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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184545
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】組成物、膜、積層体および表示装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 245/08 20060101AFI20231221BHJP
   C07D 513/04 20060101ALI20231221BHJP
   C07D 277/66 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C07C245/08 CSP
C07D513/04 301
C07D277/66
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175902
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2019184113の分割
【原出願日】2019-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019135645
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 京佑
(57)【要約】
【課題】偏光板の二色比の低下を抑制できる組成物を提供する。
【解決手段】式(1)の化合物と、重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物を含む組成物である。nは1または2を表す。Ar1、Ar2およびAr3は1,4-フェニレン基または2価の含硫黄芳香族複素環基を表す。Ar1およびAr2の少なくとも一方がフッ素原子を有する。R1は-N=N-を表す。Rはアルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。Rは、アルカンジイルオキシ基、アルカンジイルオキシカルボニル基およびアルカンジイルカルボニルオキシ基から選ばれる基を表す。R4は、ラジカル重合性基または水素原子を表す。
-R-Ar-(-R-Ar-)-N=N-Ar-R (1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
-R-Ar-(-R-Ar-)-N=N-Ar-R (1)
[式(1)中、nは、1または2の整数を表す。
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよい2価の含硫黄芳香族複素環基を表し、ArおよびArの少なくとも一方が、置換基として1個または2個のフッ素原子を有する。
は、-N=N-を表す。
は、ラジカル重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基、またはラジカル重合性基を有していてもよいアルコキシ基を表す。
は、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。
は、ラジカル重合性基または水素原子を表す。
nが2である場合、2個あるRは互いに同一であっても相異なっていてもよく、2個あるArは互いに同一であっても相異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記式(1)中、nが1である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
極大吸収波長を420nm以上520nm以下の範囲に有する請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記2価の含硫黄芳香族複素環基は、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、チエノフラン、チエノチオフェン、フロチアゾール、チエノチアゾール、およびベンゾチアゾールからなる群から選択される含硫黄芳香族複素環化合物から2個の水素原子を除いて形成される基である請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、膜、積層体および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示パネル等のディスプレイに対して薄型化の継続的な要求が存在しており、その構成要素の1つである偏光板、偏光子等に対してもさらなる薄型化が要求されている。このような要求に対して、例えば、重合性液晶化合物と二色性を示す色素化合物とを含む偏光膜を備える薄型のホストゲスト型偏光子が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-510946号公報
【特許文献2】特開2013-37353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、偏光板を構成する偏光膜を製造する工程で紫外線(UV)露光を用いると、得られる偏光板の二色比(DR)が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、製造される偏光板の二色比の低下を抑制できる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]から[10]を提供する。
[1] 下記式(1)で表され、極大吸収波長を420nm以上520nm以下の範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物とを含む組成物。
-R-Ar-(-R-Ar-)-N=N-Ar-R (1)
[式(1)中、nは、1または2の整数を表す。
Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよい2価の含硫黄芳香族複素環基を表し、ArおよびArの少なくとも一方が、置換基としてフッ素原子を有する。 Rは、単結合、または-OC(=O)-、-C(=O)O-、-C≡C-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=N-および-N=CH-からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す。
は、重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基、または重合性基を有していてもよいアルコキシ基を表す。
は、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。
は、重合性基または水素原子を表す。
nが2である場合、2個あるRは互いに同一であっても相異なっていてもよく、2個あるArは互いに同一であっても相異なっていてもよい。]
[2] 前記重合性液晶化合物および前記液晶性の高分子化合物が、重合性スメクチック液晶化合物およびスメクチック液晶性の高分子化合物である[1]に記載の組成物。
[3] 前記重合性液晶化合物が、下記式(A)で表される化合物である[1]または[2]に記載の組成物。
-V-W-(X-Y-X-Y-X-W-V-U (A)
[式(A)中、mは1から3の整数である。
、XおよびXは、それぞれ独立に、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表す。mが2または3である場合、複数あるXは互いに同一であっても相異なっていてもよい。X、X及びXからなる群から選択される少なくとも3つが2価の炭化水素6員環基を表す。
、Y、WおよびWは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。mが2または3である場合、複数あるYは互いに同一であっても相異なっていてもよい。
およびVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。前記アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置き換わっていてもよい。
およびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。]
[4] 前記式(1)中、ArおよびArのうち少なくとも一方が、置換基として1から4個のフッ素原子を有する[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 前記式(1)中、ArおよびArのうち少なくとも一方が、置換基として1個または2個のフッ素原子を有する[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 前記式(1)中、nが1である[1]から[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 前記重合性基が、ラジカル重合性基である[1]から[6]のいずれかに記載の組成物。
[8] [1]から[7]のいずれかに記載の組成物を形成材料とする膜。
[9] [8]に記載の膜を含む積層体。
[10] [9]に記載の積層体を有する表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造される偏光板の二色比の低下を抑制できる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
<組成物>
本実施形態にかかる組成物は、下記式(1)で表され、極大吸収波長を420nm以上520nm以下の範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物とを含む。組成物は、例えば偏光膜の形成材料として用いられる。すなわち組成物は、偏光膜形成用組成物であってよい。組成物を形成材料として得られる偏光膜を有する偏光板は、製造工程に由来する偏光板の二色比の低下を効果的に抑制することができる。
【0010】
式(1)で表される化合物
組成物は下記式(1)で表される化合物の少なくとも1種を含む。式(1)で表される化合物は、420nm以上520nm以下の範囲に吸収極大波長(λMAX)を有し、例えば、組成物における色素化合物として用いられる。
-R-Ar-(-R-Ar-)-N=N-Ar-R (1)
【0011】
式(1)中、nは1または2の整数を表し、nは1であることが好ましい。式(1)におけるアゾ基の幾何異性は、シスおよびトランスのいずれでもよいが、トランスが好ましい。また、アゾ基の数は、nに応じて1から3であり得るが、1であってよく、2または3であってもよい。
【0012】
式(1)におけるAr、ArおよびArは、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよい2価の含硫黄芳香族複素環基を表し、ArおよびArの少なくとも一方が、置換基としてフッ素原子を有する。
【0013】
Ar、ArおよびArにおける置換基としては、メチル基、エチル基およびブチル基などの炭素数1から10のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基およびブトキシ基などの炭素数1から10のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1から10のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基およびピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基が挙げられる。ここで、置換アミノ基とは、炭素数1から10のアルキル基を窒素原子上に1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは窒素原子上の2つのアルキル基が互いに結合して炭素数2から8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。また、無置換アミノ基は、-NHである。なお、炭素数1から10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ヘキシル基などが挙げられる。炭素数2から8のアルカンジイル基としては、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基などが挙げられる。
【0014】
本実施形態にかかる化合物は、ArおよびArの少なくとも一方が、置換基としてフッ素原子を有し、ArおよびArのうちいずれか一方が、置換基としてフッ素原子を有することが好ましい。ArおよびArが有するフッ素原子の総数は、1個以上4個以下であることが好ましく、1個または2個であることがより好ましく、1個であることが更に好ましい。ArおよびArのうちいずれか一方が、1個以上4個以下のフッ素原子を有することが好ましく、1個または2個のフッ素原子を有することがより好ましく、1個のフッ素原子を有することが更に好ましい。
【0015】
式(1)で表される化合物は、ArおよびArの少なくとも一方が、置換基としてフッ素原子を有することで、優れた紫外線耐久性を示すことができる。これにより、式(1)で表される化合物を含む組成物から形成される偏光膜を備える偏光板の製造工程において、紫外線露光を用いても製造される偏光板の二色比が低下することが抑制され、製造プロセス上の制限を緩和し、製造プロセスの選択肢の幅を広げることができる。
【0016】
Ar、ArおよびArが有するフッ素原子以外の置換基としては、メチル基もしくはメトキシ基が好ましい。これにより、式(1)で表される化合物が、スメクチック液晶のような高秩序液晶構造中に包摂されることがより容易になる。また、Ar、ArおよびArが有するフッ素原子以外の置換基の数としては、1個又は2個であることが好ましい。これにより、式(1)で表される化合物が、スメクチック液晶のような高秩序液晶構造中に包摂されることがより容易になる。
【0017】
また、nが1である場合、Ar、ArおよびArのうち、少なくとも2つが1,4-フェニレン基であることが、分子合成の簡便さと高い性能の両方を有するという点で好ましい。
【0018】
Ar、ArおよびArにおける2価の含硫黄芳香族複素環基としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾジチオフェン、チエノフラン、チエノチオフェン、フロチアゾール、チエノチアゾール、およびベンゾチアゾールからなる群から選択される含硫黄芳香族複素環化合物から2個の水素原子を除いて形成される基が挙げられる。
【0019】
本実施形態にかかる化合物が、2価の含硫黄芳香族複素環基と1,4-フェニレン基とが直接結合した構造を含む場合、当該化合物を含む膜の二色比が向上する。
【0020】
