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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018484
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230201BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230201BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20230201BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 501
B41J2/01 305
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122644
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】児玉 裕美
(72)【発明者】
【氏名】横濱 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】杉田 健人
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 有希子
(72)【発明者】
【氏名】黒羽 みずき
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056HA44
2C056HA46
2C056HA47
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB55
4J039BC10
4J039BC13
4J039BC61
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA16
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】薄紙及び厚紙のカールを抑制しつつ良好な乾燥を行うことができ、小型化が可能な印刷装置。
【解決手段】記録媒体の第1面に第1インクを付与する第1インク付与部51、記録媒体の第2面に第2インクを付与する第2インク付与部52、第1インクが吐出された記録媒体の第1面を乾燥する第1乾燥部61、第2インクが吐出された記録媒体の第2面を乾燥する第2乾燥部62、第1乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する第1冷却部71、第2乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する第2冷却部72を備える。前記インクは、水を62質量%以上含み、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を含み、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤の合計量は、インク全量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下であり、当該印刷装置の一端側から他端側の方向において、第1の乾燥部、第2の乾燥部、第1の冷却部の順で配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、有機溶剤及び水を含有する第1のインク、並びに、記録媒体の第1の面に前記第1のインクを吐出する第1の液体吐出ヘッドを有する第1のインク付与部と、
顔料、有機溶剤及び水を含有する第2のインク、並びに、前記第1のインクが吐出された記録媒体の第1の面とは反対側の面である第2の面に前記第2のインクを吐出する第2の液体吐出ヘッドを有する第2のインク付与部と、
前記第1のインクが吐出された記録媒体の第1の面を乾燥する第1の乾燥部と、
前記第2のインクが吐出された記録媒体の第2の面を乾燥する第2の乾燥部と、
前記第1の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する第1の冷却部と、
前記第2の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する第2の冷却部と、
を備えた印刷装置であって、
前記第1のインク及び前記第2のインクは、水をそれぞれのインク全量に対して62質量%以上含み、前記有機溶剤として、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を含み、
前記沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤の合計量は、それぞれのインク全量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下であり、
当該印刷装置の一端側から他端側の方向において、前記第1の乾燥部、前記第2の乾燥部、前記第1の冷却部の順で配置されていることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を2種類以上含むことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
当該印刷装置の一端側から他端側の方向において、前記第1の乾燥部、前記第2の乾燥部、前記第2の冷却部の順で配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1のインク及び前記第2のインクに含有される前記有機溶剤において、沸点が290℃以下の有機溶剤の合計量が、前記第1のインク又は前記第2のインク全量に対して23.0質量%以上48.0質量%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第1のインク及び前記第2のインクに含有される水は、前記第1のインク又は前記第2のインク全量に対して74質量%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記記録媒体は、前記第1のインク付与部、前記第1の乾燥部、前記第1の冷却部、前記第2のインク付与部、前記第2の乾燥部、前記第2の冷却部の順に搬送されることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等の印刷装置は低騒音、低ランニングコスト、カラー印刷が容易であるなどの利点を有し、デジタル信号の出力機器として広く普及している。インクジェットプリンタに用いる記録媒体として、普通紙等の吸収性媒体からコート紙等の低吸収性記録媒体およびプラスチックフィルム等の非吸収性の記録媒体などが使用されている。近年では、特に商用印刷の分野においてより小さな筐体で印字できることが求められており、より省スペースで使用できる小型な装置やその際に使用可能なインクの開発が行われてきている。
