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  • 特開-pH計設置ユニット 図1
  • 特開-pH計設置ユニット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018919
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】pH計設置ユニット
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/28 20060101AFI20230202BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
G01N27/28 341F
G01N27/416 353Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123293
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】大西 悟史
(57)【要約】
【課題】pHを測定する対象の液体が流通する設備の大型化を抑制するとともに、pH計の性能の低下を抑制することのできるpH計設置ユニットを提供する。
【解決手段】pH計10を設置する際に用いられるpH計設置ユニット1であって、測定対象の液体を流入させて貯留する液体貯留部31と、液体貯留部31に貯留した液体にpH計10のガラス電極11の少なくとも先端部が浸漬されるようにpH計10を支持するpH計支持部33と、を有するユニット本体30を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH計を設置する際に用いられるpH計設置ユニットであって、
測定対象の液体を流入させて貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部に貯留した液体に前記pH計のガラス電極の少なくとも先端部が浸漬されるように前記pH計を支持するpH計支持部と、を有するユニット本体を備える
pH計設置ユニット。
【請求項2】
前記液体貯留部は、貯留されている液体を溢れ出させるとともに、前記ガラス電極を挿通する開口部を有する
請求項1に記載のpH計設置ユニット。
【請求項3】
前記ユニット本体は、前記液体貯留部の前記開口部から溢れ出した液体を受容する溢出液体受容部を備え、
前記溢出液体受容部には、受容した液体を流出させる液体流出管が接続されている
請求項2に記載のpH計設置ユニット。
【請求項4】
前記溢出液体受容部は、前記液体流出管の接続部に向かって下り傾斜となる底部を有している
請求項3に記載のpH計設置ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工場における排水等の液体のpHを測定するpH計を設置する際に用いられるpH計設置ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、鉱石から金属を取り出す製錬工場や半導体の製造工場は、pHの管理が必要な排水が流通する排水設備を有している。
【0003】
従来の工場では、排水設備を構成する排水槽等の排水が貯留される部分にpH計を取り付けることにより、排水のpHを測定するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-8644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
pH計は、ガラス電極および比較電極を有し、ガラス電極および比較電極を排水に浸漬することによってpHを測定している。ガラス電極および比較電極は、衝撃によって破損し易いため、ガラス電極および比較電極を筒状のホルダに収容した状態で排水が貯留される部分に取り付ける必要がある。また、pH計は、ガラス電極の先端部に位置するガラス膜が乾燥すると性能が低下するため、pHの測定時以外の状態においても、ガラス膜の乾燥を抑制するためにガラス電極の先端部を排水等の液体に浸漬した状態を保持する必要がある。このため、排水設備における排水が貯留される部分においては、pH計を設置するために大きなスペースが必要となり、排水設備が大型化するおそれがある。
【0006】
本発明の目的とするところは、pHを測定する対象の液体が流通する設備の大型化を抑制するとともに、pH計の性能の低下を抑制することのできるpH計設置ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のpH計設置ユニットは、pH計を設置する際に用いられるpH計設置ユニットであって、測定対象の液体を流入させて貯留する液体貯留部と、前記液体貯留部に貯留した液体に前記pH計のガラス電極の少なくとも先端部が浸漬されるように前記pH計を支持するpH計支持部と、を有するユニット本体を備える。
【0008】
また、本発明のpH計設置ユニットは、前記液体貯留部が、貯留されている液体を溢れ出させるとともに、前記ガラス電極を挿通する開口部を有する。
【0009】
また、本発明のpH計設置ユニットは、前記ユニット本体が、前記液体貯留部の前記開口部から溢れ出した液体を受容する溢出液体受容部を備え、前記溢出液体受容部には、受容した液体を流出させる液体流出管が接続されている。
【0010】