は、単結合、または-OC(=O)-、-C(=O)O-、-C≡C-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=N-および-N=CH-からなる群から選ばれる少なくとも1種の連結基を表す。Rが複数存在する場合は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは単結合、-OC(=O)-、-C(=O)O-および-N=N-からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、単結合または-N=N-であることがより好ましい。
【0021】
は、重合性基を有していてもよいアルキルアミノ基、または重合性基を有していてもよいアルコキシ基を表す。Rにおける重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、例えば、(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイルオキシ基)、スチリル基(ビニルフェニル基)などのラジカル重合性基が挙げられ、中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。Rが重合性基を有する場合、その数は、例えば、1または2個であり、1個であることが好ましい。
【0022】
におけるアルキルアミノ基としては、例えば、窒素原子上に炭素数1から10のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは窒素原子上の2つのアルキル基が互いに結合して炭素数2から8のアルカンジイル基を形成している環状アミノ基を挙げることができる。Rにおけるアルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルヘキシルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基などを挙げることができる。Rにおけるアルキルアミノ基は、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基、およびメチルヘキシルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0023】
におけるアルコキシ基としては、例えば、炭素数1から10のアルコキシ基を挙げることができる。Rにおけるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などを挙げることができる。Rにおけるアルコキシ基は、エトキシ基、プロピルオキシ基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0024】
式(1)におけるRは、炭素数4から20のアルカンジイル基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基、炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基および炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの2価基を表す。
【0025】
炭素数4から20のアルカンジイル基としては、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の無置換の(置換基を有していない)直鎖状又は分枝鎖状の炭素数4から20のアルキル基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイル基が挙げられる。アルカンジイル基の炭素数は、4から16が好ましく、4から12がより好ましい。
【0026】
前記炭素数4から20のアルキル基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基で置換されていてもよい。ここで置換アミノ基としては、例えば、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等の1つまたは2つの炭素数1から20のアルキル基で置換されたアミノ基などが挙げられる。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基等で置換されたアルキル基としては、フルオロブチル基、オクタフルオロブチル基等の炭素数4から20のハロアルキル基;ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基等の炭素数4から20のヒドロキシアルキル基;アミノブチル基、2-(N,N-ジメチルアミノ)ブチル基等の無置換アミノ基または置換アミノ基を有する炭素数4から20のアルキル基などが挙げられる。
【0027】
前記アルキル基を構成する炭素原子間には、-O-または-NR-が挿入されていてもよい。ここでRは、水素原子または炭素数1から6、好ましくは炭素数1から4のアルキル基を表わし、炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基などが挙げられる。炭素原子間に、-O-または-NR-が挿入されたアルキル基としては、2-エトキシエチル基、2-(2-エトキシエトキシ)エチル基、2-[2-(エチルアミノ)エチル)アミノ]エチル基等が挙げられる。
【0028】
炭素数2から20のアルカンジイルオキシ基としては、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブトキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基等の無置換の直鎖状又は分枝鎖状の炭素数2から20のアルコキシ基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイルオキシ基が挙げられる。アルカンジイルオキシ基の炭素数は、2から16が好ましく、2から12がより好ましい。
【0029】
炭素数2から20のアルコキシ基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換基を有するアミノ基で置換されていてもよい。置換基を有するアミノ基は上記と同様である。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ、アミノ基等で置換されたアルコキシ基としては、テトラフルオロエトキシ基、オクタフルオロブトキシ基等の炭素数2から20のハロアルコキシ基;2-ヒドロキシエトキシ基等の炭素数2から20のヒドロキシアルコキシ基;アミノエトキシ基、2-(N,N-ジメチルアミノ)エトキシ基等の無置換または置換基を有するアミノ基を有する炭素数2から20のアルコキシ基が挙げられる。
【0030】
前記アルコキシ基を構成する炭素原子間には、-O-または-NR-が挿入されていてもよい。炭素原子間に、-O-または-NR-が挿入されたアルコキシ基としては、メトキシメトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-(2-エトキシエトキシ)基などが挙げられる。なお、Rは記述の通りである。
【0031】
炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、ネオペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、n-デシルオキシカルボニル基等の無置換の炭素数2から20のアルコキシカルボニル基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイルオキシカルボニル基が挙げられる。アルカンジイルオキシカルボニル基のアルカンジイル部分の炭素数は、1から16が好ましく、1から12がより好ましい。
【0032】
炭素数2から20のアルコキシカルボニル基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換基を有するアミノ基で置換されていてもよい。置換基を有するアミノ基は上記と同様である。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基等で置き換わったアルコキシカルボニル基としては、フルオロエトキシカルボニル基、トリフルオロエトキシカルボニル基、テトラフルオロエトキシカルボニル基、オクタフルオロブトキシカルボニル基等の炭素数2から20のハロアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0033】
炭素数2から20のアルカンジイルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n-プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n-ブチルカルボニルオキシ基、イソブチルカルボニルオキシ基、tert-ブチルカルボニルオキシ基、n-ペンチルカルボニルオキシ基、イソペンチルカルボニルオキシ基、ネオペンチルカルボニルオキシ基、n-ヘキシルカルボニルオキシ基、n-ヘプチルカルボニルオキシ基、n-オクチルカルボニルオキシ基、n-ノニルカルボニルオキシ基、n-デシルカルボニルオキシ基等の無置換の炭素数2から20のアルカノイルオキシ基から水素原子を1つ取り除いて形成されるアルカンジイルカルボニルオキシ基が挙げられる。アルカンジイルカルボニルオキシ基のアルカンジイル部分の炭素数は、1から16が好ましく、1から12がより好ましい。
【0034】
炭素数2から20のアルカノイルオキシ基を構成する1つ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基または置換基を有するアミノ基で置換されていてもよい。置換基を有するアミノ基は上記と同様である。1つ以上の水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシ基等で置換されたアルカノイルオキシ基としては、テトラフルオロエチルカルボニルオキシ基、オクタフルオロブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2から20のハロアシルオキシ基が挙げられる。
【0035】
式(1)におけるRは、重合性基または水素原子を表す。Rにおける重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、例えば、(メタ)アクリレート基、スチリル基などが挙げられるが、中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。
【0036】
式(1)で表される化合物の具体例としては、以下の、式(2-2)から式(2-192)で表される化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化1】
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】
【0042】
【化6】
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
【化9】
【0046】
【化10】
【0047】
【化11】
【0048】
【化12】
【0049】
【化13】
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
【化20】
【0057】
【化21】
【0058】
【化22】
【0059】
【化23】
【0060】
【化24】
【0061】
【化25】
【0062】
【化26】
【0063】
【化27】
【0064】
【化28】
【0065】
【化29】
【0066】
【化30】
【0067】
【化31】

【0068】
【化32】
【0069】
【化33】
【0070】
【化34】
【0071】
【化35】
【0072】
【化36】
【0073】
式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)ともいう)は、式(2-2)から(2-192)中、(2-2)から(2―7)、(2-9)から(2-30)、(2-34)から(2-106)、および(2-111)から(2-192)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、式(2-3)から(2―7)、(2-9)から(2-30)、(2-34)から(2-106)、および(2-111)から(2-192)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、式(2-4)から(2―7)、(2-9)から(2-30)、(2-39)から(2-47)、(2-49)から(2-83)、(2-85)から(2-101)、(2-104)、および(2-111)から(2-192)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましく、(2-4)から(2-7)、(2-9)から(2-30)、(2-39)から(2-47)、(2-49)から(2-83)、(2-85)から(2-101)、(2-104)、(2-111)から(2-130)、(2-132)、(2-135)、(2-146)から(2-155)、および(2-165)から(2-192)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましく、式(2-4)から(2-7)、(2-9)から(2-30)、(2-39)から(2-47)、(2-59)、(2-67)、(2-111)から(2-113)、(2-116)から(2-127)、(2-146)から(2-153)、および(2-165)から(2-192)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種がより特に好ましい。
【0074】
組成物における、式(1)で表される化合物の含有量は、組成物の固形分100質量部に対して、50質量部以下であると好ましく、0.1質量部以上10質量部以下の範囲がより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下の範囲がさらに好ましい。上記範囲内であれば、式(1)で表される化合物の分散が十分にできる。これにより、式(1)で表される化合物を形成材料とする膜であって、欠陥発生が十分に抑制された膜を効率的に得ることができる。なお本明細書において、固形分とは、組成物から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量をいう
【0075】
化合物(1)の製造方法
式(1)で表される化合物[以下、化合物(1)ともいう]の製造方法について説明する。化合物(1)は例えば、式(1X)で表される化合物[以下、化合物(1X)ともいう]と、式(1Y)で表される化合物[以下、化合物(1Y)ともいう]とから、下記反応式で示される工程により製造することができる。
【0076】
【化37】
【0077】
