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特開2023-18453バイオマスの処理利用設備、及び、バイオマスの処理利用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018453
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】バイオマスの処理利用設備、及び、バイオマスの処理利用方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20230201BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C10B53/02
F27D17/00 104K
F27D17/00 101D
F27D17/00 104G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122601
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 潔
(72)【発明者】
【氏名】大高 円
【テーマコード(参考)】
4H012
4K056
【Fターム(参考)】
4H012JA00
4K056AA14
4K056BA06
4K056BB03
4K056BB10
4K056CA11
4K056DA02
4K056DA13
4K056DA32
4K056DA39
(57)【要約】
【課題】バイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備において、発電を実行した状態で、カーボンネガティブを実現する。
【解決手段】バイオマスを炭化して炭化物とする炭化設備11と、炭化物を貯蔵する貯蔵手段13と、炭化により発生した熱分解ガスが利用される火力発電設備1とを備え、炭化設備11での熱分解ガスを発電の熱源とし、熱分解ガスを利用した分を、カーボンニュートラルの状態での発電とし、炭化物を貯蔵することで、大気からバイオマスに吸収されたCOの大気への放出を抑制し、カーボンネガティブとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを炭化して炭化物とする炭化手段と、
前記炭化手段で炭化された炭化物を貯蔵する貯蔵手段と、
前記炭化手段で発生した熱分解ガスが利用される発電手段と、
前記熱分解ガスを前記発電手段に供給する供給手段と
を備えたことを特徴とするバイオマスの処理利用設備。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマスの処理利用設備において、
前記炭化手段の炭化の熱源は、
前記発電手段で発生した熱を含む
ことを特徴とするバイオマスの処理利用設備。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載のバイオマスの処理利用設備において、
前記炭化手段で発生した熱分解ガスの一部が供給される熱風発生手段を備え、
前記炭化手段の炭化の熱源は、
前記熱風発生手段で発生した熱を含む
ことを特徴とするバイオマスの処理利用設備。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、
前記供給手段は、
前記熱分解ガスを改質する改質手段を有している
ことを特徴とするバイオマスの処理利用設備。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、
前記発電手段は、
蒸気を発生させるボイラを有し、
前記供給手段は、
前記炭化手段が前記ボイラの火炉に配されて前記熱分解ガスを前記火炉に排出する構成となっている
ことを特徴とするバイオマスの処理利用設備。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、
前記発電手段は、
燃焼器からの燃焼ガスを膨張させる発電機を駆動させる膨張タービンを有している
ことを特徴とするバイオマスの処理利用設備。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、
前記発電手段は、
燃料を着火させて駆動される内燃機関を有している
ことを特徴とするバイオマスの処理利用設備。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、
前記貯蔵手段は、
前記炭化物を土壌にすき込む手段を含む
ことを特徴とするバイオマスの処理利用設備。
【請求項9】
発電の排熱を利用してバイオマスを炭化して炭化物を貯蔵し、炭化の際に発生する熱分解ガスを発電の動力源として利用する
ことを特徴とするバイオマスの処理利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電を実行した状態で、カーボンネガティブを実現するバイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備、及び、バイオマスの処理利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素排出量の削減は地球規模で取り組むべき課題であり、発電の分野では、化石燃料依存からの脱却が求められている。例えば、火力発電所では、再生可能な生物由来有機物であるバイオマスの燃料利用が検討されている。特に、成型や熱処理により燃料化されたバイオマスの利用が活発化されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の技術を適用することで、COの排出量を削減した状態で電力を得ることが可能になる。
