(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018545
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20230201BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230201BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20230201BHJP
C23C 16/04 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L21/316 X
C23C16/42
C23C16/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122751
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出貝 求
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良知
(72)【発明者】
【氏名】早稲田 崇之
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA17
4K030BA29
4K030BA35
4K030BA44
4K030BB14
4K030DA02
4K030DA04
4K030DA09
4K030EA04
4K030FA10
4K030GA06
4K030KA41
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB31
5F045AC05
5F045AC07
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5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD04
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5F045AD07
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5F045AD09
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5F045AE23
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5F045EF09
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5F045HA02
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5F058BD05
5F058BD06
5F058BE02
5F058BE10
5F058BF04
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
5F058BJ04
(57)【要約】
【課題】所望の表面上に選択的に膜を形成することが可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)第1表面と第2表面とを有する基板に対してフッ素含有ガスを供給する工程と、(b)(a)を行った後の前記基板に対して酸素及び水素含有ガスと触媒とを供給する工程と、(c)(b)を行った後の前記基板に対して改質剤を供給する工程と、(d)(c)を行った後の前記基板に対して成膜剤を供給する工程と、を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1表面と第2表面とを有する基板に対してフッ素含有ガスを供給する工程と、
(b)(a)を行った後の前記基板に対して酸素及び水素含有ガスと触媒とを供給する工程と、
(c)(b)を行った後の前記基板に対して改質剤を供給する工程と、
(d)(c)を行った後の前記基板に対して成膜剤を供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(a)では、前記第2表面に形成された自然酸化膜を除去し、
(b)では、前記基板の表面に吸着するフッ素を除去し、前記第1表面にOH終端を形成する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
(a)第1表面と第2表面とを有する基板に対してフッ素含有ガスを供給する工程と、
(b)(a)を行った後の前記基板に対して酸素及び水素含有ガスと触媒とを供給する工程と、
(c)(b)を行った後の前記基板に対して改質剤を供給する工程と、
(d)(c)を行った後の前記基板に対して成膜剤を供給する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項4】
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対してフッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して酸素及び水素含有ガスを供給する酸素及び水素含有ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して触媒を供給する触媒供給系と、
前記処理室内の基板に対して改質剤を供給する改質剤供給系と、
前記処理室内の基板に対して成膜剤を供給する成膜剤供給系と、
前記処理室内において、(a)第1表面と第2表面とを有する基板に対して前記フッ素含有ガスを供給する処理と、(b)(a)を行った後の前記基板に対して前記酸素及び水素含有ガスと前記触媒とを供給する処理と、(c)(b)を行った後の前記基板に対して前記改質剤を供給する処理と、(d)(c)を行った後の前記基板に対して前記成膜剤を供給する処理と、を行わせるように、前記フッ素含有ガス供給系、前記酸素及び水素含有ガス供給系、前記触媒供給系、前記改質剤供給系、および前記成膜剤供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項5】
基板処理装置の処理室内において、
(a)第1表面と第2表面とを有する基板に対してフッ素含有ガスを供給する手順と、
(b)(a)を行った後の前記基板に対して酸素及び水素含有ガスと触媒とを供給する手順と、
(c)(b)を行った後の前記基板に対して改質剤を供給する手順と、
(d)(c)を行った後の前記基板に対して成膜剤を供給する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板の表面に露出した材料が異なる複数種類の表面のうち特定の表面上に選択的に膜を成長させて形成する処理(以下、この処理を選択成長または選択成膜ともいう)が行われることがある(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-155452号公報
【特許文献2】特開2020-155607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、選択成長を行う前の基板の表面状態によっては、複数種類の表面のうち特定の表面上に選択的に膜を成長させることが困難となることがある。
【0005】
本開示の目的は、所望の表面上に選択的に膜を形成することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)第1表面と第2表面とを有する基板に対してフッ素含有ガスを供給する工程と、
(b)(a)を行った後の前記基板に対して酸素及び水素含有ガスと触媒とを供給する工程と、
(c)(b)を行った後の前記基板に対して改質剤を供給する工程と、
(d)(c)を行った後の前記基板に対して成膜剤を供給する工程と、
を行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、所望の表面上に選択的に膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一態様における処理シーケンスを示す図である。
【
図5】
図5(a)は、シリコン酸化膜(SiO膜)で構成される第1表面とシリコン窒化膜(SiN膜)で構成される第2表面とを有し、SiN膜の表面に自然酸化膜が形成されたウエハの表面部分を示す断面模式図である。
図5(b)は、
図5(a)の状態からステップAを行うことで、SiN膜の表面から自然酸化膜が除去され、SiO膜の表面にフッ素(F)が吸着した後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。
図5(c)は、
図5(b)の状態からステップBを行うことで、SiO膜の表面に吸着したFが水酸基(OH)に置換された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。
図5(d)は、
図5(c)の状態からステップCを行うことで、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部(M)がSiO膜の表面に結合した後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。
図5(e)は、
図5(d)の状態からステップDを行うことで、SiN膜の表面上に選択的に膜が形成された後のウエハの表面部分を示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、比較例における評価結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例および参考例における評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図4、
図5(a)~
図5(e)を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0012】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0013】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232hが接続されている。ガス供給管232d~232hには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241hおよびバルブ243d~243hがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232hは、例えば、SUS等の金属材料により構成されている。
【0014】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、改質剤が、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、原料が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。原料は、成膜剤の1つとして用いられる。
【0017】
ガス供給管232cからは、酸素(O)及び水素(H)含有ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。O及びH含有ガスは、成膜剤の1つである酸化剤としても用いられる。
【0018】
ガス供給管232dからは、触媒が、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。触媒は、成膜剤の1つとしても用いられる。
【0019】
ガス供給管232eからは、フッ素(F)含有ガスが、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
