(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184693
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 25/12 20060101AFI20231221BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20231221BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231221BHJP
C08K 3/015 20180101ALI20231221BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L55/02
C08L101/00
C08K3/015
C08K3/22
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023190929
(22)【出願日】2023-11-08
(62)【分割の表示】P 2022517247の分割
【原出願日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132479
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソンキョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ファ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・イル・カン
(72)【発明者】
【氏名】セジン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンミン・キム
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂本来の機能が良好に発現されると共に、初期抗菌性と抗菌持続性が優れた熱可塑性樹脂の開発が至急な実情である。
【解決手段】本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と;B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と;C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と;D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.2~10重量部とを含む熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と、B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と、C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と、D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.2~10重量部とを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂は、(A-1)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A-1)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエン化合物を含んでなる共役ジエンゴムの平均粒径が0.05~0.5μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記B)非共有電子対を含む重合体は、ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂、ポリ(エーテルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エステルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エーテルエステル)ブロック共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記B)非共有電子対を含む重合体は、13C NMR測定時にCH2のピークの積分値の和Aと、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基及びアミド基のピークの積分値の和Bとの比率B/Aが0.01~1.0であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記C)無機抗菌剤は、銀(Ag)系無機抗菌剤、亜鉛(Zn)系無機抗菌剤、及び銀と亜鉛の混合系無機抗菌剤からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記C)無機抗菌剤は、活性成分である銀と亜鉛が、無機抗菌剤の総重量に対して0.1~5重量%含まれることを特徴とする、請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記D)酸化亜鉛は、BET表面積が28~50m2/gであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
JIS Z 2801の抗菌評価法による前処理後の抗菌持続性が2.5以上であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
JIS Z 2801の抗菌評価法による酸処理後の抗菌持続性が2.4以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
JIS Z 2801の抗菌評価法によるアルカリ処理後の抗菌持続性が2.2以上であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と、B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と、C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と、D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.2~10重量部とを含んで混練及び押出するステップを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年10月14日付の韓国特許出願第10-2020-0132479号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、人体への毒性がなく、熱安定性に優れながらも、初期抗菌性だけでなく抗菌持続性に優れ、射出時にガス不良や剥離現象がない熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、個人の健康と衛生への関心の増加及び所得水準の向上に伴い、価格は多少高くても抗菌衛生機能が含まれた熱可塑性樹脂製品に対する需要が増加している傾向にある。これによって、生活用品及び家電製品などの表面から菌を除去又は抑制できる抗菌熱可塑性樹脂製品が増えており、また、さらに安定的でかつ信頼性のある機能性抗菌素材の開発が非常に重要となっている。
