(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018812
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】スパッタリング装置用の回転式カソードユニット
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
C23C14/34 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123099
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】織井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】立川 晋輔
(72)【発明者】
【氏名】西ノ坊 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 孔
(72)【発明者】
【氏名】箱守 宗人
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 和彦
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DA03
4K029DC13
4K029DC25
4K029DC39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷媒循環通路をその全体に亘って確実に冷媒が循環していることを判断できる構造を持つスパッタリング装置用の回転式カソードユニットを提供する。
【解決手段】真空雰囲気中に配置される筒状のターゲットTgと、ターゲットを回転駆動する駆動ブロックDbと、ターゲットを回転自在に支持する支持ブロックSbとを備えるスパッタリング装置用の回転式カソードユニットは、駆動ブロックと支持ブロックのいずれか一方から筒状のターゲットの径方向内側を通って駆動ブロックと支持ブロックのいずれか他方に達する第1通路Fp1と、駆動ブロックと支持ブロックのいずれか他方から第1通路の更に径方向内側を通って駆動ブロックと支持ブロックのいずれか一方に達する第2通路Fp2とを有する冷媒循環通路を備え、第1通路の終端Fp1eから第2通路の始端Fp2sに向かって流れる冷媒を検知する検知手段Wsを設けたことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気中に配置される筒状のターゲットと、ターゲットを回転駆動する駆動ブロックと、ターゲットを回転自在に支持する支持ブロックとを備えるスパッタリング装置用の回転式カソードユニットであって、
駆動ブロックと支持ブロックのいずれか一方から筒状のターゲットの径方向内側を通って駆動ブロックと支持ブロックのいずれか他方に達する第1通路と、駆動ブロックと支持ブロックのいずれか他方から第1通路の更に径方向内側を通って駆動ブロックと支持ブロックのいずれか一方に達する第2通路とを有する冷媒循環通路を備えるものにおいて、
第1通路の終端から第2通路の始端に向かって流れる冷媒を検知する検知手段を設けたことを特徴とするスパッタリング装置用の回転式カソードユニット。
【請求項2】
前記駆動ブロックと前記支持ブロックのいずれか一方に供給する冷媒の流量を検知する流量検知手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置用の回転式カソードユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空雰囲気中に配置される筒状のターゲットと、ターゲットを回転駆動する駆動ブロックと、ターゲットを回転自在に支持する支持ブロックとを備えるスパッタリング装置用の回転式カソードユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転式カソードユニットは、例えば特許文献1で知られている。このような回転式カソードユニットを真空チャンバ内に配置し、プラズマ雰囲気中にてターゲットに電力投入してスパッタリングする場合、投入電力の大部分が熱に変わってターゲットが高温となる。このため、ターゲットが融解し、または、割れないように、通常は、駆動ブロックから、筒状のターゲットの内面に接するようにターゲットの径方向内側を通って支持ブロックに達する第1通路と、支持ブロックから、第1通路(往路)の更に径方向内側を通って駆動ブロックに達する第2通路(復路)とを有する冷媒循環通路が設けられている。スパッタリング中には、例えば、真空チャンバ外に設けられる冷却器を持つ冷媒循環装置によって冷媒循環通路に冷媒(冷却水)を循環させてターゲットが間接的に除熱される構造としている。通常は、冷媒循環装置に備えられるフローメータにより冷媒の流量や温度が管理される。