【0003】
我が国では、2050年のカーボンニュートラルを目指している。また、温室効果ガス削減に関する国際的な取り決めである、パリ協定の科学的裏付けとなるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告書では、ネガティブエミッションテクノロジーの利用が想定されており、バイオマスを利用したネガティブエミッション技術の活用が不可欠な状況である。
【0004】
このため、発電プロセスにおけるCO排出量を低減し、カーボンニュートラルを達成することが期待されている。また、CO排出量の更なる削減によりカーボンネガティブな状態での発電プロセスが求められるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-2750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、バイオマスを用いたバイオマスの処理利用設備において、発電を実行した状態で、カーボンネガティブを実現することができるバイオマスの処理利用設備、及び、バイオマス処理利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のバイオマスの処理利用設備は、バイオマスを炭化して炭化物とする炭化手段と、前記炭化手段で炭化された炭化物を貯蔵する貯蔵手段と、前記炭化手段で発生した熱分解ガスが利用される発電手段と、前記熱分解ガスを前記発電手段に供給する供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、炭化手段での熱分解ガスを発電の熱源とすることで、熱分解ガスを利用した分は、カーボンニュートラルの状態での発電となる。炭化した炭化物を貯蔵することで、光合成によって大気からバイオマスに固定された炭素が再びCOとして大気に放出されることが抑制され、炭素を固定した炭化物が貯留されることでカーボンネガティブとなる。
【0009】
尚、バイオマスを炭化して得られる熱分解ガスを用いて熱(蒸気)を発生させて熱利用する場合でも、例えば、給湯、暖房、殺菌、家庭用、工業用として熱利用する場合であっても、本願発明の技術を用いることができる。
【0010】
このため、バイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備(発電の設備、貯蔵の設備)において、発電を実行した状態でカーボンネガティブを実現することが可能になる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明のバイオマスの処理利用設備は、請求項1に記載のバイオマスの処理利用設備において、前記炭化手段の炭化の熱源は、前記発電手段で発生した熱を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、発電手段の排熱を炭化の熱源として利用することができる。
【0013】
また、請求項3に係る本発明のバイオマスの処理利用設備は、請求項1もしくは請求項2に記載のバイオマスの処理利用設備において、前記炭化手段で発生した熱分解ガスの一部が供給される熱風炉を備え、前記炭化手段の炭化の熱源は、前記熱風炉で発生した熱を含むことを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、発電手段の排熱、及び/または、熱風炉の燃焼排ガスの熱を炭化の熱源として利用することができる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明のバイオマスの処理利用設備は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、前記供給手段は、前記熱分解ガスを改質する改質手段を有していることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、改質手段により熱分解ガスを改質して発電手段に送ることができ、熱分解ガスを発電手段の燃料として利用することができる。
【0017】
また、請求項5に係る本発明のバイオマスの処理利用設備は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、前記発電手段は、蒸気を発生させるボイラを有し、前記供給手段は、前記炭化手段が前記ボイラの火炉に配されて前記熱分解ガスを前記火炉に排出する構成となっていることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、炭化手段がボイラに配され、熱分解ガスがボイラの火炉に直接排出されて供給され、ボイラの火炉の熱が炭化手段の炭化の熱源となる。
【0019】
