析装置を用いて同定した各々の検出グラフ特性から求めることができる。
【0015】
本発明においては、以下の方法により、3位MFを測定した。
まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロース50mgに3質量%の硫酸水溶液2mLを加えて140℃にて3時間加水分解を行って加水分解物を得た後、炭酸バリウムを0.8g加えて中和する。
次に、3mLのメタノールを加えて前記加水分解物を溶解し、500Gにて遠心分離した後に、上澄み液を0.45μmの目開きのフィルターで濾過してろ液を得る。そして、前記ろ液の3mLに、1.5gのNaBHを0.2規定(すなわち0.2mol/L)のNaOH水溶液10mL中に溶かした溶液120μLを加えて、グルコース環の還元を37~38℃にて1時間行い、酢酸100μLを加えた後、大気圧下、窒素ブローを行いながら、100℃にて1時間加熱して溶媒を蒸発させ固体を得る。そして、得られた固体に、ピリジン2mL、無水酢酸1.5mLを加えて100℃にて1.5時間、アセチル化する。500Gにて遠心分離した後に、上澄み液を0.45μmの目開きのフィルターで濾過してろ液を得る。得られたろ液からピリジン、無水酢酸及び酢酸を、常圧下、窒素ブローを行いながら、100℃にて1時間加熱して除去し、ジエチレングリコールジメチルエーテル1mLに再溶解することにより、測定試料を調製する。得られた測定試料をガスクロマトグラフィー(GC)にかけてピーク面積により3位MFを測定できる。
【0016】
測定試料のGC分析は、次のように行うことができる。DB-5カラム(長さ30m、径0.25mm、膜厚0.25μm)を装着したGC2010(島津株式会社製)に、キャリアガス:ヘリウム、ヘリウムの圧力:100kPa、入口温度:300℃の条件で測定試料溶液1μLを注入する。カラム温度を150℃にて3分間保持した後、2℃/分の速度で275℃まで加熱し、続いて15℃/分の速度で300℃まで加熱し、その後300℃にて5分間保持する。300℃に設定したFID検出器にて各成分の保持時間とピーク面積を測定する。
予め各検出ピークについて質量分析装置にて、その構造を同定し、測定試料におけるピークについて、質量分析装置にて同定したピークによる各ピークの同定を行う。また、面積比により、HPMCについて3位の炭素における水酸基のみがヒドロキシプロポキシ基で置換され、2位及び6位の炭素における水酸基がヒドロキシプロポキシ基で置換されていない無水グルコース単位のモル分率(3位MF)を求め、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)で除することにより、3位MF/MSを求めた。
【0017】
HPMCのメトキシ基の置換度(DS)は、特に限定されないが、有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは1.0~2.2、より好ましくは1.5~2.2、更に好ましくは1.7~2.2である。メトキシ基の置換度(DS)は、無水グルコース単位当たりのメトキシ基の平均個数をいう。
HPMCのヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)は、特に限定されないが、有機溶媒への溶解性および液体組成物の粘着性の観点から、好ましくは0.05~0.50、より好ましくは0.10~0.40、更に好ましく0.15~0.35、特に好ましくは0.18~0.35である。ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)は、無水グルコース単位1モル当たりのヒドロキシプロポキシ基の平均置換モル数のことをいう。
HPMCにおけるメトキシ基のDS及びヒドロキシプロポキシ基のMSは、第十七改正日本薬局方に基づき測定して得られた結果を換算することによって求めることができる。
【0018】
HPMCの置換度タイプとしては、有機溶媒への溶解性の観点から、第十七改正日本薬局方におけるヒプロメロースに記載の2910タイプ(メトキシ基:28.0~30.0%、ヒドロキシプロポキシ基:7.0~12.0%)、2906タイプ(メトキシ基:27.0~30.0%、ヒドロキシプロポキシ基:4.0~7.5%)、2208タイプ(メトキシ基:19.0~24.0%、ヒドロキシプロポキシ基:4.0~12.0%)が好ましく、2910タイプ及び2906タイプがより好ましく、2910タイプが特に好ましい。
一方で、置換度タイプ1828タイプ(メトキシ基:16.5~20.0%、ヒドロキシプロポキシ基:23.0~32.0%)のようにヒドロキシプロポキシ基が過度に高いと、液体組成物の粘着性が高くなる可能性がある。
【0019】
HPMCの2.0質量%水溶液の20℃における粘度は、50mPa・sを超えて150,000mPa・s以下であり、より好ましくは80mPa・s~80,000mPa・sであり、更に好ましくは500mPa・s~50,000mPa・s、特に好ましくは500mPa・s~13,000mPa・sである。HPMCの2.0質量%水溶液の20℃における粘度が50mPa・s未満であると、有機溶媒含有組成物へ付与する増粘効果が弱く、有機溶媒含有組成物の粘度安定性が十分ではない。一方、HPMCの2.0質量%水溶液の20℃における粘度が150,000mPa・sを超えると、HPMCは有機溶媒との相溶性が悪くなるために溶解性が劣り、結果として有機溶媒組成物の増粘性及び/又は、透明性が低くなる。
2.0質量%水溶液の20℃における粘度は、粘度が600mPa・s以上の場合においては、第十七改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定法の回転粘度計に従い、単一円筒型回転粘度計を用いて測定することができる。一方、粘度が600mPa・s未満の場合においては、第十七改正日本薬局方に記載の一般試験法粘度測定法の毛細管粘度計法に従い、ウベロ-デ型粘度計を用いて測定することができる。
【0020】