【0004】
抗菌性ABS樹脂を製造するためには、抗菌剤の添加が必ず必要である。前記抗菌剤は、有機抗菌剤と無機抗菌剤とに分けることができる。
【0005】
前記有機抗菌剤は、初期抗菌性は優れるが、人体への毒性の危険があり、高温で加工時に分解されて抗菌効果が失われる恐れがある。また、抗菌持続性が短いため、使用範囲が極めて制限的である。
【0006】
前記無機抗菌剤は、熱安定性に優れるが、加工時に分散の問題及び変色などの欠点がある。また、抗菌性金属イオンの早い溶出により抗菌持続性が低いため、使用に多くの制約が伴う。
【0007】
したがって、熱可塑性樹脂本来の機能が良好に発現されると共に、初期抗菌性と抗菌持続性がいずれも優れた熱可塑性樹脂の開発が至急な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2004-0054985号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、人体への毒性がなく、熱安定性に優れながらも、初期抗菌性だけでなく抗菌持続性に優れ、射出時にガス不良や剥離現象がない熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と;B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と;C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と;D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.2~10重量部とを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と;B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と;C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と;D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.2~10重量部とを混練及び押出するステップを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、人体への毒性がなく、熱安定性に優れながらも、初期抗菌性だけでなく抗菌持続性に優れ、射出時にガス不良や剥離現象がない熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を詳細に説明する。
【0016】
本発明者らは、ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体と芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体を含むベース樹脂に、個別には抗菌持続性が劣悪な重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体;リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤;及び所定のBET表面積を有する酸化亜鉛の全てを所定の含量で含ませる場合、水に溶解される無機抗菌剤と水に溶解されない酸化亜鉛の有機的結合によるシナジー効果に加え、ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂の非共有電子対による金属イオンとの配位結合による、金属イオンの溶出速度を下げる効果により、初期抗菌性及び抗菌持続性が全て大きく増加することを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と;B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と;C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と;D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.2~10重量部とを含むことを特徴とし、このような場合、人体への毒性がなく、熱安定性に優れながらも、初期抗菌性だけでなく抗菌持続性に優れ、射出時にガス不良や剥離現象がないという効果がある。
【0018】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0019】
(A-1)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体
本発明の(A-1)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、ベース樹脂の総重量に対して、好ましくは20~40重量%であってもよく、より好ましくは20~35重量%、さらに好ましくは25~35重量%、より一層好ましくは25~30重量%である。
【0020】
前記(A-1)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、好ましくは、共役ジエン化合物を含んでなる共役ジエンゴムにビニルシアン化合物及び芳香族ビニル化合物を含んでグラフト重合された共重合体である。
【0021】
前記共役ジエンゴムは、好ましくは、平均粒径が0.05~0.5μmであってもよく、より好ましくは0.2~0.5μm、さらに好ましくは0.25~0.45μm、より一層好ましくは0.3~0.4μmである。
【0022】
本発明において、平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering)を用いて測定することができ、詳細には、Nicomp380装置(製品名、製造社:PSS)を用いてインテンシティガウス分布(Intensity Gaussian Distribution)で測定することができる。
【0023】
また、本発明において、平均粒径は、動的光散乱法により測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には散乱強度平均粒径を意味することができる。
【0024】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル及びこれらの誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルであってもよい。
【0025】
