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特開2023-184675澱粉含有食品用ほぐれ剤、及び澱粉含有食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184675
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】澱粉含有食品用ほぐれ剤、及び澱粉含有食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/10 20160101AFI20231221BHJP
   A23D 7/01 20060101ALI20231221BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20231221BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20231221BHJP
【FI】
A23L29/10
A23D7/01
A23D7/00 504
A23L7/109 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023190659
(22)【出願日】2023-11-08
(62)【分割の表示】P 2019009739の分割
【原出願日】2019-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 太一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】徳永 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】生稲 淳一
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、低温時でも良好なほぐれ性を有する澱粉含有食品用ほぐれ剤を提供することである。また、食感が良好でほぐれ性の良い澱粉含有食品を提供することである。
【解決手段】油脂と乳化剤を含有する澱粉含有食品用ほぐれ剤であって、
油脂を92.0~99.5質量%含有し、以下の乳化剤Aを0.2~1.0質量%、乳化剤Bを0.1~1.2質量%、乳化剤Cを0.1~5.0質量%、乳化剤Dを0.1~0.5質量%含有する、澱粉含有食品用ほぐれ剤。乳化剤A:60質量%以上が不飽和脂肪酸であるグリセリンモノ脂肪酸エステル。乳化剤B:60質量%以上が不飽和脂肪酸である有機酸モノグリセリド。乳化剤C:60質量%以上が不飽和脂肪酸であり、ポリグリセリンの平均重合度が4~6で、HLBが6~8であるポリグリセリン脂肪酸エステル。乳化剤D:30~60質量%が不飽和脂肪酸であり、HLBが1~5であるポリグリセリン脂肪酸エステル
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂と乳化剤を含有する澱粉含有食品用ほぐれ剤であって、
油脂を92.0~99.5質量%含有し、
以下の乳化剤Aを0.2~1.0質量%、乳化剤Bを0.1~1.2質量%、乳化剤Cを0.1~5.0質量%、乳化剤Dを0.1~0.5質量%含有する、
澱粉含有食品用ほぐれ剤。
(乳化剤A)構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であるグリセリンモノ脂肪酸エステル
(乳化剤B)構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であるクエン酸モノグリセリド
(乳化剤C)構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であり、ポリグリセリンの平均重合度が4~6で、HLBが6~8であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(乳化剤D)構成脂肪酸の30~60質量%が不飽和脂肪酸であり、HLBが1~5であるポリグリセリン脂肪酸エステル
【請求項2】
麺類のコーティングに用いるための請求項1に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤。
【請求項3】
10℃以下での澱粉含有食品のほぐれ性を有する、請求項1又は2の澱粉含有食品用ほぐれ剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤でコーティングされた、澱粉含有食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、澱粉含有食品用ほぐれ剤、澱粉含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
そば、うどん、中華麺、パスタなどは、茹でて食すが、特に加熱などしなくても、そのまま食すことができるように流通しているものも多い。しかし、それらの麺類は、流通あるいは保存中に麺と麺が付着するなどの問題が発生しやすく、これらの問題を改善するために、油脂をコーティングし、麺相互の付着を防止し、ほぐれ性を改善することが行われてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、乳化剤としてグリセリンモノ脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するほぐれ性改善用油脂組成物の例が提案されている。
