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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018825
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】微生物迅速検査方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20230202BHJP
   C12Q 1/22 20060101ALI20230202BHJP
   C12Q 1/6888 20180101ALI20230202BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/22
C12Q1/6888 Z
C12M1/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123126
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 真子
(72)【発明者】
【氏名】川邉 駿佑
(72)【発明者】
【氏名】野田 英之
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA01
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QQ63
4B063QQ79
4B063QR57
4B063QS32
4B063QS36
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】試料中の微生物を迅速に検出する技術を提供すること。
【解決手段】試料中の微生物を検出する方法であって、被験試料を用意する工程、前記被験試料を分割し、少なくとも2つの部分試料を準備する工程、第1の部分試料および第2の部分試料に対して異なる処理を行う工程、第1の部分試料において、前記微生物に存在するまたは前記微生物が分泌するマーカー物質を計測し、第1の計測値を得る工程、第2の部分試料において前記マーカー物質を計測し、第2の計測値を得る工程、第1の計測値からしきい値を算出する工程、第2の計測値と前記しきい値とを比較し、前記試料中に前記微生物が含まれるか否か判定する工程を含む方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の微生物を検出する方法であって、
被験試料を用意する工程、
前記被験試料を分割し、少なくとも2つの部分試料を準備する工程、
第1の部分試料および第2の部分試料に対して異なる処理を行う工程、
第1の部分試料において、前記微生物に存在するまたは前記微生物が分泌するマーカー物質を計測し、第1の計測値を得る工程、
第2の部分試料において前記マーカー物質を計測し、第2の計測値を得る工程、
第1の計測値からしきい値を算出する工程、
第2の計測値と前記しきい値とを比較し、前記試料中に前記微生物が含まれるか否か判定する工程
を含む方法。
【請求項2】
標準試料として、被験試料と同種の試料を用意する工程、
前記標準試料において前記マーカー物質を複数回計測する工程、
得られた複数の計測値のばらつきσを算出する工程、
第1の計測値の平均値aを算出する工程、
前記しきい値tをt=a+m・σ(式中、mは任意の係数である)として算出する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同種の試料が無菌試料である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の部分試料に対する前記処理が、前記マーカー物質の計測を阻害する処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2の部分試料に対する前記処理が、前記マーカー物質の量を増加させる処理を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2の部分試料に対する前記処理が、前記マーカー物質の量を増加させる処理を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記微生物についての既知のマーカー量と、前記微生物の既知の増殖速度と、ばらつきσとに基づいて、前記微生物のマーカー物質の量を増加させる処理の時間を決定する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、細胞試料、医薬品または化粧品試料、培地試料、体液試料、環境試料、食品試料および水試料からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マーカー物質が、ATP、エンドトキシン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、遺伝子、およびβガラクトシダーゼからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
微生物検出装置であって、
被験試料が分割された少なくとも2つの部分試料において、前記微生物に存在するまたは前記微生物が分泌するマーカー物質を計測する計測部と、
前記被験試料と同種の試料について予め取得した、マーカー物質の計測値のばらつきの値を格納する記憶部と、
制御解析部と
を備え、
前記制御解析部が、
前記計測部で計測された前記部分試料のうちの1つの計測値と、前記記憶部からの前記ばらつき値とに基づいて検出しきい値を算出し、
前記計測部で計測された別の前記部分試料の計測値と、前記しきい値とを比較し、前記被験試料中に前記微生物が含まれるか否か判定する
ものである、装置。
【請求項11】
前記計測部が光検出器を備える、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも2つの試料容器を有する試料処理部
をさらに備え、
前記試料処理部の試料容器において、前記少なくとも2つの部分試料に対して異なる処理が行われる、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記制御解析部に、前記被験試料の種類、前記マーカー物質の種類、および前記マーカー物質の計測方法からなる群より選択される少なくとも1つの情報を入力するための入力部
をさらに備える、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記制御解析部における判定の結果を出力する出力部
をさらに備える、請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の微生物を検出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品、食品等の中に細菌または真菌(以下、単に「菌」または「微生物」という)が混入していないことを確認する無菌検査においては、ごく少数の菌を検出する必要がある。従来、無菌検査に用いられてきた培養法は、培地中で菌を培養して細胞数を増加させて検出する方法である。この方法では、検出に十分な菌数を得るために1日以上の培養が必要であり、陰性を確定するために1週間以上培養するなど、時間がかかる点が大きな課題であった。そこで近年、いくつかの迅速試験法が開発されている。
【0003】
簡便に検査が可能な方法として、CO検出法が知られている。これは、密閉容器の中に封入された液体培地に試料を添加し、増殖してきた時に菌が産生する二酸化炭素を検出することで菌を検出する方法である(特許文献1)。
