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特開2023-18615貼り合わせ基板の製造方法、貼り合わせ基板、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、及び、液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018615
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】貼り合わせ基板の製造方法、貼り合わせ基板、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、及び、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230201BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20230201BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/16 305
B41J2/16 503
B41J2/16 517
H05K3/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167354
(22)【出願日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2021122522
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】豊田 義征
(72)【発明者】
【氏名】三輪 圭史
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF93
2C057AG12
2C057AG44
2C057AG82
2C057AG84
2C057AN01
2C057AP02
2C057AP24
2C057AP51
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】外部端子と接触する接触端子を基板端部に備える貼り合わせ基板を製造する場合において、接触端子の接触不良の発生を抑制する。
【解決手段】第一母基板100'と第二母基板200'とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、貼り合わせ母基板の分割ライン上における第一母基板の一部を欠落させる欠落工程と、分割ラインに沿って貼り合わせ母基板を分割する工程と、を含む、外部端子と接触する接触端子115を基板端部に備えた貼り合わせ基板を製造する製造方法であって、保護層を形成するための保護層材料を付与する付与工程を欠落工程後に実施し、分割ライン上における第一母基板と第二母基板との隙間を介して第一母基板の欠落部分と接触端子とが互いに連通する連通路内に、保護層材料の通過を阻止する構造体250を形成する構造体形成工程を有する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板を含む第一母基板と第二基板を含む第二母基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、
前記第一母基板と前記第二母基板とを貼り合わせた貼り合わせ母基板の分割ライン上における前記第一母基板の一部を欠落させる欠落工程と、
前記分割ラインに沿って前記貼り合わせ母基板を分割して、前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板を該貼り合わせ母基板から切り離す切り離し工程と、を含む、
前記貼り合わせ基板を製造する製造方法であって、
前記貼り合わせ基板は、外部端子と接触する接触端子を基板端部に備えるものであり、
前記貼り合わせ母基板に保護層を形成するための保護層材料を付与する付与工程を、前記欠落工程後に実施し、
前記分割ライン上における前記第一母基板と前記第二母基板との隙間を介して、前記欠落工程による前記第一母基板の欠落部分と前記接触端子とが互いに連通する連通路内に、前記保護層材料の通過を阻止する構造体を形成する構造体形成工程を有する、ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、
前記保護層材料は、前記第一基板及び前記第二基板を被覆する接液膜を形成するための材料であることを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法において、
前記構造体は、前記分割ラインに沿った方向の長さが10μm以上100μm以下の範囲内であることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記構造体形成工程は、前記分割ライン以外の箇所で前記第二基板に形成される構成部と一緒に前記構造体を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製造方法において、
前記構造体形成工程は、前記分割ライン以外の箇所で前記第一基板に形成される構成部と一緒に前記構造体を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項6】
第一基板と第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板であって、
外部端子と接触する接触端子を基板端部に備え、
前記第一基板及び前記第二基板は、保護層材料に基づく保護層を有し、
前記第一基板を含む第一母基板と前記第二基板を含む第二母基板とを貼り合わせた貼り合わせ母基板から前記貼り合わせ基板を切り離すための分割ライン上における前記第一母基板の一部が欠落しており、
前記分割ライン上における前記第一母基板と前記第二母基板との隙間を介して、前記第一基板の欠落部分と前記接触端子とが互いに連通する連通路内に構造体を有することを特徴とする貼り合わせ基板。
【請求項7】
第一基板と第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板であって、
外部端子と接触する接触端子を基板端部に備え、
前記第一基板及び前記第二基板は、保護層材料に基づく保護層を有し、
前記第一基板側から見た平面視において、前記貼り合わせ基板の長手方向における端部では前記第二基板が露出し、
前記第二基板の前記露出部から前記基板の短手方向の端部までの間に、前記第一基板と前記第二基板とを繋ぐ構造体を有することを特徴とする貼り合わせ基板。
【請求項8】
第一基板と第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板であって、
外部端子と接触する接触端子を基板端部に備え、
前記第一基板及び前記第二基板は、保護層材料に基づく保護層を有し、
前記第二基板側から見た平面視において、前記貼り合わせ基板の長手方向における端部では前記第一基板が露出し、
前記第一基板の前記露出部から前記基板の短手方向の端部までの間に、前記第一基板と前記第二基板とを繋ぐ構造体を有することを特徴とする貼り合わせ基板。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板において、
前記保護層は、前記第一基板及び前記第二基板を被覆する接液膜であることを特徴とする貼り合わせ基板。
【請求項10】
請求項6乃至9のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板において、
前記構造体は、前記分割ラインに沿った方向又は前記短手方向の長さが10μm以上100μm以下の範囲内であることを特徴とする貼り合わせ基板。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板において、
前記構造体は、前記分割ライン以外の箇所で前記第二基板に形成される構成部と同じ材料で形成されていることを特徴とする貼り合わせ基板。
【請求項12】
請求項6乃至11のいずれか1項に記載の貼り合わせ基板を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項12に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項14】
請求項13に記載の液体吐出ユニットにおいて、
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構のうちの少なくとも1つと、前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項15】
