IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボンドテック株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018531
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】基板接合システムおよび基板接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230201BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230201BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
H01L21/68 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】63
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122726
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】304019355
【氏名又は名称】ボンドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】山内 朗
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA37
5F131BA39
5F131BA60
5F131CA18
5F131DA33
5F131DA42
5F131DA67
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB57
5F131DB72
5F131EA03
5F131EA06
5F131EA07
5F131EA14
5F131EA22
5F131EA23
5F131EA24
5F131EA25
5F131EB01
5F131EB02
5F131EB11
5F131EB63
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB89
5F131FA17
5F131FA32
5F131FA33
5F131FA37
5F131FA39
5F131JA08
5F131JA16
5F131JA32
5F131JA36
5F131KA12
5F131KA14
5F131KA47
5F131KA72
5F131KB07
5F131KB12
5F131KB32
(57)【要約】
【課題】互いに接合された基板全体における接合位置精度を高めることができる基板接合システムおよび基板接合方法を提供する。
【解決手段】基板接合装置は、ステージ、ヘッドにおける第2領域に設けられた気体吐出孔1413c、1423cと、基板の中央部同士を接触させる前に、基板の周部が静電チャック1411、1421に保持された状態で、静電チャック1413、1423による基板の保持を解除するとともに、気体吐出孔1413c、1423cから気体を吐出させるようにチャック駆動部および気体供給部1492を制御する制御部と、を備える。そして、ステージ、ヘッドは、第2領域に設けられ、気体吐出孔1413c、1423cに連通する溝1413d、1423dを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板とを接合する基板接合システムであって、
前記第1基板を保持する第1基板保持部と、
前記第2基板の接合面を前記第1基板の接合面に対向させた状態で前記第2基板を保持する第2基板保持部と、
前記第1基板保持部における予め設定された基板保持位置に配置された前記第1基板の周部に対向する第1領域に設けられた少なくとも1つの第1静電チャックと、
前記第1基板保持部における前記第1領域の内側の第2領域に設けられ前記基板保持位置に配置された前記第1基板における前記第2領域に対向する部分を保持する少なくとも1つの第2静電チャックと、
前記第1静電チャックと前記第2静電チャックとを各別に駆動するチャック駆動部と、
前記第1基板保持部における前記第2領域に設けられ前記第1基板側に向かって気体を吐出する気体吐出部と、
前記気体吐出部に気体を供給する気体供給部と、
前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とを接触させる前に、前記第1基板の周部が前記第1静電チャックに保持された状態で、前記第2静電チャックによる前記第1基板の保持を解除するとともに、前記気体吐出部から気体を吐出させるように前記チャック駆動部および前記気体供給部を制御する制御部と、を備え、
前記第1基板保持部は、前記第2領域に設けられ、前記気体吐出部に連通する第1凹部を有する、
基板接合システム。
【請求項2】
前記第1凹部は、前記第2領域において、少なくとも一部が前記第1基板保持部の中央部から前記第1基板保持部の周縁に向かう方向へ放射状に延在する部分を有する少なくとも1つの第1溝を含む、
請求項1に記載の基板接合システム。
【請求項3】
前記第1静電チャックは、前記第1領域において、前記第1基板保持部の中央部から前記第1基板保持部の周縁に向かう方向へ放射状に延在する複数の第1電極子を有し、
前記第2静電チャックは、前記第2領域において、前記第1基板保持部の中央部から前記第1基板保持部の周縁に向かう方向へ放射状に延在する複数の第2電極子を有する、
請求項2に記載の基板接合システム。
【請求項4】
前記複数の第2電極子は、平面視における幅が前記第1基板保持部の周縁側ほど広くなる形状を有する、
請求項3に記載の基板接合システム。
【請求項5】
前記第1凹部は、前記第2領域において、前記第1基板保持部の中央部を中心として円弧状に延在する部分を有する少なくとも1つの第1溝を含む、
請求項2に記載の基板接合システム。
【請求項6】
前記第2静電チャックは、前記第2領域それぞれにおいて、前記第1基板保持部の中央部を中心として円弧状に延在する複数の第2電極子を有する、
請求項5に記載の基板接合システム。
【請求項7】
前記第1凹部は、前記第2領域において、前記第1基板保持部の中央部から螺旋状に延在する部分を有する少なくとも1つの第1溝を含む、
請求項2に記載の基板接合システム。
【請求項8】
前記第2静電チャックは、前記第2領域それぞれにおいて、前記第1基板保持部の中央部から螺旋状に延在する少なくとも1つの電極子を有する、
請求項7に記載の基板接合システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1溝は、前記複数の第2電極子それぞれの延在方向に沿って延在する部分を有する、
請求項3または4に記載の基板接合システム。
【請求項10】
前記複数の第2電極子のうちの一部の第2電極子は、第1端子電極に電気的に接続され、
前記複数の第2電極子のうちの残りの第2電極子は、前記第1端子電極とは異なる第2端子電極に電気的に接続され、
前記一部の第2電極子と前記残りの第2電極子とは、前記複数の第2電極子の延在方向と直交する方向に交互に並ぶように配置され、
前記少なくとも1つの第1溝は、前記第1端子電極に電気的に接続された第1電極子と前記第2端子電極に電気的に接続された第2電極子との間に設けられている、
請求項9に記載の基板接合システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とを接触させる前に、前記第1基板が前記第2静電チャックに保持された状態で、前記気体吐出部から前記第1凹部全体に気体を充填させた後、前記第2静電チャックによる前記第1基板の保持を解除するように前記チャック駆動部および前記気体供給部を制御する、
請求項1から10のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項12】
前記気体吐出部は、イオンを含む気体を吐出する、
請求項1から11のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項13】
前記第1基板保持部は、前記第1領域に設けられ前記気体吐出部に連通する第2凹部を有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項14】
前記制御部は、前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とが接触し且つ前記第1基板の周部が前記第1静電チャックに保持された状態で、前記気体吐出部から前記第2凹部全体に気体を充填させた後、前記第1静電チャックによる前記第1基板の保持を解除するように前記チャック駆動部および前記気体供給部を制御して前記第1基板と前記第2基板とを接触させる、
請求項13に記載の基板接合システム。
【請求項15】
前記複数の第1電極子のうちの一部の第1電極子は、第3端子電極に電気的に接続され、
前記複数の第1電極子のうちの残りの第1電極子は、前記第3端子電極とは異なる第4端子電極に電気的に接続され、
前記一部の第1電極子と前記残りの第1電極子とは、前記複数の第1電極子の延在方向と直交する方向に交互に並ぶように配置され、
前記第2凹部は、前記第1領域において、少なくとも一部が前記第1基板保持部の中央部から前記第1基板保持部の周縁に向かう方向へ放射状に延在する部分を有する少なくとも1つの第2溝を含み、
前記少なくとも1つの第2溝は、前記第3端子電極に電気的に接続された第1電極子と前記第4端子電極に電気的に接続された第1電極子との間に設けられている、
請求項13または14に記載の基板接合システム。
【請求項16】
前記第1静電チャックは、
前記第1領域において、前記第1基板保持部の中央部から前記第1基板保持部の周縁に向かう方向へ放射状に延在する複数の第1電極子と、
前記第1領域において、前記複数の第1電極子のうちの一部の第1電極子に電気的に接続される環状の第3端子電極と、
前記第1領域において、前記複数の第1電極子のうちの残りの第1電極子に電気的に接続される環状の第4端子電極と、を有し、
前記第3端子電極と前記第4端子電極との少なくとも一方は、平面視で他方から離れる方向へ突出するように屈曲した複数の屈曲部と、周方向で隣り合う2つの屈曲部の端部同士を連結する連結部と、を有する、
請求項1から15のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項17】
前記第1基板保持部の中央部において前記第1基板の中央部を押圧する押圧機構を更に備え、
前記制御部は、前記第1基板の周部が前記第1静電チャックに保持された状態で、前記第2静電チャックによる前記第1基板の保持が解除するとともに、前記気体吐出部から気体を吐出させるように前記チャック駆動部および前記気体供給部を制御した後、前記押圧機構により前記第1基板を押圧して前記第1基板の中央部が前記第1基板の周部に比べて前記第2基板側へ突出するように撓ませた状態で前記第1基板の接合面の中央部を前記第2基板の接合面の中央部に接触させて前記第1基板と前記第2基板との接合を進めるように前記押圧機構を制御する、
請求項1から16のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項18】
前記制御部は、前記第1基板が前記第2基板に接触する圧力が前記第1基板と前記第2基板とが仮接合される臨界圧力未満となるように前記気体吐出部から気体が吐出されるように前記気体供給部を制御する、
請求項1から17のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項19】
前記気体吐出部から気体が吐出されたときの前記第1基板保持部と前記第1基板との間の領域の気圧を検出する気圧検出部を更に備え、
前記制御部は、前記気圧検出部により検出される気圧に基づいて、前記気圧が前記臨界圧力未満となるように前記気体吐出部から吐出される気体の流量を制御する、
請求項18に記載の基板接合システム。
【請求項20】
前記第1静電チャックは、複数の第1電極子を有し、
前記第2静電チャックは、複数の第2電極子を有し、
前記複数の第2電極子のうちの一部の第2電極子は、第1端子電極に電気的に接続され、
前記複数の第2電極子のうちの残りの第2電極子は、前記第1端子電極とは異なる第2端子電極に電気的に接続され、
前記複数の第1電極子のうちの一部の第1電極子は、第3端子電極に電気的に接続され、
前記複数の第1電極子のうちの残りの第1電極子は、前記第3端子電極とは異なる第4端子電極に電気的に接続され、
前記一部の第2電極子と前記残りの第2電極子とは、交互に並ぶように配置され、
前記一部の第1電極子と前記残りの第1電極子とは、交互に並ぶように配置され、
前記制御部は、前記第1静電チャックから前記第1基板の周部の保持を解除する際、前記第1端子電極と前記第2端子電極との間に極性の異なるパルス電圧を交互に印加しつつ、前記パルス電圧の振幅を漸減させるように前記チャック駆動部を制御する、
請求項1から19のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項21】
前記第1基板保持部における前記第1基板が支持される側とは反対側に配置された第1撮像部と、
前記第1基板保持部と前記第2基板保持部との少なくとも一方を他方に対して前記第1基板保持部と前記第2基板保持部とが対向する方向と交差する方向へ相対的に移動させる保持部駆動部と、を更に備え、
前記第1基板保持部は、透光性を有するガラスから形成され、
前記第1基板は、複数の第1アライメントマークが設けられ、
前記第2基板は、前記複数の第1アライメントマークと同数の複数の第2アライメントマークが設けられ、
前記第1撮像部は、前記第1基板保持部を透過して前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークを撮像し、
前記制御部は、更に、前記第1撮像部により撮像された前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークの撮影画像に基づいて、前記第1基板の前記第2基板に対する相対的な位置ずれ量が小さくなるように前記第1基板保持部と前記第2基板保持部との少なくとも一方を移動させるよう前記保持部駆動部を制御する、
請求項1から20のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項22】
前記第1静電チャックは、前記第1基板保持部における前記第1領域において前記第1基板保持部の中央部を中心とした予め設定された複数のサブ環状領域それぞれに設けられ、前記基板保持位置に配置された前記第1基板における前記複数のサブ環状領域それぞれに対向する部分を保持し、
前記チャック駆動部は、前記複数のサブ環状領域それぞれに設けられた前記第1静電チャックを各別に駆動し、
前記第1撮像部は、前記第1基板保持部の前記第1領域において、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークを撮像し、
前記制御部は、前記第1基板の周部が前記第1静電チャックに保持された状態で、前記複数のサブ環状領域のうち前記第1基板保持部の中央部側に位置するサブ環状領域から優先的に、前記第1静電チャックによる前記第1基板の保持を解除するように前記チャック駆動部を制御する、
請求項21に記載の基板接合システム。
【請求項23】
前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークは、それぞれ、3つ以上存在し、
前記制御部は、前記複数の第1アライメントマークと、前記複数の第1アライメントマークそれぞれに対応する第2アライメントマークと、の位置ずれ量が小さくなるように前記第1基板保持部と前記第2基板保持部との少なくとも一方を移動させるよう前記保持部駆動部を制御する、
請求項21または22に記載の基板接合システム。
【請求項24】
前記第1撮像部は、前記第1基板保持部における前記第1基板が支持される側とは反対側に配置された光源から前記第1基板および前記第2基板へ光が照射された状態で、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークの撮影画像を撮像する、
請求項21から23のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項25】
前記第1撮像部は、前記第2基板保持部における前記第2基板が支持される側とは反対側に配置された光源から前記第1基板および前記第2基板へ光が照射された状態で、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークの撮影画像を撮像する、
請求項21から23のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項26】
前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークの位置に応じて、前記光源を移動させる光源位置調整部を更に備える、
請求項24または25に記載の基板接合システム。
【請求項27】
前記第1撮像部は、前記第1アライメントマークと同数存在し、それぞれ、前記複数の第1アライメントマークのうちの1つの第1アライメントマークと、前記複数の第2アライメントマークのうちの前記1つの第1アライメントマークに対応する1つの第2アライメントマークとを撮像する、
請求項21から26のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項28】
前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークの位置に応じて、前記第1撮像部を移動させる撮像部位置調整部を更に備える、
請求項21から27のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項29】
前記複数の第1電極子と前記複数の第2電極子とのうちの少なくとも1つは、透明導電膜から形成されている、
請求項21から28のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項30】
第1基板と第2基板とを接合する基板接合システムであって、
前記第1基板を支持する第1基板保持部と、
前記第2基板の接合面を前記第1基板の接合面に対向させた状態で前記第2基板を支持する第2基板保持部と、
前記第1基板保持部における前記第1基板が前記第1基板保持部の予め設定された基板保持位置に配置された前記第1基板の周部に対向する第1領域に設けられ前記第1基板を保持する静電チャックと、
前記静電チャックを駆動するチャック駆動部と、
前記第1基板保持部における前記第1領域の内側の第2領域において中心が前記第1基板保持部の中央部に一致する複数の仮想円それぞれに沿って配置されるとともに、前記基板保持位置に配置された前記第1基板における前記第2領域に対向する部分を押圧する複数の押圧部材と、
前記複数の押圧部材を各別に駆動する押圧部材駆動部と、
前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とが接触する前に、前記第1基板の周部が前記静電チャックに保持された状態で、前記複数の押圧部材のうち前記第1基板保持部の中央部側に位置する押圧部材が優先的に前記第1基板を押圧するように前記押圧部材駆動部を制御する制御部と、を備える、
基板接合システム。
【請求項31】
前記複数の押圧部材は、互いに内径が異なる円環状であり、前記第1基板保持部における前記第2領域において中心が前記第1基板保持部の中央部に一致するように同心円状に配置されている、
請求項30に記載の基板接合システム。
【請求項32】
前記第1基板保持部の中央部において前記第1基板の中央部を押圧する押圧機構を更に備え、
前記制御部は、前記押圧機構により前記第1基板を押圧して前記第1基板の中央部が前記第1基板の周部に比べて前記第2基板側へ突出するように撓ませた状態で前記第1基板の接合面の中央部を前記第2基板の接合面の中央部に接触させて前記第1基板と前記第2基板との接合を進めるように前記押圧機構を制御する、
請求項30または31に記載の基板接合システム。
【請求項33】
前記制御部は、前記第1基板が前記第2基板に接触する圧力が前記第1基板と前記第2基板とが仮接合される臨界圧力未満となるように前記複数の押圧部材が前記第1基板を押圧するように前記押圧部材駆動部を制御する、
請求項30から32のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項34】
前記押圧部材駆動部は、前記複数の押圧部材を各別に前記第2基板保持部に近づく方向または前記第2基板保持部から遠ざかる方向へ移動させるピエゾアクチュエータを有する、
請求項30から33のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項35】
前記制御部は、前記ピエゾアクチュエータの前記第1基板保持部と前記第2基板保持部との対向方向における長さの変化量を制御することにより、前記複数の押圧部材それぞれの移動量を制御する、
請求項34に移載の基板接合システム。
【請求項36】
前記押圧部材駆動部は、空気圧により前記複数の押圧部材を各別に前記第2基板保持部に近づく方向または前記第2基板保持部から遠ざかる方向へ移動させる、
請求項30から33のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項37】
前記制御部は、前記空気圧を制御することにより、前記複数の押圧部材それぞれの移動量を制御する、
請求項36に記載の基板接合システム。
【請求項38】
前記制御部は、前記複数の押圧部材が前記第1基板保持部の中央部に近いほうから順に前記第1基板に接触していくときの速度が、前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とを接触させた状態から前記第1基板の周部および前記第2基板の周部に向かって前記第1基板と前記第2基板との仮接合が進む速度に比べて早くなるように前記押圧部材駆動部を制御する、
請求項30から36のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項39】
前記第1基板は、前記複数の第1アライメントマークとは異なる少なくとも1つの第3アライメントマークが設けられ、
前記第2基板は、前記少なくとも1つの第3アライメントマークと同数の前記複数の第2アライメントマークとは異なる第4アライメントマークが設けられ、
互いに接合された前記第1基板および前記第2基板それぞれの前記複数の第1アライメントマークと前記複数の第2アライメントマークと前記少なくとも1つの第3アライメントマークと前記少なくとも1つの第4アライメントマークとの全てを撮像する第2撮像部を有する検査装置を更に備え、