また、本発明のpH計設置ユニットは、前記溢出液体受容部が、前記液体流出管の接続部に向かって下り傾斜となる底部を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、pHを測定する液体が流通する設備にpH計を設置するためのスペースを必要とすることなく、液体のpHの測定が可能となるとともに、pH計のガラス電極の先端部に位置するガラス膜の乾燥を防止することによってpH計の性能の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るpH計設置ユニットの側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るpH計設置ユニットの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および図2は、本発明の一実施形態を示すものであり、図1はpH計設置ユニットの側面図であり、図2はpH計設置ユニットの側面断面図である。
【0014】
本実施形態のpH計設置ユニット1は、工場の排水設備によって処理される排水等の液体のpHを測定するpH計10を設置する際に用いられるものである。pH計設置ユニット1は、排水設備を流通する排水の一部を流入させてpH計10によってpHを測定し、pH計10によってpHを測定した後の排水を排水設備に戻すようになっている。
【0015】
pH計設置ユニット1に設置されるpH計10は、図1および図2に示すように、ガラス電極11と、比較電極12と、ガラス電極11および比較電極12を保持するホルダ13と、比較電極12の内側に注入する内部液を貯留するための内部液タンク14と、を有している。
【0016】
ガラス電極11は、先端部にガラス膜が設けられたガラス管の内部に、銀-塩化銀電極を配置するとともに、所定濃度の塩化カリウム溶液等の内部液を封入することによって構成されている。ガラス膜は、ガラス管の内側の内部液のpHと、ガラス管の外側のpHを測定する対象の液体のpHと、の差に比例した電位差を生じさせる。
【0017】
比較電極12は、先端部に液絡部が設けられたガラス管の内部に、銀-塩化銀電極を配置するとともに、所定濃度の塩化カリウム溶液等の内部液を注入可能に構成されている。液絡部は、多孔質構造のセラミック等からなり、内部液を僅かに流出させることによってpHを測定する対象の液体と銀-塩化銀電極とを電気的に接続するためのものである。
【0018】
ホルダ13は、円筒状の部材からかなり、ガラス電極11および比較電極12を保持した状態で、ガラス電極11および比較電極12の外周側を囲んでいる。ホルダ13は、U字ボルト等の締結部材13aによってpH計設置ユニット1の後述するユニット本体に取り付けられる。
【0019】
内部液タンク14は、上部が蓋によって開放可能なものであり、内部に比較電極12に供給する所定濃度の塩化カリウム溶液が貯留される。内部液タンク14は、pH計設置ユニット1のユニット本体の後述する液体貯留部の上方に配置され、チューブ14aを介して比較電極12のガラス管に接続されている。
【0020】
本実施形態のpH計設置ユニット1は、図1及び図2に示すように、架台20と、架台20に支持されるユニット本体30と、を備えている。
【0021】
架台20は、横断面L字状の山形鋼を複数本組み合わせて、溶接等によって接合することにより形成されている。架台20は、上端側の外周側に沿って4本の山形鋼を矩形状に組み付けることによって形成された枠部21と、枠部21の四隅から下方に延びる4本の脚部22と、を有している。
【0022】
ユニット本体30は、例えば、樹脂製の部材によって形成されている。ユニット本体30は、pHを測定する対象の液体を流入させて貯留するための液体貯留部31と、液体貯留部31から溢れ出した液体を受容するための溢出液体受容部32と、pH計10を支持するためのpH計支持部33と、を有している。
【0023】
液体貯留部31は、上下方向に延びるように設けられ、下端部が閉鎖されるとともに、上端部が開口部31aとして開放された円筒状の部材からなり、溢出液体受容部32の内側に支持されている。液体貯留部31の下端部には、液体流入管31bが接続されており、液体流入管31bを介して液体が液体貯留部31に流入する。液体貯留部31に流入した液体は、液体貯留部31が液体で満たされると、開口部31aから溢れ出る。
【0024】
溢出液体受容部32は、液体貯留部31と同軸上に上下方向に延びるように設けられ、上下方向の両端部が開放された円筒部32aと、円筒部32aの下端側において円筒部32aの内周面と液体貯留部31の外周面との間を周方向にわたって閉塞する底部32bと、を有している。
【0025】
円筒部32aは、液体貯留部31の外周面に対して離間する大きさの内径を有している。円筒部32aは、下端部がボルト等の締結部材によって架台20の枠部21に固定されている。また、円筒部32aの下端側には、液体流出管32cが接続されており、溢出液体受容部32が受容した液体が液体流出管32cを介して溢出液体受容部32の外側に流出する。さらに、円筒部32aの上部側には、円筒部32aの上端部から上方に延びる円筒状のタンク支持部32dが設けられ、タンク支持部32dの上端側にpH計10の内部液タンク14が取り付けられる。
【0026】
底部32bは、円筒部32aおよび液体貯留部31のそれぞれの下端側において、円筒部32aの内周面と液体貯留部31の外周面との間に沿って延びる円環状の板状部材からなる。また、底部32bの上面は、円筒部32aに接続された液体流出管32cに向かって下り傾斜となっている。
【0027】