HPMCにおける3位MF/MS、2質量%水溶液の20℃における粘度及びDSの組合せとしては、3位MF/MSが0.12以上のときに、HPMCの粘度が80~80,000mPa・s、DSが1.0~2.2であることが好ましい。3位MF/MSは、好ましくは0.12~0.30であり、このときHPMCの粘度が500~50,000mPa・s、DSが1.5~2.2であることがより好ましい。3位MF/MSは、より好ましくは0.14~0.25であり、このときHPMCの粘度が500~13,000mPa・s、DSが1.7~2.2であることが更に好ましい。
【0021】
(2)HPMCの製造方法
次に、所定の3位MF/MSを有するHPMCの製造方法について説明する。
所定の3位MF/MSを有するHPMCは、例えば、
パルプとアルカリ金属水酸化物溶液とを接触させてアルカリセルロースを得る工程と、
前記アルカリセルロースに、ジメチルエーテルと第一のメチル化剤を混合して第一の反応生成混合物を形成する工程と、
さらにアルカリ金属水酸化物を配合することなく、前記第一の混合物に第二のメチル化剤とヒドロキシプロピル化剤を混合して第二の反応生成混合物を得る工程と、
前記第二の反応生成混合物を精製してHPMCを得る工程と、
前記HPMCを乾燥することにより乾燥されたHPMCを得る工程と
を少なくとも含み、前記第二の反応生成混合物中のHPMCのメトキシ基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)が、前記乾燥されたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)と等しくなるメチル化剤及びヒドロキシプロピル化剤の反応率を100%とすると、前記第一と第二のメチル化剤の全反応率が50%の時点におけるヒドロキシプロピル剤の反応率が50%以上90%以下である、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法により得られる。
【0022】
まず、パルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させてアルカリセルロースを得る工程について説明する。
パルプとしては、木材パルプ、リンターパルプ等のセルロースパルプ等が挙げられる。パルプの形態としては、粉末状パルプ、シート状パルプ、チップ状パルプ等何れの形態でも使用できるが、HPMCの有機溶媒への溶解性の観点並びにアルカリセルロースの取り扱いのしやすさ及び脱液性の観点から、好ましくはシート状パルプ又はチップ状パルプである。
パルプの重合度の指標である固有粘度は、好ましくは300~2500ml/g、より好ましくは350~2300ml/g、更に好ましくは400~2000ml/gである。固有粘度が300ml/g未満であると、得られたHPMCの粘度が低くなってしまう可能性や、HPMCの粗生成物の洗浄性が悪化する可能性がある。一方、固有粘度が2500ml/gを超えると、得られたHPMCが有機溶媒への溶解性に劣る可能性がある。パルプの固有粘度は、JIS P8215のA法に準拠の方法により測定することができる。
【0023】
アルカリ金属水酸化物溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物水溶液等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物溶液におけるアルカリ金属水酸化物の濃度は、経済性および操作性の観点から、好ましくは23~60質量%である。
【0024】
アルカリセルロースにおけるアルカリ金属水酸化物とパルプ中の固体成分との質量比(アルカリ金属水酸化物/パルプ中の固体成分)は、目的のメトキシ基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)になれば、特に制限されるものではないが、好ましくは0.30~1.50であり、より好ましくは0.35~1.45である。
アルカリ金属水酸化物溶液の使用量は、上記質量比に応じて適宜選択すればよい。アルカリ金属水酸化物成分の質量は、中和滴定法によって算出することができる。
【0025】
パルプ中の固体成分は、パルプ中の水分以外の成分を意味する。パルプ中の固体成分には、主成分のセルロースの他、ヘミセルロース、リグニン、樹脂分等の有機物、Si分、Fe分等の無機物が含まれる。パルプ中の固体成分は、JIS P8203:1998のパルプ-絶乾率の試験方法により求められた絶乾率より算出できる。絶乾率(dry matter content)は、試料を105±2℃で乾燥し、恒量に達したときの質量と乾燥前の質量の比率であり、質量%で表示する。
【0026】
パルプと、アルカリ金属水酸化物溶液の接触は、例えば、シート状のパルプを用いる場合においては、過剰のアルカリ金属水酸化物溶液にシート状パルプを浸漬することにより行うことができる。そして、十分にシート状パルプに対してアルカリ金属水酸化物溶液を吸収させた後、所定のアルカリ金属水酸化物とパルプ中の固体成分との質量比になるように、例えば加圧プレスして余分なアルカリ金属水酸化物溶液を除去する。なお、パルプとの接触に供されるアルカリ金属水酸化物溶液の濃度は、アルカリセルロースの組成を安定させるために一定の濃度に保たれることが好ましい。
パルプと、アルカリ金属水酸化物溶液を接触させる工程において、ジメチルエーテル等の有機溶媒や、塩化メチル等のメチル化剤、酸化プロピレン等のヒドロキシプロピル化剤は存在しない。
【0027】
次に、アルカリセルロースに、ジメチルエーテルと第一のメチル化剤を混合して第一の反応生成混合物を形成する工程について説明する。好ましくは、アルカリセルロースに、ジメチルエーテルと第一のメチル化剤の混合物を添加し、撹拌混合して、第一の反応生成混合物を形成してもよい。
ジメチルエーテルと、出発原料パルプ中の固体成分の質量比(ジメチルエーテル/出発原料パルプ中の固体成分)は、HPMCの有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは0.5~2.0である。