【0003】
ところで、ターゲット自体は所謂消耗品である。このため、この種の回転式カソードユニットでは、駆動ブロックや支持ブロックからターゲットが着脱自在に構成され、このとき、冷媒循環通路の水密性を確保するため、ターゲットの着脱箇所には冷媒用のシール部材を配置することが一般である。ここで、回転式カソードユニット内の冷媒循環通路の構造によっては、シール部材が経年劣化し、または、ターゲット交換後の再組付時にシール部材を付け忘れると、往路と復路とが途中でバイパスされて冷媒が流れることがある。特に、筒状のターゲットがその軸方向を鉛直方向に一致させた起立姿勢で配置される縦型のスパッタリング装置の場合、往路と復路とがバイパスされると、重力によりターゲットの軸方向上端側まで冷媒が行き渡らず、局所的なターゲットの冷却不足を招き易い。このような場合、上記のように冷媒の流量や温度だけを管理していると、ターゲットが十分に冷却されず、結局、ターゲットの融解や割れを招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、冷媒循環通路をその全体に亘って確実に冷媒が循環していることを判断できる構造を持つスパッタリング装置用の回転式カソードユニットを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、真空雰囲気中に配置される筒状のターゲットと、ターゲットを回転駆動する駆動ブロックと、ターゲットを回転自在に支持する支持ブロックとを備える本発明のスパッタリング装置用の回転式カソードユニットは、駆動ブロックと支持ブロックのいずれか一方から筒状のターゲットの径方向内側を通って駆動ブロックと支持ブロックのいずれか他方に達する第1通路と、駆動ブロックと支持ブロックのいずれか他方から第1通路の更に径方向内側を通って駆動ブロックと支持ブロックのいずれか一方に達する第2通路とを有する冷媒循環通路を備え、第1通路の終端から第2通路の始端に向かって流れる冷媒を検知する検知手段を設けたことを特徴とする。この場合、前記駆動ブロックと前記支持ブロックのいずれか一方に供給する冷媒の流量を検知する流量検知手段を更に備える構成を採用することができる。
【0007】
以上によれば、プラズマ雰囲気中にてターゲットに電力投入してスパッタリングする間、例えば、冷媒循環装置によって駆動ブロックを介して第1通路の始端に冷却水などの冷媒が供給され、第1通路を流れる。この第1通路を流れた冷媒が第1通路の終端を経て支持ブロックに達する。つまり、ターゲットの軸方向一端からその他端に亘って筒状のターゲットの内面に接するように冷媒が流通する。支持ブロックに達した冷媒は、支持ブロックに形成される折返連通路などを介して、第2通路の始端へと供給され、第2通路を流れる。この第2通路を流れた冷媒が第2通路の終端を経て駆動ブロックを介して冷媒循環装置へと戻る。このとき、ターゲット内側に冷媒循環通路を形成するために適宜設けた冷媒用のシール部材が経年劣化により、または、シール部材の付け忘れにより、第1通路(往復)と第2通路(復路)とが途中でバイパスされたような場合には、検知手段がもはや冷媒を検知しないことで、ターゲットの軸方向一端からその他端に亘って筒状のターゲットの内面に接するように冷媒が流通していないことが判る。これにより、流量検知手段を設けたことと相俟って、冷媒循環通路をその全体に亘って確実に冷媒が循環していることを判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のスパッタリング装置用の回転式カソードユニットをスパッタリング装置に取り付けた状態を説明する部分断面図。
【
図2】本発明のスパッタリング装置用の回転式カソードユニットの駆動ブロック及び支持ブロックの構成を説明する部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、被処理基板を矩形のガラス基板(以下、「基板S」という)とし、基板Sの一方の面に所定の薄膜を成膜するためのスパッタリング装置に、本発明の回転式カソードユニットを適用した場合を例にその実施形態を説明する。