請求項12に記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項13若しくは14に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り合わせ基板の製造方法、貼り合わせ基板、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、及び、液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第一母基板と第二母基板とを貼り合わせた貼り合わせ母基板を分割ラインに沿って分割して、第一基板と第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板を貼り合わせ母基板から切り離す切り離し工程を含む、貼り合わせ基板を製造する製造方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、接合基板(貼り合わせ母基板)を分割する分割工程(切り離し)を経て、第一基板と第二基板とが接合された個別接合基板(貼り合わせ基板)を製造する製造方法が開示されている。この方法では、分割工程で2つの母基板を個々の基板に分割し易くするために、分割工程の前に、個々の第一基板の境界である分割ラインのうちの一部を第一母基板から除去する除去工程(欠落工程)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部端子と接触する接触端子を基板端部に備える貼り合わせ基板を製造する場合、貼り合わせ母基板を分割しやすくするために分割ラインに沿って第一基板を欠落させる欠落工程を実施すると、接触端子の接触不良を引き起こすおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、第一基板を含む第一母基板と第二基板を含む第二母基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記第一母基板と前記第二母基板とを貼り合わせた貼り合わせ母基板の分割ライン上における前記第一母基板の一部を欠落させる欠落工程と、前記分割ラインに沿って前記貼り合わせ母基板を分割して、前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板を該貼り合わせ母基板から切り離す切り離し工程と、を含む、前記貼り合わせ基板を製造する製造方法であって、前記貼り合わせ基板は、外部端子と接触する接触端子を基板端部に備えるものであり、前記貼り合わせ母基板に保護層を形成するための保護層材料を付与する付与工程を、前記欠落工程後に実施し、前記分割ライン上における前記第一母基板と前記第二母基板との隙間を介して、前記欠落工程による前記第一母基板の欠落部分と前記接触端子とが互いに連通する連通路内に、前記保護層材料の通過を阻止する構造体を形成する構造体形成工程を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外部端子と接触する接触端子を基板端部に備える貼り合わせ基板を製造する場合、接触端子の接触不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態における液体吐出ヘッドの内部構成を示す部分破断した斜視図。
図2】同液体吐出ヘッドを構成するアクチュエータ基板の上面図。
図3図2中A-A'における液体吐出ヘッドの断面図。
図4図2中C-C'における液体吐出ヘッドの断面図。
図5】下部電極を個別電極層とし、上部電極を共通電極層とした圧電素子の変形例を示す断面図。
図6】(a)~(d)は、同液体吐出ヘッドの製造工程の前段部分を説明するため、ノズル孔の並び方向に対して直交する断面を示す断面図。
図7】(a)~(c)は、同液体吐出ヘッドの製造工程の中段部分を説明するため、ノズル孔の並び方向に対して直交する断面を示す断面図。
図8】(a)~(d)は、同液体吐出ヘッドの製造工程の後段部分を説明するため、ノズル孔の並び方向に対して直交する断面を示す断面図。
図9】(a)は、アクチュエータ基板を含む第一シリコン基板を模式的に示す平面図。(b)は、保持基板200を含む第二シリコン基板を模式的に示す平面図。
図10】第一シリコン基板上に形成される1つのアクチュエータ基板を拡大して模式的に示した平面図。
図11】(a)は、第一シリコン基板と第二シリコン基板とを貼り合わせた貼り合わせシリコン基板を模式的に示す平面図。(b)は、(a)の貼り合わせシリコン基板の部分拡大図。
図12】(a)は、比較例1における貼り合わせシリコン基板を分割ライン上のチップ短辺に沿って切断したときの断面図。(b)は、同貼り合わせシリコン基板を分割ライン上のチップ長辺に沿って切断したときの一部断面図である。
図13】(a)は、実施形態における貼り合わせシリコン基板を分割ライン上のチップ短辺に沿って切断したときの断面図。(b)は、同貼り合わせシリコン基板を分割ライン上のチップ長辺に沿って切断したときの一部断面図である。
図14】(a)は、実施形態の他の例における貼り合わせシリコン基板を分割ライン上のチップ短辺に沿って切断したときの断面図。(b)は、同貼り合わせシリコン基板を分割ライン上のチップ長辺に沿って切断したときの一部断面図である。
図15】(a)は、比較例2における貼り合わせシリコン基板を模式的に示す平面図。(b)は、(a)の貼り合わせシリコン基板の部分拡大図。
図16】(a)は、比較例2における貼り合わせシリコン基板を分割ライン上のチップ短辺に沿って切断したときの断面図。(b)は、同貼り合わせシリコン基板を分割ライン上のチップ長辺に沿って切断したときの一部断面図である。
図17】液体を吐出する装置の一例を示す要部平面説明図。
図18】液体吐出ユニットの一例を示す要部側面説明図。
図19】液体吐出ユニットの他の例を示す要部平面説明図。
図20】液体吐出ユニットの更に他の例を示す正面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、液体を吐出する装置である画像形成装置としてのインクジェット記録装置の液体吐出ヘッドにおける電気機械変換基板を製造するための貼り合わせ基板に適用した一実施形態について説明する。
【0009】
まず、液体吐出ヘッドの構成について説明する。
図1は、本実施形態の液体吐出ヘッドの内部構成を示す部分破断した斜視図である。
図2は、液体吐出ヘッドを構成するアクチュエータ基板の上面図である。
図3は、図2中A-A'における液体吐出ヘッドの断面図である。
図4は、図2中C-C'における液体吐出ヘッドの断面図である。
なお、図2では、説明のため、アクチュエータ基板上に接着される保持基板200が取り除かれた状態になっている。
【0010】
本実施形態の液体吐出ヘッドは、主に、第一基板によって形成されるアクチュエータ基板100と、第二基板によって形成される保持基板200と、ノズル基板300とから構成されている。アクチュエータ基板100は、変位板としての振動板102の素子取付面(図中上面)上に、液体吐出エネルギーを発生させる電気機械変換素子としての圧電素子101を備えている。本実施形態における圧電素子101は、図3に示すように、下部電極である共通電極層101-1と上部電極である個別電極層101-2との間に圧電体層101-3が挟まれた構成となっている。ただし、図5に示すように、下部電極を個別電極層101-2とし、上部電極を共通電極層101-1とした圧電素子であってもよい。
【0011】
また、アクチュエータ基板100は、振動板102の素子取付面とは反対側の面(図中下面)に隔壁部103を備えている。振動板102と隔壁部103とノズル基板300によって囲まれる空間が加圧液室104となる。また、アクチュエータ基板100により、流体抵抗部105及び共通液室106も形成される。
【0012】
保持基板200は、インクカートリッジからのインクを供給するインク供給口を備えており、アクチュエータ基板100に接着されることにより、共通インク流路202と、アクチュエータ基板100の振動板102が撓んで変位できる空間を形成する凹部203とを形成する。保持基板200は、シリコンエッチング、プラスチック成型品等により形成できる。
【0013】
ノズル基板300は、個々の加圧液室104に対応した位置にノズル孔301が形成されている。ノズル基板300は、例えばSUSからなる板に対して、パンチ加工、エッチング、シリコンエッチング、ニッケル電気鋳造、樹脂レーザー加工などを施すことにより形成されたものを用いることができる。
【0014】
本実施形態の液体吐出ヘッドは、各加圧液室104内にインクを満たした状態で、制御部の制御の下、駆動IC120から駆動電圧信号を各個別電極層101-2に印加する。この駆動電圧信号としては、発振回路により生成した20[V]のパルス電圧を用いることができる。このような電圧パルスを印加することにより、圧電体層101-3は、圧電効果により圧電体層101-3そのものが振動板102と平行方向に縮む。これにより、振動板102が加圧液室104側へ凸になるように撓む結果、加圧液室104内の圧力が急激に上昇し、加圧液室104に連通するノズル孔301からインクが吐出される。
【0015】
パルス電圧が印加された後は、縮んだ圧電体層101-3が元に戻り、これに伴って撓んだ振動板102も元の位置に戻る。このため、加圧液室104内が共通液室106内に比べて負圧となり、インクカートリッジからインク供給口を介して供給されているインクが共通インク流路202、共通液室106から流体抵抗部105を介して加圧液室104へ供給される。これを繰り返すことにより、インクの液滴を連続的に吐出でき、液体吐出ヘッドに対向して配置される記録材に画像を形成する。
【0016】
次に、本実施形態における液体吐出ヘッドの製造方法について説明する。