第一のメチル化剤としては、塩化メチル等が挙げられる。第一のメチル化剤と、出発原料パルプ中の固体成分の質量比(第一のメチル化剤/出発原料パルプ中の固体成分)は、HPMCの有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは0.05~0.50である。ジメチルエーテルと、第一のメチル化剤との質量比(ジメチルエーテル/第一のメチル化剤)は、得られるHPMCの有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは2.0~20.0である。
アルカリセルロースに、ジメチルエーテルと第一のメチル化剤の混合物を添加し、撹拌混合して第一の混合物を形成する際の温度は、得られるHPMCの有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは20~70℃である。アルカリセルロースに、ジメチルエーテルと第一のメチル化剤の混合物を添加後の撹拌混合時間は、得られるHPMCの有機溶媒への溶解性の観点から、好ましくは0.1~30分である。
【0028】
次に、さらにアルカリ金属水酸化物を配合することなく、前記第一の反応生成混合物に第二のメチル化剤とヒドロキシプロピル化剤を混合して第二の反応生成混合物を得る工程について説明する。好ましくは、さらにアルカリ金属水酸化物を添加することなく、前記第一の反応生成混合物に第二のメチル化剤とヒドロキシプロピル化剤を添加して生成物としてHPMCを含む第二の反応生成混合物を得る。
【0029】
第二のメチル化剤としては、塩化メチル等が挙げられる。第二のメチル化剤と、出発原料パルプ中の固体成分の質量比(第二のメチル化剤/パルプ中の固体成分)は、目的のメトキシ基の置換度(DS)になれば制限されないが、経済性の観点から、好ましくは0.9~2.5である。第一のメチル化剤と第二のメチル化剤は、同じ種類であっても、異なる種類であっても良いが、HPMCの精製の容易さの観点から好ましくは同じ種類である。
第一のメチル化剤と第二のメチル化剤の質量比(第一のメチル化剤/第二のメチル化剤)は、HPMCの有機溶媒への溶解性の観点から好ましくは0.01~0.20である。
【0030】
ヒドロキシプロピル化剤としては、酸化プロピレン等が挙げられる。ヒドロキシプロピル化剤と、出発原料パルプ中の固体成分の質量比率(ヒドロキシプロピル化剤/パルプ中の固体成分)は、目的のヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)になれば制限されないが、経済性の観点から、0.2~1.5となるようにヒドロキシプロピル化剤を使用することが好ましい。
第二のメチル化剤およびヒドロキシプロピル化剤は、第一の反応生成混合物へ同時に添加してもよいし、第二のメチル化剤もしくはヒドロキシプロピル化剤を先に添加してもよい。
【0031】
セルロースの無水グルコース単位は置換可能な水酸基を3つ有している。一般にメチル化においては、無水グルコース単位の2位の炭素における水酸基が最も反応性が高く、6位の炭素における水酸基の反応性はそれより劣り、3位の炭素における水酸基は最も反応性が低い。そして、一般にヒドロキシプロピル化においては、無水グルコース単位の6位の炭素における水酸基が最も反応性が高く、2位及び3位の炭素における水酸基の反応性はそれより劣る。そして、ヒドロキシプロピル化における2位の炭素における水酸基の反応性と3位の炭素における水酸基の反応性は同程度である。よって、3位MF/MSを高めるためには、2及び6位の炭素における水酸基のヒドロキシプロピル化を抑え、3位の炭素における水酸基のヒドロキシプロピル化を進行させればよい。
【0032】
この方法の一つとしては、第一と第二のメチル化剤の全反応率に対してヒドロキシプロピル化剤の反応率を制御することが挙げられる。HPMCのメトキシ基の最終置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の最終置換モル数(MS)を得たときのメチル化剤及びヒドロキシプロピル化剤の反応率を100%とすると、第一と第二のメチル化剤の全反応率が50%の時点におけるヒドロキシプロピル化剤の反応率は、3位MF/MSを制御する観点から50~90%である。
ここで、「メチル化剤の全反応率」とは、アルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物のモル数と、メチル化に寄与するメチル基換算によるモル数が等しくなる量(等モル量)のメチル化剤が反応したときを全反応率100%として、メチル化剤の任意の時点の全反応量を百分率で表したものをいう。例えば、第一と第二のメチル化剤として塩化メチルを用いる場合におけるメチル化剤の全反応率は、塩化メチルが反応すると、反応した塩化メチルと等しいモル量のアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物が消費されるため、アルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物と等モル量のメチル化剤に対する、任意の時点の塩化メチルの反応量(モル数)のモル比を百分率で表したものとなる。
通常、メチル化剤とアルカリ金属水酸化物を用いてメチル化を行う場合、メチル化の効率を高めるため、メチル化剤はアルカリ金属水酸化物に対して等モル量以上となる量を用いる。しかし、メチル化剤の反応率の算出においては、アルカリ金属水酸化物に対して等モル量を超えるメチル化剤のモル数(過剰分)は反応率の計算には無関係である。
【0033】
「ヒドロキシプロピル化剤の反応率」とは、ヒドロキシプロピル化剤のヒドロキシプロピル化に寄与するヒドロキシプロピル基換算による最終的な反応モル数に対する任意の反応時点のヒドロキシプロピル化に寄与したヒドロキシプロピル基換算によるモル数の比を百分率で表したものをいう。
