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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018515
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】真円度測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
G01B5/20 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122697
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 順介
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA57
2F062BB07
2F062CC22
2F062DD03
2F062DD29
2F062DD33
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF17
2F062FF25
2F062GG17
2F062HH05
2F062MM06
(57)【要約】
【課題】測定動作時にもワークとスタイラスとのY軸方向のずれを解消できる真円度測定機を提供する。
【解決手段】真円度測定機は、ワークが載置される回転テーブルと、スタイラスの変位を検出する変位検出器と、回転テーブルと共通のベースに設置されたコラムと、コラムに支持されて上下に延びるZ軸方向へ移動可能なZ軸スライダと、Z軸スライダに支持されてZ軸方向と交差するX軸方向へ移動可能なX軸スライダ6と、X軸スライダ6に設置されて変位検出器10を姿勢調整可能に支持する姿勢調整機構20とを有し、姿勢調整機構20は、X軸スライダ6に支持されてZ軸方向およびX軸方向と交差するY軸方向へ移動可能なY軸スライダ22と、Y軸スライダ22に支持されて変位検出器10をX軸方向まわりに旋回可能に支持する検出器ホルダ23とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置される回転テーブルと、揺動アームの先端のスタイラスの変位を検出する変位検出器と、前記回転テーブルと共通のベースに設置されたコラムと、前記コラムに支持されて上下に延びるZ軸方向へ移動可能なZ軸スライダと、前記Z軸スライダに支持されて前記Z軸方向と交差するX軸方向へ移動可能なX軸スライダと、前記X軸スライダに設置されて前記変位検出器を姿勢調整可能に支持する姿勢調整機構とを有し、
前記姿勢調整機構は、前記X軸スライダに支持されて前記Z軸方向および前記X軸方向と交差するY軸方向へ移動可能なY軸スライダと、前記Y軸スライダに支持されて前記変位検出器を前記X軸方向まわりに旋回可能に支持する検出器ホルダとを有することを特徴とする真円度測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の真円度測定機において、
前記検出器ホルダは、前記変位検出器を前記揺動アームの延伸方向まわりに回転可能に支持していることを特徴とする真円度測定機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の真円度測定機において、
前記姿勢調整機構は、前記X軸スライダに固定されて前記Y軸方向へ延びるY軸アームと、前記Y軸アームに沿って移動可能な前記Y軸スライダを有することを特徴とする真円度測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真円度測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転体状のワーク(被測定物)の真円度を測定するために、真円度測定機が用いられている。
真円度測定機は、ワークが載置される回転テーブルと、揺動自在なアームを用いて先端のスタイラスの変位を検出する変位検出器と、変位検出器を移動させてスタイラスをワークの表面に接触させる移動機構とを有し、回転するワークの表面をスタイラスで倣い測定することで、ワークの真円度などを検出している。
