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特開2023-18522ウェーハ搬送方法およびウェーハ搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018522
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】ウェーハ搬送方法およびウェーハ搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122709
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖二
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA15
5F131DA32
5F131DA42
5F131GA14
5F131GA15
5F131GA83
5F131GA84
5F131GA92
5F131HA29
5F131JA04
5F131JA16
5F131JA27
5F131JA28
5F131JA33
5F131JA34
(57)【要約】
【課題】ウェーハの搬送に伴って密閉収納容器の蓋を開閉する時や、ロードポートドアを上昇・下降する時の発塵量を低減することができるウェーハ搬送方法およびウェーハ搬送装置を提供する。
【解決手段】ウェーハ搬送方法であって、密閉収納容器からウェーハを出して搬送ロボットによりウェーハを搬送するか、または、搬送ロボットにより搬送されたウェーハを密閉収納容器に入れるにあたって、搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、密閉収納容器の蓋を保持してウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアに備えられたラッチキー駆動機構によって、ロードポート架台に載置された密閉収納容器において、容器本体に対する蓋の固定および固定解除のためのラッチキーを回転駆動させるとき、ラッチキーを60deg/sec以下の回転速度で回転駆動させるウェーハ搬送方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを収納する容器本体および該容器本体の開口部を開閉する蓋を備えた密閉収納容器と、搬送ロボットを格納した搬送室との間で、前記ウェーハの出し入れを行うためのロードポートを介して、前記搬送ロボットにより前記ウェーハを搬送するウェーハ搬送方法であって、
前記密閉収納容器から前記ウェーハを出して前記搬送ロボットにより前記ウェーハを搬送するか、または、前記搬送ロボットにより搬送された前記ウェーハを前記密閉収納容器に入れるにあたって、
前記搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、前記密閉収納容器の蓋を保持して前記ウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアに備えられたラッチキー駆動機構によって、
ロードポート架台に載置された前記密閉収納容器において、前記容器本体に対する前記蓋の固定および固定解除のためのラッチキーを回転駆動させるとき、
前記ラッチキーを60deg/sec以下の回転速度で回転駆動させることを特徴とするウェーハ搬送方法。
【請求項2】
前記ロードポートドアを、
前記ウェーハ搬出入口から下降して離脱させるか、前記ウェーハ搬出入口へ上昇して嵌合させるとき、
前記ロードポートドアの下降速度と上昇速度を100mm/sec以下とすることを特徴とする請求項1に記載のウェーハ搬送方法。
【請求項3】
搬送ロボットが格納された搬送室と、
ウェーハを収納する容器本体および該容器本体の開口部を開閉する蓋を備えた密閉収納容器と前記搬送室との間で、前記ウェーハの出し入れを行うためのロードポートと
を備えたウェーハ搬送装置であって、
前記ロードポートは、
前記搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、前記密閉収納容器の蓋を保持して前記ウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアと、
前記密閉収納容器の蓋が前記ウェーハ搬出入口と対向するように前記密閉収納容器が載置されるロードポート架台と、
前記ロードポートドアを駆動制御する制御装置と
