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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018452
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】体積測定装置及び体積測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122598
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 高廣
(72)【発明者】
【氏名】カチョーンルンルアン パナート
(72)【発明者】
【氏名】内村 護
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA52
2F065AA59
2F065BB15
2F065FF02
2F065FF04
2F065FF61
2F065GG04
2F065GG07
2F065GG22
2F065JJ03
2F065JJ18
2F065JJ26
2F065LL46
2F065LL47
2F065LL59
2F065QQ31
2F065QQ42
(57)【要約】
【課題】コンパクト化を図ることが可能な、測定対象物の体積測定装置及び体積測定方法を提供する。
【解決手段】拡散する光を発する光源11、及び、光が照射される測定対象物Wを影画像として検出するイメージセンサ12を有し、影画像の形状及び大きさから測定対象物Wの体積を導出する体積測定装置10において、拡散する光を平行にして、測定対象物Wに照射させるテレセントリック部材15と、光源11からテレセントリック部材15までの光の経路上に設けられ、光の反射によって、光の経路を長くする光路拡張部材14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散する光を発する光源、及び、光が照射される測定対象物を影画像として検出するイメージセンサを有し、該影画像の形状及び大きさから該測定対象物の体積を導出する体積測定装置において、
前記拡散する光を平行にして、前記測定対象物に照射させるテレセントリック部材と、
前記光源から前記テレセントリック部材までの光の経路上に設けられ、該光の反射によって、該光の経路を長くする光路拡張部材とを備えることを特徴とする体積測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の体積測定装置において、前記テレセントリック部材を介して前記測定対象物に照射された光の進行方向下流側に、該光を前記光路拡張部材に向けて反射する反射部材が設けられ、前記イメージセンサは、該反射部材で反射され、該光路拡張部材で更に反射された光をとらえることを特徴とする体積測定装置。
【請求項3】
請求項2記載の体積測定装置において、前記光源と前記光路拡張部材の間には、入射光を透過光と反射光とに分割するビームスプリッタが設けられ、該ビームスプリッタは前記光源が発する光を分割し透過光及び反射光のいずれか一方からなる分割光を前記光路拡張部材に向かわせ、前記反射部材及び前記光路拡張部材で順に反射され該ビームスプリッタに入射して分割された透過光及び反射光の他方からなる分割光が、前記イメージセンサによってとらえられることを特徴とする体積測定装置。
【請求項4】
請求項3記載の体積測定装置において、前記光路拡張部材は、ペンタプリズムであり、前記ビームスプリッタは、キューブ状で、該ビームスプリッタの一の平面が前記ペンタプリズムの一の平面に面接触していることを特徴とする体積測定装置。
【請求項5】
拡散する光を発する光源から、該拡散する光を平行にして前記測定対象物に照射させるテレセントリック部材までの光の経路上に、該光の反射によって、該光の経路を長くする光路拡張部材を設け、
イメージセンサによって前記測定対象物を影画像として検出し、該影画像の形状及び大きさから該測定対象物の体積を導出することを特徴とする体積測定方法。
【請求項6】
請求項5記載の体積測定方法において、前記テレセントリック部材を介して前記測定対象物に照射された光の進行方向下流側に、該光を前記光路拡張部材に向けて反射する反射部材を設け、前記イメージセンサは、該反射部材で反射され、該光路拡張部材で更に反射された光をとらえることを特徴とする体積測定方法。
【請求項7】
請求項6記載の体積測定方法において、前記光源と前記光路拡張部材の間に、入射光を透過光と反射光とに分割するビームスプリッタを設け、該ビームスプリッタは前記光源が発する光を分割し透過光及び反射光のいずれか一方からなる分割光を前記光路拡張部材に向かわせ、前記反射部材及び前記光路拡張部材で順に反射され該ビームスプリッタに入射して分割された透過光及び反射光の他方からなる分割光が、前記イメージセンサによってとらえられることを特徴とする体積測定方法。