ガス供給管232f~232hからは、不活性ガスが、それぞれMFC241f~241h、バルブ243f~243h、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0021】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、改質剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、原料供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、O及びH含有ガス供給系が構成される。O及びH含有ガス供給系を、酸化剤供給系とも称する。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、触媒供給系が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、F含有ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232f~232h、MFC241f~241h、バルブ243f~243hにより、不活性ガス供給系が構成される。原料供給系、酸化剤供給系、触媒供給系のそれぞれ或いは全てを成膜剤供給系とも称する。
【0022】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243hやMFC241a~241h等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232hのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232h内への各種物質(各種ガス)の供給動作、すなわち、バルブ243a~243hの開閉動作やMFC241a~241hによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232h等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。
図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0025】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0026】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0027】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0029】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241h、バルブ243a~243h、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241hによる各種物質(各種ガス)の流量調整動作、バルブ243a~243hの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0033】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板を処理する方法、すなわち、基板としてのウエハ200が有する第1表面および第2表面のうち、第2表面上に選択的に膜を形成するための処理シーケンスの例について、主に、
図4、
図5(a)~
図5(e)を用いて説明する。以下の説明では、便宜上、ウエハ200の代表的な例として、第1表面がSiO膜により構成され、第2表面がSiN膜により構成される場合について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0034】
図4に示す処理シーケンスは、
第1表面と第2表面とを有するウエハ200に対してF含有ガスを供給するステップAと、
ステップAを行った後のウエハ200に対してO及びH含有ガスと触媒とを供給するステップBと、
ステップBを行った後のウエハ200に対して改質剤を供給するステップCと、
ステップCを行った後のウエハ200に対して成膜剤を供給するステップDと、
を有する。
【0035】
図4に示すように、ステップDでは、
ウエハ200に対して成膜剤として原料を供給するステップD1と、
ウエハ200に対して成膜剤として酸化剤を供給するステップD2と、
を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行う。
【0036】
ステップD1およびステップD2のうち少なくともいずれかでは、ウエハ200に対して成膜剤として、さらに、触媒を供給するようにしてもよい。
図4では、ステップD1およびステップD2のそれぞれにおいて、ウエハ200に対して成膜剤として、さらに、触媒を供給する例を示している。
【0037】
また、
図4に示す処理シーケンスは、ステップDを行った後のウエハ200に対して熱処理を行うステップEを、さらに有する例を示している。
【0038】
更に、
図4に示す処理シーケンスでは、ステップA,B,Cにおける処理温度(パージを行う際の処理温度も含む)がいずれも同様の温度であり、ステップDにおける処理温度がステップA,B,Cにおける処理温度よりも低温であり、ステップEにおける処理温度がステップA,B,Cにおける処理温度よりも高温である例を示している。生産性の向上の観点からは、ステップA,B,C,Dにおける処理温度は、いずれも同様の温度であることが好ましい。本明細書において、「同様の温度」とは、±5℃以内の温度を意味する。例えば、「ステップAにおける処理温度がステップBにおける処理温度と同様の温度であることが好ましい」とは、ステップAにおける処理温度が、ステップBにおける処理温度に対して、±5℃以内であることが好ましいことを意味する。
【0039】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0040】
F含有ガス→O及びH含有ガス+触媒→改質剤→(原料+触媒→酸化剤+触媒)×n→熱処理
【0041】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0042】
本明細書において用いる「剤」という用語は、ガス状物質および液体状物質のうち少なくともいずれかを含む。液体状物質はミスト状物質を含む。すなわち、改質剤、および成膜剤(原料、酸化剤、触媒)のそれぞれは、ガス状物質を含んでいてもよく、ミスト状物質等の液体状物質を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0043】
本明細書において用いる「層」という用語は、連続層および不連続層のうち少なくともいずれかを含む。例えば、成膜阻害層は、成膜阻害作用を生じさせることが可能であれば、連続層を含んでいてもよく、不連続層を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0044】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0045】
なお、ボート217に装填されるウエハ200は、
図5(a)に示すように、第1表面を構成するSiO膜と第2表面を構成するSiN膜とを有する。すなわち、SiO膜の表面が第1表面となり、SiN膜の表面が第2表面となる。また、ウエハ200の第2表面を構成するSiN膜の表面には、
図5(a)に示すように、自然酸化膜が形成されている。第1表面を構成するSiO膜は、例えば熱酸化膜や化学気相成長法等により形成された酸化膜であり、自然酸化膜に比べ膜密度が高く強固なSi-O結合を多く有する。
【0046】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0047】
(ステップA)
その後、ウエハ200に対してF含有ガスを供給する。
【0048】
具体的には、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へF含有ガスを流す。F含有ガスは、MFC241eにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対してF含有ガスが供給される(F含有ガス供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0049】
後述する処理条件下でウエハ200に対してF含有ガスを供給することにより、
図5(b)に示すように、第2表面であるSiN膜の表面に形成された自然酸化膜を選択的に除去(エッチング)し、SiN膜の表面を露出させることができる。このとき、第1表面であるSiO膜の表面にフッ素(F)が吸着し残留する。
【0050】
本ステップにおいては、SiO膜の表面の一部がごく僅かにエッチングされる場合もあるが、上述のように、SiO膜は自然酸化膜に比べ膜密度が高く強固なSi-O結合を多く有することから、SiO膜のエッチング量(除去量)は、自然酸化膜のエッチング量(除去量)に比べて、遥かに少なくなる。よって、この場合であっても、SiO膜の除去量(エッチング量)を少量に抑えつつ、自然酸化膜の除去を効果的に行うことができる。また、本ステップにおいては、SiN膜の表面の一部にも僅かにFが吸着(残留)する場合があるが、SiN膜の表面に吸着するFの量、密度は、SiO膜の表面に吸着するFの量、密度に比べて、遥かに少なくなる。よって、この場合であっても、SiN膜の表面に吸着するFの影響は極めて少なくなる。
【0051】
ステップAにてF含有ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度:50~200℃、好ましくは70~150℃
処理圧力:10~2000Pa、好ましくは100~1500Pa
F含有ガス供給流量:0.05~1slm、好ましくは0.1~0.5slm
F含有ガス供給時間:10~60分、好ましくは30~60分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):1~10slm、好ましくは2~10slm
が例示される。
【0052】
なお、本明細書における「50~200℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「50~200℃」とは「50℃以上200℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、その物質(ガス)を供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0053】
第2表面であるSiN膜の表面から自然酸化膜を除去し、SiN膜の表面を露出させた後、バルブ243eを閉じ、処理室201内へのF含有ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ不活性ガスを供給する。ノズル249a~249cより供給される不活性ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際における処理温度は、F含有ガスを供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0054】
ステップAにてパージを行う際における処理条件としては、
処理圧力:1~30Pa
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0.5~20slm
不活性ガス供給時間:1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、F含有ガスを供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0055】
F含有ガスとしては、例えば、三フッ化塩素(ClF3)ガス、フッ化塩素(ClF)ガス、フッ化窒素(NF3)ガス、フッ化水素(HF)ガス、フッ素(F2)ガス等を用いることができる。F含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0056】