を備えており、
前記ロードポートドアは、
前記ロードポート架台に載置された前記密閉収納容器において、前記容器本体に対する前記蓋の固定および固定解除のためのラッチキーを回転駆動させるラッチキー駆動機構を備えており、
前記制御装置は、
前記ラッチキー駆動機構の駆動制御が可能であり、該ラッチキー駆動機構による前記ラッチキーの回転駆動の回転速度の設定値が60deg/sec以下であることを特徴とするウェーハ搬送装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記ロードポートドアの前記ウェーハ搬出入口からの離脱における下降速度の設定値、および、前記ロードポートドアの前記ウェーハ搬出入口への嵌合における上昇速度の設定値が、100mm/sec以下であることを特徴とする請求項3に記載のウェーハ搬送装置。
【請求項5】
ウェーハを収納する容器本体および該容器本体の開口部を開閉する蓋を備えた密閉収納容器と、搬送ロボットを格納した搬送室との間で、前記ウェーハの出し入れを行うためのロードポートを介して、前記搬送ロボットにより前記ウェーハを搬送するウェーハ搬送方法であって、
前記密閉収納容器から前記ウェーハを出して前記搬送ロボットにより前記ウェーハを搬送するか、または、前記搬送ロボットにより搬送された前記ウェーハを前記密閉収納容器に入れるにあたって、
前記搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、前記密閉収納容器の蓋を保持して前記ウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアを、
前記ウェーハ搬出入口から下降して離脱させるか、前記ウェーハ搬出入口へ上昇して嵌合させるとき、
前記ロードポートドアの下降速度と上昇速度を100mm/sec以下とすることを特徴とするウェーハ搬送方法。
【請求項6】
搬送ロボットが格納された搬送室と、
ウェーハを収納する容器本体および該容器本体の開口部を開閉する蓋を備えた密閉収納容器と前記搬送室との間で、前記ウェーハの出し入れを行うためのロードポートと
を備えたウェーハ搬送装置であって、
前記ロードポートは、
前記搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、前記密閉収納容器の蓋を保持して前記ウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアと、
前記密閉収納容器の蓋が前記ウェーハ搬出入口と対向するように前記密閉収納容器が載置されるロードポート架台と、
前記ロードポートドアを駆動制御する制御装置と
を備えており、
前記制御装置は、
前記ロードポートドアの前記ウェーハ搬出入口からの離脱における下降速度の設定値、および、前記ロードポートドアの前記ウェーハ搬出入口への嵌合における上昇速度の設定値が、100mm/sec以下であることを特徴とするウェーハ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウェーハ搬送方法およびウェーハ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン等の半導体ウェーハ(以下、単に、ウェーハとも言う)を製造する工程で使用される装置のEFEM(Equipment Front End Module)におけるロードポートや半導体ウェーハを収納する密閉収納容器(以下、単に、収納容器とも言う)であるFOUP(Front Openning Unified Pod)などの位置関係はSEMI(Semiconductor Equipment and Material International)規格によって規定されている(特許文献1参照)。
【0003】