【0003】
従来技術では、加熱乾燥手段を備えた装置により、非吸収性の記録媒体等に水性インクを吐出して印刷を行う技術が提案されている。
特許文献1では、水性インクを記録媒体の表面に吐出する吐出ヘッドと、水性インクを乾燥する乾燥装置と、を備える記録装置が開示されている。特許文献1に用いられる水性インクは、着色剤、ガラス転移温度が35℃以上65℃以下の高分子粒子、水、水性有機溶媒を含み、所定の粘度比となるようにしている。また、吐出ヘッドのヘッド温度Thと、高分子粒子のガラス転移温度Tgと、乾燥装置の乾燥温度Tdとの関係がTh<Tg<Tdを満たすとしている。
特許文献1によれば、調温された吐出ヘッドから記録媒体に吐出した水性インクを加熱乾燥する記録装置において、緩浸透性又は非浸透性の記録媒体への定着性が良好な所定の水性インクを適用した場合でも、レイテンシーの発生を防止できるとしている。
【0004】
また従来技術では、加熱乾燥と冷却を行うことが提案されている。
特許文献2では、インク滴を吐出する印刷部、乾燥部、印刷媒体を冷却する第1の冷却部及び第2の冷却部を備えた第1の処理装置と、第2の冷却部の下流側に配置され、印刷媒体に所定の処理を行う第2の処理装置と、を備えたインクジェット印刷システムが開示されている。
特許文献2によれば、乾燥ユニットの熱処理を強化した場合であっても、下流側の処理に悪影響を与えることを防止することができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加熱乾燥を行う装置においては、記録媒体にカールが生じる問題があり、特許文献1ではカールの発生を抑制できていない。カールの発生を抑制するために加熱乾燥を弱めると、例えば厚紙で良好に乾燥できず、一方、良好に乾燥しようとすると、例えば薄紙でカールが生じてしまう。また、特許文献2の装置構成では、装置レイアウトの自由度が低く、装置を小型化することができない。
【0006】
そこで本発明は、薄紙及び厚紙のカールを抑制しつつ良好な乾燥を行うことができ、小型化が可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、顔料、有機溶剤及び水を含有する第1のインク、並びに、記録媒体の第1の面に前記第1のインクを吐出する第1の液体吐出ヘッドを有する第1のインク付与部と、
顔料、有機溶剤及び水を含有する第2のインク、並びに、前記記録媒体の第1の面とは反対側の第2の面に前記第2のインクを吐出する第2の液体吐出ヘッドを有する第2のインク付与部と、
前記第1のインクが吐出された記録媒体の第1の面を乾燥する第1の乾燥部と、
前記第2のインクが吐出された記録媒体の第2の面を乾燥する第2の乾燥部と、
前記第1の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する第1の冷却部と、
前記第2の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する第2の冷却部と、
を備えた印刷装置であって、
前記第1のインク及び前記第2のインクは、水をそれぞれのインク全量に対して62質量%以上含み、前記有機溶剤として、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を含み、
前記沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤の合計量は、それぞれのインク全量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下であり、
当該印刷装置の一端側から他端側の方向において、前記第1の乾燥部、前記第2の乾燥部、前記第1の冷却部の順で配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄紙及び厚紙のカールを抑制しつつ良好な乾燥を行うことができ、小型化が可能な印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明における印刷装置の一例を示す概略図である。
図2】インク吐出ヘッドの一例を示す分解斜視説明図である。
図3】インク吐出ヘッドの一例におけるノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿う断面説明図である。
図4】インク吐出ヘッドの一例におけるノズル配列方向と直交する方向(液室短手方向)に沿う断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る印刷装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明の印刷装置は、顔料、有機溶剤及び水を含有する第1のインク、並びに、記録媒体の第1の面に前記第1のインクを吐出する第1の液体吐出ヘッドを有する第1のインク付与部と、
顔料、有機溶剤及び水を含有する第2のインク、並びに、前記記録媒体の第1の面とは反対側の第2の面に前記第2のインクを吐出する第2の液体吐出ヘッドを有する第2のインク付与部と、
前記第1のインクが吐出された記録媒体の第1の面を乾燥する第1の乾燥部と、
前記第2のインクが吐出された記録媒体の第2の面を乾燥する第2の乾燥部と、
前記第1の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する第1の冷却部と、
前記第2の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する第2の冷却部と、
を備えた印刷装置であって、
前記第1のインク及び前記第2のインクは、水をそれぞれのインク全量に対して62質量%以上含み、前記有機溶剤として、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を含み、