前記制御部は、前記第2撮像部により前記複数の第1アライメントマークと前記複数の第2アライメントマークと前記少なくとも1つの第3アライメントマークと前記少なくとも1つの第4アライメントマークとを撮像して得られる撮像画像に基づいて、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向と前記少なくとも1つの第3アライメントマークおよび前記少なくとも1つの第4アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向とを算出し、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により決定される位置ずれベクトルの水平方向成分および回転方向成分を分離し、分離した前記水平方向成分および前記回転方向成分に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを接合する際の前記第1基板に対する前記第2基板の水平方向のオフセット量である水平オフセット量を算出する、
請求項1から38のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項40】
前記第1基板は、前記複数の第1アライメントマークとは異なる少なくとも1つの第3アライメントマークが設けられ、
前記第2基板は、前記少なくとも1つの第3アライメントマークと同数の前記複数の第2アライメントマークとは異なる第4アライメントマークが設けられ、
互いに接合された前記第1基板および前記第2基板それぞれの前記複数の第1アライメントマークと前記複数の第2アライメントマークと前記少なくとも1つの第3アライメントマークと前記少なくとも1つの第4アライメントマークとの全てを撮像する第2撮像部を有する検査装置を更に備え、
前記制御部は、前記第2撮像部により前記複数の第1アライメントマークと前記複数の第2アライメントマークと前記少なくとも1つの第3アライメントマークと前記少なくとも1つの第4アライメントマークとを撮像して得られる撮像画像に基づいて、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向と前記少なくとも1つの第3アライメントマークおよび前記少なくとも1つの第4アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向とを算出し、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により決定される位置ずれベクトルの反り成分を分離し、分離した前記反り成分に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを接合する際の前記第1基板の中央部の前記第1基板の周部に対する前記第2基板側への突出量のオフセット量である突出オフセット量を算出する、
請求項1から39のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項41】
前記制御部は、互いに接合された前記第1基板および前記第2基板の反り量が0となるように前記突出オフセット量を算出する、
請求項40に記載の基板接合システム。
【請求項42】
前記制御部は、予め設定された数の互いに接合された前記第1基板および前記第2基板について算出された前記位置ずれ量および前記位置ずれ方向の統計値に基づいて、前記水平オフセット量を算出する、
請求項39に記載の基板接合システム。
【請求項43】
前記制御部は、予め設定された数の互いに接合された前記第1基板および前記第2基板について算出された前記位置ずれ量および前記位置ずれ方向の統計値に基づいて、前記突出オフセット量を算出する、
請求項40または41に記載の基板接合システム。
【請求項44】
前記制御部は、前記第1撮像部により撮像される複数の第1アライメントマークと第2アライメントマークの組毎に、各別に前記水平オフセット量を算出する、
請求項39に記載の基板接合システム。
【請求項45】
前記制御部は、前記第1撮像部により撮像される複数の第1アライメントマークと第2アライメントマークの組それぞれの位置ずれ量が最小となるように、前記水平オフセット量を算出する、
請求項44に記載の基板接合システム。
【請求項46】
前記第1基板と前記第2基板との少なくとも一方は、チップの基となる複数のチップ形成領域を有し、
前記制御部は、前記複数のチップ形成領域のうち前記第1基板に対する前記第2基板の位置ずれに起因して不良となるチップ形成領域の割合が最小となるように、前記水平オフセット量を算出する、
請求項44に記載の基板接合システム。
【請求項47】
前記制御部は、前記複数の第1アライメントマークと、前記複数の第1アライメントマークそれぞれに対応する第2アライメントマークと、の位置ずれ量が前記水平オフセット量だけオフセットした状態となるように前記第1基板保持部と前記第2基板保持部との少なくとも一方を移動させるよう前記保持部駆動部を制御する、
請求項39、42、44から46のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項48】
前記第1基板保持部における前記第1基板が支持される側とは反対側に配置された第1撮像部を更に備え、
前記制御部は、前記第1撮像部により前記第1基板と前記第2基板とが離間し且つ前記第1基板と前記第2基板とのアライメント終了後に前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークを撮像して得られる撮像画像に基づいて、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークそれぞれの位置ずれ量の誤差である位置ずれ量誤差を算出し、算出した位置ずれ量誤差を用いて第1アライメントマークと第2アライメントマークとの組毎の前記水平オフセット量を更新する、
請求項39、42、44から47のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項49】
前記第1基板保持部における前記第1基板が支持される側とは反対側に配置された第1撮像部を更に備え、
前記制御部は、前記第1撮像部により前記第1基板と前記第2基板とが離間した状態で前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークを撮像して得られる撮像画像と、前記第1撮像部により互いに接合された前記第1基板と前記第2基板との前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークを撮像して得られる撮像画像と、に基づいて、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向を算出し、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを接合する際の前記第1基板に対する前記第2基板の水平方向のオフセット量である水平オフセット量を算出する、
請求項39、42、44から48のいずれか1項に記載の基板接合システム。
【請求項50】
第1基板と第2基板とを接合する基板接合方法であって、
第1基板保持部における予め設定された基板保持位置に配置された前記第1基板の周部に対向する第1領域に設けられた第1静電チャックに、前記第1基板の周部を保持させるステップと、
前記第2基板の接合面を前記第1基板の接合面に対向させた状態で前記第2基板を第2基板保持部に保持させるステップと、
前記第1基板の周部が前記第1静電チャックに保持された状態で、前記第1領域の内側の第2領域に設けられ気体吐出部に連通する第1凹部を有する前記第1基板保持部における前記気体吐出部に前記第1凹部へ気体を吐出させるステップと、
前記第1凹部へ気体を吐出した後、前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とを接触させるステップと、を含む、
基板接合方法。
【請求項51】
第1基板と第2基板とを接合する基板接合方法であって、
前記第1基板を前記第1基板保持部における予め設定された基板保持位置に配置された前記第1基板の周部に対向する第1領域に設けられた基板保持部に保持させるステップと、
前記第2基板の接合面を前記第1基板の接合面に対向させた状態で前記第2基板を第2基板保持部に保持させるステップと、
前記第1基板の周部が前記基板保持部に保持された状態で、前記第1基板保持部における前記第1領域の内側の第2領域において中心が前記第1基板保持部の中央部に一致する複数の仮想円それぞれに沿って配置されるとともに、前記基板保持位置に配置された前記第1基板における前記第2領域に対向する部分を押圧する複数の押圧部材のうち前記第1基板保持部の中央部側に位置する押圧部材により優先的に前記第1基板を押圧するステップと、
前記複数の押圧部材により前記第1基板を押圧した後、前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とを接触させるステップと、を含む、
基板接合方法。
【請求項52】
前記第1基板保持部は、透光性を有するガラスから形成され、
前記第1基板は、3つ以上の第1アライメントマークが設けられ、
前記第2基板は、前記3つ以上の第1アライメントマークと同数の3つ以上の第2アライメントマークが設けられ、
前記第1基板保持部における前記第1基板が支持される側とは反対側に配置された第1撮像部により、前記第1基板保持部を透過して前記3つ以上の第1アライメントマークおよび前記3つ以上の第2アライメントマークを撮像するステップと、
前記3つ以上の第1アライメントマークと、前記3つ以上の第1アライメントマークそれぞれに対応する第2アライメントマークと、の位置ずれ量が小さくなるように前記第1基板保持部と前記第2基板保持部との少なくとも一方を移動させるステップと、を更に含む、
請求項50または51に記載の基板接合方法。
【請求項53】
前記第1撮像部とは異なる第2撮像部により、互いに接合された前記第1基板および前記第2基板それぞれの前記3つ以上の第1アライメントマークと前記3つ以上の第2アライメントマークと前記3つ以上の第1アライメントマークとは異なる少なくとも1つの第3アライメントマークと前記少なくとも1つの第3アライメントマークと同数の前記3つ以上の第2アライメントマークとは異なる少なくとも1つの第4アライメントマークとを全て撮像するステップと、
前記第2撮像部により前記3つ以上の第1アライメントマークと前記3つ以上の第2アライメントマークと前記少なくとも1つの第3アライメントマークと前記少なくとも1つの第4アライメントマークとを撮像して得られる撮像画像に基づいて、前記3つ以上の第1アライメントマークおよび前記3つ以上の第2アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向と前記少なくとも1つの第3アライメントマークおよび前記少なくとも1つの第4アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向を算出し、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により決定される位置ずれベクトルの水平方向成分および回転方向成分を分離し、分離した前記水平方向成分および前記回転方向成分に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを接合する際の前記第1基板に対する前記第2基板の水平方向のオフセット量である水平オフセット量を算出するステップと、を更に含む、
請求項52に記載の基板接合方法。
【請求項54】
前記第1撮像部とは異なる第2撮像部により、互いに接合された前記第1基板および前記第2基板それぞれの前記3つ以上の第1アライメントマークと前記3つ以上の第2アライメントマークと前記3つ以上の第1アライメントマークとは異なる少なくとも1つの第3アライメントマークと前記少なくとも1つの第3アライメントマークと同数の前記3つ以上の第2アライメントマークとは異なる第4アライメントマークとを全て撮像するステップと、
前記第2撮像部により前記3つ以上の第1アライメントマークと前記3つ以上の第2アライメントマークと前記少なくとも1つの第3アライメントマークと前記少なくとも1つの第4アライメントマークとを撮像して得られる撮像画像に基づいて、前記3つ以上の第1アライメントマークおよび前記3つ以上の第2アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向と前記少なくとも1つの第3アライメントマークおよび前記少なくとも1つの第4アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向を算出し、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により決定される位置ずれベクトルの反り成分を分離し、分離した前記反り成分に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを接合する際の前記第1基板の中央部の前記第1基板の周部に対する前記第2基板側への突出量のオフセット量である突出オフセット量を算出するステップと、を含む、
請求項52または53に記載の基板接合方法。
【請求項55】
前記突出オフセット量を算出するステップにおいて、互いに接合された前記第1基板および前記第2基板の反り量が0となるように前記突出オフセット量を算出する、
請求項54に記載の基板接合方法。
【請求項56】
前記水平オフセット量を算出するステップにおいて、予め設定された数の互いに接合された前記第1基板および前記第2基板について算出された前記位置ずれ量および前記位置ずれ方向の統計値に基づいて、前記水平オフセット量を算出する、
請求項53に記載の基板接合方法。
【請求項57】
前記突出オフセット量を算出するステップにおいて、予め設定された数の互いに接合された前記第1基板および前記第2基板について算出された前記位置ずれ量および前記位置ずれ方向の統計値に基づいて、前記突出オフセット量を算出する、
請求項54または55に記載の基板接合方法。
【請求項58】
前記水平オフセット量を算出するステップにおいて、前記第1撮像部により撮像される複数の第1アライメントマークと第2アライメントマークの組毎に、各別に前記水平オフセット量を算出する、
請求項53または56に記載の基板接合方法。
【請求項59】
前記水平オフセット量を算出するステップにおいて、前記第1撮像部により撮像される複数の第1アライメントマークと第2アライメントマークの組それぞれの位置ずれ量が最小となるように、前記水平オフセット量を算出する、
請求項58に記載の基板接合方法。
【請求項60】
前記第1基板と前記第2基板との少なくとも一方は、チップの基となる複数のチップ形成領域を有し、
前記水平オフセット量を算出するステップにおいて、前記複数のチップ形成領域のうち前記第1基板に対する前記第2基板の位置ずれに起因して不良となるチップ形成領域の割合が最小となるように、前記水平オフセット量を算出する、
請求項58に記載の基板接合方法。
【請求項61】
前記複数の第1アライメントマークと、前記複数の第1アライメントマークそれぞれに対応する第2アライメントマークと、の位置ずれ量が前記水平オフセット量だけオフセットした状態となるように前記第1基板保持部と前記第2基板保持部との少なくとも一方を移動させるステップを更に含む、
請求項53、56、58から60のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項62】
前記水平オフセット量を算出するステップにおいて、前記第1基板保持部における前記第1基板が支持される側とは反対側に配置された第1撮像部により前記第1基板と前記第2基板とが離間し且つ前記第1基板と前記第2基板とのアライメント終了後に前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークを撮像して得られる撮像画像に基づいて、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークそれぞれの位置ずれ量の誤差である位置ずれ量誤差を算出し、算出した位置ずれ量誤差を用いて第1アライメントマークと第2アライメントマークとの組毎の前記水平オフセット量を更新する、
請求項53、56、58から61のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【請求項63】
前記水平オフセット量を算出するステップにおいて、前記第1基板保持部における前記第1基板が支持される側とは反対側に配置された第1撮像部により前記第1基板と前記第2基板とが離間した状態で前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークを撮像して得られる撮像画像と、前記第1撮像部により互いに接合された前記第1基板と前記第2基板との前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークを撮像して得られる撮像画像と、に基づいて、前記複数の第1アライメントマークおよび前記複数の第2アライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向を算出し、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向に基づいて、前記第1基板と前記第2基板とを接合する際の前記第1基板に対する前記第2基板の水平方向のオフセット量である水平オフセット量を算出する、
請求項53、56、58から62のいずれか1項に記載の基板接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板接合システムおよび基板接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの基板同士をボンディングするための装置であって、ボンディング時において基板が取り付けられる取付装置を備えた装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載された取付装置は、基板の周部を真空チャックにより保持する外側の環状部分と、基板の中央部を取付装置から突出させるように基板を変形させる変形手段と、を有する。そして、この装置は、2つの基板の接合面の中央部同士を接触させた状態にしてから、一方の基板の周部の真空チャックによる吸着保持を解除する。これにより、一方の基板の周部に作用する復元力および重力により一方の基板の中心を起点として半径方向外側に向かって接触部分が広がっていき一方の基板の周面に至る。このようにして、2つの基板同士をボンディングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/023708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている装置の場合、一方の基板の周部の吸着保持を解除する際、一方の基板の周部を吸着保持する真空チャックを停止させたとしても基板の周部に生じる静電力により取付装置の基板の取付面に貼り付いてしまう場合がある。この場合、一方の基板に作用する力の大きさが不均一となり、基板同士の接触部分が広がる速度にばらつきが生じてしまい、その結果、互いに接合された2つの基板全体における接合位置精度が低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、互いに接合された基板全体における接合位置精度を高めることができる基板接合システムおよび基板接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板接合システムは、
第1基板と第2基板とを接合する基板接合システムであって、
前記第1基板を保持する第1基板保持部と、
前記第2基板の接合面を前記第1基板の接合面に対向させた状態で前記第2基板を保持する第2基板保持部と、
前記第1基板保持部における予め設定された基板保持位置に配置された前記第1基板の周部に対向する第1領域に設けられた少なくとも1つの 第1静電チャックと、
前記第1基板保持部における前記第1領域の内側の第2領域に設けられ前記基板保持位置に配置された前記第1基板における前記第2領域に対向する部分を保持する少なくとも1つの第2静電チャックと、
前記第1静電チャックと前記第2静電チャックとを各別に駆動するチャック駆動部と、
前記第1基板保持部における前記第2領域に設けられ前記第1基板側に向かって気体を吐出する気体吐出部と、
前記気体吐出部に気体を供給する気体供給部と、
前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とを接触させる前に、前記第1基板の周部が前記第1静電チャックに保持された状態で、前記第2静電チャックによる前記第1基板の保持を解除するとともに、前記気体吐出部から気体を吐出させるように前記チャック駆動部および前記気体供給部を制御する制御部と、を備え、
前記第1基板保持部は、前記第2領域に設けられ、前記気体吐出部に連通する第1凹部を有する。
【0007】
他の観点から見た本発明に係る基板接合方法は、
第1基板と第2基板とを接合する基板接合方法であって、
第1基板保持部における予め設定された基板保持位置に配置された前記第1基板の周部に対向する第1領域に設けられた第1静電チャックに、前記第1基板の周部を保持させるステップと、
前記第2基板の接合面を前記第1基板の接合面に対向させた状態で前記第2基板を第2基板保持部に保持させるステップと、
前記第1基板の周部が前記第1静電チャックに保持された状態で、前記第1領域の内側の第2領域に設けられ気体吐出部に連通する第1凹部を有する前記第1基板保持部における前記気体吐出部に前記第1凹部へ気体を吐出させるステップと、
前記第1凹部へ気体を吐出した後、前記第1基板の接合面の中央部と前記第2基板の接合面の中央部とを接触させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1基板保持部が、第2領域に設けられ気体吐出部に連通する第1凹部を有し、第1基板の接合面の中央部と第2基板の接合面の中央部とが接触し且つ第1基板の周部が前記第1静電チャックに保持された状態で、気体吐出部から第1凹部を通じて第1基板保持部と第1基板との間に気体を吐出しつつ、第1基板と第2基板とを接触させる。これにより、第2静電チャックによる保持を解除した後において第2静電チャックに残る残留静電力による第1基板を第1基板保持部に密着させる力に対して、第1凹部から吐出される気体の圧力を有効に作用させることで、第1基板が、第1基板保持部に密着させる力に対してフリーな状態となる。そして、この状態で、第1基板と第2基板との中央部同士を臨界圧力以上の圧力で加圧して接触させることで、第1基板の第1基板保持部への密着力の影響の無い状態で第1基板、第2基板の中央部から周部に向かって接合を進めさせることができるので、第1基板、第2基板を歪み無く全面で高い位置精度で接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る基板接合システムの概略構成図である。