また、請求項6に係る本発明のバイオマスの処理利用設備は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、前記発電手段は、燃焼器からの燃焼ガスを膨張させる発電機を駆動させる膨張タービンを有していることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る本発明では、燃焼器からの燃焼ガスを膨張させて電力を得る膨張タービン(ガスタービン)を有する既存の発電手段に適用することができる。膨張タービンを有する発電手段としては、排熱回収ボイラを介してガスタービンと蒸気タービンを複合させた既存の複合発電手段や、石炭ガス化ガスを燃料として用いる既存の複合発電手段(IGCC)に適用することができる。
【0021】
既存の発電手段に適用する場合、既存設備を適用できるため、石炭を燃料とする発電設備であっても、カーボンネガティブの実現に適用する可能性を与え、既存の石炭利用設備の付加価値を高めることができる。
【0022】
また、請求項7に係る本発明のバイオマスの処理利用設備は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、前記発電手段は、燃料を着火させて駆動される内燃機関を有していることを特徴とする。
【0023】
請求項7に係る本発明では、バイオマスの処理利用設備として、燃料を着火させて駆動される内燃機関(ガスエンジン)を適用することができ、幅広い発電出力の発電に対応することができる。
【0024】
また、請求項8に係る本発明のバイオマスの処理利用設備は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバイオマスの処理利用設備において、前記貯蔵手段は、前記炭化物を土壌にすき込む手段を含むことを特徴とする。
【0025】
請求項8に係る本発明では、炭化物を土壌にすき込むことで(貯めることで)、光合成によって大気からバイオマスに固定された炭素が再びCOとして大気に放出されることを抑制することで、カーボンネガティブとすることができる。炭化物を貯蔵する貯蔵手段としては、炭化物を圧縮成形して廃坑等に埋め込んで貯蔵する手段を用いることも可能である。その他、貯蔵手段として、炭化物を貯めるもの以外で、家具、板材、ろか剤、消臭剤、接着剤などに利用する手段を用いることができる。
【0026】
上記目的を達成するための請求項9に係る本発明のバイオマスの処理利用方法は、発電の排熱を利用してバイオマスを炭化して炭化物を貯蔵し、炭化の際に発生する熱分解ガスを発電の動力源として利用することを特徴とする。
【0027】
請求項9に係る本発明では、発電の排熱でバイオマスから炭化物を製造して貯蔵し、炭化で発生する熱分解ガスを発電の動力源として利用する。このため、バイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備において、発電を実行した状態で、カーボンネガティブを実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のバイオマスの処理利用設備、及び、バイオマスの処理利用方法は、バイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備において、発電を実行した状態で、カーボンネガティブを実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施例に係るバイオマスの処理利用設備の概略構成図である。
図2図1中の要部の説明図である。
図3】本発明の第2実施例に係るバイオマスの処理利用設備の概略構成図である。
図4】本発明の第3実施例に係るバイオマスの処理利用設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1図2に基づいて本発明の第1実施例を説明する。
【0031】
図1には蒸気タービンを用いた発電設備とバイオマスを炭化する炭化設備を有するバイオマスの処理利用設備の全体の構成を説明するための概略の系統、図2には図1中のボイラの部位の概略の構成を示してある。
【0032】
図1に示すように、発電手段としての火力発電設備1(石炭火力発電設備)は、石炭(微粉炭)が火炉2に投入されて蒸気を発生させるボイラ3を有している。ボイラ3で発生した高温・高圧の蒸気は蒸気タービン4に送られて膨張され(蒸気タービン4が駆動され)、発電機5が運転されて発電が実行される。尚、ボイラ3の燃料として、重油を用いた構成にすることも可能である。
【0033】
蒸気タービン4で仕事を終えた排気蒸気は、復水器6で凝縮され、給水ポンプの駆動によりボイラ3の低圧側の機器(熱交換器)に給水される。ボイラ3の排ガスは所定の排煙処理が施されて大気に放出される。
【0034】
火力発電設備1は、二酸化炭素(CO)を固定したバイオマスを炭化する炭化手段としての炭化設備11を有している。炭化設備11はバイオマスが供給されて直接加熱する加熱ドラム12(例えば、内部に羽根が設けられたスクリューフィーダー式のドラム)を有している。
【0035】
加熱ドラム12が加熱されることで、内部のバイオマスが炭化される。炭化により発生した熱分解ガスは、加熱ドラム12の放出穴からボイラ3の火炉2に放出され、蒸気の発生に利用される。炭化物は所望の貯蔵手段13に貯蔵される。
【0036】