【0004】
これらの麺類は、製造工程、あるいは流通において冷蔵・冷凍されることがあるが、従来のほぐれ性改善用油脂組成物では、低温時に流動性が損なわれ、低温時のほぐれ性が十分でないことがあった。また、飯類も、保存中に冷蔵・冷凍されることが多く、同様の問題があった。
【特許文献1】特開2013-226120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、低温時でも良好なほぐれ性を有する澱粉含有食品用ほぐれ剤を提供することである。また、食感が良好でほぐれ性の良い澱粉含有食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、油脂と特定の乳化剤を用いることで、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[4]を提供する。
[1] 油脂と乳化剤を含有する澱粉含有食品用ほぐれ剤であって、
油脂を92.0~99.5質量%含有し、
以下の乳化剤Aを0.2~1.0質量%、乳化剤Bを0.1~1.2質量%、乳化剤Cを0.1~5.0質量%、乳化剤Dを0.1~0.5質量%含有する、
澱粉含有食品用ほぐれ剤。
(乳化剤A)構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であるグリセリンモノ脂肪酸エステル
(乳化剤B)構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸である有機酸モノグリセリド
(乳化剤C)構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であり、ポリグリセリンの平均重合度が4~6で、HLBが6~8であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(乳化剤D)構成脂肪酸の30~60質量%が不飽和脂肪酸であり、HLBが1~5であるポリグリセリン脂肪酸エステル
[2] 麺類のコーティングに用いるための請求項1に記載の澱粉含有食品用ほぐれ剤。
[3] 10℃以下での澱粉含有食品のほぐれ性を有する、[1]又は[2]の澱粉含有食品用ほぐれ剤。
[4] [1]~[3]のいずれかの澱粉含有食品用ほぐれ剤でコーティングされた、澱粉含有食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、澱粉含有食品の低温時のほぐれ性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。
【0010】
[澱粉含有食品用ほぐれ剤]
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、油脂と乳化剤を含む。乳化剤としては、乳化剤A(構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であるグリセリンモノ脂肪酸エステル)、乳化剤B(構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸である有機酸モノグリセリド)、乳化剤C(構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であり、ポリグリセリンの平均重合度が4~6で、HLBが6~8であるポリグリセリン脂肪酸エステル)、乳化剤D(構成脂肪酸の30~60質量%が不飽和脂肪酸であり、HLBが1~5であるポリグリセリン脂肪酸エステル)を含有する。
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤中の油脂と乳化剤A~Dにより、澱粉含有食品の付着が抑制される。特に乳化剤B、Cにより、澱粉含有食品への澱粉含有食品用ほぐれ剤の伸展性が改善されるため、乳化剤B,Cがない場合に比べて澱粉含有食品の付着が抑制される。さらに、乳化剤Cは、低温時の澱粉含有食品用ほぐれ剤の伸展性改善効果が高く、低温時のほぐれ性改善効果が高くなる。なお、乳化剤Aは、澱粉含有食品用ほぐれ剤から乳化剤成分の分離を起こりにくくする効果を有し、乳化剤Dは、結晶抑制剤であり、飽和脂肪酸を有する乳化剤中の結晶化を抑制する効果を有する。
<油脂>
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、油脂を含む。油脂としては、動植物油脂、グリセリンと脂肪酸から合成した油脂及びそれらの分別油、エステル交換油、水素添加油などを単独あるいは組み合わせて用いることができる。
動植物油脂としては、例えば、大豆油、なたね油、ハイオレイックなたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、エゴマ油、亜麻仁油、落花生油、グレープシード油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油などが挙げられる。
グリセリンと脂肪酸から合成した油脂としては、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)などが挙げられる。
分別油としては、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクションなどのパーム油の分別油が挙げられる。