図2】実施の形態1に係る活性化処理装置の概略正面図である。
図3】実施の形態1に係る基板接合装置の概略正面図である。
図4】(A)は実施の形態1に係るステージおよびヘッド付近を示す概略斜視図であり、(B)は実施の形態1に係るヘッドを微調整する方法を説明する図である。
図5】(A)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドの概略平面図であり、(B)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドの一部の拡大図である。
図6】(A)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドの第1領域の一部の平面図であり、(B)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドの第2領域の一部の平面図である。
図7】(A)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドの図5(A)のB-B線における概略断面矢視図であり、(B)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドの図5(A)のA-A線における概略断面矢視図である。
図8】実施の形態1に係る位置測定部の概略平面図である。
図9】(A)は接合する2つの基板の一方に設けられた3つのアライメントマークを示す図であり、(B)は接合する2つの基板の他方に設けられた3つのアライメントマークを示す図である。
図10】(A)はアライメントマークの撮影画像を示す概略図であり、(B)はアライメントマークが互いにずれている状態を示す概略図である。
図11】実施の形態1に係る検査装置の概略図である。
図12】実施の形態1に係る基板接合システムが実行する基板接合方法の流れを示すフローチャートである。
図13】実施の形態1に係る静電チャックとアライメントとを示す概略平面図であり、(A)は静電チャックとアライメントマークとが重なった状態を示す図であり、(B)は静電チャックとアライメントマークとが重なっていない状態を示す図である。
図14】実施の形態1に係る基板接合装置が実行する基板接合工程の流れを示すフローチャートである。
図15】(A)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドに保持された基板の中央部をステージおよびヘッドからフリーな状態にする様子を示す概略断面図であり、(B)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドに保持された基板の接合面の中央部同士を接触させた状態を示す概略断面図である。
図16】(A)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドに保持された基板同士を近づける様子を示す概略断面図であり、(B)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドに保持された基板同士を近づける様子を示す概略断面図である。
図17】(A)は実施の形態に係るステージおよびヘッドに保持された基板の接合面の周部同士を接触させた状態を示す概略断面図であり、(B)は実施の形態1に係るヘッドをステージから離脱させる様子を示す概略断面図である。
図18】実施の形態1に係る検査装置での撮像画像から得られる位置ずれベクトルの分布を示す図であって、基板同士の接合時に水平オフセット量および突出オフセット量の補正を行わない場合を示し、(A)は各アライメントマークの位置ずれ量および位置ずれ方向を示す位置ずれベクトルを示す図であり、(B)は位置ずれベクトルのXY方向成分を示す図であり、(C)は位置ずれベクトルの回転方向成分を示す図であり、(D)は位置ずれベクトルの反り成分を示す図であり、(E)は位置ずれベクトルの歪み成分を示す図である。
図19】比較例に係る静電チャックとアライメントとを示す概略平面図であり、(A)は静電チャックとアライメントマークとが重なった状態を示す図であり、(B)は基板の姿勢を変更した後の状態を示す図である。
図20】(A)は実施の形態2に係るステージおよびヘッドの概略平面図であり、(B)は実施の形態1に係るステージおよびヘッドの(A)のC-C線における断面矢視図である。
図21】(A)は実施の形態2に係るステージおよびヘッドに保持された基板の接合面の中央部同士を接触させた状態を示す概略断面図であり、(B)は実施の形態2に係るステージおよびヘッドに保持された基板それぞれに押圧部材を当接させた様子を示す概略断面図であり、
図22】(A)は実施の形態2に係るステージおよびヘッドに保持された基板同士を近づける様子を示す概略断面図であり、(B)は実施の形態に係るステージおよびヘッドに保持された基板の接合面の周部同士を接触させた状態を示す概略断面図である。
図23】(A)は変形例に係るに係るステージおよびヘッドの概略平面図であり、(B)は変形例に係るステージおよびヘッドの一部の拡大図である。
図24】(A)は変形例に係るに係るステージおよびヘッドの概略平面図であり、(B)は変形例に係るステージおよびヘッドの一部の拡大図である。
図25】(A)は変形例に係るに係るステージおよびヘッドの概略平面図であり、(B)は変形例に係るステージおよびヘッドの(A)のD-D線における概略断面矢視図である。
図26】(A)は変形例に係るステージおよびヘッドの第2領域の一部の平面図であり、(B)は変形例に係るステージおよびヘッドの図25(A)のE-E線における概略断面矢視図である。
図27】変形例に係るに係るステージおよびヘッドの概略平面図である。
図28】変形例に係るステージおよびヘッドの断面図である。
図29】変形例に係る撮像部の概略平面図である。
図30】変形例に係る活性化処理装置の概略正面図である。
図31】変形例に係る基板接合装置が実行する基板接合工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態に係る基板接合装置について、図を参照しながら説明する。本実施の形態に係る基板接合装置は、2つの基板同士を予め設定された基準真空度以上の真空度の真空チャンバ内で、互いに接合される接合面に対して活性化処理が施された2つの基板同士を接触させることにより、2つの基板を接合する。
【0011】
本実施の形態に係る基板接合システムは、図1に示すように、導入ポート811、812と、取り出しポート813と、搬送装置82、84、86と、洗浄装置3と、活性化処理装置2と、基板接合装置1と、ロードロック部83、85と、検査装置7と、搬送装置82、84、86、洗浄装置3、活性化処理装置2、基板接合装置1、ロードロック部83、85および検査装置7の動作を制御する制御部9と、を備える。搬送装置82は、先端部に基板を保持する保持部が設けられたアームを有する搬送ロボット821を備える。搬送ロボット821は、導入ポート811、812および取り出しポート813の並び方向に沿って移動可能であるとともに、旋回することによりアームの先端部の向きを変更することができる。搬送装置82には、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ(図示せず)が設けられている。これにより、搬送装置82内はパーティクルが極めて少ない大気圧環境になっている。
【0012】
洗浄装置3は、搬送されてきた基板に向けて水、洗浄液またはNガスを吐出しながら洗浄する。洗浄装置3は、基板を支持するステージ(図示せず)と、ステージを鉛直方向に直交する面内で回転させる回転駆動部(図示せず)と、超音波またはメガソニック振動を与えた水、洗浄液またはNガスを吐出する洗浄ノズル(図示せず)と、を有する。そして、洗浄装置3は、洗浄ノズルを基板W1、W2の径方向へ揺動させながら洗浄ノズルから超音波を印加した水を基板の接合面に吹き付けながら、ステージを回転させることにより基板W1、W2の接合面全面を洗浄する。そして、洗浄装置3は、洗浄ノズルによる水の吐出を停止させた状態でステージを回転させることにより基板W1、W2をスピン乾燥する。洗浄装置3にも、搬送装置82と同様に、HEPAフィルタ(図示せず)が設けられている。
【0013】
ロードロック部83は、チャンバ831と、チャンバ831内に連通する排気管(図示せず)と、排気管を通じてチャンバ831内の気体を排出する真空ポンプ(図示せず)と、排気管に介挿された排気弁(図示せず)と、を備える。ロードロック部83は、排気弁を開状態にして真空ポンプを作動させてチャンバ831内の気体を、排気管を通してチャンバ831外へ排出することにより、チャンバ831内の気圧を低減(減圧)する。また、ロードロック部83は、チャンバ831における搬送装置82側に配設されたゲート8331と、チャンバ831における搬送装置84側に配設されたゲート8321と、ゲート8331、8321それぞれを開閉駆動するゲート駆動部8332、8322と、を備える。また、ロードロック部83は、チャンバ831内において基板W1、W2の姿勢を調整するアライメント機構(図示せず)を備える。ゲート8331、8321は、それぞれ、チャンバ831における搬送装置82側に貫設された開口(図示せず)と搬送装置84側に貫設された開口(図示せず)とを覆うように設けられている。また、ロードロック部83は、チャンバ831と、チャンバ831内に連通する排気管(図示せず)と、排気管を通じてチャンバ831内の気体を排出する真空ポンプ(図示せず)と、排気管に介挿された排気弁(図示せず)と、を備える。ロードロック部83は、排気弁を開状態にして真空ポンプを作動させてチャンバ831内の気体を、排気管を通してチャンバ831外へ排出することにより、チャンバ831内の気圧を低減(減圧)する。また、チャンバ831は、ゲート8331を介して搬送装置82に接続され、ゲート8321を介して搬送装置84に接続されている。また、ロードロック部85も、ロードロック部83と同様に、チャンバ851と排気管(図示せず)と真空ポンプ(図示せず)と排気弁(図示せず)とを備える。チャンバ851は、ゲート8531を介して搬送装置82に接続され、ゲート8521を介して搬送装置86に接続されている。
【0014】
搬送装置84は、チャンバ843と、チャンバ843内に連通する排気管(図示せず)と、排気管を通じてチャンバ843内の気体を排出する真空ポンプ(図示せず)と、排気管に介挿された排気弁(図示せず)と、基板W1、W2を搬送する搬送ロボット841と、を備える。搬送装置84は、排気弁を開状態にして真空ポンプを作動させてチャンバ843内の気体を、排気管を通してチャンバ843外へ排出することにより、チャンバ843内を減圧状態で維持する。チャンバ843は、ゲート1211を介して基板接合装置1に接続され、ゲート8321を介してロードロック部83に接続されている。ゲート1211は、搬送ロボット841が基板W1、W2を基板接合装置1内へ搬送する際、開状態となる。搬送ロボット841は、先端部に基板を保持する保持部が設けられたアームを有し、旋回することによりアームの先端部の向きを変更することができる。また、保持部は、例えば静電チャックであり、基板W1、W2における接合面側とは反対側を吸着保持する。また、搬送装置84は、基板W1、W2の周部の複数箇所を撮像する搬送装置撮像部844を有する。
【0015】
搬送装置86は、搬送装置84と同様に、チャンバ863と排気管(図示せず)と真空ポンプ(図示せず)と排気弁(図示せず)と搬送ロボット861と、を備える。チャンバ863は、ゲート8621を介して活性化処理装置2に接続され、ゲート8521を介してロードロック部85に接続されている。搬送ロボット861は、搬送ロボット841と同様に、先端部に基板を保持する保持部が設けられたアームを有し、旋回することによりアームの先端部の向きを変更することができる。また、保持部は、例えば静電チャックであり、基板W1、W2における接合面側とは反対側を吸着保持する。
【0016】
活性化処理装置2は、基板の接合面に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより接合面を活性化する活性化処理を行う。活性化処理装置2は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を発生させる装置であり、図2に示すように、ステージ210と、処理チャンバ212と、プラズマチャンバ213と、プラズマチャンバ213の外側に巻回された誘導コイル215と、誘導コイル215へ高周波電流を供給する高周波電源216と、を有する。プラズマチャンバ213は、例えば石英ガラスから形成されている。また、活性化処理装置2は、窒素ガス供給部220Aと、酸素ガス供給部220Bと、を有する。窒素ガス供給部220Aは、窒素ガス貯留部221Aと、供給弁222Aと、供給管223Aと、を有する。酸素ガス供給部220Bは、酸素ガス貯留部221Bと、供給弁222Bと、供給管223Bと、を有する。ステージ210には、基板W1、W2が載置される。処理チャンバ212は、プラズマチャンバ213内に連通している。処理チャンバ212は、排気管201bと排気弁201cとを介して真空ポンプ201aに接続されている。活性化処理装置2は、排気弁201cを開状態にして真空ポンプ201aを作動させて処理チャンバ212内の気体を、排気管201bを通して処理チャンバ212外へ排出することにより、処理チャンバ212内の気圧を低減(減圧)する。
【0017】
高周波電源216としては、誘導コイル215へ例えば27MHzの高周波電流を供給するものを採用することができる。そして、プラズマチャンバ213内にNガスが導入された状態で、高周波電流が誘導コイル215へ供給されると、プラズマチャンバ213内にプラズマPLMが形成される。ここで、誘導コイル215によりプラズマチャンバ213内にプラズマ中に含まれるイオンがトラップされるため、プラズマチャンバ213と処理チャンバ212との間の部分にトラップ板が無い構成であってもよい。誘導コイル215と、高周波電源216と、窒素ガス供給部220Aとから、プラズマチャンバ213内にプラズマPLMを発生させステージ210に支持された基板W1、W2の接合面へプラズマ中のNラジカルを供給するプラズマ発生源が構成される。なお、ここでは、活性化処理装置2として、誘導コイル215と、高周波電源216と、を備えるICPを発生させる装置である例について説明したが、これに限定されるものではなく、代わりにプラズマチャンバ213の外側に配置された平板電極と平板電極に電気的に接続された高周波電源と、プラズマチャンバ213と処理チャンバ212との間の部分に配置されプラズマ中のイオンをトラップするトラップ板と、を備える容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を発生させる装置であってもよい。この場合、高周波電源としては、例えば27MHzの高周波バイアスを印加するものを採用することができる。そして、高周波電源からプラズマチャンバ内へ供給される電力は、例えば250Wに設定される。バイアス印加部217は、ステージ210に支持された基板W1、W2に高周波バイアスを印加する高周波電源である。このバイアス印加部217としては、例えば13.56MHzの高周波バイアスを発生させるものを採用することができる。このように、バイアス印加部217により基板W1、W2に高周波バイアスを印加することにより、基板W1、W2の接合面の近傍に運動エネルギを有するイオンが繰り返し基板W1、W2に衝突するシース領域が発生する。そして、このシース領域に存在する運動エネルギを有するイオンにより基板W1、W2の接合面がエッチングされる。
【0018】
基板接合装置1は、図3に示すように、チャンバ120と第1基板保持部であるステージ141と第2基板保持部であるヘッド142とステージ駆動部143とヘッド駆動部144と基板加熱部1481、1482と位置測定部500とを備える。また、基板接合装置1は、ステージ141とヘッド142との間の距離を測定する距離測定部1493を備える。なお、以下の説明において、適宜図1の±Z方向を上下方向、XY方向を水平方向として説明する。チャンバ120は、基板W1、W2が配置される領域S1を予め設定された基準真空度以上の真空度で維持する。チャンバ120は、排気管121bと排気弁121cとを介して真空ポンプ121aに接続されている。排気弁121cを開状態にして真空ポンプ121aを作動させると、チャンバ120内の気体が、排気管121bを通してチャンバ120外へ排出され、チャンバ120内が減圧雰囲気で維持される。また、排気弁121cの開閉量を変動させて排気量を調節することにより、チャンバ120内の気圧(真空度)を調節することができる。また、チャンバ120の一部には、位置測定部500により基板W1、W2間における相対位置を測定するために使用される窓部120aが設けられている。
【0019】
ステージ駆動部143は、ステージ141をXY方向へ移動させたり、Z軸周りに回転させたりすることができる保持部駆動部である。
【0020】
ヘッド駆動部144は、ヘッド142を鉛直上方または鉛直下向(図1の矢印AR1参照)へ昇降させる昇降駆動部146と、ヘッド142をXY方向へ移動させるXY方向駆動部145と、ヘッド142をZ軸周りの回転方向(図1の矢印AR2参照)に回転させる回転駆動部147と、を有する。XY方向駆動部145と回転駆動部147とから、ヘッド142を鉛直方向に直交する方向(XY方向、Z軸周りの回転方向)へ移動させる保持部駆動部を構成する。また、ヘッド駆動部144は、ヘッド142のステージ141に対する傾きを調整するためのピエゾアクチュエータ1456と、ヘッド142に加わる圧力を測定するための第1圧力センサ1457と、を有する。XY方向駆動部145および回転駆動部147が、X方向、Y方向、Z軸周りの回転方向において、ヘッド142をステージ141に対して相対的に移動させることにより、ステージ141に保持された基板W1とヘッド142に保持された基板W2とのアライメントが可能となる。
【0021】
昇降駆動部146は、ヘッド142を鉛直方向へ移動させることにより、ステージ141とヘッド142とを互いに近づけたり、ヘッド142をステージ141から遠ざけたりする。昇降駆動部146がヘッド142を鉛直下方へ移動させることにより、ステージ141に保持された基板W1とヘッド142に保持された基板W2とが接触する。そして、基板W1、W2同士が接触した状態において昇降駆動部146がヘッド142に対してステージ141に近づく方向への駆動力を作用させると、基板W2が基板W1に押し付けられる。また、昇降駆動部146には、昇降駆動部146がヘッド142に対してステージ141に近づく方向へ作用させる駆動力を測定する圧力センサ148が設けられている。圧力センサ148の測定値から、昇降駆動部146により基板W2が基板W1に押し付けられたときに基板W1、W2の接合面に作用する圧力が検出できる。圧力センサ148は、例えばロードセルから構成される。
【0022】
ピエゾアクチュエータ1456、第1圧力センサ1457は、それぞれ図4(A)に示すように、3つずつ存在する。3つのピエゾアクチュエータ1456と3つの第1圧力センサ1457とは、ヘッド142とXY方向駆動部145との間に配置されている。3つのピエゾアクチュエータ1456は、ヘッド142の上面における同一直線上ではない3つの位置、平面視略円形のヘッド142の上面の周部においてヘッド142の周方向に沿って略等間隔に並んだ3つの位置に固定されている。3つの第1圧力センサ1457は、それぞれピエゾアクチュエータ1456の上端部とXY方向駆動部145の下面とを接続している。3つのピエゾアクチュエータ1456は、各別に上下方向に伸縮可能である。そして、3つのピエゾアクチュエータ1456が伸縮することにより、ヘッド142のX軸周りおよびY軸周りの傾きとヘッド142の上下方向の位置とが微調整される。例えば図2(B)の破線で示すように、ヘッド142がステージ141に対して傾いている場合、3つのピエゾアクチュエータ1456のうちの1つを伸長させて(図2(B)の矢印AR3参照)ヘッド142の姿勢を微調整することにより、ヘッド142の下面とステージ141の上面とが略平行な状態にすることができる。また、3つの圧力センサ1457は、ヘッド142の下面における3つの位置での加圧力を測定する。そして、3つの圧力センサ1457で測定された加圧力が等しくなるように3つのピエゾアクチュエータ1456それぞれを駆動することにより、ヘッド142の下面とステージ141の上面とを略平行に維持しつつ基板W1、W2同士を接触させることができる。
【0023】
ステージ141とヘッド142とは、チャンバ120内において、鉛直方向で互いに対向するように配置されている。ステージ141は、その上面で基板W1を保持する第1基板保持部であり、ヘッド142は、その下面で基板W2を保持する第2基板保持部である。ここで、ステージ141は、その上面が基板W1全体に面接触した状態で基板W1を支持し、ヘッド142は、その下面が基板W2全体に面接触した状態で基板W2を支持する。ステージ141とヘッド142とは、例えば透光性を有するガラスのような透光性材料から形成されている。ステージ141およびヘッド142には、図5(A)および(B)に示すように、基板W1、W2を保持する静電チャック1411、1412、1413、1421、1422、1423が設けられている。静電チャック1411、1421は、基板W1、W2の周部を保持する。また、ステージ141、ヘッド142の中央部には、平面視円形の貫通孔141b、142bが設けられている。更に、ステージ141、ヘッド142には、後述の気体吐出孔1411c、1421cから気体が吐出されたときのステージ141、ヘッド142と基板W1、W2との間の領域の気圧を検出する気圧検出部(図示せず)が設けられている。
【0024】
静電チャック1411、1412、1421、1422は、ステージ141、ヘッド142に基板W1、W2が保持された状態で、ステージ141、ヘッド142における基板W1、W2の周部に対向する円環状の第1領域A1に設けられている第1静電チャックである。静電チャック1411、1412は、それぞれ、ステージ141における第1領域A1においてステージ141の中央部を中心とした予め設定された2つのサブ環状領域A11、A12それぞれに設けられている。そして、静電チャック1411、1412は、それぞれ、ステージ141における予め設定された基板保持位置に配置された基板W1における2つのサブ環状領域A11、A12それぞれに対向する部分を保持する。また、静電チャック1421、1422も、それぞれ、ヘッド142における第1領域A1においてヘッド142の中央部を中心とした予め設定された2つのサブ環状領域A11、A12それぞれに設けられている。そして、静電チャック1421、1422は、それぞれ、ヘッド142における予め設定された基板保持位置に配置された基板W2における2つのサブ環状領域A11、A12それぞれに対向する部分を保持する。ここで、基板保持位置は、例えば基板W1、W2の外形寸法が第1領域A1と同一であれば第1領域A1と一致する位置に設定される。