【請求項8】
透光性チャンバー内を移動する測定対象物の体積を測定する体積測定方法であって、前記測定対象物の移動方向に対し、光軸中心が平行となるように光源から光を発し、該光源からの光を、光学部材により反射して前記チャンバーを一側から他側に透過させた後、反射部材で反射して該チャンバーを他側から一側に透過させ、前記光学部材による反射により、イメージセンサに案内し、該イメージセンサにより前記測定対象物を影画像として検出し、該影画像を基に該測定対象物の体積を導出することを特徴とする体積測定方法。
【請求項9】
測定対象物の体積を測定する体積測定方法であって、前記測定対象物が移動する方向あるいは前記測定対象物の長手方向に対し、光軸中心が平行となるように光源から光を発し、該光源からの光を、光学部材により反射して前記測定対象物に向けて一側から照射させ、反射部材で反射して該測定対象物側に向けて他側から照射させ、前記光学部材による反射により、イメージセンサに案内し、該イメージセンサにより前記測定対象物を影画像として検出し、該影画像を基に該測定対象物の体積を導出することを特徴とする体積測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の体積を導出する体積測定装置及び体積測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
点滴による薬液の投与では、単位時間当たりの注入量(以下、「注入速度」とも言う)を適切な範囲に保つことが求められる。従来、薬剤の注入速度の確認は、点滴装置のチャンバー(点滴筒)内を落下する液滴の単位時間当たりの数を目視で数えることによりなされている。これは、落下する個々の液滴の体積が等しいという前提によるものであるが、実際の液滴の体積は雰囲気温度、湿度及び薬剤の粘性等の影響を受けて変わることが確認されている。
【0003】
そのため、厳密に薬剤の注入速度を検知するには、個々の液滴の体積を計測することが有効であり、その具体例が、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、点滴装置のチャンバーを中心にしてその両側に、液滴に対して光を照射する光源及び光源の液滴への照射により生じる影を影画像として検出するイメージセンサをそれぞれ配置し、当該影画像を基に液滴の体積を求める方法が記載されている。
【0004】
光源とチャンバーの間には、光源から照射され拡散する光を平行にして液滴に向かわせるテレセントリック部材が設けられ、イメージセンサと落下中の液滴との距離が個々の液滴により異なっても、算出される液滴の体積に影響を与えないようにしている。
また、特許文献1の方法では、液滴が回転対称の形状であることに着目し、液滴を、図7に示すように、微小な円柱の積み重ねと仮定し、全ての円柱の体積を合算して液滴の体積を算出する。各円柱の高さをdhとし、同円柱の直径をD(h)として、液滴の体積Vの計算式は以下の式1となる。
【0005】
【数1】
【0006】
式1より、液滴の体積の算出に円柱の直径を2乗した値が用いられていることから、円柱の直径、即ち、影画像の水平方向の長さは、液滴の体積の算出値に対する感度が高い。
ここで、特許文献1には、チャンバーとイメージセンサとの間に、円筒レンズ(円筒凸レンズ)を設け、水平方向の長さを変えることなく、鉛直方向(即ち、液滴が落下する方向)の長さを圧縮した画像をイメージセンサに検出させる旨が記載されている。これによって、液滴の体積の計測への影響が大きい水平方向の長さは縮小することなく、イメージセンサによる鉛直方向の検出範囲を拡大して、イメージセンサが落下する液滴全体を確実に捉えられるようしている。そのため、特許文献1に記載の方法によれば、高精度な(例えば、誤差1%以下の)液滴の体積計測が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-072497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、イメージセンサで液滴を検出する際の収差を抑制するために光源からテレセントリック部材までの距離を長くする必要があった。その結果、光源からイメージセンサまでの距離が長くなり、装置全体が大きくなるという課題を招いていた。