前記反応式において、Ar、Ar、Ar、R、R、R、Rおよびnは、式(1)におけるそれらと同じ意味である。ReおよびReは、互いに反応してRで表される基または単結合を形成し得る基の組み合わせである。ReおよびReの組み合わせとしては例えば、以下が挙げられる。Rが単結合の場合は、ジヒドロキシボリル基又はジアルコキシボリル基およびハロゲン原子の組み合わせなどが挙げられる。Rが-C(=O)O-または-OC(=O)-の場合は、カルボキシ基および水酸基の組み合わせ、カルボニルハライド基および水酸基の組み合わせ、カルボニルオキシアルキル基および水酸基の組み合わせなどが挙げられる。Rが-C≡C-の場合は、例えばハロゲン原子とエチニル基(-C≡CH)の組み合わせなどが挙げられる。Rが-CH=CH-の場合は、例えばハロゲン原子とエテニル基(-CH=CH)の組み合わせなどが挙げられる。Rが-CH=N-または-N=CH-の場合は、例えばホルミル基とアミノ基の組み合わせなどが挙げられる。
【0078】
上記反応式では、R-R-を有する化合物(1X)およびR-を有する化合物(1Y)を用いる製造方法を説明したが、R-R-を適当な保護基で保護した化合物と、R-を適当な保護基で保護した化合物とを互いに反応させて、その後、適当な脱保護反応を行うことで化合物(1)を製造することもできる。
【0079】
化合物(1X)および化合物(1Y)を反応させる際の反応条件は、用いる化合物(1X)および化合物(1Y)の種類に応じて適宜、最適な公知の条件を選択できる。
【0080】
例えば、Rが単結合であって、Reがジヒドロキシボリル基又はジアルコキシボリル基であり、Reがハロゲン原子の場合、例えば、Netherton, M. R.; Fu, G. C. Org. Lett. 2001, 3 (26), 4295-4298.などを参考にして、鈴木カップリングの反応条件を用いることができる。溶媒としてはジエチレングリコールジメチルエーテルおよび水の混合溶媒を用い、酢酸カリウム存在下、PdCldppfなどのPd触媒を加えて加熱することで化合物(1)を得ることができる。反応温度は、化合物(1X)および化合物(1Y)の種類に応じて選択されるが、例えば室温から160℃の範囲が挙げられ、好ましくは60℃から150℃の範囲である。反応時間としては、例えば15分から48時間の範囲が挙げられる。なおReがハロゲン原子であり、Reがジヒドロキシボリル基又はジアルコキシボリル基である場合も同様に実施できる。
【0081】
なお、Reがジヒドロキシボリル基又はジアルコキシボリル基である化合物(1X)は、例えばArにおけるブロモ基をノルマルブチルリチウムなどでリチオ化した後、トリアルコキシボランを作用させることでジヒドロキシボリル基又はジアルコキシボリル基を導入して得ることができる。またReがジヒドロキシボリル基又はジアルコキシボリル基である化合物(1Y)は、例えばArにおけるブロモ基をノルマルブチルリチウムなどでリチオ化した後、トリアルコキシボランを作用させることでジヒドロキシボリル基又はジアルコキシボリル基を導入して得ることができる。
【0082】
化合物(1Y)におけるアゾ構造は、例えば、国際公開WO2016/136561号の段落[0220]から[0268]の製造例の記載等を参考に、1級アミノ基を有する芳香族アミン化合物を亜硝酸ナトリウムなどでジアゾニウム塩に変換し、芳香族化合物とジアゾカップリングさせることで構築することができる。
【0083】
例えば、Rが-C(=O)O-であって、Reがカルボキシ基であり、Reが水酸基である場合の反応条件としては、Jiang, L.; Lu, X.; Zhang, H.; Jiang, Y.; Ma, D. J. Org. Chem. 2009, 74 (3), 4542-4546.などを参考にして脱水縮合反応を用いることができる。例えば、溶媒中、エステル化縮合剤の存在下で縮合する条件が挙げられる。溶媒としては、クロロホルム等の、化合物(1X)及び化合物(1Y)をともに可溶な溶媒が挙げられる。エステル化縮合剤としては、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、ジイソプロピルカルボジイミド(IPC)などが挙げられる。ここでは、さらにN,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の塩基を併用することが好ましい。反応温度は、化合物(1X)および化合物(1Y)の種類に応じて選択されるが、例えば-15℃から70℃の範囲が挙げられ、好ましくは0℃から40℃の範囲である。反応時間としては、例えば15分から48時間の範囲が挙げられる。なお、Rが-OC(=O)-であって、Reが水酸基であり、Reがカルボキシ基である場合も同様に実施できる。
【0084】
例えば、Rが-C≡C-であって、Reがエチニル基(-C≡CH)であり、Reがハロゲン基である場合は、Pd、Cu触媒を用いる薗頭カップリングを適用することで化合物(1)を合成することができる。なお、Reがハロゲン原子であり、Reがエチニル基(-C≡CH)である場合も同様に実施できる。
【0085】
例えば、Rが-C=C-であって、Reがエテニル基(-CH=CH)であり、Reがハロゲン原子である場合は、Pd触媒、リン配位子を用いるHeck反応を適用することで化合物(1)を合成することができる。なお、Reがハロゲン原子であり、Reがエテニル基(-CH=CH)である場合も同様に実施できる。
【0086】
例えば、Rが-CH=N-であって、Reがホルミル基であり、Reがアミノ基である場合は、一般的な脱水縮合反応を適用することで化合物(1)を合成することができる。なお、Rが-N=CH-であって、Reがアミノ基であり、Reがホルミル基である場合も同様に実施できる。
【0087】
得られた化合物(1)におけるRが炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基である場合、一般的なエステル交換反応によりRを他の炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基に変えることができる。エステル交換反応には、例えば、Chen, C.-T.; Kuo, J.-H.; Ku, C.-H.; Weng, S.-S.; Liu, C.-Y. J. Org. Chem. 2005, 70 (4), 1328-1339.などを参考にして、ルイス酸触媒としてTiO(acac)(名称:ビス(2,4-ペンタンジオナト)チタン(IV)オキシド)を用い、溶媒中でアルコール化合物と共に加熱する方法を適用できる。溶媒としてはキシレン、トルエンなどの炭化水素系芳香族化合物を用いることができる。なお、他の炭素数2から20のアルカンジイルオキシカルボニル基には、アルカンジイル基部分が異なるものが含まれ、炭素数が異なっていてよく、置換基が異なっていてもよい。
【0088】
化合物(1)の製造方法における反応時間は、反応途中の反応混合物を適宜サンプリングし、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段により、化合物(1X)及び化合物(1Y)の消失の度合い、化合物(1)の生成の度合いなどを確認して定めることもできる。
【0089】
反応後の反応混合物からは、再結晶、再沈殿、抽出及び各種クロマトグラフィーといった公知の方法により、或いはこれらの操作を適宜組み合わせることにより、化合物(1)を取り出すことができる。
【0090】
組成物は、式(1)で表される化合物以外のその他の色素化合物、例えば二色性色素の少なくとも1種を更に含んでいてもよい。その他の色素化合物としては、例えば、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素などのアゾ色素を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。組成物は、その他の色素化合物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。例えば塗布型偏光板材料として用いる場合では、組成物が含むその他の色素化合物は、式(1)で表される化合物とは異なる波長範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。例えば塗布型偏光板材料として用いる場合では、組成物は、式(1)で表される化合物を含めて、3種類以上の二色性色素を組み合わせて含むことが好ましく、3種類以上のアゾ色素を組み合わせて含むことがより好ましい。組成物が極大吸収波長の異なる3種以上の色素化合物を組み合わせて含むことで、例えば、組成物から形成される膜によって可視光全域で吸収を得ることができる。
【0091】
組成物が、その他の色素化合物を含む場合、その含有量は、組成物の固形分100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下の範囲がより好ましく、0.1質量部以上5質量部以下の範囲がさらに好ましい。上記範囲内であれば、その他の色素化合物の分散が十分に可能になる。
【0092】
組成物は、式(1)で表される化合物に加えて、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含む。組成物は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の両方を含んでいてもよく、組成物に含まれる重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物は、それぞれ2種以上であってもよい。組成物が重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも1種を含むことで、化合物(1)が重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物に分散した組成物を構成することができる。
【0093】
液晶性の高分子化合物は、サーモトロピック液晶型ポリマーを構成するものであってもよいし、リオトロピック液晶型ポリマーを構成するものであってもよい。液晶性の高分子化合物は、緻密な膜厚制御が可能な点で、サーモトロピック液晶型ポリマーを構成するものであることが好ましい。
【0094】
液晶の分類としては、液晶状態での分子配列の構造により、スメクチック液晶、ネマチック液晶、コレステリック液晶に分類される。なかでも偏光膜用途においてはスメクチック液晶が好ましく用いられる。したがって、重合性液晶化合物は、重合性スメクチック液晶化合物であることが好ましく、液晶性の高分子化合物は、スメクチック液晶性の高分子化合物であることが好ましい。
【0095】
スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物およびスメクチック液晶性を示す高分子化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光膜を形成することができる。重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の示す液晶状態は、好ましくはスメクチック相(スメクチック液晶状態)であり、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。配向秩序度の高い偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。組成物から得られる偏光膜が有する周期間隔(秩序周期)は、好ましくは0.3nm以上0.6nm以下である。重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物は、X線回折測定において高次構造由来のブラッグピークを示す、重合性スメクチック液晶化合物またはスメクチック液晶性の高分子化合物であってよい。
【0096】
式(1)で表される化合物は、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物およびスメクチック液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物から形成された、密な分子鎖間に分散した状態であっても、高い二色性を示すことができる。従って、式(1)で表される化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物、特にスメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物およびスメクチック液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物とを含む組成物は、二色比の高い偏光膜を与えることができる。
【0097】
<重合性液晶化合物>
重合性液晶化合物とは、分子内に少なくとも1つの重合性基を有し、配向することによって液晶相を示すことができる化合物である。重合性液晶化合物は、好ましくは単独で配向することによって液晶相を示すことができる化合物である。
【0098】
重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、重合性基とは、後述する重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基が挙げられる。中でも、重合性基は、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0099】
重合性液晶化合物としては、少なくとも1つの重合性基を有し、好ましくはスメクチック液晶性を示す液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。重合性液晶化合物として具体的には、例えば、下記式(A)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)が好ましく挙げられる。
-V-W-(X-Y-X-Y-X-W-V-U (A)
【0100】
式(A)中、mは1から3の整数である。X、XおよびXは、各々独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表す。mが2または3である場合、Xは互いに同一であっても相異なっていてもよい。X、XおよびXからなる群から選択される少なくとも3つが2価の炭化水素6員環基を表す。Y、Y、WおよびWは、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。mが2または3である場合、Yは互いに同一であっても相異なっていてもよい。VおよびVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。前記アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置き換わっていてもよい。UおよびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。
【0101】
、XおよびXにおける2価の芳香族基としては、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基等が挙げられる。X、XおよびXにおける2価の芳香族基および2価の脂環式炭化水素基の少なくとも1つは、置換基を有していてもよい。置換基としては、メチル基、エチル基、n-ブチル基等の炭素数1から4のアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。2価の脂環式炭化水素基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-S-または-NR-に置換されていてもよい。ここで、Rは、炭素数1から6のアルキル基またはフェニル基を表す。