前記沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤の合計量は、それぞれのインク全量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下であり、
当該印刷装置の一端側から他端側の方向において、前記第1の乾燥部、前記第2の乾燥部、前記第1の冷却部の順で配置されていることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。まず本発明に用いられるインクについて説明し、その後で装置について説明する。
【0013】
(インク)
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
本発明に用いられる第1のインクと第2のインクは同じ処方としてもよいし、異なっていてもよい。第1のインクと第2のインクを区別なく説明する場合、単にインクと称する。
【0014】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
【0015】
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
【0016】
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0017】
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
【0018】
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
【0019】
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0020】
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
【0021】
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0022】
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0023】
第1のインク及び第2のインクは、有機溶剤として、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を含み、前記沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤の合計量は、第1のインク又は第2のインク全量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下である。
【0024】
沸点240℃以上280℃以下の有機溶剤は、溶剤分子同士の親和力を低くでき、記録媒体への浸透性を高くできと考えられる。そのため、このような有機溶剤を用いることで乾燥により記録媒体の水分が失われた分、有機溶剤が記録媒体に浸み込むことでカールの発生を抑えられると考えられる。また、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を2種類以上含む場合、より良好な耐カール性が得られる。
なお、「沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を2種類以上」については、沸点が同じであっても構造や化学式が異なる場合、異なる種類の有機溶剤とする。
【0025】
薄紙での耐カール性向上の観点から、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤の合計量は、インク全量に対して3.0質量%以上が好ましい。厚紙での乾燥性向上の観点から、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤の合計量は、15.0質量%以下が好ましい。
【0026】
インクに含有される有機溶剤において、沸点が290℃以下の有機溶剤の合計量がインク全量に対して23.0質量%以上48.0質量%以下であることが好ましい。この範囲である場合、耐カール性を更に向上させることができる。また、より好ましくは、沸点が197℃以上290℃以下の有機溶剤の合計量がインク全量に対して23.0質量%以上48.0質量%以下である。
【0027】
<水>
インクにおける水の含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましい。
本発明では、インク全量に対して水を62質量%以上含む。良好な乾燥性を担保するため、水は62質量%以上含まれることが好ましい。なお、第1のインク及び第2のインクともに、インク全量に対して水を62質量%以上含むことが好ましい。
【0028】
水の含有量としては、インク全量に対して74質量%以下であることがより好ましい。この場合、薄紙での耐カール性を向上させることができる。
更に、水の含有量としては、インク全量に対して64質量%以上であることが好ましく、71質量%以上であることがより好ましい。64質量%以上であると、厚紙の乾燥性を向上できる。
【0029】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
【0030】
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
【0031】
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
【0032】
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
【0033】
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0034】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0035】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
【0036】
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
【0037】
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
【0038】
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