【0010】
図1を参照して、Smは、縦型のスパッタリング装置であり、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1には、特に図示して説明しないが、アルゴンなどの希ガスや、反応性スパッタリング法により成膜する際の酸素ガスなど反応ガスといったスパッタガスの導入を可能とするガス導入手段と、真空チャンバ1内を所定の実行排気速度で真空排気する真空ポンプと、基板Sを起立姿勢で
図1の紙面に直交する方向に搬送する搬送手段とが設けられている。そして、本実施形態の回転式カソードユニットRCが真空チャンバ1の側壁1a,1bに、後述の筒状のターゲットの軸方向を鉛直方向に一致させた起立姿勢で配置される。以下においては、鉛直方向をZ軸方向とし、「上」、「下」等の方向を示す用語は
図1を基準とする。
【0011】
図2も参照して、回転式カソードユニットRCは、真空チャンバ1内に起立姿勢で搬送されてくる基板Sに対向配置される円筒状のターゲットTgを備える。ターゲットTgは、円筒状のバッキングチューブ21と、バッキングチューブ21の外筒面にインジウムやスズなどのボンディング材(図示せず)を介して接合される円筒状のターゲット材22とを有する。ターゲット材22としては、基板Sに成膜しようとする膜の組成に応じて金属や金属化合物の中から適宜選択されたものが用いられる。バッキングチューブ21の下端には、クランプCp1を介してターゲットTgを回転駆動する駆動ブロックDbが連結されると共に、バッキングチューブ21の上端には、クランプCp2を介してターゲットTgを回転自在に支持する支持ブロックSbが連結される。なお、上記連結に利用されるクランプCp1,Cp2としては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0012】
また、バッキングチューブ21には、真空チャンバ1内と隔絶された空間を画成する内管としての磁石ケース3がターゲットTgの略全長に亘って内挿されている。磁石ケース3内には、ターゲット材22の外表面に漏洩磁場を作用させる磁場発生手段(図示省略)が設けられる。磁場発生手段としては、磁石ユニット等の公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0013】
磁石ケース3内には、その略全長に亘ってのびる冷媒通路31が形成される。冷媒通路31は、磁石ケース3のZ軸方向上端で、磁石ケース3の外周面とバッキングチューブ21の内周面との間の隙間32に連通されて、冷媒循環通路Fpが形成される。本実施形態の冷媒循環通路Fpは、ターゲットTgの径方向内側を通る隙間32が第1通路Fp1を構成し、第1通路Fp1の更に径方向内側を通る冷媒通路31が第2通路Fp2を構成し、磁石ケース3のZ軸方向上端と支持ブロックSbの下端との間の隙間33が折返連通路Fp3を構成する。
【0014】
駆動ブロックDbは、互いに同心状に配置される、中空管4と、中空管4に外挿される第1内筒体5と、第1内筒体5に外挿される第2内筒体6と、外筒体7とを備える。中空管4は、磁石ケース3のZ軸方向下端からZ軸方向下方に向けてストレート状にのびるように形成される。中空管4の下端部には、歯車機構41を介してサーボモータ42が設けられ、中空管4、ひいては、磁石ケース3内の磁場発生手段(図示省略)がZ軸線周りに所定の回転角の範囲(例えば、±数十度以下の範囲)で回転される。
【0015】
第1内筒体5は、そのZ軸方向下端側に肉厚部51を有する。肉厚部51と中空管4との間には軸受Br1が設けられ、軸受Br1よりZ軸方向上側には冷媒用のシールSw1が設けられている。冷媒用のシールSw1のZ軸方向上側に位置する中空管4と第1内筒体5との隙間52が、冷媒循環通路Fpの第2通路Fp2に連通される。また、第1内筒体5のZ軸方向上端は、磁石ケース3のZ軸方下端に樹脂製のリングSw2を介して外嵌されている。この樹脂製のリングSw2は、軸受の機能を有すると共に、冷却水をシールする機能を有する。
【0016】
第2内筒体6は、そのZ軸方向下端側に、Z軸方向に対して直交する方向にのびるフランジ壁部61を有し、第1内筒体5と第2内筒体6との隙間63が、冷媒循環通路Fpの第1通路Fp1に連通される。そして、第2内筒体6は、真空チャンバ1の下方隔壁1aに形成した取付孔Ih1に、取付部品Ap1を介して取り付けられる。この場合、取付部品Ap1は、一端にフランジ部Ap11を設けた筒状部材で構成され、フランジ部Ap11のZ軸方向上下の面には、Oリングなどの真空用のシールSv1が夫々取り付けられ、両シールSv1が下方隔壁1aの外面と第2内筒体6のZ軸方向の端面とに圧接して気密保持するようになっている。