不活性ガスとしては、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0057】
(ステップB)
ステップAを行った後、ウエハ200に対してO及びH含有ガスと触媒とを供給する。
【0058】
具体的には、バルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へO及びH含有ガス、触媒をそれぞれ流す。O及びH含有ガス、触媒は、それぞれ、MFC241c,241dにより流量調整され、ノズル249c,249aを介して処理室201内へ供給され、処理室201内で混合されて、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対してO及びH含有ガスおよび触媒が供給される(O及びH含有ガス+触媒供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0059】
後述する処理条件下でウエハ200に対してO及びH含有ガスと触媒とを供給することにより、
図5(c)に示すように、ウエハ200の表面(具体的にはSiO膜の表面)に吸着したFを除去し、第1表面であるSiO膜の表面にOH終端を形成することができる。言い換えれば、後述する処理条件下でウエハ200に対してO及びH含有ガスと触媒とを供給することにより、SiO膜の表面に吸着したFがOHへと置換される。SiO膜の表面に吸着したFがOHへと置換される反応は、例えば、以下のような反応式にて示すことができる。ここで、以下の反応式では、O及びH含有ガスとして水蒸気(H
2Oガス)を用い、触媒としてピリジン(C
5H
5N、略称:Py)ガスを用いた場合の例を示している。
【0060】
【0061】
上記反応式に示すように、Fが吸着したSiO膜の表面に存在する「Si-F結合」は、ピリジン存在下のH2Oガスにより、「Si-OH結合」と置き換わる。また、「Si-F結合」から脱離したFは、H2Oガス由来のHと結合し、フッ化水素(HF)ガスとなる。
【0062】
本ステップでは、上述のような反応を生じさせることができ、SiO膜の表面に効果的にOH終端を形成することができる。なお、O及びH含有ガスは、酸化剤として作用することから、本ステップでは、Fが吸着したSiO膜の表面を酸化させることで、SiO膜の表面にOH終端を形成することができるとも言える。また、本ステップでは、O及びH含有ガスと触媒とを供給することで、SiO膜の表面に吸着したFだけでなく、他の表面に吸着したFをも除去することができる。すなわち、本ステップでは、ウエハ200の表面(SiO膜の表面、SiN膜の表面、その他の表面を含む)に吸着するFを除去することが可能となる。
【0063】
また、後述する処理条件下でウエハ200に対してO及びH含有ガスと触媒とを供給することにより、SiN膜の表面の酸化、SiN膜の表面へのOH終端の形成を抑制することができる。これは、後述する処理条件が、ウエハ200の表面に吸着するFを除去しSiO膜の表面にOH終端を形成することはできるが、SiN膜の表面の酸化やSiN膜の表面へのOH終端の形成が抑制されるような、酸化力が比較的小さくなる(弱くなる)処理条件であることによる。これにより、本ステップでは、SiO膜の表面に選択的にOH終端を形成することができる。このように、SiO膜の表面に選択的にOH終端が形成されることで、OH終端が吸着サイトとして機能し、ステップCにおいて、SiO膜の表面への改質剤の吸着を促進させることができる。
【0064】
本ステップにおいては、SiN膜の表面の一部にも僅かにOH終端が形成される場合があるが、SiN膜の表面に形成されるOH終端の量、密度は、SiO膜の表面に形成されるOH終端の量、密度に比べて、遥かに少なくなる。よって、この場合であっても、SiN膜の表面に形成されるOH終端の影響は極めて少なくなる。
【0065】
上述のように、本ステップは、SiN膜の表面へのOH終端の形成が抑制され、SiO膜の表面にOH終端が形成される条件下で行うことが好ましい。また、上述のように、本ステップは、SiN膜の表面の酸化が抑制され、SiO膜の表面にOH終端が形成される条件下で行うことが好ましい。また、上述のように、本ステップは、SiN膜の表面に形成されるOH終端の量が、SiO膜の表面に形成されるOH終端の量よりも少なくなる条件下で行うことが好ましい。これらのような条件下でステップBを行うことにより、SiO膜およびSiN膜のうち、SiO膜の表面にOH終端を選択的に形成することができ、ステップCにおいてSiO膜の表面に選択的に改質剤を吸着させることが可能となる。
【0066】
ステップBにてO及びH含有ガスと触媒とを供給する際における処理条件としては、
処理温度:30~150℃、好ましくは50~100℃
処理圧力:665~26600Pa、好ましくは931~13300Pa、より好ましくは931~1330Pa
O及びH含有ガス供給流量:0.1~3slm、好ましくは0.1~1slm
O及びH含有ガス供給時間:0.5~5時間、好ましくは0.5~3時間
触媒供給流量:0.1~3slm、好ましくは0.1~1slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0067】
本ステップでは、O及びH含有ガスと共に触媒を用いることにより、低温下、低圧下で、SiO膜の表面でのFのOHへの置換レート(酸化レート)を高めることができる。一方で、処理圧力および処理温度のうち少なくともいずれかを高くすることで、触媒の供給を省略することもできる。つまり、ウエハ200に対し、触媒を供給することなく、反応性ガスとしてO及びH含有ガスのみを供給する場合であっても、処理圧力および処理温度のうち少なくともいずれかを高くすることで、SiO膜の表面に吸着したFをOHへと置換させることができる。その場合、例えば、処理圧力を、後述するステップD2における処理圧力以上、好ましくは、ステップD2における処理圧力よりも高くすることが好ましい。また例えば、処理温度を、後述するステップD2における処理温度以上、好ましくは、ステップD2における処理温度よりも高くすることが好ましい。この場合、具体的には、処理圧力を、例えば、13300~66500Pa、好ましくは19950~39900Paとすることができる。また、この場合、処理温度を、例えば、50~200℃、好ましくは70~150℃とすることができる。その他の処理条件は、上述の処理条件と同様とすることができる。
【0068】
第1表面であるSiO膜の表面にOH終端を形成した後、バルブ243d,243dを閉じ、処理室201内へのO及びH含有ガス、触媒の供給を停止する。そして、ステップAにおけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、O及びH含有ガスと触媒とを供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0069】
O及びH含有ガスとしては、例えば、H2Oガス、過酸化水素(H2O2)ガス、水素(H2)ガス+酸素(O2)ガス、H2ガス+オゾン(O3)ガス等を用いることができる。O及びH含有ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0070】
なお、本明細書において「H2ガス+O2ガス」というような2つのガスの併記記載は、H2ガスとO2ガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0071】
触媒としては、例えば、炭素(C)、窒素(N)、及びHを含むアミン系ガスを用いることができる。アミン系ガスとしては、例えば、ピリジン(Py)ガス、アミノピリジン(C5H6N2)ガス、ピコリン(C6H7N)ガス、ルチジン(C7H9N)ガス、ピペラジン(C4H10N2)ガス、ピペリジン(C5H11N)ガス等の環状アミン系ガスや、トリエチルアミン((C2H5)3N、略称:TEA)ガス、ジエチルアミン((C2H5)2NH、略称:DEA)ガス等の鎖状アミン系ガス等を用いることができる。触媒としては、これらの他、例えば、アンモニア(NH3)ガス等を用いることもできる。触媒としては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述するステップDにおいても同様である。
【0072】
(ステップC)
ステップBを行った後、ウエハ200に対して改質剤を供給する。
【0073】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ改質剤を流す。改質剤は、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して改質剤が供給される(改質剤供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0074】
後述する処理条件下でウエハ200に対して改質剤を供給することにより、第1表面であるSiO膜の表面、すなわち、SiO膜の表面に形成されたOH終端に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて、成膜阻害層を形成するようSiO膜の表面を改質させることができる。すなわち、本ステップでは、ウエハ200に対してOH終端と反応する改質剤を供給することにより、OH終端が形成されたSiO膜の表面に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて、成膜阻害層(吸着阻害層)を形成するようにSiO膜の表面を改質させることができる。これにより、
図5(d)に示すように、SiO膜の最表面を、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部(M)により終端させることが可能となる。すなわち、本ステップを行った後のウエハ200におけるSiO膜の最表面は、
図5(d)に示すように、OH終端のOと改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部(M)とが結合した基(OM)にて終端される。
【0075】
本ステップで形成される成膜阻害層は、改質剤由来の残基である、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部(M)を含む。成膜阻害層は、後述するステップDにおいて、SiO膜の表面への原料(成膜剤)の吸着を防ぎ、SiO膜の表面上での成膜反応の進行を阻害(抑制)する。
【0076】
改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部(M)としては、例えば、トリメチルシリル基(-SiMe3)やトリエチルシリル基(-SiEt3)等のトリアルキルシリル基を例示することができる。これらの場合、トリメチルシリル基やトリエチルシリル基のSiが、OH終端のOと結合し、SiO膜の最表面が、メチル基やエチル基などのアルキル基により終端されることとなる。SiO膜の最表面を終端した、メチル基(トリメチルシリル基)やエチル基(トリエチルシリル基)等のアルキル基(アルキルシリル基)は、成膜阻害層を構成し、後述するステップDにおいて、SiO膜の表面への原料(成膜剤)の吸着を防ぎ、SiO膜の表面上での成膜反応の進行を阻害(抑制)することができる。
【0077】
ここで、成膜阻害層(成膜抑制層とも称する)は、成膜阻害作用を有することから、インヒビターと呼ばれることもある。なお、本明細書において用いる「インヒビター」との用語は、成膜阻害層を意味する場合の他、改質剤を意味する場合や、改質剤由来の残基、例えば、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を意味する場合があり、さらには、これら全ての総称として用いる場合もある。
【0078】