【0102】
、XおよびXからなる群から選択される少なくとも3つは2価の炭化水素6員環基である。2価の炭化水素6員環基としては、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
【0103】
、XおよびXにおける2価の芳香族基は、好ましくは置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基であり、より好ましくは無置換の1,4-フェニレン基である。また2価の脂環式炭化水素基は、好ましくは置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、より好ましくは置換基を有していてもよいトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であり、さらに好ましくは無換基のトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基である。
【0104】
およびYは、各々独立して単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、例えば、-CHCH-、-CHO-、-(C=O)O-、-O(C=O)O-、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-および-CR=N-からなる群から選択される少なくとも1種である。ここでRおよびRは、各々独立して、水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。Yは、好ましくは-CHCH-、-(C=O)O-または単結合である。Yは、好ましくは-CHCH-または-CHO-である。
【0105】
およびWは、各々独立して、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基は、例えば、-O-、-S-、-(C=O)O-および-O(C=O)O-からなる群から選択される少なくとも1種である。WおよびWは、各々独立して、好ましくは単結合または-O-である。
【0106】
およびVは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基を表す。前記アルカンジイル基を構成する-CH-の少なくとも1つは、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置き換わっていてもよい。
【0107】
およびVで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,1-ジイル基、およびイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。VおよびVは、好ましくは炭素数2から12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6から12のアルカンジイル基である。
【0108】
置換基を有していてもよい炭素数1から20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子が挙げられる。当該アルカンジイル基は、好ましくは置換基を有していないアルカンジイル基であり、より好ましくは置換基を有しておらず、かつ直鎖状のアルカンジイル基である。
【0109】
およびUは、それぞれ独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも一方は重合性基を表す。UおよびUは、好ましくは重合性基である。UおよびUがともに重合性基であることが好ましく、ともにラジカル重合性基であることが好ましい。Uで示される重合性基とUで示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。UおよびUにおける重合性基としては、重合性液晶化合物が有する重合性基として先に例示した重合性基と同様のものが挙げられる。中でも、UおよびUで表される重合性基は、ビニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0110】
重合性液晶化合物(A)の具体例としては、下記式(A-1)から式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合には、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス型であることが好ましい。
【0111】
【化38】
【0112】
【化39】
【0113】
【化40】
【0114】
【化41】
【0115】
【化42】
【0116】
中でも、重合性液晶化合物(A)は、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)のいずれかで表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
重合性液晶化合物(A)は、例えば、Lub etal.Recl. Trav. Chim. Pays-Bas,115,321-328(1996)、特許第4719156号公報等の公知文献に記載の方法により製造することができる。
【0118】
<液晶性の高分子化合物>
液晶性の高分子化合物とは、前記重合性液晶化合物を重合させた化合物(以下、重合性液晶化合物の重合体ともいう)であってもよく、その他の液晶性の高分子化合物であってもよいが、前記重合性液晶化合物を重合させた化合物であることが好ましい。
【0119】
前記重合性液晶化合物の重合体は、2種以上の前記重合性液晶化合物を原料モノマーとして用いてもよい。また、前記重合性液晶化合物の重合体は、前記重合性液晶化合物以外のその他のモノマーを原料モノマーとして含んでいてもよい。
【0120】
前記重合性液晶化合物の重合体における前記重合性液晶化合物の含有割合は、前記重合性液晶化合物の重合体を構成する前記重合性液晶化合物に由来する構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上100モル%以下であり、前記重合性液晶化合物の重合体の配向性を高くするという観点から、30モル%以上100モル%以下であることが好ましく、50モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0121】
前記その他の液晶性の高分子化合物としては、液晶性基を有する高分子化合物が挙げられる。例えば、母骨格となる高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネンポリマーなどの環状オレフィン樹脂;ポリアルキレンエーテル、ポリビニルアルコール;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;等が挙げられ、これらの高分子化合物が液晶性基を有する。中でも、液晶性基を有するポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルが好ましい。
【0122】
前記その他の液晶性の高分子化合物は、2種類以上の液晶性基を含んでいてもよい。液晶性基は、母骨格となる高分子化合物の主鎖に含まれていてもよく、母骨格となる高分子化合物の側鎖に含まれていてもよく、母骨格となる高分子化合物の主鎖および側鎖ともに含まれていてもよい。液晶性基としては、少なくとも2つの炭化水素6員環構造を有する化合物から1個の水素原子を除いて形成される基、または、該化合物から2個の水素原子を除いて形成される基が挙げられる。
【0123】
前記その他の液晶性の高分子化合物における液晶性基の含有割合は、前記その他の液晶性の高分子化合物の母骨格となる高分子化合物を構成する構成単位の合計量に対して、通常1モル%以上100モル%以下であり、前記その他の液晶性の高分子化合物の配向性を高くするという観点から、30モル%以上100モル%以下であることが好ましく、50モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
【0124】
組成物において、2種類以上の重合性液晶化合物を組み合わせる場合には、そのうちの少なくとも1種類が重合性液晶化合物(A)であることが好ましく、そのうちの2種類以上が重合性液晶化合物(A)であることがより好ましい。2種類以上の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度であっても液晶相を一時的に保持することができる場合がある。組成物に含まれる重合性液晶化合物(A)の含有量は、組成物中の全重合性液晶化合物の総質量に対して合計で、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、全ての重合性液晶化合物が重合性液晶化合物(A)であってもよい。重合性液晶化合物(A)の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物が高い配向秩序度で並びやすく、それに沿って式(1)で表される化合物が配向することにより、優れた偏光性能を有する偏光膜を得ることができる。
【0125】
組成物における重合性液晶化合物および液晶性高分子化合物の合計含有割合は、重合性液晶化合物および液晶性高分子化合物の配向性を高くするという観点から、組成物の固形分100質量部に対して、例えば50質量部以上であり、好ましくは70質量部以上99.9質量部以下であり、より好ましくは70質量部以上99.5質量部以下であり、更に好ましくは80質量部以上99質量部以下であり、特に好ましくは80質量部以上94質量部以下であり、より更に好ましくは80質量部以上90質量部以下である。
【0126】
組成物における化合物(1)の含有量は、重合性液晶化合物および液晶性高分子化合物の合計量100質量部に対して、通常、0.1質量部以上50質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上、5質量部以下である。重合性液晶化合物および液晶性高分子化合物の合計量に対する化合物(1)の含有量が50質量部以下であると、重合性液晶化合物、液晶性高分子化合物および化合物(1)の配向の乱れが少なく、高い配向秩序度を有する偏光膜を得ることができる傾向がある。
【0127】
組成物が、化合物(1)並びに重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物を含むことで、組成物を用いてホストゲスト型偏光板を製造する途中工程でUV露光を用いても、組成物の二色比が低下しにくい。そのため、加工プロセスに光硬化を用いることができて、プロセス上の制限を減らすことが可能である。
【0128】
<高分子化合物>
組成物は、化合物(1)、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物に加えて、高分子化合物を更に含んでいてもよい。組成物が高分子化合物を含むことで、化合物(1)が組成物中に分散し易くなる場合がある。組成物が含みうる高分子化合物としては、化合物(1)を分散可能であれば、特に制限はない。化合物(1)を均一に分散させやすい点から、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系ポリマーが好ましい。また高分子化合物は、既述の重合性液晶化合物を重合した高分子化合物であってもよい。高分子化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、例えば1万以上20万以下であり、好ましくは2万以上15万以下である。
【0129】
組成物が高分子化合物を含む場合、その含有量は、目的等に応じて適宜選択することができる。高分子化合物の含有量は、組成物の固形分100質量部に対して、10質量部以下であると好ましく、5.0質量部以下の範囲がより好ましく、3.0質量部以下の範囲がさらに好ましい。
【0130】
組成物は、好ましくは溶剤等の液媒体および重合開始剤をさらに含み、必要に応じて光増感剤、重合禁止剤、レベリング剤等をさらに含んでいてもよい。
【0131】
<溶剤>
溶剤は、化合物(1)、重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物、および高分子化合物を完全に溶解し得る溶剤であることが好ましい。また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0132】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素含有溶剤;が挙げられる。これら溶剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
組成物が溶剤を含む場合において、溶剤の含有割合は、組成物の総量に対して50質量%以上98質量%以下が好ましい。換言すると、組成物における固形分の含有割合は、2質量%以上50質量%以下が好ましい。当該固形分が50質量%以下であると、組成物の粘度が低くなり、組成物から得られる膜、例えば膜の厚みが略均一になり、当該膜にムラが生じ難くなる傾向がある。かかる固形分の含有割合は、製造しようとする膜の厚さを考慮して定めることができる。
【0134】
<重合開始剤>
重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤は、より低温条件下で重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0135】
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩、およびスルホニウム塩などが挙げられる。重合開始剤は、公知の重合開始剤から目的等に応じて適宜選択することができる。また、重合開始剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0136】
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0137】
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3,4,4-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0138】
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0139】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0140】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンおよび2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0141】