本発明において、ある化合物の誘導体とは、当該化合物内の1つ以上の水素がアルキル基又はハロゲン基などの他の置換基で置換された化合物を意味することができる。
【0026】
前記ビニルシアン化合物は、好ましくは(A-1)グラフト共重合体の総重量に対して3~25重量%、より好ましくは5~20重量%含まれてもよい。
【0027】
前記共役ジエン化合物は、一例として、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレン(piperylene)からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは1,3-ブタジエンである。
【0028】
前記共役ジエン化合物は、好ましくは(A-1)グラフト共重合体の総重量に対して50~80重量%、より好ましくは55~70重量%含まれてもよい。
【0029】
前記共役ジエンゴムは、二重結合と単結合が交互に配列している構造である共役ジエン(conjugated diene)化合物を含んで重合された重合体又は共重合体を意味し、好ましくは、ブタジエン重合体、ブタジエン-スチレン共重合体及びブタジエン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0030】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、ρ-メチルスチレン、ο-エチルスチレン、ρ-エチルスチレン、ビニルトルエン及びこれらの誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0031】
前記芳香族ビニル化合物は、好ましくは(A-1)グラフト共重合体の総重量に対して25~50重量%、より好ましくは25~40重量%含まれてもよい。
【0032】
前記(A-1)グラフト共重合体の製造方法は、この技術分野で一般的に使用可能な製造方法であれば、制限されず、好ましくは乳化重合により製造されてもよく、この場合、グラフト効率に優れるので、機械的物性及び加工性などに優れるという効果がある。
【0033】
(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体
本発明の(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは60~80重量%含まれてもよく、より好ましくは65~80重量%、さらに好ましくは65~75重量%、より一層好ましくは70~75重量%である。
【0034】
前記(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは、芳香族ビニル化合物55~85重量%及びビニルシアン化合物15~45重量%を含んでなる共重合体であってもよく、より好ましくは、芳香族ビニル化合物55~75重量%及びビニルシアン化合物25~45重量%を含んでなる共重合体であり、さらに好ましくは、芳香族ビニル化合物60~70重量%及びビニルシアン化合物30~40重量%を含んでなる共重合体である。
【0035】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、p-エチルスチレン、ビニルトルエン及びこれらの誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはスチレンである。
【0036】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル及びこれらの誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0037】
前記(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、好ましくは重量平均分子量が50,000~200,000g/molであってもよく、より好ましくは60,000~180,000g/mol、さらに好ましくは70,000~150,000g/molである。
【0038】
本発明において、重量平均分子量は、一例として、樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に1mg/mlの濃度で溶かして製造した後、これを0.45μmのシリンジフィルター(syringe filer)で濾過し、ゲルクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0039】
前記(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体の製造方法は、特に制限されず、この技術分野で通常使用される製造方法であってもよく、好ましくは連続塊状重合方法であってもよく、この場合、製造コストが削減されるだけでなく、機械的物性に優れるという効果がある。
【0040】
B)非共有電子対を含む重合体
本発明のB)非共有電子対を含む重合体は、ベース樹脂100重量部を基準として、一例として0.1~32重量部であってもよく、好ましくは0.1~30重量部であってもよく、この範囲内で、無機抗菌剤及び酸化亜鉛の金属イオンの溶出速度を大きく下げることで、抗菌持続性を大きく増加させるという効果がある。このとき、ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂の非共有電子対が無機抗菌剤及び酸化亜鉛の金属イオンと配位結合することによって、前記金属イオンの熱可塑性樹脂組成物の外部への溶出速度を大きく下げることで、抗菌持続性を向上させる。
【0041】
前記B)非共有電子対を含む重合体は、好ましくは、ゲル透過クロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)により測定した重量平均分子量が500,000g/mol超であってもよく、より好ましくは510,000g/mol以上、さらに好ましくは600,000g/mol以上、より一層好ましくは660,000g/mol以上、特に好ましくは700,000g/mol以上であり、具体例として500,000g/mol超~1,000,000g/mol以下、好ましい例として510,000~1,000,000g/mol、より好ましい例として600,000~1,000,000g/mol、さらに好ましい例として660,000~1,000,000g/molであり、この範囲内で、無機抗菌剤及び酸化亜鉛の金属イオンの溶出速度を大きく下げることで、抗菌持続性を大きく増加させるという効果がある。
【0042】
前記B)非共有電子対を含む重合体は、好ましくは、13C NMR測定時にCH2のピークの積分値の和Aと、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基及びアミド基のピークの積分値の和Bとの比率B/Aが0.01~1.0であってもよく、より好ましくは0.1~1.0、さらに好ましくは0.2~0.9、より一層好ましくは0.3~0.9、特に好ましくは0.3~0.6であり、この範囲内で、無機抗菌剤及び酸化亜鉛から金属イオンの溶出速度を大きく下げることで、抗菌持続性を大きく増加させるという利点がある。