pH計支持部33は、円筒部32aの上端部において水平方向に延びる部材からなる。pH計支持部33は、一端部がタンク支持部32dの下端側に支持され、他端部が液体貯留部31の上方に位置している。pH計支持部33の他端側には、U字ボルト等の締結部材13aを取り付けるための孔が形成され、締結部材13aを取り付けることによってpH計支持部33にpH計10が支持される。pH計支持部33は、pH計10のガラス電極11および比較電極12それぞれの先端側が、液体貯留部31に貯留された液体に浸漬されるように、pH計10を支持する。
【0028】
以上のように構成されたpH計設置ユニット1は、工場の排水設備の近傍に設置される。pH計設置ユニット1の液体流入管31bおよび液体流出管32cは、排水設備の排水管に接続される。ここで、液体流入管31bの液体流通方向の上流側には、例えばボールバルブ等の排水の流路を開閉する弁を設け、排水の流路を開放することによって液体貯留部31に排水を流入させ、排水の流路を閉鎖することによって液体貯留部31への排水の流入を遮断する。また、液体流入管31bの排水の流通方向の上流側には、液体貯留部31に流入した排水の逆流を防止する逆流防止手段が構成されている。逆流防止手段としては、液体流入管31bの液体流通方向の上流側の排水の流路に逆止弁を設けてもよいし、液体流入管31bの液体流通方向の上流側の排水の流路を液体貯留部31の上端部の高さまで立ち上げるようにしてもよい。
【0029】
液体流入管31bの排水の流通方向の上流側の弁を開放すると、液体貯留部31には、液体流入管31bを介して排水が流入するとともに、排水が貯留される。pH計支持部33に支持されたpH計10は、液体貯留部31に貯留されている排水のpHを測定する。
【0030】
液体貯留部31への排水の流入が継続されると、液体貯留部31は、排水によって満たされ、上端部に位置する開口部31aから排水が溢れ出す。
【0031】
開口部31aから溢れ出した排水は、溢出液体受容部32に受容され、底部32bの傾斜に案内されて液体流出管32c側に移動し、液体流出管32cから流出する。
【0032】
液体流入管31bの排水の流通方向の上流側の弁を閉鎖すると、液体貯留部31に対する排水の流入が停止される。液体貯留部31に貯留された排水は、排水の流入が停止した状態においても、排水の流通方向の上流側に設けられた逆流防止手段によって逆流が防止されるため、貯留された状態が保持される。このため、pH計支持部33に支持されたpH計10のガラス電極11および比較電極12それぞれの先端部は、液体貯留部31に貯留された排水に浸漬された状態が保持される。
【0033】
このように、本実施形態のpH計設置ユニット1によれば、pH計10を設置する際に用いられるpH計設置ユニット1であって、測定対象の液体を流入させて貯留する液体貯留部31と、液体貯留部31に貯留した液体にpH計10のガラス電極11の少なくとも先端部が浸漬されるようにpH計10を支持するpH計支持部33と、を有するユニット本体30を備える。
【0034】
これにより、pHを測定する液体が流通する設備にpH計10を設置するためのスペースを必要とすることなく、液体のpHの測定が可能となるとともに、pH計10のガラス電極11の先端部に位置するガラス膜の乾燥を防止することによってpH計10の性能の低下を抑制することが可能となる。
【0035】
また、液体貯留部31は、貯留されている液体を溢れ出させるとともに、ガラス電極11を挿通する開口部31aを有する。
【0036】
これにより、貯留している液体の流出と、ガラス電極11の先端側の液体貯留部31の内部への挿入と、を1つの開口部31aを利用することが可能となるので、液体貯留部31を簡単な構造とすることができ、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0037】
また、ユニット本体30は、液体貯留部31の開口部31aから溢れ出した液体を受容する溢出液体受容部32を備え、溢出液体受容部32には、受容した液体を流出させる液体流出管32cが接続されている。
【0038】
これにより、pHを測定した後の液体をpH計設置ユニット1から排出することが可能となるので、pHを測定した後の作業が必要ないため、液体のpHを測定する作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【0039】
また、溢出液体受容部32は、液体流出管32cの接続部に向かって下り傾斜となる底部32bを有している。
【0040】
これにより、溢出液体受容部32が受容した液体を、液体流出管32cから確実に排出することが可能となるので、pH計設置ユニット1の衛生状態を良好に保つことが可能となる。
【0041】
尚、前記実施形態では、pHを測定する対象の液体として、工場における排水設備を流通する排水を示したが、これに限られるものではなく、pHの測定が必要な液体が流通する設備に対して本発明のpH計設置ユニットを適用することが可能である。
【0042】
また、前記実施形態では、pH計のガラス電極11および比較電極12それぞれの先端部を、液体貯留部31に貯留された液体に浸漬するようにしたものを示したが、少なくとも、ガラス電極11の先端部に位置するガラス膜が液体貯留部31に貯留された液体に浸漬されていればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 pH計設置ユニット
10 pH計
11 ガラス電極
12 比較電極
30 ユニット本体
31 液体貯留部
31a 開口部
32 溢出液体受容部
32b 底部
32c 液体流出管
33 pH計支持部
図1
図2