【0025】
静電チャック1411、1421は、それぞれ、第1領域A1において、ステージ141、ヘッド142の中央部からステージ141、ヘッド142の周縁に向かう方向へ放射状に延在する複数の電極子1411b、1412bと、ステージ141、ヘッド142の周方向に沿って配設された2つの円環状の端子電極1411a、1421aと、を有する。複数の電極子1411b、1412bは、2つの端子電極1411a、1421aそれぞれの径方向に沿って2つの端子電極1411a、1421aそれぞれから他方の端子電極1421a、1411aに向かって延在している第1電極子である。ここで、端子電極1411a、1421aは、第3端子電極、第4端子電極に相当し、端子電極1411aは、端子電極1421aに比べて小径であり、ステージ141、ヘッド142の中央部側に配設されている。複数の長尺の電極子1411b、1421bは、ステージ141、ヘッド142における第1領域A1において第1領域A1の周方向に沿って交互に並ぶように配置されている。また、端子電極1411a、1421aは、それぞれ、図6(A)に示すように、平面視で他方の端子電極1411a,1421aから離れる方向へ突出するように屈曲した屈曲部1411ab、1421abと、ステージ141、ヘッド142の周方向に沿って延在しステージ141、ヘッド142の周方向で隣り合う2つの屈曲部1411ab、1421abの端部同士を連結する細長の連結部1411aa、1421aaと、を有する。ステージ141、ヘッド142の径方向における屈曲部1411ab、1421abと連結部1411aa,1421aaとの間の最大幅Wi4は、例えば後述のアライメントマークの幅よりも長くなるように設定されている。
【0026】
また、静電チャック1412、1422も、それぞれ、第1領域A1において、ステージ141、ヘッド142の中央部からステージ141、ヘッド142の周縁に向かう方向へ放射状に延在する複数の電極子1412b、1422bと、ステージ141、ヘッド142の周方向に沿って配設された2つの円環状の端子電極1412a、1422aと、を有する。複数の電極子1412b、1422bは、2つの端子電極1412a、1422aそれぞれの径方向に沿って2つの端子電極1412a、1422aそれぞれから他の端子電極1422a、1412aに向かって延在している第1電極子である。端子電極1412a、1422aは、第3端子電極、第4端子電極に相当し、端子電極1412aは、端子電極1422aに比べて小径であり、ステージ141、ヘッド142の中央部側に配設されている。また、第1領域A1において、静電チャック1412、1422は、静電チャック1411、1421の内側に配設されている。複数の長尺の電極子1412b、1422bは、ステージ141、ヘッド142における第1領域A1において第1領域A1の周方向に沿って交互に並ぶように配置されている。端子電極1411a、1421a、1422a、1412aと複数の電極子1411b、1421b、1412b、1422bとは、例えば金属から形成されている。このように、静電チャック1411、1412、1421、1422が、それぞれ、第1領域A1において、ステージ141、ヘッド142の中央部からステージ141、ヘッド142の周縁に向かう方向へ放射状に延在する複数の電極子1411b、1412b、1421b、1422bを有する。これにより、基板接合装置1は、後述する撮像部501A、501B、501Cにより、複数の電極子1411b、1412b、1421b、1422bの隙間から、後述する基板W1、W2に設けられたアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cを撮像することが可能となっている。
【0027】
また、ステージ141、ヘッド142における第1領域A1のサブ環状領域A11には、一部がステージ141、ヘッド142の中央部からステージ141、ヘッド142の周縁に向かう方向へ放射状に延在する部分を有する溝1411d、1421dが形成されている。また、この溝1411d、1421dの一部には、気体供給部1492に接続された気体吐出孔1411c、1421cが設けられている。この気体吐出孔1411c、1421cが気体を吐出する気体吐出部に相当し、溝1411d、1421dが、気体吐出孔1411c、1412cに連通する第2凹部に相当する。ここで、溝1411d、1421dの幅は、例えば0.2mm程度に設定される。溝1411d、1421dは、複数の電極子1411b、1412bそれぞれの延在方向に沿って延在する部分を有する。そして、溝1411d、1421dは、静電チャック1411、1412における、端子電極1411aに電気的に接続された複数の電極子1411bと端子電極1421aに接続された複数の電極子1412bとの間に設けられている。また、ステージ141、ヘッド142における第1領域A1のサブ環状領域A12にも、一部がステージ141、ヘッド142の中央部からステージ141、ヘッド142の周縁に向かう方向へ放射状に延在する部分を有する溝(図示せず)が形成されている。また、この溝1411d、1421dの一部には、気体供給部1492に接続された気体吐出孔(図示せず)が設けられている。このサブ環状領域A12に設けられた気体吐出孔も気体を吐出する気体吐出部に相当し、サブ環状領域A12に設けられた溝も、サブ環状領域A12に設けられた気体吐出孔に連通する第2凹部を構成する第2溝に相当する。この溝も、複数の電極子1411b、1412bそれぞれの延在方向に沿って延在する部分を有する。そして、溝1411d、1421dは、静電チャック1421、1422における、端子電極1411aに電気的に接続された複数の電極子1421bと端子電極1421aに接続された複数の電極子1412bとの間に設けられている。
【0028】
静電チャック1413、1423は、ステージ141、ヘッド142における第1領域A1の内側の第2領域A2に設けられた第2静電チャックである。静電チャック1413、1423は、図5(B)に示すように、第2領域A2において、ステージ141、ヘッド142の中央部からステージ141、ヘッド142の周縁に向かう方向へ放射状に延在する複数の電極子1413b、1423bと、ステージ141、ヘッド142の周方向に沿って配設された2つの円環状の端子電極1413a、1423aと、を有する。複数の電極子1413b、1423bは、ステージ141、ヘッド142の径方向に沿って2つの端子電極1413a、1423aそれぞれから他の端子電極1423a、1413aに向かって延在している第2電極子である。また、複数の電極子1413b、1423bは、それぞれ、図6(B)に示すように、平面視におけるその延在方向に直交する方向の幅がステージ141、ヘッド142の周縁側ほど広くなる平面視楔型の形状を有する。端子電極1413a、1423aは、それぞれ、複数の電極子1413bに電気的に接続された第1端子電極と、複数の電極子1423bに電気的に接続された第2端子電極と、に相当する。
【0029】
また、ステージ141、ヘッド142の第2領域A2には、一部がステージ141、ヘッド142の中央部からステージ141、ヘッド142の周縁に向かう方向へ放射状に延在する部分を有する溝1413d、1423dが形成されている。また、ステージ141、ヘッド142における溝1413d、1423dの一部には、気体供給部1492に接続された気体吐出孔1413c、1423cが設けられている。この気体吐出孔1413c、1423cが気体を吐出する気体吐出部に相当し、溝1413d、1423dが、気体吐出孔1413c、1423cに連通する第1凹部を構成する第1溝に相当する。ここで、溝1413d、1423dの幅Wi1は、例えば0.2mm程度に設定される。溝1413d、1423dは、複数の電極子1413b、1423bそれぞれの延在方向に沿って延在する部分を有する。そして、溝1413d、1423dは、静電チャック1413、1423における、端子電極1413aに電気的に接続された複数の電極子1413bと端子電極1423aに接続された複数の電極子1423bとの間に設けられている。また、図7(A)に示すように、静電チャック1413、1423のステージ141、ヘッド142の表面との間の幅Wi3は、溝1413d、1423dの深さWi2よりも短く設定されており、例えば基板W1、W2がサファイヤ基板、ガラス基板の場合、0.05mm以上0.1mm以下に設定される。また、基板W1、W2がSi基板の場合、5mm程度に設定することができる。端子電極1413a、1423aと複数の電極子1413b、1423bとは、例えばITOのような透明な導電性材料を含む透明導電膜から形成されている。
【0030】
静電チャック1411、1412、1413、1421、1422、1423は、チャック駆動部1491に接続されている。チャック駆動部1491は、制御部9から入力される制御信号に基づいて、各静電チャック1411、1412、1413、1421、1422、1423へ電圧を印加することにより静電チャック1411、1412、1413、1421、1422、1423を駆動する。また、チャック駆動部1491は、制御部9から入力される制御信号に基づいて、静電チャック1411、1412、1413、1421、1422、1423を互いに独立して駆動する。
【0031】
チャック駆動部1491は、基板W1、W2を静電チャック1411、1412から離脱させる際、静電チャック1411、1412の2つの端子電極1411a,1412aにパルス電圧を印加する。また、チャック駆動部1491は、基板W1、W2を静電チャック1421、1422から離脱させる際も、静電チャック1421、1422の2つの端子電極1421a、1422a間にパルス電圧を印加する。更に、チャック駆動部1491は、基板W1、W2を静電チャック1431、1432から離脱させる際も、静電チャック1413、1423の2つの端子電極間1431a、1432a間にパルス電圧を印加する。ここで、チャック駆動部1491は、端子電極1411a,1412a(1421a、1422a、1431a、1432a)間に互いに極性の異なるパルス電圧を交互に印加しつつ、パルス電圧の振幅を漸減させる。また、各パルス電圧のパルス間隔は、ステージ141、ヘッド142の放電時間を考慮して決定される。また、各パルス電圧のパルス幅は、互いに等しく設定されていてもよいし、経時的に長くなるように設定されていてもよい。或いは、任意に選択した5つ以下のパルス電圧のパルス幅が等しくなるように設定されていてもよい。更に、パルス間隔は、互いに等しく設定されていてもよいし、経時的に長くなるように設定されていてもよい。或いは、任意に選択した4つ以下のパルス間隔が等しくなるように設定されていてもよい。気体供給部1492は、制御部9から入力される制御信号に基づいて、気体吐出孔1411c、1421c、1412c、1422c、1413c、1423cへ各別に気体を供給することにより、気体吐出孔1411c、1421c、1412c、1422c、1413c、1423cから気体を吐出させる。
【0032】
更に、ステージ141、ヘッド142は、図7(B)に示すように、基板W1の中央部を押圧する押圧機構1441と、基板W2の中央部を押圧する押圧機構1442と、を有する。押圧機構1441は、ステージ141の中央部に設けられ、押圧機構1442は、ヘッド142の中央部に設けられている。押圧機構1441は、ステージ141の貫通孔141bを通じてヘッド142側へ出没可能な押圧部1441aと、押圧部1441aを駆動する押圧駆動部1441bと、を有する。押圧機構1442は、ヘッド142の貫通孔142bを通じてステージ141側へ出没可能な押圧部1442aと、押圧部1442aを駆動する押圧駆動部1442bと、を有する。押圧駆動部1441b、1442bは、例えばボイスコイルモータを有する。また、押圧部1441a、1442aは、基板W1、W2に印加する圧力を一定に維持するよう制御する圧力制御と、基板W1、W2の接触位置を一定に維持するように制御する位置制御と、のいずれかがなされる。例えば、押圧部1441aが位置制御され、押圧部1442aが圧力制御されることにより、基板W1、W2が一定の位置で一定の圧力で押圧される。
【0033】
図1に戻って、距離測定部1493は、例えばレーザ距離計であり、ステージ141およびヘッド142に接触せずにステージ141とヘッド142との間の距離を測定する。距離測定部1493は、透明なヘッド142の上方からステージ141に向かってレーザ光を照射したときのステージ141の上面での反射光とヘッド142の下面での反射光との差分からステージ141とヘッド142との間の距離を測定する。距離測定部1493は、図2(A)に示すように、ステージ141の上面における3箇所の部位P11、P12、P13と、ヘッド142の下面における、Z方向において部位P11、P12、P13に対向する3箇所の部位P21、P22、P23との間の距離を測定する。
【0034】
位置測定部500は、例えば図8に示すように、3つの撮像部501A、501B、501Cと、反射部材502と、撮像部位置調整部503A、503B、503Cと、を有し、鉛直方向に直交する方向(XY方向、Z軸周りの回転方向)における、基板W1と基板W2との位置ずれ量を測定する。3つの撮像部501A、501B、501Cは、反射部材502の周囲において、反射部材502の周方向で隣り合う2つの光軸JLA、JLB(JLB、JLCおよびJLC、JLA)のなす鋭角側の角度DAB、DBC、DCAが等しくなるように配設されている。反射部材502は、3つの撮像部501A、501B、501Cそれぞれに対向する部分に反射面502a、502b、502cが形成されている。撮像部501A、501B、501Cおよび反射部材502は、ステージ141における基板W1を保持する側とは反対側に配置されている。撮像部501A、501B、501Cは、いずれも、撮像素子511A、511B、511Cと同軸照明系(図示せず)とを有する第1撮像部である。同軸照明系の光源としては、基板W1、W2およびステージ141、チャンバ120に設けられた窓部120aを透過する光(例えば赤外光)を出射する光源が用いられる。
【0035】
例えば図9(A)および(B)に示すように、基板W1には、少なくとも3つのアライメントマークMK1a、MK1b、MK1cが設けられ、基板W2にも、少なくとも3つのアライメントマークMK2a、MK2b、MK2cが設けられている。これらのアライメントマークMK1a、MK1b、MK1cとアライメントマークMK2a、MK2b、MK2cのいずれか一方が、第1アライメントマークに相当し、他方が第2アライメントマークに相当する。基板接合装置1は、位置測定部500により両基板W1、W2に設けられた各アライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cの位置を認識しながら、両基板W1、W2の位置合わせ動作(アライメント動作)を実行する。より詳細には、基板接合装置1は、まず、位置測定部500により基板W1、W2に設けられたアライメントマークMK1a、MK1b、NK1c、MK2a、MK2b、NK2cを認識しながら、基板W1、W2の大まかなアライメント動作(ラフアライメント動作)を実行して、2つの基板W1、W2を対向させる。その後、基板接合装置1は、位置測定部500により2つの基板W1、W2に設けられたアライメントマークMK1a、MK2a、(MK1b、MK2bおよびMK1c、MK2c)を同時に認識しながら、更に精緻なアライメント動作(ファインアライメント動作)を実行する。
【0036】
ここで、図3の破線矢印SC1、SC2に示すように、撮像部501Aの同軸照明系の光源から出射された光は、反射部材502の反射面502aで反射されて上方に進行し、チャンバ120の窓部120aおよび基板W1、W2の一部あるいは全部を透過する。基板W1、W2の一部あるいは全部を透過した光は、基板W1、W2のアライメントマークMK1a,MK2aで反射され、下向きに進行し、窓部120aを透過して反射部材502の反射面502aで反射されて撮像部501Aの撮像素子511Aに入射する。また、撮像部501Bの同軸照明系の光源から出射された光は、反射部材502の反射面502bで反射されて上方に進行し、チャンバ120の窓部120aおよび基板W1、W2の一部あるいは全部を透過する。基板W1、W2の一部あるいは全部を透過した光は、基板W1、W2のアライメントマークMK1b,MK2bで反射され、下向きに進行し、窓部120aを透過して反射部材502の反射面502bで反射されて撮像部501Bの撮像素子511Bに入射する。なお、図3には記載されていないが、図8に示す撮像部501Cの同軸照明系の光源から出射された光は、反射部材502の反射面502cで反射されて上方に進行し、チャンバ120の窓部120aおよび基板W1、W2の一部あるいは全部を透過する。基板W1、W2の一部あるいは全部を透過した光は、基板W1、W2のアライメントマークMK1c,MK2cで反射され、下向きに進行し、窓部120aを透過して反射部材502の反射面502cで反射されて撮像部501Cの撮像素子511Cに入射する。このようにして、位置測定部500は、図10(A)および(B)に示すように、2つの基板W1、W2のアライメントマークMK1a、MK2aを含む撮影画像GAaと、2つの基板W1、W2のアライメントマークMK1b,MK2bを含む撮影画像GAbと、2つの基板W1、W2のアライメントマークMK1c,MK2bを含む撮影画像GAcと、を取得する。なお、撮像部501A、501B、501Cによる撮影画像GAa、GAb、GAcの撮影動作は、略同時に実行される。また、3つの撮像部501A、501B、501Cは、ステージ141、ヘッド142の2つのサブ環状領域A11,A12からなる第1領域A1において、アライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cを撮像する。
【0037】
撮像部位置調整部503A、503B、503Cは、それぞれ、撮像部501A、501B、501Cを、鉛直方向または撮像部501A、501B、501Cの光軸および鉛直方向に直交する水平方向へ移動させる。撮像部位置調整部503A、503B、503Cは、それぞれ、撮像部501A、501B、501Cを保持する撮像部保持部(図示せず)と、撮像部保持部を鉛直方向、水平方向へ駆動するアクチュエータ(図示せず)と、を有する。撮像部位置調整部503A、503B、503Cは、それぞれ、撮像部501A、501B、501Cを鉛直方向または水平方向へ移動させることにより、基板W1、W2における撮像位置を基板W1、W2の厚さ方向と直交する方向へ移動させることができる。
【0038】
図3に戻って、基板加熱部1481、1482は、例えば電熱ヒータであり、図7(B)に示すように、それぞれステージ141、ヘッド142に設けられている。基板加熱部1481、1482は、ステージ141およびヘッド142に保持されている基板W1,W2に熱を伝達することにより基板W1、W2を加熱する。また、基板加熱部1481、1482の発熱量を調節することにより、基板W1,W2やそれらの接合面の温度を調節できる。また、基板加熱部1481、1482は、加熱部駆動部(図示せず)に接続されており、加熱部駆動部は、図1に示す制御部9から入力される制御信号に基づいて、基板加熱部1481、1482へ電流を供給することにより基板加熱部1481、1482を発熱させる。
【0039】
図1に戻って、検査装置7は、互いに接合された基板W1、W2に設けられたアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2c全ての位置ずれ量を検出する。検査装置7は、例えば図11に示すように、互いに接合された基板W1、W2が載置されるステージ71と、光源72と、撮像部73と、水平方向駆動部74と、を有する。ステージ71は、光源72から出射される光に対して透明な材料から形成されている。そして、光源72は、ステージ71における基板W1、W2が載置される側とは反対側から基板W1、W2に向けて光を出射する。撮像部73は、光源72から出射された光のうちステージ71おおび基板W1、W2を透過してきた光が入射される撮像素子731を有する第2撮像部である。水平方向駆動部74は、矢印AR3に示すように、ステージ71をステージ71の厚さ方向に直交する水平方向へ移動させる。
【0040】
図1に戻って、制御部9は、例えばパーソナルコンピュータを有する制御システムであり、CPU(Central Processing Unit)とメモリとを有する。メモリは、CPUが実行するプログラムを記憶する。制御部9は、圧力センサ148および位置測定部150から入力される計測信号を計測情報に変換して取得する。また、制御部9は、基板接合装置1の撮像部501A、501B、501C、検査装置7の撮像部73および搬送装置84の搬送装置撮像部844から入力される撮影画像信号を撮影画像情報に変換して取得する。更に、制御部9は、基板接合装置1のチャック駆動部1491、気体供給部1492、撮像部位置調整部503A、503B、503C、ピエゾアクチュエータ1456、押圧駆動部1441b、1432b、加熱部駆動部、ステージ駆動部143、ヘッド駆動部144それぞれへ制御信号を出力することによりこれらの動作を制御する。制御部9は、図10(B)に示すように、撮像部501Aから取得した撮影画像GAaに基づいて、基板W1、W2に設けられた1組のアライメントマークMK1a,MK2a相互間の位置ずれ量dxa、dyaを算出する。なお、図10(B)は、1組のアライメントマークMK1a,MK2aが互いにずれている状態を示している。同様に、制御部9は、撮像部501B、501Cから取得した撮影画像GAb、GAcに基づいて、基板W1、W2に設けられた他の2組のアライメントマークMK1b,MK2b、MK1c、MK2c相互間の位置ずれ量dxb、dyb、dxc、dycを算出する。その後、制御部9は、これら3組のアライメントマークの位置ずれ量dxa、dya、dxb、dyb、dxc、dycと3組のマークの幾何学的関係とに基づいて、X方向、Y方向およびZ軸周りの回転方向における2つの基板W1、W2の相対的な位置ずれ量dx、dy、dθを算出する。そして、制御部9は、算出した位置ずれ量dx、dy、dθが低減されるように、ヘッド142をX方向およびY方向へ移動させたり、Z軸周りに回転させたりする。このようにして、基板接合装置1は、2つの基板W1、W2の水平方向における位置ずれ量dx、dy、dθを補正するアライメント動作を実行する。また、制御部9は、活性化処理装置2、搬送装置82、84、86、洗浄装置3、検査装置7へ制御信号を出力することによりこれらの動作を制御する。