【0043】
前記B)非共有電子対を含む重合体は、エーテル、エステル、アミド、アミン及びヒドロキシ基の官能基のうち1つ以上を有する重合体を総称するもので、一例として、ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂、ポリ(エーテルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エステルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エーテルエステル)ブロック共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選択された1種以上であってもよく、この範囲内で、無機抗菌剤及び酸化亜鉛の金属イオンの溶出速度を大きく下げることで、抗菌持続性を大きく増加させるという効果がある。
【0044】
前記ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂、ポリ(エーテルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エステルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エーテルエステル)ブロック共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂は、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で通常使用される樹脂や共重合体であれば、特に制限されない。
【0045】
前記ポリアミド樹脂は、好ましくは、ナイロン6、ナイロン66またはこれらの混合物であってもよい。
【0046】
前記ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂は、一例としてポリ(エーテルエステルアミド)ブロック共重合体であってもよく、好ましくは、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩;及びポリアルキレングリコールと、必要に応じて炭素数4~20のジカルボン酸を含む反応混合物のブロック共重合体であってもよい。
【0047】
前記炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩は、一例として、ω-アミノカプロン酸、ω-アミノエナント酸、ω-アミノカプリル酸、ω-アミノペルコン酸、ω-アミノカプリン酸、1,1-アミノウンデカン酸、1,2-アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸類;カプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウリルラクタムなどのラクタム類;及びヘキサメチレンジアミン-アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸塩などのジアミン-ジカルボン酸塩などからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、1,2-アミノドデカン酸、カプロラクタム及びヘキサメチレンジアミン-アジピン酸塩からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0048】
前記ポリアルキレングリコールは、一例として、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-及び1,3-プロピレングリコール)、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロック又はランダム共重合体、及びエチレングリコールとテトラヒドロフランの共重合体などからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、またはこれらの混合物であってもよい。
【0049】
前記炭素数4~20のジカルボン酸は、一例として、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸及びドデカノカルボン酸などからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0050】
他の例として、前記炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩と前記ポリアルキレングリコールの結合はエステル結合であり、前記炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩と前記炭素数4~20のジカルボン酸の結合はアミド結合であり、前記ポリアルキレングリコールと前記炭素数4~20のジカルボン酸の結合はエステル結合である。
【0051】
前記ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂は、一例として、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩5~95重量%、及びポリアルキレングリコール5~95重量%を含んでなるブロック共重合体であってもよい。
【0052】
他の例として、前記ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂は、炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩5~65重量%、及びポリアルキレングリコール35~65重量%を含んでなるブロック共重合体であってもよい。
【0053】
前記ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂は、一例として、炭素数4~20のジカルボン酸を、前記炭素数6以上のアミノカルボン酸、ラクタムまたはジアミン-ジカルボン酸塩と前記ポリアルキレングリコールを合わせた総100重量部に対して、70重量部以下、より好ましくは5~65重量部で含むことができる。
【0054】
前記B)非共有電子対を含む重合体は、本発明の属する技術分野で通常用いる公知の合成方法により製造されてもよく、本発明の定義に従う限り、特に制限されない。
【0055】
C)無機抗菌剤
本発明のC)無機抗菌剤は、ベース樹脂100重量部を基準として、好ましくは0.1~5重量部含まれてもよく、より好ましくは0.1~3重量部、さらに好ましくは0.1~1重量部、より一層好ましくは0.1~0.9重量部、特に好ましくは0.1~0.5重量部、特にさらに好ましくは0.2~0.5重量部、最も好ましくは0.2~0.4重量部である。