なお、本ステップでは、第2表面であるSiN膜の表面の一部に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が吸着することもあるが、その吸着量は僅かであり、第1表面であるSiO膜の表面への吸着量の方が圧倒的に多くなる。このような選択的(優先的)な吸着が可能となるのは、本ステップにおける処理条件を処理室201内において改質剤が気相分解しない条件としているためである。また、SiO膜の表面が、その全域にわたりOH終端されているのに対し、SiN膜の表面の多くの領域がOH終端されていないためである。本ステップでは、処理室201内において改質剤が気相分解しないことから、SiN膜の表面には、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が多重堆積することはなく、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部は、SiO膜およびSiN膜のうち、SiO膜の表面に選択的に吸着し、これによりSiO膜の表面が、選択的に、改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部(M)により終端されることとなる。
【0079】
ステップCにて改質剤を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~500℃、好ましくは室温~250℃
処理圧力:5~2000Pa、好ましくは10~1000Pa
改質剤供給流量:0.001~3slm、好ましくは0.001~0.5slm
改質剤供給時間:1秒~120分、好ましくは30秒~60分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
が例示される。
【0080】
第1表面であるSiO膜の表面に選択的に成膜阻害層を形成した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への改質剤の供給を停止する。そして、ステップAにおけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、改質剤を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0081】
改質剤としては、例えば、1分子中に第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子を1つ以上含む物質を用いることができる。改質剤における第1官能基は、第1表面(例えば、SiO膜の表面)における吸着サイト(例えば、OH終端)への改質剤の化学吸着を可能とする官能基であることが好ましい。第1官能基としては、アミノ基を含むことが好ましく、置換アミノ基を含むことが好ましい。改質剤が、アミノ基(好ましくは置換アミノ基)を含む場合、第1表面への改質剤の化学吸着量を多くすることができる。特に、第1表面への吸着性の観点から、改質剤が有する第1官能基は、全て、置換アミノ基であることが好ましい。
【0082】
置換アミノ基が有する置換基としては、アルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。置換アミノ基が有するアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。置換アミノ基が有するアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。置換アミノ基が有する置換基の数は、1又は2であるが、2であることが好ましい。置換アミノ基が有する置換基の数が2である場合、2つの置換基は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
改質剤における第1官能基の数は、2以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。なお、改質剤が複数の第1官能基を有する場合、それぞれが同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0084】
改質剤における第2官能基は、第1表面の最表面を成膜阻害領域に改質することが可能な官能基であることが好ましい。第2官能基は、化学的に安定な官能基であることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましい。炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の脂肪族炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよい。中でも、炭化水素基としてはアルキル基が好ましい。特に、化学的な安定性が高い観点から、改質剤が有する第2官能基は、全て、アルキル基であることが好ましい。
【0085】
第2官能基としてのアルキル基は、炭素数1~5のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。置換アミノ基が有するアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。置換アミノ基が有するアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0086】
改質剤における第2官能基の数は1以上の整数であればよい。改質剤における第1官能基の数が1である場合、改質剤における第2官能基の数は3であることが好ましい。また、改質剤における第1官能基の数が2である場合、改質剤における第2官能基の数は2であることが好ましい。改質剤が有する複数の第2官能基は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
改質剤において、第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子としては、C原子、シリコン(Si)原子、ゲルマニウム(Ge)原子、4価の金属原子等が挙げられる。ここで、4価の金属原子としては、チタン(Ti)原子、ジルコニウム(Zr)原子、ハフニウム(Hf)原子、モリブデン(Mo)原子、タングステン(W)原子等が挙げられる。なお、第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子は、4価の金属原子の他、4つ以上の配位子と結合可能な金属原子であってもよい。この場合、第2官能基の数を増やすことができ、インヒビターとして強い効果を発揮することもできる。
【0088】
これらの中でも、第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子としては、C原子、Si原子、Ge原子のいずれかが好ましい。これは、第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子として、C原子、Si原子、Ge原子のいずれかを用いる場合、第1表面への改質剤の高い吸着性、および、第1表面への吸着後の改質剤すなわち改質剤由来の残基の高い化学的安定性のうち、少なくともいずれかの特性を得ることができるからである。これらの中でも、第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子としては、Si原子がより好ましい。これは、第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子としてSi原子を用いる場合、第1表面への改質剤の高い吸着性、および、第1表面への吸着後の改質剤すなわち改質剤由来の残基の高い化学的安定性の両方の特性をバランスよく得ることができるからである。第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子には、上述のように、第1官能基及び第2官能基が直接結合しているが、これら以外に、水素(H)原子、または、第3官能基が結合していてもよい。
【0089】
第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子に結合する第3官能基は、第1官能基及び第2官能基として上述された官能基以外の官能基であればよい。第3官能基としては、例えば、C原子、Si原子、Ge原子、4価の金属原子、4つ以上の配位子と結合可能な金属原子、O原子、N原子、およびH原子のうち2つ以上を適宜組み合わせて構成される官能基が挙げられる。
【0090】
改質剤は、1分子中に第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子を1つ以上含むが、1分子中に第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子を2つ以上含んでいてもよい。以降、第1官能基及び第2官能基が直接結合した原子を、便宜上、原子Xとも称する。
【0091】
改質剤は、第1官能基及び第2官能基が直接結合した4価の原子を含む構造を有することが好ましい。中でも、改質剤は、第1官能基及び第2官能基のみが直接結合した4価の原子を含む構造を有することがより好ましい。その中でも、改質剤は、第1官能基及び第2官能基のみが直接結合したSiを1つ含む構造を有することが特に好ましい。すなわち、改質剤は、中心原子としてのSiに、第1官能基及び第2官能基のみが直接結合した構造を有することが特に好ましい。
【0092】
改質剤は、1分子中に1つのアミノ基を含む構造を有することが好ましい。中でも、改質剤は、1分子中に1つのアミノ基と少なくとも1つのアルキル基とを含む構造を有することがより好ましい。その中でも、改質剤は、1分子中に1つのアミノ基と3つのアルキル基とを含む構造を有することが更に好ましい。また、改質剤は、中心原子であるSiに1つのアミノ基が結合した構造を有することが好ましい。中でも、改質剤は、中心原子であるSiに1つのアミノ基と少なくとも1つのアルキル基とが結合した構造を有することがより好ましい。その中でも、改質剤は、中心原子であるSiに1つのアミノ基と3つのアルキル基とが結合した構造を有することが更に好ましい。なお、アミノ基は、上述の通り、置換アミノ基であることが好ましい。置換アミノ基が有する置換基については上述の通りである。
【0093】
改質剤としては、例えば、下記式1で表される化合物を用いることが好ましい。
【0094】
式1 : [R1]n1-(X)-[R2]m1
式1中、R1はXに直接結合する第1官能基を表し、R2はXに直接結合する第2官能基又はH原子を表し、Xは、C原子、Si原子、Ge原子、及び4価の金属原子からなる群より選択される4価の原子を表し、n1は1又は2を表し、m1は2又は3を表す。
【0095】
R1で表される第1官能基は、上述の第1官能基と同義であり、好ましい例も同様である。n1が2である場合、2つあるR1は、それぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。R2で表される第2官能基は、上述の第2官能基と同義であり、好ましい例も同様である。m1が2又は3である場合、2つ又は3つあるR2は、1つ又は2つがH原子であり、残りが第2官能基であってもよく、全てが第2官能基であってもよい。2つ又は3つあるR2の全てが第2官能基である場合、全ての第2官能基は、それぞれ、同じであってもよいし、異なっていてもよい。Xで表される4価の原子としては、Si原子が好ましい。n2としては、1が好ましい。m2としては、3が好ましい。
【0096】
改質剤としては、例えば、(ジメチルアミノ)トリメチルシラン((CH3)2NSi(CH3)3、略称:DMATMS)、(ジエチルアミノ)トリエチルシラン((C2H5)2NSi(C2H5)3、略称:DEATES)、(ジメチルアミノ)トリエチルシラン((CH3)2NSi(C2H5)3、略称:DMATES)、(ジエチルアミノ)トリメチルシラン((C2H5)2NSi(CH3)3、略称:DEATMS)、(トリメチルシリル)アミン((CH3)3SiNH2、略称:TMSA)、(トリエチルシリル)アミン((C2H5)3SiNH2、略称:TESA)、(ジメチルアミノ)シラン((CH3)2NSiH3、略称:DMAS)、(ジエチルアミノ)シラン((C2H5)2NSiH3、略称:DEAS)等を用いることができる。