【0017】
外筒体7は、第2内筒体6のZ軸方向にのびるストレート部62に外嵌される軸受Br2を介して設けられ、軸受Br2より磁石ケース3側に位置するストレート部62と外筒部7との間には冷媒用のシールSw3が設けられている。また、バッキングチューブ21のZ軸方向一端には小径の取付段差部21aが設けられ、取付段差部21aに外筒体7のZ軸方向上端がOリングなどの真空用のシールSv2を介して外嵌され、この状態でクランプCp1により外筒体7とバッキングチューブ21とが連結されている。
【0018】
外筒体7の外周面と取付部品Ap1の内周面との間には、外筒体7の回転を許容しながら外筒体7の内側空間を気密保持する、オイルシール、ダブルリップシールまたは磁性流体シールで構成される真空用のシールSv3が設けられている。
【0019】
外筒体7の外筒面には、下方隔壁1aの大気側に位置させて歯71が設けられ、これに噛み合う歯車81が配置されている。歯車81には、モータ82の駆動軸82aが連結され、モータ82より歯車81を所定回転数で回転させて外筒体7を回転駆動することで、ターゲットTgのスパッタリング時、これに連結されたターゲットTgを所定の回転数で回転できるようになっている。また、外筒体7には、図外のスパッタ電源からの出力ケーブル(図示省略)が接続され、ターゲット材22に、例えば負の電位を持った所定電力を投入できるようになっている。
【0020】
支持ブロックSbは、真空チャンバ1の側壁1bにブラケットBtを介して取り付けられている。支持ブロックSbには軸受Br3が設けられるとともに、軸受Br3の径方向内側に、電気的絶縁性を有する樹脂製のブッシュBs1が内設される。支持部材9の先端部9aが軸受Br3に回転自在に軸支され、支持ブロックSbと支持部材9とがブッシュBs1により電気的に絶縁される。支持部材9は、クランプCp2を介してバッキングチューブ21に固定され、支持部材9の外周面とバッキングチューブ21との内周面との間には、OリングSw4が介設される。また、支持部材9には、樹脂や金属製のブッシュBs2が設けられ、ブッシュBs2により磁石ケース3の被動軸3aが支承され、バッキングチューブ21のZ軸方向上端が回転自在に支持部材9に支持される。なお、本実施形態では、支持部材9の先端部9aが軸受Br3に支承されるものを例に説明するが、軸受Br3を省略してブッシュBs1が先端部9aを支承する構成としてもよい。また、本実施形態では、磁石ケース3の被動軸3aがブッシュBs2に支承されるものを例に説明するが、ブッシュBs2の代わりにベアリングと冷媒用シール部材とを用いて被動軸3aを支承する構成としてもよい。
【0021】
また、駆動ブロックDbの大気雰囲気に位置するフランジ壁部61と肉厚部51との間の空間には、Z軸方向にのびる軸部を持つ2個の継手部10a,10bが設けられる。各継手部10a,10bには、冷媒循環装置としてのチラーユニットChから給水管11aと排水管11bとが夫々接続される。そして、チラーユニットChの給水管11aから供給される冷却水(冷媒)は、駆動ブロックDbの継手部10a、隙間63、第1通路Fp1(隙間32)を通って、折返連通路Fp3(隙間33)に達する。そして、折返連通路Fp3(即ち、支持ブロックSbの下端)に達した冷却水は、第2通路Fp2(冷媒通路31)、駆動ブロックのDbの隙間52、継手部10bを介して排水管11bから排水される。このように、冷媒循環通路Fp内を所定温度の冷却水を循環させることで、ターゲットTgのスパッタリング時、ターゲット材22を冷却することができる。なお、継手部10a,10bやチラーユニットChは、公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0022】