ここで、ロードポートによってFOUPの蓋が開いた際に、FOUP内がロードポートなどの装置やFOUPのパッキンなどから発塵したダストを含む外気の流入によって汚染されることがある。FOUPに収納された半導体ウェーハの欠陥の原因となるため装置などの設備導入時などに、FOUPの蓋を聞けた際にFOUP内にどの程度のダストが流入するかを評価している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-277291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が上記のようなダスト流入評価について鋭意研究を行ったところ、ウェーハの搬送において、搬送対象のウェーハを収納するための密閉収納容器の蓋の開閉時やロードポートドアの上昇・下降時に発塵しており、その発塵したダストが密閉収納容器内に流入してウェーハに付着する場合があることを見出した。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、ウェーハの搬送に伴って密閉収納容器の蓋を開閉する時や、ロードポートドアを上昇・下降する時の発塵量を低減することができるウェーハ搬送方法およびウェーハ搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、ウェーハを収納する容器本体および該容器本体の開口部を開閉する蓋を備えた密閉収納容器と、搬送ロボットを格納した搬送室との間で、前記ウェーハの出し入れを行うためのロードポートを介して、前記搬送ロボットにより前記ウェーハを搬送するウェーハ搬送方法であって、
前記密閉収納容器から前記ウェーハを出して前記搬送ロボットにより前記ウェーハを搬送するか、または、前記搬送ロボットにより搬送された前記ウェーハを前記密閉収納容器に入れるにあたって、
前記搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、前記密閉収納容器の蓋を保持して前記ウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアに備えられたラッチキー駆動機構によって、
ロードポート架台に載置された前記密閉収納容器において、前記容器本体に対する前記蓋の固定および固定解除のためのラッチキーを回転駆動させるとき、
前記ラッチキーを60deg/sec以下の回転速度で回転駆動させることを特徴とするウェーハ搬送方法を提供する。
【0008】
このような本発明のウェーハ搬送方法であれば、ラッチキーを上記速度で回転駆動させるため、密閉収納容器の蓋を比較的低速で開閉(容器本体に対して固定または固定解除)することができる。そのため、蓋の開閉時において発塵するダストの量を低減することができ、ウェーハへ付着するダスト量を低減することができる。
【0009】
このとき、前記ロードポートドアを、
前記ウェーハ搬出入口から下降して離脱させるか、前記ウェーハ搬出入口へ上昇して嵌合させるとき、
前記ロードポートドアの下降速度と上昇速度を100mm/sec以下とすることができる。
【0010】
このようにすれば、ロードポートドアを上記速度で上昇または下降させるため、比較的低速でウェーハ搬出入口に対する嵌合・離脱や移動をすることができる。そのため、ロードポートドアの上昇・下降時において発塵するダストの量も低減することができ、より一層、ウェーハへのダストの付着量を低減できる。
【0011】
また本発明は、搬送ロボットが格納された搬送室と、
ウェーハを収納する容器本体および該容器本体の開口部を開閉する蓋を備えた密閉収納容器と前記搬送室との間で、前記ウェーハの出し入れを行うためのロードポートと
を備えたウェーハ搬送装置であって、
前記ロードポートは、
前記搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、前記密閉収納容器の蓋を保持して前記ウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアと、
前記密閉収納容器の蓋が前記ウェーハ搬出入口と対向するように前記密閉収納容器が載置されるロードポート架台と、
前記ロードポートドアを駆動制御する制御装置と
を備えており、
前記ロードポートドアは、
前記ロードポート架台に載置された前記密閉収納容器において、前記容器本体に対する前記蓋の固定および固定解除のためのラッチキーを回転駆動させるラッチキー駆動機構を備えており、
前記制御装置は、
前記ラッチキー駆動機構の駆動制御が可能であり、該ラッチキー駆動機構による前記ラッチキーの回転駆動の回転速度の設定値が60deg/sec以下であることを特徴とするウェーハ搬送装置を提供する。
【0012】
このような本発明のウェーハ搬送装置であれば、密閉収納容器の蓋の開閉が比較的低速で行われるものとなり、蓋の開閉時の発塵量やウェーハへのダスト付着量が低減可能なものとなる。
【0013】
この場合、前記制御装置は、
前記ロードポートドアの前記ウェーハ搬出入口からの離脱における下降速度の設定値、および、前記ロードポートドアの前記ウェーハ搬出入口への嵌合における上昇速度の設定値が、100mm/sec以下であるものとすることができる。