ヨードニウム塩およびスルホニウム塩としては、例えば、下記式で表される塩などが挙げられる。
【0142】
【化43】
【0143】
重合開始剤として、市販品を用いることもできる。市販の重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、“イルガキュア(登録商標)184”、“イルガキュア(登録商標)651”、“イルガキュア(登録商標)819”、“イルガキュア(登録商標)250”および“イルガキュア(登録商標)369”(BASFジャパン株式会社製);“セイクオール(登録商標)BZ”、“セイクオール(登録商標)Z”、“セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学株式会社製);“カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100“、および“カヤキュアー(登録商標)UVI-6992”(ダウ・ケミカル株式会社製);“アデカオプトマーSP-152”、“アデカオプトマーSP-170”(株式会社ADEKA製);“TAZ-A”、“TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー株式会社製);並びに、“TAZ-104”(株式会社三和ケミカル製);などが挙げられる。
【0144】
組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、該組成物に含まれる重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよい。重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、例えば0.001質量部以上、0.01質量部以上、0.1質量部以上または0.5質量部以上であり、例えば30質量%以下、10質量%以下または8質量%以下である。また重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.001質量部以上30質量部以下が好ましく、0.01質量部以上10質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上8質量部以下がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0145】
<光増感剤>
組成物が光重合開始剤を含有する場合、組成物は、好ましくは光増感剤の少なくとも1種を含有してよい。組成物が光重合開始剤および光増感剤を含有することにより、重合性液晶化合物の重合反応がより促進される傾向がある。当該光増感剤としては、キサントンおよびチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン);アントラセンおよびアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン)等のアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン;などが挙げられる。光増感剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0146】
組成物が光増感剤を含む場合、組成物における光増感剤の含有量は、光重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよい。組成物における光増感剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上8質量部以下である。
【0147】
<重合禁止剤>
組成物は、重合禁止剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えばブチルカテコール)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル捕捉剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類およびβ-ナフトール類;などが挙げられる。
【0148】
組成物が重合禁止剤を含むことにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いを制御することができる。
【0149】
組成物が重合禁止剤を含む場合、組成物における重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上10質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上8質量部以下である。
【0150】
<レベリング剤>
組成物は、レベリング剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。レベリング剤は、組成物の流動性を調整し、該組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0151】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”および“BYK-392”(BYK Chemie社)などが挙げられる。
【0152】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”および同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成株式会社製);などが挙げられる。
【0153】
組成物がレベリング剤を含む場合、レベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の合計量100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上3質量部以下である。レベリング剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な膜、例えば偏光膜を得られる傾向がある。
【0154】
レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を水平配向させることが容易であり、かつ、得られる膜がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる膜にムラが生じ易い傾向がある。
【0155】
<酸化防止剤>
組成物は酸化防止剤を含んでいてもよい。酸化防止剤は、組成物が本発明の効果を発揮し得るものであれば特に限定されず、公知の酸化防止剤を用いることができる。酸化防止剤は、式(1)で表される化合物の光劣化に対する高い抑制効果を有する観点から、ラジカルを捕捉して自動酸化の防止作用を有する、いわゆる一次酸化防止剤が好ましい。したがって、組成物に含まれる酸化防止剤は、フェノール系化合物、脂環式アルコール系化合物およびアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
組成物における上記酸化防止剤の含有量は、組成物100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上15質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは12質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であると、式(1)で表される化合物の光劣化をより効果的に抑制することができる。また、酸化防止剤の含有量が上記上限値以下であると、重合性液晶化合物の配向をより乱し難く、かつ、式(1)で表される化合物の光劣化に対するより高い抑制効果を期待できる。
【0157】
組成物は、上記以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。組成物が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、組成物の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0158】
組成物は、従来公知の組成物の調製方法により製造することができる。通常、式(1)で表され、極大吸収波長が420nm以上520nm以下の範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物と、必要に応じて酸化防止剤、レベリング剤などの添加剤とを混合、撹拌することにより調製することができる。
【0159】
組成物を用いてホストゲスト型偏光板を製造する場合、製造の途中工程でUV露光を用いても、二色比が低下しにくい。そのため、加工プロセスに光硬化を用いることができる。したがって組成物は、偏光膜の製造に好適に用いることができる。
【0160】
<膜>
本実施形態にかかる膜は、式(1)で表され、極大吸収波長を420nm以上520nm以下の範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物とを含む組成物を形成材料として得られものである。組成物からなる膜は、組成物を基材に付与し、成膜することで形成されてよい。また、式(1)で表される化合物を含む組成物が、重合性液晶化合物を含む場合、該重合性液晶化合物を重合させて得られる硬化物を含む膜は、組成物を基材に付与し、成膜した後に該重合性液晶化合物を重合し、硬化させることで形成されてよい。
【0161】
組成物は、配向秩序度の高い膜、例えば偏光膜を形成することができる。したがって、本実施形態にかかる膜は、式(1)で表され、極大吸収波長を420nm以上520nm以下の波長範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物とを含んでなる組成物から形成される偏光膜であって、配向秩序度の高い偏光膜を包含する。配向秩序度の高い偏光膜は、後述するように、X線回折測定において高次構造に由来するブラックピークを示す。
【0162】
ここで、配向秩序度の高い偏光膜では、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。したがって、組成物から形成される偏光膜は、重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物がX線回折測定においてブラッグピークを示すように配向していることが好ましく、光を吸収する方向に重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物の分子が配向する「水平配向」であることがより好ましい。ブラッグピークを示すような高い配向秩序度は、用いる重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物の種類、式(1)で表され、極大吸収波長を420nm以上520nm以下の波長範囲に有する化合物の量等を制御することにより実現し得る。
【0163】
膜を形成するために用いる組成物を構成する重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物および式(1)で表され、極大吸収波長を420nm以上520nm以下の波長範囲に有する化合物としては、既述の組成物に用い得る重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物および化合物(1)と同様のものが挙げられる。
【0164】
膜は、例えば、化合物(1)と重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物とを含み、さらに溶剤を含む組成物の塗膜を形成すること、
前記塗膜から溶剤の少なくとも一部を除去すること、
重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後、降温して、該重合性液晶化合物または該液晶性の高分子化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させること、および
前記スメクチック相(スメクチック液晶状態)を保持したまま重合性液晶化合物を重合させること、
を含む方法により製造することができる。
【0165】
組成物の塗膜の形成は、例えば、基材、後述する配向膜などの上に組成物を塗布することにより行うことができる。また、偏光板を構成する位相差フィルム、その他の層上に組成物を直接塗布してもよい。
【0166】
基材は通常、透明基材である。なお、基材が表示素子の表示面に設置されないとき、例えば膜から基材を取り除いた積層体を表示素子の表示面に設置する場合は、基材は透明でなくてもよい。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、380nm以上780nm以下の波長範囲にわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。
【0167】
透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネンポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の一部または全部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、“フジタックフィルム”(富士フイルム株式会社);“KC8UX2M”、“KC8UY”および“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。
【0168】
基材に求められる特性は、膜の構成によって異なるが、通常、位相差性ができるだけ小さい基材が好ましい。位相差性ができるだけ小さい基材としては、ゼロタック(コニカミノルタオプト株式会社)、Zタック(富士フイルム株式会社)等の位相差を有しないセルロースエステルフィルム等が挙げられる。また、未延伸の環状オレフィン系樹脂基材も好ましい。膜が積層されていない基材の面には、ハードコート処理、反射防止処理、帯電防止処理等がなされてもよい。
【0169】
基材の厚みは、通常5μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下、より好ましくは20μm以上100μm以下である。前記下限値以上であれば強度の低下が抑制され、加工性が良好になる傾向がある。
【0170】
組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0171】
次いで、組成物から得られた塗膜に含まれる溶剤を乾燥等により除去することにより乾燥塗膜が形成される。また、該塗膜中に重合性液晶化合物が含まれる場合、該重合性液晶化合物が重合しない条件で、乾燥をおこなうことにより乾燥塗膜が形成される。前記塗膜の乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0172】