【0056】
本発明において、無機抗菌剤は、好ましくは、リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤であり、前記担持体においてイオン交換可能なイオンを部分的又は全体的に抗菌性金属イオン(活性成分)である銀、亜鉛、銅、水銀または錫イオンなどで置換したものである。
【0057】
前記C)無機抗菌剤は、好ましくは、銀(Ag)系無機抗菌剤;亜鉛(Zn)系無機抗菌剤;及び銀と亜鉛の混合系無機抗菌剤からなる群から選択された1種以上である。
【0058】
前記銀(Ag)系無機抗菌剤は、銀成分を含む無機抗菌剤であれば、特に制限されないが、好ましくは、銀成分を含有した担持体である。
【0059】
前記亜鉛(Zn)系無機抗菌剤は、亜鉛成分を含む無機抗菌剤であれば、特に制限されないが、好ましくは、亜鉛成分を含有した担持体である。
【0060】
前記銀と亜鉛の混合系無機抗菌剤は、銀成分と亜鉛成分を含む無機抗菌剤であれば、特に制限されないが、好ましくは、銀成分と亜鉛成分を含有した担持体である。
【0061】
前記銀成分及び亜鉛成分は無機抗菌剤の活性成分であって、このような活性成分は、無機抗菌剤の総重量に対して、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは1~5重量%、さらに好ましくは2~5重量%含まれてもよい。
【0062】
前記活性成分は、好ましくは担持体内でイオン化されてもよい。
【0063】
前記担持体は、好ましくは、ゼオライト、リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上であってもよく、より好ましくは、リン酸ガラス、シリカゲルまたはこれらの混合物であってもよい。
【0064】
D)BET表面積28m
2
/g以上の酸化亜鉛
本発明のD)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛は、ベース樹脂の総100重量部を基準として、一例として、0.2~10重量部含まれてもよく、好ましくは0.4~10重量部含まれてもよく、より好ましくは0.4~5重量部、さらに好ましくは0.4~4.5重量部、より一層好ましくは0.5~4重量部である。
【0065】
前記D)酸化亜鉛は、好ましくは、BET表面積が28~50m2/gであってもよく、より好ましくは30~50m2/g、さらに好ましくは30~45m2/g、より一層好ましくは35~45m2/gである。
【0066】
本発明において、BET表面積は、窒素ガス吸着法を用いて、BET分析装置(Micromeritics社のSurface Area and Porosity Analyzer ASAP 2020装置)により測定することができる。
【0067】
前記D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛は、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で通常用いられる酸化亜鉛であれば、特に制限されない。
【0068】
熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、JIS Z 2801の抗菌評価法による前処理後の抗菌持続性が、一例として2.0以上であってもよく、好ましくは2.5以上であってもよく、より好ましくは2.8以上であり、具体例として2.5~7、好ましい例として2.8~7である。
【0069】
前記熱可塑性樹脂組成物は、JIS Z 2801の抗菌評価法による酸処理後の抗菌持続性が、一例として2.0以上であってもよく、好ましくは2.4以上であり、好ましい例としては2.4~7である。
【0070】
前記熱可塑性樹脂組成物は、JIS Z 2801の抗菌評価法によるアルカリ処理後の抗菌持続性が、一例として2.0以上であってもよく、好ましくは2.2以上であってもよく、より好ましくは2.3以上であり、好ましい例としては2.2~7、より好ましい例としては2.3~7である。
【0071】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、家電または生活用品の素材として使用され得、より好ましくは家電の素材として使用され得る。
【0072】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に、熱安定剤、光安定剤、染料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、0.01~5重量部、0.05~3重量部、0.1~2重量部、または0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本発明の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという利点がある。
【0073】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と;B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と;C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と;D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.4~10重量部とを含んで混練及び押出するステップを含むことを特徴とし、このような場合に、人体への毒性がなく、熱安定性に優れながらも、初期抗菌性だけでなく抗菌持続性に優れ、射出時にガス不良や剥離現象がない熱可塑性樹脂組成物を提供するという利点がある。
【0074】
前記混練及び押出するステップは、好ましくは210~280℃下で、より好ましくは220~250℃下で行うものであってもよく、このとき、温度は、シリンダーに設定された温度を意味する。
【0075】
前記混練及び押出に用いられる押出機は、本発明の属する技術分野で通常用いられる押出機であれば、特に制限されず、好ましくは二軸押出機であってもよい。
【0076】
前記混練及び押出するステップを経た押出物は、好ましくはペレット状であってもよい。
【0077】
前記熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、前述した熱可塑性樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複部分についての説明は省略する。
【0078】
成形品
本発明の成形品は、好ましくは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、このような場合、人体への毒性がなく、熱安定性に優れながらも、初期抗菌性だけでなく抗菌持続性に優れ、射出時にガス不良や剥離現象がない成形品を提供するという利点がある。
【0079】