【0004】
また、より高感度に菌を検出可能な方法として、ATP(Adenosine Triphosphate:アデノシン三リン酸)法による検出方法が知られている。ATP法は、菌のATPをルシフェリン-ルシフェラーゼ反応による生物発光により検出する方法であり、一般に100CFU(Colony forming unit、コロニー形成単位)程度の菌を検出することができる。
【0005】
例えば特許文献2には、試料をフィルタろ過してフィルタ上に菌を捕集して濃縮し、さらに菌体外のATPを消去してバックグラウンドのATPを除いてから菌体内のATPを抽出するという方法が開示されている。特許文献2の方法は、高感度な菌検出が可能であり、菌を数個程度でも検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,074,870号
【特許文献2】米国特許第9,290,789号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
菌由来のマーカー物質、例えば代謝物、遺伝子、菌体の構成物質などを定量することで菌を検出する場合、より少量で菌の存在を検知できれば、高感度で迅速な検査が可能となる。
【0008】
しかし、無菌検査で検出対象となる微生物は100CFU以下と少数であるため、マーカー物質もごく少量であり、多くの場合、検査試料自体に含まれるマーカー物質が、菌由来のマーカー物質の検出を妨害するという問題がある。例えば、検査試料自体に含まれるマーカー物質量が、菌の持つマーカー物質量よりも1桁多いような場合には、菌を増菌培養して菌の持つマーカー物質が有意に増加するまで増菌培養を行ってから、マーカー物質測定をする、といった操作が必要となる。
【0009】
この時、菌検出のしきい値は、検査試料に含まれるマーカー物質の量から設定される。検出しきい値の設定は、検査試料自体に含まれるマーカー物質の量と、そのばらつきから設定するのが理想的である。たとえば、ネガティブコントロール(無菌の検査試料)のマーカー物質量を複数回測定して平均値aと標準偏差σを算出し、検出下限をa+3.3σと算出することがよく行われている。
【0010】
しかし、本発明者は、生物由来の原料を用いた製品における問題は、ネガティブコントロールの値が、日ごとあるいはロットごとに変動する点であると考えた。また、例えばオーダーメードの細胞製剤のような少量の製品では、無菌検査に使用できる量がごく少量であり、複数回測定してばらつきの値を見積もることができない。
【0011】
そこで、本発明は、菌検出しきい値を適切に設定し、迅速に菌検出を行うための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、検査試料を少なくとも2つに分割し、菌が存在した場合にそれぞれの試料のマーカー物質量に差がでるように、分割した試料にそれぞれ異なる処理を行い、マーカー物質量を計測し、一方の試料の計測値をしきい値の算出に用い、一方の試料の計測値をしきい値と比較して、菌有無判定に用いることにより、迅速かつ適切に菌検出を行うことができるという知見を得た。
【0013】
したがって、一態様において、本発明は、試料中の微生物を検出する方法であって、
被験試料を用意する工程、
前記被験試料を分割し、少なくとも2つの部分試料を準備する工程、
第1の部分試料および第2の部分試料に対して異なる処理を行う工程、
第1の部分試料において、前記微生物に存在するまたは前記微生物が分泌するマーカー物質を計測し、第1の計測値を得る工程、
第2の部分試料において前記マーカー物質を計測し、第2の計測値を得る工程、
第1の計測値からしきい値を算出する工程、
第2の計測値と前記しきい値とを比較し、前記試料中に前記微生物が含まれるか否か判定する工程
を含む方法を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、微生物検出装置であって、
被験試料が分割された少なくとも2つの部分試料において、前記微生物に存在するまたは前記微生物が分泌するマーカー物質を計測する計測部と、
前記被験試料と同種の試料について予め取得した、マーカー物質の計測値のばらつきの値を格納する記憶部と、
制御解析部と
を備え、
前記制御解析部が、
前記計測部で計測された前記部分試料のうちの1つの計測値と、前記記憶部からの前記ばらつき値とに基づいて検出しきい値を算出し、
前記計測部で計測された別の前記部分試料の計測値と、前記しきい値とを比較し、前記被験試料中に前記微生物が含まれるか否か判定する
ものである、装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本開示の微生物検出方法および装置により、試料中に微生物がわずかにしか存在しない場合または計測対象のマーカー物質が少量しか存在しない場合でも、迅速に微生物を検出することができる。したがって、本発明は、医薬品・化粧品製造、特に細胞製品の製造、食品製造などの分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】細胞試料中の細胞由来のマーカー物質(ATP)量のばらつきを測定した例を示すグラフである。
図2】細胞試料中の菌(微生物)を検出する方法のフローチャートの一例である。
図3】実施例1のATP量に基づいて細胞試料中の菌を検出する方法のフローチャートである。
図4】細胞試料中の菌を検出した例を示すグラフである。
図5】実施例2の微生物検出装置の構成例の概略図である。
図6】実施例2の微生物検出装置のうちの計測装置の構成例の概略図である。
図7】微生物検出装置の記憶装置に格納されたデータベースの例を示す。
図8】微生物検出装置の入出力装置の画面表示例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、微生物を検出するための方法および装置に関する。本発明では、微生物に存在するまたは微生物が分泌するマーカー物質量に基づいて試料中の微生物を検出する際、検出の基準とするしきい値を求める方法を特徴とする。以下、具体的に説明する。
【0018】
図1に、無菌の培養T細胞懸濁液に対し、1日に3回、異なる日に8回、以下の操作を行い、ATP量を計測した結果を示す。すなわち、培養T細胞10個を含む懸濁液から、マーカー物質としてATPを用いて菌を検出するため、細胞懸濁液から次のように細胞由来のATPを除去した。まず、細胞懸濁液に細胞溶解液を添加して細胞を溶解し、遠心フィルタでフィルタろ過した。フィルタは孔径0.45μmのろ過フィルタであり、試料に菌が含まれる場合は、フィルタ上に菌が捕捉される。次に、フィルタに洗浄液を添加してろ過し、フィルタに残存する溶解細胞を除去した。さらにフィルタにATP消去試薬(ATP分解酵素液)を添加して遊離ATPを40分かけて分解し、ろ過して液を除去した。ここにATP抽出試薬(菌を破壊して菌体内ATPを抽出する試薬)を添加してATPを抽出し、ろ過してろ液を計測試料としてATP計測用のチューブに得た。ここにATP発光試薬を添加し、発光量からATP量を定量した。以上の操作に用いた試薬およびフィルタは滅菌済みのものを用いた。T細胞は、1つの細胞株を一定の培養条件で継代しつづけたものである。
【0019】