図6図8は、本実施形態の液体吐出ヘッドの製造工程を説明するため、ノズル孔の並び方向に対して直交する断面を示す断面図である。
【0017】
アクチュエータ基板100の基材としては、第一母基板としてのシリコン単結晶基板(第一シリコン基板)を用いることが好ましく、通常100~600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種類あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本実施形態では、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を使用する。また、加圧液室104を作製する段階では、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。異方性エッチングとは、結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えば、KOH等のアルカリ溶液に浸漬させる異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができ、より剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができる。そのため、(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。ただし、この場合、マスク材であるSiOもエッチングされてしまうので、この点の留意が必要である。
【0018】
はじめに、図6(a)に示すように、このシリコン単結晶基板上に振動板102となる膜を成膜する。振動板102は、圧電素子101によって発生した力を受けて変形を繰り返すため、これに耐えうる十分な強度を有したものであることが好ましい。材料としては、Si、SiO、SiをCVD法により作製したものが挙げられる。また、振動板102は、これに接合される個別電極層101-2や圧電体層101-3の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、本実施形態では、圧電体層101-3としてPZTが使用されることから、その線膨張係数である8×10-6[1/K]に近い線膨張係数として、5×10-6[1/K]~10×10-6[1/K]の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには7×10-6[1/K]~9×10-6[1/K]の線膨張係数を有した材料がより好ましい。具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等であり、これらをスパッタ法もしくは、Sol-gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。膜厚としては、0.1~10μmが好ましく、0.5~3μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと、加圧液室104の加工が難しくなり、この範囲より大きいと振動板102が変形変位しにくくなり、インク滴の吐出が不安定になりやすい。
【0019】
次に、このようにして成膜した振動板102上には、共通電極層101-1が成膜される。共通電極層101-1は、金属膜単層もしくは金属膜と酸化物膜とからなる複数層であることが好ましく、いずれの場合でも、振動板102と金属膜との間に密着層を入れて剥がれ等を抑制することが好ましい。
【0020】
密着層としては、Tiをスパッタ成膜後、RTA(rapid thermal annealing)装置を用いて、650~800℃、1~30分、O雰囲気でチタン膜を熱酸化し、チタン膜を酸化チタン膜にする。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいが、チタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がチタン酸化膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。またTi以外の材料としては、Ta、Ir、Ru等の材料でも好ましい。膜厚としては、10nm~50nmが好ましく、15nm~30nmがさらに好ましい。この範囲以下の場合においては、密着性に懸念があるのと、この範囲以上になってくるとその上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくる。
【0021】
また、共通電極層101-1を作成するときの金属膜としては、従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては十分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金-ロジウムなどの白金族元素や、これらの合金膜を用いてもよい。また、白金を使用する場合には、下地(特にSiO)との密着性が悪いため、上述した密着層を先に積層しておくことが好ましい。作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80~200nmが好ましく、100~150nmがさらに好ましい。この範囲より薄い場合においては、共通電極として十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。また、この範囲より厚い場合には、白金族元素の高価な材料を使用する場合においては、コストアップとなる点、白金を材料とした場合においては膜厚を厚くしていったときに表面粗さが大きくなり、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出に十分な変位が得られない点が、不具合として発生する。
【0022】
共通電極層101-1を作成するときの金属酸化膜としては、材料として、SrRuOを用いることが好ましい。これ以外でも、Sr(1-x)Ru(1-y)で記述されるような材料も挙げられる(A=Ba,Ca、B=Co,Ni、x,y=0~0.5)。成膜方法はスパッタ法を採用できる。スパッタ条件によってSrRuO薄膜の膜質が変わるが、特に結晶配向性を重視し、金属膜で用いるPt(111)にならってSrRuO膜についても(111)で配向させるために、成膜温度については500℃以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
【0023】
Pt(111)上に作製されるSrRuO薄膜の結晶性については、PtとSrRuOで格子定数が近いため、通常の2θ/θ測定では、SrRuO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい、判別が難しい。Ptについては、消滅則の関係から、Psi方向を35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。そのため、Psi方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することで、SrRuOが(111)に優先配向しているかを確認することができる。2θ=32°に固定してPsiを振ったとき、Psi=0°では、SrRuO(110)ではほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られることから、本実施形態の成膜条件にて作製したものについては、SrRuOが(111)で配向していることが確認された。また、このように作製されたSrRuO膜については、Psi=0°のときにSrRuO(110)の回折強度が見られる。
【0024】
圧電素子101を連続変位させたときに、一定駆動後の変位量が、初期変位量に比べてどのくらい劣化したかを見積もったところ、PZTの配向性が非常に影響しており、(110)では変位劣化抑制において不十分である。さらに、SrRuO膜の表面粗さを見たとき、成膜温度が影響し、室温から300℃では表面粗さが非常に小さく2nm以下になる。この場合、SrRuO膜の表面粗さとしては非常にフラットにはなっているが、結晶性が十分でなく、その後成膜した圧電素子101の初期変位量や連続駆動後の変位量劣化については十分な特性が得られない。表面粗さとしては、4nm~15nmになっていることが好ましく、6nm~10nmがさらに好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。したがって、良好な結晶性や表面粗さを得るためには、成膜温度としては500℃~700℃、好ましくは520℃~600℃の範囲で成膜を実施するのがよい。なお、表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)により測定される表面粗さ(平均粗さ)を指標としたものである。
【0025】