具体的には、図2に示すように、炭化設備11の加熱ドラム12はボイラ3の火炉2の中に配設されている(供給手段)。炭化の熱源(炭化熱源)は、ボイラ3の火炉2の熱が利用される(図中⇒で示してある)。炭化により発生した熱分解ガスは火炉2の中に直接送られる(図中→で示してある)。
【0037】
炭化設備11の熱源としては、加熱ドラム12の内部に過熱水蒸気を供給する手段を用いることも可能である。また、炭化設備11の熱源としては、COを含む高温ガスを供給する手段を用いることも可能である。
【0038】
炭化設備11で発生した熱分解ガスがボイラ3の火炉2に送られ、蒸気の発生に利用されるため、熱分解ガスを利用した分は(熱分解ガスに由来する分は)、カーボンニュートラルの状態での発電となる。炭化した炭化物が貯蔵手段13に貯蔵されるため、バイオマスに固定された炭素が再びCOとして大気に放出されることを抑制することで、カーボンネガティブとなる。
【0039】
貯蔵手段13の具体的な例としては、炭化物を土壌にすき込む手段(貯める手段)を適用することができる。炭化物を貯蔵する貯蔵手段としては、炭化物を圧縮成形して廃坑等に埋め込んで貯蔵する手段を用いることも可能である。その他、貯蔵手段として、炭化物を貯めるもの以外で、また、貯蔵として、家具、パーティクルボード等の板材、ろか剤、消臭剤、接着剤等に適用することができる。
【0040】
上記構成のバイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備(蒸気タービンを用いた発電設備とバイオマスを炭化する炭化設備を有するバイオマスの処理利用設備)において、蒸気タービン4の駆動による発電を実行した状態で(熱分解ガスを利用した発電)、カーボンネガティブを実現することが可能になる。
【0041】
そして、炭化設備11の加熱ドラム12をボイラ3の火炉2の中に配設したので、火炉2の熱を炭化の熱源として利用することができる。また、炭化により発生した熱分解ガスが火炉2の中に直接送られるので、熱分解ガスの搬送経路が不要で、凝縮性ガスである熱分解ガスの凝縮成分を燃焼させることができる。
【0042】
尚、上記実施例では、炭化設備11として、加熱ドラム12にバイオマスを投入し、加熱ドラム12を加熱する直接加熱形式の設備を例に挙げて説明したが、加熱ドラムの内側に回転ドラムを設け、回転ドラムにバイオマスを供給すると共に、加熱ドラムと回転ドラムの間に熱風等の加熱源を供給する間接加熱形式の設備を用いることも可能である。
【0043】
図3に基づいて本発明の第2実施例を説明する。
【0044】
図3には石炭ガス化複合発電設備とバイオマスを炭化する炭化設備を有するバイオマスの処理利用設備の全体の構成を説明するための概略の系統を示してある。
【0045】
石炭ガス化複合発電設備21は、石炭ガス化炉22を備え、石炭ガス化炉22では石炭と酸化剤(酸素、空気)の反応により生成ガスgが生成される。生成ガスgは除塵、温度調整され、ガス精製手段23で精製されて燃料ガスfとされる。
【0046】
燃料ガスfはガスタービン設備24の燃焼器25に送られる。即ち、ガスタービン設備24は、圧縮機26、及び、膨張タービン27を備え、圧縮機26で圧縮された圧縮空気と燃料ガスfが燃焼器25に送られる。燃焼器25では燃料ガスfが燃焼され、燃焼ガスが膨張タービン27に送られて膨張されて動力が得られる。膨張タービン27で仕事を終えた排気ガスは排熱回収ボイラ28で熱回収され、排煙処理された後に大気に放出される。
【0047】
圧縮機26、及び、膨張タービン27と蒸気タービン29が同軸状態で接続され、蒸気タービン29には発電機30が接続されている。排熱回収ボイラ28には蒸気タービンで仕事を終えた排気蒸気に由来する復水が給水され、排熱回収ボイラ28で発生した蒸気は蒸気タービン29に送られて動力が得られる。
【0048】
直列に接続された膨張タービン27、及び、蒸気タービン29の動力により発電機30が運転され、膨張タービン27、及び、蒸気タービン29による複合発電が実行される。
【0049】
石炭ガス化複合発電設備21は、二酸化炭素を固定したバイオマスを炭化する炭化手段としての炭化設備31を有している。炭化設備31は、バイオマスが供給されて直接加熱する加熱ドラム32を有している。炭化設備31の炭化のための熱源としては、石炭ガス化複合発電設備21で得られる熱源が用いられる。もしくは、別途、熱風炉等を設けることも可能である。石炭ガス化複合発電設備21で得られる熱源と熱風炉の熱源を併用することも可能である。
【0050】
加熱ドラム32が加熱されることで、バイオマスが炭化され、炭化により発生した熱分解ガスは、石炭ガス化炉22で改質されてガス精製手段23で精製され燃料ガスfとされる(供給手段)。炭化物は所望の貯蔵手段33に貯蔵される(第1実施例の貯蔵手段13参照)。炭化設備31の燃焼排ガスは、必要に応じて石炭ガス化複合発電設備21に導入される、もしくは、大気に放出されるようになっている。
【0051】
炭化設備31で発生した熱分解ガスが石炭ガス化炉22に送られ、生成ガスgの一部となり、ガス精製手段23により、燃料ガスfとされて発電に利用されるので、熱分解ガスを利用した分は、カーボンニュートラルの状態での発電となる。炭化した炭化物が貯蔵手段33に貯蔵されるため、バイオマスに固定された炭素が再びCOとして大気に放出されることを抑制することで、カーボンネガティブとなる。
【0052】