ここで使用した試料は無菌試料であるため、計測されたATP量(図1)は、ろ過およびATP消去試薬で除去しきれずに残った細胞由来のATPである。同日中では1つの細胞懸濁液から3回分取して測定しており、日内変動の標準偏差は9.4amol(アトモル、10-18mol)であった。一方、日間変動の標準偏差は22amolと、日内変動と比較すると大きかった。日内変動は、サンプリング・細胞除去操作・ATP計測の変動が原因であり、日間変動は細胞の状態の変動を反映していると考えられる。このように、同じ細胞株を継代した試料であっても日による状態の差が大きい。
【0020】
したがって菌検出のしきい値は、検査当日の試料のATP計測値の平均値に日内標準偏差を加算した値とするのが理想である。例えば、標準偏差の10倍をしきい値の算出に用いるとすると、1日目の測定の平均値63.4amol、標準偏差4.7amolから、しきい値を63.4+10×4.7=110.4amolと設定することができる。同様にしきい値を計算すると、2日目は145.1amol、3日目は90.1amolなどと、その日の細胞の状態ごとに、しきい値を設定することができる。
【0021】
しかし、実際にはこのようなしきい値設定は難しい。その理由として、実際の検査試料は菌有無が不明であり、純粋なネガティブコントロールの測定ではないことがあげられる。また、検査試料ごとに複数回の計測を行って、平均値やばらつきを算出すると計測回数が増えコストが上昇する。さらに、対象製品の量が少なく無菌検査に使用できる検査試料量が少ない場合、複数回測定を行って計測のばらつきを算出することが困難である。
【0022】
そこで本発明では、図2に示すような方法でしきい値を設定する。
まず標準試料を用意する。標準試料は被験試料と同種のものを使用する。同種とは、同じ種類の試料、例えば同じ種類の細胞を含む試料を指し、一例として、バイオ医薬品製造における培養細胞試料の検査である場合、被験試料と同一の細胞株の別ロットのものなどであり、複数ロットを用意して使用してもよい。また、例えば自家細胞のT細胞製剤製品の検査の場合、同一被験者のT細胞を同種として用いるのが好ましいが、計測に使用可能な試料量が限られる場合、株化T細胞、あるいは別の被験者から提供されたT細胞、などを用いてもよい。また、例えば果汁などの飲料製品の検査の場合、同ロットの原材料から製造された製品、または別ロット、複数ロットを用いてもよい。
【0023】
一実施形態において、標準試料は無菌試料である。この場合、標準試料は別途、培養法などにより無菌検査を実施し、無菌について確認しておく。
なお、ここで言う無菌検査とは、ある無菌試験条件下で培養を試みた場合に、検出可能な数まで増殖する菌が存在しない、ということを指す。実際には、その試験条件下では増殖しない生菌や、検出下限以下の濃度の生菌が含まれる可能性がある。この場合、これらの菌がもつマーカー物質量が、以下に述べる方法によるしきい値設定、およびしきい値を用いた陽性・陰性の判定に影響を及ぼさない程度であれば、無菌と同等とみなしてよいと考えられる。無菌または無菌と同等の試料を用いる場合、計測された検査対象マーカー物質は、菌由来のマーカー物質を全く、または計測に影響しない程度にしか含まず、試料由来のマーカー物質についてのばらつきをより正確に得ることができる。
【0024】
また別の実施形態では、標準試料は無菌ではない試料である。無菌でない試料の場合でも、混在している菌が均一に分散しており計測中にマーカー物質が増減しない場合には、標準試料として使用することができる。この場合、標準試料のマーカー物質量を測定すると、絶対値は標準試料の値と菌の値が合計された値であるが、ばらつきは試料由来であり、以下に述べる標準偏差σの算出は可能である。実際には、混在した菌の分散のばらつきやマーカー物質の変動が生じることが想定されるが、そこから生じるばらつきが試料自体のばらつきよりも十分小さい場合(例えば1/10以下等)、標準試料として使用することが可能である。これは、例えば発酵食品や、ヒトから採取した血液試料などの、無菌にすることが困難な試料が検査対象の場合に有用である。
【0025】
次に、標準試料について、検査対象のマーカー物質(例えばATP)を複数回測定する。標準試料を日を変えて測定したり、複数ロットについて測定したりするとより望ましい。測定結果から、ばらつきの値(複数日に測定した場合、日間変動を除外して算出した日内変動の値)として標準偏差σを算出する。
次に、しきい値算出のための係数mを設定する。係数mについては後述する。
【0026】
次に、被験試料を用意し、この被験試料を分割し、少なくとも2つの部分試料を準備する。この少なくとも2つの部分試料に異なる処理を加え、菌が含まれる場合には両者の検査対象マーカー物質の計測値に差が生じるようにする。図2の例では、Aを殺菌処理することで菌由来のマーカー物質量を低減し、Bを短時間培養することで菌由来のマーカー物質を増加させている。2つの計測値の差が、あらかじめ決定されているばらつきσから算出される判定値tよりも大きい場合、菌陽性と判定し、小さい場合には菌陰性と判定する。
【0027】
このように、本発明では、試料を分割し、検出対象の微生物が存在した場合に分割した試料のマーカー物質量に差がでるように、分割した試料にそれぞれ異なる処理を行い、マーカー物質量を計測し、一方の試料の計測値をしきい値の算出に用い、一方の試料の計測値をしきい値と比較して、微生物の存在の判定に用いる。
【0028】
したがって、一態様において、本発明は、試料中の微生物を検出する方法であって、
被験試料を用意する工程、
前記被験試料を分割し、少なくとも2つの部分試料を準備する工程、
第1の部分試料および第2の部分試料に対して異なる処理を行う工程、
第1の部分試料において、前記微生物に存在するまたは前記微生物が分泌するマーカー物質を計測し、第1の計測値を得る工程、
第2の部分試料において前記マーカー物質を計測し、第2の計測値を得る工程、
第1の計測値からしきい値を算出する工程、
第2の計測値と前記しきい値とを比較し、前記試料中に前記微生物が含まれるか否か判定する工程
を含む方法を提供する。
【0029】
本発明において、検出対象となる「微生物」とは、細菌、放線菌、真菌などを含む様々な種類の微生物をいう。具体的には、薬局方において無菌試験法により検出対象となっている微生物、病院の検査室などで検査対象となる病原性細菌や病原性真菌などの微生物などである。例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)(具体例として、緑膿菌)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)(具体例として、プロプリオノバクター・アクネス(Proprionobacter