メチル化ではアルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物に対して等モル量を基準としたが、例えば、ヒドロキシプロピル化剤として酸化プロピレンを用いた場合には、反応後の酸化プロピレンはヒドロキシプロピル基の形態でアルコキシドとして働くため、アルカリセルロース由来のアルカリ金属水酸化物は触媒として機能し、ヒドロキシプロピル化剤とアルカリ金属水酸化物は化学量論的に反応が進行しないため、ヒドロキシプロピル化剤のヒドロキシプロピル化に寄与するヒドロキシプロピル基換算による最終的な反応モル数を基準とした。
なお、メチル化及びヒドロキシプロピル化の対象は、アルカリセルロース中の-O-アルカリ金属(例えば-ONa)だけでなく、反応系の水や、メチル化剤と、アルカリセルロース由来のアルカリ金属水酸化物及び/又は水が反応することによって生じるメタノールや、ヒドロキシプロピル化剤とアルカリ金属水酸化物や水が反応することによって生じるプロピレングリコール等を含む。
【0034】
メチル化剤の全反応率及びヒドロキシプロピル化剤の反応率は、反応機から素早くメチル化剤又はヒドロキシプロピル化剤を回収することにより、その時点で反応機内に残留していたメチル化剤又はヒドロキシプロピル化剤の量を調べ、最終的に反応機に加えるメチル化剤又はヒドロキシプロピル化剤の量でその時点の反応量を除する方法により求めることができる。ただし、メチル化剤の全反応率については、アルカリセルロース中のアルカリ金属水酸化物のモル数と、メチル化に寄与するメチル基換算によるモル数が等しくなる量(等モル量)のメチル化剤が反応したときを反応率100%として、回収量のモル数が配合量のモル数から余剰分のモル数を差し引いたモル数以下となった後に、回収量のモル数から余剰分のモル数を差し引いた値を用いて全反応率を算出する。
また、実験により求められた化学反応速度式によるシミュレーションを用いることによっても求めることができる。
【0035】
第二のメチル化剤及びヒドロキシプロピル化剤の配合方法としては、好ましくは、第二のメチル化剤及びヒドロキシプロピル化剤を第一の反応生成混合物に添加する方法である。
第二のメチル化剤の配合時間は、第一と第二で添加したメチル化剤の全反応率に対するヒドロキシプロピル化剤の反応率が制御されれば特に制限されないが、好ましくは5~100分間、より好ましくは5~90分間である。ヒドロキシプロピル化剤の配合時間は、第一と第二で添加したメチル化剤の全反応率に対するヒドロキシプロピル化剤の反応率が制御されれば特に制限されないが、好ましくは5~80分間、より好ましくは10~60分間である。
【0036】
第二のメチル化剤とおよびヒドロキシプロピル化剤添加後のエーテル化反応における反応温度は、第一と第二で添加したメチル化剤の全反応率に対するヒドロキシプロピル化剤の反応率が制御されれば特に制限されないが、好ましくは55~110℃である。エーテル化反応における反応温度は、前記の範囲で変動しても良いし、一定であっても良い。
【0037】
次に、第二の反応生成混合物を精製してHPMCを得る工程について説明する。第二の反応生成混合物からHPMCを分離する工程であり、例えば、第二の反応生成混合物を洗浄後、濾過あるいは圧搾等の方法により脱液してHPMCを分離できる。
洗浄は、水、又は水と有機溶媒(例えばアセトン)との混合物等を用いて行うことができる。洗浄に用いる水又は水と有機溶媒の混合物の温度は、好ましくは60~100℃である。
洗浄されたHPMCにおける含水率は、不純物の除去や次工程での含水率の調整のしやすさの観点から、好ましくは25~95質量%、より好ましくは35~95質量%である。
【0038】
次に、得られたHPMCを乾燥することにより乾燥されたHPMCを得る工程について説明する。
乾燥は、例えば、乾燥機を用いて行うことができる。乾燥機としては、送風乾燥機等が挙げられる。乾燥方式としては、熱風式、伝導加熱式及びこれらの組み合わせた方式等が挙げられる。乾燥温度は、乾燥効率の観点から、好ましくは60~120℃である。乾燥時間は、生産性の観点から、好ましくは3~24時間である。
【0039】
必要に応じて、乾燥後のHPMCに対して、粉砕を行ってもよい。粉砕の方法としては、特に限定されず、粉砕物を衝突させたり衝突基質にぶつけたりして粉砕する衝撃粉砕装置や、粉砕物を基質に挟み込んで粉砕するボールミル、ローラーミル等いずれの粉砕様式も使用可能である。
【0040】
また、必要に応じて、乾燥後のHPMCに対して、酸による解重合を行ってもよい。粉砕を行う場合は、酸による解重合を粉砕前又は粉砕後に行ってもよい。
酸としては、塩化水素等のハロゲン化水素が挙げられる。酸は、水溶液等として用いてもよい。例えば、塩化水素は、塩酸(塩化水素水溶液)として使用してもよい。塩化水素水溶液における塩化水素の濃度は、好ましくは1~45質量%である。酸の使用量は、HPMC100質量部に対して好ましくは、0.04~1.00質量部である。
酸による解重合における反応温度は、好ましくは40~85℃である。酸による解重合における反応時間は、好ましくは0.1~4時間である。酸による解重合終了後は、反応器内を減圧する等して酸を除去すればよい。また、必要に応じて、重炭酸ソーダ等を添加して、解重合に使用した酸を中和してもよい。
【0041】
(3)液体組成物
液体組成物は、上述のHPMCと、有機溶媒とを少なくとも含む。液状組成物は、HPMCが有機溶媒に溶解されているが、必要に応じて含有される他の成分は溶解されていても分散されていてもよい。液状組成物は、好ましくは溶液である。
液体組成物に含まれる有機溶媒は,特に制限されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、メチルイソプロピルベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらの有機溶媒の中で、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ジクロロメタンが好ましい。有機溶媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせた混合溶媒としても良いが、好ましくは2種以上の有機溶媒を組み合わせた混合溶媒とするか、後述するように有機溶媒と水との混合溶媒とすることが好ましい。