移動機構は、回転テーブルと共通のベースに設置されたコラムと、コラムに支持されて上下方向(Z軸方向)へ移動可能な昇降スライダと、昇降スライダに支持されて水平方向(X軸方向)へ移動可能な水平アームとを有し、水平アームの先端に変位検出器が装着される。
従って、移動機構で変位検出器をX軸方向およびZ軸方向に移動させることで、スタイラスをワークの表面の任意位置に接触させることができる。
さらに、真円度測定機では、水平アームと変位検出器との間に追加的な姿勢調整機構が設置されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1の真円度測定機では、変位検出器をX軸方向およびZ軸方向に移動させるコラムないし第1水平アームに加え、基準球の測定による原点位置の校正を行うために、第1水平アームの先端にX軸まわりの回転が可能な回動部材および第2水平アームが設置され、第2水平アームの先端に変位検出器がZ軸まわりの回転が可能に支持されている。
変位検出器は、回転部材のX軸まわりの回転により、変位検出器およびその揺動アームの延伸方向が、第1水平アーム(X軸方向)を中心として180度変更できる。また、変位検出器の回転により、スタイラスの向きが、揺動アーム(基本はZ軸方向だがX軸まわりの回転により変化する)を中心として180度変更できる。
このような特許文献1の真円度測定機では、ワークの様々な測定個所に対応するため、基本的なX軸方向およびZ軸方向の移動に加え、変位検出器はX軸まわりの回転およびZ軸まわりの回転が可能であり、これにより基準球に対して全周面に任意方向から接触可能である。
【0004】
特許文献2の真円度測定機では、変位検出器をX軸方向およびZ軸方向に移動させるコラムないしスライドアームに加え、コラム脇に設置されたスタイラスストッカに対するスタイラス自動交換を行うために、スライドアームの先端には第2スライド機構が設置され、第2スライド機構は、変位検出器をその揺動アームの延伸方向(測定動作時にはZ軸方向)に移動可能であるとともに、スライドアームに設置された旋回駆動機構により、第2スライド機構ないしスタイラスがX軸まわりに正負90度ずつ回動可能である。
このような特許文献2の真円度測定機では、基本的なX軸方向およびZ軸方向の移動に加え、測定状態ではZ軸方向へ延びる変位検出器のスタイラスを、旋回駆動機構により水平な状態(Z軸およびX軸に交差するY軸方向になる)まで回動させ、第2スライド機構によりスタイラスを水平に送り出すことでスタイラスストッカに対するスタイラス自動交換を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4163545号公報
【特許文献2】特許5451180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1の真円度測定機では、スタイラスをX軸廻りおよびZ軸廻りに回転させ、基準球を用いた校正を行うことで、高精度の測定動作が実現される。しかし、ワークの測定にあたって、スタイラスの接触位置がワークの直径位置にないと、測定結果に誤差が生じるという問題がある。
すなわち、通常の真円度測定では、ワークの任意のZ軸方向位置において、ワークの水平断面となる円のX軸方向+側最大位置で、ワークの表面にスタイラスを接触させ、ワークの回転に伴うその位置の変位を検出する。この際、スタイラスがワークのX軸方向+側最大位置に対してY軸方向へずれていたとすると、検出される変位量は本来の最大位置での変位量より小さくなるなど、誤差を有する検出値となる。そこで、通常の真円度測定機には、手動あるいは自動でY軸方向のずれを調整する機能が備えられている。
【0007】
前述した特許文献2の真円度測定機では、スタイラス交換を行う水平姿勢時にスタイラスをY軸方向へ移動させることができ、これを前述したY軸方向のずれによる誤差の解消に利用している。しかし、特許文献2の真円度測定機において、スタイラスのY軸方向移動は、スタイラス自動交換が目的であって、誤差防止のための微小移動は考慮しておらず、実際には転用が困難である。また、特許文献2の真円度測定機において、スタイラスがY軸方向に配置されるのはスタイラス自動交換モードであって、スタイラスをZ軸方向に向けた本来の測定姿勢では、スタイラスはZ軸方向へ移動可能であって、Y軸方向へは移動できず、測定時のずれ解消には利用できなかった。
【0008】