なお、特許文献1に記載の方法による体積の測定対象は、液滴だけに限定されず、例えば、固体の体積も測定対象にすることができる。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、コンパクト化を図ることが可能な、測定対象物の体積測定装置及びそれを用いた体積測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う第1の発明に係る体積測定装置は、拡散する光を発する光源、及び、光が照射される測定対象物を影画像として検出するイメージセンサを有し、該影画像の形状及び大きさから該測定対象物の体積を導出する体積測定装置において、前記拡散する光を平行にして、前記測定対象物に照射させるテレセントリック部材と、前記光源から前記テレセントリック部材までの光の経路上に設けられ、該光の反射によって、該光の経路を長くする光路拡張部材とを備える。
【0010】
前記目的に沿う第2の発明に係る体積測定方法は、拡散する光を発する光源から、該拡散する光を平行にして前記測定対象物に照射させるテレセントリック部材までの光の経路上に、該光の反射によって、該光の経路を長くする光路拡張部材を設け、イメージセンサによって前記測定対象物を影画像として検出し、該影画像の形状及び大きさから該測定対象物の体積を導出する。
【0011】
前記目的に沿う第3の発明に係る体積測定方法は、透光性チャンバー内を移動する測定対象物の体積を測定する体積測定方法であって、前記測定対象物の移動方向に対し、光軸中心(拡散中心軸)が平行となるように光源から光を発し、該光源からの光を、光学部材により反射して前記チャンバーを一側から他側に透過させた後、反射部材で反射して該チャンバーを他側から一側に透過させ、前記光学部材による反射により、イメージセンサに案内し、該イメージセンサにより前記測定対象物を影画像として検出し、該影画像を基に該測定対象物の体積を導出する。
【0012】
前記目的に沿う第4の発明に係る体積測定方法は、測定対象物の体積を測定する体積測定方法であって、前記測定対象物が移動する方向あるいは前記測定対象物の長手方向に対し、光軸中心(拡散中心軸)が平行となるように光源から光を発し、該光源からの光を、光学部材により反射して前記測定対象物に向けて一側から照射させ、反射部材で反射して該測定対象物側に向けて他側から照射させ、前記光学部材による反射により、イメージセンサに案内し、該イメージセンサにより前記測定対象物を影画像として検出し、該影画像を基に該測定対象物の体積を導出する。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明に係る体積測定装置は、拡散する光を平行にして、測定対象物に照射させるテレセントリック部材と、光源からテレセントリック部材までの光の経路上に設けられ、光の反射によって、光の経路を長くする光路拡張部材とを備えるので、コンパクト化を図ることが可能である。また、第2の発明に係る体積測定方法は、拡散する光を発する光源から、拡散する光を平行にして測定対象物に照射させるテレセントリック部材までの光の経路上に、光の反射によって、光の経路を長くする光路拡張部材を設けるので、当該体積測定方法を適用できる装置のコンパクト化が可能である。
【0014】
そして、第3の発明に係る体積測定装置は、測定対象物の移動方向に対し、光軸中心が平行となるように光源から光を発し、光源からの光を、光学部材により反射してチャンバーを一側から他側に透過させた後、反射部材で反射してチャンバーを他側から一側に透過させ、光学部材による反射により、イメージセンサに案内するので、当該体積測定方法を適用できる装置のコンパクト化が可能である。更に、第4の発明に係る体積測定装置は、測定対象物が移動する方向あるいは測定対象物の長手方向に対し、光軸中心が平行となるように光源から光を発し、光源からの光を、光学部材により反射して測定対象物に向けて一側から照射させ、反射部材で反射して測定対象物側に向けて他側から照射させ、光学部材による反射により、イメージセンサに案内するので、当該体積測定方法を適用できる装置のコンパクト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係る体積測定装置の説明図である。
図2】同体積測定装置の説明図である。
図3】変形例に係る体積測定装置の説明図である。
図4】(A)、(B)はそれぞれ、水滴の体積の計測結果を示す説明図である。
図5】実験で得られた画像を示す説明図である。
図6】連続した状態で落下する液体の体積の計測を示す説明図である。
図7】液滴の体積の計測方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る体積測定装置10は、拡散する光を発する光源11、及び、光が照射される測定対象物の一例である液滴Wを影画像として検出するイメージセンサ12を有し、影画像の形状及び大きさから液滴Wの体積を導出する装置である。以下、詳細に説明する。