【0039】
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
【0041】
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0042】
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0043】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0044】
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0046】
体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0047】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0048】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、インク中の固形分の粒径の最大頻度が最大個数換算で20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0049】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0050】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
【0051】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0052】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
【0053】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0054】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0055】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
【0056】
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0057】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
【0058】
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
【0059】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【0060】
【化1】
【0061】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
【0062】
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0063】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
【0064】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0065】
【化2】
【0066】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【0067】
【化3】
【0068】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-C2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
【0069】
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0070】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0071】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0072】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0073】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0074】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0075】
<インクの物性>
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、3mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0076】
本発明に用いられるインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
【0077】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【0078】
(記録媒体)
記録媒体としては特に制限はなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布などを用いることもできるが、非浸透性基材を用いても良好な画像形成が可能である。
非浸透性基材とは、水透過性、吸収性が低い表面を有する基材であり、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない材質も含まれ、より定量的には、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材をいう。
非浸透性基材としては、例えば、塩化ビニル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルムを、好適に使用することができる。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
【0079】
(記録物)
本発明によって得られるインク記録物は、記録媒体上に、本発明の印刷装置とインクを用いて形成された画像を有してなる。インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0080】
(印刷装置)
次に、本実施形態の印刷装置の詳細例について説明する。
本実施形態の印刷装置は、第1のインク付与部と、第2のインク付与部と、第1の乾燥部と、第2の乾燥部と、第1の冷却部と、第2の冷却部とを備え、必要に応じてその他の手段等を備える。本実施形態の印刷装置は、記録装置、インクジェット記録装置、画像形成装置などと称されてもよい。
【0081】
第1のインク付与部は、前記第1のインク及び記録媒体の第1の面に前記第1のインクを吐出する第1の液体吐出ヘッドを有する。
第2のインク付与部は、前記第2のインク及び前記第1のインクが吐出された記録媒体の第1の面とは反対側の面である第2の面に前記第2のインクを吐出する第2の液体吐出ヘッドを有する。
このように本実施形態の印刷装置では、記録媒体の両面に印刷を行う。第1の面を表面と称してもよいし、第2の面を裏面と称してもよい。
【0082】
液体吐出ヘッドとしては、例えばインクジェットヘッドを用いることができる。また、第1のインク付与部及び第2のインク付与部は、種類の異なる複数のインクを有していてもよく、例えば色材が異なる複数のインクを記録媒体に付与してもよい。例えば、第1のインク付与部がKCMYのインクを有する場合、これら4つのインク全てが上記第1のインクとしての要件を満たす。液体吐出ヘッドの詳細例は後述する。
【0083】
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0084】
第1の乾燥部は、前記第1のインクが吐出された記録媒体の第1の面を乾燥する。
第2の乾燥部は、前記第2のインクが吐出された記録媒体の第2の面を乾燥する。
これら乾燥部における乾燥方法としては、適宜選択することができ、例えばIRヒータ、温風ヒータ、赤外線ヒータ等を用いることができる。乾燥温度としては、適宜選択することができ、例えば60℃以上130℃以下とすることが好ましい。なお、乾燥部を乾燥ユニットなどと称してもよい。
【0085】
第1の冷却部は、前記第1の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する。
第2の冷却部は、前記第2の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却する。
これら冷却部における冷却方法としては、適宜選択することができ、例えば冷却ローラ、冷風を記録媒体に当てる方法等を用いることができる。冷却温度としては、適宜選択することができる。なお、冷却部を冷却ユニットなどと称してもよい。
第1の冷却部と第2の冷却部を用いることにより、乾燥部によって高くなった記録媒体の温度を下げることができ、カールの発生を抑制しやすくなる。これは、乾燥後、記録媒体の用紙温度が高く、含水率が低い状態であると紙がカールしやすくなるためである。
【0086】
第1の冷却部においては、記録媒体の温度を十分に下げることが好ましい。記録媒体の温度を十分に下げることができない場合、記録媒体の温度が高い状態のままで第2のインク付与部でインクが付与されるため、第2のインク付与部での画像の乱れ等が生じる場合がある。このような観点から、第1の乾燥部と第1の冷却部との距離を長くとることが望ましく、第1の乾燥部と第1の冷却部との距離を長くすることで、第1の冷却部で冷却しやすくなる。また、第1の乾燥部と第1の冷却部との距離を長くとることができれば、空いたスペースに他の部材等を設ける等、装置レイアウトの自由度が生まれる。
【0087】
本実施形態では、当該印刷装置の一端側から他端側の方向において、第1の乾燥部、第2の乾燥部、第1の冷却部の順で配置されている。第1の乾燥部と第1の冷却部の間に第2の乾燥部を配置することで、第1の乾燥部から第1の冷却部までの距離を長くでき、装置レイアウトの自由度を高くすることができ、装置を小型化することができる。
【0088】
なお、本実施形態における印刷装置の一端側から他端側の方向としては、後述する記録媒体の搬送方向が挙げられる。前記一端側は記録媒体の搬送方向上流側が挙げられ、前記他端側は記録媒体の搬送方向下流側が挙げられる。
【0089】
しかし、第1の乾燥部と第1の冷却部との距離を長くする場合、乾燥されてから冷却されるまでの時間が長くなり、記録媒体がカールしやすくなってしまう。記録媒体が乾燥されることで、記録媒体の温度が高くなり、含水率が低い状態となるが、このような状態はカールが生じやすく、冷却されるまでの時間が長いと、カールがより生じやすくなってしまう。
【0090】
そこで本実施形態では、上記の第1のインク及び第2のインク、例えば有機溶剤の種類や含有量を上記の構成としたインクを用いることで、記録媒体のカールを抑制することができる。このように、カール抑制効果のある有機溶剤を含むインクを用いることで、装置を小型化しても薄紙及び厚紙のカールを抑制しつつ良好な乾燥を行うことができる。
【0091】
第2の冷却部は、前記第2の乾燥部により乾燥された記録媒体を冷却できればよく、装置内の配置は適宜選択することができる。例えば、前記搬送方向(印刷装置の一端側から他端側の方向)において、第1の乾燥部、第2の乾燥部、第2の冷却部の順で配置されていることが好ましい。この場合、装置レイアウトの自由度を高くすることができ、装置を小型化しやすくなる。
【0092】
図1は、本実施形態の印刷装置の一例を示す概略図である。本発明の装置では、装置を小型化するために装置内の配置や記録媒体の搬送経路等を工夫している。なお、後述するように、記録媒体の搬送方向と記録媒体の搬送経路は異なるものである。
【0093】
本例の印刷装置では、給紙装置42と巻取り装置47の間で連帳紙Pが搬送される。連帳紙Pは折り返して搬送する搬送部43を通過する。搬送された連帳紙Pは、印字前に払拭装置44で払拭される。
【0094】
次いで、第1のインク付与部51で第1のインクが付与される。本例では、例としてKCMYのインクジェットヘッドを用いているが、本実施形態はこれに制限されるものではない。なお、インクジェットヘッドKのみ符号51Kを付している。第1のインク付与部51内でのインクジェットヘッド51Kの配置も変更可能である。
【0095】
次いで、第1の乾燥部61で記録媒体の第1の面が乾燥される。上述のように、記録媒体の第1の面は第1のインクが吐出された記録媒体の面である。本例では、第1の乾燥部61としてIRヒータを用いている。図中の矢印は、IRヒータの乾燥する方向を模式的に示したものであるが、これに限られず、例えば紙面の左方向や紙面の下方向であってもよい。第1の乾燥部61で乾燥されてから第1の冷却部で冷却されるまでの距離を長くするという観点からは、図に示すように、乾燥方向を例えば紙面上方向にすることが好ましい。