さらに、重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物を液体相に相転移させるため、重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後、降温して重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させる。かかる相転移は、塗膜中の溶剤除去後に行ってもよいし、溶剤の除去と同時に行ってもよい。
【0173】
重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、重合性液晶組成物の硬化層を含む膜が形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群から選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、組成物に含有される重合性液晶化合物、光重合開始剤の種類等を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら、光照射することで、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても、適切に膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた膜を得ることもできる。
【0174】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380nm以上440nm以下で発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0175】
紫外線照射強度は、通常、10mW/cm以上3,000mW/cm以下である。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒以上10分以下であり、好ましくは0.1秒以上5分以下、より好ましくは0.1秒以上3分以下、さらに好ましくは0.1秒以上1分以下である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10mJ/cm以上3,000mJ/cm以下であることが好ましい。
【0176】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、膜が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる膜は、二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素、またはリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0177】
膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.5μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下である。
【0178】
膜が、偏光膜として使用される場合、配向膜上に形成されることが好ましい。配向膜は、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜としては、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物を含有する組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜等が挙げられ、配向角の精度および品質の観点から、光配向膜が好ましい。
【0179】
<積層体>
本実施形態にかかる積層体は、前記組成物を含む膜を含む。積層体は、基材と、基材上に配置される前記組成物を形成材料とする膜とを備えていてよく、基材と、基材上に配置される配向膜と、配向膜上に配置され、前記組成物を形成材料とする膜とを備えていてよい。前記組成物を形成材料とする膜は、偏光膜を構成してよい。また、基材は位相差フィルムであってもよい。積層体は、例えば、偏光板を構成することができる。積層体は、例えば、上述した膜の製造方法によって製造することができる。
【0180】
積層体の厚みは、表示装置の屈曲性や視認性の観点から、好ましくは10μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上200μm以下、さらに好ましくは25μm以上100μm以下である。
【0181】
積層体が基材として位相差フィルムを備える場合、位相差フィルムの厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択できる。
【0182】
本実施形態にかかる積層体は、下記工程A及び工程Bを含み、必要に応じて工程Cを含む製造方法によって製造することができる。組成物が式(1)で表される化合物の他に液晶性の高分子化合物を含む場合はさらに工程Bで液晶性の高分子化合物を配向させることが好ましい。組成物が式(1)で表される化合物の他に重合性液晶化合物を含む場合はさらに工程Cを含むことが好ましい。
【0183】
工程A:基材の表面に、本発明の組成物を塗布して塗布膜を形成する工程と、
工程B:加熱して溶剤を除去しつつ、形成された塗布膜に含まれる重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方、と化合物(1)とを配向させる工程と、
工程C:配向した重合性液晶化合物に活性エネルギー線を照射することにより重合性液晶化合物を重合する工程と、を含む製造方法により、積層体が製造される。
【0184】
(工程A)
基材は、ガラス基材、樹脂基材等のいずれであってもよく、好ましくは樹脂基材である。また、樹脂からなるフィルム基材を用いることで、薄い積層体を得ることができる。
【0185】
樹脂基材は、好ましくは透明樹脂基材である。透明樹脂基材とは、光、特に可視光を透過し得る透光性を有する基材を意味し、透光性とは、波長380nm以上780nm以下の波長範囲にわたる光線に対しての視感度補正透過率が、80%以上となる特性をいう。
【0186】
基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、およびセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシド;等が挙げられる。好ましくはセルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0187】
基材の厚さは、実用的な取り扱いができる程度である限り、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る場合がある。基材の厚さは、通常、5μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0188】
(工程B)
前記組成物が溶剤を含む場合には、通常、形成された塗布膜から溶剤を除去する。溶剤の除去方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0189】
形成された塗布膜に重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物の少なくとも一方が含まれる場合は、通常、溶液状態に転移する温度以上に加熱され、次いで液晶配向する温度まで冷却されることによって、配向して液晶相を形成し得る。
【0190】
形成された塗布膜に重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物の少なくとも一方が含まれる場合、重合性液晶化合物、液晶性の高分子化合物が配向する温度は、予め、当該重合性液晶化合物を含む組成物を用いたテクスチャー観察等により求めればよい。また、溶剤の除去と液晶配向とを同時に行ってもよい。このときの温度としては、除去する溶媒や重合性液晶化合物または液晶性の高分子化合物の種類にもよるが、50℃以上200℃以下の範囲が好ましく、基材が樹脂基材の場合には、80℃以上130℃以下の範囲がより好ましい。
【0191】
(工程C)
形成された塗布膜に重合性液晶化合物が含まれる場合は、配向した重合性液晶化合物に活性エネルギー線を照射することにより、重合性液晶化合物を重合する。
【0192】
配向した重合性液晶化合物が重合することによって、配向した状態で重合した重合性液晶化合物と、当該重合性液晶化合物と共に配向した化合物(1)とを含む膜が得られる。
【0193】
スメクチック液晶相を保持したまま重合した重合性液晶化合物を含む膜は、従来のホストゲスト型偏光膜、即ち、ネマチック液晶相を保持したままで重合性液晶化合物等を重合して得られる偏光膜と比較して偏光性能が高く、また、二色性色素またはリオトロピック液晶型の液晶化合物のみを塗布した偏光膜と比較して、偏光性能および強度に優れる。
【0194】
活性エネルギー線の線源としては、紫外線、電子線、X線等を発生する線源であればよい。好ましくは低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等の、波長400nm以下に発光分布を有する光源である。
【0195】
<表示装置>
本実施形態の表示装置は、前記積層体を備え、積層体は偏光板であってよい。表示装置は、例えば、粘接着剤層を介して、偏光板としての積層体を表示装置の表面に貼合することにより得ることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む装置である。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば、電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インク、電気泳動素子等を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えば、グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)、および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置、および投写型液晶表示装置等のいずれも包含する。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に、表示装置としては、有機EL表示装置およびタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。
【実施例0196】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0197】
合成例1:化合物(2-1)の合成
化合物(2-1)を合成するために、まず化合物(2-1-a)を合成した。また、化合物(2-1-b)を経て化合物(2-1-c)を合成した。続いて化合物(2-1-a)と化合物(2-1-c)を鈴木カップリングさせて化合物(2-1)を得た。
【0198】
化合物(2-1-a)の合成
EDC・HCl(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩。4.83g、25.2mmol)、およびDMAP(N,N-ジメチルアミノピリジン。0.29g、2.4mmol)のクロロホルム(240mL)溶液にn-ブタノール(3.57g、48.1mmol)、および4-ブロモ安息香酸(4.83g、24.0mmol)を順に加えた。室温にて6時間攪拌後、反応溶液を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮することにより化合物(2-1-a)を得た(5.38g、収率87%)。
【0199】
【化44】
【0200】
化合物(2-1-b)の合成
4-ブロモアニリン(13.2g、77.6mmol)、35%塩酸(22.0mL,249mmol)、および水(200mL)を混合して0℃から5℃に冷却した。そこへ亜硝酸ナトリウム(13.0g、189mmol)の水(26mL)溶液を滴下した。その後、0℃から5℃を保ちながら30分間撹拌し、さらにアミド硫酸(11.0g,113mmol)を添加してジアゾ液を調製した。一方、N,N-ジメチルアニリン(14.0mL、111mmol)、酢酸ナトリウム(24.8g,302mmol)、メタノール(200mL)、および水(100mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後常温まで昇温し、析出した固体を濾別して化合物(2-1-b)を得た(21.0g、収率90%)。
【0201】
【化45】
【0202】
化合物(2-1-c)の合成
化合物(2-1-b)(18.3g、60.0mmol)のTHF(450mL)溶液を-78℃に冷却し、そこへ1.57Mのn-ブチルリチウムヘキサン溶液(38.0mL、59.7mmol)を滴下した。その後、-78℃を保ちながら30分間攪拌し、さらにiPrOBpin(2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランの略。11.0mL,64.8mmol)を滴下した。滴下終了後常温まで昇温し、30分間攪拌した。塩化アンモニウム(60g)の水(400mL)溶液を加えて反応を停止し、有機層を分液し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮した。得られた固体をクロロホルム/ヘキサンからの再沈殿により精製し、化合物(2-1-c)を得た(16.7g、収率79%)。
【0203】
【化46】
【0204】
化合物(2-1)の合成
化合物(2-1-a)(286mg、1.10mmol)、および化合物(2-1-c)(352mg、1.00mmol)のTHF(10mL)溶液に、Pd(dba)(22.7mg、0.0248mmol)、およびP(t-Bu)・HBF(15.3mg、0.0527mmol)を加え撹拌した。さらに3Mリン酸カリウム水溶液(1.0mL、3.0mmol)を加え、60℃で3.6時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノール(20mL)を加え、析出した固体をろ取し、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(2-1)を得た(256mg、収率71%)。
【0205】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.14-8.10(m,2H),7.95-7.89(m,4H),7.76-7.71(m,4H),6.80-6.76(m,2H),4.36(t,2H),3.11(s,6H),1.78(tt,2H),1.55-1.46(m,2H),1.00(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=436nm(アセトニトリル中)
【0206】
【化47】
【0207】
合成例2:化合物(3)の合成
化合物(3)を合成するために、まず化合物(3-a)を合成した。続いて化合物(3-a)と前述の化合物(2-1-c)を鈴木カップリングさせて化合物(3)を得た。
【0208】
化合物(3-a)の合成