【0041】
また、制御部9は、基板W1、W2の接合面の中央部同士が接触し且つ基板W1、W2の周部が静電チャック1411、1412、1421、1422に保持された状態で、基板W1、W2を全面で接触させる場合、まず、第1領域A1のサブ環状領域A12に設けられた気体吐出孔からサブ環状領域A12に設けられた溝全体に気体を充填させた後、静電チャック1421、1422による基板W1、W2の保持を解除するようにチャック駆動部1491および気体供給部1492を制御する。次に、制御部9は、第1領域A1のサブ環状領域A11に設けられた気体吐出孔1411c、1412cからサブ環状領域A11に設けられた溝1411d、1412d全体に気体を充填させた後、静電チャック1411、1412、1421、1422による基板W1、W2の保持を解除するようにチャック駆動部1491および気体供給部1492を制御する。このとき、制御部9は、前述の気圧検出部により検出される気圧に基づいて、気圧が臨界圧力未満となるように気体吐出孔1411c、1421c、1421c、1422cから吐出される気体の流量を制御する。これにより、基板W1、W2同士が全面で接触する。
【0042】
更に、制御部9は、撮像部73により基板W1、W2の複数のアライメントマークを撮像して得られる撮像画像に基づいて、基板W1、W2の複数のアライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向を算出する。そして、制御部9は、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により決定される位置ずれベクトルの水平方向成分および回転方向成分を分離し、分離した水平方向成分および回転方向成分に基づいて、基板W1、W2を接合する際の基板W1に対する基板W2の水平方向のオフセット量である水平オフセット量を算出する。また、制御部9は、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により決定される位置ずれベクトルの反り成分を分離し、分離した反り成分に基づいて、基板W1、W2を接合する際の基板W1の中央部の基板W1の周部に対する基板W2側への突出量のオフセット量である突出オフセット量を算出する。ここで、制御部9は、予め設定された複数枚の互いに接合された基板W1、W2が作製される毎に、それら複数枚の互いに接合された基板W1、W2について得られた位置ずれ量および位置ずれ方向の統計値(例えば平均値或いは中間値)に基づいて、水平オフセット量および突出オフセット量を算出する。また、制御部9が、撮像部73により撮像される複数のアライメントマークの組それぞれの位置ずれ量が最小となるように、水平オフセット量を算出する例について説明した。そして、制御部9は、算出した水平オフセット量および突出オフセット量を示す情報をメモリに記憶させる。
【0043】
また、制御部9は、撮像部501A、501B、501Cにより基板W1、W2が離間した状態でアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cを撮像して得られる撮像画像と、撮像部501A、501B、501Cにより互いに接合された基板W1、W2のアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cを撮像して得られる撮像画像と、のそれぞれに基づいて、アライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cの位置ずれ量および位置ずれ方向を算出する。そして、制御部9は、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向に基づいて、水平オフセット量を更新する。具体的には、制御部9は、基板W1、W2が離間し且つ基板W1、W2のアライメント終了後にアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cを撮像して得られる撮像画像から位置ずれ量誤差を算出する。そして、制御部9は、互いに接合された基板W1、W2のアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cを撮像して得られる撮像画像から算出された位置ずれ量から、前述の位置ずれ量誤差を差し引くことにより、基板W1、W2の接合時の位置ずれ量が算出される。ここで、位置ずれ量誤差は0ではないため、検査装置7の撮像部73で撮像された撮像画像から算出された水平オフセット量をそのまま採用することはできない。ここで、前述の水平オフセット量は、アライメントマークMK1a、MK2a(MK1b、MK2b、MK1c、MK2c)の組毎に算出される。なお、制御部9は、互いに接合された基板W1,W2のアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cの位置ずれ量および位置ずれ方向の情報を検査装置7から取得して前述の位置ずれ量誤差を算出してもよい。また、水平オフセット量の算出は、検査装置7で実行されてもよいし、基板接合装置1で実行されてもよい。検査装置7で水平オフセット量を算出する場合、検査装置7に位置ずれ量誤差を示す情報を通知するようにすればよい。また、検査装置7の撮像部73により撮像された撮像画像に基づいて算出される水平オフセット量は、基板W1、W2のアライメントマークの組全てに共通するオフセット量であり、一方、前述の位置ずれ量誤差に基づいて補正された水平オフセット量は、アライメントマークMK1a、MK2a(MK1b、MK2b、MK1c、MK2c)の組毎に各別に決定されるオフセット量である。
【0044】
次に、本実施の形態に係る基板接合システムについて、基板W1、W2が接合システムに投入されてから基板W1、W2が接合されて基板接合システムから取り出されるまでの動作の流れを図12乃至図17を参照しながら説明する。ここで、基板W1、W2は、予め導入ポート811、812に配置されているものとする。基板W1、W2としては、例えば、Si基板、ガラス基板、酸化物基板(例えば、酸化ケイ素(SiO2)基板、アルミナ基板(Al2O3)等)、窒化物基板(例えば、窒化ケイ素(SiN)、窒化アルミニウム(AlN))のいずれかからなる。なお、基板W1、W2の少なくとも一方は、その接合面に金属部分と絶縁膜とが露出しているものであってもよい。或いは、基板W1、W2の少なくとも一方は、その接合面に酸化物または窒化物を堆積することにより形成された絶縁膜が露出しているものであってもよい。ここでは、基板W1がガラス基板または酸化物基板であり、基板W2がSi基板または窒化物基板であるとして説明する。また、導入ポート811には、例えば基板接合装置1においてヘッド142に保持される基板W2が配置され、導入ポート812には、例えば基板接合装置1においてステージ141に載置される基板W1が配置される。
【0045】
まず、図12に示すように、基板接合システムは、搬送装置82の搬送ロボット821により基板W1、W2を導入ポート811、812からロードロック部85へ搬送する(ステップS101)。次に、基板接合システムは、搬送装置86の搬送ロボット861により基板W1、W2をロードロック部85から活性化処理装置2へ搬送する(ステップS102)。続いて、活性化処理装置2は、基板W1、W2それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方に対して、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと窒素ラジカルの照射との少なくとも一方を行うことにより接合面を活性化する活性化処理工程を行う(ステップS103)。ここにおいて、活性化処理装置2は、接合面を活性化処理する対象となる基板の種類によって処理シーケンスが異なる。活性化処理装置2は、基板W1、即ち、ガラス基板または酸化物基板の接合面を活性化処理する場合、まず、図2に示す供給弁222Aを開くことにより窒素ガス貯留部221Aから供給管223Aを通じて処理チャンバ212内にN2ガスを導入する。次に、活性化処理装置2は、高周波電源216から誘導コイル215への高周波電流の供給を停止させた状態で、バイアス印加部217によりステージ210に載置された基板W1、W2に高周波バイアスを印加する。これにより、基板W1の接合面に対して、N2ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)が行われる。続いて、活性化処理装置2は、高周波電源216から誘導コイル215への高周波電流の供給を開始して、N2ガスでプラズマを発生させる。このとき、活性化処理装置2は、バイアス印加部217による基板W1への高周波バイアスの印加を停止する。このようにして、基板W1の接合面にN2ラジカルが照射される。
【0046】
一方、活性化処理装置2は、基板W2、即ち、Siまたは窒化物基板の接合面を活性化処理する場合、まず、供給弁222Bを開くことにより酸素ガス貯留部221Bから供給管223Bを通じて処理チャンバ212内にO2ガスを導入する。次に、活性化処理装置2は、高周波電源216から誘導コイル215への高周波電流の供給を停止させた状態で、バイアス印加部217によりステージ210に載置された基板W2に高周波バイアスを印加する。これにより、基板W2の接合面に対して、O2ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)が行われる。続いて、活性化処理装置2は、供給弁222Bを閉じて酸素ガス貯留部221Bから処理チャンバ212内へのO2ガスの供給を停止することにより、処理チャンバ212内のO2ガスを排気する。その後、活性化処理装置2は、供給弁222Aを開くことにより窒素ガス貯留部221Aから供給管223Aを通じて処理チャンバ212内にN2ガスを導入する。その後、活性化処理装置2は、高周波電源216から誘導コイル215への高周波電流の供給を開始して、N2ガスでプラズマを発生させる。このとき、活性化処理装置2は、バイアス印加部217による基板W2への高周波バイアスの印加を停止する。このようにして、基板W2の接合面にN2ラジカルが照射される。
【0047】
図12に戻って、その後、搬送装置86が、基板W1、W2を活性化処理装置からロードロック部85へ搬送する(ステップS104)。次に、搬送装置82の搬送ロボット821が、基板W1、W2をロードロック部85から洗浄装置3へ搬送する(ステップS105)。続いて、洗浄装置3は、水を基板W1、W2の接合面に吹き付けながら接合面を洗浄する水洗浄工程を実行する(ステップS106)。ここで、洗浄装置3は、洗浄ヘッドから超音波を印加した水を基板W1、W2の接合面に吹き付けながら、基板W1、W2が載置されたステージをXY方向へスキャンさせて基板W1、W2の接合面全面を洗浄する。これにより、基板W1、W2の接合面に付着した異物が除去される。続いて、洗浄装置3は、洗浄ヘッドによる水の吐出を停止させてから、ステージを回転させることにより基板をスピン乾燥することにより洗浄処理を完了する。その後、搬送装置82が、基板W1、W2を洗浄装置3からロードロック部83へ搬送する(ステップS107)。次に、搬送装置84が、基板W1、W2をロードロック部83から取り出し、搬送装置撮像部844が基板W1、W2の周部を撮像する(ステップS108)。
【0048】
続いて、制御部9は、搬送装置撮像部844から取得した撮像画像に基づいて、位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cが静電チャック1411、1412、1421、1422と重なるか否かを判定する(ステップS109)。具体的には、制御部9は、予め基板接合装置1のステージ141、ヘッド142の静電チャック1411、1421の位置と搬送装置84で保持された基板W1、W2の位置との間の相対的な位置関係を示す情報を取得しており、この情報に基づいて、位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cが静電チャック1411、1412、1421、1422と重なるか否かを判定する。ここで、制御部9が、位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2c全てが静電チャック1411、1412、1421、1422と重ならないと判定すると(ステップS109:No)、そのままステップS111以降の処理が実行される。
【0049】
一方、制御部9が、位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cの少なくとも1つが静電チャック1411、1412、1421、1422と重なると判定したとする(ステップS109:Yes)。例えば図13(A)に示すように、アライメントマークMK1a、MK2aが静電チャック1411、1421の一部に重なると判定したとする。この場合、制御部9は、図12に示すように、ステージ141を回転させてから基板W1、W2を受け取ることにより、基板W1,W2の位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2c全てが静電チャック1411、1412、1421、1422と重ならない姿勢となるようにステージ141を回転させる(ステップS110)。例えば図13(A)に示す状態から、図13(A)の矢印AR10に示す回転方向へステージ141を回転させてから基板W1、W2を受け取る。ここで、制御部9は、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2c全てが静電チャック1411、1412、1421、1422の複数の電極子1411b、1412b、1421b、1422bの間に位置するようにステージ141を回転させる。これにより、基板W1、W2は、例えば図13(B)に示すように、基板W1,W2の位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2aが静電チャック1411、1421と重ならない状態となる。また、制御部9は、撮像部位置調整部503A、503B、503Cを制御して、撮像部501A、501B、501Cを、基板W1、W2それぞれのアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cの撮像が可能な位置へ移動させる。図12に戻って、その後、搬送装置84は、基板W1、W2を基板接合装置1へ搬送する(ステップS111)。次に、基板接合装置1が、基板接合工程を実行する(ステップS112)。
【0050】
ここで、基板接合システムが実行する基板接合工程について、図14を参照しながら詳細に説明する。なお、図14において、基板接合装置1は、基板W1、W2の厚さの測定結果が既に制御部9のメモリに記憶されているものとする。まず、基板接合装置1は、距離測定部1493により、ステージ141、ヘッド142の3箇所におけるステージ141とヘッド142との間の距離を測定する距離測定工程を実行する(ステップS1)。
【0051】
次に、基板接合装置1は、測定したステージ141、ヘッド142の3箇所におけるステージ141とヘッド142との間の距離と基板W1、W2の厚さとに基づいて、基板W1の接合面と基板W2の接合面との間の距離を算出する。そして、基板接合装置1は、算出した距離に基づいて、ヘッド142を鉛直下方へ移動させて基板W1、W2同士を近づける(ステップS2)。続いて、基板接合装置1は、基板W1、W2同士が離間した状態で、基板W1の基板W2に対する位置ずれ量を算出する(ステップS3)。ここにおいて、制御部9は、まず、位置測定部500の撮像部501A、501B、501Cそれぞれから、非接触状態における2つの基板W1、W2における第1領域A1に対向する部分に設けられたアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cの撮影画像GAa、GAb、GAc(図10(A)参照)を取得する。そして、制御部9は、前述のように、3つの撮影画像GAa、GAb、GAcに基づいて、2つの基板W1、W2のX方向、Y方向およびZ軸周りの回転方向の位置ずれ量dx、dy、dθそれぞれを算出する。続いて、基板接合装置1は、算出した位置ずれ量dx、dy、dθを補正するように基板W2を基板W1に対して相対的に移動させることにより、位置合わせを実行する(ステップS4)。ここにおいて、基板接合装置1は、位置ずれ量dx、dy、dθが低減するように、ステージ141をX方向、Y方向およびZ軸周りの回転方向へ移動させる。
【0052】
その後、基板接合装置1は、更にヘッド142をステージ141に近づけることにより、基板W1、W2同士を近づける(ステップS5)。ここで、基板接合装置1は、ヘッド142を、基板W1、W2の間の隙間が基板W1、W2を撓ませた状態でそれらの中央部同士を接触させるのに最適な隙間となる位置に配置する。この状態で、基板W1、W2の周部同士が50μm程度離間した状態となるようにする。
【0053】
次に、基板接合装置1は、基板W1、W2が互いに離間した状態で、基板W1、W2を撓ませることにより、基板W1の中央部と基板W2の中央部とを接触させる第1接触工程を実行する(ステップS6)。基板接合装置1は、まず、図15(A)の矢印AR11に示すように、ステージ141、ヘッド142の第2領域A2に設けられた気体吐出孔1413c、1423cから第2領域A2に設けられた溝1413d、1423d全体に気体を充填させる。その後、基板接合装置1は、ステージ141、ヘッド142の静電チャック1413、1423による基板W1の保持を解除する。このとき、制御部9は、基板W1が基板W2に接触する圧力が基板W1、W2が仮接合される臨界圧力未満となるように気体吐出孔1413cから気体が吐出されるように気体供給部1492を制御する。具体的には、制御部9は、前述の気圧検出部により検出される気圧に基づいて、気圧が臨界圧力未満となるように気体吐出孔1413c、1423cから吐出される気体の流量を制御する。次に、基板接合装置1は、ステージ141の静電チャック1411、1412に基板W1の周部を保持させた状態で、押圧部1441aにより基板W1の中央部を基板W2に向けて押圧する。ここで、静電チャック1411、1412に基板W1の周部を保持させた状態とは、チャック駆動部1491からステージ141の静電チャック1411、1412へ電圧を印加している場合のみならず、静電チャック1411、1412に電圧が印加されておらず、静電チャック1411、1412の残留静電力により基板W1の周部が静電チャック1411、1412に密着している状態も含む。これにより、基板W1は、図15(B)に示すように、その中央部W1cが基板W2に向かって突出するように撓む。また、基板接合装置1は、ヘッド142の静電チャック1421、1422に基板W2の周部を保持させた状態で、押圧部1442aにより基板W2の中央部を基板W1に向けて押圧する。これにより、基板W2は、図15(B)に示すように、その中央部が基板W1に向かって突出するように撓む。このようにすることで、静電チャック1413、1413による保持を解除した後において電極子1413b、1423b間に残る残留静電力による基板W1、W2をステージ141、ヘッド142に密着させる力に対して、溝1413d、1423dから吐出される気体の圧力を有効に作用させることで、基板W1、W2が、ステージ141、ヘッド142に密着させる力に対してフリーな状態となる。そして、この状態で、基板W1、W2の中央部同士を臨界圧力以上の圧力で加圧して接触させることで、ステージ141、ヘッド142への密着力の影響の無い状態で基板W1、W2の中央部から周部に向かって接合を進めさせることができるので、基板W1、W2を歪み無く全面で高い位置精度で接合することができる。また、基板W1、W2が、ステージ141、ヘッド142に密着させる力に対してフリーな状態となる前に押圧部1441a、1432aにより基板W1、W2の中央部を押圧すると、ステージ141、ヘッド142への密着力の影響により基板W1、W2に生じる歪みが大きくなってしまう。また、制御部9は、メモリに記憶されている突出オフセット量を示す情報に基づいて、押圧部1441a、1432aのいずれか一方が他方に対して突出オフセット量だけ突出量が大きくなるように押圧部1441a、1432aをステージ141、ヘッド142から突出させる。これにより、基板W1、W2同士が互いに接合されたときの基板W1、W2の反り量を低減することができる。
【0054】
続いて、図14に示すように、基板接合装置1は、基板W1、W2の中央部W1c、W2cから周部W1s、W2sに向かって基板W1、W2の接触部分を広げていく第2接触工程を実行する(ステップS7)。ここで、基板接合装置1は、図16(A)の矢印AR12に示すように、押圧部1441aをステージ141に没入させる方向へ移動させ且つ押圧部1442aをヘッド142に没入させる方向へ移動させる。同時に、基板接合装置1は、矢印AR13に示すように、ヘッド142をステージ141に近づく方向へ移動させる。これにより、矢印AR14に示すように、基板W1、W2の接触部分が、押圧機構1441、1432により点加圧された中央部を起点として基板W1、W2の間に生じる分子間力(ファンデルワールス力)または基板W1、W2の接合面に存在する水またはOH基による接合力により、基板W1、W2の中央部から周部に向かって広がっていく。そして、基板接合装置1は、ヘッド142を、ステージ141から予め設定された距離だけ離間した位置にまで近づけると、図16(B)に示すように、静電チャック1421、1422による基板W1、W2の保持を解除する。このとき、基板接合装置1は、まず、第1領域A1のサブ環状領域A12に設けられた気体吐出孔からサブ環状領域A12に設けられた溝全体に気体を充填させた後、静電チャック1421、1422による基板W1、W2の保持を解除する。このとき、制御部9は、前述の気圧検出部により検出される気圧に基づいて、気圧が臨界圧力未満となるように気体吐出孔1412c、1422cから吐出される気体の流量を制御する。次に、基板接合装置1は、第1領域A1のサブ環状領域A11に設けられた気体吐出孔1411c、1412cからサブ環状領域A11に設けられた溝1411d、1412d全体に気体を充填させた後、静電チャック1411、1412、1421、1422による基板W1、W2の保持を解除する。これにより、静電チャック1421、1422による基板W1、W2の保持が解除される。そして、基板W1、W2の接触部分が、更に、基板W1、W2の中央部から周部へ広がる。ここでは、基板W1、W2の接合面同士が互いに接触することにより、基板W1、W2同士が、OH基間または水分子間の水素結合により仮接合された状態となる。
【0055】