エステル交換油としては、パーム油あるいはパーム油の分別油と他の液状油脂のエステル交換油、あるいはMCTと植物油などとのエステル交換油を用いることができる。
水素添加油は、動植物油、動植物油の分別油の水素添加油の他、エステル交換油の水素添加油などが挙げられる。
【0011】
本発明で用いる油脂は、室温で流動性を失うものは、澱粉含有食品への塗布時に加熱により溶解させる必要があるので、30℃で流動性を有する態様のものが好ましい。原料油脂の一部が30℃で固体であっても、他の原料油脂と併用して用いることによって、油脂全体として流動性を有していれば好適に使用できる。20℃で流動性を有する油脂がより好ましく、20℃で液状である油脂がさらに好ましい。特に、融点の低い液状油でありながら、酸化安定性も良好であるという利点を有することから、なたね油、パームオレイン、これらの混合物などを好適に使用することができる。
【0012】
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、前述の油脂を、92.0~99.5質量%含有する。油脂の含有量が92.0~99.5質量%の範囲であれば、澱粉含有食品のほぐれ性が許容できる範囲である。澱粉含有食品用ほぐれ剤は、油溶性成分中に油脂を98.0~99.5質量%含有することが好ましい。
【0013】
<乳化剤>
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、以下の乳化剤A、乳化剤B、乳化剤C、乳化剤Dを含有する。
【0014】
(乳化剤A)
乳化剤Aは、構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であるグリセリンモノ脂肪酸エステルである。乳化剤Aは、低温でのほぐれ性を有するために、融点が低いことが好ましく、そのため、乳化剤Aの構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸である。構成脂肪酸の70~100質量%が不飽和脂肪酸であることがより好ましく、構成脂肪酸の80~98質量%が不飽和脂肪酸であることがさらに好ましい。また、不飽和脂肪酸は、炭素数16~22の直鎖状不飽和脂肪酸を用いることができる。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸が好ましく、複数の不飽和脂肪酸を用いること、あるいは二重結合を複数有するリノール酸、及び/又はリノレン酸を用いることがより好ましい。特に好ましくは、構成脂肪酸の60~80質量%がリノール酸である。乳化剤Aの不飽和脂肪酸以外の脂肪酸は飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸としては炭素数16~22の直鎖状飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸を用いることがより好ましい。
【0015】
グリセリンモノ脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸をエステル化したものを用いることができ、ジグリセリドを含む反応生成物をそのまま用いることができる。また、反応生成物を蒸留等で純度を高めたものを用いることもできる。
【0016】
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤Aを0.2~1.0質量%含有する。乳化剤を含有する油脂組成物は、親水性の高い乳化剤成分が分離しやすく、特に組成物中の水分量が増加すると分離しやすくなる。乳化剤Aは、澱粉含有食品への澱粉含有食品用ほぐれ剤の伸展性を高める効果が弱いものの、他の乳化剤の分離を抑える効果を有する。そのため、乳化剤Aの含有量は、0.2質量%以上あれば、澱粉含有食品用ほぐれ剤から他の乳化剤成分の分離を起こりにくくする効果を奏することができる。一方、1.0質量%以下であれば、乳化剤Aの沈殿等も防止することができる。澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤Aを0.2~0.8質量%含有することが好ましく、0.3~0.6質量%含有することがより好ましい。
【0017】
(乳化剤B)
乳化剤Bは、構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸である有機酸モノグリセリドである。有機酸モノグリセリドを構成する有機酸としては、特に限定されるものではないが、クエン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、酪酸等を好適に使用できる。特にクエン酸の使用が、高いほぐれ性効果が見られるため好ましい。
【0018】
乳化剤Bは、低温でのほぐれ性を有するために、融点が低いことが好ましく、そのため、乳化剤Bの構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸である。構成脂肪酸の70~100質量%が不飽和脂肪酸であることがより好ましく、構成脂肪酸の80~98質量%が不飽和脂肪酸であることがさらに好ましい。また、不飽和脂肪酸は、炭素数16~22の直鎖状不飽和脂肪酸を用いることができる。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸が好ましく、複数の不飽和脂肪酸を用いること、あるいは二重結合を複数有するリノール酸、及び/又はリノレン酸を用いることがより好ましい。なお、構成脂肪酸の65~90質量%がオレイン酸であることが好ましい。乳化剤Bの不飽和脂肪酸以外の脂肪酸は飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸としては炭素数16~22の直鎖状飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸を用いることがより好ましい。