前記成形品は、一例として、押出成形品または射出成形品であってもよく、好ましくは射出成形品であり、より好ましくは生活用品、家電ケースまたは家電ハウジングである。
【0080】
前記成形品は、好ましくは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形温度200~260℃下、好ましくは210~250℃下で射出するステップを含んで製造されてもよく、この範囲内で、射出時にガス不良や剥離現象がない成形品を提供するという利点がある。
【0081】
前記射出に使用される熱可塑性樹脂組成物は、好ましくはペレット状であってもよい。
【0082】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び外装材を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装置などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0083】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0084】
[実施例]
下記の実施例1~6及び比較例1~14で用いられた材料は、次の通りである。
【0085】
(A-1)ABSグラフト共重合体として、ゴム粒径が0.3μmであるABS樹脂(LG化学社製のDP270M)を使用した。
(A-2)SAN共重合体としてLG化学社製の81HFを使用した。
(B-1)重量平均分子量が800,000g/molであり、13C NMR測定時にCH2のピークの積分値の和Aと、ヒドロキシル(hydroxyl)、エーテル(ether)、エステル(ester)及びアミド(amide)基(group)のピークの積分値の和Bとの比(B/A)が0.4であるポリ(エーテルエステルアミド)樹脂を使用した。
(B-2)重量平均分子量が4,500g/molであり、B/Aが0.3であるポリ(エーテルアミド)樹脂を使用した。
(B-3)重量平均分子量が500,000g/molであり、B/Aが1であるポリビニルアルコール(PVA)樹脂を使用した。
(C-1)無機抗菌剤として、リン酸ガラス担持体に銀(Ag)成分が3重量%担持された銀(Ag)系無機抗菌剤を使用した。
(C-2)無機抗菌剤として、リン酸ジルコニウム担持体に銀(Ag)成分が2重量%担持された銀(Ag)系無機抗菌剤(Toagosei社製、AGZ330)を使用した。
(C-3)無機抗菌剤として、ゼオライト担持体に銀(Ag)成分が5重量%担持された銀(Ag)系無機抗菌剤(SHINANEN社製、DAW502)を使用した。
(D-1)BET表面積40m2/gの酸化亜鉛を使用した。
(D-2)BET表面積15m2/gの酸化亜鉛(TAEKYUNG SBC社製、KS-1)を使用した。
ここで、(B-1)、(B-2)及び(B-3)の13C NMR測定時にCH2のピークの積分値の和Aと、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基及びアミド基のピークの積分値の和Bとの比率B/Aは、13C NMRを用いて測定した。
【0086】
実施例1~6及び比較例1~14
それぞれ、下記の表1に記載された組成及び含量を有するように、各成分を二軸押出機に投入し、230℃で溶融及び混練してペレット状の樹脂組成物を製造し、製造されたペレット状の樹脂組成物を230℃で射出して、物性を測定するための試験片を作製した。
【0087】
[試験例]
前記実施例1~6及び比較例1~14で製造された試験片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0088】
*抗菌活性値:JIS Z 2801の抗菌評価法に準拠して、5cm×5cmのサイズの試験片に大腸菌及び黄色ブドウ球菌をそれぞれ接種し、35℃、RH90%の条件で24時間培養した後、抗菌活性値を測定した。
【0089】
*前処理後の抗菌持続性:JIS Z 2801の抗菌評価法に準拠して、50℃の水に32時間浸漬させた5cm×5cmのサイズの試験片に大腸菌を接種し、35℃、RH90%の条件で24時間培養した後、前処理後の抗菌活性値を測定した。
【0090】
*酸処理後の抗菌持続性:JIS Z 2801の抗菌評価法に準拠して、5%クエン酸溶液に16時間浸漬させた5cm×5cmのサイズの試験片に大腸菌を接種し、35℃、RH90%の条件で24時間培養した後、酸処理後の抗菌活性値を測定した。
【0091】
*アルカリ処理後の抗菌持続性:JIS Z 2801の抗菌評価法に準拠して、5%苛性ソーダ溶液に16時間浸漬させた5cm×5cmのサイズの試験片に大腸菌を接種し、35℃、RH90%の条件で24時間培養した後、アルカリ処理後の抗菌活性値を測定した。
【0092】
*射出特性:剥離現象及びガス不良がない場合に良好と評価した。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
前記表3及び表4に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~6参照)は、射出時にガス不良や剥離現象が全くないながらも衝撃強度に優れ、初期抗菌性、前処理後の抗菌持続性、酸処理後の抗菌持続性及びアルカリ処理後の抗菌持続性がいずれも優れることが確認できた。しかし、本発明に係るポリ(エーテルエステルアミド)樹脂の含量範囲未満である比較例1は、抗菌持続性が劣悪であり、本発明に係るポリ(エーテルエステルアミド)樹脂の含量範囲を超える比較例2は、相溶性の低下により剥離現象が起こり、抗菌活性値は測定が不可能であった。
【0098】
また、本発明に係る酸化亜鉛の含量範囲未満である比較例3は、初期抗菌性及び抗菌持続性がいずれも劣悪であり、本発明に係るポリ(エーテルエステルアミド)樹脂、無機抗菌剤または酸化亜鉛を含まない比較例4~8は、初期抗菌性及び抗菌持続性がいずれも劣悪であった。
【0099】
さらに、本発明に係るポリ(エーテルエステルアミド)樹脂の代わりにポリ(エーテルアミド)樹脂を使用した比較例9は、初期抗菌性及び抗菌持続性がいずれも劣悪であり、本発明に係るポリ(エーテルエステルアミド)樹脂の代わりにポリビニルアルコール樹脂を使用した比較例10は、多くのヒドロキシル基により射出品の外観のガス不良及び剥離現象が現れることを確認した。
【0100】
また、本発明に係る酸化亜鉛の代わりに、BET表面積が15m2/gである酸化亜鉛を使用した比較例11は、初期抗菌性及び抗菌持続性がいずれも劣悪であることが確認できた。
【0101】
また、酸化亜鉛を過量使用した比較例12は、衝撃強度が大きく低下するため、製品への使用に適しておらず、担持体としてリン酸ジルコニウムまたはゼオライトが適用された銀系無機抗菌剤を含む比較例13及び14は、初期抗菌性、前処理後の抗菌持続性、酸処理後の抗菌持続性及びアルカリ処理後の抗菌持続性がいずれも劣悪であった。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と、B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と、C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と、D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.4~5重量部とを含み、