SrRuO膜の成膜後のSrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、共通電極層101-1として十分な導電性が得られなくなる。また、SrRuO膜の膜厚は、40nm~150nmが好ましく、50nm~80nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと、初期変位量や連続駆動後の変位量劣化については十分な特性が得られない点、PZTのオーバーエッチングを抑制するためのストップエッチング層としての機能が得られにくくなる点で不具合が出る。一方、この膜厚範囲よりも厚いと、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。また、SrRuO膜の比抵抗としては、5×10-3Ω・cm以下になっていることが好ましく、1×10-3Ω・cm以下になっていることが更に好ましい。この範囲よりも大きくなると、共通電極層101-1として、これに接触する電極との界面で接触抵抗が大きくなり、共通電極層101-1として十分な電流を供給することができず、インク吐出をする際に不具合が発生する。
【0026】
次に、図6(b)に示すように、共通電極層101-1上に圧電体層101-3を形成する。圧電体層101-3の材料として、本実施形態ではPZTを用いる。PZTとは、ジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)Oと示される。PZT以外の複合酸化物としては、チタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。これら材料は、一般式ABOで記述され、A=Pb,Ba,Sr、B=Ti,Zr,Sn,Ni,Zn,Mg,Nbを主成分とする複合酸化物が該当し、その具体的な記述は、例えば、(Pb1-x,Ba)(Zr,Ti)O、(Pb1-x,Sr)(Zr,Ti)Oとなる。これらは、AサイトのPbを部分的にBaやSrで置換した場合を意味する。このような置換は、2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
【0027】
圧電体層101-3の作製方法としては、スパッタ法もしくはSol-gel法を用いて、スピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。PZTをSol-gel法により作製した場合、酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させて均一溶液を得ることで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は、大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤として、アセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
【0028】
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。圧電体層101-3の層厚としては、0.5~5μmが好ましく、さらに好ましくは1μm~2μmとなる。この範囲より小さいと、十分な変位を発生することができなくなり、この範囲より大きいと、何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
【0029】
また、圧電体層101-3の比誘電率としては、600以上2000以下になっていることが好ましく、さらに1200以上1600以下になっていることが好ましい。この範囲よりも小さいと、十分な変位特性が得られにくく、またこの範囲より大きくなると、分極処理が十分行われず、連続駆動後の変位劣化により十分な特性が得られにくい。
【0030】
圧電体層101-3を成膜した後は、次に、個別電極層101-2を成膜する。個別電極層101-2も、共通電極層101-1と同様、金属膜単層もしくは金属膜と酸化物膜とからなる複数層であることが好ましい。酸化物膜としては、共通電極層101-1で説明した酸化物膜を用いることができる。このとき、SrRuO膜の膜厚としては、20nm~80nmが好ましく、40nm~60nmがさらに好ましい。また、金属膜も、共通電極層101-1で説明した金属膜を用いることができる。このとき、膜厚としては、30~200nmが好ましく、50~120nmがさらに好ましい。
【0031】
次に、図6(c)に示すように、共通電極層101-1及び圧電素子101と、後に形成する引き出し配線108との間を絶縁するために、層間絶縁膜110を成膜する。また、層間絶縁膜110は、成膜、エッチングの工程による圧電素子101へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、緻密な無機材料とする必要がある。有機材料では、十分な保護性能を得るために膜厚を厚くする必要があるため、適さない。層間絶縁膜110を厚い膜とした場合、振動板102の変形を阻害してしまうため、吐出性能の低いインクジェットヘッドなってしまうからである。
【0032】
層間絶縁膜110について、薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物、窒化物、炭化物を用いるのが好ましいが、層間絶縁膜110の下地となる電極材料、圧電体材料、振動板材料との密着性が高い材料を選定することが必要になる。また、成膜法も、圧電素子101を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法や、プラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。好ましい材料としては、Al、ZrO、Y、Ta、TiOなどのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制することができる。
【0033】
層間絶縁膜110の膜厚は、圧電素子101の保護性能を確保できる十分な薄膜とする必要があると同時に、振動板102の変形を阻害しないように可能な限り薄くする必要がある。そのため、層間絶縁膜110の膜厚の好ましい範囲は、20nm~100nmである。100nmより厚い場合は、振動板102の変形量が低下するため、吐出効率の低いインクジェットヘッドとなる。一方、20nmより薄い場合は、圧電素子101の保護層としての機能が不足してしまうため、圧電素子101の性能が低下してしまう。
【0034】
また、層間絶縁膜110を2層構成としてもよい。この場合は、図4に示すように、2層目の絶縁保護膜110bを厚くするとともに、振動板102の変形を阻害しないように、圧電素子101に重なる付近では2層目の絶縁保護膜を除去して1層目の絶縁保護膜110aのみとする構成としてもよい。このとき、2層目の絶縁保護膜110bとしては、任意の酸化物、窒化物、炭化物またはこれらの複合化合物を用いることができるが、半導体デバイスで一般的に用いられるSiOを用いることができる。成膜は、任意の手法を用いることができ、CVD法、スパッタリング法が例示でき、段差被覆を考慮すると、等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。層間絶縁膜110の膜厚は、共通電極層101-1と個別電極層101-2の間に印加される電圧で絶縁破壊されない程度の膜厚とする必要がある。すなわち、絶縁保護膜に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらには、層間絶縁膜110の下地の表面性やピンホール等を考慮すると、層間絶縁膜110の膜厚は200nm以上であるのが好ましく、さらに好ましくは500nm以上である。
【0035】
層間絶縁膜110を成膜した後、個別電極層101-2と引き出し配線108とを接続するための接続孔111をリソエッチ法で形成する。また、共通電極層101-1を別の引き出し配線と接続する場合には、同様に接続孔を層間絶縁膜110に形成する。その後、図6(d)に示すように、引き出し配線108を形成する。
【0036】
引き出し配線108の材料としては、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irのいずれかからなる金属電極材料であることが好ましい。作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。引き出し配線108の膜厚は、0.1~20μmが好ましく、0.2~10μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと、抵抗が大きくなって個別電極層101-2に十分な電流を流すことができなくなり、ヘッド吐出が不安定になる。また、この範囲より大きいと、プロセス時間が長くなる。また、接続孔111における個別電極層101-2との接触抵抗は、1Ω以下が好ましく、さらに好ましくは0.5Ω以下である。また、接続孔における共通電極層101-1との接触抵抗は、10Ω以下が好ましく、さらに好ましくは5Ω以下である。これらの範囲を超えると、十分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。
【0037】
また、引き出し配線108は、後述するように、保持基板200の接着領域内にも介在することになる。そのため、本実施形態では、保持基板200の接着領域における高さ均一性を確保するために、図4に示すように、圧電素子101を挟んで引き出し配線108とは反対側(共通インク流路202側)で保持基板200が接着される接着領域109においても、引き出し配線108側の接着領域と同一の層構成を残し、保持基板200の接着の信頼性を高めている。