【0097】
また、改質剤としては、例えば、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン([(CH3)2N]2Si(CH3)2、略称:BDMADMS)、ビス(ジエチルアミノ)ジエチルシラン([(C2H5)2N]2Si(C2H5)2、略称:BDEADES)、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン([(CH3)2N]2Si(C2H5)2、略称:BDMADES)、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン([(C2H5)2N]2Si(CH3)2、略称:BDEADMS)、ビス(ジメチルアミノ)シラン([(CH3)2N]2SiH2、略称:BDMAS)、ビス(ジメチルアミノジメチルシリル)エタン([(CH3)2N(CH3)2Si] 2C2H6、略称:BDMADMSE)、ビス(ジプロピルアミノ)シラン([(C3H7)2N]2SiH2、略称:BDPAS)、ビス(ジプロピルアミノ)ジメチルシラン([(C3H7)2N]2Si(CH3)2、略称:BDPADMS)、ビス(ジプロピルアミノ)ジエチルシラン([(C3H7)2N]2Si(C2H5)2、略称:BDPADES)、(ジメチルシリル)ジアミン((CH3)2Si(NH2)2、略称:DMSDA)、(ジエチルシリル)ジアミン((C2H5)2Si(NH2)2、略称:DESDA)、(ジプロピルシリル)ジアミン((C3H7)2Si(NH2)2、略称:DESDA)、ビス(ジメチルアミノジメチルシリル)メタン([(CH3)2N(CH3)2Si]2CH2、略称:BDMADMSM)、ビス(ジメチルアミノ)テトラメチルジシラン([(CH3)2N]2(CH3)4Si2、略称:BDMATMDS)等を用いることもできる。
【0098】
これらは、いずれも、Siにアミノ基とアルキル基とが直接結合した構造を有する有機系化合物である。これらの化合物を、アミノアルキル化合物またはアルキルアミノ化合物と称することもできる。改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0099】
(ステップD)
ステップCを行った後、ウエハ200に対して成膜剤を供給し、第2表面であるSiN膜の表面上に膜を形成する。すなわち、ウエハ200に対してSiN膜の表面と反応する成膜剤を供給し、SiN膜の表面上に選択的に(優先的に)膜を形成する。具体的には、次のステップD1,D2を順次実行する。なお、以下の例では、成膜剤は、原料、酸化剤、および触媒を含む。ステップD1,D2では、ヒータ207の出力を調整し、ウエハ200の温度を、ステップA,B,Cにおけるウエハ200の温度以下とした状態、好ましくは、
図4に示すように、ステップA,B,Cにおけるウエハ200の温度よりも低くした状態を維持する。
【0100】
[ステップD1]
本ステップでは、ステップCを行った後のウエハ200、すなわち、第1表面であるSiO膜の表面に選択的に成膜阻害層を形成した後のウエハ200に対して、成膜剤として、原料(原料ガス)および触媒(触媒ガス)を供給する。
【0101】
具体的には、バルブ243b,243dを開き、ガス供給管232b,232d内へ原料、触媒をそれぞれ流す。原料、触媒は、それぞれ、MFC241b,241dにより流量調整され、ノズル249b,249aを介して処理室201内へ供給され、処理室201内で混合されて、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して原料および触媒が供給される(原料+触媒供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0102】
後述する処理条件下でウエハ200に対して原料と触媒とを供給することにより、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の、第1表面であるSiO膜の表面への化学吸着を抑制しつつ、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を、第2表面であるSiN膜の表面に選択的に化学吸着させることが可能となる。これにより、SiN膜の表面に選択的に第1層が形成される。第1層は、原料の残基である、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を含む。すなわち、第1層は、原料を構成する原子の少なくとも一部を含む。
【0103】
本ステップでは、触媒を原料とともに供給することにより、上述の反応を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で進行させることができる。このように、第1層の形成を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で行うことにより、SiO膜の表面に形成された成膜阻害層を構成する分子や原子を、SiO膜の表面から消滅(脱離)させることなく維持することが可能となる。
【0104】
また、第1層の形成を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で行うことにより、処理室201内において原料が熱分解(気相分解)、すなわち、自己分解しないようにすることができる。これにより、SiO膜の表面およびSiN膜の表面に、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が多重堆積することを抑制することができ、原料をSiN膜の表面に選択的に吸着させることが可能となる。
【0105】
なお、本ステップでは、SiO膜の表面の一部に原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部が吸着することもあるが、その吸着量は、ごく僅かであり、SiN膜の表面への原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の吸着量よりも遥かに少量となる。このような選択的(優先的)な吸着が可能となるのは、本ステップにおける処理条件を、後述するような低い温度条件であって、処理室201内において原料が気相分解しない条件としているためである。また、SiO膜の表面の全域にわたり成膜阻害層が形成されているのに対し、SiN膜の表面の多くの領域に成膜阻害層が形成されていないためである。
【0106】
ステップD1にて原料および触媒を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~120℃、好ましくは室温~90℃
処理圧力:133~1333Pa
原料供給流量:0.001~2slm
触媒供給流量:0.001~2slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
各ガス供給時間:1~60秒
が例示される。
【0107】
第2表面であるSiN膜の表面に第1層を選択的に形成した後、バルブ243b,243dを閉じ、処理室201内への原料、触媒の供給をそれぞれ停止する。そして、ステップAにおけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、原料および触媒を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0108】
原料としては、例えば、Si及びハロゲン含有ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。Si及びハロゲン含有ガスは、ハロゲンを、Siとハロゲンとの化学結合の形で含むことが好ましい。Si及びハロゲン含有ガスは、更に、Cを含んでいてもよく、その場合、CをSi-C結合の形で含むことが好ましい。Si及びハロゲン含有ガスとしては、例えば、Si、Cl、およびアルキレン基を含み、Si-C結合を有するシラン系ガス、すなわち、アルキレンクロロシラン系ガスを用いることができる。アルキレン基には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が含まれる。アルキレンクロロシラン系ガスは、ClをSi-Cl結合の形で含み、CをSi-C結合の形で含むことが好ましい。
【0109】
Si及びハロゲン含有ガスとしては、例えば、ビス(トリクロロシリル)メタン((SiCl3)2CH2、略称:BTCSM)ガス、1,2-ビス(トリクロロシリル)エタン((SiCl3)2C2H4、略称:BTCSE)ガス等のアルキレンクロロシラン系ガスや、1,1,2,2-テトラクロロ-1,2-ジメチルジシラン((CH3)2Si2Cl4、略称:TCDMDS)ガス、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン((CH3)4Si2Cl2、略称:DCTMDS)ガス等のアルキルクロロシラン系ガスや、1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン(C2H4Cl4Si2、略称:TCDSCB)ガス等のSiとCとで構成される環状構造およびハロゲンを含むガスを用いることができる。また、Si及びハロゲン含有ガスとしては、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等の無機クロロシラン系ガスを用いることもできる。原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0110】
また、原料としては、Siおよびハロゲン含有ガスの代わりに、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4、略称:4DMAS)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H、略称:3DMAS)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2、略称:BDEAS)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2、略称:BTBAS)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2]、略称:DIPAS)ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。原料としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0111】
触媒としては、例えば、上述のステップBで例示した各種触媒と同様の触媒を用いることができる。
【0112】
[ステップD2]
ステップD1が終了した後、ウエハ200、すなわち、第2表面であるSiN膜の表面に選択的に第1層を形成した後のウエハ200に対して、成膜剤として、酸化剤(酸化ガス)および触媒(触媒ガス)を供給する。
【0113】
具体的には、バルブ243c,243dを開き、ガス供給管232c,232d内へ酸化剤、触媒をそれぞれ流す。酸化剤、触媒は、それぞれ、MFC241c,241dにより流量調整され、ノズル249c,249aを介して処理室201内へ供給され、処理室201内で混合されて、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の側方から、ウエハ200に対して酸化剤および触媒が供給される(酸化剤+触媒供給)。このとき、バルブ243f~243hを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0114】