前記B)非共有電子対を含む重合体は、ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂、ポリ(エーテルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エステルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エーテルエステル)ブロック共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選択された1種以上であり、
JIS Z 2801の抗菌評価法による前処理後の抗菌持続性が2.0以上であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂は、(A-1)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体60~80重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A-1)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエン化合物を含んでなる共役ジエンゴムの平均粒径が0.05~0.5μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A-2)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体は、芳香族ビニル化合物65~80重量%及びビニルシアン化合物20~35重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記B)非共有電子対を含む重合体は、13C NMR測定時にCH2のピークの積分値の和Aと、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基及びアミド基のピークの積分値の和Bとの比率B/Aが0.01~1.0であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記C)無機抗菌剤は、銀(Ag)系無機抗菌剤、亜鉛(Zn)系無機抗菌剤、及び銀と亜鉛の混合系無機抗菌剤からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記C)無機抗菌剤は、活性成分である銀と亜鉛が、無機抗菌剤の総重量に対して0.1~5重量%含まれることを特徴とする、請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記D)酸化亜鉛は、BET表面積が28~50m2/gであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
JIS Z 2801の抗菌評価法による前処理後の抗菌持続性が2.5以上であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
JIS Z 2801の抗菌評価法による酸処理後の抗菌持続性が2.4以上であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
JIS Z 2801の抗菌評価法によるアルカリ処理後の抗菌持続性が2.2以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
A)ビニルシアン化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(A-1)及び芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体(A-2)を含むベース樹脂100重量部と、B)重量平均分子量500,000g/mol超の非共有電子対を含む重合体0.1~32重量部と、C)リン酸ガラス、シリカゲル、リン酸カルシウム及びリン酸ジルコニウムナトリウムからなる群から選択された1種以上の担持体を含む無機抗菌剤0.1~5重量部と、D)BET表面積28m2/g以上の酸化亜鉛0.4~5重量部とを含んで混練及び押出するステップを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記B)非共有電子対を含む重合体は、ポリ(エーテルエステルアミド)樹脂、ポリ(エーテルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エステルアミド)ブロック共重合体、ポリ(エーテルエステル)ブロック共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂からなる群から選択された1種以上であり、
前記熱可塑性樹脂組成物は、JIS Z 2801の抗菌評価法による前処理後の抗菌持続性が2.0以上である、製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
[実施例]
下記の実施例1~7及び比較例2~14で用いられた材料は、次の通りである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
実施例1~7及び比較例2~14
それぞれ、下記の表1に記載された組成及び含量を有するように、各成分を二軸押出機に投入し、230℃で溶融及び混練してペレット状の樹脂組成物を製造し、製造されたペレット状の樹脂組成物を230℃で射出して、物性を測定するための試験片を作製した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
[試験例]
前記実施例1~7及び比較例2~14で製造された試験片の特性を下記の方法で測定し、その結果を下記の表2に示した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
前記表3及び表4に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~7参照)は、射出時にガス不良や剥離現象が全くないながらも衝撃強度に優れ、初期抗菌性、前処理後の抗菌持続性、酸処理後の抗菌持続性及びアルカリ処理後の抗菌持続性がいずれも優れることが確認できた。しかし、本発明に係るポリ(エーテルエステルアミド)樹脂の含量範囲未満である実施例7は、抗菌持続性が劣悪であり、本発明に係るポリ(エーテルエステルアミド)樹脂の含量範囲を超える比較例2は、相溶性の低下により剥離現象が起こり、抗菌活性値は測定が不可能であった。
【外国語明細書】