acnes))、ブドウ球菌属(Staphylococcus)(具体例として、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、レンサ球菌属(Streptococcus)(具体例として、化膿性レンサ球菌、肺炎球菌)、エンテロコッカス属(Enterococcus)(具体例として、エンテロコッカス・フェシウム、エンテロコッカス・フェカリス)、ナイセリア属(Neisseria)(具体例として、りん菌、髄膜炎菌)、モラクセラ属(Moraxella)、大腸菌属(Escherichia)(具体例として、大腸菌)、赤痢菌属(Shigella)(具体例として、赤痢菌)、サルモネラ属(Salmonella)(具体例として、チフス菌、パラチフスA菌、腸炎菌)、シトロバクター属(Citrobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)(具体例として、肺炎桿菌)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラチア属(Serratia)(具体例として、セラチア・マルセッセンス)、プロテウス属(Proteus)、プロビデンシア属(Providencia)、モルガネラ属(Morganella)、エルシニア属(Yersinia)(具体例として、ペスト菌)、ビブリオ属(Vibrio)(具体例として、コレラ菌、腸炎ビブリオ、ビブリオ・バルニフィカス、ビブリオ・ミミカス)、エロモナス属(Aeromonas)、アシネトバクター属(Acinetobacter)(具体例として、アシネトバクター・バウマニイ)、アルカリゲネス属(Alcaligenes)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、ヘモフィルス属(Haemophilus)(具体例として、インフルエンザ菌)、パスツレラ属(Pasteurella)、フランシセラ属(Francisella)、ボルデテラ属(Bordetella)(具体例として、百日咳菌)、エイケネラ属(Eikenella)、ブルセラ属(Brucella)、ストレプトバチラス属(Streptobacillus)、アクチノバチラス属(Actinobacillus)、レジオネラ属(Legionella)(具体例として、レジオネラ・ニューモフィラ)、バシラス属(Bacillus)(具体例として、枯草菌、炭疽菌、セレウス菌)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)(具体例として、ジフテリア菌)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、リステリア属(Listeria)、エリジペロスリックス属(Erysipelothrix)、ノカルジア属(Nocardia)、放線菌属(Actinomyces)、クロストリジウム属(Clostridium)(具体例として、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・スポロゲネス)、バクテロイデス属(Bacteroides)(具体例として、バクテオリデス・フラジリス)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(具体例として、結核菌)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)(具体例として、ピロリ菌)、スピリルム属(Spirillum)、トレポネーマ属(Treponema)、ボレリア属(Borrelia)、レプトスピラ属(Leptospira)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)(具体例として、肺炎マイコプラズマ)、アスペルギルス属(Aspergillus)(具体例として、クロコウジカビ、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis))、酵母(具体例として、カンジダ・アルビカンス)などの細菌および真菌が含まれるが、これら以外の微生物も検出対象となりうる。本発明では、薬局方指標菌のうちATP量が少なく検出が難しいとされている微生物(例えば緑膿菌など)でも短時間の培養で検出することが可能である。
【0030】
被験試料は、微生物の有無について判定が望まれる試料であれば特に限定されるものではない。被験試料には、特に、生体に由来する生体試料、微生物による汚染が疑われる試料、微生物の存在について陰性を確定すべき試料が含まれる。例えば、細胞試料(例として、幹細胞、T細胞、移植片、細胞培養液、細胞培養上清等)、体液試料(例として、全血、血清、血漿、尿、骨髄液、精液、母乳、羊水、唾液等)、医薬品または化粧品試料(例として、注射剤、点滴剤、点眼剤、原料、製造中間体、容器洗浄液等)、環境試料(例として、クリーンルーム空気、表面等)、培地試料、食品試料(例として、食品、飲料、飼料、サプリメント、製造過程の中間体等)、水試料(例として、海水、河川水、工業用水等)、土壌試料などの様々な試料とすることができる。また、生体に由来する試料の場合、その被験試料の由来も特に限定されるものではなく、任意の生物種に由来するものとすることができる。例えば、動物、植物、昆虫などの様々な種類の生物の少なくとも1種に由来する試料を被験試料とする。
【0031】
本発明において「検出」とは、被験試料に微生物が存在するか否かを判定すること、被験試料中の微生物の量を推定すること、被験試料中に微生物が存在しないこと(微生物陰性)を確定することなどを意味する。被験試料に含まれる可能性のある微生物の濃度は、特に限定されるものではない。
【0032】
また、計測する「マーカー物質」とは、検出対象の微生物に存在するまたは微生物が分泌する物質を意味し、試料中のその量または濃度を計測できる物質である。マーカー物質は、検出対象の微生物の種類、試料の種類、計測機器などに応じて異なり、当業者であれば適宜選択することができる。例えば、ATP、エンドトキシン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(還元型NAD(P)H等)、遺伝子(DNA、RNA、miRNA等)、タンパク質(βガラクトシダーゼ、NADH-キノン酸化還元酵素、その他の酵素、微生物表面に発現される表面タンパク質等)、糖鎖、膜脂質、代謝物などが挙げられる。このようなマーカー物質を計測するための方法および手段は当技術分野で公知である。
【0033】
本方法では、まず被験試料を用意する。被験試料が液体試料である場合には、そのまま、または溶媒で希釈もしくは濃縮して使用することができる。固体試料である場合には、溶媒に懸濁するか、粉砕機などによりホモジナイズするか、あるいは溶媒と共に攪拌して得られる上清を使用してもよい。溶媒としては、例えば、蒸留水、生理食塩水、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などが挙げられる。さらには、試料をフィルターでろ過し、微生物を捕捉したフィルターを用いることも可能である。そのようなフィルターは、微生物を捕捉できるサイズであれば特に限定されない。
【0034】
次いで、被験試料を分割し、少なくとも2つの部分試料を準備する。例えば、被験試料を2分割する。分割した部分試料は、別の容器に入れる。本明細書では、試料を2分割して第1の部分試料と第2の部分試料を準備した場合について詳細に説明するが、被験試料の量が多い場合には、第3の部分試料、第4の部分試料などを準備してもよく、同様に処理することが可能である。
【0035】