【0038】
次に、図7(a)に示すように、引き出し配線108の保護層として機能するパッシベーション膜112を成膜する。このようなパッシベーション膜112を設けることで、引き出し配線108の材料として、安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高いインクジェットヘッドとすることができる。パッシベーション膜112の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としては、ポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし、有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、後述のパターニングには適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる点で、無機材料とすることが好ましい。特に、Alの引き出し配線108に対してSiのパッシベーション膜112を用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であり、好適である。また、パッシベーション膜112の膜厚は200nm以上とすることが好ましく、さらに好ましくは500nm以上である。膜厚が薄い場合は十分なパッシベーション機能を発揮できないため、引き出し配線108の腐食による断線が発生し、インクジェットの信頼性を低下させてしまう。
【0039】
また、パッシベーション膜112は、振動板102の変形を阻害しないように、圧電素子101及びその周囲に重なる部分を除去するのが好ましい。これにより、高効率かつ高信頼性のインクジェットヘッドとすることが可能になる。具体的には、図7(b)に示すように、フォトリソグラフィ法やドライエッチング法を用いて、駆動IC120に接続される個別電極パッド107となる引き出し配線108の端部と、圧電素子101の上面の一部と、共通インク流路202との箇所におけるパッシベーション膜112及び層間絶縁膜110を除去する。そして、図7(c)に示すように、リソエッチ法により、共通インク流路202と共通液室106とを連通させる箇所の振動板102を除去する。
【0040】
引き出し配線108の端部には、駆動IC120を接続するためのバンプ電極からなる個別電極パッド107を形成する。この個別電極パッド107の形成方法としては、電解めっき法、無電解メッキ法及びスタッドバンプ法などがある。個別電極パッド107の材料としては、Au、Ag、Cu、Ni、はんだなどがある。駆動IC120を個別電極パッド107に接続する方法としては、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)を用いたACF(Anisotropic Conductive Film)接合、ハンダ接合、ワイヤボンディング接合、駆動IC120の出力端子と直接接合するフリップチップ接合などを選択的に用いることができる。ただし、FPCを用いると、FPCの部品コストがかかるため、ワイヤボンディング接合やフリップチップ接合の方がコスト的に有利である。また、ワイヤボンディング接合は、フリップチップ接合と比較してタクトが遅いため、生産性が悪く、狭ピッチ化にも不利である。そのため、本実施形態においては、フリップチップ接合により駆動IC120を個別電極パッド107に接続し、駆動IC120をフリップチップ実装している。
【0041】
次に、図8(a)に示すように、振動板変位領域113に対応した位置に凹部203を形成した保持基板200の脚部200aと、アクチュエータ基板100上の接着領域109とを、接着剤114で接着する。アクチュエータ基板100は、加圧液室104等の形成のために20~100μm程度の厚みにすると、十分な剛性を確保することができないので、保持基板200を接着して剛性を確保している。そのため、保持基板200は、樹脂などの低剛性材料ではなく、シリコンなどの高剛性材料であるのが好ましい。また、アクチュエータ基板100の反りを防止するために、アクチュエータ基板100に対して熱膨張係数の近い材料を選定する必要がある。そのため、ガラス、シリコンやSiO、ZrO、Al等のセラミクス材料とすることが好ましい。
【0042】
また、保持基板200の圧電素子101に対向する振動板変位領域113に対応した位置には、凹部203が形成されている。この凹部203により、圧電素子101が変形するための空間が確保される。保持基板200の各凹部203は、図9及び図10に示すように、1つの圧電素子101ごとに区画されている。これにより、板厚の薄いアクチュエータ基板100でも十分な剛性を確保することができるとともに、各圧電素子101を駆動した際に隣接する加圧液室104間の相互干渉を低減することが可能となる。また、図9及び図10に示すように、保持基板200の凹部203については、圧電素子101ごとに区画されるため、圧電素子101の高密度化のためには高度な加工精度が要求され、例えば300dpiの画像記録が可能な液体吐出ヘッドを実現する場合には、保持基板200の凹部203を区画する隔壁の幅T1は5~20μmとするのが好ましい。
【0043】
次に、図8(b)に示すように、フォトリソグラフィ法により、加圧液室104、共通液室106、流体抵抗部105以外の隔壁部103をレジストで被覆した後、アルカリ溶液(KOH溶液あるいはTMHA溶液)で異方性ウェットエッチングを行い、加圧液室104、共通液室106、流体抵抗部105を形成する。アルカリ溶液による異方エッチング以外にも、例えばICPエッチャーを用いたドライエッチングで、加圧液室104、共通液室106、流体抵抗部105を形成してもよい。
【0044】
次に、図8(c)に示すように、アクチュエータ基板100及び保持基板200に対して保護層を形成する。この保護層は、例えば、インクに対する接液性を持たせるための接液膜140である。接液膜140は、金属酸化物の緻密な膜からなることが好ましく、またタンタル及びジルコニウムの少なくともいずれかを含むことが好ましい。接液膜140の形成方法としては、例えば、接液膜材料(保護層材料)としての金属原子と酸素原子を交互に成膜して酸化膜を形成するALD法や、スパッタ法などを用いることができる。その後、図8(d)に示すように、各加圧液室104に対応した位置にノズル孔301が開口したノズル基板300を接合する。
【0045】
なお、以上の説明は、液体吐出ヘッドの製造方法の一例であり、これに限られない。
【0046】
以下、液体吐出ヘッドの電気機械変換基板を製造するために用いられる貼り合わせ基板について説明する。
図9(a)は、第一基板としてのアクチュエータ基板100を含む第一母基板としての第一シリコン基板100'を模式的に示す平面図であり、図9(b)は、第二基板としての保持基板200を含む第二母基板としての第二シリコン基板200'を模式的に示す平面図である。
図10は、第一シリコン基板100'上に形成される1つのアクチュエータ基板100を拡大して模式的に示した平面図である。
【0047】
第一シリコン基板100'及び第二シリコン基板200'は、いずれも6インチのシリコン基板である。本実施形態では、図9(a)に示すように、第一シリコン基板上に複数のチップ(アクチュエータ基板100)が形成される。このチップ(アクチュエータ基板100)は、上述したように、複数の膜が順次成膜されて構成された積層構造体である。また、チップ(アクチュエータ基板100)の四隅近傍の基板端部には、外部端子と接触する接触端子115が備わっている。詳しくは、接触端子115は、図10に示すように、チップ(アクチュエータ基板100)における短手方向(図10中上下方向)における各端部に、それぞれ2つずつ備わっている。
【0048】
一方、第二シリコン基板200'には、第一シリコン基板100'上のチップ(アクチュエータ基板100)に対応する箇所に保持基板200が形成されている。そして、本実施形態では、例えば、接着剤を塗布した第一シリコン基板100'と第二シリコン基板200'とを貼り合わせて、貼り合わせ基板としての貼り合わせシリコン基板を作成する。その後、所定の分割ラインLに沿って貼り合わせシリコン基板100',200'を分割するダイシング工程(切り離し工程)を行う。これにより、アクチュエータ基板100と保持基板200とが貼り合わされた個々の貼り合わせ基板100,200が、貼り合わせシリコン基板100',200'から切り離される。
【0049】
ダイシング工程においては、分割不良(ひびや割れ等)なく貼り合わせシリコン基板100',200'を分割ラインLに沿って適切に分割することが求められる。そのため、貼り合わせシリコン基板100',200'の分割ラインL上に存在する部材(第一シリコン基板100'及び第二シリコン基板200'の基板材やその上に形成される積層構造体、これらの基板を貼り合わせるための接着剤114など)を除去して、分割ラインL上の厚みを、他の箇所(分割ライン以外の箇所)よりも事前に薄くしておく。具体的には、第一シリコン基板100'及び第二シリコン基板200'上に各種積層構造体を作成する際のエッチング等において、分割ラインL上の積層構造体の少なくとも一部を除去しておく。
【0050】