【0014】
このようなものであれば、ロードポートドアのウェーハ搬出入口に対する嵌合・離脱や移動が比較的低速で行われるものとなり、ロードポートドアの上昇・下降時の発塵量も低減でき、ウェーハへのダスト付着量もさらに低減可能なものとなる。
【0015】
また本発明は、ウェーハを収納する容器本体および該容器本体の開口部を開閉する蓋を備えた密閉収納容器と、搬送ロボットを格納した搬送室との間で、前記ウェーハの出し入れを行うためのロードポートを介して、前記搬送ロボットにより前記ウェーハを搬送するウェーハ搬送方法であって、
前記密閉収納容器から前記ウェーハを出して前記搬送ロボットにより前記ウェーハを搬送するか、または、前記搬送ロボットにより搬送された前記ウェーハを前記密閉収納容器に入れるにあたって、
前記搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、前記密閉収納容器の蓋を保持して前記ウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアを、
前記ウェーハ搬出入口から下降して離脱させるか、前記ウェーハ搬出入口へ上昇して嵌合させるとき、
前記ロードポートドアの下降速度と上昇速度を100mm/sec以下とすることを特徴とするウェーハ搬送方法を提供する。
【0016】
このような本発明のウェーハ搬送方法であれば、ロードポートドアを上記速度で上昇または下降させるため、比較的低速でウェーハ搬出入口に対する嵌合・離脱や移動をすることができる。そのため、ロードポートドアの上昇・下降時において発塵するダストの量を低減することができ、ウェーハへ付着するダスト量を低減することができる。
【0017】
また本発明は、搬送ロボットが格納された搬送室と、
ウェーハを収納する容器本体および該容器本体の開口部を開閉する蓋を備えた密閉収納容器と前記搬送室との間で、前記ウェーハの出し入れを行うためのロードポートと
を備えたウェーハ搬送装置であって、
前記ロードポートは、
前記搬送室のウェーハ搬出入口に嵌合可能であり、かつ、前記密閉収納容器の蓋を保持して前記ウェーハ搬出入口からの離脱が可能なロードポートドアと、
前記密閉収納容器の蓋が前記ウェーハ搬出入口と対向するように前記密閉収納容器が載置されるロードポート架台と、
前記ロードポートドアを駆動制御する制御装置と
を備えており、
前記制御装置は、
前記ロードポートドアの前記ウェーハ搬出入口からの離脱における下降速度の設定値、および、前記ロードポートドアの前記ウェーハ搬出入口への嵌合における上昇速度の設定値が、100mm/sec以下であることを特徴とするウェーハ搬送装置を提供する。
【0018】
このような本発明のウェーハ搬送装置であれば、ロードポートドアのウェーハ搬出入口に対する嵌合・離脱や移動が比較的低速で行われるものとなり、ロードポートドアの上昇・下降時の発塵量やウェーハへのダスト付着量が低減可能なものとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のウェーハ搬送方法およびウェーハ搬送装置であれば、ウェーハの搬送に伴う密閉収納容器の蓋の開閉時やロードポートドアの上昇・下降時におけるダストの発塵量を低減してウェーハへの付着量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のウェーハ搬送装置の一例を示す説明図である。
図2】一般的な密閉収納容器の一例を示す説明図である。
図3】蓋閉塞時における蓋の正面図と密閉収納容器の側面図である。
図4】蓋開放時における蓋の正面図と密閉収納容器の側面図である。
図5】ラッチキー駆動機構の一例を示す説明図である。
図6】ロードポートドアが密閉収納容器の蓋を保持したまま下降した場合の様子を示す説明図である。
図7】実施例1~2、比較例1~2における作業前後のパーティクル増加個数を示すグラフである。
図8】実施例3~6における作業前後のパーティクル増加個数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず本発明者が本発明を見出すに至った経緯について説明する。
本発明者は密閉収納容器(ここではFOUPを例に挙げて説明する)の蓋を開けた際に
FOUP内に侵入する外気の流れについて調査した。