【0017】
本実施の形態において、体積測定装置10は、図1図2に示すように、拡散するレーザー光を発(出力)する光源11と、光源11から発せられたレーザー光が順に通過するビームスプリッタ13、ペンタプリズム(光路拡張部材の一例)14及びテレセントリックレンズ(テレセントリック部材の一例)15と、テレセントリックレンズ15を通過したレーザー光を反射する反射部材16と、反射部材16で反射され、テレセントリックレンズ15、ペンタプリズム14及びビームスプリッタ13を順に通過したレーザー光が入射する円筒レンズ17と、円筒レンズ17を通過したレーザー光を受光するイメージセンサ12とを備えている。イメージセンサ12としては、CMOSやCCDが好適に用いられる。また、単純に液滴のカウントや、液滴の通過、非通過の検出を行う場合には、イメージセンサ12に代えて、単なる受光素子(フォトディテクタ等)を用いてもよい。
【0018】
光源11はレーザー光においてはコヒーレントが低く拡散性のあるレーザー光を照射することが、各種特性を向上させる上で、有用であるが、装置の仕様等によっては、コヒーレントが高く拡散性の低いものを用いてもよい。なお、採用可能な光源はレーザー光以外の光を照射するもの、例えば、LEDでもよいが、指向性等の観点からレーザー光が好ましい。
【0019】
なお、光源11が発する光の波長としては、可視領域を含む赤外領域から紫外領域までの波長を取りうるが、コスト等を考慮すると、赤色のレーザー光を使用することが好ましい。また、測定する物体の種類(構成材料、含有物質等)に応じて、最適な波長を選択することが好ましい。また、本実施の形態では、光源11は一つとしたが、装置の仕様や組み立て工程の都合等により複数としてもよい。また、光源11を複数とした場合には、互いに異なる光を射出するように構成してもよい。
【0020】
ビームスプリッタ13は、ほぼキューブ状であり、光源11の上方(光源11とペンタプリズム14の間)に配され、対向する2つの平面がほぼ水平となるように配されている。ビームスプリッタ13において、水平に配された2つの平面のうち下側に設けられた面を、以下「下面13c」とし、上側に設けられた面を、以下「上面13d」とする。ビームスプリッタ13は、入射光を分割面13aで透過光と反射光とに分割する。
【0021】
ペンタプリズム14は、ビームスプリッタ13の上方に設けられ、水平に配された一の平面(以下、「下面14d」と言う)がビームスプリッタ13の上面13dに面接触した状態で固定されている。本実施の形態では、ペンタプリズム14の下面14dとビームスプリッタ13の上面13dとが、ビームスプリッタ13の屈折率と実質的に同じ屈折率の光学用接着剤によって接着されている。ペンタプリズム14は、図1に示すように、下面14dから入射した光が反射面14a及び反射面14bで2回反射して、下面14dに垂直な一の面(以下、「正面14c」と言う)から出るように設計されている。なお、本実施の形態では、ペンタプリズム14とビームスプリッタ13を光学用接着剤で接着したが、隙間を空けて配置してもよい。
【0022】
テレセントリックレンズ15は、一側の面が凸状であり、他側の面(以下、「背面」と言う)が平面あり、背面がペンタプリズム14の正面14cに密着している。ペンタプリズム14の下面14dに垂直な方向でペンタプリズム14に入射したレーザー光(以下、単に「光」とも言う)が、ペンタプリズム14の正面14cから、正面14cに対し垂直な(即ち、水平な)方向に出るのに対し、ペンタプリズム14の下面14dに非垂直な方向でペンタプリズム14に入射した光は、ペンタプリズム14の正面14cから、当該正面14cに対し非垂直な(即ち、水平でない)方向に出る。テレセントリックレンズ15は、ペンタプリズム14の正面14cから当該正面14cに対し垂直な方向に出る光及び非垂直な方向に出る光を共に水平(即ち、平行)にして通過させる。
【0023】
即ち、テレセントリックレンズ15は、ペンタプリズム14の正面14cから出てくる光を平行光に変換する。なお、本実施の形態では、テレセントリックレンズ15とペンタプリズム14とを当接させて、光学用接着剤で接着させたが、装置の仕様や組み立て工程の都合等により、テレセントリックレンズ15とペンタプリズム14とを隙間を設けて配置してもよい。また、本実施の形態では、テレセントリックレンズ15とペンタプリズム14を別部材として構成したが、テレセントリックレンズ及びペンタプリズムの双方の機能を有する一つの光学部材を設けてもよい。例えば、ペンタプリズム14の正面14c部分に加工を施し、テレセントリックレンズと同じ機能を生じさせることによって、当該光学部材を形成できる。この場合、部品点数が減少し、或いは位置決め工程を削減できコスト的にも有利になる。