なお、分割ラインL上の第一シリコン基板100'及び第二シリコン基板200'の基板材については、ステルスダイシングを採用して基板材(シリコン基板)をレーザによって改質して脆化させる。そして、本実施形態のダイシング工程では、テープエキスパンド等により貼り合わせシリコン基板100',200'を分割ラインLに沿って分割する。
【0051】
また、本実施形態においては、貼り合わせシリコン基板100',200'を更に適切に分割するために、分割ラインL上における第一シリコン基板100'の一部を欠落させる欠落工程を実施している。具体的には、図11(b)に示す拡大図のように、例えば、第一シリコン基板100'の分割ラインLのうち、矩形状のチップ(アクチュエータ基板100)の短辺L2の中央部分(図11中符号CとDの間)を欠落させる。この欠落工程は、例えば、第一シリコン基板100'の表面(第二シリコン基板200'に対面する側とは反対側の面)に、露光及び現像されてパターニングされたレジスト層を形成し、このレジスト層をマスクとしてエッチングした後、レジスト層を剥離することにより行うことができる。
【0052】
このように、第一シリコン基板100'の分割ラインL上におけるチップ短辺L2の一部を欠落させることで、チップ短辺L2の分割不良が抑制でき、エキスパンド時の良好な分割性を得ることができる。なお、本実施形態では、第一シリコン基板100'の分割ラインL上におけるチップ短辺L2の中央部分を欠落させているが、分割ライン上におけるチップ短辺L2の端部部分を欠落させたり、分割ラインL上におけるチップ長辺L1の中央部分や端部部分などの一部を欠落させたりしてもよい。
【0053】
ここで、本実施形態のように、貼り合わせシリコン基板100',200'の分割ライン上に存在する部材を除去して分割ラインLの厚みを他の箇所よりも薄くしておくと、図12(a)及び(b)に示す比較例1のように、分割ラインL上における第一シリコン基板100'と第二シリコン基板200'との間に隙間が生じる。そして、本実施形態では、第一シリコン基板100'の分割ライン上におけるチップ短辺L2の中央部分を欠落させる欠落工程を実施した後に、接液膜140を形成する接液膜形成工程(接液膜材料を付与する付与工程)が実施される(図8(c))。
【0054】
そのため、接液膜形成工程時に付与される接液膜材料が、図12(a)及び(b)の矢印Kで示すように、第一シリコン基板100'の欠落部分(図12(a)中符号CとDの間)から、第一シリコン基板100'と第二シリコン基板200'との隙間に進入する。そして、隙間に進入した接液膜材料は、分割ラインL上の当該隙間に沿って進み、例えば、チップ(アクチュエータ基板100)の長辺L1と短辺L2との交点X(図11(b)参照)を通過して、分割ライン上のチップ長辺L1に対して露出している接触端子115まで進行する。その結果、接液膜材料が接触端子115に付着してしまい、接触端子115の接触不良を引き起こすおそれがある。
【0055】
図13(a)は、本実施形態における貼り合わせシリコン基板100',200'を分割ライン上のチップ短辺L2に沿って切断したときの断面図であり、図13(b)は、本実施形態における貼り合わせシリコン基板100',200'を分割ライン上のチップ長辺L1に沿って切断したときの一部断面図である。
本実施形態においては、分割ライン上における第一シリコン基板100'と第二シリコン基板200'との隙間を介して第一シリコン基板100'の欠落部分と接触端子115とが互いに連通する連通路内に、接液膜材料の通過を阻止する構造体250を形成する。この構造体250は、例えば、分割ラインL以外の箇所で保持基板200に形成される構成部と同じ材料(パターニング材料、絶縁膜材料など)で形成することができる。この場合、構造体形成工程は、分割ラインL以外の箇所で保持基板200に形成される構成部の形成工程において実施され、当該構成部と一緒に構造体250が形成される。
【0056】
このような構造体250が形成されることで、第一シリコン基板100'の欠落部分(図13(a)中符号CとDの間)から進入した接液膜材料が構造体250によって阻止されて、接触端子115まで到達することができなくなる。その結果、接液膜材料が接触端子115に接触することを防止でき、接触不良の発生を抑制することができる。
【0057】
加えて、この構造体250は、ダイシング工程(切り離し工程)後の各チップ(アクチュエータ基板100と保持基板200とが貼り合わされた個々の貼り合わせ基板100,200)の短辺L2上に存在し続ける。これにより、他の箇所よりも薄くなっている分割ライン上の基板剛性を構造体250によって補強することができる。
【0058】
なお、構造体250は、分割ラインL(本実施形態では短辺L2)に沿った方向の長さ(以下、構造体250の幅という。)が10μm以上100μm以下の範囲内であるのが好ましい。構造体250の幅が10μm未満であると、接液膜材料の通過を阻止する機能が不十分になりやすく、また、チップ(アクチュエータ基板100と保持基板200とが貼り合わされた個々の貼り合わせ基板100,200)の剛性の補強が十分に得られない可能性がある。また、構造体250の幅が100μmを超えると、ダイシング工程におけるエキスパンド時の分割性を阻害しやすい。なお、本実施形態における構造体250の幅は50μmに設定されている。
【0059】
また、本実施形態では、第二シリコン基板200'に形成される構成部と一緒に構造体250を形成し、第一シリコン基板100'側に塗布した接着剤114によって貼り合わせる例であるが、これに限られない。例えば、図14(a)及び(b)に示すように、分割ラインL以外の箇所で第一シリコン基板100'に形成される構成部と同じ材料(パターニング材料、絶縁膜材料など)で構造体150を形成し、第二シリコン基板200'側に塗布した接着剤214によって貼り合わせてもよい。いずれの例でも、接着剤は第一シリコン基板100'に塗布するようにしても良いが、第一シリコン基板100'上には複雑なパターンが配置されているため、接着剤の塗布が難しい。そのような場合には、第二シリコン基板200'に接着剤を塗布するのが好ましい。
【0060】
次に、本実施形態と比較例1及び比較例2との比較実験の結果について説明する。
比較例1は、図12に示したように、本実施形態における貼り合わせシリコン基板100',200'に対し、構造体250を形成しない点のみ、すなわち構造体形成工程を実施しない点のみ、が異なっている。比較例2は、図15及び図16に示すように、本実施形態における貼り合わせシリコン基板100',200'に対し、分割ラインL上における第一シリコン基板100'の一部を欠落させない点、すなわち、欠落工程を実施しない点、が異なっている。また、比較例2は、分割ライン上に形成される構造体250が、分割ライン全域にわたって形成されている点でも異なっている。
【0061】
本比較実験では、本実施形態及び比較例1、2の各貼り合わせシリコン基板100',200'に対し、ステルスダイシングを実施し、分割性の確認と、接触端子115の接触不良(エレキ検査)とを実施した。その結果は表1に示すとおりである。
【0062】
【表1】
【0063】
本実施形態においては、分割性の良品率は100%で、接触端子115の接触不良(エレキ検査)の良品率も100%であった。分割性については、分割ラインL上における第一シリコン基板100'の一部を欠落させる欠落工程を実施していることから、ひびや割れ等の分割不良を発生させることはなかった。また、分割ラインL上に形成した構造体250も、その幅が50μmと狭いため、分割性への影響はなかった。また、構造体250の存在によって、接液膜形成工程時に分割ライン上の第一シリコン基板100'の欠落部分から進入する接液膜材料が接触端子115まで到達することが阻止された結果、接触端子115の接触不良も確認されなかった。
【0064】
一方、比較例1においては、分割性の良品率は100%であったが、接触端子115の接触不良(エレキ検査)の良品率は83%であった。分割性については、本実施形態と同様に、分割ラインL上における第一シリコン基板100'の一部を欠落させる欠落工程を実施していることから、ひびや割れ等の分割不良を発生させることはなかった。これに対し、接触端子115の接触不良(エレキ検査)については、構造体250が存在しないため、接液膜形成工程時に分割ライン上の第一シリコン基板100'の欠落部分から進入する接液膜材料が接触端子115まで到達して、接触端子115の接触不良が発生することがあった。
【0065】
また、比較例2においては、分割性の良品率が77%であり、接触端子115の接触不良(エレキ検査)の良品率は100%であった。分割性については、分割ラインL上における第一シリコン基板100'の一部を欠落させる欠落工程を実施していないことから、ひびや割れ等の分割不良を発生することがあった。特に、接着剤114が残っている箇所では接着剤114に沿って割れが発生することがあった。一方、接触端子115の接触不良(エレキ検査)については、分割ライン上の第一シリコン基板100'に欠落部分が存在していないため、接液膜形成工程時に接液膜材料が進入できない結果、接触端子115の接触不良が発生することがなかった。
【0066】
なお、本実施形態のチップは長方形状のチップを例に挙げて説明しているが、チップの形状には特に制限はない。