【0019】
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤Bを0.1~1.2質量%含有する。乳化剤Bは、澱粉含有食品への澱粉含有食品用ほぐれ剤の伸展性を高めるため、乳化剤Bの含有用は、0.1質量%以上である。一方、1.2質量%以下であれば、乳化剤Bの沈殿等も防止することができる。澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤Bを0.2~0.8質量%含有することが好ましく、0.3~0.6質量%含有することがより好ましい。
【0020】
(乳化剤C)
乳化剤Cは、構成脂肪酸の60質量%以上が不飽和脂肪酸であり、ポリグリセリンの平均重合度が4~6で、HLBが6~8であるポリグリセリン脂肪酸エステルである。このようなポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、澱粉含有食品用ほぐれ剤の低温での流動性を奏することができる。
【0021】
乳化剤Cは、低温でのほぐれ性を有するために、融点が低いことが好ましく、そのため、乳化剤Cは、60質量%以上が不飽和脂肪酸である。構成脂肪酸の70~100質量%が不飽和脂肪酸であることがより好ましく、構成脂肪酸の80~98質量%が不飽和脂肪酸であることがさらに好ましい。また、不飽和脂肪酸は、炭素数16~22の直鎖状不飽和脂肪酸を用いることができる。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸が好ましく、複数の不飽和脂肪酸を用いること、あるいは二重結合を複数有するリノール酸、及び/又はリノレン酸を用いることがより好ましい。なお、構成脂肪酸の65~90質量%がオレイン酸であることが好ましい。乳化剤Cの不飽和脂肪酸以外の脂肪酸は飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸としては炭素数16~22の直鎖状飽和脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸を用いることがより好ましい。
【0022】
本願において、ポリグリセリン脂肪酸エステルは分子蒸留等で高純度にしたものを用いることもできるが、一般的に、重合度4以上のものは、単離することが困難なため、様々な重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物であることを許容する。本発明において、平均重合度(百分率)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの重合度を示すものである。乳化剤Cのポリグリセリン脂肪酸エステルのより好ましい平均重合度は5である。
【0023】
HLBは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。乳化剤Cのポリグリセリン脂肪酸エステルのより好ましいHLBは7である。
【0024】
本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。同算出方法では、HLB値は、算術平均として算出される。
【0025】
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤Cを0.1~5.0質量%含有する。乳化剤Cは、乳化剤Bとともに澱粉含有食品への澱粉含有食品用ほぐれ剤の伸展性を高めるだけでなく、低温時(例えば、5℃付近)の伸展性も高めることができる。そのため、乳化剤Cの含有用は、0.1質量%以上である。一方、5.0質量%以下であれば、乳化剤Cが沈殿するなどの問題を防止することができる。澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤Bを0.2~2.0質量%含有することが好ましく、0.5~1.5質量%含有することがより好ましい。
【0026】
(乳化剤D)
乳化剤Dは、30~60質量%が不飽和脂肪酸であり、HLBが1~5であるポリグリセリン脂肪酸エステルである。このようなポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることで、澱粉含有食品用ほぐれ剤に存在する固形成分(例えば、乳化剤A、B、C中の構成脂肪酸が飽和脂肪酸の成分)の結晶化を抑制することができる。
【0027】