本発明の目的は、測定動作時にもワークとスタイラスとのY軸方向のずれを解消できる真円度測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の真円度測定機は、ワークが載置される回転テーブルと、揺動アームの先端のスタイラスの変位を検出する変位検出器と、前記回転テーブルと共通のベースに設置されたコラムと、前記コラムに支持されて上下に延びるZ軸方向へ移動可能なZ軸スライダと、前記Z軸スライダに支持されて前記Z軸方向と交差するX軸方向へ移動可能なX軸スライダと、前記X軸スライダに設置されて前記変位検出器を姿勢調整可能に支持する姿勢調整機構とを有し、前記姿勢調整機構は、前記X軸スライダに支持されて前記Z軸方向および前記X軸方向と交差するY軸方向へ移動可能なY軸スライダと、前記Y軸スライダに支持されて前記変位検出器を前記X軸方向まわりに旋回可能に支持する検出器ホルダとを有することを特徴とする。
【0010】
このような本発明では、コラム、Z軸スライダ、およびX軸スライダで移動機構が構成され、回転テーブル上のワークの表面に、変位検出器のスタイラスを接触させ、ワークの真円度などを測定することができる。
測定にあたって、姿勢調整機構で変位検出器の姿勢を調整し、スタイラスが上下方向(Z軸方向)に沿った姿勢とすることで、一般的な真円度測定機と同様な測定状態とすることができる。
さらに、姿勢調整機構により変位検出器をX軸方向まわりに90度旋回させることで、スタイラスがY軸方向に沿う水平姿勢とすることができ、あるいはその中間の角度とすることもできる。スタイラスが水平方向に沿った姿勢で、スタイラスをワークの上面に接触させることで、ワーク上面の測定を行うこともできる。
測定の際には、Y軸スライダにより検出器ホルダないし変位検出器をY軸方向へ変位させることができ、スタイラスが接触するワークの表面の位置を適切な位置に設定することができる。本発明のY軸スライダは、前述した検出器ホルダによる変位検出器の旋回姿勢に関わりなく、常にY軸方向の位置調整を行うことができ、測定動作時にもワークとスタイラスとのY軸方向のずれを解消できる。
【0011】
本発明の真円度測定機において、前記検出器ホルダは、前記変位検出器を前記揺動アームの延伸方向まわりに回転可能に支持していることが好ましい。
【0012】
このような本発明では、変位検出器を揺動アームの延伸方向まわりに回転させることで、揺動アームの先端のスタイラスの向きを変更することができる。
例えば、一般的な真円度測定機と同様に、変位検出器が上下方向となる姿勢では、スタイラスの向きを変えることで、ワークの異なる方向の側面に接触させるのに好適である。
また、変位検出器が水平方向となる姿勢で、スタイラスを下向きとすることで、ワークの上面の倣い測定に好適である。
【0013】
本発明の真円度測定機において、前記姿勢調整機構は、前記X軸スライダに固定されて前記Y軸方向へ延びるY軸アームと、前記Y軸アームに沿って移動可能な前記Y軸スライダを有することが好ましい。
このような本発明では、X軸スライダに固定されたY軸アームによってY軸スライダの移動方向を正確に維持できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定動作時にもワークとスタイラスとのY軸方向のずれを解消できる真円度測定機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の真円度測定機の一実施形態を示す斜視図。
図2】前記実施形態の姿勢調整機構の垂直外面測定姿勢を示す斜視図。
図3】前記実施形態の姿勢調整機構のY軸移動を示す斜視図。
図4】前記実施形態の姿勢調整機構の水平外面測定姿勢を示す斜視図。
図5】前記実施形態の姿勢調整機構の水平上下面測定姿勢を示す斜視図。
図6】前記実施形態の姿勢調整機構のスタイラス交換姿勢を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、真円度測定機1は、ベース2の上面に回転テーブル3を有し、回転テーブル3の上面に測定対象物であるワークWが載置される。
回転テーブル3は、ベース2内に設置された図示しない駆動モータにより回転可能である。
【0017】
ベース2の上面には、コラム4が設置されている。コラム4の側面には、Z軸スライダ5が支持されている。Z軸スライダ5には、水平なアーム状のX軸スライダ6が支持されている。