【0067】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図17及び図18を参照して説明する。図17は同装置の要部平面説明図、図18は同装置の要部側面説明図である。
【0068】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0069】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0070】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0071】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0072】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0073】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0074】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0075】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0076】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0077】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0078】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0079】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0080】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0081】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図19を参照して説明する。図19は同ユニットの要部平面説明図である。
【0082】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0083】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0084】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図20を参照して説明する。図20は同ユニットの正面説明図である。
【0085】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0086】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0087】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0088】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0089】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0090】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0091】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0092】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0093】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0094】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0095】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0096】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0097】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0098】
例えば、液体吐出ユニットとして、図18で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0099】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0100】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図19で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0101】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0102】
また、液体吐出ユニットとして、図20で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0103】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0104】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、前記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0105】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0106】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、第一基板(例えばアクチュエータ基板100)を含む第一母基板(例えば第一シリコン基板100')と第二基板(例えば保持基板200)を含む第二母基板(例えば第二シリコン基板200')とを貼り合わせる貼り合わせ工程と、前記第一母基板と前記第二母基板とを貼り合わせた貼り合わせ母基板100',200'の分割ラインL上における前記第一母基板の一部を欠落させる欠落工程と、前記分割ラインに沿って前記貼り合わせ母基板を分割して、前記第一基板と前記第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板を該貼り合わせ母基板から切り離す切り離し工程と、を含む、前記貼り合わせ基板を製造する製造方法であって、前記貼り合わせ基板は、外部端子と接触する接触端子115を基板端部に備えるものであり、前記貼り合わせ母基板に保護層(例えば接液膜140)を形成するための保護層材料(例えば接液膜材料)を付与する付与工程を、前記欠落工程後に実施し、前記分割ライン上における前記第一母基板と前記第二母基板との隙間を介して、前記欠落工程による前記第一母基板の欠落部分と前記接触端子とが互いに連通する連通路内に、前記保護層材料の通過を阻止する構造体250を形成する構造体形成工程を有する、ことを特徴とするものである。
貼り合わせ母基板から貼り合わせ基板を切り離す切り離し工程を実施する場合、分割不良(ひびや割れ等)なく貼り合わせ母基板を分割ラインに沿って適切に分割することが求められる。そのため、貼り合わせ母基板の分割ライン上に存在する部材(第一母基板及び第二母基板の各部材やこれらの基板を貼り合わせるための接着剤など)の厚みを、他の箇所(分割ライン以外の箇所)よりも、事前に薄くしておくことが多い。その結果、分割ライン上における第一母基板と第二母基板との間には隙間が生じることになる。
ここで、貼り合わせ母基板を更に適切に分割するために、分割ライン上における第一母基板の一部を欠落させる欠落工程を実施する場合がある。この場合、欠落工程後に、貼り合わせ母基板に保護層を形成するための保護層材料を付与する付与工程が実施されると、付与された材料が、第一母基板の欠落部分から、分割ライン上における第一母基板と第二母基板との隙間に進入し、分割ラインに露出している部品等に付着し得る。したがって、外部端子と接触する接触端子が基板端部に備える貼り合わせ基板においては、接触端子が貼り合わせ母基板の分割ラインに露出した位置に配置されるので、保護層材料が接触端子に付着し得る。その結果、このような貼り合わせ基板においては、保護層材料が接触端子を付着してしまい、接触不良を引き起こすおそれがある。
そこで、本態様では、構造体形成工程において、分割ライン上の前記隙間を介して第一母基板の欠落部分と接触端子とが互いに連通する連通路内に、保護層材料の通過を阻止する構造体を形成している。これにより、第一母基板の欠落部分から進入する保護層材料が分割ライン上の前記隙間を介した連通路を通って接触端子に接触することを防止することができるので、接触不良の発生を抑制することができる。
【0107】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記保護層材料は、前記第一基板及び前記第二基板を被覆する接液膜140を形成するための材料であることを特徴とするものである。
本態様によれば、接液膜材料が接触端子に接触して接触不良を発生させることを抑制することができる。