その結果、FOUP内に全てウェーハが載置された状態でロードポートのロードポートドアによりFOUPの蓋を開けると、容器本体と蓋の隙間から外気が流れ込む。より具体的には、容器本体の上壁(天板)と、最も上側に位置するウェーハとの間の空間を通って、蓋側から最奥部の側壁に向かって外気が導入される。これと同時に容器本体の下壁(底面)と、最も下に位置するウェーハとの間の空間を通って、蓋側から最奥部の側壁(奥壁)に向かって外気が導入される。それぞれ奥壁に達した外気の流れは当該奥壁に沿って流れ、上側の外気は下側へ、下側の外気は上側へと流れることが確認された。
【0022】
ここで、FOUPの蓋開閉機構や搬送室内のウェーハ搬送ロボットなど各所から発塵する可能性があり、FOUPの蓋を開けた際に、容器本体内に流れ込む外気にダストが含まれることが多い。特には、蓋の開閉時やロードポートドアの上昇・下降時に発塵が生じていると考えられた。
【0023】
そして本発明者は、FOUP等の密閉収納容器の蓋の開閉のためにラッチキーを回転駆動させる際に、その回転速度を60deg/sec以下にすること、また、ウェーハ搬出入口に対する嵌合・離脱や移動のためにロードポートドアを上昇・下降させる際に、それらの速度を100mm/sec以下にすることで、蓋の開閉時やロードポートドアの上昇・下降時の発塵量、ひいてはウェーハへのダストの付着量の低減を図ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0024】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
図1に本発明のウェーハ搬送装置(移載装置)1の一例を示す。なお、一般的な密閉収納容器(FOUP)2と、処理装置20を併せて図示している。ここでは密閉収納容器2の一例として、FOUPのタイプを挙げて説明するが、タイプは特に限定されない。例えばFOSB(Front Opening Shipping Box)のタイプとすることもできる。
ウェーハ搬送装置1の搬送(移載)対象のウェーハWは特に限定されず、例えば半導体シリコンウェーハ、化合物半導体ウェーハなど各種半導体ウェーハが挙げられ、特には研磨されたシリコンウェーハや、エピタキシャル成長にて成膜したシリコンウェーハとすることができる。
その他、ガラス基板などのウェーハ状のものも搬送可能な装置である。
【0025】
ここで、一般的なFOUP2について図を参照して説明する。
図2のFOUP2はウェーハを収納する密閉収納容器である。FOUP2は、容器本体3と蓋4とを備える。容器本体3は複数のウェーハを収納可能に形成されており、前面に開口部を有する。この開口部からウェーハの出し入れが行われる。図2において、容器本体3の前面は右側の面である。蓋4は容器本体3の前面の開口部を開閉するためのものである。蓋4がパッキン(不図示)を介して閉まると容器本体3の内側は密閉される。
FOUP2内にウェーハWを収納して搬送する場合、通常、ウェーハWはフル充填されている。なお、通常ではフル充填の枚数は例えば25枚であるが、図面では簡便のため8枚で描いている。
【0026】
ここで、蓋4の開閉機構について説明する。
図3は蓋閉塞時における蓋の正面図と密閉収納容器の側面図である。また、図4は蓋開放時における蓋の正面図と密閉収納容器の側面図である。
蓋4はラッチキー5を備えており、該ラッチキー5の回転駆動により、蓋4の開閉(施錠や解除)、すなわち、容器本体3に対して蓋4を固定したり、固定解除したりすることができる。より具体的には、ラッチキーの穴(穴)6を有しており、後述するラッチキーの爪7を穴6に挿入して回転駆動することで、蓋4の開閉が可能である。ここでは、蓋4の閉塞時は穴6の向きは縦穴である。そして、蓋4の開放時は穴6の向きは90度時計回りに回転した横穴である。このような仕組みにより蓋4の開閉が可能である。なお、当然、ラッチキー5の仕組み自体はこれに限定されるものではない。
【0027】
次に、図1を参照して本発明のウェーハ搬送装置1について説明する。
まずウェーハ搬送装置1はEFEM11を有している。このEFEM11はFOUP2に収納されたウェーハWを、FOUP2から処理装置20まで、ミニエンバイロメント方式で搬送する。EFEM11は、搬送ロボット12と、搬送室13、ロードポート14とを備える。
搬送ロボット12はFOUP2に収納されたウェーハWを取り出して搬送するものである。また、搬送ロボット12は、FOUP2にウェーハWを入れて収納することもできる。