次に、分割した部分試料に対して異なる処理を行う。すなわち第1の部分試料および第2の部分試料に対して異なる処理を行う。ここで、異なる処理とは、被験試料中に微生物が存在した場合に、この後に計測するマーカー物質の量または濃度に差を生じさせる処理を意味し、処理の操作が異なってもよいし、処理の条件(時間、温度、添加試薬など)が異なってもよいし、処理の操作回数が異なってもよいし、一方を処理して他方を無処理としてもよい。一実施形態では、部分試料(例えば第1の部分試料)に対して、マーカー物質の計測を阻害する処理を行う。そのような処理としては、限定されるものではないが、殺菌処理(例えば、加熱処理、紫外線・ガンマ線・電子線処理、殺菌剤による処理等)、静菌処理(例えば、加熱処理、静菌剤による処理等、生菌の増殖を抑制する処理)、マーカー物質がタンパク質である場合にはタンパク質分解処理または検出を阻害する抗体による処理などが挙げられる。また一実施形態では、部分試料(例えば第2の部分試料)に対して、マーカー物質の量を増加させる処理を行う。マーカー物質の量を増加させる処理は、微生物に存在するマーカー物質量が少ない場合や日内変動によるばらつきが多い場合に行うことが好ましい処理である。そのような処理としては、限定されるものではないが、増菌条件下での培養が挙げられる。培養に使用する培地は、検出対象の微生物の種類や被験試料の種類によって異なるが、例えば既存の無菌試験法で使用されている培地(例えば、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(SCD)培地、サブロー・ブドウ糖液体培地、液状チオグリコール酸培地、乳糖ブイヨンなど)を使用することができる。被験試料の種類、存在する可能性のある微生物の種類および想定される量などに応じて、当業者であれば適宜選択することが可能である。培養は、当技術分野で慣用的に使用されている条件(温度、時間、好気性もしくは嫌気性、静置もしくは振とう)で行うことができる。具体的な培養条件は、対象の微生物の種類および被験試料の種類、使用する培地の種類などに応じて異なり、当業者であれば適宜設定することができる。培養時間は、具体的には30分~48時間、好ましくは1~30時間、より好ましくは1~24時間である。なお、培養時間は、検出対象の微生物の量や種類、被験試料の種類、使用する培地、培養温度などによって変動する。
【0036】
第1の部分試料におけるマーカー物質の量が、第2の部分試料におけるマーカー物質の量よりも少なくなるように異なる処理を設定することが好ましい。好ましい実施形態では、第1の部分試料に対して殺菌または静菌処理を行い、第2の部分試料に対して増菌条件下での培養を行う。別の好ましい実施形態では、第1の部分試料に対して殺菌または静菌処理を行い、第2の部分処理に対して処理を行わない(無処理とする)。さらに別の好ましい実施形態では、第1の部分試料の培養時間を第2の部分試料の培養時間よりも短く設定する。
【0037】
一実施形態では、第2の部分試料に対する処理が、マーカー物質の量を増加させる処理を含み、本方法が、微生物についての既知のマーカー量と、微生物の既知の増殖速度と、後述するばらつきσとに基づいて、微生物のマーカー物質の量を増加させる処理の時間を決定する工程をさらに含む。微生物は、その種類によって、微生物の倍加時間、マーカー物質量などが異なるため、微生物の種類に応じて処理の時間を決定することが望ましい。
【0038】
続いて、第1の部分試料においてマーカー物質を計測し、第1の計測値を得る。また、第2の部分試料においてマーカー物質を計測し、第2の計測値を得る。これらの工程は、並行して行ってもよいし、連続して行ってもよい。一部ないし全部の工程を並行して行った方が、より短時間で検査ができる。各部分試料に対するマーカー物質量を変化させるための処理は並行して行い、マーカー物質の計測は連続して行うこととしてもよい。第1の計測値と第2の計測値は、いずれを先に得てもよい。また、第1の計測値を得、後述するしきい値を算出した後に、第2の計測値を得てもよい。
【0039】
マーカー物質の計測方法は、マーカー物質の種類応じて異なり、当業者であれば適宜マーカー物質を計測することができる。例えば、マーカー物質がATPである場合、ATPの計測は、公知のATP発光計測法により行うことができる。具体的には、ATPと化学反応して光を生じるルシフェラーゼとルシフェリンを使用して、細胞内のATPとルシフェラーゼ、ルシフェリンの反応により生じた発光を計測し、発光量からATP値を決定する。このようなATPの計測は、当業者であれば市販のATP検出試薬またはキットなどを使用して容易に行うことができる。前処理として、微生物由来のATP以外のATPを除去することが好ましく、例えば、ATP分解酵素を試料に添加する。続いて、公知のATP抽出液(例えば、トリクロロ酢酸、界面活性剤、リゾチームなど)を用いて細胞内のATPを抽出する。その後、抽出したATPを、ルシフェリン-ルシフェラーゼ発光反応を利用して発光させる。具体的には、ルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む発光試薬を試料に添加する。発光試薬と抽出されたATPとが反応して発光が生じるため、その発光量を測定する。発光試薬もまた当技術分野で公知であり、特に限定されるものではない。発光の測定は、当技術分野で公知の発光測定方法および光検出器により、例えばルミノメーター、分光光度計、発光プレートリーダーを用いて実施することができる。発光量の測定値に基づいて、試料中のATP値を取得する。
【0040】
またマーカー物質がエンドトキシンである場合、これらの物質の計測は当技術分野で周知であり、検出キットおよび検出システムが多く市販されている。好ましくは、光計測によりエンドトキシンを計測できる方法またはキットを使用する。
【0041】
マーカー物質が遺伝子(DNA、RNA、miRNA等)である場合も、遺伝子量の計測は当技術分野で周知であり、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、ハイブリダイゼーションなどの原理を応用した多くの手法が知られている。当業者であれば、計測しようとする遺伝子に応じて、適当な方法によりマーカー物質である遺伝子を計測することが可能である。細菌、または真菌の16SリボソームDNAの共通領域をPCR増幅するプライマーを含むキットが市販されており、PCRによる菌検出が可能である。菌検出後、さらにPCR産物をシーケンシングに供することにより、菌種同定することも可能である。
【0042】
マーカー物質がタンパク質(表面タンパク質、βガラクトシダーゼその他の酵素、等)である場合には、そのタンパク質の種類に応じて、抗原抗体反応、酵素反応などを利用してマーカー物質を計測することができる。このようなタンパク質の計測も当技術分野で周知であり、検出キットおよび検出システムが多く市販されている。好ましくは、光計測によりタンパク質を計測できる方法またはキットを使用する。
【0043】
マーカー物質が代謝物である場合には、代謝物に特有の物理的または化学的特性を測定するための手段、例えば正確な分子量またはNMRスペクトル等を測定するための手段によって行うことができる。代謝物を測定するための手段としては、質量分析計(MS)、NMR分析計、二次元電気泳動装置、クロマトグラフ、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)等の分析装置が知られている。代謝物がATPである場合は、前述のATP計測キットで発光測定により計測することができる。また、代謝物が反応性の化学物質、たとえばニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、例として還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD(P)H)のような物質の場合、その物質と反応して蛍光波長の変化する色素を添加することで、蛍光測定により測定する方法や、その物質と反応して活性酸素を発生する試薬を添加し、その活性酸素を化学発光で測定する方法などがある。
【0044】