【0042】
液体組成物中のHPMCの含有量は、液体組成物に付与する所望の増粘性によって適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、液体組成物の総質量中、好ましくは0.05質量%~4.00質量%であり、より好ましくは0.10質量%~3.85質量%であり、更に好ましくは0.20質量%~3.50質量%であり、なお更に好ましくは0.50質量%~3.20質量%、特に好ましくは1.00~3.20質量%である。
【0043】
液体組成物は、HPMCと有機溶媒のほかに、必要に応じて水を含有することができる。水の種類は特に制限されないが、精製水、イオン交換水、蒸留水、水道水等が挙げられる。
液体組成物に水を添加する際の有機溶媒と水の比率は特に制限されないが、溶媒中における有機溶媒の比率は、好ましくは50.0~99.5質量%、より好ましくは60.0~99.0質量%、特に好ましくは70.0~95.0質量%である。溶媒中における有機溶媒の比率が50%未満であると、手指消毒剤や、塗膜剥離剤として使用した際に、溶媒の蒸発に時間がかかったり、殺菌性や塗膜の剥離性に劣ったりする可能性がある。
【0044】
液体組成物に所望の性質を付与するために、HPMC及び有機溶媒の他に、必要に応じて添加剤を含んでもよい。
添加剤は、本発明の課題解決の妨げにならない限り特に限定されないが、例えば、殺菌剤、粘度調整剤、pH調整剤、香料、顔料、染料、酸化防止剤、防腐剤、保湿剤、蒸発抑制剤等が挙げられる。
【0045】
殺菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、ヒノキチオール等が挙げられる。
粘度調整剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0046】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸アンモニウム、アンモニア、アンモニア水、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、ジメチルアミン、ジエチルアミン等の第2級のアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級のアルキルアミン;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ポリエタノールアミン等が挙げられる。
【0047】
香料しては、例えば、バラ油、ジャスミン油、ラベンダー油、イランイラン油、ペパーミント油、ゼラニウム油、パチュリー油、サンダルウッド油、シンナモン油、レモン油、オレンジ油、ベルガモット油、リモネン、β-カリオフィレン、シス-3-ヘキセノール、リナロール、ファルネソール、β-フェニルエチルアルコール、2,6-ノナジエナール、シトラール、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、L-カルボン、シクロペンタデカノン、リナリルアセテート、γ-ウンデカラクトン、オーランチオール等が挙げられる。
【0048】
顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、無水ケイ酸を被覆あるいは複合した酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄、γ-酸化鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン等が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料、酸化染料中間体等が挙げられる。
【0049】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、チアゾリン類等が挙げられる。
【0050】
保湿剤としては、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ムコ多糖、尿素、ソルビトール、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸ナトリウム、ポリアスパラギン酸、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジグリセリン、ペンチレングリコール等が挙げられる。
蒸発抑制剤としては、固形パラフィン、高級脂肪酸およびそのエステル等が挙げられる。
【0051】
添加剤は、上記したものの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、添加剤は、市販のものを用いてもよいし、これまでに知られている方法により製造したものを用いてもよい。
液体組成物中の添加剤の含有量は、液体組成物に付与する所望の性質及び用途に応じて適宜変動するが、例えば、液体組成物の保存安定性の観点から、好ましくは0.001質量%~20.000質量%である。但し、添加剤がグリセリン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジグリセリン又はペンチレングリコールである場合は、溶解性の観点から、添加剤の含有量は好ましくは0.001質量%~10.000質量%である。
【0052】
20℃における液体組成物の粘度としては、特に制限されないが、好ましくは100~50,000mPa・s、より好ましくは500~20,000mPa・s、最も好ましくは1000~10,000mPa・sである。20℃における液体組成物の粘度は、後述するように、単一円筒型回転粘度計によって測定することが出来る。