搬送室13は搬送ロボット12を格納する。搬送ロボッ卜12によりFOUP2より取り出されたウェーハWは搬送室13を介して処現装置20に搬送される。またその逆に、処理装置20で処理されたウェーハWを搬送し、搬送室13を介してFOUP2に入れることもできる。なお、搬送室13の壁には、FOUP2との間でのウェーハWの搬出入のためのウェーハ搬出入口18が設けられている。
【0028】
ロードポート14はFOUP2と搬送室13との間でウェーハWを受け渡すためのインターフェースである。FOUP2と搬送室13との間でウェーハWの出し入れする場合にはこのロードポートを介することになる。すなわち、ロードポート14の駆動が必要になる。
このロードポート14は、ロードポート架台(架台)15と、ロードポートドア(ドア)16と、制御装置17を備える。
【0029】
架台15は、FOUP2を載置する箇所である。FOUP2の蓋4がウェーハ搬出入口18と対向した状態で載置できるように高さや位置が調節されている。
ドア16は、ウェーハ搬出入口18を開閉するためのものである。すなわち、ドア16は、ウェーハ搬出入口18に嵌合可能であり、その開口を閉じることができる。かつ、ウェーハ搬出入口18からの離脱が可能であり、その開口を開けることもできるものである。
また、ドア16には、前述したFOUP2の蓋4におけるラッチキー5を回転駆動させるためのラッチキー駆動機構19が組み込まれている。図5にラッチキー駆動機構の一例を示す。ラッチキー駆動機構19には、例えば、ラッチキーの穴6に挿入可能なラッチキーの爪(爪)7が備えられている。この爪7が穴6に挿入されて回転駆動されることにより、ラッチキー5が回転駆動されて蓋4の開閉が行われる仕組みになっている。
【0030】
なお、ラッチキー駆動機構19によりラッチキー5が回転駆動して解除され、容器本体3の開口部を開放した蓋4はドア16に保持され、ドア16と一体となって上下に移動可能になる。図6は、ドア16が蓋4を保持した状態でウェーハ搬出入口18から離脱して下降した場合の様子である。
必要に応じて、ドア16に吸着具(不図示)などを設け、該吸着具により蓋4をより強固に保持可能な構造とすることもできる。
【0031】
一方、一体となった蓋4やドア16の位置が容器本体3の開口部やウェーハ搬出入口18にまで上昇して位置し、ラッチキー駆動機構19により蓋4のラッチキー5が回転駆動して施錠されると、容器本体3の開口部は蓋4によって閉塞される。このようにしてFOUP2の蓋4が閉塞された状態では、同時にドア16がウェーハ搬出入口18に嵌合して閉めており、このとき搬送室13の内側は密閉される。図1はこの密閉状態の様子を示している。
【0032】
ところで、前述したドア16の上下の移動(上昇および下降の駆動)や、それに組み込まれたラッチキー駆動機構19の駆動(ラッチキーの爪7の回転駆動)は制御装置17により制御可能になっている。この制御装置17は、例えばコンピュータとすることができる。予め設定した所定のプログラムによって自動的にそれらの駆動を制御するものとすることができる。
【0033】
制御装置17の第一態様では、ラッチキー駆動機構19によるラッチキー5の回転駆動の回転速度は60deg/sec以下(かつ、0deg/secより大)の設定値でプログラムされており、比較的低速度で蓋4の開閉が行われるものとなっている。本発明者は、このラッチキー5の回転速度によって、発塵するダストの量が異なることを見出した。そして、このような低速度のため、蓋4の開閉に伴う発塵量を低減できる。これにより、蓋4の開閉時に搬送室13から容器本体3内に流れ込む外気中に含まれるダストの量を低減することができ、ウェーハWへのダスト付着量の低減を図ることができる。
【0034】
また、制御装置17の第二態様では、ドア16のウェーハ搬出入口18からの離脱における下降速度が100mm/sec以下(かつ、0mm/secより大)の設定値でプログラムされており、また、ドア16のウェーハ搬出入口18への嵌合における上昇速度が100mm/sec以下(かつ、0mm/secより大)の設定値でプログラムされている。上昇・下降のいずれにしても、比較的低速度でドア16(および保持した蓋4)の移動が行われるものとなっている。本発明者は、このドア16の上昇・下降速度によっても、発塵するダストの量が異なることを見出した。そして、このような低速度のため、ドア16の上昇・下降に伴う発塵量を低減でき、ひいては、容器本体3内に搬送室13から容器本体3内に流れ込む外気中に含まれるダストの量を低減でき、その結果、ウェーハWへのダスト付着量の低減を図ることができる。