【0096】
次いで、連帳紙Pは、第2の乾燥部62の下方を通過する。このときに第2の乾燥部62は連帳紙Pの乾燥は行わない。
【0097】
次いで、第1の冷却部71で連帳紙Pの冷却が行われる。本例では、第1の冷却部71として冷却ローラを用いている。
【0098】
ここで、記録媒体の搬送方向について説明する。図中、記録媒体の搬送方向が矢印で図示されている。本実施形態では、印刷装置の一端側から他端側の方向を記録媒体の搬送方向としている。例えば、給紙装置42側の方向から巻取り装置47側の方向を記録媒体の搬送方向とすることができる。本実施形態では、記録媒体の搬送方向と記録媒体の搬送経路とを区別している。なお、記録媒体の搬送経路は、図中、実線で示されるように、連帳紙P(記録媒体)が通過する箇所である。
【0099】
本例では、図1に示すように、記録媒体の搬送方向において、第1の乾燥部61、第2の乾燥部62、第1の冷却部71の順で配置されている。このように配置することで、第1の乾燥部61が連帳紙Pを乾燥する箇所から、第1の冷却部71が連帳紙Pを冷却する箇所までの距離を長くできる。これにより装置レイアウトの自由度を高くすることができ、装置を小型化することができる。
【0100】
次いで、反転装置45で連帳紙Pが反転される。
【0101】
次いで、第2のインク付与部52で記録媒体の第2の面に第2のインクが付与される。本例では、例としてKCMYのインクジェットヘッドを用いているが、本実施形態はこれに制限されるものではない。なお、インクジェットヘッドKのみ符号52Kを付している。第2のインク付与部52内でのインクジェットヘッド52Kの配置も変更可能である。
【0102】
次いで、第2の乾燥部62で記録媒体の第2の面が乾燥される。上述のように、記録媒体の第2の面は第2のインクが吐出された記録媒体の面である。本例では、第2の乾燥部62としてIRヒータを用いている。図中の矢印は、IRヒータの乾燥する方向を模式的に示したものである。
【0103】
次いで、第2の冷却部72で連帳紙Pの冷却が行われる。本例では、第1の冷却部72として冷却ローラを用いている。
【0104】
次いで、印字された連帳紙Pは、折り返して搬送する搬送部46を通過し、巻取り装置47によって巻き取られる。
なお、連帳紙Pが搬送部43、46を通過することによって、用紙のしわをのばす効果がある。
【0105】
上記のように、本例において記録媒体は、記録媒体の搬送経路を通って、第1のインク付与部51、第1の乾燥部61、第1の冷却部71、第2のインク付与部52、第2の乾燥部62、第2の冷却部72の順に搬送される。詳述すると、本例における記録媒体は、順に、第1のインク付与部51によりインクが付与され、第1の乾燥部61により乾燥され、第1の冷却部71により冷却され、第2のインク付与部52によりインクが付与され、第2の乾燥部62により乾燥され、第2の冷却部72により冷却される。
【0106】
<立体造形装置>
本発明の印刷装置は、立体造形物を造形するための立体造形装置としても用いることができる。立体造形物を造形するための立体造形装置は、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0107】
<液体吐出ヘッド>
液体吐出ヘッドとしては、例えばインクジェットヘッド(以下、「インク吐出ヘッド」とも称する)を用いることができ、インクジェットヘッドを用いた印刷装置は、インクジェット記録装置などとも称される。
【0108】
インク吐出ヘッドは、インクジェット記録装置に設けられたインクを吐出する部材である。インク吐出ヘッドは、インクを吐出するノズル(以下、「ノズル孔」とも称する)を有する。また、インク吐出ヘッドはノズルプレートを有し、ノズルプレートはノズル孔を有するノズル基板とノズル基板上に設けられた撥インク膜とを有する。
【0109】
ノズル基板は、ノズル孔からインクが吐出されるインク吐出側の面と、インク吐出側の面とは反対側に位置する液室接合面とを有する。撥インク膜は、ノズル基板のインク吐出側の面に形成されている。
【0110】
ノズル基板の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、Al、Bi、Cr、InSn、ITO、Nb、Nb、NiCr、Si、SiO、Sn、Ta、Ti、W、ZAO(ZnO+Al)、Znなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、防錆性の点から、ステンレス鋼が好ましい。
【0111】
ステンレス鋼としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
撥インク膜は、含フッ素アクリレートエステル重合体、又は主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を含むことが好ましい。撥インク膜が、含フッ素アクリレートエステル重合体、又は主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有する重合体を含むことにより、表面自由エネルギーが非常に小さくなり、表面張力の低いインクであっても濡れ難い状態を維持できるので好ましい。
【0113】
ここで、インク吐出ヘッドの一例について、図2から図4を参照して説明する。図2は同ヘッドの一例を示す分解斜視説明図、図3は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿う断面説明図、図4は同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向)に沿う断面説明図である。
【0114】
インク吐出ヘッドは、流路板(液室基板、流路部材)1と、この流路板1の下面に接合した振動板部材2と、流路板1の上面に接合したノズル形成部材であるノズルプレート3とを有し、これらによって液滴(インクの滴)を吐出する複数のノズル孔4がそれぞれノズル連通路5を介して連通する個別流路としての複数の液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)6、液室6にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、この流体抵抗部7を介して液室6と連通する連通部8を形成し、連通部8に振動板部材2に形成した供給口19を介してフレーム部材17に形成した共通液室10からインクを供給する。