【0024】
反射部材16は、ガラス板に蒸着により金属膜を形成したもので、ペンタプリズム14及びテレセントリックレンズ15と同じ高さ位置で、テレセントリックレンズ15から距離を有する位置に鉛直に配されている。なお、光源11、ビームスプリッタ13、ペンタプリズム14、テレセントリックレンズ15及び反射部材16は図示しない部材によって支持されているのは言うまでもない。
【0025】
テレセントリックレンズ15及び反射部材16の間には、内側空間内で液滴Wが間欠的に落下する点滴装置の透光性を有するチャンバーTが設けられている。
ビームスプリッタ13の鉛直に配された一の面(以下、「背面13b」と言う)には、像を鉛直方向に縮小する円筒レンズ17が面接触した状態で固定され、ビームスプリッタ13及び円筒レンズ17と同じ高さには円筒レンズ17から距離を有する位置に、イメージセンサ12が設けられている。
【0026】
また、円筒レンズ17は、ビームスプリッタ13に当接した状態で、光学接着剤を用いて接合されているが、ビームスプリッタ13と円筒レンズ17の間に隙間を設けて固定してもよい。この場合、当接した状態とするか隙間を設けるかは、装置の仕様や組み立て工程などにより適宜選択される。また、本実施の形態では、ビームスプリッタ13と円筒レンズ17を別体で構成したが、ビームスプリッタ13の背面13b部分を加工して円筒レンズ17とほぼ同じ機能を有する光学部材を形成してもよい。この場合、部品点数が減少し、或いは位置決め工程を削減できコスト的にも有利になる。
【0027】
光源11から発せられた拡散する光は、上方に進み、ビームスプリッタ13の下面13cからビームスプリッタ13に入射し、ビームスプリッタ13内の分割面13aで分割され、分割された一方(本実施の形態では、分割面13aを透過した透過光)がビームスプリッタ13の上面13dから出る。ビームスプリッタ13の上面13dから出た光は、ペンタプリズム14の下面14dからペンタプリズム14内に入射し、反射面14aで反射し、更にその先で、反射面14bで反射した後、即ち2回反射した後、ペンタプリズム14の正面14cから出て、テレセントリックレンズ15に入射する。
【0028】
よって、光源11とペンタプリズム14の間に設けられたビームスプリッタ13は、光源11が発する光を分割し透過光及び反射光のいずれか一方からなる分割光をペンタプリズム14に向かわせる。また、ペンタプリズム14を設けて光を反射させてテレセントリックレンズ15に向かわせることによって、光源11からの光が反射されずにテレセントリックレンズ15に向かうようにする場合に比べ、光源11からテレセントリックレンズ15までの光の経路を長くする。即ち、ペンタプリズム14は、光の反射によって、光源11からテレセントリックレンズ15までの光の経路を長くする。
【0029】
テレセントリックレンズ15に入射した光はテレセントリックレンズ15を通過し、一部が液滴Wに当たり、それ以外の光が、図1図2に示すように、反射部材16に直接当たり、実質的に全反射される。従って、テレセントリックレンズ15は、ペンタプリズム14の正面から出て拡散する光を平行(本実施の形態では、水平)にして、液滴Wに照射させる。
【0030】
反射部材16で反射された光は、テレセントリックレンズ15に向けて水平に進み、テレセントリックレンズ15を通過して鉛直方向の成分が変わりペンタプリズム14の正面14cからペンタプリズム14内に入射する。そのため、反射部材16は、テレセントリックレンズ15を介して液滴W(チャンバーT)に照射された光の進行方向下流側に設けられて、光をペンタプリズム14に向けて反射することとなる。
ペンタプリズム14内に入射した光は、反射面14bで反射し、更にその先で、反射面14aで反射した後、即ち2回反射した後、鉛直に進み、ペンタプリズム14の下面14dから出てビームスプリッタ13の上面13dからビームスプリッタ13に入射する。
【0031】
ビームスプリッタ13に入射した光は、ビームスプリッタ13内の分割面13aで分割され、分割された一方の光(本実施の形態では、分割面13aで反射された光)がビームスプリッタ13の鉛直に配された背面13bから水平に出る。ビームスプリッタ13の背面13bから出た光は、円筒レンズ17の平面側から円筒レンズ17に入射し、円筒レンズ17の凸側から出る際に、鉛直方向の成分が変えられて(円筒レンズ17の高さ方向中央に入射した光のみ、鉛直方向の成分は変わらない)、イメージセンサ12に向かう。
【0032】