【0035】
本発明における制御装置17は上記のような第一態様または第二態様のどちらかの設定値を備えていることが必須であるが、特に第三態様として、第一態様と第二態様の両方の設定値を備えたものとすることができる。このようなものであれば、蓋4の開閉時とドア16の上昇・下降時の両方における発塵量を低減でき、より一層、ウェーハWへのダスト付着量を低減できるので、より好ましい。
【0036】
次に、本発明のウェーハ搬送方法について説明する。
FOUP2から取り出して処理装置20までウェーハWを搬送する場合、まず、FOUP2を架台15の所定の位置に配置する。このとき、FOUP2の蓋4と、ウェーハ搬出入口18と嵌合しているロードポート14のドア16とが対向するように配置される。
そして、FOUP2の蓋4をロードポート14のドア16に保持させるとともに、ラッチキー駆動機構19によりラッチキー5を回転駆動させて解除し、蓋4を開く。このラッチキー5の回転駆動時において、制御装置17の自動制御により、その回転速度を60deg/sec以下という比較的低速度で回転駆動する。
そして、蓋4と一体化したドア16をウェーハ搬出入口18から下降して離脱させるが、制御装置17の自動制御により、そのときの下降速度を100mm/sec以下という比較的低速度で下降させる。
その後、FOUP2に収納されたウェーハWを搬送ロボット12によって取り出し、処理装置20まで搬送する。これにより、ウェーハWのミニエンバイロメント方式の搬送が行われる。
【0037】
なお、上記ではラッチキー5の回転駆動時(蓋4の開放時)の回転速度の制御とドア16の下降速度の制御の両方を行う場合について説明したが、本発明のウェーハ搬送方法では少なくともこれらのうちの一方を行えば良い。ただし、両方行うのがより好ましい。
【0038】
また、逆に、処理装置20で処理したウェーハWを搬送ロボット12により搬送してFOUP2に収納する場合は、ウェーハWを収納後、下降していたドア16(および蓋4)を上昇させてウェーハ搬出入口18に嵌合させるときの上昇速度を100mm/sec以下とする。そして、蓋4での閉塞時のラッチキー5の回転駆動時の回転速度を60deg/sec以下とする。
【0039】
上述の通り、FOUP2は蓋4によって密閉されているため、例えば蓋4が開くと内側が負圧となる。FOUP2の内側が負圧になると、外気が流れ込み、空気中のダストが容器本体3内に侵入する。このようにウェーハWの搬出または搬入に伴う蓋4の開放または閉塞時には、容器本体3内の圧力変動やダストの流入が生じ得る。そこで、上記のように、ラッチキー5の回転駆動やドア16の上昇・下降の移動のスピード調整をすることによって、その動作に伴う各所から発生して空気中に含まれてしまうダスト量を低減する。その結果、後に容器本体3内に流入してウェーハWに付着するダスト量を低減することができる。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は
これらに限定されるものではない。
(実施例1)
直径300mmのP型(100)ウェーハを25枚充填(フル充填)したFOUPを用意した。このFOUPを、図1に示す本発明のウェーハ搬送装置のロードポートの架台に載置して、ドアのラッチキー駆動機構であるラッチキーの爪をFOUPの蓋のラッチキーの穴に差し込んで回転させて、ドアと蓋を開放する動作(蓋と一体化したドアをウェーハ搬出入口から離脱する動作。このとき、蓋は容器本体から離脱する)を行った。次に、ドアを下降させることなくドアと蓋を閉め、ラッチキーの爪を先程と逆に回転させてFOUPの蓋を閉状態(施錠)とした。
これらの一連の作業をドア及び蓋開閉作業として100回繰り返した。
ラッチキー駆動機構を駆動制御する制御装置において、この際のラッチキー(ラッチキーの爪)の回転スピードは50deg/secとした。
【0041】
(実施例2)
ラッチキーの回転スピードを60deg/secとした以外は実施例1と同じ動作で、ドア及び蓋開閉作業を100回繰り返した。
【0042】
(比較例1)
ラッチキーの回転スピードを70deg/secとした以外は実施例1と同じ動作で、ドア及び蓋開閉作業を100回繰り返した。
【0043】
(比較例2)
ラッチキーの回転スピードを75deg/secとした以外は実施例1と同じ動作で、ドア及び蓋開閉作業を100回繰り返した。
【0044】