尚、図に点線で示すように、熱分解ガスを改質する改質手段を設け、改質手段で改質したガスを燃焼器25の燃料として用いることも可能である。
【0053】
上記構成のバイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備(石炭ガス化複合発電設備とバイオマスを炭化する炭化設備を有するバイオマスの処理利用設備)において、膨張タービン27、及び、蒸気タービン29による複合発電を実行した状態で(熱分解ガスを利用した発電)、カーボンネガティブを実現することが可能になる。
【0054】
そして、既存の設備としての石炭ガス化複合発電設備21に適用しても、既存設備を活用することができるうえ、石炭を燃料とする発電設備であっても、CO排出量を削減することができ、カーボンネガティブを実現することが可能となる。
【0055】
図4に基づいて本発明の第3実施例を説明する。
【0056】
図4にはLNGを燃料とした発電設備とバイオマスを炭化する炭化設備を有するバイオマスの処理利用設備の全体の構成を説明するための概略の系統を示してある。
【0057】
ガスタービン発電設備41は、圧縮機42、及び、膨張タービン43を備え、圧縮機42で圧縮された圧縮空気と燃料であるLNGが燃焼器44に送られる。燃焼器44では燃料が燃焼され、燃焼ガスが膨張タービン43に送られて膨張されて動力が得られる。膨張タービン43で仕事を終えた排気ガスは排煙処理された後に大気に放出される。
【0058】
膨張タービン43には発電機45が接続されて、膨張タービン43の動力により発電機45が運転され、発電が実行される。
【0059】
ガスタービン発電設備41は、二酸化炭素を固定したバイオマスを炭化する炭化手段としての炭化設備51を有している。炭化設備51は、バイオマスが供給されて直接加熱する加熱ドラム52を有している。炭化設備51の炭化のための熱源を得るため、熱風発生手段としての熱風炉53が設けられている。熱風炉53には炭化により発生した熱分解ガスの一部が送られる。
【0060】
尚、熱風炉53は、炭化設備51と一体の機器とすることができる。また、熱風発生手段として炭化設備51から独立して設けられた機器を用いることもできる。
【0061】
加熱ドラム52が加熱されることで、バイオマスが炭化され、炭化により発生した熱分解ガスは、改質手段54で改質されて燃料ガスとされ、燃焼器44に送られる(供給手段)。炭化物は所望の貯蔵手段55に貯蔵される(第1実施例の貯蔵手段13参照)。炭化設備51の燃焼排ガスは、必要に応じてガスタービン発電設備41に導入される、もしくは、大気に放出されるようになっている。
【0062】
炭化設備51で発生した熱分解ガスが改質手段54に送られ、燃料ガスとされて発電に利用されるので、熱分解ガスを利用した分は、カーボンニュートラルの状態での発電となる。炭化した炭化物が貯蔵手段55に貯蔵されるため、バイオマスに固定された炭素が再びCOとして大気に放出されることを抑制することで、カーボンネガティブとなる。
【0063】
上記構成のバイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備(LNGを燃料とした発電設備とバイオマスを炭化する炭化設備を有するバイオマスの処理利用設備)において、膨張タービン43による発電(熱分解ガスを利用した発電)を実行した状態で、カーボンネガティブを実現することが可能になる。
【0064】
そして、既存の設備としてのガスタービン発電設備41に適用しても、既存設備を活用することができるうえ、LNGを燃料とする発電設備であっても、CO排出量を削減することができ、カーボンネガティブを実現することが可能となる。
【0065】
尚、上述した第3実施例において、ガスタービン発電設備41に代えて、燃料を着火させて駆動される内燃機関(ガスエンジン)を有している発電設備を適用することも可能である。ガスエンジンを適用することで、幅広い発電出力の発電に対応することができる。
【0066】
上述した発電設備とバイオマスを炭化する炭化設備を有するバイオマスの処理利用設備は、発電を実行した状態で、カーボンネガティブを実現することが可能になる。
【0067】
上述した各実施例で用いるバイオマスとしては、コーンストーバー、バガスなどの農作物残渣、ソルガムやネピアグラスなどの栽培バイオマス、トウヒやアカシアなどの木質バイオマス、ススキなどの草本バイオマス、紙くず、生ごみなどの可燃ごみを適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、カーボンネガティブを実現するバイオマス燃料を用いたバイオマスの処理利用設備、及び、バイオマスの処理利用方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 火力発電設備(石炭火力発電設備)
2 火炉
3 ボイラ
4 蒸気タービン
5、30、45 発電機
6 復水器
11、31、51 炭化設備
12、32、52 加熱ドラム
13、33、55 貯蔵手段
21 石炭ガス化複合発電設備
22 石炭ガス化炉
23 ガス精製手段
24 ガスタービン設備
25、44 燃焼器
26、42 圧縮機
27、43 膨張タービン
28 排熱回収ボイラ
29 蒸気タービン
41 ガスタービン発電設備
53 熱風炉
54 改質手段
図1
図2
図3
図4