その後、図14に示すように、基板接合装置1は、基板W1の接合面が基板W2の接合面に接触した状態で、基板W2の基板W1に対する位置ずれ量を測定する(ステップS8)。このとき、基板接合装置1は、基板W1、W2同士の接触部分が広がることにより基板W2の基板W1に対する移動が規制された状態で、基板W1、W2の位置ずれ量を測定する。続いて、基板接合装置1は、算出した位置ずれ量dx、dy、dθの全てが予め設定された位置ずれ量閾値dxth、dyth、dθth以下であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0056】
ここで、基板接合装置1が、算出した位置ずれ量dx、dy、dθのいずれかが、予め設定された位置ずれ量閾値dxth、dyth、dθthよりも大きいと判定したとする(ステップS9:No)。この場合、基板接合装置1は、ヘッド142を上昇させることにより、基板W2を基板W1から離脱させる(ステップS10)。このとき、基板接合装置1は、ヘッド142を上昇させて基板W1、W2の間の距離を広げつつ、押圧部1441aをステージ141に没入させる方向へ移動させるとともに、押圧部1442aをヘッド142に埋没させる方向へ移動させる。ここにおいて、基板接合装置1は、基板W2を基板W1から剥がす際の基板W2の引っ張り圧力が一定となるようにヘッド142の上昇を制御する。これにより、基板W2が基板W1から離脱し、基板W1、W2の接触状態が解除される。
【0057】
次に、基板接合装置1は、算出した位置ずれ量dx、dy、dθを全て位置ずれ量閾値dxth、dyth、dθth以下にするための基板W1、W2の補正移動量を算出する(ステップS11)。ここにおいて、制御部9は、基板W2を基板W1に接触させた状態での基板W1と基板W2との位置ずれ量dx、dy、dθと、基板W2が基板W1に接触していない状態での基板W1と基板W2との位置ずれ量との差分に相当する移動量だけ移動させるような補正移動量を算出する。そして、制御部9は、メモリに記憶されているXY方向および回転方向それぞれの水平オフセット量だけ更に補正移動量に加算する。この補正移動量だけオフセットしてアライメントすることにより、再度基板W1、W2同士が接触したときに同様の基板W1、W2の接触による位置ずれが発生すれば基板W1、W2の位置ずれが無くなることになる。
【0058】
続いて、基板接合装置1は、2つの基板W1、W2が接触していない状態で2つの基板W1、W2の相対的な位置ずれ量dx、dy、dθを補正するように、位置合わせを実行する(ステップS12)。ここにおいて、基板接合装置1は、ステージ141をステップS111で算出された補正移動量だけX方向、Y方向およびZ軸周りの回転方向に移動させる。このようにして、基板接合装置1は、基板W1、W2が互いに離間した状態で、位置ずれ量dx、dy、dθが低減するように基板W2の基板W1に対する相対位置を調整する。そして、基板接合装置1は、再びステップS9の処理を実行する。
【0059】
一方、基板接合装置1により、算出した位置ずれ量dx、dy、dθの全てが、予め設定された位置ずれ量閾値dxth、dyth、dθth以下であると判定されたとする(ステップS9:Yes)。この場合、基板接合装置1は、基板W1、W2の中央部から周部に向かって基板W1、W2の接触部分を更に広げていき基板W1、W2同士を全面で接触させる(ステップS13)。ここでは、基板接合装置1は、図17(A)に示すように、押圧機構1441の押圧部1441aをステージ141に没入させる方向へ移動させ且つ押圧機構1442の押圧部1442aをヘッド142に没入させる方向へ移動させると同時に、矢印AR16に示すようにヘッド142をステージ141に近づく方向へ更に移動させることにより基板W1、W2の周部同士の距離を縮める。このようにして、基板接合装置1は、基板W1の周部を基板W2の周部に接触させて基板W1、W2の接合面同士を全面で接触させる。
【0060】
図13に戻って、その後、基板接合装置1は、基板W1、W2が全面で接触した状態で、基板W1を基板W2に押し付けることにより基板W1、W2同士を加圧してから加熱することにより基板W1、W2同士を接合する本接合工程を実行する(ステップS14)。次に、基板接合装置1は、ヘッド142の静電チャック1421を停止させることにより基板W2の保持を解除する(ステップS15)。続いて、基板接合装置1は、図17(B)の矢印AR17に示すように、ヘッド142を上昇させることによりヘッド142を基板W2から離脱させる。次に、基板接合装置1は、基板W1、W2同士が互いに接合された状態で、再度基板W2の基板W1に対する位置ずれ量を測定する(ステップS16)。続いて、制御部9は、算出された位置ずれ量に基づいて、次の基板W1、W2同士の接合において補正量移動量を算出する際に用いられる基板W2の基板W1に対するXY方向並びに回転方向の水平オフセット量および押圧機構1441、1432の押圧部1441a、1432aの突出量についての突出オフセット量を算出する(ステップS17)。ここで、制御部9は、算出した水平オフセット量および突出オフセット量を示す情報をメモリに記憶させる。
【0061】
図12に戻って、続いて、搬送装置84が、互いに接合された基板W1、W2を基板接合装置1からロードロック部83へ搬送する(ステップS113)。続いて、搬送装置82が、互いに接合された基板W1、W2をロードロック部83から取り出して検査装置7へ搬送する(ステップS114)。その後、検査装置7は、互いに接合された基板W1、W2に設けられたアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cを含む全てのアライメントマークを撮像する(ステップS115)。ここで、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cは、基板接合装置1でのアライメントに使用するものであり、検査装置7は、これらのアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cのみならず他のアライメントマークも全て撮像する。この基板W1、W2のいずれか一方の他のアライメントマークが第3アライメントマークに相当し、他方の他のアライメントマークが第4アライメントマークに相当する。ここでは、検査装置7が、撮像部73により、互いに接合された基板W1、W2に設けられたアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cを含む全てのアライメントマークを順次撮像していく。次に、制御部9は、検査装置7の撮像部73により撮像された画像から各アライメントマークにおける位置ずれ量および位置ずれ方向を算出する(ステップS116)。
【0062】
続いて、制御部9は、算出された位置ずれ量に基づいて、次の基板W1、W2同士の接合において補正量移動量を算出する際に用いられる基板W2の基板W1に対するXY方向並びに回転方向の水平オフセット量および押圧機構1441、1432の押圧部1441a、1432aの突出量についての突出オフセット量を算出する(ステップS117)。具体的には、制御部9は、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により特定される各アライメントマークにおける位置ずれベクトルを、XY方向成分、回転方向成分、反り成分および歪み成分に分離する。ここで、制御部9は、例えば図18(A)に示すような位置ずれベクトルの分布が得られた場合、図18(B)乃至(E)それぞれに示すような、位置ずれベクトルのXY方向成分、回転方向成分、反り成分および歪み成分に分離する。即ち、図18(B)乃至(E)XY方向成分、回転方向成分、反り成分および歪み成分を合成したものが位置ずれベクトルと一致する関係にある。そして、制御部9は、分離して得られたXY方向成分および回転方向成分のみから、XY方向および回転方向のオフセット量を算出する。また、制御部9は、反り成分のみに基づいて、押圧機構1441、1432の押圧部1441a、1432aの突出オフセット量を算出する。ここで、制御部9は、予め設定された複数枚の互いに接合された基板W1、W2が作製される毎に、それら複数枚の互いに接合された基板W1、W2について得られた位置ずれ量および位置ずれ方向の平均値或いは中間値に基づいて、水平オフセット量および突出オフセット量を算出する。そして、制御部9は、算出した水平オフセット量および突出オフセット量を示す情報をメモリに記憶させる。これにより、基板接合装置1は、基板W1、W2の接合時において、算出した水平オフセット量および突出オフセット量の補正を行う。その後、搬送装置82は、測定後の互いに接合された基板W1、W2を、検査装置7から取り出しポート813へ搬送する(ステップS118)。なお、この基板接合方法において、ステップS101乃至S104の一連の処理、ステップS105乃至S107の一連の処理、ステップS108乃至S113の一連の処理、ステップS115乃至S117の一連処理のうちの少なくとも一部の処理が、異なる基板W1、W2に対して並行して実行されてもよい。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態に係る基板接合装置1によれば、基板W1の中央部W1cと基板W2の中央部W2cとが接触し且つ基板W1の周部W1sが静電チャック1411、1412に保持された状態で、気体吐出孔1413cおよび溝1413dからステージ141と基板W1との間に気体を吐出しつつ、基板W1、W2同士を接触させる。これにより、静電チャック1413、1423による保持を解除した後において静電チャック1413、1423に残る残留静電力による基板W1、W2をステージ141、ヘッド142に密着させる力に対して、気体吐出孔1413c、1423cから溝1413d、1423d吐出される気体の圧力を有効に作用させることで、基板W1、W2が、ステージ141、ヘッド142に密着させる力に対してフリーな状態となる。そして、この状態で、基板W1、W2の中央部同士を臨界圧力以上の圧力で加圧して接触させることで、基板W1、W2のステージ141、ヘッド142への密着力の影響の無い状態で基板W1、W2の中央部から周部に向かって接合を進めさせることができるので、基板W1、W2を歪み無く全面で高い位置精度で接合することができる。
【0064】
ところで、ステージ141、ヘッド142に溝1413d、1423dが無い場合、基板W1、W2の一部のみがステージ141、ヘッド142から剥がれた状態となり、基板W1、W2内にステージ141、ヘッド142に密着した部分が残ってしまう虞がある。そうすると、基板W1、W2の周部を除く部分の全体をステージ141、ヘッド142に密着させる力に対してフリーな状態とすることができなくなる虞がある。特に、前述のように、静電チャック1413、1423の保持を解除する前に気体吐出孔1413c、1423cから気体を吐出させる場合において、静電チャック1413、1423の残留静電力が比較的小さいとき、気体吐出孔1413c、1423cの近傍だけがステージ141、ヘッド142から剥がれた状態となり基板W1、W2の周部を除く部分の全体に気体の圧力を有効に作用させることができず、基板W1、W2の周部を除く部分の全体をステージ141、ヘッド142からフリーな状態にすることができなくなる虞がある。これに対して、本実施の形態に係るステージ141、ヘッド142は、溝1413d、1423dが設けられていることにより、基板W1、W2の周部を除く全体をステージ141、ヘッド142に密着させる力に対してフリーな状態とすることができるので、基板W1、W2のステージ141、ヘッド142への密着力の影響の無い状態で基板W1、W2の中央部から周部に向かって接合を進めさせることができる。
【0065】
また、本実施の形態に係るステージ141、ヘッド142の第2領域A2に形成された溝1413d、1423dは、複数の電極子1413b、1423bそれぞれの延在方向に沿って延在する部分を有する。そして、溝1413d、1423dは、ステージ141、ヘッド142の端子電極1413aに電気的に接続された複数の電極子1413bと端子電極1423aに電気的に接続された複数の電極子1423bとの間に設けられている。これにより、静電チャック1413、1423によるステージ141、ヘッド142に密着させる力に対して、気体吐出孔1413c、1423cから溝1413d、1423dを介して吐出される気体による基板W1、W2をステージ141、ヘッド142から剥がす方向への力基板W1、W2全体に均一に作用させることができる。また、溝1413d、1423dが、極性の異なる電圧が印加される電極子1413b、1423bの間に設けられることにより、電極子1413b、1423b間で発生する静電力による基板W1、W2をステージ141、ヘッド142に密着させる力に対して、溝1413d、1423dから吐出される気体の圧力を有効に作用させることができる。従って、基板W1、W2同士の接触部分が広がる速度を均一にすることができる。
【0066】
更に、本実施の形態に係るステージ141、ヘッド142は、第1領域A1のサブ環状領域A11に設けられ、気体吐出孔1411c、1411dに連通する溝1411d、1421dを有する。また、ステージ141、ヘッド142は、第1領域A1のサブ環状領域A12に設けられ、気体吐出孔に連通する溝も有する。そして、制御部9は、基板W1、W2の接合面の中央部同士が接触し且つ基板W1、W2の周部が静電チャック1411、1412、1421、1422に保持された状態から基板W1、W2を全面で接触させる場合、まず、第1領域A1のサブ環状領域A12に設けられた気体吐出孔からサブ環状領域A12に設けられた溝全体に気体を充填させた後、静電チャック1421、1422による基板W1、W2の保持を解除するようにチャック駆動部1491および気体供給部1492を制御する。次に、制御部9は、第1領域A1のサブ環状領域A11に設けられた気体吐出孔1411c、1412cからサブ環状領域A11に設けられた溝1411d、1412d全体に気体を充填させた後、静電チャック1411、1412、1421、1422による基板W1、W2の保持を解除するようにチャック駆動部1491および気体供給部1492を制御する。これにより、基板W1、W2が溝1411d、1412d全体からステージ141、ヘッド142から剥がれる方向への力が作用した状態で、静電チャック1411、1412、1421、1422による基板W1、W2の周部を保持した状態が解除される。従って、基板W1、W2全体にステージ141、ヘッド142から剥がれる方向への力が作用することにより、基板W1、W2の一部が優先的にステージ141、ヘッド142から剥がれることを抑制でき、基板W1、W2同士の接触部分が広がる速度を均一にすることができる。
【0067】
また、静電チャック1411、1421、1412、1422それぞれの複数の電極子1411b、1421b、1412b、1422b間に電圧が印加された状態で、第1領域A1のサブ環状領域A12に設けられた溝全体および第1領域A1のサブ環状領域A11に設けられた溝1411d、1412d全体に気体を充填させることにより、溝1411d、1412dに充填された気体の一部をイオン化させることができる。これにより、気体に含まれるイオンにより静電チャック1411、1421、1412、1422の残留静電力が中和されるので、基板W1、W2がステージ141、ヘッド142から剥がれやすくなる。
【0068】
ところで、ステージ、ヘッドが、例えば図19(A)に示すように、屈曲部が無く直線状の端子電極9411a、9421aと、電極子9411b、9421bと、を備える静電チャック9411、9421を備えるものであるとする。ここで、例えば図19(A)に示すように、基板W1,W2の位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a‘、MK2a’が静電チャック9411、9421の電極子9411b、9421bに重なった状態であるとする。この場合、基板接合装置1が、ステージ141を回転させてから基板W1、W2を受け取ることにより、図19(B)に示すように、アライメントマークMK1a‘、MK2a’が静電チャック9411、9421の電極子9411b、9421bに重ならない状態にすることができる。しかしながら、例えば図19(A)に示すように、基板W1,W2の位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2aが静電チャック9411、9421の端子電極9411a、9421aに重なった状態である場合、基板接合装置1が、図19(A)の矢印AR10に示す回転方向へステージ141を回転させから基板W1、W2を受け取っても、図19(B)に示すように、アライメントマークMK1a、MK2aが静電チャック1411、1421の端子電極9411a、9421aと重なった状態となる。そして、基板W1,W2の位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2aが静電チャック1411、1421と重ならないようにステージ、ヘッドを平行移動させると、基板W1、W2を押圧機構で押圧する位置が基板W1、W2の中央部からずれてしまい、その結果、互いに接合した基板W1、W2に歪みが発生し易くなる。
【0069】
これに対して、本実施の形態に係る静電チャック1411、1421では、端子電極1411aが、平面視で他方から離れる方向へ突出するように屈曲した複数の屈曲部1411abと、周方向で隣り合う2つの屈曲部1411abの端部同士を連結する連結部1411aaと、を有する。これにより、基板接合装置1が、ステージ141を回転させてから基板W1、W2を受け取ることにより、ステージ141、ヘッド142を平行移動させることなく、基板W1,W2の位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2aが静電チャック1411、1421と重ならない状態にすることができる。従って、基板W1、W2同士を位置精度良く接合することができるとともに、互いに接合された基板W1、W2に生じる歪みを低減できる。
【0070】
また、基板W1、W2のアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cは、基板W1、W2におけるチップの基となる領域のコーナ部分、即ち、チップの基となる領域の周部に設けられることが多い。ここで、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cは、隣り合うチップの基となる領域の間に設けられたダイシングラインと重ならないように配置する必要があることから、チップの基となる領域の内側に設ける必要があり、その分、チップの基となる領域の面積が大きくなる。そうすると、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cの位置が、チップの基となる領域の面積が大きくなった分だけ基板W1、W2の周縁よりも中央部側に配置される。一方、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cは、それぞれ、基板W1、W2がステージ141、ヘッド142の基板保持位置に配置された状態で、第1領域A1に対向した位置に配置される必要がある。従って、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cの位置が、基板W1,W2の周縁よりも中央部側に配置されると、その分、第1領域A1の幅を広く設定する必要がある。ここで、第1領域A1に1つの静電チャックを設けた構成とした場合、基板W1、W2の中央部同士を接触させたときに基板W1、W2同士の接合が第1領域A1に対向する部分で止まってしまい、基板W1、W2同士の接合が周縁近傍まで十分に広がらず、基板W1、W2の周部に歪みが生じる虞がある。これに対して、本実施の形態に係るステージ141、ヘッド142は、第1領域A1に予め設定された2つのサブ環状領域A11、A12が設定され、サブ環状領域A11、A12それぞれに静電チャック1411、1412、1421、1422が設けられている。これにより、基板W1、W2のアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cの位置が基板W1,W2の周縁よりも中央部側に配置されている場合であってもこれらの撮像を可能としつつ、基板W1、W2の中央部同士を接触させて基板W1、W2同士の接合を進める場合にサブ環状領域A12に設けられた静電チャック1412、1422のみ保持を解除することで、基板W1、W2同士の接合を基板W1、W2の周縁近傍まで進めることが可能となる。なお、サブ環状領域A12に設けられた静電チャック1412、1422は、第2領域A2に設けられた静電チャック1413、1423と同時に駆動してもよい。この場合、静電チャック1412,1422と静電チャック1413、1423とで電源を共通化することができるので、基板接合装置1の構成の簡略化を図ることができる。
【0071】
更に、本実施の形態に係る基板接合システムは、互いに接合された基板W1、W2それぞれの複数のアライメントマーク全て撮像する撮像部73を有する検査装置7を備える。また、制御部9は、撮像部73により基板W1、W2の複数のアライメントマークを撮像して得られる撮像画像に基づいて、基板W1、W2の複数のアライメントマークそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向を算出する。そして、制御部9は、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により決定される位置ずれベクトルの水平方向成分および回転方向成分を分離し、分離した水平方向成分および回転方向成分に基づいて、基板W1、W2を接合する際の基板W1に対する基板W2の水平方向のオフセット量である水平オフセット量を算出する。また、制御部9は、算出した位置ずれ量および位置ずれ方向により決定される位置ずれベクトルの反り成分を分離し、分離した反り成分に基づいて、基板W1、W2を接合する際の基板W1の中央部の基板W1の周部に対する基板W2側への突出量のオフセット量である突出オフセット量を算出する。これにより、例えば基板W1、W2を複数回繰り返し接合する場合において、基板W1、W2を接合する際、過去の基板接合工程後のアライメントマークの位置ずれ量に基づいて算出された水平オフセット量だけ基板W1、W2の相対位置が補正される。従って、基板W1、W2同士の接合位置精度を高めることができる。
【0072】