後述する処理条件下でウエハ200に対して酸化剤と触媒とを供給することにより、ステップD1にて第2表面であるSiN膜の表面に形成された第1層の少なくとも一部を酸化させることが可能となる。これにより、SiN膜の表面に、第1層が酸化されてなる第2層が形成される。
【0115】
本ステップでは、触媒を酸化剤とともに供給することにより、上述の反応を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で進行させることが可能となる。このように、第2層の形成を、ノンプラズマの雰囲気下で、また、後述するような低い温度条件下で行うことにより、第1表面であるSiO膜の表面に形成された成膜阻害層を構成する分子や原子を、SiO膜の表面から消滅(脱離)させることなく維持することが可能となる。
【0116】
本ステップでは、酸化剤として、O及びH含有ガスを用いることができる。酸化剤がO及びH含有ガスである場合、ステップBにおいて、O及びH含有ガスと触媒とを供給する条件を、本ステップにおいて、酸化剤(即ち、O及びH含有ガス)と触媒とを供給する条件と異ならせることが好ましい。特に、ステップBにおいて、O及びH含有ガスと触媒とを供給する時間(処理時間)を、本ステップにおいて、酸化剤(即ち、O及びH含有ガス)と触媒とを供給する時間(処理時間)よりも長くすることが好ましい。これにより、ステップAを行った後に、ウエハ200の表面に吸着したFをより効果的に除去し、さらに、SiO膜の表面にOH終端をより効果的に形成することが可能となる。
【0117】
ステップD2にて酸化剤および触媒を供給する際における処理条件としては、
処理温度:室温(25℃)~120℃、好ましくは室温~100℃
処理圧力:133~1333Pa
酸化剤供給流量:0.001~2slm
触媒供給流量:0.001~2slm
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
各ガス供給時間:1~60秒
が例示される。
【0118】
第2表面であるSiN膜の表面に形成された第1層を酸化させて第2層へ変化(変換)させた後、バルブ243c,243dを閉じ、処理室201内への酸化剤、触媒の供給をそれぞれ停止する。そして、ステップAにおけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する(パージ)。なお、本ステップにおいてパージを行う際の処理温度は、酸化剤および触媒を供給する際における処理温度と同様の温度とすることが好ましい。
【0119】
酸化剤としては、例えば、上述のステップAで例示した各種O及びH含有ガスと同様のO及びH含有ガスを用いることができる。また、酸化剤としては、O及びH含有ガスの他、酸素(O)含有ガスを用いることができる。O含有ガスとしては、例えば、O2ガス、オゾンO3ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。酸化剤としては、これらの他、洗浄液、例えば、アンモニア水と過酸化水素水と純水を含む洗浄液を用いるようにしてもよい。すなわち、APM洗浄により酸化を行うようにしてもよい。この場合、ウエハ200を洗浄液に暴露することで酸化を行うことができる。酸化剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0120】
触媒としては、例えば、上述のステップBで例示した各種触媒と同様の触媒を用いることができる。
【0121】
[所定回数実施]
上述のステップD1,D2を非同時に、すなわち、同期させることなく行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、
図5(e)に示すように、ウエハ200の第2表面であるSiN膜の表面上に選択的に(優先的に)膜を形成することができる。例えば、上述の原料、酸化剤、触媒を用いる場合、SiN膜の表面上に膜としてSiOC膜またはSiO膜を選択的に成長させることができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成される第2層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、第2層を積層することで形成される膜の膜厚が所望の膜厚になるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0122】
上述のように、上述のサイクルを複数回繰り返すことで、第2表面であるSiN膜の表面上に選択的に膜を成長させることができる。このとき、第1表面であるSiO膜の表面には、成膜阻害層が形成されていることから、SiO膜の表面上への膜の成長を抑制することができる。すなわち、上述のサイクルを複数回繰り返すことで、SiO膜の表面上への膜の成長を抑制しつつ、SiN膜の表面上への膜の成長を促進させることができる。
【0123】
なお、ステップD1,D2を実施する際、SiO膜の表面に形成された成膜阻害層は、上述のようにSiO膜の表面に維持されることから、SiO膜の表面上への膜の成長を抑制することができる。ただし、何らかの要因により、SiO膜の表面への成膜阻害層の形成が不十分となる場合等においては、SiO膜の表面上への膜の形成、成長が、ごく僅かに生じる場合もある。ただし、この場合であっても、第1表面であるSiO膜の表面上に形成される膜の厚さは、第2表面であるSiN膜の表面上に形成される膜の厚さに比べて、遥かに薄くなる。本明細書において、「選択成長における選択性が高い」とは、第1表面上に膜が全く形成されず、第2表面上のみに膜が形成される場合だけではなく、第1表面上に、ごく薄い膜が形成されるものの、第2表面上にはそれよりも遥かに厚い膜が形成される場合をも含むものとする。
【0124】
ステップA,B,C,Dは、同一処理室内にて(in-situにて)行うことが好ましい。これにより、ステップAによりウエハ200の表面を清浄化した後(自然酸化膜を除去した後)、ウエハ200を大気に曝すことなく、すなわち、ウエハ200の表面を清浄な状態に保持したまま、ステップB,C,Dを行うことができ、SiN膜の表面上への選択的な膜の形成を適正に行うことが可能となる。すなわち、ステップA,B,C,Dは、同一処理室内にて(in-situにて)行うことで、高い選択性をもって選択成長を行うことが可能となる。
【0125】
(ステップE)
ステップDを行った後、ウエハ200、すなわち、第2表面であるSiN膜の表面上に選択的に膜を形成した後のウエハ200に対して熱処理を行う。このとき、処理室201内の温度、すなわち、SiN膜の表面上に選択的に膜を形成した後のウエハ200の温度を、ステップA,B,C,Dにおけるウエハ200の温度以上とするように、好ましくは、ステップA,B,C,Dにおけるウエハ200の温度よりも高くするように、ヒータ207の出力を調整する。
【0126】
ウエハ200に対して熱処理(アニール処理)を行うことで、ステップDにてSiN膜の表面上に形成された膜に含まれる不純物の除去や、欠陥の修復を行うことができる。SiN膜の表面上に形成された膜において、不純物の除去や、欠陥の修復が不要である場合には、アニール処理を、省略することもできる。なお、このステップを、処理室201内へ不活性ガスを供給した状態で行ってもよく、酸化剤(酸化ガス)等の反応性物質を供給した状態で行ってもよい。この場合の不活性ガスや酸化剤(酸化ガス)等の反応性物質をアシスト物質とも称する。
【0127】
ステップEにて熱処理を行う際における処理条件としては、
処理温度:120~1000℃、好ましくは400~700℃
処理圧力:1~120000Pa
処理時間:1~18000秒
アシスト物質供給流量:0~50slm
が例示される。
【0128】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ステップEが完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0129】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0130】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0131】
第1表面と第2表面とを有するウエハ200に対してF含有ガスを供給するステップAと、ステップAを行った後のウエハ200に対してO及びH含有ガスと触媒とを供給するステップBと、を行うことにより、ステップBにおいて、ウエハ200の表面に吸着したFを効率的に除去することが可能となり、さらに、第1表面にOH終端を効率的かつ選択的(優先的)に形成することが可能となる。これにより、ステップCにおいて、第1表面を選択的(優先的)に改質させることができ、ステップDにおいて第2表面上に選択的(優先的)に膜を形成することが可能となる。
【0132】
なお、ステップBを、第2表面へのOH終端の形成が抑制され、第1表面にOH終端が形成される条件下で行うことが好ましい。また、ステップBを、第2表面の酸化が抑制され、第1表面にOH終端が形成される条件下で行うことが好ましい。また、ステップBを、第2表面に形成されるOH終端の量が、第1表面に形成されるOH終端の量よりも少なくなる条件下で行うことが好ましい。これらの条件下でステップBを行うことで、第1表面にOH終端を選択的に形成することができ、ステップCにおいて、第1表面を選択的(優先的)に改質させることができる。これにより、ステップDにおいて、第2表面上に選択的(優先的)に膜を形成することが可能となる。
【0133】
成膜剤が、原料、酸化剤、および触媒を含むことで、ステップDにおいて、低温下で、第2表面上に選択的(優先的)に膜を形成することができ、ステップCにおいて改質剤により改質させた第1表面の最表面が成膜剤により変質(例えば、成膜阻害層の機能が無効化)することを抑制することが可能となる。また、ステップDでは、ウエハ200に対して原料、または、原料と触媒とを供給するステップD1と、ウエハ200に対して酸化剤と触媒とを供給するステップD2と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことが好ましい。このようにすることで、ステップDにおいて、低温下で、第2表面上に選択的(優先的)に膜を形成することができ、ステップCにおいて改質剤により改質させた第1表面の最表面が成膜剤により変質(例えば、成膜阻害層の機能が無効化)することを抑制することが可能となる。
【0134】
ステップD2で用いる酸化剤がO及びH含有ガスである場合に、ステップBにおいて、O及びH含有ガスと触媒とを供給する条件を、ステップD2において、酸化剤(O及びH含有ガス)と触媒とを供給する条件と異ならせることが好ましい。特に、ステップBにおいて、O及びH含有ガスと触媒とを供給する時間を、ステップD2において、酸化剤(O及びH含有ガス)と触媒とを供給する時間よりも長くすることが好ましい。これらのようにすることで、ステップAを行うことでウエハ200の表面に吸着したFをより効果的に除去し、さらに、SiO膜の表面にOH終端をより効果的に形成することが可能となる。
【0135】
ステップA,B,C,Dを、同一処理室内にて(in-situにて)行うことで、ステップAにおいてウエハ200の表面における自然酸化膜を除去した後、ウエハ200を大気に曝すことなく、すなわち、ウエハ200の表面に自然酸化膜がない状態を維持したまま、ステップB,C,Dを行うことができる。これにより、SiN膜の表面上への選択的な膜の形成を適正に行うことが可能となり、高い選択性をもって選択成長を行うことが可能となる。なお、ステップA,B,C,D,Eを、同一処理室内にて(in-situにて)行うことで、上述の効果が得られる他、さらに、SiN膜の表面上に選択的に形成された膜を、大気に曝すことなく、熱処理(アニール処理)することが可能となる。これにより、膜に対するアニール効果を高めることが可能となり、また、アニール処理後の膜を、大気曝露による影響を受けにくい膜とすることが可能となる。
【0136】