イメージセンサ12は、円筒レンズ17から出た光を受光して液滴Wが影として表れる影画像を検出する。よって、イメージセンサ12は、反射部材16で反射され、ペンタプリズム14で更に反射され(即ち、反射部材16及びペンタプリズム14による反射によって光の経路を長くされ)、ビームスプリッタ13で分割された透過光及び反射光の他方からなる分割光(本実施の形態では、反射光)をとらえることとなる。
【0033】
ここで、テレセントリックレンズ15を用いて、ペンタプリズム14の正面14cから拡散しながら出る光を水平にするのは、光が照射される液滴Wのペンタプリズム14までの距離が液滴Wごとに異なっても、同じ大きさの液滴Wであれば、イメージセンサ12により検出される液滴Wの影画像が同じ大きさとなるようにするためである。
また、円筒レンズ17は、イメージセンサ12に検出される全体画像(イメージセンサ12の検出範囲全体で検出される画像)の鉛直成分を縮小して、イメージセンサ12により検出可能な領域を鉛直方向に拡大し、イメージセンサ12が落下する液滴Wを安定的にとらえられるようにしている。
【0034】
イメージセンサ12には、イメージセンサ12により検出された液滴Wの影画像を取得する演算部18が接続されている。演算部18は、CPU及び記憶装置等によって構成でき、液滴Wの影画像を二値化等の画像処理を行い、液滴Wに対応する画素を検知し、影画像の形状及び大きさを基に式1の計算式を用いて、液滴Wの体積を算出する。
【0035】
ここまで説明した体積測定装置10は、光路拡張部材にペンタプリズム14を採用しているが、光路拡張部材は、光の反射により光路長を長くするものであればよく、ペンタプリズム14には限定されない。例えば、ペンタプリズム14の代わりに、図3に示すように、三角プリズム21を光路拡張部材として採用して体積測定装置20を設計してもよい。なお、体積測定装置20において、体積測定装置10と同様の構成については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0036】
三角プリズム21は、光の反射回数が、光源11から反射部材16までの往路で1回及び反射部材16からイメージセンサ12までの復路で1回の合計2回であることから、光の反射回数が光の往路及び復路で合計4回のペンタプリズム14と比較して、光路の拡張幅が小さい。そのため、状況に応じて、ビームスプリッタ13及び三角プリズム21の間や三角プリズム21及びテレセントリックレンズ15の間に空間を設ける等して光源11からイメージセンサ12までの光路(光の経路)長を確保する必要がある。
【0037】
これに関連して、ビームスプリッタ13及びテレセントリックレンズ15を三角プリズム21(又はペンタプリズム14)に密着させて固定する場合は、ビームスプリッタ13及びテレセントリックレンズ15を三角プリズム21(又はペンタプリズム14)に非密着状態で固定する場合に比べて、光源11の光の照射方向や、光源11、ビームスプリッタ13、三角プリズム21(又はペンタプリズム14)及びテレセントリックレンズ15等の相対的な位置の調整が容易であることが確認されている。
【0038】
また、体積測定装置10を用いた体積測定方法は、図1図2に示すように、拡散する光を発する光源11から、拡散する光を平行にして液滴(測定対象物の一例)Wに照射させるテレセントリックレンズ(テレセントリック部材の一例)15までの光の経路上に、光の反射によって、光の経路を長くするペンタプリズム(光路拡張部材の一例)14を設け、イメージセンサ12によって液滴Wを影画像として検出し、影画像の形状及び大きさから液滴Wの体積を導出する方法となる。
【0039】
ここで、別の視点においては、本実施の形態において、装置の小型化などを実現するべく、チャンバーT内を移動する測定対象物の一例である液滴Wの移動方向に対し、光軸中心(拡散中心軸)が平行(特性や光学構成が大幅に変わらない程度で若干非平行となるほぼ平行状態も含む)となるように光源11から拡散する光を発し、光源11からの光を、各種光学部材(ビームスプリッタ13、ペンタプリズム14、テレセントリックレンズ15、円筒レンズ17等)により反射してチャンバーTを一側から他側に透過させた後、反射部材16で反射してチャンバーTを他側から一側に透過させ、光学部材による反射により、イメージセンサ12に案内し、イメージセンサ12により液滴Wを影画像として検出し、影画像を基に液滴Wの体積を導出する構成としている。この構成により、光路をコンパクトにでき、装置の小型化が可能となる。
【0040】
また、本実施の形態においては、光源11からの光が液滴W(即ち、測定対象物)の移動方向(鉛直方向下向き)に対して逆方向(鉛直方向上向き)に出射されているが、これに限定されない。例えば、各種光学部材の配置を上下に反転させることで、光源をペンタプリズムの上方に配置し、液滴Wの移動方向に対して順方向(即ち、鉛直方向下向き)に光を出射する構成としてもよい。なお、各種光学部材自体は、光学ガラスや樹脂等の透明な材料で構成することが好ましく、樹脂等で成形して構成することで、生産性等を向上させることができる。