【0115】
流路板1は、シリコーン基板をエッチングして連通路5、加圧液室6、流体抵抗部7などの開口をそれぞれ形成している。なお、流路板1は、例えば、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工することで形成することもできる。
【0116】
振動板部材2は各液室6に対応してその壁面を形成する各振動領域(ダイアフラム部)2aを有し、振動領域2aの面外側(液室6と反対面側)に島状凸部2bが設けられ、この島状凸部2bに振動領域2aを変形させ、液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての積層型圧電素子12、12の各圧電素子柱12Aの上端面(接合面)を接合している。また、積層型圧電素子12の下端面はベース部材13に接合している。
【0117】
ここで、圧電素子12は、PZT等の圧電材料層21と内部電極22a、22bとを交互に積層したものであり、内部電極22a、22bをそれぞれ端面、即ち圧電素子12の振動板2に略垂直な側面に引き出して、この側面に形成された端面電極(外部電極)23a、23bに接続し、端面電極(外部電極)23a、23bに電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。この圧電素子12は、ハーフカットダイシングによる溝加工を施して1つの圧電素子部材に対して所要数の圧電素子柱12A、12Bを形成したものである。
【0118】
なお、圧電素子12の圧電素子柱12A、12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電素子柱を圧電素子柱12A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電素子柱を圧電素子柱12Bとして区別している。この場合、駆動用圧電素子柱12Aと支柱用圧電素子柱12Bとを交互に使用するバイピッチ構成でも、あるいは、すべての圧電素子柱を駆動用圧電素子柱12Aとして使用するノーマルピッチ構成のいずれでも採用できる。
【0119】
これにより、ベース部材13上に駆動素子としての複数の駆動用圧電素子柱12Aが並べて配置された駆動素子列(駆動用圧電素子柱12Aの列)が2列設けられた構成としている。
【0120】
また、圧電素子材料としては、特に制限はなく、一般に圧電素子材料として用いられるBaTiO、PbTiO、(NaK)NbO等の強誘電体などの電気機械変換素子を用いることもできる。更に、圧電素子に積層型のものを用いているが、単板の圧電素子を用いてもよい。単板の圧電素子としては切削加工したものや、スクリーン印刷して焼結した厚膜のものや、スパッタや蒸着、或いはゾルゲル法により形成する薄膜のものでもよい。また、1つのベース部材13に設けられる積層型圧電素子12は1列としても、複数列設けられた構造としてもよい。
【0121】
そして、圧電素子12の各駆動用圧電素子柱12Aの外部電極23aには駆動信号を与えるために半田部材で配線手段としてのFPC15を直接接続し、このFPC15には圧電素子12の各駆動用圧電素子柱12Aに対して選択的に駆動波形を印加するための駆動回路(ドライバIC)16が実装されている。なお、すべての圧電素子柱12Aの外部電極23bは電気的に共通に接続されてFPC15の共通配線に同じく半田部材で接続される。また、ここでは、FPC15の圧電素子12と接合される出力端子部には半田メッキが施されており、半田接合を可能にしているが、FPC15ではなく圧電素子12側に半田メッキを施してもよい。また、接合方法についても半田接合の他に異方導電性膜による接合やワイヤボンディングを用いることもできる。
【0122】
ノズルプレート3は、各液室6に対応して5μm以上50μm以下のノズル径であるノズル孔4を構成する孔部が形成されたノズル基材31の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面、ノズル形成面)に撥インク膜32を形成して構成している。なお、ノズル径とは、ノズル形状が円形である場合はノズルの直径を表し、ノズル形状が円形以外である場合はノズル外周上の2点を結ぶ直線のうち最長の長さを表す。
【0123】
また、FPC15を実装した(接続した)圧電素子12及びベース部材13などで構成される圧電型アクチュエータユニット100の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材17を接合している。そして、このフレーム部材17には前述した共通液室10を形成し、更に共通液室10に外部からインクを供給するための供給口19を形成し、この供給口19はサブタンクやインク収容容器などのインク供給源に接続される。
【0124】
このように構成したインク吐出ヘッドにおいては、例えば以下のようにしてノズル孔4からインクの液滴が吐出(噴射)される。
まず駆動用圧電素子柱12Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子柱12Aが収縮する。次いで、振動板部材2の振動領域2aが下降して液室6の容積が膨張することで、液室6内にインクが流入する。次いで、圧電素子柱12Aに印加する電圧を上げて圧電素子柱12Aを積層方向に伸長させる。次いで、振動板部材2をノズル孔4方向に変形させて液室6の容積/体積を収縮させる。これにより、液室6内のインクが加圧され、ノズル孔4からインクの液滴が吐出(噴射)される。
【0125】
そして、圧電素子柱12Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材2が初期位置に復元し、液室6が膨張して負圧が発生する。このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填される。そこで、ノズル孔4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0126】
なお、インク吐出ヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【実施例0127】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0128】