Z軸スライダ5は、コラム4の内部に設置された図示しない昇降機構により、垂直なZ軸方向へ移動可能である。
X軸スライダ6は、Z軸スライダ5の内部に設置された図示しない駆動機構により、水平なX軸方向へ移動可能である。
これらのコラム4、Z軸スライダ5、およびX軸スライダ6により移動機構7が構成され、X軸スライダ6の先端に装着された変位検出器10を任意位置へと移動可能である。
【0018】
図2にも示すように、変位検出器10には、測定用のアーム11(揺動アーム)が揺動自在に支持され、その先端にはワークWに接触可能なスタイラス12が形成されている。
変位検出器10の内部には、スタイラス12がワークWの表面に接触した状態で、スタイラス12とワークWの表面との間に所定の接触力が生じるように、アーム11を揺動方向に付勢する接触力付与手段が設置されるとともに、アーム11の揺動角度からスタイラス12の変位を検出する図示しないスケールが設置されている。
【0019】
変位検出器10とX軸スライダ6の先端との間には、姿勢調整機構20が設置されている。
姿勢調整機構20は、X軸スライダ6の先端に固定されたY軸アーム21と、Y軸アーム21に支持されたY軸スライダ22と、Y軸スライダ22に支持された検出器ホルダ23とを有する。
【0020】
Y軸アーム21は、Y軸と平行な軸線Bに沿って延びる箱状のアームであり、その側面にY軸スライダ22を支持している。Y軸アーム21は、内部に設置されたガイド機構により、Y軸スライダ22を軸線Bに沿ってガイド可能である。Y軸アーム21の端部にはY軸駆動モータ24が設置され、Y軸駆動モータ24はY軸アーム21内部の送り駆動機構を介してY軸スライダ22に接続されている。従って、Y軸駆動モータ24により、Y軸スライダ22を軸線Bに沿ってY軸アーム21の任意位置へ移動可能である。
【0021】
Y軸スライダ22は、検出器ホルダ23をX軸に平行な軸線Aまわりに回転自在に支持している。Y軸スライダ22にはα軸駆動モータ25が設置され、図示しない伝達機構を介して検出器ホルダ23を軸線Aまわりに回転駆動可能である。
【0022】
検出器ホルダ23は、変位検出器10を、アーム11が延伸する方向(軸線Sとする)へ回転自在に支持している。検出器ホルダ23にはβ軸駆動モータ26が設置され、図示しない伝達機構を介して変位検出器10をアーム11の延伸方向(軸線S)まわりに回転駆動可能である。
【0023】
図1に戻って、真円度測定機1には、前述した移動機構7、姿勢調整機構20、および変位検出器10を制御する制御装置30が接続されている。
制御装置30は、所定の動作プログラムを実行することで、真円度測定機1の制御を行うものであり、移動機構7による変位検出器10の移動、姿勢調整機構20による変位検出器10の姿勢調整、変位検出器10による検出データの処理は、それぞれ制御装置30で実行される。
【0024】
ベース2の上面には、コラム4に隣接して、スタイラスストッカ8が設置されている。スタイラスストッカ8には、変位検出器10に装着されるアーム11の先端部分(スタイラス12を含む)が複数格納されている。
制御装置30の制御により、変位検出器10をスタイラスストッカ8に近接ないし離隔させることで、変位検出器10のアーム11を自動交換することができる。
【0025】
本実施形態の真円度測定機1においては、次のように変位検出器10の姿勢調整を行うことで、多様な測定形態をとることができる。
前述した図2では、姿勢調整機構20により、変位検出器10がY軸マイナス側の端部近傍(Y軸アーム21とX軸スライダ6との接続位置)にあり、変位検出器10はアーム11の延伸方向(軸線S)がZ軸方向マイナス側(下向き)に向けられ、スタイラス12がX軸のマイナス方向(X軸スライダ6とは逆向き)に向けられている。本実施形態では、この姿勢が「垂直外面測定姿勢」となる。
【0026】
垂直外面測定姿勢(図2参照)では、移動機構7により変位検出器10を移動させ、アーム11の先端をワークWのX軸方向プラス側から近接させ、スタイラス12をワークWの周面に接触させることができる。スタイラス12が接触した状態で、ワークWを回転させることで、ワークWの周面の真円度を倣い測定することができる。
この際、ワークWの周面に対するスタイラス12の接触位置が、ワークWのX軸方向+側最大位置に対してY軸方向にずれていると、ワークWの正確な輪郭ないし真円度が検出できない。