また、第1通路Fp1の終端Fp1eから第2通路Fp2の始端Fp2sに向けて冷却水が流れる折返連通路Fp3には、冷却水の有無を検知する検知手段Wsが設けられている。検知手段Wsは、筒体内に一対の電極を内蔵したセンサヘッドWs1と、磁石ケース3内の空間に配置される制御回路Ws2とを備える。センサヘッドWs1は、一対の電極が存するセンサヘッドWs1の先端部分が折返連通路Fp3内に突出するように磁石ケース3に配置され、制御回路Ws2から一対の電極間に電圧を印加したとき、折返連通路Fp3内の冷却水が電極間に接触し導通することで冷却水の有無を検知する。また、センサヘッドWs1の外周面と磁石ケース3との間には、冷媒用シールとしてのOリングSw5が設けられている。検知手段Wsとしては、これに限定されるものではなく、フロートスイッチ式のものや光学式のものを利用することもできる。一方、真空チャンバ1外に位置する、給水管11a及び排水管11bの部分には、冷却水の流量を検知する流量検知手段Wm1,Wm2が設けられる。流量検知手段としては、公知のフローメータを利用することができる。なお、冷媒循環通路Fp内を循環する冷却水の流量を検知できるものであれば、これに限定されず、チラーユニットChに備えられているフローメータを利用することもできる。なお、検知手段Ws及び流量検知手段Wm1,Wm2は、特に図示して説明しないが、スパッタリング装置Smの作動を統括制御する制御ユニットに通信自在に接続され、検知手段Ws及び流量検知手段Wm1,Wm2からの出力に応じて、制御ユニットは、スパッタリング装置Smをエラー停止し、これをディスプレイやスピーカから報知するようになっている。
【0023】
以上の実施形態によれば、プラズマ雰囲気中にてターゲットTgに電力投入してスパッタリングする間、チラーユニットChによって駆動ブロックDbを介して第1通路Fp1の始端に冷却水が供給され、第1通路Fp1を流れる。この第1通路Fp1を流れた冷却水が第1通路Fp1の終端Fp1eを経て支持ブロックSbに達する。つまり、ターゲットTgの軸方向一端からその他端に亘ってターゲットTgの内面に接するように冷却水が流通する。支持ブロックSbに達した冷却水は、支持ブロックSbに形成される折返連通路Fp3を介して、第2通路Fp2の始端Fp2sへと供給され、第2通路Fp2を流れる。この第2通路Fp2を流れた冷媒が第2通路Fp2の終端を経て駆動ブロックDbを介してチラーユニットChへと戻る。このとき、ターゲットTg内側に冷媒循環通路Fpを形成するために適宜設けた冷媒用のシール部材Sw2等が経年劣化により、または、シール部材Sw2等の付け忘れにより、第1通路Fp1と第2通路Fp2とが途中でバイパスされたような場合には、検知手段Wsが冷媒を検知しないことで、ターゲットTgの内面に接するように冷媒が流通していないことが判る。これにより、流量検知手段Wm1,Wm2を設けたことと相俟って、冷媒循環通路Fpをその全体に亘って確実に冷却水が循環していることを判断できる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、磁石ケース3のZ軸方向上端に検知手段Wsを設けるものを例に説明したが、第1通路Fp1の終端Fp1eと第2通路Fp2の始端Fp2sとの間を流れる冷媒を検知するものであれば、検知手段の設置位置や検知手段の種類はこれに限定されない。例えば冷媒通路31のZ軸方向上端側の内周面から、冷媒通路31内にセンサヘッドWs1が突出するよう設けることもでき、また検知手段Wsとして例えばフローメータを用いることもできる。
【0025】
上記実施形態では、駆動ブロックDbに継手部10a,10bを設け、駆動ブロックDbから冷却水を供給して、支持ブロックSbに達した冷却水を駆動ブロックDbから排出するものを例に説明したが、支持ブロックSbに継手部を設け、支持ブロックSbから冷却水を供給して、駆動ブロックDbに達した冷却水を支持ブロックSbから排出するように構成することもできる。また、上記実施形態では、回転式カソードユニットRCを鉛直方向に起立姿勢で配置するものを例に説明したが、回転式カソードユニットRCを垂直方向に水平姿勢や所定の角度で傾斜した姿勢で配置するものにも、本発明を適用することができる。また、上記実施形態では、冷媒用のシール部材Sw1~Sw5を設置するものを例に説明したが、冷媒用のシール部材の設置個所や個数はこれらに限定されず、冷媒循環通路Fpの水密性を確保するため、必要に応じて冷媒用のシール部材を適宜設置してもよい。
【符号の説明】
【0026】
Sm…スパッタリング装置、RC…回転式カソードユニット、Tg…ターゲット、Db…駆動ブロック、Sb…支持ブロック、Fp…冷媒循環通路、Fp1…第1通路、Fp1e…第1通路の終端、Fp2…第2通路、Fp2s…第2通路の始端、Ws…検知手段、Wm1,Wm2…流量検知手段。