第1表面が酸素含有材料(酸化物)を含み、第2表面が酸素非含有材料(非酸化物)を含むウエハ200に対し、ステップA,B,C,Dを行うことで、上述の各種反応を、より適正に生じさせることが可能となり、上述の効果が顕著に得られることとなる。また、第1表面がシリコン及び酸素含有材料(シリコン酸化物)を含み、第2表面が酸素非含有であるシリコン含有材料(シリコン非酸化物)を含むウエハ200に対し、ステップA,B,C,Dを行うことで、上述の各種反応を、さらに適正に生じさせることが可能となり、上述の効果がより顕著に得られることとなる。また、第1表面がシリコン及び酸素含有材料(シリコン酸化物)を含み、第2表面がシリコン及び窒素含有材料(シリコン窒化物)を含むウエハ200に対し、ステップA,B,C,Dを行うことでも、上述の各種反応を、さらに適正に生じさせることが可能となり、上述の効果がより顕著に得られることとなる。
【0137】
ステップAにおけるF含有ガスがHFガスであり、ステップBにおけるO及びH含有ガスがH2Oガスである場合に、上述の自然酸化膜の除去、第1表面へのOH終端の形成等を、より適正に生じさせることが可能となり、上述の効果が顕著に得られることとなる。
【0138】
(4)変形例
本態様における基板処理シーケンスは、以下に示す変形例のように変更することができる。これらの変形例は、任意に組み合わせることができる。特に説明がない限り、各変形例の各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の基板処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0139】
(変形例1)
図4に示す処理シーケンスでは、ステップAを行った後にステップBを行う例について説明したが、ステップBをステップAと同時に行うようにしてもよい。すなわち、ステップBを、上述の態様のようにステップAを行った後に行うようにしてもよいし、本変形例のようにステップAと同時に行うようにしてもよい。ステップBをステップAと同時に行う場合、ウエハ200に対して、F含有ガス、O及びH含有ガス、および触媒を同時に供給することとなる。本変形例では、ステップBをステップAと同時に行うことで、ステップAおよびステップBを行う時間を短縮させることが可能となる。なお、上述の態様のように、ステップBを、ステップAを行った後に行う場合には、ステップAおよびステップBのそれぞれを、より効果的に行うことが可能となる。
【0140】
ステップBをステップAと同時に行う際には、ステップAをステップBよりも先行して開始するようにしてもよい。すなわち、ステップAを開始した後、ステップAを継続している途中に、ステップBを開始するようにしてもよい。この場合、ステップAとステップBとを同時に開始する場合に比べ、ステップAをより効果的に行うことが可能となる。
【0141】
ステップBをステップAと同時に行う際には、ステップAをステップBよりも先行して終了するようにしてもよい。すなわち、ステップAとステップBとを同時に行った後に、ステップBを継続している途中に、ステップAを終了するようにしてもよい。この場合、ステップAとステップBとを同時に終了する場合に比べ、ステップBをより効果的に行うことが可能となる。
【0142】
これらのように、ステップBをステップAと同時に行う場合、少なくとも、ステップBをステップAと同時に行うタイミングまたは期間を有していればよく、ステップAをステップBよりも先行して開始および/または終了するようにしてもよい。
【0143】
(変形例2)
以下に示す処理シーケンスのように、ステップD1では、ウエハ200に対して触媒を供給することなく、反応性ガスとして原料を単独で供給するようにしてもよい。また、ステップD2では、ウエハ200に対して触媒を供給することなく、反応性ガスとして酸化剤を単独で供給するようにしてもよい。ウエハ200に対して原料と触媒とを供給することで、低温下において、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の第2表面への化学吸着を促進させることができる。また、ウエハ200に対して酸化剤と触媒とを供給することで、低温下において酸化レートを高めることができる。しかしながら、原料を構成する分子の分子構造の少なくとも一部の第2表面への化学吸着反応や、酸化レートを、処理温度や処理圧力等の処理条件によって調整する場合等においては、触媒の供給を省略することができる。本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0144】
F含有ガス→O及びH含有ガス+触媒→改質剤→(原料→酸化剤+触媒)×n→熱処理
F含有ガス→O及びH含有ガス+触媒→改質剤→(原料+触媒→酸化剤)×n→熱処理
F含有ガス→O及びH含有ガス+触媒→改質剤→(原料→酸化剤)×n→熱処理
【0145】
(変形例3)
以下に示す処理シーケンスのように、上述の態様におけるステップE(熱処理)を省略するようにしてもよい。第2表面に形成された膜に含まれる不純物等の量が許容範囲内である場合は、ステップEを省略することができる。本変形例においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、ステップEを省略することで、トータルでの処理時間を短縮させることができ、生産性を向上させることが可能となる。
【0146】
F含有ガス→O及びH含有ガス+触媒→改質剤→(原料+触媒→酸化剤+触媒)×n
【0147】
(変形例4)
ウエハ200の表面の吸着サイトを適正化させることだけを目的とした処理を行う場合は、以下に示す処理シーケンスのように、上述の態様におけるステップC,D,Eを省略するようにしてもよい。この場合、半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理工程として、ウエハ200に対してF含有ガスを供給するステップAと、ステップAを行った後のウエハ200に対してO及びH含有ガスと触媒とを供給するステップBと、を行う。本変形例では、ステップAにおいて、ウエハ200の表面に形成された自然酸化膜を除去し、ステップBにおいて、ステップAを行った後にウエハ200の表面に吸着したFを除去し、ウエハ200の表面にOH終端を形成する。本変形例によれば、ステップBにおいて、ステップAによりウエハ200の表面に吸着したFを効率的に除去することができ、さらに、ウエハ200の表面にOH終端を効率的に形成することができる。すなわち、本変形例によれば、ウエハ200の表面の吸着サイトを整え、適正化させることが可能となる。
【0148】
F含有ガス→O及びH含有ガス+触媒
【0149】
本変形例においては、以下に示す処理シーケンスのように、ステップBを行った後のウエハ200に対して成膜剤を供給するステップDをさらに行うことが好ましい。すなわち、本変形例では、ウエハ200に対して、ステップA,B,Dを行うことが好ましい。ステップDでは、ウエハ200に対して、OH終端と反応する成膜剤を供給することで、ウエハ200の表面上に膜を形成することができる。ステップDを行うことで、吸着サイトが適正化された表面を有するウエハ200に対して成膜剤を供給することができ、これにより、ウエハ200の表面上への成膜を適正に行うことが可能となる。結果として、膜とウエハ200の表面との界面特性を向上させることが可能となる。
【0150】
F含有ガス→O及びH含有ガス+触媒→(原料+触媒→酸化剤+触媒)×n
【0151】
本変形例にて用いられる成膜剤は、上述のステップDにて例示した各種成膜剤と同様の成膜剤を用いることができる。特に、成膜剤の1つである原料としては、例えば、アミノシラン系ガスを用いることが好ましい。
【0152】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0153】
例えば、ウエハ200は、第1表面として材質の異なる複数種類の領域を有していてもよいし、第2表面として材質の異なる複数種類の領域を有していてもよい。第1表面および第2表面を構成する領域としては、上述のSiO膜、SiN膜の他、SiOCN膜、SiON膜、SiOC膜、SiC膜、SiCN膜、SiBN膜、SiBCN膜、SiBC膜、Si膜、Ge膜、SiGe膜等の半導体元素を含む膜、TiN膜、W膜等の金属元素を含む膜、アモルファスカーボン膜(a-C膜)の他、単結晶Si(Siウエハ)等であってもよい。自然酸化膜が形成され得る領域であれば、いずれの領域も第2表面として用いることができる。一方で、自然酸化膜が形成され難い領域であれば、いずれの領域も第1表面として用いることができる。その場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0154】
例えば、ステップDでは、SiOC膜やSiO膜だけでなく、例えば、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN膜)、シリコン酸窒化膜(SiON膜)、シリコン硼酸窒化膜(SiBON膜)、シリコン硼酸炭窒化膜(SiBOCN膜)等のシリコン系酸化膜を形成するようにしてもよい。また、ステップDでは、例えば、アルミニウム酸化膜(AlO膜)、チタニウム酸化膜(TiO膜)、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、ジルコニウム酸化膜(ZrO膜)等の金属系酸化膜を形成するようにしてもよい。
【0155】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0156】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールするようにしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0157】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0158】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0159】
上述の態様は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例0160】
<ウエハの準備>
DHF洗浄未実施の、SiO膜の表面とSiN膜の表面とを有するウエハを用意した。このウエハは、DHF洗浄未実施であることから、
図5(a)に示すように、SiN膜の表面に自然酸化膜を有する。
【0161】
<比較例1>
上述の基板処理装置を用い、上記のウエハに対し、上述の態様の処理シーケンスのうち、ステップDを行うことで、ウエハ上にSiOC膜を形成し、比較例1の評価サンプルを作製した。比較例1の評価サンプルを作製する際のステップDにおける処理条件は、上述の態様の処理シーケンスのステップDにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。
【0162】
<比較例2>
上述の基板処理装置を用い、上記のウエハに対し、上述の態様の処理シーケンスのうち、ステップC,Dを行うことで、ウエハ上にSiOC膜を形成し、比較例2の評価サンプルを作製した。比較例2の評価サンプルを作製する際の各ステップにおける処理条件は、上述の態様の処理シーケンスの各ステップにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。
【0163】
<比較例3>
上述の基板処理装置を用い、上記のウエハに対し、上述の態様の処理シーケンスのうち、ステップA,C,Dを行うことで、ウエハ上にSiOC膜を形成し、比較例3の評価サンプルを作製した。比較例3の評価サンプルを作製する際の各ステップにおける処理条件は、上述の態様の処理シーケンスの各ステップにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。
【0164】