(インクの調製)
<顔料分散体の調製>
東洋インキ社製銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:4、商品名:LX4033)100gを、2.5N(規定)の次亜塩素酸ナトリウム溶液3000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行い、銅フタロシアニン顔料の表面にカルボン酸基が付与された顔料を得た。この反応液を濾過し、濾別した銅フタロシアニン顔料を水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。
次いで、該顔料分散体とイオン交換水を用いて透析膜による限外濾過を行い、更に、超音波分散を行って、顔料固形分を20%に濃縮した体積平均粒径75nmのシアン顔料分散体を得た。
【0129】
<有機溶剤の準備>
有機溶剤として、以下に示す市販品を用いた。
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業製、沸点278℃)
・テトラエチレングリコールジメチルエーテル(東京化成工業製、沸点275℃)
・トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(東京化成工業製、沸点261℃)
・2-ピロリドン(東京化成工業製、沸点245℃)
・ジエチレングリコール(東京化成工業製、沸点245℃)
・グリセリン(東京化成工業製、沸点290℃)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(東京化成工業製、沸点230℃)
・エチレングリコール(東京化成工業製、沸点197℃)
【0130】
<界面活性剤の準備>
界面活性剤として、以下に示す市販品を用いた。
・オレフィンE1004(日信化学工業製)
【0131】
<インクの調製例>
下記表1~表4に示すインク処方に基づいて各材料を調合後、混合撹拌し、平均孔径5μmのフィルター(ザルトリウス社製、ミニザルト)で濾過し、0.5μmポリプロピレンフィルターにて濾過することにより各インクを作製した。
なお、表中の各種材料の数値の単位は「質量%」である。また、表中の顔料分散体の含有量を示す数値は、いずれも固形分量を表す。
【0132】
(記録媒体の準備)
以下の市販品を用いた。
・Snowbrite(Tiwn Rivers社製、坪量40gsm)
・NPiフォームNEXT-IJ 70(日本製紙製、坪量81.4gsm)
・NPiフォームNEXT-IJ 135(日本製紙製、坪量157gsm)
・Crown Letsgo Silk(Crown van Gelder社製、坪量250gsm)
なお、特に制限されるものではないが、ここでは例えば秤量が100gsm以下のものを薄紙とし、100gsmを超えるものを厚紙とする。
【0133】
(評価)
次に、得られたインクにおいて、以下の方法に基づいて乾燥性および耐カール性を評価した。評価結果を下記表1~表4に示す。
なお、第1のインクと第2のインクは同じインクとし、第1の乾燥部の温度は100℃とし、第2の乾燥部の温度は100℃とし、IRヒータは波長が2~3μmの熱源を使用している。また、第1の冷却部の温度は20℃とし、第2の冷却部の温度は20℃とした。
【0134】
<乾燥性>
作製したインクを図1の装置を用いて、600dpi×600dpiの解像度でベタ画像を形成した。印字後2分以内に1.2cm四方に切った記録媒体の白紙部でベタ画像を20回擦り、コート紙の白紙部へのインク転写汚れを、反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)を用いて測定した。擦った白紙の地肌色を差し引くことで転写濃度を求め、下記基準に基づき、乾燥性を評価した。なお、AA又はAが許容範囲である。
【0135】
[評価基準]
AA:転写濃度が0.01未満
A:転写濃度が0.01以上0.03未満
B:転写濃度が0.03以上0.10未満
C:転写濃度が0.10以上
【0136】
<耐カール性>
作製したインクを図1の装置を用いて600dpi×600dpiの解像度でベタ画像を形成した。印字後2分以内にA4サイズに切り出して平らな面においたとき、記録メディアの4スミの平らな面からの高さを測定し、下記評価基準により判定した。なお、AA又はAが許容範囲である。
【0137】
[評価基準]
AA: 5mm未満
A: 5mm以上10mm未満
B:10mm以上20mm未満
C:20mm以上
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】
【表4】
【0142】
実施例1~23と比較例1~4,7,8の比較により、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤の添加量がインク全量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下の場合に、薄紙の耐カール性と厚紙の乾燥性が両立することが分かる。
実施例1~16と実施例17~19の比較により、水の添加量がインク全量に対して、62質量%以上74%以下の場合に薄紙の耐カール性がより良好になることが分かる。
実施例1~10と実施例11~15の比較により、水の添加量がインク全量に対して、64質量%以上の場合に厚紙の乾燥性がより良好になることが分かる。
実施例1~15と実施例20~23の比較により、沸点が240℃以上280℃以下の有機溶剤を2種類以上、合計量がインク全量に対して3.0質量%以上15.0質量%以下含むときは、薄紙の耐カール性がより良好になることが分かる。
実施例1~23と比較例5、6の比較により、水の添加量がインク全量に対して、62質量%以上のときは、厚紙の乾燥性が良好になることが分かる。
【符号の説明】
【0143】
42 給紙装置
43、46 搬送部
44 払拭部
45 反転部
47 巻取り装置
51 第1のインク付与部
52 第2のインク付与部
61 第1の乾燥部
62 第2の乾燥部
71 第1の冷却部
72 第2の冷却部
P 連帳紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0144】
【特許文献1】特開2017-170851号公報
【特許文献2】特開2020-001282号公報
図1
図2
図3
図4