乳化剤Dは、他の固形成分の結晶化を抑制するために、構成脂肪酸中に一定量の不飽和脂肪酸を有する。残りの構成脂肪酸は飽和脂肪酸である。油脂の結晶抑制剤として利用されているポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの結晶抑制効果は不明であるが、油脂に溶解しやすく、固形分の飽和脂肪酸と親和性の高い飽和脂肪酸を構成脂肪酸に有することと、結晶化を抑制する不飽和脂肪酸を構成脂肪酸に持つことが重要である。そのため、油脂への溶解性を高めるためHLBは5以下である。また、他の乳化剤との親和性を高めるためにHLBは1~5が好ましく、2~5がより好ましく、3~5が最も好ましい。なお、平均重合度は限定するものではないが、通常用いられている2~40のものを用いることができ、4~15がより好ましい。乳化剤Dは、構成脂肪酸の30~60質量%が不飽和脂肪酸であることがより好ましく、構成脂肪酸の35~55質量%が不飽和脂肪酸であることがさらに好ましい。また、不飽和脂肪酸は、炭素数16~22の直鎖状不飽和脂肪酸を用いることができる。不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸が好ましく、特に、構成脂肪酸の35~55質量%がオレイン酸であることがより好ましく、構成脂肪酸の40~50量%がオレイン酸であることがさらに好ましい。乳化剤Dの不飽和脂肪酸以外の脂肪酸は飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸としては炭素数10~22の直鎖状飽和脂肪酸が好ましく、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸を用いることがより好ましい。
【0028】
本発明において、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤Dを0.1~0.5質量%含有する。乳化剤Dは、0.1質量%以上含有することで、他の固形成分の結晶化を抑制することができる。一方、0.5質量%を超えると、乳化剤Dそのものが固化する恐れがある。澱粉含有食品用ほぐれ剤は、乳化剤Dを0.2~0.4質量%含有することが好ましく、0.2~0.3質量%含有することがより好ましい。
【0029】
<その他成分>
本発明の澱粉含有食品用ほぐれ剤は、上記成分以外にも、澱粉含有食品用ほぐれ剤に一般的に配合される原材料を使用することができる。具体的には、例えば、pH調整剤、調味剤、着色料、香料、酸化防止剤、糖類、糖アルコール類、安定剤、乳化剤等を使用することができる。これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、澱粉含有食品用ほぐれ剤中に10質量%以下含有させることができ、好ましくは0~3質量%、より好ましくは0~1質量%含有させることができる。
【0030】
<澱粉含有食品>
本発明の澱粉含有食品は、前述の澱粉含有食品用ほぐれ剤でコーティングされた状態のものであり、そば、うどん、中華麺、パスタ等の麺類、及び、ご飯、チャーハン、カレーライス、丼物等の飯類である。例えば、麺類あるいは飯類に塗布して、冷蔵したものである。澱粉含有食品用ほぐれ剤を塗布した後に、冷蔵・冷凍しても、澱粉含有食品のほぐれ性を良好に維持することができる。なお、澱粉含有食品用ほぐれ剤は、澱粉含有食品100質量部に対して、0.1~7質量部となるように塗布することが好ましく、0.2~5.0質量部となるように塗布することがより好ましい。
【実施例0031】
次に、実施例、比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0032】
[試料(澱粉含有食品用ほぐれ剤)]
表1の配合にて60℃で均一溶解するまで加熱混合し、澱粉含有食品用ほぐれ剤(試料1~5)を得た。なお、使用した原材料は以下の通りである。
油脂1(精製菜種(キャノーラ)油:日清オイリオグループ株式会社製)、
乳化剤A(サフラワー油脂肪酸の脂肪酸モノグリセライド:モノエステル含量約93%以上、構成脂肪酸中のオレイン酸含有量16%、リノール酸含有量73%、パルミチン酸含有量7%、ステアリン酸含有量3%、HLB4.2、)
乳化剤B(クエン酸モノオレイン酸グリセリン:構成脂肪酸中のオレイン酸含有量81%、リノール酸含有量8%、パルミチン酸含有量6%、ステアリン酸含有量3%、HLB7.0)
乳化剤C(ポリグリセリン脂肪酸エステル:HLB7.0、ポリグリセリン重合度5、構成脂肪酸中のオレイン酸含有量78%、リノール酸含有量12%、ラウリン酸含有量4%、パルミチン酸含有量3%、ステアリン酸含有量2%)
乳化剤D(ポリグリセリン脂肪酸エステル:HLB4.1、ポリグリセリン重合度10、構成脂肪酸中のオレイン酸含有量47%、リノール酸含有量5%、ラウリン酸含有量2%、パルミチン酸含有量43%、ステアリン酸含有量2%)
【0033】
[麺に対する伸展性]
市販の麺皮(株式会社きさいち食品製「春巻皮」)をバットに広げ、試料1~5と共に約5℃で1日保管する。麺皮が鉛直に対して12°になるようにバットを傾け、試料を0.5mlピペットで麺皮に付着させる。1秒後の試料の移動距離を測定した。
【0034】
[麺のほぐれ性]
市販の生麺(「蒸し焼きそば」 東洋水産株式会社製)を3分30秒茹で、水で冷却し
た後、水を分離した。油脂組成物を麺に対して3質量%スプレーして塗布してサンプル麺
を得た。24時間5℃にて冷蔵し、専門パネラー10名でサンプル麺のほぐれ性を評価し、平均値を算出した。
ほぐれ性の評価基準は以下の通りである。
2:比較例1よりも、ほぐれ性が良い。
1:比較例1と同程度のほぐれ性を有する。
0:比較例1よりも、ほぐれ性が悪い。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1~3は比較例1に比べて、約5℃において麺に対する伸展性に優れ、良好な流動性を有することがわかる。また、そのため、低温でも十分なほぐれ性を有している。