続いて、第1の計測値からしきい値を算出する。しきい値は、上述した異なる処理を行った部分試料におけるマーカー物質の量の差に基づいて微生物の存在を判定する上で重要であり、被験試料におけるマーカー物質量の変動によって生じるばらつき、およびマーカー物質量の測定のばらつきを考慮して算出する。ばらつきは、計測日内での変動に基づいて求めることが好ましい。このばらつきは、被験試料と同種の試料または被験試料の一部を用いて事前に求めるかまたは本方法と並行して求めることができる。なお、被験試料におけるマーカー物質量の変動によって生じるばらつきが、マーカー物質量の測定のばらつきよりも十分小さい場合は、マーカー物質量の測定のばらつきのみを使用してしきい値の算出を行ってもよい。
【0045】
例えば被験試料と同種の試料を使用してその試料のばらつきを求めた後、しきい値を算出する場合について説明する。一実施形態では、本方法は、
標準試料として、被験試料と同種の試料を用意する工程、
前記標準試料において前記マーカー物質を複数回計測する工程、
得られた複数の計測値のばらつきσを算出する工程、
第1の計測値の平均値aを算出する工程、
前記しきい値tをt=a+m・σ(式中、mは任意の係数である)として算出する工程
をさらに含む。
【0046】
標準試料は、上述した通りであり、例えば、被験試料と同一の製品の別ロットのものなどであり、複数ロットを用意して使用してもよい。この標準試料は、無菌について確認されているものであってもよいし、無菌ではない試料であってもよい。
【0047】
次に、標準試料においてマーカー物質を複数回計測する。複数回の計測は、日内変動を把握するために同日に行うことが好ましいが、日を変えて測定したり、複数ロットについて測定することにより、変動についてより詳細に理解することができる。得られた複数の計測値から、ばらつきσ(標準偏差)を算出する。
【0048】
上述の第1の計測値の平均値aを算出し、しきい値をt=a+m・σとして算出する。ここで、係数mは、一方の部分試料の計測値(例えば第1の計測値)と別の部分試料の計測値(例えば第2の計測値)との差がばらつきσの何倍である場合に試料中に微生物が存在すると判定するかを表し、例えば、差がばらつきσの10倍以上である場合に微生物が存在すると判定する場合には、係数mは10となる。mは、任意の数値であるが、検出限界である3以上であり、好ましくは6以上、より好ましくは9以上である。mの値は大きいほど偽陽性率は低減するが、その一方、感度(陽性の試料のうち、陽性と判定される率)は低下するため、20以下が望ましい。
【0049】
しきい値を算出するための具体的な例について説明したが、本方法では他の方法によりしきい値を算出することも可能であり、上述した方法に限定されるものではない。
【0050】
その後、第2の計測値と上述したしきい値とを比較し、試料中に微生物が含まれるか否か判定する。すなわち、第2の計測値が上述したしきい値よりも小さい場合には、試料中に微生物が存在しない(微生物陰性)と判定し、第2の計測値が上述したしきい値以上の場合には、試料中に微生物が存在する(微生物陽性)と判定する。あるいは、例えば係数mが5~10であり、第2の計測値が上述したしきい値と同じまたはほぼ同じ場合には、再計測を行ってもよい。第2の部分試料について複数回計測を行った場合には、第2の計測値の平均値を判定に使用する。
【0051】
本方法により、試料中に微生物がわずかにしか存在しない場合または計測対象のマーカー物質が少量しか存在しない場合でも、迅速におよび/または高感度で微生物を検出することが可能となる。
【0052】
さらに本発明は、上述したような方法を実施するための微生物検出装置を提供する。具体的には、本発明に係る微生物検出装置は、
被験試料が分割された少なくとも2つの部分試料において、前記微生物に存在するまたは前記微生物が分泌するマーカー物質を計測する計測部と、
前記被験試料と同種の試料について予め取得した、マーカー物質の計測値のばらつきの値を格納する記憶部と、
制御解析部と
を備え、
前記制御解析部が、
前記計測部で計測された前記部分試料のうちの1つの計測値と、前記記憶部からの前記ばらつき値とに基づいて検出しきい値を算出し、
前記計測部で計測された別の前記部分試料の計測値と、前記しきい値とを比較し、前記被験試料中に前記微生物が含まれるか否か判定する
ものである。
【0053】
計測部は、少なくともマーカー物質を計測することができる手段を備える。そのような計測手段は、計測対象のマーカー物質の種類に応じて異なり、例えば光検出器(ルミノメーター、分光光度計、発光プレートリーダー等)、質量分析装置などが挙げられる。また、計測部は、複数の部分試料のそれぞれについてマーカー物質の計測を行うように構成される。例えば、計測部は、複数の計測手段を備えてもよいし、1つの計測手段によって複数の部分試料を計測してもよい。
【0054】
記憶部は、被験試料と同種の試料について予め取得した、マーカー物質の計測値のばらつきの値を少なくとも格納している。記憶部には、格納されているばらつき値を算出する際のマーカー物質の計測値(実測値)、マーカー物質の計測方法および計測条件、被験試料の種類などが、マーカー物質の種類ごとに格納されていてもよい。また、本装置により新たに計測された被験試料におけるマーカー物質の計測値、計測方法および計測条件、被験試料の種類、判定結果などが随時格納されてもよい。
【0055】
制御解析部は、本装置の全体を制御もしくは各コンポーネント(計測部、記憶部など)における操作を制御しおよび/または解析を実行することができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的にはコンピュータである。制御解析部は、他のコンポーネント(計測部、記憶部など)と接続して配置または一体化してもよいし、有線または無線のネットワークを介して接続してもよい。
【0056】
制御解析部は、計測部で計測された部分試料のうちの1つの計測値(例えば、第1の部分試料の第1の計測値)と、記憶部からのばらつき値とに基づいて検出しきい値を算出し、計測部で計測された別の部分試料の計測値(例えば、第2の部分試料の第2の計測値)と、しきい値とを比較し、被験試料中に微生物が含まれるか否か判定する。具体的な判定方法は、上述した微生物検出方法と同様である。
【0057】
本装置は、少なくとも2つの試料容器を有する試料処理部をさらに備えていてもよく、その試料処理部の試料容器において、少なくとも2つの部分試料に対して異なる処理が行われる。例えば、試料処理部は、試料容器に加えて、試料中に含まれる細胞および微生物を分離するための手段(フィルター、遠心分離器など)、計測するマーカー物質を回収する容器、温調装置などを備えることができる。また試料処理部は、被験試料を分割する手段(例えば分注ピペットなど)を備えていてもよい。
【0058】
さらに本装置は、入力部および/または出力部を備えていてもよい。入力部は、制御解析部に、被験試料の種類、マーカー物質の種類、およびマーカー物質の計測方法からなる群より選択される少なくとも1つの情報を入力するために使用される。また出力部は、例えば、制御解析部における判定の結果を出力する。
【0059】
なお、本装置は、計測部で使用する試薬を保持する部分および試薬を導入する手段を備えてもよい。例えば、マーカー物質としてATPを計測する場合には、ATP検出試薬(ATP分解酵素、ATP抽出液、ATP発光試薬など)を保持する部分と、それを各部分試料に導入する手段を備えることができる。
【0060】
本装置は、試料処理部と計測部との間で試料もしくは試料を含む容器またはマーカー物質を含む容器を運ぶ機構を備えるものであってもよい。
【0061】
本装置により、迅速に試料中の微生物を検出することができる。特に、試料中に含まれる微生物がわずかである場合や計測対象となるマーカー物質がわずかである場合でも、迅速に微生物を検出できる利点がある。