【実施例0053】
以下に、合成例、比較合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
合成例1
固有粘度530ml/gのチップ状の木材由来のパルプを、49質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後に、余剰の49質量%水酸化ナトリウム水溶液を除去して、アルカリセルロースを得た。得られたアルカリセルロースにおける水酸化ナトリウムとパルプ中の固体成分との質量比(水酸化ナトリウム/パルプ中の固体成分)は、1.25だった。
得られたアルカリセルロースのうち、19.9kg(パルプ中の固体成分5.5kg)を内容積100Lのプロシェア型内部撹拌羽根つきの圧力容器(反応機)に仕込み、-97kPaまで減圧後、窒素を封入して大気圧まで戻した。そして、-97kPaまで再減圧した。
次に、加圧ポンプを用いてジメチルエーテル2.75kgと第一の塩化メチル0.48kgの混合物を反応機に添加し、60℃で10分間撹拌混合し、第一の反応生成混合物を得た。続いて、第二の塩化メチル10.4kgを50分間で反応機に添加した。第二の塩化メチルの添加開始と同時に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンの反応機への添加を開始した。酸化プロピレンは、2.86kgを12分間で反応機に添加した。第二の塩化メチルの添加開始時点の反応機内温は60℃であり、100℃まで昇温しながら合計2時間反応することにより粗HPMC(第二の反応生成混合物)を得た。サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は83.5%だった。
得られた粗HPMCを95℃の熱水にて洗浄した。そして、遠心脱水機で脱水した後、送風乾燥機を用いて70℃、18時間乾燥し、小型ウィリーミルにて粉砕した。そして、第十七改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定法の回転粘度計法に従い、単一円筒型回転粘度計を用いて20℃における2質量%水溶液の粘度が1400mPa・sであるHPMCを得た。得られたHPMCの置換度(DS及びMS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0054】
合成例2
固有粘度700ml/gの木材由来のチップ状のパルプを使用し、酸化プロピレンの添加量を3.60kg、第二の塩化メチルの添加時間を50分間、酸化プロピレンの添加時間を30分間とする以外は合成例1と同様にHPMCを合成し、粉砕した。
なお、サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は73.4%だった。得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0055】
合成例3
固有粘度810ml/gの木材由来のチップ状のパルプを使用し、酸化プロピレンの添加量を3.60kg、第二の塩化メチルの添加時間を50分間、酸化プロピレンの添加時間を30分間とする以外は合成例1と同様にHPMCを合成し、粉砕した。
なお、サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は73.4%だった。得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0056】
合成例4
合成例1と同様の方法でHPMCを合成し、粉砕し、第十七改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定法の回転粘度計法に従い、単一円筒型回転粘度計を用いて20℃における2質量%水溶液の粘度が1400mPa・sであるHPMCを得た。
得られたHPMC1kgを容積20Lのヘンシェルミキサーに入れ、200rpmで撹拌混合しながら12質量%塩酸を噴霧した。噴霧量は、HPMC100質量部に対するHClが0.1質量部となるように添加した。このうちの500gを2Lのガラス製反応器に移し入れ、反応器を80℃の水浴中で加熱しながら回転させ10分間解重合反応させた。得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0057】
合成例5
固有粘度530ml/gの木材由来のチップ状のパルプを、49質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後に、余剰の49質量%水酸化ナトリウム水溶液を除去して、アルカリセルロースを得た。得られたアルカリセルロースにおける水酸化ナトリウムとパルプ中の固体成分との質量比(水酸化ナトリウム/パルプ中の固体成分)は、1.17だった。
得られたアルカリセルロースのうち、19.0kg(パルプ中の固体成分5.5kg)を内容積100Lのプロシェア型内部撹拌羽根つきの圧力容器(反応機)に仕込み、-97kPaまで減圧後、窒素を封入して大気圧まで戻した。そして、-97kPaまで再減圧した。
次に、加圧ポンプを用いてジメチルエーテル2.75kgと第一の塩化メチル0.48kgの混合物を反応機に添加し、60℃で10分間撹拌混合し、第一の反応生成混合物を得た。続いて、第二の塩化メチル10.1kgを30分間で反応機に添加した。第二の塩化メチルの添加開始と同時に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンの反応機への添加を開始した。酸化プロピレンは3.01kgを50分間で反応機に添加した。第二の塩化メチルの添加開始時点の反応機内温は60℃であり、100℃まで昇温しながら合計2時間反応することにより、粗HPMC(第二の反応生成混合物)を得た。サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は60.5%だった。