更に別の視点として、チャンバーTを挟んで、一側に反射部材16を配置し、他側にペンタプリズム14等の各種光学部材、光源11及びイメージセンサ12をそれぞれ配置する構成として、他側(一方側)に主要部材を集めることで、部材間の距離が短くなり、取り付け精度や取り付け易さ等を向上させることができ、生産性が向上する。
【実施例0041】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験について説明する。
実験では、光路拡張部材にエドモンド・オプティクス・ジャパン社製のTS N-BK7 ペンタプリズム15mm VIS 0°のペンタプリズムを用い、ビームスプリッタにエドモンド・オプティクス・ジャパン社製のTSキューブ型 B/S 50R/50T 15mmを用い、テレセントリックレンズにエドモンド・オプティクス・ジャパン社製のTTS 平凸レンズ 15x100 INKを用い、円筒レンズにエドモンド・オプティクス・ジャパン社製のTS照明用シリンダーレンズ 12.5x25x15を用いて、点滴装置のチャンバー内を落下する水滴の体積を計測した。
【0042】
水滴の体積の計測は、水滴の滴下量(滴下速度)が約19.8ml/hの低速の場合と、約617ml/hの高速の場合とでそれぞれ10滴ずつ行った。それぞれの計測結果を図4(A)、(B)に示す。なお、図4(A)、(B)中の「平均値からの誤差」の「平均値」は低速の場合及び高速の場合それぞれにおいて計測された10滴の水滴の体積の平均値を意味する。実験結果より、低速の場合及び高速の場合で共に、平均値からの誤差が±2%未満となった。
また、実際にイメージセンサが得た影画像22及びその影画像22を二値化処理した画像23を図5に示す。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、体積測定装置によって体積が計測される測定対象物は、液滴に限定されず、固形物であってもよいし、図6に示すように、蛇口24から出て連続した状態で落下する液体W’でもよい。更に、測定対象物は落下物に限定されず、静止している物体であってもよい。なお、連続した状態で落下する液体W’の体積(単位時間当たりの流量)は、液体W’の異なる高さ位置の幅L1、L2から求めることができる。
また、光源、光路拡張部材、テレセントリック部材及びイメージセンサをそれぞれ複数個、設けても良い。それらをそれぞれ複数個設けることによって、各イメージセンサが測定対象物を異なる角度から検出できるようになり、様々な形状(即ち、回転対称ではない形状)の測定対象物の体積を計測可能となる。
【0044】
また、測定対象物はチャンバー内を落下するものに限定されない。例えば、測定対象物は、液体等を送る配管であってもよい。この場合、光を配管の幅よりも広めになるように照射し、反射部材によって反射させて、配管の形状などの変化(膨張、縮小、変形等)をイメージセンサにより検出する。これによって、体積測定装置を配管の劣化等の検出の用途にも用いることができる。即ち、何らかの原因により、配管に不具合が生じた場合、配管の状況が体積変化という形で現れる可能性が高く、本装置や方法により、体積を測定することで、不具合などを事前に察知可能となる。
【0045】
この場合、光軸中心が、配管の長手方向に対し、平行となるように光源から光を発し、光源からの光を、光学部材により反射して配管に向けて一側から照射させ、反射部材で反射して配管に向けて他側から照射させ、光学部材による反射により、イメージセンサに案内し、イメージセンサにより配管を影画像として検出し、影画像を基に配管の体積を導出するようにすれば、装置全体のコンパクト化が図れる。
また、本装置や方法は、人体に薬液などを注入する点滴装置や、通常ポンプや小型ポンプの流量測定にも適応可能であり、冷却デバイスの液量測定にも適応可能である。
【符号の説明】
【0046】
10:体積測定装置、11:光源、12:イメージセンサ、13:ビームスプリッタ、13a:分割面、13b:背面、13c:下面、13d:上面、14:ペンタプリズム、14a、14b:反射面、14c:正面、14d:下面、15:テレセントリックレンズ、16:反射部材、17:円筒レンズ、18:演算部、20:体積測定装置、21:三角プリズム、22:影画像、23:画像、24:蛇口、T:チャンバー、W:液滴、W’:液体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7