(実施例3)
直径300mmのP型(100)ウェーハを25枚充填(フル充填)したFOUPを用意した。このFOUPを、図1に示す本発明のウェーハ搬送装置のロードポートの架台に載置して、ドアのラッチキー駆動機構であるラッチキーの爪をFOUPの蓋の穴に差し込んで回転させて、ドアと蓋を開放する動作(蓋と一体化したドアをウェーハ搬出入口から離脱する動作。このとき、蓋は容器本体から離脱する)を行った。次にドアと蓋を最も下側の位置に下降させた。
次にドアと蓋を最も下側の位置から蓋を閉めることが可能な位置まで上昇し、最後にドアと蓋を閉め、ラッチキーの爪を先程と逆に回転させてFOUPの蓋を閉状態(施錠)とした。
これらの一連の作業をドア及び蓋開閉下降上昇作業として100回繰り返した。
ラッチキー駆動機構を駆動制御する制御装置において、この際のラッチキー(ラッチキーの爪)の回転スピードは50deg/secとし、ドア及び蓋の下降上昇スピードは60mm/secとした。
【0045】
(実施例4)
ドア及び蓋の下降上昇スピードを100mm/secとした以外は実施例3と同じ動作で、ドア及び蓋開閉下降上昇作業を100回繰り返した。
【0046】
(実施例5)
ドア及び蓋の下降上昇スピードを125mm/secとした以外は実施例3と同じ動作で、ドア及び蓋開閉下降上昇作業を100回繰り返した。
【0047】
(実施例6)
ドア及び蓋の下降上昇スピードを150mm/secとした以外は実施例3と同じ動作で、ドア及び蓋開閉下降上昇作業を100回繰り返した。
【0048】
(結果)
実施例1~2及び比較例1~2のドア及び蓋開閉作業と、実施例3~6のドア及び蓋開閉下降上昇作業をそれぞれ行った後のFOUP内のウェーハについて、作業前後のパーティクルをKLA社製パーティクルカウンターSP2で測定した。具体的には46nmサイズ以上のパーティクル個数の1枚当たりの平均値を算出し、作業前後の差分を規格化して比較した結果を図7(実施例1~2、比較例1~2)、図8(実施例3~6)に示す。
【0049】
図7のように、ラッチキーの回転スピードを、実施例1~2のように60deg/sec以下に小さくした場合に、ウェーハに付着する発塵したダスト数が、ラッチキーの回転スピードが70deg/sec以上の比較例1~2と比較して、1/2以下に低減した。これより、本発明のようにラッチキーの回転スピードを60deg/sec以下という低速度に最適化した効果が確認された。
次に、図8のように、ドアと蓋の下降上昇のスピードを、実施例3~4のように100mm/sec以下に小さくした場合に、ウェーハに付着する発塵したダスト数が、ドアと蓋の下降上昇のスピードが125mm/sec以上の実施例5~6と比較して、およそ1/2以下に低減した。ラッチキーの回転スピードは全て同じ(50deg/sec)であり条件は変わらないため、これより、ドアと蓋の下降上昇のスピードを100mm/sec以下という低速度に最適化した効果が確認された。
【0050】
(実施例7~8、比較例3~4)
ラッチキーの回転スピードを70deg/secとし、ドアと蓋の下降上昇のスピードを60mm/sec(実施例7)、100mm/sec(実施例8)、125mm/sec(比較例3)、150mm/sec(比較例4)とした以外は実施例3と同じ動作で、ドア及び蓋開閉下降上昇作業を100回繰り返した。
【0051】
同様にして作業前後のパーティクル個数の差分を規格化して比較した結果、図8の場合とは絶対値は異なるが、傾向としては図8と同様であった。すなわち、ドアと蓋の下降上昇のスピードを、100mm/sec以下に小さくした場合に、ウェーハに付着する発塵したダスト数が、ドアと蓋の下降上昇のスピードが125mm/sec以上の比較例3、4と比較して、およそ1/2以下に低減した。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0053】
1…本発明のウェーハ搬送装置、
2…密閉収納容器(FOUP)、 3…容器本体、 4…蓋、
5…ラッチキー、 6…ラッチキーの穴(穴)、 7…ラッチキーの爪(爪)、
11…EFEM、 12…搬送ロボット、 13…搬送室、
14…ロードポート、 15…ロードポート架台(架台)、
16…ロードポートドア(ドア)、
17…制御装置、 18…ウェーハ搬出入口、 19…ラッチキー駆動機構、
20…処理装置、 W…ウェーハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8