EDC・HCl(1.36g、7.10mmol)、およびDMAP(0.083g、0.68mmol)のジクロロメタン(60mL)溶液にn-ヘキサノール(0.90mL、7.2mmol)、および4-ブロモ安息香酸(1.36g、6.76mmol)を順に加えた。室温にて6時間攪拌後、反応溶液を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮することにより化合物(3-a)を得た(1.70g、収率88%)。
【0209】
【化48】
【0210】
化合物(3)の合成
化合物(3-a)(285mg、1.00mmol)、化合物(2-1-c)(457mg、1.30mmol)、および酢酸カリウム(650mg、6.63mmol)のジエチレングリコールジメチルエーテル(13mL)、および水(2mL)の混合溶液に、PdCldppf(41.0mg、0.0502mmol)を加え、140℃で4時間加熱撹拌した。反応溶液にTHFを加え、シリカゲルショートカラムを通した後、エバポレーターで濃縮した。得られた固体をメタノール/水で洗浄後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/トルエン=20/80)にて精製し、化合物(3)を得た(238mg、収率55%)。
【0211】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.14-8.11(m,2H),7.95-7.89(m,4H),7.76-7.71(m,4H),6.80-6.76(m,2H),4.35(t,2H),3.11(s,6H),1.79(tt,2H),1.51-1.44(m,2H),1.37-1.33(m,4H),0.92(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=430nm(アセトニトリル中)
【0212】
【化49】
【0213】
合成例3:化合物(2-3)の合成
化合物(2-3)を合成するために、まず化合物(2-3-a)を合成した。続いて化合物(2-3-a)と前述の化合物(2-1-c)を鈴木カップリングさせて化合物(2-3)を得た。
【0214】
化合物(2-3-a)の合成
EDC・HCl(1.61g、8.41mmol)、およびDMAP(0.098g、0.80mmol)のクロロホルム(80mL)溶液にエタノール(1.85g、40.1mmol)、および4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸(1.90g、8.01mmol)を順に加えた。室温にて4時間攪拌後、反応溶液を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮した。クロロホルム/ヘキサン=1/1混合溶媒に溶かし、シリカゲルショートカラムを通した後、エバポレーターで濃縮し、化合物(2-3-a)を得た(1.32g、収率62%)。
【0215】
【化50】
【0216】
化合物(2-3)の合成
化合物(2-3-a)(292mg、1.10mmol)、および化合物(2-1-c)(351mg、1.00mmol)のTHF(10mL)溶液に、Pd(dba)(22.7mg、0.0248mmol)、およびP(t-Bu)・HBF(15.2mg、0.0524mmol)を加え撹拌した。さらに3Mリン酸カリウム水溶液(1.0mL、3.0mmol)を加え、60℃で4.5時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノール(20mL)を加え、析出した固体をろ取し、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(2-3)を得た(161mg、収率39%)。
【0217】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=7.95-7.89(m,4H),7.69-7.66(m,2H),7.26-7.22(m,2H),6.79-6.75(m,2H),4.45(q,2H),3.11(s,6H),1.42(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=437nm(アセトニトリル中)
【0218】
【化51】
【0219】
合成例4:化合物(2-106)の合成
化合物(2-106)を合成するために、まず化合物(2-106-a)を合成した。続いて化合物(2-106-a)と前述の化合物(2-1-c)を鈴木カップリングさせて化合物(2-106)を得た。
【0220】
化合物(2-106-a)の合成
EDC・HCl(1.61g、8.41mmol)、およびDMAP(0.098g、0.80mmol)のクロロホルム(80mL)溶液にn-ブタノール(1.19g、16.0mmol)、および4-ブロモ-2,6-ジフルオロ安息香酸(1.90g、8.01mmol)を順に加えた。室温にて3.5時間攪拌後、反応溶液を水、次いで飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮し、化合物(2-106-a)を得た(1.47g、収率62%)。
【0221】
【化52】
【0222】
化合物(2-106)の合成
化合物(2-106-a)(323mg、1.10mmol)、および化合物(2-1-c)(352mg、1.00mmol)のTHF(10mL)溶液に、Pd(dba)(23.2mg、0.0253mmol)、およびP(t-Bu)・HBF(15.8mg、0.0545mmol)を加え撹拌した。さらに3Mリン酸カリウム水溶液(1.0mL、3.0mmol)を加え、60℃で4時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノール(20mL)を加え、析出した固体をろ取し、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(2-106)を得た(154mg、収率35%)。
【0223】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=7.95-7.89(m,4H),7.69-7.66(m,2H),7.26-7.22(m,2H),6.79-6.75(m,2H),4.39(t,2H),3.11(s,6H),1.76(tt,2H),1.49(tq,2H),0.99(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=436nm(アセトニトリル中)
【0224】
【化53】
【0225】
合成例5:化合物(2-4)の合成
化合物2-4を合成するために、まず化合物(2-4-a)を経て化合物(2-4-b)を合成した。続いて化合物(2-4-b)と4-ブロモ安息香酸エチルを鈴木カップリングさせて化合物(2-4)を得た。
【0226】
化合物(2-4-a)の合成
EDC・HCl(1.61g、8.41mmol)、およびDMAP(0.098g、0.80mmol)のクロロホルム(80mL)溶液にエタノール(1.84g、40.0mmol)、および4-ブロモ-2-フルオロ安息香酸(1.75g、8.00mmol)を順に加えた。室温にて3.5時間攪拌後、反応溶液を水、次いで飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮し、化合物(2-4-a)を得た(1.60g、収率81%)。
【0227】
【化54】
【0228】
化合物(2-4)の合成
化合物(2-4-a)(552mg、2.23mmol)、および化合物(2-1-c)(704mg、2.01mmol)のTHF(10mL)溶液に、Pd(dba)(46.1mg、0.0503mmol)、およびP(t-Bu)・HBF(29.0mg、0.100mmol)を加え撹拌した。さらに3Mリン酸カリウム水溶液(2.0mL、6.0mmol)を加え、60℃で3.5時間加熱撹拌した。反応溶液に水(20mL)を加え、析出した固体をろ取し、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(2-4)を得た(480mg、収率61%)。
【0229】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.02(dd,1H),7.95-7.89(m,4H),7.74-7.70(m,2H),7.50(dd,1H),7.43(dd,1H),6.80-6.76(m,2H),4.43(q,2H),3.11(s,6H),1.43(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=436nm(アセトニトリル中)
【0230】
【化55】
【0231】
合成例6:化合物(2-6)の合成
化合物(2-6)を合成するために、まず化合物(2-6-a)を経て化合物(2-6-b)を合成した。続いて化合物(2-6-b)と4-ブロモ安息香酸エチルを鈴木カップリングさせて化合物(2-6)を得た。
【0232】
化合物(2-6-a)の合成
4-ブロモ-2-フルオロアニリン(14.3g、75.0mmol)、35%塩酸(22.0mL,249mmol)、および水(200mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(7.76g、112mmol)の水(26mL)溶液を滴下した。その後、0℃から5℃を保ちながら30分間撹拌し、さらにアミド硫酸(4.36g,45.0mmol)を添加してジアゾ液を調製した。一方、N,N-ジメチルアニリン(13.6g、113mmol)、酢酸ナトリウム(24.6g,300mmol)、メタノール(200mL)、および水(100mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後常温まで昇温し、析出した固体を濾別して化合物(2-6-a)を得た(15.8g、収率66%)。
【0233】
【化56】
【0234】
化合物(2-6-b)の合成
化合物(2-6-a)(3.23g、10.0mmol)、Bpin(ビス(ピナコラト)ジボロン。2.79g、11.0mmol)、および酢酸カリウム(2.99g、30.4mmol)の1,4-ジオキサン(60mL)溶液に、PdCldppf(249mg、0.305mmol)を加え、80℃で7時間加熱撹拌した。反応溶液をトルエン/水で分液し、有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮した。得られた固体をクロロホルム/ヘキサンからの再沈殿により精製し、化合物(2-6-b)を得た(2.53g、収率69%)。
【0235】
【化57】
【0236】
化合物(2-6)の合成
4-ブロモ安息香酸エチル(0.763g、3.33mmol)、および化合物(2-6-b)(1.11g、3.00mmol)のTHF(30mL)溶液に、Pd(dba)(69.8mg、0.0762mmol)、およびP(t-Bu)・HBF(45.0mg、0.155mmol)を加え撹拌した。さらに3Mリン酸カリウム水溶液(4.0mL、12.0mmol)を加え、60℃で4時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノール(20mL)を加え、析出した固体をろ取し、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(2-6)を得た(904mg、収率77%)。
【0237】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.15-8.12(m,2H),7.95-7.91(m,2H),7.84(d,1H),7.72-7.68(m,2H),7.52-7.45(m,2H),6.79-6.75(m,2H),4.42(q,2H),3.12(s,6H),1.43(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=452nm(アセトニトリル中)
【0238】
【化58】
【0239】
合成例7:化合物(2-116)の合成
化合物2-116を合成するために、まず化合物(2-116-a)を経て化合物(2-116-b)を合成した。続いて化合物(2-116-b)とn-ブチル臭化亜鉛を根岸カップリングさせて化合物(2-116)を得た。
【0240】
化合物(2-116-a)の合成
4-ブロモ-3-フルオロアニリン(9.50g、50.0mmol)、35%塩酸(14.8mL,167mmol)、および水(95mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(3.45g、50.0mmol)の水(5mL)溶液を滴下し、ジアゾ液を調製した。一方、(フェニルアミノ)メタンスルホン酸ナトリウム(11.5g、55.0mmol)、酢酸ナトリウム(16.4g,55.0mmol)、および水(100mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後常温まで昇温し、水酸化ナトリウム(12.0g,300mmol)を加え、90℃で2.5時間加熱撹拌した。析出した固体をろ取して化合物(2-116-a)を得た(13.9g、収率94%)。
【0241】
【化59】
【0242】
化合物(2-116-a)(1.47g、10.0mmol)、35%塩酸(1.5mL,17mmol)、および水(9mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(345mg、5.00mmol)の水(1mL)溶液を滴下した。その後、10℃から15℃を保ちながら45分間撹拌し、ジアゾ液を調製した。一方、N,N-ジエチルアニリン(895mg、6.00mmol)、酢酸ナトリウム(1.64g,20.0mmol)、メタノール(20mL)、および水(10mL)を混合して10℃から15℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後常温まで昇温し、析出した固体をろ取し、クロロホルムに溶解させ、水、次いで飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン=50/50)にて精製し、化合物(2-116-b)を得た(1.26g、収率55%)。
【0243】
【化60】
【0244】
化合物(2-116-b)(213mg、0.500mmol)、PdCldppf(8.1mg、0.010mmol)、およびTHF(5.0mL)の混合溶液を55℃で加熱撹拌し、0.50Mのn--ブチル臭化亜鉛(1.2mL,0.60mmol)を滴下した。その後、3.5時間加熱還流した。反応溶液に水(20mL)を加え、析出した固体をろ取し、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン=50/50)にて精製した。さらにクロロホルム/ヘキサンからの再沈殿により精製し、化合物(2-116)を得た(137mg、収率64%)。