【実施例0062】
以下、本発明を実施例および図面によりさらに具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0063】
[実施例1]
具体的な一例として、本発明の方法を用いてT細胞培養液中の菌を検出した例を図3に示す。本実施例では、検査対象マーカー物質としてATPを計測した。
【0064】
まず、標準試料(T細胞試料)として、T細胞10個を含むT細胞培養液を1日に3測定、異なる複数の日に、ATP量の測定を行い、日内の標準偏差σ=9.4amolと算出した(図1)。方法は、図1について説明したものと同様であり、細胞溶解処理、フィルタ上への菌捕捉、活性消去反応(ATP消去反応)、菌由来のATP抽出、ATP測定および標準偏差(ばらつき)σ算出を行った(図3の左側のフロー)。
【0065】
次に、被験試料(被験対象T細胞試料)として、緑膿菌(P.aeruginosa)34CFUとT細胞2×10個を含むT細胞培養液を用意した。これを、標準試料と同様に細胞溶解処理した後、等分割して部分試料AおよびBの2つを用意し、別々の遠心フィルタに添加し、フィルタろ過し、各フィルタに洗浄液を添加してろ過し、フィルタに残存する溶解細胞を除去した。
【0066】
次に、Aのフィルタは加熱殺菌処理を行った。次に、両方のフィルタにATP消去試薬(ATP分解酵素液)を添加して35℃でインキュベートし、遊離ATPを180分かけて分解し、同時にBに存在する生菌を培養した。
【0067】
次にろ過して液を除去し、ここにATP抽出試薬(菌を破壊して菌体内ATPを抽出する試薬)を添加して菌ATP溶液とした後、ろ過し、ろ液をATP計測用のチューブに得た。ここにATP発光試薬を添加し、発光量からATP量を定量した。
【0068】
Aに殺菌処理を加えることで、Aの部分試料中の菌は破壊されるため、Aの計測値aには菌由来のATPは含まれず、細胞由来のATPだけが計測される。また、Bの部分試料中の菌はATP消去試薬中で増殖してATPが増加しているため、Bの計測値bには菌由来のATPと細胞由来のATPが含まれる。
【0069】
計測結果を図4のグラフに示す。菌34CFUとT細胞2×10個を含む試料の場合、Aの計測値aは22amol、Bの計測値bは123amolであった(図4の右側)。ここで、検出しきい値を計算する際に必要となる、被験試料自体のATP量の平均値の代わりにaの値を用い、ばらつきの値としてあらかじめ標準試料で計測した標準偏差σを用いる。Aの値とBの値がσの10倍以上の差があれば菌陽性とすると設定した場合(すなわち、係数mを10とする)、しきい値t=a+m×σ=22+10×9.4=116amolと算出される。Bの値bはしきい値tより大きいので、菌陽性と判定された。ここで、例えばしきい値t=bとなる場合には、陽性疑いとして再検査してもよい。
【0070】
同様の検査を、菌を含まずT細胞2×10個を含むT細胞培養液を被験試料として実施した場合のaの値は17amol、bの値は33amolであった(図4の左側)。同様にしきい値を計算すると111amolとなり、bの値はこの値よりも小さいことから、菌陰性と判定された。
【0071】
ここで、しきい値の算出方法t=a+m・σのうち、係数mの値の設定は、検出限界の算出方法として3.29または3とすることもある。これはσを算出する際の計測回数を十分とった場合の値であり、n=3の測定であればm=6程度にする必要がある。また、複数回測定の平均値の代わりに、部分試料Aの1回測定の値aを使用してしきい値を算出することから、補正のために3σ程度の尤度を持つことが好ましい。したがって、m値は6以上、より好ましくは9以上とすることが望ましい。mの値は大きいほど偽陽性率は低減するが、その一方、感度(陽性の試料のうち、陽性と判定される率)は低下するため、20以下が望ましい。
【0072】
Bの部分試料中の菌が持つマーカー物質量を、Aよりもm・σ以上高くする必要がある。菌のマーカー物質量が少ない場合や、日内変動によるσが大きい場合には、増菌培養することでbの値を上げることにより、偽陽性率を下げることができる。
【0073】
本実施例では、部分試料Aで殺菌処理、Bで増菌培養を行ったが、目標の菌検出下限が高い場合など、増菌培養しなくてもAとBの間で菌由来ATP量にσより十分大きい差があることが分かっている場合は、Bにおいて増菌培養を行わなくてもよい。この場合、活性消去反応をAとBで、例えば30分に短縮させ、より迅速に菌有無判定を行うことができる。
【0074】
また、部分試料Aの殺菌処理の代わりに、検出対象物質の検出をブロックする処理を行うことでも同様の目的が達せられる。例えば、菌表面の抗原を抗原抗体反応により検出する場合には、この抗原を分解する処理や、この抗原に結合して検出試薬による検出を阻害する抗体を添加する処理などを採用することもできる。
【0075】
あるいは、部分試料Aに殺菌処理等を行わず、AのATP消去反応を30分、BのATP消去反応を180分とするなど、増菌時間に差をつける方法も採用することができる。
【0076】
部分試料AとBの処理は、並列に行うことが好ましい。なぜなら、フィルタ上に捕捉された生菌は条件が整えば、フィルタ上で増殖またはATPの産生を行い、時間とともにATP量が変化するからである。また、AとBを順に処理するよりも、並列に処理した方が処理時間が短縮され迅速な検査が可能となる。また、AとBの処理開始の時間差は、10分以内が好ましい。なぜなら、細菌の中で分裂の早い大腸菌などが分裂するのに要する時間は10~20分程度であり、時間差が大きくなると正確な計測が難しくなるためである。
【0077】
部分試料AとBの処理を並列に行わず、一部または全部を直列に行う場合は、処理中に生菌が予期せぬ増加をすることにより、判定結果に影響しないように工夫が必要となることがある。例えば、Aで殺菌処理を終えた後にBの処理に入ることで、Aで菌が増殖して計測値が上昇することを防ぐことができる。また逆に、例えば試料中に抗生物質のような菌の増殖を抑制する物質がある場合には、先にBのろ過・洗浄処理を行うことで抗生物質を除去し、Bにおける増菌を可能とすることができる。
【0078】
また、菌に含まれるATP量は菌種ごとに異なる。例えば、1CFUあたり、ブドウ球菌(Staphylococcus属に属する細菌)で1~10amol、カンジダ(Candida属に属する真菌)で50~500amolである。また、菌の倍加時間(菌数または計測対象マーカー物質が倍になる時間)も、菌種ごとに異なり、ブドウ球菌で10~30分、カンジダで1~2時間である。これらの情報をもとに、増菌培養時間の設定を行うことができる。
【0079】
まず、検出対象の菌種について、ATP内包量と細胞分裂時間を計測して、データベース化しておく。次に、しきい値計算に用いるm・σの値を算出する。本実施例のT細胞の例では、10×9.8=98amolである。目標検出下限30CFUの場合、部分試料B中に15CFUが存在し、増菌培養中に増殖する。例えばブドウ球菌を検出する場合、増菌培養前の部分試料B中の菌由来ATP量は、1amol/CFU×15CFU=15amolであり、しきい値より低い。これが倍加時間30分で増加していくとすると、1.5時間の培養で120amolに達する。したがって、増菌培養時間1.5時間が必要とわかる。実際には、被験試料30CFUを分割する際のばらつき、増菌培養条件や菌株間のばらつきなどを考慮し、余裕をみて増菌培養時間を2時間~3時間程度に設定することが望ましい。
【0080】