ところで、前述のアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cの位置ずれ量誤差を考慮せずに検査装置7の撮像部73による撮像画像に基づいてのみ水平オフセット量を決めた場合、基板接合装置1での位置ずれ量誤差分だけアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cの位置ずれが生じてしまう。これに対して、本実施の形態では、基板接合装置1における基板W1、W2の接合前後におけるアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cの位置ずれ量の位置ずれ量誤差分だけ水平オフセット量を補正する。これにより、基板W1、W2を接合する際に必要となる水平オフセット量の精度を高めることができる。
【0073】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る基板接合装置は、互いに内径が異なる円環状であり、第1基板保持部における第1領域の内側の第2領域において中心が第1基板保持部の中央部に一致するように同心円状に配置されるとともに、基板保持位置に配置された前記第1基板における前記第2領域に対向する部分を押圧する複数の押圧部材を備える点で、実施の形態1と相違する。本実施の形態に係る基板接合装置は、第1基板の中央部と第2基板の中央部とが接触し且つ第1基板の周部が基板保持部に保持された状態で、複数の押圧部材のうち第1基板保持部の中央部側に位置する押圧部材から優先的に第1基板を押圧させながら第1基板と第2基板とを接触させる。
【0074】
本実施の形態に係る基板接合装置は、実施の形態1で説明した基板接合システムを構成する基板接合装置1と略同様の構造を有し、図20(A)および(B)に示すように、ステージ2141、ヘッド2142の構造のみが、実施の形態1と相違する。なお、図20(A)および(B)において実施の形態1と同様の構成については、図5(A)および(B)と同一の符号を付している。本実施の形態に係る基板接合装置は、実施の形態1で説明した基板接合装置1と同様に、チャンバ120とステージ2141とヘッド2142とステージ駆動部143とヘッド駆動部144と基板加熱部1481、1482と位置測定部500と距離測定部1493とを備える。なお、以下の説明において、実施の形態1と同様の構成については、適宜実施の形態1で使用した符号と同じ符号を用いて説明する。
【0075】
ステージ2141とヘッド2142とは、チャンバ120内において、鉛直方向で互いに対向するように配置されている。ステージ2141は、その上面で基板W1を保持する第1基板保持部であり、ヘッド2142は、その下面で基板W2を保持する第2基板保持部である。ここで、ステージ2141は、その上面が基板W1全体に面接触した状態で基板W1を支持し、ヘッド2142は、その下面が基板W2全体に面接触した状態で基板W2を支持する。ステージ2141とヘッド2142とは、例えば透光性を有するガラスのような透光性材料から形成されている。ステージ2141には、図20(A)に示すように、基板W1を保持する静電チャック1411、基板W1の中央部を押圧する押圧機構1441と、複数(図20(A)では32個)の平面視円形の押圧部材21511、21512、21513、21514と、が設けられている。また、ステージ2141には、図20(B)に示すように、ピエゾアクチュエータ21611、21612、21613、21614が設けられている。ヘッド2142には、図20(A)に示すように、基板W2を保持する静電チャック1421、基板W2の中央部を押圧する押圧機構1442と、複数(図20(A)では32個)の平面視円形の押圧部材21521、21522、21523、21524と、が設けられている。また、ヘッド2142には、図20(B)に示すように、ピエゾアクチュエータ21621、21622、21623、21624が設けられている。静電チャック1411、1421は、ステージ2141、ヘッド2142に基板W1、W2が保持された状態で、ステージ141、ヘッド142における基板W1、W2の周部に対向する円環状の第1領域A1に設けられている。そして、静電チャック1411、1421は、それぞれ、基板W1、W2の周部を保持する。また、ステージ141、ヘッド142の中央部には、平面視円形の貫通孔141b、142bが設けられている。
【0076】
押圧部材21511、21512、21513、21514は、ステージ2141における第2領域A2において中心がステージ2141の中央部に一致する4つの仮想円VC1、VC2、VC3、VC4それぞれに沿って配置されている。そして、押圧部材21511、21512、21513、21514は、ステージ2141における予め設定された基板保持位置に配置された基板W1における第2領域A2に対向する部分を押圧する。また、ピエゾアクチュエータ21611、21612、21613、21614は、ぞれぞれ、押圧部材21511、21512、21513、21514を、ステージ2141から突出する方向またはステージ2141に没入する方向へ駆動する押圧部材駆動部である。押圧部材21521、21522、21523、21524も、ヘッド2142における第2領域A2において中心がヘッド2142の中央部に一致する4つの仮想円VC1、VC2、VC3、VC4それぞれに沿って配置されている。そして、押圧部材21521、21522、21523、21524は、ヘッド2142における予め設定された基板保持位置に配置された基板W2における第2領域A2に対向する部分を押圧する。また、ピエゾアクチュエータ21621、21622、21623、21624は、ぞれぞれ、押圧部材21521、21522、21523、21524を、ヘッド2142から突出する方向またはヘッド2142に没入する方向へ駆動する押圧部材駆動部である。
【0077】
制御部9は、ピエゾアクチュエータ21611、21612、21613、21614のステージ2141とヘッド2142との対向方向における長さの変化量を制御することにより、押圧部材21511、21512、21513、21514それぞれの移動量を制御する。そして、制御部9は、複数の押圧部材21511、21512、21513、21514がステージ2141の中央部に近いほうから順に基板W1に接触していくときの速度が、基板W1、W2の接合面の中央部同士を接触させた状態から基板W1、W2の周部に向かって基板W1、W2との仮接合が進む速度に比べて早くなるようにピエゾアクチュエータ21611、21612、21613、21614を制御する。また、制御部9は、ピエゾアクチュエータ21621、21622、21623、21624のステージ2141とヘッド2142との対向方向における長さの変化量を制御することにより、押圧部材21521、21522、21523、21524それぞれの移動量を制御する。そして、制御部9は、複数の押圧部材21521、21522、21523、21524がヘッド2142の中央部に近いほうから順に基板W2同士が接触していくときの速度が、基板W1、W2の接合面の中央部同士を接触させた状態から基板W1、W2の周部に向かって基板W1、W2との仮接合が進む速度に比べて早くなるようにピエゾアクチュエータ21611、21612、21613、21614を制御する。
【0078】
本実施の形態に係る基板接合システムにおける、基板W1、W2が投入されてから基板W1、W2が接合されて基板接合システムから取り出されるまでの一連の動作の流れは、実施の形態1と略同様であり、基板接合工程における動作の一部のみが実施の形態1と相違する。そこで、本実施の形態に係る基板接合システムが実行する基板接合工程について、図14図21および図22を参照しながら説明する。
【0079】
まず、図14に示すように、基板接合装置は、ステップS1からS4までの一連の動作を実行する。次に、基板接合装置は、更にヘッド142をステージ141に近づけることにより、基板W1、W2同士を近づける(ステップS5)。続いて、基板接合装置は、基板W1、W2が互いに離間した状態で、基板W1、W2を撓ませることにより、基板W1の中央部と基板W2の中央部とを接触させる第1接触工程を実行する(ステップS6)。このとき、基板接合装置は、例えば図21(A)に示すように、静電チャック1411に基板W1の周部を保持させた状態で、押圧部1441aにより基板W1の中央部を基板W2に向けて押圧することで、基板W1の中央部W1cが基板W2に向かって突出するように基板W1を撓ませる。また、基板接合装置は、静電チャック1422に基板W2の周部を保持させた状態で、押圧部1442aにより基板W2の中央部を基板W1に向けて押圧することで、基板W2の中央部が基板W1に向かって突出するように基板W2を撓ませる。そして、基板接合装置は、図21(B)に示すように、ピエゾアクチュエータ21611、21612、21613、21614により、押圧部材21511、21512、21513、21514を基板W1に当接させる。また、基板接合装置は、ピエゾアクチュエータ21621、21622、21623、21624により、押圧部材21521、21522、21523、21524を基板W2に当接させる。
【0080】
続いて、基板接合装置は、図14に示すように、基板W1、W2の中央部W1c、W2cから周部W1s、W2sに向かって基板W1、W2の接触部分を広げていく第2接触工程を実行する(ステップS7)。ここで、基板接合装置は、図22(A)の矢印AR22に示すように、押圧部1441aをステージ2141に没入させる方向へ移動させ且つ押圧部1442aをヘッド2142に没入させる方向へ移動させる。同時に、基板接合装置は、矢印AR21に示すように、ヘッド2142をステージ2141に近づく方向へ移動させる。そして、基板接合装置は、押圧部材21511、21512、21513、21514のうちステージ2141の中央部側に位置する方から優先的に基板W1を押圧させる。また、基板接合装置は、押圧部材21521、21522、21523、21524のうちヘッド2142の中央部側に位置する方から優先的に基板W2を押圧させる。これにより、矢印AR23に示すように、基板W1、W2の接触部分が、押圧機構1441、1432により点加圧された中央部を起点として基板W1、W2の中央部から周部に向かって広がっていく。
【0081】
その後、ステップS8からS12までの一連の処理が実行される。そして、基板接合装置により、算出した位置ずれ量dx、dy、dθの全てが、予め設定された位置ずれ量閾値dxth、dyth、dθth以下であると判定されたとする(ステップS9:Yes)。この場合、基板接合装置1は、基板W1、W2の中央部から周部に向かって基板W1、W2の接触部分を更に広げていき基板W1、W2同士を全面で接触させる(ステップS13)。ここでは、基板接合装置1は、図22(B)に示すように、押圧機構1441の押圧部1441aをステージ2141に没入させる方向へ移動させ且つ押圧機構1442の押圧部1442aをヘッド2142に没入させる方向へ移動させると同時に、矢印AR24に示すようにヘッド142をステージ141に近づく方向へ更に移動させることにより基板W1、W2の周部同士の距離を縮める。このようにして、基板接合装置1は、基板W1の周部を基板W2の周部に接触させて基板W1、W2の接合面同士を全面で接触させる。
【0082】
図14に戻って、次に、基板接合装置1は、基板W1、W2同士を接合する本接合工程を実行し(ステップS14)、ヘッド2142の静電チャック1421を停止させることにより基板W2の保持を解除する(ステップS15)。続いて、基板接合装置1は、ステップS16以降の処理を実行する。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態に係る基板接合装置によれば、基板W1の中央部と基板W2の中央部とが接触し且つ基板W1の周部がステージ2141に保持された状態で、押圧部材21511、21512、21513、21514のうちステージ2141の中央部側に位置する方から優先的に基板W1を押圧させながら基板W1、W2を接触させる。このとき、基板接合装置は、押圧部材21521、21522、21523、21524のうちヘッド2142の中央部側に位置する方から優先的に基板W2を押圧させる。これにより、静電チャック1413、1413による保持を解除した後において電極子1413b、1423b間に残る残留静電力による基板W1、W2をステージ141、ヘッド142に密着させる力に対して、溝1413d、1423dから吐出される気体の圧力を有効に作用させることで、基板W1、W2が、ステージ141、ヘッド142に密着させる力に対してフリーな状態となる。そして、この状態で、基板W1、W2の中央部同士を臨界圧力以上の圧力で加圧して接触させることで、ステージ141、ヘッド142への密着力の影響の無い状態で基板W1、W2の中央部から周部に向かって接合を進めさせることができるので、基板W1、W2を歪み無く全面で高い位置精度で接合することができる。
【0084】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は前述の各実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば図23(A)に示すように、ステージ3141、ヘッド3142が、それぞれ、同心円状に延在する互いに径の異なる複数の円弧状のサブ溝34131d、34231dを有する溝3413d、3423dと、溝3413d、3423d内に連通する気体吐出孔3413c、3423cと、を有するものであってもよい。なお、図23(A)において、実施の形態1と同様の構成については図5(A)と同一の符号を付している。ここで、複数のサブ溝34131d、34231dは、図23(B)に示すように、それらの両端部においてステージ4141、ヘッド3142の径方向における一方で隣り合う他のサブ溝34131d、34231dに、ステージ3141、4142の径方向に延在するサブ溝34132d、34232dを介して連通している。
【0085】
また、本変形例に係る静電チャック3413、3423は、それぞれ、第2領域A2において、ステージ4141、ヘッド4142の中央部を中心として円弧状に延在する複数の電極子3413b、3423bと、複数の端子電極3413a、3423aと、を有する。複数の電極子3413b、3423bは、ステージ4141、ヘッド4142の中央部を中心とした同心円状であり且つ径方向において交互に並ぶように配置されている。複数の端子電極3413aは、それぞれ、ステージ4141、ヘッド4142の径方向に延在し、ステージ4141、ヘッド4142の径方向において1つの電極子3423bを挟んで隣り合う2つの電極子3413bそれぞれの一方の端部同士を連結する。また、複数の端子電極3423aも、それぞれ、ステージ4141、ヘッド4142の径方向に延在し、ステージ4141、ヘッド4142の径方向において1つの電極子3413bを挟んで隣り合う2つの電極子3423bそれぞれの一方の端部同士を連結する。
【0086】
或いは、例えば図24(A)に示すように、ステージ4141、ヘッド4142が、それぞれ、螺旋状の溝4413d、4423dと、溝4413d、4423d内に連通する複数の気体吐出孔4413c、4423cと、を有するものであってもよい。なお、図24(A)において、実施の形態1と同様の構成については図5(A)と同一の符号を付している。
【0087】
本変形例に係る静電チャック4413、4423は、図24(B)に示すように、それぞれ、第2領域A2において、ステージ4141、ヘッド4142の中央部を中心として螺旋状に延在する2つの電極子4413b、4423bを有する。2つの電極子4413b、4423bのうちの一方におけるステージ4141、ヘッド4142の径方向における少なくとも一方側には、他方が配置されている。
【0088】
また、例えば図25(A)に示すように、ステージ5141、ヘッド5142における第1領域A1の内側の第2領域A2には、放射状に延在する複数の細長の溝5413d、5423dと、各溝5413d、5423dにおけるステージ5141、ヘッド5142の中央部側の端部の底に開口する気体吐出孔5413c、5423cと、が設けられているものであってもよい。また、図25(B)に示すように、第1領域A1に溝が設けられていないものであってもよい。なお、図25(A)および(B)において、実施の形態1と同様の構成については図5(A)および図7(A)と同一の符号を付している。本変形例に係るステージ5141、ヘッド5142では、第2領域A2において、静電チャック5413、5423が、ステージ5141、ヘッド5142の周方向において隣り合う2つの溝5413d、5423dの間に配設されている。ここで、溝5413d、5423dの幅Wi51は、例えば0.2mm程度に設定される。静電チャック5413、5423は、それぞれ、図26(A)に示すように、ステージ5141、ヘッド5142の周方向に延在する2つの弧状の端子電極5413a、5423aと、ステージ5141、ヘッド5142の径方向に沿って2つの端子電極5413a、5423aそれぞれから他の端子電極5423a、5413aに向かって延在する複数の長尺の電極子5413b、5423bと、を有する。ここで、電極子5413b、5423bは、それぞれ、ステージ5141、ヘッド5142の周縁側ほど幅が広くなるような平面視楔型の形状を有する。また、図26(B)に示すように、静電チャック5413、5423のステージ5141、ヘッド5142の表面との間の幅Wi53は、溝5413d、5423dの深さWi52よりも短く設定されている。
【0089】
実施の形態1では、ステージ141、ヘッド142の第1領域A1に2つの円環状のサブ環状領域A11、A12が設定され、各サブ環状領域A11、A12に静電チャック1411、1421、1412、1422が配設されている例について説明した。但し、第1領域A1に設定されるサブ環状領域の数は2つに限定されるものではない。例えば、第1領域A1に3つ以上の環状のサブ環状領域が設定され、各サブ環状領域に静電チャックが配設されているものであってもよい。
【0090】
実施の形態1では、基板接合装置1が、まず、ステージ141、ヘッド142の第2領域A2に設けられた気体吐出孔1413cから第2領域A2に設けられた溝1413d全体に気体を充填させた後、静電チャック1413、1423による基板W1、W2の保持を解除する例について説明した。但し、これに限らず、例えば基板接合装置1が、静電チャック1413、1423による基板W1、W2の保持を解除した後に、ステージ141、ヘッド142の第2領域A2に設けられた気体吐出孔1413c、1423cから第2領域A2に設けられた溝1413d、1423dに向かって気体を吐出するものであってもよい。このとき、制御部9は、基板W1、W2同士が接触する圧力が基板W1、W2が仮接合される臨界圧力未満となるように気体吐出孔1413c、1423cから気体が吐出されるように気体供給部1492を制御するようにすればよい。これにより、静電チャック1413、1413による保持を解除した後において電極子1413b、1423b間に残る残留静電力による基板W1、W2をステージ141、ヘッド142に密着させる力に対して、気体吐出孔1413c、1423cから溝1413d、1423dを介して吐出される気体の圧力を有効に作用させることで、基板W1、W2が、ステージ141、ヘッド142に密着させる力に対してフリーな状態となる。そして、この状態で、基板W1、W2の中央部同士を臨界圧力以上の圧力で加圧して接触させることで、ステージ141、ヘッド142への密着力の影響の無い状態で基板W1、W2の中央部から周部に向かって接合を進めさせることができるので、基板W1、W2を歪み無く全面で高い位置精度で接合することができる。
【0091】
実施の形態1において、制御部9が、検査装置7の撮像部73により撮像されたアライメントマークの撮像画像を用いずに、水平オフセット量を算出するものであってもよい。この場合、制御部9は、撮像部501A、501B、501Cにより基板W1、W2が離間し且つ基板W1、W2のアライメント終了後にアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cを撮像して得られる撮像画像と、互いに接合された基板W1、W2のアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cを撮像して得られる撮像画像と、に基づいて、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cそれぞれの位置ずれ量および位置ずれ方向を算出する。具体的には、制御部9は、基板W1、W2が離間し且つ基板W1、W2のアライメント終了後にアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cを撮像して得られる撮像画像から位置ずれ量誤差を算出する。そして、制御部9は、互いに接合された基板W1、W2のアライメントマークMK1a、MK1b、MK1c、MK2a、MK2b、MK2cを撮像して得られる撮像画像から算出された位置ずれ量から、前述の位置ずれ量誤差を差し引くことにより、基板W1、W2の接合時の位置ずれ量を算出する。そして、制御部9は、算出した位置ずれ量と位置ずれ方向とに基づいて、基板W1、W2を接合する際の基板W1に対する基板W2の水平方向のオフセット量である水平オフセット量を算出するようにしてもよい。ここで、水平オフセット量は、アライメントマークMK1a、MK2a(MK1b、MK2b、MK1c、MK2c)の組毎に算出される。
【0092】
実施の形態2では、複数の押圧部材21511、21512、21513、21514が、ステージ2141における第2領域A2において中心がステージ2141の中央部に一致する4つの仮想円それぞれに沿って配置され、複数の押圧部材21521、21522、21523、21524が、ヘッド2142における第2領域A2において中心がヘッド2142の中央部に一致する4つの仮想円それぞれに沿って配置されている例について説明した。但し、これに限らず、例えば図27に示すように、ステージ6141に配設される複数(図27では4つ)の押圧部材61511、61512、61513、61514が、互いに内径が異なる円環状であり、ヘッド6142に配設される複数の押圧部材61511、61512、61513、61514も、互いに内径が異なる円環状であってもよい。ここで、4つの押圧部材61511、61512、61513、61514は、ステージ6141における第2領域A2において中心がステージ6141の中央部に一致するように同心円状に配置されている。また、4つの押圧部材61521、61522、61523、61524も、ヘッド6142における第2領域A2において中心がヘッド6142の中央部に一致するように同心円状に配置されている。
【0093】