比較例1~3の評価サンプルを作製した後、それぞれの評価サンプルにおける、SiO膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、SiN膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、を測定した。その測定結果を
図6に示す。
図6の横軸は、それぞれ、左から順に、比較例1、比較例2、比較例3を示しており、縦軸は各表面上に形成されたSiOC膜の厚さ[Å]を示している。なお、棒グラフにおける、左側の棒はSiO膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さを示しており、右側の棒はSiN膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さを示している。
【0165】
図6より、比較例1~3の評価サンプルは、いずれも、SiO膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、SiN膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、の差が数Å~10数Å程度であり、選択成長における選択性が低いことが分かる。
【0166】
<実施例1>
上述の基板処理装置を用い、上記のウエハに対し、上述の態様の処理シーケンスのうち、ステップA,B,C,Dを行うことで、ウエハ上にSiOC膜を形成し、実施例1の評価サンプルを作製した。実施例1の評価サンプルを作製する際の各ステップにおける処理条件は、上述の態様の処理シーケンスの各ステップにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。
【0167】
<参考例1>
上述の基板処理装置を用い、上記のウエハに対し、上述の態様の処理シーケンスのうち、ステップA,B,C,Dを行うことで、ウエハ上にSiOC膜を形成し、参考例1の評価サンプルを作製した。参考例1の評価サンプルを作製する際のステップA,C,Dにおける処理条件は、上述の態様の処理シーケンスのステップA,C,Dにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。また、参考例1の評価サンプルを作製する際のステップBでは、触媒を供給せず、反応性ガスとしてはO及びH含有ガスのみを供給し、その処理圧力を、ステップD(具体的には、ステップD2)における処理圧力よりも高くした。具体的には、処理圧力を13300~66500Paの範囲内の所定の圧力とした。ステップBにおける処理圧力以外の他の処理条件は、上述の態様の処理シーケンスのステップBにおける処理条件の範囲内の所定の条件とした。
【0168】
実施例1、参考例1の評価サンプルを作製した後、それぞれの評価サンプルにおける、SiO膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さとSiN膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、を測定した。その測定結果を
図7に示す。
図7の横軸は、それぞれ、左から順に、実施例1、参考例1を示しており、縦軸は各表面上に形成されたSiOC膜の厚さ[Å]を示している。なお、棒グラフにおける、左側の棒はSiO膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さを示しており、右側の棒はSiN膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さを示している。
【0169】
図7より、実施例1の評価サンプルは、SiO膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、SiN膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、の差が80Å程度あり、選択成長における選択性が非常に高いことが分かる。また、参考例1の評価サンプルも、SiO膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、SiN膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さと、の差が60Å程度あり、選択成長における選択性が高いことが分かる。なお、実施例1および参考例1のいずれの場合も、ステップDにおけるサイクル数を、SiO膜の表面上に形成されたSiOC膜の厚さ分だけ減らすことで、SiO膜の表面上に形成されるSiOC膜の厚さをゼロにすることが可能であり、SiO膜とSiN膜のうちSiN膜上に、選択的に、SiOC膜を形成することができることが分かる。
【0170】
以下、本開示の望ましい形態について付記する。
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)第1表面と第2表面とを有する基板に対してフッ素含有ガスを供給する工程と、
(b)(a)を行った後の前記基板に対して酸素及び水素含有ガスと触媒とを供給する工程と、
(c)(b)を行った後の前記基板に対して改質剤を供給する工程と、
(d)(c)を行った後の前記基板に対して成膜剤を供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0171】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
(a)では、前記第2表面に形成された自然酸化膜を除去し、
(b)では、前記基板の表面に吸着するフッ素を除去し、前記第1表面にOH終端を形成する。
【0172】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、
(b)を、前記第2表面へのOH終端の形成が抑制され、前記第1表面にOH終端が形成される条件下で行う。
【0173】
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)を、前記第2表面の酸化が抑制され、前記第1表面にOH終端が形成される条件下で行う。
【0174】
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)を、前記第2表面に形成されるOH終端の量が、前記第1表面に形成されるOH終端の量よりも少なくなる条件下で行う。
【0175】
(付記6)
付記1~5のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)では、前記第1表面に前記改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて成膜阻害層を形成するよう前記第1表面を改質させる。好ましくは、(c)では、OH終端と反応する改質剤を供給し、前記第1表面に選択的(優先的)に前記改質剤を構成する分子の分子構造の少なくとも一部を吸着させて成膜阻害層を形成するよう前記第1表面を改質させる。
【0176】
(付記7)
付記1~6のいずれか1項に記載の方法であって、
(d)では、前記第2表面上に膜を形成する。好ましくは、(d)では、前記第2表面と反応する成膜剤を供給し、前記第2表面上に選択的(優先的)に膜を形成する。
【0177】
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の方法であって、
前記成膜剤は、原料、触媒、および酸化剤を含む。
【0178】
(付記9)
付記8に記載の方法であって、
(d)では、(d1)前記基板に対して前記原料、または、前記原料と前記触媒とを供給する工程と、(d2)前記基板に対して前記酸化剤と前記触媒とを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数行う。
【0179】
(付記10)
付記9に記載の方法であって、
前記酸化剤は、酸素及び水素含有ガスであり、
(b)において、前記酸素及び水素含有ガスと前記触媒とを供給する条件を、
(d2)において、前記酸化剤と前記触媒とを供給する条件と異ならせる。
【0180】
(付記11)
付記9または10に記載の方法であって、
前記酸化剤は、酸素及び水素含有ガスであり、
(b)において、前記酸素及び水素含有ガスと前記触媒とを供給する時間を、
(d2)において、前記酸化剤と前記触媒とを供給する時間よりも長くする。
【0181】
(付記12)
付記1~11のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)、(b)、(c)、および(d)を、同一処理室内にて(in-situにて)行う。
【0182】
(付記13)
付記1~12のいずれか1項に記載の方法であって、
(b)を、(a)と同時および(a)を行った後のうち少なくともいずれかに行う。
【0183】
(付記14)
付記1~13のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)を(b)よりも先行して開始する。
【0184】
(付記15)
付記1~14のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)を(b)よりも先行して終了する。
【0185】
(付記16)
付記1~15のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1表面は酸素含有材料(酸化物)を含み、前記第2表面は酸素非含有材料(非酸化物)を含む。例えば、前記第1表面はシリコン及び酸素含有材料(シリコン酸化物)を含み、前記第2表面は酸素非含有であるシリコン含有材料(シリコン非酸化物)を含む。例えば、前記第1表面はシリコン及び酸素含有材料(シリコン酸化物)を含み、前記第2表面はシリコン及び窒素含有材料(シリコン窒化物)を含む。
【0186】
(付記17)
付記1~16のいずれか1項に記載の方法であって、
前記フッ素含有ガスはフッ化水素ガス(HFガス)であり、前記酸素及び水素含有ガスは水蒸気(H2Oガス)である。
【0187】
(付記18)
本開示の他の態様によれば、
(a)基板に対してフッ素含有ガスを供給する工程と、
(b)(a)を行った後の前記基板に対して酸素及び水素含有ガスと触媒とを供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0188】
(付記19)
付記18に記載の方法であって、
(d)(b)を行った後の前記基板に対して成膜剤を供給する工程をさらに有する。
【0189】
(付記20)
付記19に記載の方法であって、
(a)では、基板の表面に形成された自然酸化膜を除去し、
(b)では、前記基板の表面に吸着するフッ素を除去し、前記基板の表面にOH終端を形成し、
(d)では、OH終端と反応する前記成膜剤を供給することで、前記基板上に膜を形成する。
【0190】
(付記21)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対してフッ素含有ガスを供給するフッ素含有ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して酸素及び水素含有ガスを供給する酸素及び水素含有ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して触媒を供給する触媒供給系と、
前記処理室内の基板に対して改質剤を供給する改質剤供給系と、
前記処理室内の基板に対して成膜剤を供給する成膜剤供給系と、
前記処理室内において、付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記フッ素含有ガス供給系、前記酸素及び水素含有ガス供給系、前記触媒供給系、前記改質剤供給系、および前記成膜剤供給系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0191】
(付記22)
本開示のさらに他の態様によれば、
付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。