このように、あらかじめ菌由来の計測対象マーカー物質の量と菌増殖速度を設定することにより、増菌培養の時間を設定することが可能である。
【0081】
[実施例2]
本発明に係る微生物検出装置の構成例を図5に示す。計測装置1、入出力装置2、記憶装置3が、コンピュータ4に接続されている。また、計測装置(試料処理部13および計測部16)の構成例を図6に示す。試料中のATPを計測して菌の有無について判定する場合について説明する。
【0082】
ユーザは、入出力装置2において、試料の種類、しきい値を計算する際の係数m、計測メソッドの選択を行う。
また、ユーザは計測装置内の試薬ホルダ5に、洗浄試薬、ATP消去試薬、ATP抽出試薬、発光試薬を設置する。
【0083】
ユーザはまた、廃液容器6と、ろ過フィルタ9のついた試料容器7を、部分試料A、Bの2セットについて、別々の温調部8(8A、8B)に設置する。温調部8A、8Bは、フィルタ9とその周辺を温調し、温度は独立に設定される。フィルタ9の孔径は、0.45μm以下の、菌を捕捉可能で、無菌のものを用いる。
【0084】
ユーザは、例えば被験試料を等分に2分割して、各試料容器7に添加する。
試料容器7と廃液容器6は遠心ロータ10にセットされており、遠心によりろ過を行い、菌をフィルタ上に捕捉・濃縮するとともに、溶媒を廃液容器6に収容する。溶媒を除去することにより、以降に添加する試薬の働きを阻害する物質や菌の増殖を阻害する物質を除去し、高感度な計測が可能となる。
【0085】
ここでは、試料容器7と廃液容器6は遠心ロータ10に置かれているが、別にチューブホルダを設け、遠心ろ過する際に遠心ロータに試料容器7と廃液容器6を搬送してもよい。また、遠心ろ過の代わりに、吸引ろ過や加圧ろ過など、他の手段でろ過することも可能である。
【0086】
次に、分注装置11を用いてフィルタ洗浄のための洗浄試薬が添加された後、遠心ろ過により除去される。この洗浄試薬は、緩衝液や、増菌培地、界面活性剤液、ATP消去試薬など、菌にダメージを与えず、かつ試料マトリックスを洗浄可能な溶液が選択される。
【0087】
次に、温調部8Aによりフィルタを加熱し、フィルタ上の菌を殺菌する。温度は60~80℃程度で、1分~10分程度処理を行う。
【0088】
次に、分注装置11を用いて、AおよびBの両方の試料容器7にATP消去試薬を添加し、フィルタ上に残った菌体外の遊離ATPを消去する。この際、適切な条件下では、Bのフィルタ9上の生菌は増殖し、菌由来ATPは増加する。このように菌体外ATPの消去と増菌を一緒に行う場合には、ATP消去試薬に、菌の増殖を促進するための栄養源となる物質や培地を添加してもよい。温調部8Aおよび8Bをいずれも35℃前後の、ATP消去反応および増菌に適した温度に設定し、一定時間反応を行う。この反応の条件(温度・時間)は、あらかじめ標準菌株で試験して、目標菌数の標準菌株を検出するために必要な増菌時間として決定することができる。反応後、遠心ろ過によりATP消去試薬を除去する。
【0089】
次に、試料容器7を、計測試料回収容器12に移動する。ここにATP抽出試薬を添加して菌体内ATPを抽出する。そのあと遠心ローター10の遠心により、抽出液を回収容器に回収する。
回収後、計測試料回収容器12を試料処理部13から発光計測部16に搬送し、試料容器7は除去する。分注装置14により抽出液に発光試薬を添加し、生じた発光を光検出器15により計測する。
【0090】
ここでは、試料回収容器12を遠心ローター10から光検出器15に搬送したが、光検出器15を遠心ローター10下部に位置させ、その場で発光計測をしてもよい。その場合、試料処理部と計測部が一体化していることになる。
【0091】
コンピュータ4は、ユーザが選択した試料の種類および計測対象のマーカー物質(本実施例ではATP)に対応した計測ばらつき値σを記憶装置3のデータベースから呼び出し、ユーザが設定したm値、光検出器15によって計測した試料Aの計測値aから、しきい値t=a+m・σを算出する。試料Bの計測値bとしきい値tを比較し、bの方が大きければ菌陽性、bの方が小さければ菌陰性と判定する。記憶装置に試料名、計測値(a、b)、σ、m、t、判定結果を記憶し、判定結果を入出力装置(モニタ)2に出力する。必要に応じて、偽陽性率および/または偽陰性率が出力されてもよい。
【0092】
以上の装置構成により、被験試料ごとに最適な検出しきい値を設定することができ、より迅速な菌検出を行うことができる。
【0093】
[実施例3]
図7に、本発明に係る装置において使用するデータベースの一例を示す。
データベースには、試料の種類と、計測物質(マーカー物質)、計測メソッド、計測値の最大値、計測値のばらつきσ、これらの値を算出するのに用いられたデータが関連付けられて記録されている。計測メソッドは、試料の前処理、および計測の方法であり、試薬種類、添加量、温度条件、反応時間、ろ過条件、光検出器の設定などの情報を含んでいる。
【0094】
計測物質は、1種類に限られず、複数種の物質を含んでもよい。計測物質は、検出対象の菌の種類や被験試料の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、発光計測により定量することが可能な物質として、ATP、エンドトキシン、βガラクトシダーゼなどが挙げられる。これらの物質の量および/または活性を発光計測により定量することが可能な試薬を用いれば、1つの装置で各種の物質により、菌を検出することが可能である。また、蛍光計測を用いて菌由来の物質を定量したり、定量PCRにより菌由来の遺伝子を定量することも可能である。
【0095】
ユーザーは被験試料の計測の際、試料と計測物質を指定する。コンピュータはデータベースから該当するσ値を用いてしきい値を算出する。データベースにaの最大値を保存することで、試料Aの計測値aがこの最大値を超えた時に、試料処理のエラー疑いとして出力画面に警告を表示する(または音声により警告を発する)ようにすることもできる。
【0096】
[実施例4]
図8に、本発明に係る装置において使用する入出力画面の一例を示す。
計測(Sample analysis)画面では、サンプル名(Name)、サンプル種類(Sample)、計測メソッド(Method)を選択し、計測を実施するよう指示することができる。計測後に、自動で算出された検出しきい値(Threshold)、試料Bの計測値(b)、判定結果(Result)が表示される。
【0097】
計測メソッド(Method)画面では、しきい値(Threshold)を算出する際に必要なm値を設定する。また、使用するσの値を、データベースから読み出す。殺菌処理(pretreatment)の温度設定や、増菌培養(culture)の温度設定も行うことができる。
【0098】
計測結果(Result)画面では、計測メソッド(Method)、サンプル種類(Sample)、σ値、m値、計測結果(aおよびb)、算出されたしきい値(Threshold)、計測実施日時(StartおよびEnd)、判定結果(Result)、判定の偽陽性率(False positive rate)、などが表示される。これらの情報は、記憶装置に格納される。
【符号の説明】
【0099】
1 計測装置
2 入出力装置
3 記憶装置
4 コンピュータ
5 試薬ホルダ
6 廃液容器
7 試料容器
8 温調部(8A、8B)
9 フィルタ
10 遠心ローター
11 分注装置
12 計測試料回収容器
13 試料処理部
14 分注装置
15 光検出器
16 計測部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8