得られた粗HPMCを95℃の熱水にて洗浄した。そして、遠心脱水機で脱水した後、送風乾燥機を用いて70℃、18時間乾燥し、小型ウィリーミルにて粉砕した。そして、第十七改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定法の回転粘度計法に従い、単一円筒型回転粘度計を用いて20℃における2質量%水溶液の粘度が930mPa・sであるHPMCを得た。得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0058】
合成例6
固有粘度530ml/gの木材由来のチップ状のパルプを使用し、酸化プロピレンの添加量を2.10kgとする以外は、合成例1と同様の方法でHPMCを合成し、粉砕し、第十七改正日本薬局方に記載の一般試験法の粘度測定法の回転粘度計法に従い、単一円筒型回転粘度計を用いて20℃における2質量%水溶液の粘度が1400mPa・sであるHPMCを得た。
得られたHPMC1kgを容積20Lのヘンシェルミキサーに入れ、200rpmで撹拌混合しながら12質量%塩酸を噴霧した。噴霧量は、HPMC100質量部に対するHClが0.15質量部となるように添加した。このうちの500gを2Lのガラス製反応器に移し入れ、反応器を80℃の水浴中で加熱しながら回転させ40分間解重合反応させた。得られたHPMCの置換度(DS及びMS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0059】
比較合成例1
酸化プロピレンの添加量を2.53kg、第二の塩化メチルの添加時間を82分間、酸化プロピレンの添加時間を17分間とする以外は合成例1と同様にHPMCを合成し、粉砕した。なお、サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は91.2%だった。
得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0060】
比較合成例2
酸化プロピレンの添加量を2.53kg、第二の塩化メチルの添加時間を82分間、酸化プロピレンの添加時間を17分間とする以外は合成例2と同様にHPMCを合成し、粉砕した。なお、サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は91.1%だった。
得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0061】
比較合成例3
酸化プロピレンの添加量を2.53kg、第二の塩化メチルの添加時間を82分間、酸化プロピレンの添加時間を17分間とする以外は合成例3と同様にHPMCを合成し、粉砕した。なお、サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は91.0%だった。
得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0062】
比較合成例4
酸化プロピレンの添加量を2.53kg、第二の塩化メチルの添加時間を82分間、酸化プロピレンの添加時間を17分間とする以外は合成例4と同様にHPMCを合成し、粉砕した。なお、サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は91.2%だった。
得られたHPMC1kgを容積20Lのヘンシェルミキサーに入れ、200rpmで撹拌混合しながら12質量%塩酸を噴霧した。噴霧量は、HPMC100質量部に対するHClが0.1質量部となるように添加した。このうちの500gを2Lのガラス製反応器に移し入れ、反応器を80℃の水浴中で加熱しながら回転させ10分間解重合反応させた。
得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0063】
比較合成例5
酸化プロピレンの添加量を1.59kg、第二の塩化メチルの添加時間を80分間、酸化プロピレンの添加時間を10分間とする以外は合成例5と同様にHPMCを合成し、粉砕した。なお、サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は92.4%だった。
得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0064】
比較合成例6
酸化プロピレンの添加量を1.55kg、第二の塩化メチルの添加時間を80分間、酸化プロピレンの添加時間を10分間とする以外は合成例6と同様にHPMCを合成し、粉砕した。なお、サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、第一および第二で添加した塩化メチルの全反応率が50%の時点における酸化プロピレンの反応率は94.0%だった。
得られたHPMC1kgを容積20Lのヘンシェルミキサーに入れ、200rpmで撹拌混合しながら12質量%塩酸を噴霧した。噴霧量は、HPMC100質量部に対するHClが0.15質量部となるように添加した。このうちの500gを2Lのガラス製反応器に移し入れ、反応器を80℃の水浴中で加熱しながら回転させ40分間解重合反応させた。
得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)、ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)、20℃における2質量%水溶液の粘度、3位MFおよび3位MF/MSの値を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1
合成例1にて製造したHPMCを用いて、下記の方法により液体組成物を製造し、その透光度、粘度及び保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
<エタノール/精製水=8/2(wt/wt)における液体組成物の製造>