このようなずれは、制御装置30においてワークWの基準寸法などから検出できる。ずれがあった場合、制御装置30が姿勢調整機構20を制御し、Y軸スライダ22をY軸アーム21に沿ってY軸方向へ微小移動させることで、ずれを解消することができる。
【0027】
垂直外面測定姿勢から、Y軸スライダ22をさらにY軸方向へ移動させることで、図3の状態となる。
図3において、変位検出器10は、アーム11の延伸方向(軸線S)をZ軸方向としたまま、Y軸アーム21のY軸プラス側端近傍に支持されている。
この状態から、α軸駆動モータ25により、変位検出器10を軸線Aまわりに90度回転(矢印α参照)させることで、図4の状態となる。
図4において、変位検出器10は、アーム11の先端がY軸マイナス方向に向けられ、アーム11の延伸方向(軸線S)がY軸方向に沿った水平な状態とされる。この際、スタイラス12はX軸マイナス方向に向いた状態のままである。本実施形態では、この姿勢が「水平外面測定姿勢」となる。
【0028】
水平外面測定姿勢(図4参照)においても、移動機構7により変位検出器10を移動させ、アーム11の先端をワークWのX軸方向プラス側から近接させ、スタイラス12をワークWの周面に接触させることができる。スタイラス12が接触した状態で、ワークWを回転させることで、ワークWの周面の真円度を倣い測定することができる。
そして、ワークWの周面に対するスタイラス12の接触位置がY軸方向にずれている際には、Y軸スライダ22をY軸アーム21に沿ってY軸方向へ微小移動させることで、ずれを解消することができる。
【0029】
水平外面測定姿勢から、検出器ホルダ23およびβ軸駆動モータ26により、変位検出器10を軸線Sまわりに回転させることで、図5の状態となる。
図5において、変位検出器10は、アーム11がY軸マイナス方向に向けられた状態である。変位検出器10を回転(矢印β参照)させることで、スタイラス12の向きがX軸マイナス方向からZ軸マイナス方向(下向き)に変更される。本実施形態では、この姿勢が「水平上下面測定姿勢」となる。
【0030】
水平上下面測定姿勢(図5参照)では、移動機構7により変位検出器10を移動させ、アーム11の先端をワークWの上方(Z軸方向プラス側)から近接させ、スタイラス12をワークWの上面の任意の半径位置に接触させることができる。スタイラス12が接触した状態で、ワークWを回転させることで、ワークWの上面の任意の半径位置における平面度を倣い測定することができる。
ワークWを、回転テーブル3に載置するのではなく、吊り下げ支持して回転させる場合には、ワークWの下面にスタイラス12を接触させ、下面の平面度を倣い測定することができる。
このようなワークWの上下面測定においても、ワークWに対してスタイラス12がY軸方向にずれている際には、Y軸スライダ22をY軸アーム21に沿ってY軸方向へ微小移動させることで、ずれを解消することができる。
【0031】
水平上下面測定姿勢から、α軸駆動モータ25により、変位検出器10を軸線Aまわりに180度回転させる(図6の矢印α参照)ことで、図6の状態となる。
図6において、変位検出器10は、アーム11の先端がY軸プラス方向に向けられ、アーム11の延伸方向(軸線S)がY軸方向に沿った水平な状態とされる。本実施形態では、この姿勢が「スタイラス交換姿勢」となる。
【0032】
スタイラス交換姿勢では、Y軸スライダ22がY軸アーム21のY軸プラス方向移動限にあるとき、変位検出器10のアーム11の先端部(スタイラス12を含む脱着可能な部分)がスタイラスストッカ8のアーム支持部分81に配置される。そして、アーム支持部分81でアーム11の先端部をクランプした状態で、Y軸スライダ22をY軸マイナス方向へ移動させることで、現在装着中のアーム11の先端部をスタイラスストッカ8に引き渡すことができる。スタイラスストッカ8において、次に装着すべきアーム11の先端部を取り出し、Y軸スライダ22を再びY軸プラス方向へ移動させることで、新たなアーム11の先端部を変位検出器10に装着することができる。以上により、スタイラス自動交換動作が実行できる。
【0033】
本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態の真円度測定機1においては、コラム4、Z軸スライダ5、およびX軸スライダ6で移動機構7が構成され、回転テーブル3上のワークWの表面に、変位検出器10のスタイラス12を接触させ、ワークWの真円度などを測定することができる。