実施の形態2では、ピエゾアクチュエータ21611、21612、21613、21614が、それぞれ、押圧部材21511、21512、21513、21514を駆動し、ピエゾアクチュエータ21621、21622、21623、21624が、それぞれ、押圧部材21521、21522、21523、21524を駆動する例について説明した。但し、押圧部材21511、21512、21513、21514、21521、21522、21523、21524を駆動する手段は、これに限定されるものではない。例えば図28に示すステージ7141のように、押圧部材71511、71512、71513、71514が、それぞれ、エアシリンダ71611、71612、71613、71614により駆動されるピストンを構成するものであってもよい。また、図28に示すヘッド7142のように、押圧部材71521、71522、71523、71524が、それぞれ、エアシリンダ71621、71622、71623、71624により駆動されるピストンを構成するものであってもよい。ここで、エアシリンダ71611、71612、71613、71614は、空気圧により押圧部材21511、21512、21513、21514を各別にヘッド2142に近づく方向またはヘッド2142から遠ざかる方向へ移動させる。また、エアシリンダ71621、71622、71623、71624は、空気圧により押圧部材21521、21522、21523、21524を各別にステージ2141に近づく方向またはヘッド2142から遠ざかる方向へ移動させる。
【0094】
また、この場合、制御部9が、基板W1が基板W2に接触する圧力が基板W1、W2が仮接合される臨界圧力未満となるように押圧部材21511、21512、21513、21514が基板W1を押圧するようにエアシリンダ71621、71622、71623、71624を制御するものであってもよい。この場合、基板接合装置は、まず、基板W1が基板W2に接触する圧力が基板W1、W2が仮接合される臨界圧力未満となるように押圧部材21511、21512、21513、21514、21521、21522、21523、21524、で基板W1、W2を押圧する。その後、基板接合装置は、チャック駆動部1491からステージ141、ヘッド142の静電チャック1411、1412へ電圧を印加させることにより静電チャック1411、1412に基板W1、W2の周部を保持させた状態で、押圧部1441a、1432aにより基板W1、W2の中央部を押圧するようにすればよい。
【0095】
実施の形態1では、位置測定部500が、3つの撮像部501A、501B、501Cを有する例について説明したが、撮像部の数は3つに限定されない。例えば図29に示す位置測定部8500のように、4つの撮像部501A、501B、501C、501Dと、4つの撮像部501A、501B、501C、501Dそれぞれに対応する4つの反射面6502a、6502b、6502c、6502dが形成された反射部材6502と、を有するものであってもよい。ここで、4つの撮像部501A、501B、501C、501Dは、反射部材6502の周囲において、反射部材6502の周方向で隣り合う2つの光軸JLA、JLB(JLB、JLC、JLC、JLDおよびJLD、JLA)のなす鋭角側の角度DAB、DBC、DCD、DDAが等しくなるように配設されている。
【0096】
各実施の形態の形態において、例えば、ロードロック部85のチャンバ851内または搬送装置86のチャンバ863内へ水ガスを供給する水ガス供給部(図示せず)を備えるものであってもよい。水ガス供給部は、アルゴン(Ar)や窒素(N2)、ヘリウム(He)、酸素(O2)等のキャリアガスと気化した水とを混合させることにより水ガスを生成して供給する。水ガス供給部は、供給弁および供給管を介してロードロック部85のチャンバ851に接続されている。チャンバ851内へ導入される水ガスおよびキャリアガスの流量は、供給弁の開度を制御することにより調整される。なお、水ガス供給部は、水(H2O)の分子やクラスタ等を加速して、基板W1、W2の接合面に向けて照射する構成であってもよい。ここにおいて、水ガス供給部は、加速された水(H2O)粒子を放射する粒子ビーム源から構成されていてもよい。この場合、粒子ビーム源として、例えば超音波発生素子を利用して水ガスを発生させる構成であってもよい。或いは、前述のバブリングや超音波振動などで生成したキャリアガスと水(H2O)との混合ガスを、前述の粒子ビーム源に導入することにより、水の粒子ビームを発生させて、基板W1、W2の接合面へ照射する構成とすればよい。また、基板接合システムは、例えば前述の図12のステップS104の工程において、基板W1、W2がロードロック部85のチャンバ851内に搬送された後、チャンバ851内を大気開放せずに基板W1、W2の接合面を水ガスに曝露する。そして、基板接合システムは、チャンバ851の搬送装置82側のゲート8531を開状態にしてチャンバ851内を大気開放する。また、水ガス供給部の代わりに、ロードロック部85のチャンバ851内または搬送装置86のチャンバ863内へH、OH基を含むガスを供給するガス供給部(図示せず)を備えるものであってもよい。
【0097】
各実施の形態において、基板接合システムが、例えば図30に示すような、基板W1、W2に対して粒子ビームを照射することにより基板W1、W2の接合面を活性化させる粒子ビーム源を有する活性化処理装置10002を備えるものであってもよい。活性化処理装置10002は、チャンバ10212と、基板W1、W2を保持するステージ10210と、粒子ビーム源10061と、ビーム源搬送部10063と、を有する。なお、図31において、各実施の形態と同様の構成については図2と同一の符号を付している。また、活性化処理装置10002は、プラズマチャンバ10213と、誘導コイル215と、高周波電源216と、を有する。更に、活性化処理装置10002は、図31の矢印AR1003に示すようにステージ10210をその厚さ方向に直交する1つの軸周りに回転駆動するステージ駆動部10623を有する。また、ステージ10210は、例えば真空チャックを有し、基板W1、W2が投入された場合、基板W1、W2を吸着保持する。
【0098】
粒子ビーム源10061は、例えば高速原子ビーム(FAB、Fast Atom Beam)源であり、放電室10612と、放電室10612内に配置される電極10611と、ビーム源駆動部10613と、窒素ガスを放電室10612内へ供給するガス供給部10614と、を有する。放電室10612の周壁には、中性原子を放出するFAB放射口10612aが設けられている。放電室10612は、炭素材料から形成されている。ここで、放電室10612は長尺箱状であり、その長手方向に沿って複数のFAB放射口10612aが一直線上に並設されている。ビーム源駆動部10613は、放電室10612内に窒素ガスのプラズマを発生させるプラズマ発生部(図示せず)と、電極10611と放電室10612の周壁との間に直流電圧を印加する直流電源(図示せず)と、を有する。ビーム源駆動部10613は、放電室10612内に窒素ガスのプラズマを発生させた状態で、放電室10612の周壁と電極10611との間に直流電圧を印加する。このとき、プラズマ中の窒素イオンが、放電室10612の周壁に引き寄せられる。このとき、FAB放射口10612aへ向かう窒素イオンは、FAB放射口10612aを通り抜ける際、FAB放射口10612aの外周部の、炭素材料から形成された放電室10612の周壁から電子を受け取る。そして、この窒素イオンは、電気的に中性化された窒素原子となって放電室10612外へ放出される。但し、窒素イオンの一部は、放電室10612の周壁から電子を受け取ることができず、窒素イオンのまま放電室10612の外へ放出される。また、FAB筐体内の一部または全部をSiで形成してもよい。そうすることでArビームと同時にSi粒子が放出されるため、界面にSiが打ち込まれ、打ち込まれたSiにもOH基が付くためより多くのOH基を生成でき、接合強度をアップすることができる。
【0099】
ビーム源搬送部10063は、長尺でありチャンバ10212に設けられた孔10212aに挿通され一端部で粒子ビーム源10061を支持する支持棒10631と、支持棒10631の他端部で支持棒10631を支持する支持体10632と、支持体10632を駆動する支持体駆動部10633と、を有する。また、ビーム源搬送部10063は、チャンバ10212内の真空度を維持するためにチャンバ10212の孔10212aの外周部と支持体10632との間に介在するベローズ10634を有する。支持体駆動部10633は、図31の矢印AR1001に示すように、支持体10632を支持棒10631がチャンバ10212内へ挿脱される方向へ駆動することにより、図31の矢印AR1002に示すようにチャンバ10212内において粒子ビーム源10061の位置を変化させる。ここで、ビーム源搬送部10063は、粒子ビーム源10061を、その複数のFAB放射口10612aの並び方向に直交する方向へ移動させる。
【0100】
また、活性化処理装置10002は、チャンバ10212内へ供給管223Aを介して窒素ガスを供給する窒素ガス供給部220Aを有する。そして、プラズマチャンバ10213内にNガスが導入された状態で、高周波電流が誘導コイル215へ供給されると、プラズマチャンバ10213内にプラズマPLM2が形成される。このとき、プラズマチャンバ10213内で発生したプラズマPLM2に含まれるラジカルのみがプラズマチャンバ10213の下方へダウンフローする。粒子ビームを照射する際、チャンバ10212内の圧力は、例えばターボ分子ポンプを使用して10-3Pa台まで真空引きされるが、ラジカル処理時においては、チャンバ10212内の圧力を数10Pa程度まで上昇させて行う。
【0101】
この活性化処理装置10002は、まず、粒子ビーム源10061を、基板W1、W2の接合面へ粒子ビームを照射させながらX軸方向へ移動させていく。ここで、活性化処理装置10002は、例えば粒子ビーム源10061を+X方向へ移動させながら粒子ビームを基板W1、W2の接合面に照射した後、粒子ビーム源10061を-X方向へ移動させながら基板W1、W2の接合面に粒子ビームを照射する。また、粒子ビーム源10061の移動速度は、例えば1.2乃至14.0mm/secに設定される。また、粒子ビーム源10061への供給電力は、例えば1kV、100mAに設定されている。そして、粒子ビーム源10061の放電室10612内へ導入される窒素ガスまたは酸素ガスの流量は、例えば100sccmに設定される。そして、活性化処理装置10002は、ステージ10210を反転させることにより、基板W1、W2の接合面が鉛直上方を向く姿勢にする。そして、活性化処理装置10002は、基板W1、W2の接合面にプラズマチャンバ10213内で生成された窒素ラジカルを照射する。
【0102】
各実施の形態では、撮像部501A、501B、501Cが、それぞれ撮像素子と同軸照明系とを有するいわゆる反射型である例について説明したが、撮像部の構成は、これに限定されない。例えば撮像部が、それぞれ、基板W1、W2の厚さ方向において基板W1、W2を挟んで対向する位置に配置された撮像素子(図示せず)と光源(図示せず)とを備え、光源から出射し基板W1、W2を透過した光を撮像素子で受光する配置でアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cを撮像するいわゆる透過型の構成であってもよい。
【0103】
また、各実施の形態では、基板接合装置1が基板W1、W2に3つずつ設けられたアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cを3つの撮像部501A、501B、501Cで撮像する例について説明した。但し、撮像部の数は3つに限定されるものではなく、例えば基板接合装置が、2つの撮像部を備え、2つの撮像部で基板W1、W2に2つずつ設けられたアライメントマークを撮像するものであってもよい。この場合、基板接合装置が、2つの撮像部それぞれについて、撮像部を鉛直方向および2つの撮像部それぞれの光軸方向および鉛直方向に直交する水平方向へ移動させる撮像部位置調整部を備えるものであってもよい。この場合、基板接合装置は、2つのアライメントマークが静電チャック1411、1412、1421、1422の複数の電極子1411b、1412b、1421b、1422bの間に位置するようにステージ141を回転させてから基板W1、W2を受け取る。そして、基板接合装置は、2つの撮像部を、基板W1、W2それぞれのアライメントマークの撮像が可能な位置へ移動させてから、2つの撮像部によりアライメントマークを撮像させるようにすればよい。また、基板接合装置が、1つの撮像部と、1つの撮像部を水平方向へ移動させる撮像部位置調整部と、を備えるものであってもよい。また、撮像部が、前述のようないわゆる透過型の構成である場合、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cの位置に応じて、光源を移動させる光源位置調整部(図示せず)備えるものであってもよい。
【0104】
実施の形態1において、気体供給部1492が、イオンを含む気体を供給し、気体吐出孔1411c,1412c,1421c,1422c,1431c,1432cが、イオンを含む気体を吐出するものであってもよい。この場合、気体に含まれるイオンにより静電チャック1411、1421、1412、1422の残留静電力が中和されるので、基板W1、W2がステージ141、ヘッド142から剥がれやすくなるという利点がある。
【0105】
各実施の形態において、基板接合装置1において、アライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cのうちの少なくとも1つが静電チャック1411、1412、1421、1422のいずれかと重なっているか否かを判定するものであってもよい。ここで、本変形例に係る基板接合システムが実行する基板接合工程について、図31を参照しながら詳細に説明する。なお、図31において、実施の形態1と同様の処理については図23と同一の符号を付している。まず、基板接合装置1は、距離測定部1493により、ステージ141、ヘッド142の3箇所におけるステージ141とヘッド142との間の距離を測定する距離測定工程を実行する(ステップS1)。次に、基板接合装置1は、測定したステージ141、ヘッド142の3箇所におけるステージ141とヘッド142との間の距離と基板W1、W2の厚さとに基づいて、基板W1の接合面と基板W2の接合面との間の距離を算出する。そして、基板接合装置1は、算出した距離に基づいて、ヘッド142を鉛直下方へ移動させて基板W1、W2同士を近づける(ステップS2)。続いて、基板接合装置1は、位置測定部500の撮像部501A、501B、501Cから2つの基板W1、W2の撮像画像を取得する。そして、基板接合装置1は、取得した撮像画像に基づいて、位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cのうちの少なくとも1つが静電チャック1411、1412、1421、1422のいずれかと重なっているか否かを判定する(ステップS11001)。ここで、基板接合装置1が、位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2c全てが静電チャック1411、1412、1421、1422と重なっていないと判定すると(ステップS11001:No)、ステップS3以降の処理が実行される。一方、基板接合装置1が、位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2cのうちの少なくとも1つが静電チャック1411、1412、1421、1422と重なっていると判定したとする(ステップS11001:Yes)。この場合、搬送装置84が、基板W1、W2を基板接合装置1から取り出す(ステップS11002)。続いて、基板接合装置1は、ステージ141およびヘッド142を予め設定された角度だけ回転させる(ステップS11003)。その後、搬送装置84が、基板W1、W2を基板接合装置1へ再搬送する(ステップS11004)。そして、再びステップS1の処理が実行される。
【0106】
本構成によれば、搬送装置84が搬送装置撮像部844を備えていない場合であっても、位置ずれ量の算出に用いるアライメントマークMK1a、MK2a、MK1b、MK2b、MK1c、MK2c全てが静電チャック1411、1412、1421、1422と重なっていない状態で基板W1,W2の接合を行うことができる。
【0107】
各実施の形態では、制御部9が、検査装置7の撮像部73により撮像される複数のアライメントマークの組それぞれの位置ずれ量が最小となるように、水平オフセット量を算出する例について説明した。但し、これに限らず、基板W1,W2の少なくとも一方が、チップの基となる複数のチップ形成領域を有する場合、制御部9が、複数のチップ形成領域のうち基板W1、W2の相対的な位置ずれに起因して不良となるチップ形成領域の割合が最小となるように、水平オフセット量を算出するものであってもよい。
【0108】
各実施の形態では、ステージ141、ヘッド142の両方が、それぞれ押圧機構1441、1432を有する例について説明したが、これに限らず、ステージ141、ヘッド142のいずれか一方のみが押圧機構を有するものであってもよい。ここで、ステージ141に設けられた静電チャック1413は、基板W1の自重がステージ141に密着する方向へ作用するためその保持力を低く設定することができる。このため、ステージ141のみに押圧機構1441を設けた場合、基板W1の中央部を押圧する際、静電チャック1431の残留静電力による基板W1のステージ141への貼り付きを抑制することができるので好ましい。
【0109】
各実施の形態および前述の各変形例では、基板接合システムとして、基板W1、W2同士をいわゆる親水化接合する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、基板接合システムが、いわゆる超高真空中において粒子ビームにより基板W1、W2の接合面を活性化処理した直後に、基板W1、W2の接合面同士を接触させることにより接合面に存在するダングリングボンドを介して接合するいわゆる常温接合を実行するものであってもよい。この場合でも、基板接合装置において、基板W1、W2がステージ、ヘッドへの密着力からフリーな状態で基板W1、W2の中央部から周部に向かって接合を進めることができる。従って、基板W1、W2を歪み無く全面で高い位置精度で接合することができる。また、基板接合システムが、基板W1、W2同士をハンダ部分、金属部分を介して接合するいわゆる加熱加圧接合を実行するものであってもよいし、或いは、基板W1、W2間に電圧を印加することにより基板W1、W2同士を接合するいわゆる陽極接合を実行するものであってもよい。
【0110】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、例えばCMOSイメージセンサやメモリ、演算素子、MEMSの製造に好適である。
【符号の説明】
【0112】
1:基板接合装置、2,10002:活性化処理装置、3:洗浄装置、7:検査装置、9:制御部、71,141,210,2141,3141,3210,4141,5141,6141,7141,10210:ステージ、72:光源、73,501A、501B、501C、501D:撮像部、74:水平方向駆動部、82,84,86:搬送装置、83,85:ロードロック部、120,831,843,851,863,10212:チャンバ、120a:窓部、121a,201a:真空ポンプ、121b,201b:排気管、121c,201c:排気弁、141b,142b:貫通孔、142,2142,3142,4142,5142,6142,7142:ヘッド、143,10623:ステージ駆動部、144:ヘッド駆動部、145:XY方向駆動部、146:昇降駆動部、147:回転駆動部、148,1457:圧力センサ、212:処理チャンバ、213,10213:プラズマチャンバ、215:誘導コイル、216:高周波電源、217:バイアス印加部、220A:窒素ガス供給部、220B:酸素ガス供給部、221A:窒素ガス貯留部、221B:酸素ガス貯留部、222A,222B:供給弁、223A,223B:供給管、500,8500:位置測定部、502,8502:反射部材、502a,502b,502c,8502a,8502b,8502c,8502d:反射面、503A,503B,503C:撮像部位置調整部、511A,511B,511C,731:撮像素子、811,812:導入ポート、813:取り出しポート、821,841,861:搬送ロボット、844:搬送装置撮像部、1211,8321,8331,8521,8531,8621:ゲート、1411,1412,1413,1421,1422,1423,3413,3423,4413,4423,5413,5423:静電チャック、1411a,1412a,1413a,1421a,1422a,1423a,3413a,3423a,5413a,5423a:端子電極、1411aa,1421aa:連結部、1411ab,1421ab:屈曲部、1411b,1412b,1413b,1421b、1422b,1423b,3413b,3423b,4413b,4423b,5413b,5423b:電極子、1411c,1421c,3413c,3423c,4413c,4423c,5413c,5423c:気体吐出孔、1411d,1413d,1423d,3413d,3423d,4413d,4423d,5413d,5423d:溝、1441,1442:押圧機構、1441a,1442a:押圧部、1441b,1442b:押圧部駆動部、1456,21611,21612,21613,21614,21621,21622,21623,21624:ピエゾアクチュエータ、1481,1482:基板加熱部、1491:チャック駆動部、1492:気体供給部、1493:距離測定部、10212a:孔、10061:粒子ビーム源、10063:ビーム源搬送部、10611:電極、10612:放電室、10612a:FAB放射口、10613:ビーム源駆動部、10614:ガス供給部、10631:支持棒、10632:支持体、10633:支持体駆動部、10634:ベローズ、21511,21512,21513,21514,21521,21522,21523,21524,61511,61512,61513,61514,61521,61522,61523,61524,71511,71512,71513,71514,71521,71522,71523,71524:押圧部材、34131d,34132d,34231d,34232d:サブ溝、71611,71612,71613,71614,71621,71622,71623,71624:エアシリンダ、A1:第1領域、A2:第2領域、A11,A12:サブ環状領域、GAa,GAb,GAc:撮像画像、JLA,JLB,JLC:光軸、MK1a,MK1b,MK1c,MK2a,MK2b,MK2c:アライメントマーク、P11,P12,P13,P21,P22,P23:部位、PLM,PLM2:プラズマ、VC1,VC2,VC3:仮想円、W1,W2:基板、W1c,W2c:中央部、W1s,W2s:周部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31