エタノール100.0gを250mL容の広口試薬ビンに秤量し、撹拌羽根を装着した撹拌機(ZZ-1000、東京理化器械株式会社製)で撹拌しながら、HPMC3.87gを投入した。そして、精製水25.0gを投入し、400rpmにて室温で2時間撹拌することにより、液体組成物を製造した。
<液体組成物の透光度>
製造した液体組成物における透光度を光電比色計(PC-50形:コタキ製作所製)を用いて、フィルター720nm、20mmのセル長の条件の下、測定した。
<液体組成物の粘度>
製造した液体組成物の粘度は、単一円筒型回転粘度計(東京計器社製、「DVM-BII」、ローターNo.2~4)を用いて、20℃にて30回転で120秒後の測定値として測定した。
<液体組成物の保存安定性>
製造した液体組成物を100mL容の試薬ビンに入れ、室温で1週間静置した。濁りや沈殿の発生がなく、外観に変化がない場合を〇、濁りや沈殿が発生した場合を×とした。
【0067】
実施例2~4
合成例2~4のHPMCを使用し、HPMCの添加量を表2に記載の量とする以外は実施例1と同様の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
比較例1~4
比較合成例1~4のHPMCを使用し、HPMCの添加量を表2に記載の量とする以外は実施例1と同様の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
実施例5
合成例1にて製造したHPMCを用いて、下記の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を実施例1と同様の方法により評価した。結果を表3に示す。
<2-プロパノール/精製水=8/2(wt/wt)における液体組成物の製造>
2-プロパノール100.0gを250mL容の広口試薬ビンに秤量し、撹拌羽根を装着した撹拌機(ZZ-1000、東京理化器械株式会社製)で撹拌しながら、合成例1にて得られたHPMC3.87gを投入した。そして、精製水25.0gを投入し、400rpmにて室温で2時間撹拌することにより、液体組成物を製造した。
【0071】
比較例5
比較合成例1のHPMCを使用する以外は、実施例5と同様の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
実施例6
合成例1にて製造したHPMCを用いて、下記の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を実施例1と同様の方法により評価した。結果を表4に示す。
<ジクロロメタン/エタノール=7.5/2.5(wt/wt)における液体組成物の製造>
ジクロロメタン90gとエタノール30gを300mL容の広口試薬ビンに秤量し、撹拌羽根を装着した撹拌機(ZZ-1000、東京理化器械株式会社製)で撹拌しながら、合成例1にて得られたHPMC3.71gを投入し、400rpmにて室温で2時間撹拌することにより、液体組成物を製造した。
【0074】
比較例6
比較合成例1のHPMCを使用する以外は、実施例6と同様の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を評価した。結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例7
合成例5にて製造したHPMCを用いて、下記の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を実施例1と同様の方法により評価した。結果を表5に示す。
<エタノール/精製水=8/2(wt/wt)における液体組成物の製造>
エタノール100gを250mL容の広口試薬ビンに秤量し、撹拌羽根を装着した撹拌機(ZZ-1000、東京理化器械株式会社製)で撹拌しながら、合成例5にて得られたHPMC3.87gを投入した。そして、精製水25.0gを投入し、400rpmにて室温で2時間撹拌することにより、液体組成物を製造した。
【0077】
比較例7
比較合成例5のHPMCを使用する以外は実施例6と同様の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を評価した。結果を表5に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
実施例8
合成例6にて製造したHPMCを用いて、下記の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を実施例1と同様の方法により評価した。結果を表6に示す。
<エタノール/精製水=6/4(wt/wt)液体組成物の製造>
エタノール60.0gを250mL容の広口試薬ビンに秤量し、撹拌羽根を装着した撹拌機(ZZ-1000、東京理化器械株式会社製)で撹拌しながら、合成例6にて得られたHPMC5.27gを投入した。そして、精製水40.0gを投入し、400rpmにて室温で2時間撹拌することにより、液体組成物を製造した。
【0080】
比較例8
比較合成例6のHPMCを使用する以外は実施例8と同様の方法により、液体組成物を製造し、その透光度、粘度、保存安定性を評価した。結果を表6に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
3位MF/MSが、0.12以上であるHPMCを用いた実施例1は、同程度の置換度及び粘度を有する比較例1と比較して、製造した液体組成物が高い透光度を示し、保存安定性に優れていた。これは、HPMCにおける3位MF/MSが、0.12以上であることにより、優れた溶解性を示したためであると考えられる。
また、実施例2~4より、HPMCの粘度が異なる場合であっても同様に効果を示した。また、実施例5及び6より、溶媒が2-プロパノール/精製水=8/2(wt/wt)や塩化メチレン/エタノール=7.5/2.5(wt/wt)においても、同様に効果を示した。また、実施例7~8および比較例7~8の結果より、HPMCの置換度が異なっても、同様に効果を示すことが確認された。