【0245】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.03-8.00(m,2H),7.98-7.95(m,2H),7.92-7.88(m,2H),7.71(dd,1H),7.60(dd,1H),7.34(dd,1H),6.76-6.72(m,2H),3.46(q,4H),2.72(t,2H),1.65(tt,2H),1.41(tq,2H),1.25(t,6H),0.96(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=499nm(アセトニトリル中)
【0246】
【化61】
【0247】
合成例8:化合物(2-166)の合成
2-ブロモ-5-n-ブチルチエノチアゾールと前述の化合物(2-6-b)を鈴木カップリングさせて化合物(2-166)を得た。
【0248】
化合物(2-166)の合成
2-ブロモ-5-n-ブチルチエノチアゾール(0.304g、1.10mmol)、および化合物(2-6-b)(0.369g、1.00mmol)のTHF(10mL)溶液に、Pd(dba)(0.0367mg、0.0400mmol)、およびP(t-Bu)・HBF(0.0232mg、0.0800mmol)を加え撹拌した。さらに3Mリン酸カリウム水溶液(2.0mL、6.0mmol)を加え、16時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体をろ取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/トルエン=10/90)にて精製し、化合物(2-166)を得た(0.127g、収率29%)。
【0249】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=9.95-7.91(m,2H),7.87-7.81(m,2H),7.77(dd,1H),6.95(s,1H),6.78-6.74(m,2H),3.12(s,6H),2.92(t,2H),1.74(tt,2H),1.44(tq,2H),0.97(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=475nm(アセトニトリル中)
【0250】
【化62】
【0251】
合成例9:化合物(2-167)の合成
2-ブロモ-5-n-ブチルチエノチアゾールと、化合物(2-167-a)を経て合成した化合物(2-167-b)とを鈴木カップリングさせて化合物(2-167)を得た。
【0252】
化合物(2-167-a)の合成
4-ブロモ-3-フルオロアニリン(1.90g、10.0mmol)、35%塩酸(3.0mL,34mmol)、および水(25mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、そこへ亜硝酸ナトリウム(0.69mg、10.0mmol)の水(2.5mL)溶液を滴下してジアゾ液を調製した。一方、ジメチルアニリン(1.33g、11.0mmol)、酢酸ナトリウム(3.28g、40.0mmol)、メタノール(25.0mL)、および水(12.5mL)を混合して0℃から5℃に冷却し、先ほど調製したジアゾ液全量を滴下した。滴下終了後常温まで昇温し、析出した固体を濾別して化合物(2-167-a)を得た(2.59g、収率80%)。
【0253】
【化63】
【0254】
化合物(2-167-b)の合成
化合物(2-167-a)(2.26g、7.00mmol)、Bpin(正式名称はビス(ピナコラト)ジボロン。1.96g、7.70mmol)、および酢酸カリウム(2.06g、21.0mmol)の1,4-ジオキサン(35mL)溶液に、PdCldppf(0.286g、0.351mmol)を加え、80℃で15時間加熱撹拌した。反応溶液をトルエン/水で分液し、有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮した。得られた固体をクロロホルム/ヘキサンからの再沈殿により精製し、化合物(2-167-b)を得た(1.74g、収率67%)。
【0255】
【化64】
【0256】
化合物(2-167)の合成
2-ブロモ-5-n-ブチルチエノチアゾール(0.307g、1.11mmol)、および化合物(2-167-b)(0.370g、1.00mmol)の1,4-ジオキサン(10mL)溶液に、Pd(dba)(0.023g、0.0251mmol)、およびP(t-Bu)・HBF(0.015g、0.0517mmol)を加え撹拌した。さらに3Mリン酸カリウム水溶液(1.0mL、3.0mmol)を加え、4時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体をろ取し、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらにクロロホルム/メタノールからの再沈殿により精製し、化合物(2-167)を得た(0.317g、収率72%)。
【0257】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.42(dd,1H),7.92-7.89(m,2H),7.78(dd,1H),7.68(dd,1H),6.97(s,1H),6.79-6.75(m,2H),3.12(s,6H),2.93(t,2H),1.75(tt,2H),1.45(tq,2H),0.97(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=471nm(アセトニトリル中)
【0258】
【化65】
【0259】
合成例10:化合物(2-184)の合成
化合物(2-184)を合成するために、まず化合物(2-184-a)を合成した。続いて化合物(2-184-a)と前述の化合物(2-6-b)を鈴木カップリングさせて化合物(2-184-b)を得た。続いてエステル交換反応により化合物(2-184)を得た。
【0260】
化合物(2-184-a)の合成
臭化銅(II)(6.48g、29.0mmol)のアセトニトリル(200mL)溶液に亜硝酸イソブチル(4.40mL、37mmol)、および2-アミノベンゾチアゾール-6-カルボン酸エチル(5.56g、25.0mmol)を順に加えた。65℃にて1.5時間攪拌後、反応溶液を室温まで冷却後、0.4M塩酸(200mL)に注ぎ、反応を停止した。クロロホルム/水で分液後、有機層を水、次いで飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、エバポレーターで濃縮することにより化合物(2-184-a)を得た(6.56g、収率92%)。
【0261】
【化66】
【0262】
化合物(2-184-b)の合成
化合物2-184-a(0.631g、2.21mmol)、および化合物2-6-b(0.739g、2.00mmol)のTHF(20mL)溶液に、Pd(dba)(0.0464g、0.0507mmol)、およびP(t-Bu)・HBF(0.0290g、0.100mmol)を加え撹拌した。さらに3Mリン酸カリウム水溶液(2.0mL、6.0mmol)を加え、60℃で12時間加熱撹拌した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体をろ取し、化合物(2-184-b)を得た(0.782g、収率87%)。
【0263】
【化67】
【0264】
化合物(2-184)の合成
化合物(2-184-b)(0.450g、1.00mmol)、TiO(acac)(ビス(2,4-ペンタンジオナト)チタン(IV)オキシドの略。0.132g、0.504mmol)、およびn-ヘキサノール(0.512g、5.01mmol)のp-キシレン(15mL)溶液を4時間加熱還流した。反応溶液にメタノールを加え、析出した固体をろ取し、クロロホルムを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(2-184)を得た(0.366g、収率72%)。
【0265】
H-NMR(400MHz、CDCl):δ(ppm)=8.65(d,1H),8.19(dd,1H),8.11(d,1H),8.02(dd,1H),7.97-7.91(m,3H),7.88(dd,1H),6.79-6.75(m,2H),4.38(t,2H),3.13(s,6H),1.82(tt,2H),1.52-1.45(m,2H),1.40-1.34(m,4H),0.92(t,3H).
UV可視光スペクトル:λmax=482nm(アセトニトリル中)
【0266】
【化68】
【0267】
<実施例1>:化合物(2-3)を含む組成物の調製
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、組成物E1を得た。
・重合性液晶化合物(A-6) 75質量部
・重合性液晶化合物(A-7) 25質量部
・化合物(2-3) 4.0質量部
・重合開始剤: 2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;BASFジャパン社製)
6質量部
・レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
1.2質量部
・溶剤:o-キシレン 250質量部
【0268】
重合性液晶化合物(A-6)
【化69】
【0269】
重合性液晶化合物(A-7)
【化70】
【0270】
なお、重合性液晶化合物(A-6)は、Lub et al. Recl. Trav. Chim. Pays-Bas, 115, 321-328 (1996)に記載の方法で合成した。また、この方法に準拠して、重合性液晶化合物(A-7)を製造した。
【0271】
<実施例2>:化合物(2-106)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(2-106)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物E2を得た。
【0272】
<実施例3>:化合物(2-4)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(2-4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物E3を得た。
【0273】
<実施例4>:化合物(2-6)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(2-6)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物E4を得た。
【0274】
<実施例5>:化合物(2-116)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(2-116)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物E5を得た。
【0275】
<実施例6>:化合物(2-166)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(2-166)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物E6を得た。
【0276】
<実施例7>:化合物(2-167)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(2-167)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物E7を得た。
【0277】
<実施例8>:化合物(2-184)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(2-184)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物E8を得た。
【0278】
<比較例1>:化合物(2-1)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(2-1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物C1を得た。
【0279】
<比較例2>:化合物(3)を含む組成物の調製
化合物(2-3)の代わりに、化合物(3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、組成物C2を得た。
【0280】
<偏光板の製造>
1.配向膜の形成
透明基材としてガラス基板を用いた。ガラス基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液(配向層形成用組成物)をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成し、ガラス基板上に配向膜が形成された積層体1を得た。
【0281】
2.偏光膜の形成
上記で得られた積層体1の配向膜上に、上記で得られた組成物をスピンコート法により塗布し、120℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥した後、速やかに70℃(降温時にスメクチック液晶相を示す温度)以下に冷却して、配向膜上に第1乾燥被膜が形成された積層体2を得た。
【0282】
次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用い、紫外線を、露光量2400mJ/cm(365nm基準)で偏光膜に照射することにより、第1乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、組成物の液晶状態を保持したまま重合させ、第1乾燥被膜から偏光膜を形成して、積層体3として偏光板を得た。
【0283】
<評価>
積層体1の配向膜上に偏光膜が形成された状態の積層体2について、以下のようにして二色比の測定を行った。積層体2の偏光膜の極大吸収波長(λmax)における透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に、積層体1を備えるフォルダーをセットした装置を用いて、ダブルビーム法で測定した。該フォルダーには、リファレンス側に光量を50%カットするメッシュを設置した。測定された透過軸方向の吸光度(A1)及び吸収軸方向の吸光度(A2)の値から、比(A2/A1)を算出し、UV露光前の二色比(DR1)とした。
【0284】
UV露光後の積層体3について、積層体3の偏光膜の極大吸収波長(λmax)における透過軸方向の吸光度及び吸収軸方向の吸光度を上記と同様にして測定して、UV露光後の二色比(DR2)を算出した。UV露光後の二色比(DR2)をUV露光前の二色比(DR1)で除して、二色比維持率(DR2/DR1;%)を算出した。結果を表1にまとめた。積層体3の二色比維持率が50%を超える場合、偏光板として良好とする。
【0285】
【表1】
【0286】
表1から、式(1)で表され、極大吸収波長を420nm以上520nm以下の波長範囲に有する化合物と、重合性液晶化合物および液晶性の高分子化合物の少なくとも一方の化合物とを含む組成物から形成される偏光膜を備えた偏光板は、偏光板の製造工程にUV照射を含む場合に、UV照射前後での二色比の維持率に優れることがわかる。