【0108】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記構造体は、前記分割ラインに沿った方向の長さが10μm以上100μm以下の範囲内であることを特徴とするものである。
構造体の当該長さが前記範囲内であれば、分割ラインに沿って貼り合わせ母基板を分割するときの良好な分割性を確保しつつ、保護層材料が接触端子に接触することを抑制することができる。
【0109】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記構造体形成工程は、前記分割ライン以外の箇所で前記第二基板に形成される構成部と一緒に前記構造体を形成することを特徴とするものである。
これによれば、第二基板に形成される構成部を形成する工程中に構造体を構成部と一緒に形成することができるので、製造工程の簡略化、時間短縮を図ることができる。
【0110】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記構造体形成工程は、前記分割ライン以外の箇所で前記第一基板に形成される構成部と一緒に前記構造体を形成することを特徴とするものである。
これによれば、第一基板に形成される構成部を形成する工程中に構造体を構成部と一緒に形成することができるので、製造工程の簡略化、時間短縮を図ることができる。
【0111】
[第6態様]
第6態様は、第一基板(例えばアクチュエータ基板100)と第二基板(例えば保持基板200)とを貼り合わせた貼り合わせ基板100,200であって、外部端子と接触する接触端子115を基板端部に備え、前記第一基板及び前記第二基板は、保護層材料(例えば接液膜材料)に基づく保護層(例えば接液膜140)を有し、前記第一基板を含む第一母基板(例えば第一シリコン基板100')と前記第二基板を含む第二母基板(例えば第二シリコン基板200')とを貼り合わせた貼り合わせ母基板100',200'から前記貼り合わせ基板を切り離すための分割ラインL上における前記第一母基板の一部が欠落しており、前記分割ラインL上における前記第一母基板と前記第二母基板との隙間を介して、前記第一基板の欠落部分と前記接触端子とが互いに連通する連通路内に構造体250を有することを特徴とするものである。
本態様においては、分割ライン上の前記隙間を介して第一母基板の欠落部分と接触端子とが互いに連通する連通路内に構造体が形成されている。そのため、製造工程時に第一母基板の欠落部分から進入する保護層材料が分割ライン上の隙間を介した連通路を通って接触端子に接触することが防止されるため、接触端子での接触不良が抑制された貼り合わせ基板を提供できる。また、分割ライン上の隙間を介した連通路内に構造体を有することで、貼り合わせ基板上において剛性が低下している分割ライン部分の剛性を構造体によって補強することができる。
【0112】
[第7態様]
第7態様は、第一基板と第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板であって、外部端子と接触する接触端子を基板端部に備え、前記第一基板及び前記第二基板は、保護層材料に基づく保護層を有し、前記第一基板側から見た平面視において、前記貼り合わせ基板の長手方向における端部では前記第二基板が露出し、前記第二基板の前記露出部から前記基板の短手方向の端部までの間に、前記第一基板と前記第二基板とを繋ぐ構造体を有することを特徴とするものである。
第一基板側から見た平面視において、貼り合わせ基板の長手方向における端部で第二基板が露出していると、製造工程時に第二基板の露出部から保護層材料が進入し、第一基板と第二基板との隙間を介した連通路を通って接触端子に接触し得る。本態様によれば、第二基板の露出部から基板の短手方向の端部までの間に、第一基板と第二基板とを繋ぐ構造体を有する。これにより、製造工程時に第二基板の露出部から進入する保護層材料が接触端子まで進入することが当該構造体によって阻止され、接触端子での接触不良が抑制された貼り合わせ基板を提供できる。また、このような構造体を有することで、貼り合わせ基板の剛性を構造体によって補強することができる。
【0113】
[第8態様]
第8態様は、第一基板と第二基板とを貼り合わせた貼り合わせ基板であって、外部端子と接触する接触端子を基板端部に備え、前記第一基板及び前記第二基板は、保護層材料に基づく保護層を有し、前記第二基板側から見た平面視において、前記貼り合わせ基板の長手方向における端部では前記第一基板が露出し、前記第一基板の前記露出部から前記基板の短手方向の端部までの間に、前記第一基板と前記第二基板とを繋ぐ構造体を有することを特徴とするものである。
第二基板側から見た平面視において、貼り合わせ基板の長手方向における端部で第一基板が露出していると、製造工程時に第一基板の露出部から保護層材料が進入し、第一基板と第二基板との隙間を介した連通路を通って接触端子に接触し得る。本態様によれば、第一基板の露出部から基板の短手方向の端部までの間に、第一基板と第二基板とを繋ぐ構造体を有する。これにより、製造工程時に第一基板の露出部から進入する保護層材料が接触端子まで進入することが当該構造体によって阻止され、接触端子での接触不良が抑制された貼り合わせ基板を提供できる。また、このような構造体を有することで、貼り合わせ基板の剛性を構造体によって補強することができる。
【0114】
[第9態様]
第9態様は、第6乃至第8態様のいずれかにおいて、前記保護層は、前記第一基板及び前記第二基板を被覆する接液膜であることを特徴とするものである。
本態様によれば、接液膜材料による接触端子での接触不良が抑制された貼り合わせ基板を提供することができる。
【0115】
[第10態様]
第10態様は、第6乃至第9態様のいずれかにおいて、前記構造体は、前記分割ラインに沿った方向又は前記短手方向の長さが10μm以上100μm以下の範囲内であることを特徴とするものである。
構造体の当該長さが前記範囲内であれば、十分な剛性補強を実現しつつ、接触端子での接触不良が抑制された貼り合わせ基板を提供することができる。
【0116】
[第11態様]
第11態様は、第6乃至第10態様のいずれかにおいて、前記構造体は、前記分割ライン以外の箇所で前記第二基板に形成される構成部と同じ材料で形成されていることを特徴とするものである。
これによれば、第二基板に形成される構成部を形成する工程中に構造体を構成部と一緒に形成することができるので、製造工程の簡略化、時間短縮を図ることができる。
【0117】
[第12態様]
第12態様は、液体吐出ヘッドであって、第6乃至第11態様のいずれかの貼り合わせ基板を備えることを特徴とするものである。
本態様によれば、接触端子での接触不良が抑制され、剛性が補強された電気機械変換基板を用いる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0118】
[第13態様]
第13態様は、液体吐出ユニットであって、第12態様の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とするものである。
本態様によれば、接触端子での接触不良が抑制され、剛性が補強された電気機械変換基板を用いる液体吐出ユニットを提供することができる。
【0119】
[第14態様]
第14態様は、第13態様において、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構のうちの少なくとも1つと、前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とするものである。
本態様によれば、接触端子での接触不良が抑制され、剛性が補強された電気機械変換基板を用いる液体吐出ユニットを提供することができる。
【0120】
[第15態様]
第15態様は、液体を吐出する装置であって、第12態様の液体吐出ヘッド、又は、第13若しくは第14態様の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とするものである。
本態様によれば、接触端子での接触不良が抑制され、剛性が補強された電気機械変換基板を用いる液体を吐出する装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0121】
100 :アクチュエータ基板
100' :第一シリコン基板
101 :圧電素子
102 :振動板
103 :隔壁部
104 :加圧液室
105 :流体抵抗部
106 :共通液室
107 :個別電極パッド
108 :引き出し配線
109 :接着領域
110 :層間絶縁膜
111 :接続孔
112 :パッシベーション膜
113 :振動板変位領域
114,214:接着剤
115 :接触端子
120 :駆動IC
140 :接液膜
150,250:構造体
200 :保持基板
200' :第二シリコン基板
202 :共通インク流路
203 :凹部
300 :ノズル基板
301 :ノズル孔
404 :液体吐出ヘッド
440 :液体吐出ユニット
L :分割ライン
L1 :長辺
L2 :短辺
X :交点
【先行技術文献】
【特許文献】
【0122】
【特許文献1】特開2018-1442号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20