測定にあたって、姿勢調整機構20で変位検出器10の姿勢を調整し、スタイラス12が上下方向(Z軸方向)に沿った姿勢(垂直外面測定姿勢)とすることで、一般的な真円度測定機と同様な測定状態とすることができる。
さらに、姿勢調整機構20により変位検出器10をX軸方向まわりに90度旋回させることで、スタイラス12が水平なY軸方向に沿う姿勢(水平外面測定姿勢)とすることができる。なお、アーム11の軸線Sが例えば45度など、中間の角度となった傾斜姿勢とすることもできる。
【0034】
本実施形態の真円度測定機1においては、検出器ホルダ23が変位検出器10をアーム11の延伸方向(軸線S)まわりに回転可能に支持しているため、変位検出器10を回転させることで、アーム11の先端のスタイラス12の向きを変更することができる。
例えば、一般的な真円度測定機と同様に、変位検出器10が上下方向となる姿勢(垂直外面測定姿勢)では、スタイラス12の向きを変えることで、ワークWの異なる方向の側面に接触させることができる。このような全周方向からのスタイラス12の接触は、基準球に対する校正動作に利用することができる。
また、変位検出器10が水平方向となる姿勢(水平外面測定姿勢)で、スタイラス12を下向きとすることで、ワークWの上面の倣い測定を行うことができる。
【0035】
本実施形態の真円度測定機1においては、測定の際に、Y軸スライダ22により検出器ホルダ23ないし変位検出器10をY軸方向へ変位させることができ、スタイラス12が接触するワークWの表面の位置を適切な位置に設定することができる。
Y軸スライダ22は、前述した検出器ホルダ23による変位検出器10の旋回姿勢に関わりなく、常にY軸方向の位置調整を行うことができ、測定動作時にもワークWとスタイラス12とのY軸方向のずれを解消できる。
本実施形態の姿勢調整機構20は、X軸スライダ6に固定されてY軸方向へ延びるY軸アーム21と、Y軸アーム21に沿って移動可能なY軸スライダ22と、を用いる構成としたので、X軸スライダ6に固定されたY軸アーム21によってY軸スライダ22の移動方向を正確に維持できる。
【0036】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前述した実施形態では、先端に交差方向へ突出するスタイラス12を有するアーム11を用いたが、例えば先端に球状の接触子を有するアームを用いる場合には、検出器ホルダ23およびβ軸駆動モータ26によるアーム11の向き変更は必要ない。また、先端に交差方向へ突出するスタイラス12を有するアーム11を用いる場合でも、ワークWの上下面の測定が必要ない場合にも、検出器ホルダ23およびβ軸駆動モータ26によるアーム11の向き変更機能は省略してよい。
【0037】
前述した実施形態では、真円度測定機1にスタイラスストッカ8を設置してスタイラス12(アーム11の先端部)の自動交換を行うようにしたが、この機能は本発明に必須ではなく、適宜省略してもよい。
【0038】
前述した実施形態では、姿勢調整機構20として、X軸スライダ6に固定されてY軸方向へ延びるY軸アーム21と、Y軸アーム21に沿って移動可能なY軸スライダ22と、を有する構成としたが、Y軸アーム21とY軸スライダ22を一体化し、Y軸アーム21がX軸スライダ6の先端にY軸方向へ移動可能に支持される構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は真円度測定機に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
1…真円度測定機、10…変位検出器、11…アーム(揺動アーム)、12…スタイラス、2…ベース、20…姿勢調整機構、21…Y軸アーム、22…Y軸スライダ、23…検出器ホルダ、24…Y軸駆動モータ、25…α軸駆動モータ、26…β軸駆動モータ、3…回転テーブル、30…制御装置、4…コラム、5…Z軸スライダ、6…X軸スライダ、7…移動機構、8…スタイラスストッカ、81…アーム支持部分、A…軸線、B…軸線、S…軸線、W…ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6